JP3634380B2 - 粉末状経鼻投与組成物 - Google Patents

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Description

技術分野
本発明は、経鼻粘膜からの薬物の吸収性が改善された粉末状経鼻投与用組成物に関する。更に詳しくは、特定の種類及び組成の基剤を用い、その基剤中の主薬の存在状態を特定することにより、高い最高血中濃度を示すことのできる粉末状経鼻投与組成物に関する。
背景技術
例えば消炎ステロイド薬等の非ペプチド・蛋白質性薬物においては、1.作用部位として鼻粘膜局所も対象になり得ること、2.速効性が望まれること、3.経口投与による吸収率が低いものがあること等の理由で、経鼻投与剤の開発が望まれている。
また、ペプチド・蛋白質性薬物の多くは、経口投与されても胃腸管内の蛋白質分解酵素により分解される等の理由で容易に体内吸収されない。そこで、これらの薬物を治療に使用するためには、注射により投与せざるを得ないことが多い。しかし注射は、苦痛、通院の必要性等により患者に負担をかけている。従って、経鼻投与剤のような注射に代る非侵襲的な投与方法の開発が望まれている。
経鼻投与は、薬物を鼻粘膜を通して循環血流に移行させる投与方法である。この経鼻投与は、例えば経皮投与、経眼投与、経直腸投与、経肺投与等とともに、非注射型の投与方法として精力的に研究されている。非注射型の投与方法のなかでも経鼻投与は投与もし易い。しかも鼻粘膜は皮膚、眼粘膜、直腸粘膜等と比較して血管系が発達しているので、非注射型の投与方法のなかでも経鼻投与は薬物の吸収性に優れていると考えられる。そこで、一部の薬物については経鼻投与製剤として実用化されているものもある。また、経口投与に比べ血中への薬物の移行が速いので、経鼻投与によって注射投与並の即効性を期待することもできる。しかしながら、薬物の鼻粘膜からの吸収性は、脂溶性等の薬物の物理的性質及び分子量等に依存する。一般的に、水溶性の高い薬物、脂溶性の高い薬物、及び分子量の大きいペプチド・蛋白質性薬物等においては、それらの吸収性の低いことが指摘されている。そこで、これらの薬物の鼻粘膜からの吸収性を向上するための工夫が提案されている。
例えば、鈴木ら(特公昭60−34925号公報)は、セルロースエーテルと薬物とからなる持続性鼻腔用製剤について報告している。
同公報の持続性鼻腔用製剤は、鼻粘膜に粘着し、徐々に長時間薬物を放出することを目的とした製剤であり、薬物を鼻粘膜から吸収させてその有効量を持続的に放出させたりすることが一応可能である。しかしながら、同公報の持続性鼻腔用製剤では、薬物の徐放に主眼が置かれているため、薬物の吸収を促進させるという機能が、必ずしも十分に備わっていないと考えられる。そして、具体的に好ましい薬物として例示されているものは、消炎ステロイド薬、鎮痛消炎薬、抗ヒスタミン薬および抗アレルギー作用を有する薬物等、全身血への吸収性よりもむしろ、局所での薬物濃度の維持が重要な薬物である。
従って同公報の持続性鼻腔用製剤では、水溶性の高い薬物や脂溶性の高い薬物、分子量の大きいペプチド・蛋白質性薬物について、高い経鼻吸収率は認められにくいと思われる。そこで、これらの薬物を治療効果、治療効率の点から有効利用できる鼻粘膜投与用組成物の開発が強く望まれている。
またNolteら(Hormone Metabolic Research Vol.22,170−174,1991)、Bruiceら(Diabetic Medicine Vol.8,366−370,1991)は、グリコール酸ナトリウムもしくはタウロフシジン酸ナトリウムの吸収促進剤を含有させたインシュリン経鼻投与製剤について報告している。しかし、これらの吸収促進剤は鼻粘膜への刺激性が問題になっており、実用化には至っていない。
一方、鈴木ら(特公昭62−42888号公報)は、ポリペプチド類と水吸収性でかつ水難溶性の基剤とからなる鼻粘膜からの吸収性に優れた粉末状経鼻投与組成物について報告している。そして、かかる組成物が吸収促進剤を使用しなくとも、ポリペプチド類を経鼻吸収させることができることを報告している。
しかしながら同公報の組成物の場合でも、ポリペプチド類の経鼻吸収率(経鼻投与後の血中濃度・時間曲線下面積(AUC))は未だ注射投与後のそれの10〜20%を越えることはない。例えば、同公報の実施例4によると、家兎へのインスリン10単位投与時の最高血中濃度は200μU/ml以下と同単位の注射投与の20%程度であり、またそのAUCから求めた吸収率は10%以下と推定される。
さらに同公報には、水吸収性でかつ水難溶性の基剤に水吸収性でかつ水易溶性の基剤を、水吸収性でかつ水難溶性の基剤に対して01〜60重量%、特に好ましくは1〜50重量%の割合で併用することが記載されている。
しかしながら、そのような併用の目的ないし効果としては、水吸収性でかつ水難溶性の基剤単独に比べての徐放効果(徐放性ないし持続性)のみしか記載されていない。
さらに、同公報には、ポリペプチド類に替えて非ペプチド・蛋白質性薬物を用いることについては全く記載されていない。
またさらに、同公報は、結晶セルロースを初めとする多数の水吸収性でかつ水難溶性の基剤やヒドロキシプロピルセルロースを初めとする多数の水吸収性でかつ水易溶性の基剤を例示している。しかしながら、これらの基剤のうちの特定の種類、組成および粒度の基剤の組み合わせが、ペプチド・蛋白質性薬物および非ペプチド・蛋白質性薬物について、優れた最高血中濃度を示す粉末状経鼻投与組成物を提供できることについては全く記載していない。
一般的に、ペプチド・蛋白質性薬物は高価である。また、吸収率が低いと血中濃度のバラツキが大きいことになり期待された治療効果が安定して得られないことが多い。従って、より吸収率の高いペプチド・蛋白質性薬物の経鼻投与用組成物の提供が求められている。また、安全でかつ、より吸収率の高い経鼻投与用組成物の提供が強く求められている。またさらに、より高い最高血中濃度を提供できる経鼻投与用組成物の提供が求められている。このことは非ペプチド・蛋白質性薬物でも同様である。
すなわち本発明の目的は、薬物の吸収性に優れた経鼻投与組成物を提供することにある。
また本発明の目的は、薬物の吸収性、なかでもより高い最高血中濃度を示す経鼻投与組成物を提供することにある。
さらに本発明の目的は、水溶性の高い薬物、脂溶性の高い薬物や、分子量の大きいペプチド・蛋白質性薬物についてもその吸収性に優れた、なかでもより高い最高血中濃度を示す経鼻投与組成物を提供することにある。
またさらに本発明の目的は、水溶性の高い薬物、脂溶性の高い薬物以外の薬物や、非ペプチド・蛋白質性薬物などのもともと良好な経鼻吸収性を示す薬物についてもその吸収性のより優れた、なかでもより高い最高血中濃度を示す経鼻投与組成物を提供することにある。
さらに本発明の目的は、これらの経鼻投与組成物において、安全な経鼻投与組成物を提供することにある。
本発明者らは上記の課題を解決すべく鋭意検討した結果、特定の種類及び組成の基剤を用い、その基剤中の主薬の存在状態を特定することにより、鼻粘膜からの吸収性の低かった薬物及び非ペプチド・蛋白質性薬物についても、その吸収性に優れた新規な粉末状経鼻投与組成物を提供できること、特に著しく高い最高血中濃度が得られる新規な粉末状経鼻投与組成物を提供できることを見出して、本発明に到達したものである。
【図面の簡単な説明】
図1は、本発明の吸収性が改善された粉末状経鼻投与組成物(実施例66:−○−と、比較例の粉末状経鼻投与組成物(比較例58〜60:各々、−□−、−△−、−×−を家兎に投与した場合のFITC−dextran濃度(ng/ml)を示している。
発明の開示
本発明は
(1)▲1▼ 薬物と、
▲2▼ ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、メチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、およびカルボキシメチルセルロースナトリウムからなる群から選ばれる1種または2種以上の水吸収性でかつゲル形成性の基剤と、
