JP3631571B2 - ポリマー用改質剤 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明はポリマー用の改質剤に関する。より詳細には、本発明は、ポリエステル系重合体ブロックと特定の付加重合体ブロックを有するブロック共重合体からなる汎用性のあるポリマー用改質剤に関するものであり、本発明の改質剤は種々のポリマーに対してそれらの性質の改良に有効に用いることができ、本発明の改質剤を各種ポリマーに配合することによって、各種ポリマーの耐衝撃性、引張強度、引張伸び、耐熱性、塗装性、耐候性、弾性、反撥弾性、流動性、寸法安定性、耐薬品性などを向上させることができる。
【0002】
【従来の技術】
ポリマーの改質技術は、分子設計に基づく新規なポリマーの開発に比べて、開発経費や開発時間などが大幅に低減できるという利点を有しており、そのため自動車部品、電気・電子部品、機械部品用のポリマーをはじめとして、多くの分野でポリマーの改質に関する研究が盛んに行われている。ポリマーの改質技術のうちでも、有機重合体などの高分子改質剤を被改質ポリマー中にブレンドする方法が、改質剤の成形品表面へのブリードアウトが少なく、しかも設備、手間、時間などの点でも有利に実施できることから重要な位置を占めている。
【0003】
しかしながら、多種類のポリマーに対して共通して使用できる汎用性のある高分子改質剤は極めて少なく、特定のポリマーに対しては改質作用を示すが、別のポリマーに配合した場合には流動性の低下やゲル化などが生じてその改質作用を示さず、むしろ物性低下を招くものが多い。
例えば、ポリマー用の高分子改質剤としては、プロピレン重合体中で(メタ)アクリル酸エステル、(メタ)アクリロニトリル、ビニルエステルなどの単量体と共に分子内にエーテル結合および/またはエステル結合を有する特定のラジカル重合性有機過酸化物単量体を重合してなるグラフト化前駆体またはそのグラフト化物が提案されている(特開昭63−270713号公報、特開昭63−312305号公報および特開昭63−312306号公報)。しかしながら、これらの改質剤は分子中に複数の官能基を有しているために、それを配合するポリマーの種類によっては、流動性の低下やゲル化の発生などの問題がある。
また、芳香族ビニル系重合体ブロックとポリエステルに親和性のある重合体ブロックを有するブロック共重合体からなる樹脂用改質剤が提案されている(特開平2−199127号公報)。しかし、この樹脂用改質剤はオレフィン系重合体などに対しては充分な改質作用をもたず、多種類のポリマーに対して汎用性のある改質剤であるとは言えない。
【0004】
そのため、多種類のポリマーに対して共通して使用でき、しかも被改質ポリマー中に配合したときにポリマー組成物の流動性の低下やゲル化を発生せず、取り扱い性に優れる汎用性のあるポリマー用改質剤が求められてきたが、そのような要望を充分に満たすポリマー用改質剤は未だ得られていないのが現状である。
【0005】
さらに上記とは別に、本発明者らは、汎用性のあるポリマー用の改質剤に関する研究と並行して、ポリエステル系樹脂の物性向上などについて長年研究を行ってきた。そして、そのような研究の一環として、ポリエステル系樹脂および特定の付加重合系ブロック共重合体を含有する重合体組成物中に、ポリエステルブロックと特定の付加重合系共重合体ブロックを有するブロック共重合体(これを「ポリエステル系ブロック共重合体(イ)」ということがある)をさらに含有させると、ポリエステル系樹脂と該特定の付加重合系ブロック共重合体との相溶性が向上して、ポリエステル系樹脂が本来有する特性、特に高強度やその他の優れた力学的特性、良好な耐熱性、耐薬品性、電気的特性、成形性などの特性と、該特定の付加重合系ブロック共重合体が有する耐衝撃性という両方の特性を備えるポリエステル系樹脂組成物が得られることを見出して先に出願した(特開平8−127710号公報)。
【0006】
