JP3633309B2 - Nbr組成物 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、NBR組成物に関する。更に詳しくは、食品衛生法に適合するビア樽用のバルブやパッキン等の成形材料として有効に用いられるNBR組成物に関する。
【0002】
【従来の技術】
飲食店用あるいは家庭用のビア樽には、図1に示される如く、バルブ1やパッキン2がビア樽3とディスペンスヘッド4との間に取付けられ、矢印方向にビールを取り出せるようになっている。
【0003】
かかるバルブ材やパッキン材には、次のような特性が要求される。
(1)耐ビール性
ビールによりゴムが軟化したり、硬化劣化しないこと
あるいは、ゴム配合成分によりビールを汚染したり、臭い、味等を変化させないこと
(2)耐スチーム、耐アルカリ性
ビア樽洗浄時に用いるスチームやアルカリ水溶液によってゴムが軟化したり、硬化しないこと
あるいは、これらとの接触によりバルブ金具との接着剥れを発生させないこと
(3)耐オゾン性
ビア樽放置時にオゾンによりゴムにクラックを生じないこと
(4)耐へたり性
バルブあるいはパッキンとして用いられ、それらのシール性能保持のため、低圧縮永久歪特性を有すること
(5)食品衛生法に適合すること
(6)低コストであること
【0004】
従来この種の用途には、NBR、EPDM、シリコーンゴム等が用いられているが、上記の必要特性をすべて満足させるものはなかった。例えば、NBRでは耐ビール性(着色、臭い)、耐オゾン性に問題があり、EPDMでは耐ビール性、耐スチーム・耐アルカリ接着性に問題がみられ、更にシリコーンゴムでは耐ビール性(耐加水分解性)、耐アルカリ接着性、コスト面での問題がみられた。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、ビア樽用のバルブ材やパッキン材に要求される諸特性を同時に満足させ得る、これら材料の加硫成形用NBR組成物を提供することにある。
【0006】
【課題を解決するための手段】
かかる本発明の目的は、NBR50〜90重量%およびポリ塩化ビニルまたは塩素化ポリエチレン50〜10重量%よりなるブレンドポリマーに、(1)シリカ、(2)炭酸カルシウム、酸化カルシウムおよび水酸化カルシウムの少くとも一種および(3)有機過酸化物を配合したNBR組成物によって達成される。
【0007】
【発明の実施の形態】
NBRとポリ塩化ビニル(PVC)または塩素化ポリエチレン(CPE)は、前者が50〜90重量%、好ましくは60〜85重量%に対し、後者が50〜10重量%、好ましくは40〜15重量%の割合で用いられる。後者のブレンド割合がこれよりも少ないと、耐ビール性や耐オゾン性に欠けるようになり、一方これ以上の割合で用いられると、特に耐へたり性の低下が著しくなる。
【0008】
これら各成分からなるブレンドポリマーは、熱ニーダを用いてポリマー同士を均一に混合分散させることにより調製され、場合によっては市販のポリマーブレンド物をそのまま使用することもできる。これらのブレンドポリマーには、それの100重量部当り、シリカが約5〜50重量部、好ましくは約10〜40重量部、前記カルシウム化合物が約1〜20重量部、好ましくは約3〜15重量部、また有機過酸化物が約1〜5重量部、好ましくは約1.5〜4.5重量部の割合でそれぞれ用いられる。
【0009】
シリカとしては、粒径が約30μm以下の合成シリカまたは天然シリカが用いられる。シリカの配合は、ビール、スチーム、アルカリ水溶液等各種液体中への浸せき時の接着性の大幅な改善に有効に作用する。また、カルシウム化合物の配合も、同様に各種液体中への浸せき時の接着性を改善させる。
【0010】
また、有機過酸化物としては、ジクミルパーオキサイド、2,5−ジメチル−2,5−ジ(第3ブチルパーオキシ)ヘキサン、ベンゾイルパーオキサイド、ジラウロイルパーオキサイド、1,3−ジ(第3ブチルパーオキシイソプロピル)ベンゼン等が用いられる。ただし、その配合割合はブレンドポリマー100重量部当り5重量部以下であることが必要であり、これ以上の割合で用いられると食品衛生上問題となる(FDA §177.2600)。なお、有機過酸化物配合割合は、NBR組成物100重量部当り1.5重量%以下とされる。