▲3▼ 結晶セルロース、αーセルロース、架橋カルボキシメチルセルロースナトリウム、架橋デンプン、ゼラチン、カゼイン、トラガントガム、ポリビニルポリピロリドン、キチン、およびキトサンからなる群から選ばれる1種または2種以上の水吸収性でかつ水難溶性の基剤を含み、
(2)該水吸収性でかつゲル形成性の基剤の量が、該水吸収性でかつ水難溶性の基剤と該水吸収性でかつゲル形成性の基剤の量の和の5〜40重量%で、
(3)該薬物が該水吸収性でかつゲル形成性の基剤よりも該水吸収性でかつ水難溶性の基剤に偏在して分散していることを特徴とする粉末状経鼻投与組成物である。
発明を実施するための最良の形態
本発明の薬物としては、例えば非ペプチド・蛋白質性薬物およびペプチド・蛋白質性薬物を好ましいものとして挙げることができる。
本発明の非ペプチド・蛋白質性薬物としては、幅広く非ペプチド・蛋白質性薬物について利用可能である。その具体例としては、消炎ステロイドまたは非ステロイド系消炎薬、鎮痛消炎薬、鎮静剤、鬱病治療薬、鎮咳去痰薬、抗ヒスタミン薬、抗アレルギー薬、制吐薬、睡眠導入薬、ビタミン薬、性ステロイドホルモン薬、抗腫瘍薬、抗不整脈薬、高血圧薬、抗不安薬、向精神薬、抗潰瘍薬、強心薬、鎮痛薬、気管支拡張薬、肥満治療薬、血小板凝集抑制薬、糖尿病薬、筋弛緩薬、および抗リウマチ薬等を挙げることができる。非ペプチド・蛋白質性薬物としては、これらからなる群より選ばれる1種または2種以上のものを用いることができる。なかでも、制吐薬、睡眠導入薬、ビタミン薬、性ステロイドホルモン薬、および鎮痛薬からなる群より選ばれる1種または2種以上のものを好ましいものとして挙げることができる。
そのような非ペプチド・蛋白質性薬物として詳しくは、例えばヒドロコルチゾン、プレドニゾロン、トリアムシノロン、デキサメタゾン、ベタメタゾン、ベクロメタゾン、フルチカゾン、モメタゾン、フルオコルチン、ブデソニド、サルブタモール、サルメテロールなどの消炎ステロイドまたは非ステロイド系消炎薬;アセトアミノフェン、フェナセチン、アスピリン、アミノピリン、スルピリン、フェニルブタゾン、メフェナム酸、フルフェナム酸、イブフェナック、イブプロフェン、アルクロフェナック、ジクロフェナック、インドメタシンなどの鎮痛消炎薬;スコポラミンなどの鎮静剤;イミプラミンなどの鬱病治療薬;クロモグリク酸ナトリウム、リン酸コデイン、塩酸イソプロテレノール等の鎮咳去痰薬;ジフェンヒドラミン、トリプロリジン、イソチペンジル、クロルフェニラミン等の抗ヒスタミン薬;アンレキサノクス、アゼラスチン、オザクレル、トラニケスト、ケトチフェン等の抗アレルギー薬;オンダンセトロン、グラニセトロン、メトクロプラミド、シサプリド、ドンペリドン等の制吐薬;ブロチゾラム、メラトニン等の催眠導入薬;シアノコバラミン、メコバラミン等のビタミン剤;エストラジオール、エストリオール、プロゲステロン、テストステロン等の性ステロイドホルモン薬;タモキシフェン、テガフール等の抗腫瘍薬;プロプラノロール、アテノロール等の抗不整脈薬;ニカルジピン等の高血圧薬;ジアゼパム等の抗不安薬;ニトラゼパム等の向精神薬;シメチジン、ラニチジン等の抗潰瘍薬;ドパミン等の強心薬;モルヒネ、ブプレノルフィン等の鎮痛薬;オキシトロピウム、オザクレル等の気管支拡張薬;マジンドール等の肥満治療薬;ベラプロスト、カルバシクリン等の血小板凝集抑制薬;アカルボース、ソルビニール等の糖尿病薬;ピナベリウム、イナペリゾン等の筋弛緩薬;アクタリット、プラトニン等の抗リウマチ薬等からなる群より選ばれる1種または2種以上の非ペプチド・蛋白質性薬物を挙げることができる。
また本発明のペプチド・蛋白質性薬物としては、その分子量が30,000以内であるものが好ましい。分子量30,000以内のペプチド・蛋白質性薬物としては、例えば黄体形成ホルモン放出ホルモン類、成長ホルモン放出因子類、ソマトスタチン誘導体類、バゾプレッシン類、オキシトシン類、ヒルジン誘導体類、エンケファリン類、副腎皮質刺激ホルモン誘導体類、ブラジキニン誘導体類、カルシトニン類、インシュリン類、グルカゴン誘導体類、成長ホルモン類、成長ホルモン放出ホルモン類、黄体形成ホルモン類、インシュリン様成長因子類、カルシトニン遺伝子関連ペプチド類、心房性ナトリウム利尿ペプチド誘導体類、インターフェロン類、インターロイキン類、エリスロポエチン、顆粒球コロニー形成刺激因子、マクロファージ形成刺激因子、副甲状腺ホルモン類、副甲状腺ホルモン放出ホルモン、プロラクチン、甲状腺刺激ホルモン放出ホルモン、およびアンギオテンシン類等を挙げることができる。本発明のペプチド・蛋白質性薬物としては、これら具体例からなる群から選ばれる1種または2種以上のものを用いることができる。
本発明の水吸収性でゲル形成性の基剤は、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、メチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロースおよびカルボキシメチルセルロースナトリウムからなる群から選ばれる1種または2種以上の基剤である。
これらのなかでも本発明の水吸収性でかつゲル形成性の基剤としては、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、メチルセルロース、及びカルボキシメチルセルロースナトリウムからなる群から選ばれる1種または2種以上のものが好ましく、なかでも特にヒドロキシプロピルセルロースを好ましいものとしてあげることができる。
またヒドロキシプロピルセルロースは、その2%水溶性の粘度が150〜4,000cpsであるのが好ましい。ここでいう粘度とは、動粘度のことであり、キャノン−フェンスケ、キャノン−フェンスケ不透明液用、ウベローデ、オストワルドなどの粘度計により測定される。なかでもウベローデ粘度計による測定が精度が高く好ましい。本明細書に記載の粘度値は、37℃の環境下において、柴田科学機械工学社製のウベローデ粘度計により求めたものである。ヒドロキシプロピルセルロースにはこれより低粘度のものもあるが、150cpsよりも低粘度のものを使用した場合には、本発明の最高血中濃度の上昇効果が必ずしも十分でないことがある。
本発明の水吸収性でかつ水難溶性の基剤は、結晶セルロース、α−セルロース、架橋カルボキシメチルセルロースナトリウム、架橋デンプン、ゼラチン、カゼイン、トラガントガム、ポリビニルポリピロリドン、キチン、およびキトサンからなる群から選ばれる1種または2種以上の基剤である。
これらのなかでも本発明の水吸収性でかつ水難溶性の基剤としては、結晶セルロース、α−セルロース、架橋カルボキシメチルセルロースナトリウム、架橋デンプン、ゼラチン、カゼイン、トラガントガム、ポリビニルポリピロリドン、キチン、およびキトサンからなる群から選ばれる1種または2種以上のものが好ましく、なかでも特に結晶セルロースを好ましいものとしてあげることができる。
水吸収性でかつゲル形成性の基剤と水吸収性でかつ水難溶性の基剤の好ましい組み合わせとしては、上記のようなそれぞれの好適例同志の組み合わせが挙げられ、特に好ましい組み合わせとしては水吸収性でかつゲル形成性の基剤としてのヒドロキシプロピルセルロースと水吸収性でかつ水難溶性の基剤としての結晶セルロースを挙げることができる。
本発明で使用される水吸収性でかつゲル形成性の基剤の量は、水吸収性でかつ水難溶性の基剤と水吸収性でかつゲル形成性の基剤の和の約5〜40重量%である。
水吸収性でかつゲル形成性の基剤の量は本発明の薬物の種類にも依存する。薬物が非ペプチド・蛋白質性薬物の場合には約20〜40重量%である場合に最高血中濃度の上昇効果が顕著であり好ましい。
また本発明の薬物がペプチド・蛋白質性薬物の場合に、さらに分子量に依存して水吸収性でかつゲル形成性の基剤の好適な量は細分される。ペプチド・蛋白質性薬物の分子量が500以上〜1,500未満の場合には水吸収性でかつゲル形成性の基剤の量が約5〜30重量%である場合に最高血中濃度の上昇効果が顕著であるので好ましく、特に好ましくは20〜30重量%である。また、ペプチド・蛋白質性薬物の分子量が1,500以上〜30,000以内の場合には水吸収性でかつゲル形成性の基剤の量が約5〜20重量%である場合に最高血中濃度の上昇効果が顕著であるので好ましく、特に好ましくは10〜20重量%である。