そして、本発明者らによる上記の特開平8−127710号の発明がなされた当時には、本発明者らは、上記したポリエステル系ブロック共重合体(イ)が、ポリエステル系樹脂と付加重合系ブロック共重合体の両方を含有する組成物において、ポリエステル系樹脂と該付加重合系ブロック共重合体との間の相溶性の向上剤として機能していると認識していた。そのため、該特開平8−127710号の発明で用いているポリエステル系ブロック共重合体(イ)が、該特定の付加重合系ブロック共重合体が存在しない系において、それ単独でポリエステル系樹脂の改質作用を有するという知見はその当時には得られておらず、まして該ポリエステル系ブロック共重合体(イ)がポリエステル系樹脂以外のポリマー、例えばオレフィン系重合体、スチレン系重合体、ポリカーボネート系重合体、ポリアミド系重合体、ポリフェニレンエーテル系重合体、アイオノマー系樹脂などの他のポリマーに対してそれ自体で良好な改質作用を有し、汎用性のあるポリマー用の改質剤となるという知見は全く得ていなかった。
【0007】
【発明の内容】
上記のような状況下に、本発明者らは、多種類のポリマーに対して共通して使用できる汎用性のあるポリマー用改質剤、さらには種々のポリマー中に配合した場合に流動性の低下やゲル化の発生などの問題が生じず、取り扱い性に優れるポリマー用改質剤を開発すべく種々研究を行ってきた。
また、本発明者らは、汎用性のあるポリマー用改質剤についての研究と並行して、上記した本発明者らによる特開平8−127710号の発明に関して、そのポリエステル系樹脂組成物でポリエステル系樹脂と付加重合系ブロック共重合体との間の相溶性向上用成分として用いている上記したポリエステル系ブロック共重合体(イ)の物性などについてもさらに詳細に研究を続けてきた。
【0008】
そして、上記した種々の研究の結果、上記特開平8−127710号の発明で用いているポリエステル系ブロック共重合体(イ)が、ポリエステル系樹脂と付加重合系ブロック共重合体との相溶性向上用成分として機能するだけではなく、それ自体でポリエステル系樹脂の改質作用を有し、ポリエステル系樹脂に単独で配合した場合にもポリエステル系樹脂の耐衝撃性や引張伸びなどを向上させ得るという新しい知見を得た。しかも、それだけではなく、そのポリエステル系ブロック共重合体(イ)が、ポリエステル系樹脂とは全く異なる他のポリマー、例えばオレフィン系重合体、スチレン系重合体、ポリカーボネート系重合体、ポリアミド系重合体、ポリフェニレンエーテル系重合体、アイオノマー系樹脂などの他のポリマーに対しても良好な改質作用を有し、それらのポリマーの耐衝撃性、引張強度、引張伸び、耐熱性、塗装性、耐候性、弾性、反撥弾性、流動性、寸法安定性、耐薬品性などを向上させる機能を有するという全く予想外の新しい知見を得たのであり、それらの新しい知見に基づいて本発明を完成した。
【0009】
すなわち、本発明は、ポリエステルブロック(I)と付加重合体ブロック(II)を有するブロック共重合体からなる、オレフィン系重合体、スチレン系重合体、ポリカーボネート系重合体、ポリアミド系重合体、ポリフェニレンエーテル系重合体および/またはアイオノマー系樹脂用の改質剤であって、改質剤をなす前記ブロック共重合体における付加重合体ブロック(II)が、
(i) 芳香族ビニル化合物単位から主としてなる重合体ブロック(a 1 )からなる重合体ブロック(A)と、水素添加されたポリイソプレンブロック(b 1 )および水素添加されたイソプレン/ブタジエン共重合体ブロック(b 2 )のうちの少なくとも1種からなる重合体ブロック(B)とからなる付加重合系ブロック共重合体(II−1);および、
ii 芳香族ビニル化合物単位から主としてなる重合体ブロック(C)とポリイソブチレンブロック(D)とからなる付加重合系ブロック共重合体(II−2);
のうちの少なくとも1種から誘導される付加重合体ブロックであることを特徴とする改質剤である。
【0010】
【発明の実施の形態】
以下に本発明について詳細に説明する。
本発明の改質剤は、上記のようにポリエステルブロック(I)と付加重合体ブロック(II)を有するブロック共重合体からなっている[以下、本発明の改質剤を「本発明のブロック共重合体改質剤」または「本発明のポリマー用改質剤」ということがある]。本発明のブロック共重合体改質剤では、ポリエステルブロック(I)と付加重合体ブロック(II)は化学結合によって結合されており、例えばエステル結合、アミド結合、エーテル結合などによって結合されている。