【0011】
以上の各成分を必須成分とするNBR組成物中には、カーボンブラックを始めとする各種配合剤が必要に応じて必要量配合される。ただし、ビールにより抽出され易いアミン系やフェノール系の老化防止剤、含イオウ系の加硫促進剤または過酸化物の共架橋剤、ニトロソアミン類、フタル酸エステル類等の環境負荷物質となり得るものは、添加しない方がよい。また、食品衛生法に適合しないような物質、例えばCr、Co、Ni等の重金属の化合物の配合も好ましくない。
【0012】
組成物の調製は、ニーダ等を用いて行われ、それの加硫は約150〜200℃で約5〜30分間行われるプレス加硫および約120〜160℃で約1〜8時間行われるオーブン加硫(二次加硫)によって行われる。
【0013】
【発明の効果】
コスト面からみて好ましい材料であるNBRに、ポリ塩化ビニルまたは塩素化ポリエチレンをポリマーブレンドすることにより、ビールにより抽出され易く、臭いや着色の原因となる老化防止剤を用いることなく、耐オゾン性を向上、維持させることができ、しかもポリマーの極性を上げることによりビールに対する膨潤性を抑え、更に耐スチーム性、耐アルカリ性を向上させている。
【0014】
また、シリカとカルシウム化合物とを用いることにより、バルブ金具への接着性を向上させることが可能であり、耐スチーム・耐アルカリ接着性を飛躍的に向上させる。更に、加硫剤として有機過酸化物を用いることにより、従来のイオウ加硫系で問題となっていたビールの汚染や臭いを防止し、あるいはポリ塩化ビニルや塩素化ポリエチレンのブレンドに伴う圧縮永久歪特性の低下を改善することができる。
【0015】
これらの各成分に加えて、食品衛生法に適合する配合成分を用いることにより、ビア樽用のバルブまたはパッキンの成形材料として好適に用いられるNBR組成物を得ることができる。
【0016】
【実施例】
次に、実施例について本発明を説明する。
【0017】
実施例1
NBR/PVC(重量比70:30)ドライブレンドポリマー〔日本ゼオン製品ニポールP−70F;63 ML1+4(100℃)〕100部(重量、以下同じ)に、
を加え、1Lニーダを用いて混練し、次いで10インチオープンロールを用いてジクミルパーオキサイド(日本油脂製品パークミルD)2.2部を加え、厚さ3mmの未加硫ゴムシートを作成した。
【0018】
この未加硫ゴムシートを、170℃、15分間プレス加硫し、次いで140℃、3時間のオーブン加硫(二次加硫)を行って、150×150×2mmの加硫ゴムシートを得た。
【0019】
また、SUS304板(25×60×2mm)をアルカリ脱脂、ショットブラスト処理および接着剤(モートンインターナショナル製品シクソン715)塗布処理した後、上記と同一条件下でプレス加硫、およびオーブン加硫して、ゴム積層金属板を得た。
【0020】
得られた加硫ゴムシートおよびゴム積層金属板について、次の各項目の試験が行われた。
【0021】
硬さ、引張強さ、伸び、圧縮永久歪:JIS K−6301準拠
ビール浸せき試験:70℃のビールに10日間浸せきした後の硬さ変化、引張強さ変化率、伸び変化率、体積変化率および臭い、着色、味の変化の有無
耐オゾン性試験:50pphm、20%伸長、40℃、168時間
接着性試験:70℃のビール、130℃のスチーム、40℃の5%NaOH水溶液、70℃の水、40℃のエタノール、40℃の2%リン酸水溶液または130℃の空気中に70時間浸せきまたは放置した後、ゴム部をペンチにて剥離し、そのゴム残率を測定
【0022】
比較例1
実施例1において、酸化カルシウムが用いられなかった。
【0023】
比較例2
実施例1において、シリカが用いられなかった。
【0024】
比較例3
実施例1において、有機過酸化物の代りに、イオウ0.5部、テトラメチルチウラムジスルフィド2部およびジベンゾチアジルジスルフィド3部が用いられた。
【0025】
以上の実施例1および比較例1〜3における試験結果は、次の表1に示される。
【0026】
実施例2
NBR〔日本ゼオン製品ニポールDN206;CN含量33%、63 ML1+4(100℃)〕75部およびPVC(日本ゼオン製品ゼオン103EP;平均重合度1050)25部を3L熱ニーダ(温度150℃)で約10〜20分間混練し、排出後10インチオープンロールで厚さ3mmのシートとしたポリマーブレンド物に、