分子量が500以上〜1,500未満のペプチド・蛋白質性薬物としては、例えばバゾプレッシン類、黄体形成ホルモン放出ホルモン類、成長ホルモン放出因子類、ソマトスタチン誘導体類、オキシトシン類、ヒルジン誘導体類、エンケファリン類、副腎皮質刺激ホルモン誘導体類、およびジブラジキニン誘導体類等を挙げることができる。また分子量1,500以上〜30,000以内のペプチド・蛋白質性薬物としては、例えばカルシトニン類、インシュリン類、グルカゴン誘導体類、成長ホルモン類、成長ホルモン放出ホルモン類、黄体形成ホルモン類、インシュリン様成長因子類、カルシトニン遺伝子関連ペプチド類、心房性ナトリウム利尿ペプチド誘導体類、インターフェロン類、エリスロポエチン、顆粒球コロニー形成刺激因子、マクロファージ形成刺激因子、副甲状腺ホルモン類、副甲状腺ホルモン放出ホルモン、プロラクチン、甲状腺刺激ホルモン放出ホルモン、およびアンギオテンシン類等を挙げることができる。
本発明の粉末状経鼻投与組成物においては、薬物が水吸収性でかつゲル形成性の基剤よりも水吸収性でかつ水難溶性の基剤に偏在して分散している状態であるという特徴を有する。
薬物が水吸収性でかつゲル形成性の基剤よりも水吸収性でかつ水難溶性の基剤に偏在して分散している状態とは、例えば、基剤の配合比率に応じて薬物が基剤に付着している状態をいう。なかでも、薬物の70重量%以上が両基剤にそれらの配合比率に応じて付着している状態を好ましいものとして挙げることができる。特に好ましくは、薬物の80重量%以上が両基剤にそれらの配合比率に応じて付着している状態を好ましいものとして挙げることができる。例えば、薬物の70重量%以上が両基剤にそれらの配合比率に応じて付着している状態においては、その際に水吸収性でかつゲル形成性の基剤の量が両基剤の量の和の40重量%である場合には、薬物の42重量%は水吸収性でかつ水難溶性の基剤に付着し、また薬物の28重量%は水吸収性でかつゲル形成性の基剤に付着し、残りの30重量%の薬物は組成物中に均一に分散している状態をいう。
またさらに本発明でいう、薬物が水吸収性でかつゲル形成性の基剤よりも水吸収性でかつ水難溶性の基剤に偏在して分散している状態とは、両基剤の配合比率に応じて薬物が両基剤に付着するよりも、薬物が水吸収性でかつ水難溶性の基剤の方に多く付着している状態をもいう。なかでも、薬物の60重量%以上が水吸収性でかつ水難溶性の基剤に付着している状態を好ましいものとして挙げることができる。特に好ましくは、薬物の70重量%以上、なかでも特に80重量%以上、が水吸収性でかつ水難溶性の基剤にに付着している状態を好ましいものとして挙げることができる。これらの場合、残りの薬物である30重量%未満または20重量%未満の薬物は、薬物単独および/または薬物が水吸収性でかつゲル形成性の基剤に付着した状態で組成物中に均一に分散している。
本発明において、薬物が基剤に付着するとは、薬物が基剤の表面に付着して存在する状態、薬物の一部が基剤中に存在しその他の部分が基剤表面に存在する状態、または薬物全体が基剤中に存在する状態をいう。
上記のような主薬が基剤中に特定に偏在して分散している状態を有する本発明の組成物は、例えば、以下1〜3の製造方法によって製造される。
1.その90重量%以上の粒子の平均粒子径が10〜350μmの範囲にある水吸収性でかつ水難溶性の基剤に薬物を機械的に混合する。次いで、この混合物に、その90重量%以上の粒子の平均粒子径が10〜350μmの範囲にある水吸収性でかつゲル形成性の基剤を機械的に混合する。
2.水吸収性でかつ水難溶性の基剤に薬物を凍結乾燥により付着させて、薬物を付着した基剤を得る。
凍結乾燥には、薬物と水吸収性でかつ水難溶性の基剤とを水溶液中に溶解もしくは分散させたものを用いることができる。次いで、得られた基剤を、その90重量%以上の粒子の平均粒子径が10〜350μmとなるように粉砕、篩過して粉状物を得る。その後、この粉状物に、その90重量%以上の粒子の平均粒子径が10〜350μmの範囲にある水吸収性でかつゲル形成性の基剤を機械的に混合する。もしくは
3.その90重量%以上の粒子の平均粒子径が10〜350μmの範囲にある水吸収性でかつ水難溶性の基剤、その90重量%以上の粒子の平均粒子径が10〜350μmの範囲にある水吸収性でかつゲル形成性の基剤および薬物を同時に機械的に混合する。
上記の製造方法のうち、第1の製造方法と第2の製造方法の場合には、薬物が水吸収性でかつゲル形成性の基剤よりも水吸収性でかつ水難溶性の基剤に偏在して分散している状態とすることが容易であるので好ましい。例えば、第1の製造方法で薬物と水吸収性でかつ水難溶性の基剤を混合する際には強く混合し、次いで水吸収性でかつゲル形成性の基剤と混合する際には弱く混合することができる。第2の製造方法の水吸収性でかつゲル形成性の基剤を機械的に混合する際には、強くもしくは弱く混合することができる。
第1の製造方法では薬物の60重量%以上は水吸収性でかつ水難溶性の基剤に付着した形で分散し、また第2の製造方法では薬物の80重量%以上は水吸収性でかつ水難溶性の基剤に付着した状態で分散し、水吸収性でかつゲル形成性の基剤は全体的に均一に分散した状態となる。
また第3の製造方法の場合には、薬物が水吸収性でかつ水難溶性の基剤と水吸収性でかつゲル形成性の基剤とにそれらの配合比率に応じて均一に分散している状態とすることが容易であるので好ましい。この製造方法では、薬物と両基剤を同時に混合する際に強く混合することができる。例えば、薬物の80重量%以上が両基剤の配合比率に応じて均一に分散され、その際に水吸収性でかつ水難溶性の基剤の量が両基剤の量の和の60重量%である場合には、薬物の48%以上は水吸収性でかつ水難溶性基剤に付着した状態で分散し、両基剤に付着しなかった薬物は均一に分散した状態となる。この場合、上記の薬物が水吸収性でかつ水難溶性の基剤に偏在して分散している状態に比べると、水吸収性でかつゲル形成性の基剤に付着する薬物の量が多少多いため、本発明の効果が少し低下する場合がある。
薬物が水吸収性でかつ水難溶性の基剤に偏在して分散している状態の本発明の組成物の他の製造方法として、薬物が脂溶性の場合、薬物と水吸収性でかつ水難溶性の基剤とをエタノールなどの有機溶媒中で溶解、分散させ、その有機溶媒を蒸発、乾固させることにより得られた粉体を10〜350μmの平均粒子径に整粒した後、水吸収性でかつゲル形成性の基剤を機械的に強くもしくは弱く混合する方法も用いることができる。
なお、第3の製造方法を実施する場合には、薬物、水吸収性でかつ水難溶性の基剤と水吸収性でかつゲル形成性の基剤とを水溶液中に溶解もしくは分散させ凍結乾燥後粉砕し、得られた粉状体を用いることにより目的とする組成物を得ることもできる。
なお、上記の第1の製造方法と第3の製造方法の場合には、あらかじめ薬物もその90重量%以上の粒子の粒子径を10〜350μmとしておくことが望ましい。
ここでいう薬物が偏在した状態とは、以下のような方法により確認できる。
すなわち薬物、水吸収性でかつ水難溶性の基剤、水吸収性でかつゲル形成性の基剤を、それぞれ異なる色に食品添加用色素等の色素や、フルオレセインなどの蛍光を有する物質により着色する方法などにより確認できる。
例えば、薬物が白い粉末の場合、水吸収性でかつ水難溶性の基剤を青色1号のような色素により着色し、一方水吸収性でかつゲル形成性の基剤を、水吸収性でかつ水難溶性の基剤を着色した色とは異なる色素・例えば上記のように青色1号で着色した場合は赤色3号や黄色4号、で着色することにより、それぞれ目視による主薬、基剤の分別が可能になる。色素の着色の方法としては、水吸収性でかつ水難溶性の基剤の場合、各色素の水溶液中に該基剤を浸潤させ、攪拌放置後濾過もしくは溶媒を蒸発乾固させることにり着色する方法や、水吸収性でかつゲル形成性の基剤の場合、エタノールなどの有機溶媒中に色素を溶解させ、その溶液中に該基剤を添加し、溶媒を蒸発乾固させることにより着色し、得られたフィルム状の該基剤を適当な粒度に粉砕する方法などがある。