【0011】
本発明のブロック共重合体改質剤は、例えば、1個のポリエステルブロック(I)と1個の付加重合体ブロック(II)が結合しているジブロック共重合体、1個のポリエステルブロック(I)を挟んでその両側にそれぞれ1個の付加重合体ブロック(II)が結合しているトリブロック共重合体、1個の付加重合体ブロック(II)を挟んでその両側にそれぞれ1個のポリエステルブロック(I)が結合しているトリブロック共重合体、ポリエステルブロック(I)と付加重合体ブロック(II)が交互に合計で4個またはそれ以上の個数で結合しているポリブロック共重合体などの1種または2種以上からなっていることができる。
【0012】
そして上記したうちでも、本発明のブロック共重合体改質剤は、被改質ポリマーに配合した場合にその被改質ポリマーが本来有する性質を低下させることなく、耐衝撃性、引張強度、引張伸び、耐熱性、塗装性、耐候性、弾性、反撥弾性、流動性、寸法安定性、耐薬品性などの性質を向上させ得る点から、1個のポリエステルブロック(I)と1個の付加重合体ブロック(II)がブロック状に結合しているジブロック共重合体からなっていることが好ましい。
【0013】
本発明のブロック共重合体改質剤におけるポリエステルブロック(I)は、熱可塑性のポリエステル系重合体から誘導される重合体ブロックであればいずれであってもよく、例えば、ポリエチレンテレフタレート系樹脂、ポリブチレンテレフタレート系樹脂、ポリエチレンナフタレート系樹脂、ポリブチレンナフタレート系樹脂、ポリ−1,4−シクロヘキサンジメチレンテレフタレート系樹脂、ポリカプロラクトン系樹脂、p−ヒドロキシ安息香酸系ポリエステル樹脂、ポリアリレート系樹脂などのポリエステル系重合体から誘導される重合体ブロックを挙げることができる。
【0014】
上記したうちでも、本発明のブロック共重合体改質剤を被改質ポリマーにブレンドしたときに被改質ポリマーが本来有する性質を低下させることなく、耐衝撃性、引張強度、引張伸び、耐熱性、塗装性、耐候性、弾性、反撥弾性、流動性、寸法安定性、耐薬品性などの性質を向上させ得る点から、ブロック共重合体改質剤におけるポリエステルブロック(I)が、ポリエチレンテレフタレート系樹脂(以下「PET系樹脂」ということがある)およびポリブチレンテレフタレート系樹脂のうちの少なくとも一方から誘導される重合体ブロックであることが好ましく、特にポリブチレンテレフタレート系樹脂(以下「PBT系樹脂」ということがある)から誘導される重合体ブロックであることが好ましい。
【0015】
本発明のブロック共重合体改質剤におけるポリエステルブロック(I)は、その全構造単位に基づいて30モル%以下であれば必要に応じて基本構造を構成するジカルボン酸単位以外の他のジカルボン酸単位、および/または基本構造を構成するジオール単位以外の他のジオール単位を有していてもよい。
ブロック共重合体改質剤におけるポリエステルブロック(I)が含み得る他のジカルボン酸単位の例としては、テレフタル酸、イソフタル酸、フタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、1,5−ナフタレンジカルボン酸、ビス(p−カルボキシフェニル)メタン、アントラセンジカルボン酸、4,4’−ジフェニルエーテルジカルボン酸、5−スルホイソフタル酸ナトリウムなどの芳香族ジカルボン酸;アジピン酸、セバシン酸、アゼライン酸、ドデカンジオン酸などの脂肪族ジカルボン酸;1,3−シクロヘキサンジカルボン酸、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸などの脂環式ジカルボン酸;およびそれらのエステル形成性誘導体(メチルエステル、エチルエステルなどの低級アルキルエステル等)などから誘導されるジカルボン酸単位を挙げることができる。ブロック共重合体改質剤におけるポリエステルブロック(I)は、上記したジカルボン酸単位の1種のみを有していても、または2種以上を有していてもよい。
【0016】