シリカ(アクチジルVM56) 25部
炭酸カルシウム 10部
N772カーボンブラック 50部
酸化亜鉛 3部
ステアリン酸 0.5部
パラフィンワックス 0.5部
ジ(ブトキシエトキシエチル)アジペート 15部
を加え、以下実施例1と同様に未加硫ゴムシートの作製、加硫ゴムシートの作製、ゴム積層金属板の作製および各種試験が行われた。但し、ジクミルパーオキサイドは2.5部に変更して用いられた。
【0027】
比較例4
実施例2において、NBR量を100 部に変更し、PVCが用いられなかった。
【0028】
比較例5
実施例2において、NBR量を40部に、PVC量を60部にそれぞれ変更したポリマーブレンド物が用いられた。
【0029】
実施例2および比較例4〜5における試験結果は、次の表2に示される。
【0030】
実施例3
NBR(ニポールDN206)80部およびCPE(ダイソー製品ダイソーCPE K-130;塩素含有量29%)20部を3L熱ニーダ(温度150℃)で約10〜20分間混練し、排出後10インチオープンロールで厚さ3mmのシートとしたポリマーブレンド物に、
シリカ(日本シリカ製品ニップシールVN3LP:粒径平均16nm) 20部
水酸化カルシウム 8部
酸化カルシウム 2部
N772カーボンブラック 60部
酸化亜鉛 2部
ステアリン酸 0.5部
パラフィンワックス 1部
ジ(ブトキシエトキシエチル)アジペート 20部
を加え、以下実施例1と同様に未加硫ゴムシートの作製、加硫ゴムシートの作製、ゴム積層金属板の作製および各種試験が行われた。但し、ジクミルパーオキサイドの代わりに、2,5-ジメチル-2,5-ジ(第3ブチルパーオキシ)ヘキサン(日本油脂製品パーヘキサ25B)が2部用いられた。
【0031】
比較例6
実施例3において、NBR量を95部に、CPE量を5部にそれぞれ変更したポリマーブレンド物が用いられ、更に、N-フェニル-N´-イソプロピルパラフェニレンジアミン2部を配合したものが用いられた。
【0032】
比較例7
実施例3において、NBR量を20部に、CPE量を80部にそれぞれ変更したポリマーブレンド物が用いられた。
【0033】
比較例8
実施例3において、NBR量を80部に、CPE量を20部にそれぞれ変更したポリマーブレンド物が用いられ、シリカ、水酸化カルシウムおよび酸化カルシウムは用いられなかった。
【0034】
実施例3および比較例6〜8における試験結果は、次の表3に示される。
【0035】
これらの結果をまとめると次のようになる。
【0036】
(1)本発明に係るゴム組成物は、圧縮永久歪特性、耐ビール性、耐オゾン性、および接着性が良好でかつ食品衛生法に適合するものであり、ビア樽用バルブまたはパッキン材として好適に用いることができる。
(2)比較例1、2および8は、耐ビール性、耐スチーム・アルカリ接着性等が悪く実用に耐えない。
(3)比較例3はビール浸せき後、ビールに臭いと苦みが発生した。
(4)比較例4は耐オゾン性が悪く、試験開始後8時間でオゾンクラックが発生した。
(5)比較例5は圧縮永久歪が悪く、シール性能に劣る。
(6)比較例6は耐オゾン性が悪く、更にビール浸せき後ビールの変色がみられた。
(7)比較例7は圧縮永久歪が悪く、また接着性も劣っていた。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係るNBR組成物から加硫成形されたバルブおよびパッキンが用いられたビア樽の要部概略図である。
【符号の説明】
1 バルブ
2 パッキン
3 ビア樽
4 ディスペンスヘッド
Claims (2)
- NBR50〜90重量%およびポリ塩化ビニルまたは塩素化ポリエチレン50〜10重量%よりなるブレンドポリマーに、(1)シリカ、(2)炭酸カルシウム、酸化カルシウムおよび水酸化カルシウムの少くとも一種および(3)有機過酸化物を配合してなり、ビア樽用のバルブまたはパッキンの成形材料として用いられるNBR組成物。
- 請求項1記載のNBR組成物から加硫成形されたビア樽用のバルブまたはパッキン。
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