例えば、水吸収性でかつ水難溶性の基剤を青色1号で着色し、水吸収性でかつゲル形成性の基剤を赤色3号で着色し、本文記載の製造法1に従い、白い粉末状の主薬と本発明の組成物を調製し、得られた組成物を微量スライドガラス上にとり、100〜1,000倍、例えば500倍のレンズを備えた顕微鏡下で観察することにより、白い主薬が、ほとんど青く着色した水吸収性でかつ水難溶性の基剤に吸着し、赤色に着色した水吸収性でかつゲル形成性の基剤への吸着が少なく、主薬が水吸収性でかつ水難溶性の基剤に偏在して吸着していることが確認される。
また第2の製造方法及び第3の製造方法の凍結乾燥させる方法では、薬物が基剤中に包含された状態で組成物を得ることができる。
なお本発明の組成物を製造する際、薬物を基剤と凍結乾燥させる製法以外の場合には、薬物もあらかじめ、その90重量%以上の粒子の粒子径を10〜350μmとしておくことが望ましい。
ここで、本発明の組成物を製造する際の機械的混合とは、例えば容器回転型の混合器であるV型混合機、クロスロータリーミキサー、二重円錐型混合機等、及び容器固定型の混合機である、万能混合機、リボンミキサー、自動乳鉢、ボールミル等やその他の混合機であるハイスピードミキサー、パワーフルオートミキサー等のほか、乳鉢による手動の押しつけ混合をも含む。
また混合の際に強く混合するとは、乳鉢による手動混合や、容器固定型の万能混合機、リボンミキサー、自動乳鉢、ボールミル等による混合、及びハイスピードミキサー、パワフルオートミキサー等による混合をいい、この混合により主に薬物は基剤に付着しながら均一に混合される。また弱く混合するとは、容器回転型のV型混合機、クロスロータリーミキサー、二重円錐型混合機、ボールを使用しないボールミル等による混合を示し、主に薬物は基剤と独立に、均一に分散混合される。
また、本発明の粉末状経鼻投与組成物は、上記1〜3の製造法の他、基剤の粒子径を特定することによっても調製できる。例えば、▲1▼水吸収性でかつ水難溶性の基剤の90重量%以上の粒子の平均粒子径が10μm〜350μmの範囲で、▲2▼水吸収性でかつゲル形成性の基剤90重量%以上の粒子の平均粒子径が10μm〜105μmの範囲で、かつ▲3▼水吸収性でかつ水難溶性の基剤の平均粒子径を、該水吸収性でかつゲル形成性の基剤の平均粒子径より大きくすることにより調製される。
なかでも、水吸収性でかつ水難溶性の基剤の90重量%以上の粒子の平均粒子径を10〜250μm、かつ水吸収性でかつゲル形成性の基剤の90重量%以上の粒子の平均粒子径を10〜105μmとした場合には、最高血中濃度の増加を得ることができるので好ましい。さらに、水吸収性でかつ水難溶性の基剤の90重量%以上の粒子の平均粒子径を10〜250μm、かつ水吸収性でかつゲル形成性の基剤の90重量%以上の粒子の平均粒子径を10〜65μmとした場合には、さらなる最高血中濃度の増加を得ることができるので好ましい。なお、これらのいずれの場合においても、水吸収性でかつ水難溶性の基剤の平均粒子径が、該水吸収性でかつゲル形成性の基剤の平均粒子径より大きい。
ここで、例えば、基剤の90重量%以上の粒子の平均粒子径が10〜250μmの範囲にあるということは、試験篩い器を用い、手動もしくは機械により振動を与え、粉を分級することにより特定され、目の開きが250μmの篩いを通過し、10μmの篩いを通過しなかったものをいう。この際、振動を与える間、各篩い上の粉体の重量を秤量し、その重量の変動が0.1%以下になった時点を振動の終点とし、粉体の分級が完了した時点である。
また、水吸収性でかつ水難溶性の基剤の平均粒子径が、水吸収性でかつゲル形成性の基剤の平均粒子径より大きいとは、両基剤の平均粒子径がそれぞれ上記の数値範囲内にある場合でも、水吸収性でかつ水難溶性の基剤の平均粒子径の数値の方が水吸収性でかつゲル形成性の基剤の平均粒子径の数値より大きいことをいう。
このように、水吸収性でかつ水難溶性の基剤の平均粒子径が、水吸収性でかつゲル形成性の基剤の平均粒子径より大きくすることにより調製された場合の本発明の粉末状経鼻投与組成物は、主薬と水吸収性でかつ水難溶性の基剤及び水吸収性でかつゲル形成性の基剤を機械的に混合するなどの当業者の者にとっては一般的な粉末状製剤の製造法によって調製することができる。
さらには上述の1〜3の製造法により調製することにより、より高い効果を得ることができるので好ましい。
なお、本発明の水吸収性でかつ水難溶性の基剤及び水吸収性でかつゲル形成性の基剤としては、本発明の目的に反しない限り、前記特定の性質を有し特定の種類の基剤からなる、例えばスターチ、結晶セルロース等の経鼻投与用粉状組成物に用いることのできる基剤としての公知の、ミクロスフェアを使用することができ、その場合にはその粒子の粒径として上記数値範囲のものを使用するのが好ましい。
なお本発明で使用される薬物の量は有効治療量であり、それぞれの薬物、疾患の種類や程度、患者の年齢や体重等に応じて決めることができる。通常それぞれの薬物が注射投与に用いられている量の同量から20倍量、より好ましくは同量から10倍量である。
また本発明の組成物の薬物と、基剤(水吸収性でかつ水難溶性の基剤と水吸収性でかつゲル形成性の基剤の量の和)の量は、鼻腔に適用できる粉の量に限界があるため、薬物の治療必要量に依存してくるので一概に限定できないが、薬物1重量に対し、同量以上が好ましく、特に好ましくは薬物1重量に対し5重量以上、さらに好ましくは10重量以上である。
また、本発明の組成物には、製剤としての物性、外観、あるいは臭い等を改良するため、必要に応じて公知の滑沢剤、結合剤、希釈剤、着色剤、保存剤、防腐剤、矯臭剤等を添加してもよい。滑沢剤としては、例えばタルク、ステアリン酸およびその塩、ワックス等が;結合剤としては、例えばデンプン、デキストリン等が;希釈剤としては、例えばデンプン、乳糖等が;着色剤としては、例えば赤色2号等が;保存剤としては、アスコルビン酸等が;防腐剤としては、例えばパラオキシ安息香酸エステル類等が;矯臭剤としては、例えばメントール等が挙げられる。
また、本発明の組成物は製剤として投与されるために適当な投与形態とされる。そのような形態としては、本発明を投与単位ごとに充填したカプセル剤があり、これを適当な投与器により鼻腔内に噴霧する。また、投与単位量の本発明の組成物もしくは複数回分の投与単位量の本発明の組成物を、適当な容器に収納し、投与操作時に投与単位量の本発明の組成物を、単回投与もしくは分割投与してもよい。
産業上の利用可能性
かくして本発明により、水溶性の高い薬物、脂溶性の高い薬物、分子量の大きいペプチド・蛋白質性薬物についても、鼻腔からの吸収性に優れ、最高血中濃度が従来の経鼻投与組成物よりも著しく増加された、粉末状経鼻投与組成物が提供される。
このような本発明の粉末状経鼻投与組成物により、高価なペプチド・蛋白質性薬物だけでなく非ペプチド・蛋白質性薬物についても、従来と同様の使用量でも、より著しく高い最高血中濃度を得ることが可能となる。従って、薬物の使用量を低減することができる。更に、血中濃度のバラツキを小さくして、所望の治療効果を安定して得ることができる。
さらに本発明の粉末状経鼻投与組成物は、従来の粉末状経鼻投与組成物と同様に薬物の吸収性(血中濃度の持続性)にも優れ、刺激性のある吸収促進剤などを特に用い得る必要がなく安全で、所望の治療効果を安定して得られることが予想される。
従って、本発明は、非注射型の薬物の投与による薬物療法にとっても極めて高い意義があるものと考える。
実施例
以下に、実施例、比較例を挙げて本発明を詳述するが、これらは本発明を何ら限定するものではない。
以下の実施例等において結晶セルロースを微結晶セルロースと表現し、CCと略記することがある。またヒドロキシプロピルセルロースをHPCと略記することがある。
[実施例1〜4および比較例1〜5]
消炎ステロイドの一つであるプロピオン酸ベクロメタゾン(SICOR社製)10mgに、表1に記載した組成の基剤をそれぞれ150mgづつ乳鉢中で混合し、滑択剤としてステアリン酸マグネシウム0.16mgを加え、粉末組成物を調製した(実施例1〜4、比較例1〜5)。
このとき、微結晶セルロース(旭化成社製:Avicel PH101)は、その90重量%以上の粒子の平均粒子径を100〜250μmとしたもの、ヒドロキシプロピルセルロース(日本曹達社製:HPCーH)は、その90重量%以上の粒子の平均粒子径を10〜200μmとしたものをそれぞれ使用した。