また、本発明のブロック共重合体改質剤におけるポリエステルブロック(I)が含み得る他のジオール単位の例としては、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、2−メチルプロパンジオール、1,5−ペンタンジオールなどの炭素数2〜10の脂肪族ジオール;シクロヘキサンジメタノール、シクロヘキサンジオールなどの脂環式ジオール;ジエチレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリ−1,3−プロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコールなどの分子量6000以下のポリアルキレングリコールなどから誘導されるジオール単位を挙げることができる。ブロック共重合体改質剤におけるポリエステルブロック(I)は、上記のジオール単位の1種のみを有していても、または2種以上を有していてもよい。
【0017】
更に、本発明のブロック共重合体改質剤におけるポリエステルブロック(I)は、その全構造単位に基づいて1モル%以下であれば、例えばグリセリン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、トリメリット酸、ピロメリット酸などの3官能以上のモノマーから誘導される構造単位を有していてもよい。
【0018】
また、限定されるものではないが、本発明のブロック共重合体改質剤におけるポリエステルブロック(I)は、フェノール/テトラクロロエタン(重量比=1/1)混合溶媒中で測定したときに、その極限粘度が0.3〜1.5の範囲にあるポリエステル系重合体から誘導されたものであることが好ましい。
【0019】
そして、本発明のブロック共重合体改質剤における付加重合体ブロック(II)は、上記したように、
(i) 芳香族ビニル化合物単位から主としてなる重合体ブロック(a 1 )[以下これを「重合体ブロック(a 1 )」ということがある]からなる重合体ブロック(A)と、水素添加されたポリイソプレンブロック(b 1 )[以下これを「水添ポリイソプレンブロック(b 1 )」ということがある]および水素添加されたイソプレン/ブタジエン共重合体ブロック(b 2 )[以下これを「水添イソプレン/ブタジエン共重合体ブロック(b 2 )」ということがある]のうちの少なくとも1種からなる重合体ブロック(B)とからなる付加重合系ブロック共重合体(II−1);および、
ii 芳香族ビニル化合物単位から主としてなる重合体ブロック(C)[以下これを「芳香族ビニル重合体ブロック(C)」ということがある]とポリイソブチレンブロック(D)とからなる付加重合系ブロック共重合体(II−2);
のうちの少なくとも1種から誘導される付加重合体ブロックである。
【0020】
本発明のブロック共重合体改質剤における付加重合体ブロック(II)を構成し得る、重合体ブロック(A)と重合体ブロック(B)とからなる付加重合系ブロック共重合体(II−1)から誘導される付加重合体ブロック[以下これを「付加重合体ブロック(II−1)」ということがある]のブロック構造の例としては、下記の一般式(1)〜(4)で表されるものを挙げることができる。
【0021】
【化1】
(A−B)e (1)
(B−A)f (2)
A−(B−A’)g (3)
B’−(A−B)h (4)
[上記式中、AおよびA’はそれぞれ重合体ブロック(A)を示し、BおよびB’はそれぞれ重合体ブロック(B)を示し、e、f、gおよびhはそれぞれ独立して1以上の整数を示す。]
【0022】
上記の一般式(1)〜(4)で表される付加重合体ブロック(II−1)における反復数e、f、gおよびhはそれぞれ任意に決めることができるが、通常、1〜5の範囲内の整数であるのが好ましい。
【0023】
そして、付加重合体ブロック(II−1)としては、上記した一般式(1)〜(4)で表される付加重合体ブロックのうちでも、上記の一般式(1)においてe=1である式:A−Bで表される付加重合系ジブロックまたは上記の一般式(3)においてg=1である式:A−B−A’で表される付加重合系トリブロックがより好ましい。