これらの組成物を白色在来種雄性家兎(体重2.5〜3.0kg)の鼻腔内に粉末投与器(帝人社製:パブライザー)にて組成物の投与量が、2mg/kgとなるように投与した。一定時間後に耳静脈より採血し、血中プロピオン酸ベクロメタゾンをRIA法により測定した。結果を表1に示す。
基剤全体中にしめるヒドロキシプロピルセルロースの割合が5〜40重量%の割合に、0%(比較例1)よりも高い最高血中濃度を示し、さらに30〜40%の場合(実施例3、4)により高い最高血中濃度を示し、本発明の組成物は、著しく吸収性を改善し最高血中濃度を上昇させていることがわかる。
Figure 0003634380
また、実施例1〜4により得られた組成物は、薬物がCCに基剤の比に応じて偏在して分散した状態であった。
[実施例5〜8および比較例6〜10]
制吐薬の一つであるメトクロプラミド(SIGMA社製)100mgに、表2に記載した各種の基剤をそれぞれ200mgづつボールミルにより混合し、滑択剤としてステアリン酸マグネシウム0.30mgを加え、粉末組成物を調製した(実施例5〜8および比較例6〜10)。このとき、微結晶セルロース(旭化成社製:Avicel PH101)は、その90重量%以上の粒子の平均粒子径を50〜350μmとしたもの、ヒドロキシプロピルセルロース(日本曹達社製:HPCーH)は、その90重量%以上の粒子の平均粒子径を10〜100μmとしたものをそれぞれ使用した。
これらの組成物を白色在来種雄性家兎(体重2.5〜3.0kg)の鼻腔内に粉末投与器(帝人社製:パブライザー)にて組成物の投与量が、3mg/kgとなるように投与した。一定時間後に耳静脈より採血し、血中メトクロプラミド濃度(ng/ml)をHPLC法により測定した。結果を表2に示す。基剤全体中にしめるヒドロキシプロピルセルロースの割合が5〜40重量%の場合に、0%(比較例6)よりも高い最高血中濃度を示し、さらに30〜40%の場合(実施例7、8)により高い最高血中濃度を示し、本発明の組成物は、著しく吸収性を改善し最高血中濃度を上昇させていることがわかる。
Figure 0003634380
また、実施例5〜8により得られた組成物は、薬物がCCに基剤の比に応じて偏在して分散した状態であった。
[実施例9〜11および比較例11〜15]
黄体形成ホルモンの一つである酢酸リュープロライド(Bachem社製)10mgに、表3に記載した各種の基剤をそれぞれ200mgづつ混合し、滑択剤としてステアリン酸マグネシウム0.21mgを加え、粉末組成物を調製した(実施例9〜11および比較例11〜15)。このとき、酢酸リュープロライドは凍結乾燥品を乳鉢で粉砕し、その90重量%以上の粒子の粒径を10〜150μmとしたものを、微結晶セルロース(旭化成社製:Avicel PH101)は、その90重量%以上の粒子の平均粒子径を50〜350μmとしたものを、ヒドロキシプロピルセルロース(日本曹達社製:HPCーH)は、その90重量%以上の粒子の平均粒子径を10〜100μmとしたものをそれぞれ使用した。
これらの組成物を白色在来種雄性家兎(体重2.5〜3.0kg)の鼻腔内に粉末投与器(帝人社製:パブライザー)にて組成物の投与量が、2.5mg/kgとなるように投与した。一定時間後に耳静脈より採血し、血中の酢酸リュープロライド濃度(ng/ml)をRIA法により測定した。また対照例1として、酢酸リュープロライドの水溶液を同時に投与した。結果を表3に示す。
基剤全体中にしめるヒドロキシプロピルセルロースの割合が5〜30重量%の場合に、0%(比較例11)よりも高い最高血中濃度を示し、さらに20〜30%の場合(実施例10、11)により高い最高血中濃度を示し、実施例の組成物は、著しく吸収性を改善し最高血中濃度を上昇させていることがわかる。
Figure 0003634380
なお、上記の実施例9〜11の組成で、微結晶セルロースをそれぞれ100mlの精製水に加え、分散、溶解させ、凍結乾燥し、得られたものを乳鉢により粉砕し、その90重量%以上の粒子の平均粒子径50〜350μmとなるように分級し、ついでヒドロキシプロピルセルロースを添加しハイスピードミキサーにより混合し、滑択剤を加え、粉末組成物を調製した。
得られた粉末組成物は、薬物が水可溶性かつ水難溶性の基剤に偏在して分散している状態であった。
また、これらの実施例9〜11の各粉末組成物の場合には、いずれも投与後45分で100ng/ml以上の極めて高い最高血中濃度であった。
[実施例12〜14および比較例16〜21]
カルシトニン類の一つであるサケカルシトニン(Bachem社製)0.10mgに、表4に記載した各種の基剤をそれぞれ150mgづつ混合し、滑択剤としてステアリン酸マグネシウム0.16mgを加え、粉末組成物を調製した(実施例12〜14および比較例16〜21)。このとき、サケカルシトニンは凍結乾燥品を乳鉢で粉砕し、その90重量%以上の粒子の粒径を10〜150μmとしたものを、微結晶セルロース(旭化成社製:Avicel PH101)は、その90重量%以上の粒子の平均粒子径を50〜350μmとしたものを、ヒドロキシプロピルセルロース(日本曹達社製:HPCーH)は、その90重量%以上の粒子の平均粒子径を10〜100μmとしたものをそれぞれ使用した。
これらの組成物を白色在来種雄性家兎(体重2.5〜3.0kg)の鼻腔内に粉末投与器(帝人社製:パブライザー)にて組成物の投与量が、0.6mg/kgとなるように投与した。一定時間後に耳静脈より採血し、血中のサケカルシトニン濃度(pg/ml)をRIA法により測定した。また対照例2として、サケカルシトニンの水溶液を同時に投与した。結果を表4に示す。基剤全体中にしめるヒドロキシプロピルセルロースの割合が5〜20重量%の場合に、0%(比較例16)よりも高い最高血中濃度を示し、さらに10〜20%の場合(実施例13、14)により高い最高血中濃度を示し、実施例の組成物は、著しく吸収性を改善し最高血中濃度を上昇させていることがわかる。
Figure 0003634380
なお、上記の実施例12〜14の組成で、薬物と微結晶セルロースをそれぞれ100mlの精製水に加え、分散、溶解させ、凍結乾燥し、得られたものを乳鉢により粉砕し、その90重量%以上の粒子の平均粒子径50〜350μmとなるように分級し、ついでヒドロキシプロピルセルロースを添加しV型混合機により混合し、滑択剤を加え、粉末組成物を調製した。
得られた粉末組成物は、薬物の90重量%以上が水可溶性かつ水難溶性の基剤に偏在して分散している状態であった。また、これら実施例12〜14の各粉末組成物の場合には、投与後30分〜45分でいずれも50pg/ml以上の極めて高い最高血中濃度であった。
[実施例15〜17および比較例22〜27]
成長ホルモン類の一つであるヒト成長ホルモン(Bachem社製)10mgに、表5に記載し各種の基剤をそれぞれ240mgづつ混合し、滑択剤としてステアリン酸マグネシウム0.25mgを加え、粉末組成物を調製した(実施例15〜17および比較例22〜27)。このとき、ヒト成長ホルモンは凍結乾燥品を乳鉢で粉砕し、その90重量%以上の粒子の平均粒経を10〜150μmとしたものを、微結晶セルロース(旭化成社製:Avicel PH101)は、その90重量%以上の粒子の平均粒子径を50〜350μmとしたものを、ヒドロキシプロピルセルロース(日本曹達社製:HPCーH)は、その90重量%以上の粒子の平均粒子径を10〜100μmとしたものをそれぞれ使用した。
これらの組成物を白色在来種雄性家兎(体重2.5〜3.0kg)の鼻腔内に粉末投与器(帝人社製:パブライザー)にて組成物の投与量が、2.5mg/kgとなるように投与した。一定時間後に耳静脈より採血し、血中のヒト成長ホルモンをRIA法により測定した。また対照例3として、ヒト成長ホルモンの水溶液を同時に投与した。結果を表5に示す。基剤全体中にしめるヒドロキシプロピルセルロースの割合が5〜20重量%の場合に、0%(比較例24)よりも高い最高血中濃度を示し、さらに10〜20%の場合(実施例16、17)により高い最高血中濃度を示し、実施例の組成物は、著しく吸収性を改善し最高血中濃度を上昇させていることがわかる。
Figure 0003634380
[実施例18〜26および比較例28〜36]
下記表6に記載した2種の基剤を用いて、主薬として酢酸リュープロライド(Bachem社製)を含有した、水吸収性でかつ水難溶剤の基剤と水吸収性でかつゲル形成性の基剤の重量比が80:20の組成物を調製し(実施例18〜26)、実施例9〜11と同様の条件で、家兎に投与した。また、同表に示した基剤を用いて同様に組成物を調製し(比較例28〜36)、家兎への投与を行った。ここで、表6記載の水吸収性でかつ水難溶性の基剤の90重量%以上の粒子の平均粒子径は50〜350μmと、水吸収性でかつゲル形成性の基剤の90重量%以上の粒子の平均粒子径は10〜100μmとしたものをそれぞれ用いた。
得られた最高血中濃度並びにその時間を表6に示す。実施例18〜26が、著しく高い最高血中濃度を与えるのに対し、比較例28〜26は吸収するものの実施例と比較し、最高血中濃度が低いことがわかる。
Figure 0003634380
[実施例27〜30及び比較例37〜42]
下記表7に記載した2種の基剤を用いて、主薬として酢酸リュープロライド(Bachem社製)を含有した、水吸収性でかつ水難溶性の基剤と水吸収性でかつゲル形成性の基剤の重量比が80:20の組成物を調製し、実施例9〜11と同様の条件で、家兎に投与した。また、比較例37〜42として同表7に示した基剤を用いて実施例27〜30同様に組成物を調製し、家兎への投与を行った。ここで、表7記載の水吸収性でかつ水難溶性の基剤の90重量%以上の粒子の平均粒子径は50〜350μmと、水吸収性でかつゲル形成性の基剤の90重量%以上の粒子の平均粒子径は10〜100μmとしたものをそれぞれ用いた。
得られた最高血中濃度並びにその時間を表7に示す。実施例27〜30が、著しく高い最高血中濃度を与えるのに対し、比較例37〜42は吸収されるものの、実施例と比較して最高血中濃度が低いことがわかる。
Figure 0003634380
[実施例31〜57]
下記の表8に記載の各種の薬物について、ヒドロキシプロピルセルロースと微結晶セルロースとの重量の和にしめるヒドロキシプロピルセルロースの割合を5、10、20、30、40、50重量%とした基剤を用いた粉末状組成物を調製し、先の実施例と同様に家兎に投与してその血中濃度を放射能により測定した。
同様に各種の薬物の微結晶セルロースのみからなる粉末状組成物を調製し、家兎へ投与した。ここで微結晶セルロースはその90重量%以上の粒子の平均粒子径が50〜350μmのものを、ヒドロキシプロピルセルロースはその90重量%以上の粒子の平均粒子径が10〜100μmのものをそれぞれ使用した。微結晶セルロース単独時の最高血中濃度を1.0としたときのそれぞれの最高血中濃度の相対値を表8に示した。これより、非ペプチド・蛋白質性薬物の場合は、ヒドロキシプロピルセルロースが5〜40重量%のときに最高血中濃度の増加が著しく、特に30〜40重量%のときに最高血中濃度の増加はさらに著しい、また分子量が500以上〜1,500未満のペプチド・蛋白質性薬物の場合は、ヒドロキシプロピルセルロースが5〜30重量%のときに最高血中濃度の増加が著しく、特に20〜30重量%のときに最高血中濃度の増加はさらに著しい、また分子量が1,500以上〜30,000以内のペプチド・蛋白質性薬物の場合は、ヒドロキシプロピルセルロースが5〜20重量%のときに最高血中濃度の増加が著しく、特に10〜20重量%のときに最高血中濃度の増加はさらに著しいことがわかる。
Figure 0003634380
[実施例58〜60及び比較例43〜48]
性ステロイドホルモンの一つであるジプロピオン酸エストラジオール(和光純薬工業(株)社製)10mgに、表9に記載した粒度にあらかじめ調製した微結晶セルロース(旭化成社製:Avicel PH101)およびヒドロキシプロピルセルロース(日本曹達社製:HPC−H)をそれぞれ140mg、および60mgづつ混合し、滑択剤としてステアリン酸マグネシウム0.21mgを加え、粉末組成物を調整した(実施例58〜60および比較例43〜48)。
これらの組成物を白色在来種雄性家兎(体重2.5〜3.0kg)の鼻腔内に粉末投与器(帝人社製:パブライザー)にて組成物の投与量が、2mg/kgとなるように投与した。一定時間後に耳静脈より採血し、血中のジプロピオン酸エストラジオールをRIA法により測定した。結果を表9に示す。水吸収性でかつ水難溶性の基剤である微結晶セルロースの粒度が、その90%重量が50〜350μmにあり、水吸収性でかつゲル形成性の基剤であるヒドロキシプロピルセルロースの粒度が、その90重量%が10〜100μmの場合(実施例58)に、他の場合(比較例43〜48)よりも高い最高血中濃度を示し、さらに水吸収性でかつ水難溶性の基剤である微結晶セルロースの粒度が、その90%重量が50〜350μmにあり、水吸収性でかつゲル形成性の基剤であるヒドロキシプロピルセルロースの粒度が、その90重量%が20〜50μmの場合(実施例59)およびに水吸収性でかつ水難溶性の基剤である微結晶セルロースの粒度が、その90%重量が100〜250μmにあり、水吸収性でかつゲル形成性の基剤であるヒドロキシプロピルセルロースの粒度が、その90重量%が20〜50μmの場合(実施例60)さらに著しい最高血中濃度を示し、この組成物は、著しく吸収性を改善し最高血中濃度を上昇させていることがわかる。
Figure 0003634380
[実施例61〜63及び比較例49〜54]
カルシトニン類の一つであるサケカルシトニン(Bachem社製)0.10mgに、表10に記載した粒度にあらかじめ調製した微結晶セルロース(旭化成社製:Avicel PH101)およびヒドロキシプロピルセルロース(日本曹達社製:HPC−H)をそれぞれ120mg、および30mgづつ混合し、滑択剤としてステアリン酸マグネシウム0.16mgを加え、粉末組成物を調製した(実施例61〜63および比較例49〜54)。
これらの組成物を白色在来種雄性家兎(体重2.5〜3.0kg)の鼻腔内に粉末投与器(帝人社製:パブライザー)にて組成物の投与量が、0.6mg/kgとなるように投与した。一定時間後に耳静脈より採血し、血中のサケカルシトニンをRIA法により測定した。結果を表10に示す。微結晶セルロースが、その90重量%以上の粒子の平均粒子径が50〜350μmにあり、ヒドロキシプロピルセルロースが、その90重量%以上の粒子の平均粒子径が10〜100μmの場合(実施例61)に、他の場合(比較例49〜54)よりも高い最高血中濃度を示し、さらに微結晶セルロースが、その90重量%以上の粒子の平均粒子径が100〜250μmにあり、ヒドロキシプロピルセルロースが、その90重量%以上の粒子の平均粒子径が10〜100μmの場合(実施例62)、およびに微結晶セルロースが、その90重量%以上の粒子の平均粒子径が100〜250μmにあり、ヒドロキシプロピルセルロースが、その90重量%以上の粒子の平均粒子径が20〜50μmの場合(実施例63)、さらに著しい最高血中濃度を示し、実施例の組成物は、著しく吸収性を改善し最高血中濃度を上昇させていることがわかる。また微結晶セルロース及びヒドロキシプロピルセルロースの90重量%以上の粒子の平均粒子径が20〜150μmの場合(比較例49)には、微結晶セルロース単独の場合(比較例54)に比べ最高血中濃度での差は認められず、若干の持続性が認められた。また、微結晶セルロースの90重量%以上の粒子の平均粒子径を20〜50μm、ヒドロキシプロピルセルロースの90重量%以上の粒子の平均粒子径を100〜250μmとして組成物を調製した場合(比較例51)、微結晶セルロース単独に比べ最高血中濃度の著しい低下が確認された。
Figure 0003634380
[実施例64、65及び比較例55〜57]