【0024】
また、本発明のブロック共重合体改質剤における付加重合体ブロック(II)を構成し得る、芳香族ビニル重合体ブロック(C)とポリイソブチレンブロック(D)とからなる付加重合系ブロック共重合体(II−2)から誘導される付加重合体ブロック[以下これを「付加重合体ブロック(II−2)」ということがある]のブロック構造の例としては、下記の一般式(5)または(6)で表されるものを挙げることができる。
【0025】
【化2】
C−(D−C’)j (5)
D’−(C−D)k (6)
[上記式中、CおよびC’はそれぞれ芳香族ビニル重合体ブロック(C)を示し、DおよびD’はそれぞれポリイソブチレンブロック(D)を示し、jおよびkはそれぞれ独立して1以上の整数を示す]。
【0026】
上記の一般式(5)または(6)で表される付加重合体ブロック(II−2)におけるjおよびkはそれぞれ任意に決めることができるが、通常、1〜5の範囲内の整数であるのが好ましい。そして、上記した一般式(5)または(6)で表される付加重合体ブロック(II−2)のうちでも、上記の一般式(5)においてj=1である式:C−D−C’で表される付加重合系トリブロックまたは上記の一般式(6)においてk=1である式:D’−C−Dで表される付加重合系トリブロックであるのがより好ましい。
【0027】
付加重合体ブロック(II−1)を構成する重合体ブロック(a1)、および付加重合体ブロック(II−2)を構成することのある芳香族ビニル重合体ブロック(C)においては、それらの重合体ブロックにおける芳香族ビニル化合物単位を形成する芳香族ビニル化合物として、スチレン、α−メチルスチレン、o−メチルスチレン、m−メチルスチレン、p−メチルスチレン、2,4−ジメチルスチレン、ビニルナフタレン、ビニルアントラセンなどを挙げることができる。そのうちでも、本発明のブロック共重合体改質剤を配合した被改質ポリマーの耐衝撃性、引張強度、引張伸び、耐熱性、塗装性、耐候性、弾性、反撥弾性、流動性、寸法安定性、耐薬品性などの性質の改良効果が高い点から、重合体ブロック(a1)および/または芳香族ビニル重合体ブロック(C)はスチレン、α−メチルスチレンから構成されているのが好ましく、スチレンから構成されているのが特に好ましい。
また、重合体ブロック(a1)および芳香族ビニル重合体ブロック(C)は、1種の芳香族ビニル化合物単位から構成されていても、または2種以上の芳香族ビニル化合物単位から構成されていてもよい。
【0029】
そして、本発明のブロック共重合体改質剤で、その付加重合体ブロック(II−1)における重合体ブロック(B)の構成ブロックとなり得る水添ポリイソプレンブロック(b)は、イソプレンに由来するモノマー単位から主としてなるポリイソプレンの不飽和結合の一部または全部が水素添加されて飽和結合になっている重合体ブロックであるのが好ましい。水添ポリイソプレンブロック(b)では、その水素添加前には、イソプレンに由来する単位は、2−メチル−2−ブテン−1,4−ジイル基[−CH−C(CH)=CH−CH−;1,4−結合のイソプレン単位]、イソプロペニルエチレン基[−CH{−C(CH)=CH}−CH−;3,4−結合のイソプレン単位]および1−メチル−1−ビニルエチレン基[−C(CH)(CH=CH)−CH−;1,2−結合のイソプレン単位]からなる群より選ばれる少なくとも1種からなっているのが好ましい。
【0031】
また、付加重合体ブロック(II−1)における重合体ブロック(B)の構成ブロックとなり得る水添イソプレン/ブタジエン共重合体ブロック( 2 )は、イソプレンに由来する単位およびブタジエンに由来する単位から主としてなっているイソプレン/ブタジエン共重合体であって、且つその不飽和結合の一部または全部が水素添加によって飽和結合になっている共重合体ブロックである。水添イソプレン/ブタジエン共重合体ブロック( 2 )においては、その水素添加前には、イソプレンに由来する単位は、2−メチル−2−ブテン−1,4−ジイル基、イソプロペニルエチレン基および1−メチル−1−ビニルエチレン基からなる群より選ばれる少なくとも1種の基であり、またブタジエンに由来する単位はビニルエチレン基および/または2−ブテン−1,4−ジイル基であるのが好ましい。そして、水素添加前におけるイソプレン/ブタジエン共重合体ブロックにおけるそれらの基の割合は特に制限されない。また、水添イソプレン/ブタジエン共重合体ブロック( 2 )において、ブタジエンに由来する単位とイソプレンに由来する単位とは、ランダム状、ブロック状、テーパーブロック状のいずれの配置形態になっていてもよい。