黄体形成ホルモン放出ホルモン類の一つであるリュープロライド(Buchem社製)10mgに、その90重量%以上の粒子の平均粒子径を50〜350μmに調製した微結晶セルロース(旭化成社製:Avicel PH101)およびその90重量%以上の粒子の平均粒子径を10〜100μmに調製したヒドロキシプロピルセルロース(日本曹達社製:HPC)をそれぞれ160mg、および40mgづつ混合し、滑択剤としてステアリン酸マグネシウム0.21mgを加え、粉末組成物を調整した(実施例64、65および比較例55〜57)。ただし、使用したヒドロキシプロピルセルロースの粘度は2%水溶液で2.0〜2.9cpsのもの(比較例55)、3.0〜5.9cpsのもの(比較例56)、6.0〜10.0cpsのもの(比較例57)、150〜400cpsのもの(実施例64)、および1000〜4000cps(実施例65)のものを使用した。これらの組成物(実施例64、65、比較例55〜57)を白色在来種雄性家兎(体重2.5〜3.0kg)の鼻腔内に粉末投与器(帝人社製:パブライザー)にて組成物の投与量が、2.5mg/kgとなるように投与した。一定時間後に耳静脈より採血し、血中のリュープロライドをRIA法により測定した。結果を表11に示す。ヒドロキシプロピルセルロールの粘度が150cps以上の時に、著しく吸収性を改善し最高血中濃度を上昇させていることがわかる。
Figure 0003634380
[実施例66及び比較例58〜60]
ペプチド・蛋白質性薬物のモデル化合物となり得る親水性多糖のFITC−dextran(Sigma社製、平均分子量4400)10mgに、表12に記載したような平均粒子径をその90重量%以上の粒子がもつ、ヒドロキシプロピルセルロース(日本曹達社製:HPC)、微結晶セルロース(旭化成社製:Avicel PH101)をそれぞれ19mg、171mgづつ混合(実施例66、比較例58、59)、もしくは、微結晶セルロース(旭化成社製:Avicel PH101)のみ190mgを混合(比較例60)し、粉末混合物を調製した。
これらの組成物を白色在来種雄性家兎(体重3kg)の鼻腔内に粉末投与器(帝人社製:パブライザー)にて組成物の投与量が4mg/kgとなるように投与した。一定時間後に耳静脈より採血し、血中のFITC−dextran(FD4)濃度(ng/ml)をHPLCにより測定した。結果を図1に示す。
水吸収性でかつ水難溶性の基剤である微結晶セルロースに、その11重量%の水吸収性でかつゲル形成性の基剤であるヒドロキシプロピルセルロースを組み合わせることにより、微結晶セルロースのみよりも最高血中濃度を向上させることができ、さらにはヒドロキシプロピルセルロースの平均粒子径を38〜50μmとした本発明の組成物により、さらに有意に最高血中濃度を向上させることができることがわかる。
Figure 0003634380
[実施例67、68及び比較例61〜63]
低分子薬物のモデル化合物として5−カルボキシフルオレセイン(Sigma社製、分子量376.3)を用い、これを5mgに、その90重量%以上の粒子が表13に記載したような平均粒子径を持つ、ヒドロキシプロピルセルロース(日本曹達社製:HPC)、微結晶セルロース(旭化成社製:Avicel PH101)をそれぞれ100mg、400mgずつ混合し、粉末状組成物を調製した(実施例67、68、比較例61〜63)。
これらの組成物を日本白色在来種雄性家兎(体重2.5kg)の鼻腔内に粉末投与器(帝人社製:パブライザー)にて組成物の投与量が2.5mg/kgとなるように投与した。一定時間後に耳静脈より採血し、血中の5−カルボキシフルオレセイン濃度をHPLCにより測定した。結果を表13に示す。
表13から本発明の組成物が有意に血中濃度を向上させることがわかる。
Figure 0003634380
[実施例69〜71および比較例64、65]
カルシトニン類の一つであるサケカルシトニン(Bachem社製)と、その90重量%以上の粒子の平均粒子径を10〜350μmに調製した微結晶セルロース(旭化成社製:Avicel PH101)、及びその90重量%以上の粒子の平均粒子径が10〜350μmに調製したヒドロキシプロピルセルロース(日本曹達社製:HPC)を用い以下の方法により組成物を作成した(実施例69〜71および比較各例64、65)。
サケカルシトニン0.10mgと微結晶セルロース120mgをあらかじめ乳鉢により混合し、この粉体にヒドロキシプロピルセルロース30mgを添加しボールミルにより混合した(実施例69)。サケカルシトニン0.10mgと微結晶セルロース120mgを100mlの水に加えて分散させ凍結乾燥後、乳鉢上で粉砕しその90重量%以上の粒子の平均粒子径が10〜350μmとなるように篩過し、この後ヒドロキシプロピルセルロース30mgを乳鉢上で混合した(実施例70)。サケカルシトニン0.10mgと微結晶セルロース120mg、ヒドロキシプロピルセルロール30mgを同時にボールミルで混合した(実施例71)。サケカルシトニン0.10mgとヒドロキシプロピルセルロース30mgを乳鉢上で混合し、この後結晶セルロース120mgを添加しボールミルにより混合した(比較例64)。サケカルシトニン0.10mgとヒドロキシプロピルセルロース30mgを100mlの水に溶解させ凍結乾燥後、乳鉢上で粉砕しその90重量%以上の粒子の平均粒子径が10〜350μmとなるように篩過し、この後微結晶セルロース120mgをボールミルにより混合した(比較例65)。
これらの製法により得られた組成物を(実施例69〜71、比較例64、65)を白色在来種雄性家兎(体重2.5〜3.0kg)の鼻腔内に粉末投与器(帝人社製:パブライザー)にて組成物の投与量が、0.6mg/kgとなるように投与した。一定時間後に耳静脈より採血し、血中のサケカルシトニンをRIA法により測定した。結果を表14に示す。これより、本発明の組成物(実施例69〜71)を投与した場合には著しい最高血中濃度の上昇が認められたのに対して、比較例64および65の組成物を投与した場合、著しい最高血中濃度の上昇は認められないことが明らかとなった。
Figure 0003634380
[実施例72〜74及び比較例66、67]
低分子薬物のモデル化合物である5−カルボキシフルオレセイン(Sigma社製)と、その90重量%以上の粒子の平均粒子径を10〜150μmに調製した微結晶セルロース(旭化成社製:Avicel PH101)、及びその90重量%以上の粒子の平均粒子径を10〜350μmに調製したヒドロキシプロピルセルロース(日本曹達社製:HPC−H)を用い以下の方法により、粉末状組成物を調製した(実施例72〜74、および比較例66、67)。
5−カルボキシフルオレセイン5mgと、微結晶セルロース350mg、ヒドロキシプロピルセルロース150mgを秤量し、同時にハイスピードミキサーで混合した(実施例72)。5−カルボキシフルオレセイン5mgと、微結晶セルロース350mgを乳鉢により混合し、次いでヒドロキシプロピルセルロース150mgを添加しクロスロータリーミキサーにより混合した(実施例73)。5−カルボキシフルオレセイン5mgと、微結晶セルロース350mgを10mlの精製水中に溶解分散させ、凍結乾燥後得られたケーキを粉砕し、その平均粒子径が10−350μmとなるように篩過した後、280mg秤量し、次いでヒドロキシプロピルセルロース120mgを添加しボールを使用しないボールミルにより混合した(実施例74)。
5−カルボキシフルオレセイン5mgと、微結晶セルロース350mg、ヒドロキシプロピルセルロース150mgを秤量し、同時にボールを使用しないボールミルで混合した(比較例66)。5−カルボキシフルオレセイン5mgと、ヒドロキシプロピルセルロース150mgを10mlの精製水中に溶解分散させ、凍結乾燥後得られたケーキを粉砕し、その平均粒子径が10−350μmとなるように篩過した後、90mg秤量し、次いで微結晶セルロース210mgを添加しボールを使用しないボールミルにより混合した(比較例67)。
これらの製法により得られた組成物を日本白色在来種家兎(雄性、体重2.5kg)の鼻腔内に粉末投与器(帝人社製:パブライザー)にて組成物の投与量が、7.5mgとなるように投与した。一定時間後に耳静脈により採血し、血中の5−カルボキシフルオレセイン濃度をHPLCにより測定した。結果を表15に示す。これより、本発明の組成物である実施例72〜74を投与した場合、比較例に比べ著しく高い血中濃度が得られることが明らかとなった。
Figure 0003634380
[実施例75〜77及び比較例68、69]
脂溶性低分子薬物のモデル化合物であるフルオレセイン(和光純薬社製)と、その90重量%以上の粒子の平均粒子径を10−360μmに調製した微結晶セルロース(旭化成社製:Avicel PH101)、及びその90重量%以上の粒子の平均粒子径を10−350μmに調製したヒドロキシプロピルセルロース(日本曹達社製:HPC−H)を用い以下の方法により、粉末状組成物を調製した(実施例75〜77、および比較例68、69)。
フルオレセイン5mgと、微結晶セルロース400mg、ヒドロキシプロピルセルロース100mgを秤量し、同時にパワフルオートミキサーで混合した(実施例75)。フルオレセイン5mgと、微結晶セルロース400mgを乳鉢により混合し、次いでヒドロキシプロピルセルロース100mgを添加しボールを使用しないボールミルにより混合した(実施例76)。フルオレセイン5mgと、微結晶セルロース400mgを10mlのエタノール中に溶解分散させ、蒸発乾固後得られた粉体を再粉砕し、その平均粒子径が10−350μmとなるように篩過した後、320mg秤量し、次いでヒドロキシプロピルセルロース80mgを添加しボールを使用しないボールミルにより混合した(実施例77)。
フルオレセイン5mgと、微結晶セルロース400mg、ヒドロキシプロピルセルロース100mgを秤量し、同時にボールを使用しないボールミルで混合した(比較例68)。フルオレセイン5mgと、ヒドロキシプロピルセルロース100mgを10mlのエタノール中に溶解分散させ、蒸発乾固後得られたフィルムを粉砕し、その平均粒子径が10−350μmとなるように篩過した後、80mg秤量し、次いで微結晶セルロース320mgを添加しボールを使用しないボールミルにより混合した(比較例69)。
これらの製法により得られた組成物を日本白色在来種家兎(雄性体重2.5kg)の鼻腔内に粉末投与器(帝人社製:パブライザー)にて組成物の投与量が、7.5mgとなるように投与した。一定時間後に耳静脈より採血し、血中のフルオレセイン濃度をHPLCにより測定した。結果を表16に示す。これより、本発明の組成物である実施例75〜77を投与した場合、比較例に比べ著しく高い血中濃度が得られることが明らかとなった。
Figure 0003634380

Claims (13)

  1. (1)▲1▼.薬物と、
    ▲2▼.ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、メチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、およびカルボキシメチルセルロースナトリウムからなる群から選ばれる1種または2種以上の水吸収性でかつゲル形成性の基剤と、
    ▲3▼.結晶セルロース、α−セルロース、架橋カルボキシメチルセルロースナトリウム、架橋デンプン、ゼラチン、カゼイン、トラガントガム、ポリビニルポリピロリドン、キチン、およびキトサンからなる群から選ばれる1種または2種以上の水吸収性でかつ水難溶性の基剤とを含み、
    (2)該水吸収性でかつゲル形成性の基剤の量が、該水吸収性でかつ水難溶性の基剤と該水吸収性でかつゲル形成性の基剤の量の和の5〜40重量%で、
    (3)該薬物が該水吸収性でかつゲル形成性の基剤よりも該水吸収性でかつ水難溶性の基剤に偏在して分散しており、
    (4)該薬物と該水吸収性でかつ水難溶性の基剤とを有 機溶媒中で溶解、分散させ、その有機溶媒を蒸発、乾固 させることにより得られた粉体を10μm〜350μmの平 均粒子経に整粒した後、該水吸収性でかつゲル形成性の 基剤を機械的に混合することによって得られる粉末状経鼻投与組成物。
  2. 該薬物が、非ペプチド・蛋白質性薬物および分子量が30,000以内であるペプチド・蛋白質性薬物からなる群より選ばれた薬物である請求の範囲第1項に記載の粉末状経鼻投与組成物。
  3. 該非ペプチド・蛋白質性薬物が、消炎ステロイドまたは非ステロイド系消炎薬、鎮痛消炎薬、鎮咳去痰薬、抗ヒスタミン薬、抗アレルギー薬、制吐薬、睡眠導入薬、ビタミン剤、性ステロイドホルモン薬、抗腫瘍薬、抗不整脈薬、高血圧薬、抗不安薬、向精神薬、抗潰瘍薬、強心薬、鎮痛薬、気管支拡張薬、肥満治療薬、血小板凝集抑制薬、糖尿病薬、筋弛緩薬、および抗リウマチ薬からなる群より選ばれた1種または2種以上の薬物である請求の範囲第項記載の粉末状経鼻投与組成物。
  4. 該ペプチド・蛋白質性薬物が、黄体形成ホルモン放出ホルモン類、成長ホルモン放出ホルモン因子類、ソマトスタチン誘導体類、バゾプレッシン類、オキシトシン類、ヒルジン誘導体類、エンケファリン類、副腎皮質刺激ホルモン誘導体類、ブラジキニン誘導体類、カルシトニン類、インシュリン類、グルカゴン誘導体類、成長ホルモン類、成長ホルモン放出類、黄体形成ホルモン類、インシュリン様成長因子類、カルシトニン遺伝子関連ペプチド類、心房性ナトリウム利尿ペプチド誘導体類、インターフェロン類、エリスロポエチン、顆粒球コロニー形成刺激因子、マクロファージ形成刺激因子、副甲状腺ホルモン類、副甲状腺ホルモン放出ホルモン、プロラクチン、甲状腺刺激ホルモン放出ホルモン、およびアンギオテンシン類からなる群から選ばれる1種または2種以上の薬物である請求の範囲第項に記載の粉末状経鼻投与組成物。
  5. 該薬物が、その分子量500〜1,500のペプチド・蛋白質性薬物であり、該水吸収性でかつゲル形成性の基剤の量が、該水吸収性でかつ水難溶性の基剤と該水吸収性でかつゲル形成性の基剤の和の5〜30重量%である請求の範囲第項に記載の粉末状経鼻投与組成物。
  6. 該ペプチド・蛋白質性薬物が、バゾプレッシン類、黄体形成ホルモン放出ホルモン類、成長ホルモン放出因子類、ソマトスタチン誘導体類、オキシトシン類、ヒルジン誘導体類、エンケファリン類、副腎皮質刺激ホルモン誘導体類、およびブラジキニン誘導体類からなる群から選ばれる1種または2種以上の薬物である請求の範囲第項に記載の粉末状経鼻投与組成物。
  7. 該薬物が、その分子量1,500〜30,000のペプチド・蛋白質性薬物であり、該水吸収性でかつゲル形成性の基剤の量が、該水吸収性でかつ水難溶性の基剤と該水吸収性でかつゲル形成性の基剤の和の5〜20重量%である請求の範囲第項に記載の粉末状経鼻投与組成物。
  8. 該ペプチド・蛋白質性薬物が、カルシトニン類、インシュリン類、グルカゴン誘導体類、成長ホルモン類、成長ホルモン放出ホルモン類、黄体形成ホルモン類、インシュリン様成長因子類、カルシトニン遺伝子関連ペプチド類、心房性ナトリウム利尿ペプチド誘導体類、インターフェロン類、エリスロポエチン、顆粒球コロニー形成刺激因子、マクロファージ形成刺激因子、副甲状腺ホルモン類、副甲状腺ホルモン放出ホルモン、プロラクチン、甲状腺刺激ホルモン放出ホルモン、およびアンギオテンシン類、からなる群から選ばれる1種または2種以上の薬物である請求の範囲第項に記載の粉末状経鼻投与組成物。
  9. 該水吸収性でかつ水難溶性の基剤が、結晶セルロース、αーセルロース、架橋カルボキシメチルセルロースナトリウム、架橋デンプン、ゼラチン、カゼイン、トラガントガム、ポリビニルポリピロリドン、キチン、およびキトサンからなる群から選ばれる1種または2種以上の基剤である請求の範囲第1〜項のいずれか1項に記載の粉末状経鼻投与組成物。
  10. 該水吸収性でかつ水難溶性の基剤が、結晶セルロースである請求の範囲第1〜項のいずれか1項に記載の粉末状経鼻投与組成物。
  11. 該水吸収性でかつゲル形成性の基剤が、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、メチルセルロース、およびカルボキシメチルセルロースナトリウムからなる群から選ばれる1種または2種以上の基剤である請求の範囲第1〜項のいずれか1項に記載の粉末状経鼻投与組成物。
  12. 該水吸収性でかつゲル形成性の基剤が、ヒドロキシプロピルセルロースである請求の範囲第1〜項のいずれか1項に記載の粉末状経鼻投与組成物。
  13. 該ヒドロキシプロピルセルロースが、その2%水溶液での粘度が150〜4,000cpsのヒドロキシプロピルセルロースである請求の範囲第12項に記載の粉末状経鼻投与組成物。
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