【0032】
そして、付加重合体ブロック(II−1)の構成ブロックとなり得る水添ポリイソプレンブロック(b 1 )および水添イソプレン/ブタジエン共重合体ブロック(b 2 では、上記したように、その炭素−炭素二重結合の一部が水素添加されていても、または全部が完全に水素添加されていてもよいが、付加重合体ブロック(II−1)において、ブタジエン単位および/またはイソプレン単位における炭素−炭素間二重結合の50モル%以上、特に80モル%以上が水素添加されていること(すなわち不飽和度が50モル%以下、特に20モル%以下になっていること)が、ブロック共重合体改質剤の耐熱劣化性および耐候性が良好となる点で好ましい。
【0033】
また、本発明のブロック共重合体改質剤では、その付加重合体ブロック(II−2)におけるポリイソブチレンブロック(D)は、イソブチレン単位[−C(CH−CH−]から主としてなる重合体ブロックである。
【0034】
本発明のブロック共重合体改質剤では、付加重合体ブロック(II−1)における{重合体ブロック(A)の合計含有量}:{重合体ブロック(B)の合計含有量}、および付加重合体ブロック(II−2)における{芳香族ビニル重合体ブロック(C)の合計含有量}:{ポリイソブチレンブロック(D)の合計含有量}が、それぞれ1:9〜9:1(重量比)の範囲であるのが、ブロック共重合体改質剤の耐熱性を良好なものにする点から好ましく、それぞれが2:8〜7:3(重量比)であるのがより好ましい。
【0035】
また、本発明のブロック共重合体改質剤の付加重合体ブロック(II−1)における重合体ブロック(A)および付加重合体ブロック(II−2)における芳香族ビニル重合体ブロック(C)は、それぞれその数平均分子量が2500〜50000の範囲にあるのが好ましい。また、本発明のブロック共重合体改質剤の付加重合体ブロック(II−1)における重合体ブロック(B)および付加重合体ブロック(II−2)におけるポリイソブチレンブロック(D)の数平均分子量はそれぞれ10000〜100000の範囲にあるのが好ましい。そして、本発明のブロック共重合体改質剤の付加重合体ブロック(II−1)および付加重合体ブロック(II−2)の数平均分子量は、それぞれ12500〜150000の範囲にあるのが好ましい。
そして、本発明のブロック共重合体改質剤は、1種類または2種類以上の付加重合体ブロック(II−1)を有していても、および/または1種類または2種類以上の付加重合体ブロック(II−2)を有していてもよい。
【0036】
そして、ポリエステルブロック(I)および付加重合体ブロック(II)を有するブロック共重合体からなる本発明のブロック共重合体改質剤は、その全体の数平均分子量が12700〜300000の範囲であるのが好ましく、15000〜200000の範囲であるのがより好ましい。
【0037】
本発明のブロック共重合体改質剤の製造法は特に制限されず、例えば、ポリエステル系樹脂、およびポリエステル系樹脂と反応し得る官能基を分子中に有する付加重合体とを溶融条件下で混練し、続いて固相重合し、その結果得られるポリエステル系反応生成物からポリエステルブロック(I)と付加重合体ブロック(II)を有するブロック共重合体を抽出・回収して、そのブロック共重合体を改質剤として用いればよい。
【0038】
その際に、ポリエステル系樹脂と付加重合体との溶融混練は、単軸押出機、2軸押出機、ニーダー、バンバリーミキサーなどの溶融混練装置を用いて行うことができる。溶融混練の条件は、使用するポリエステル系樹脂や付加重合体の種類、装置の種類などに応じて適宜選択することができるが、通常、180〜300℃の温度で3〜15分間程度行うとよい。また、溶融混練後の固相重合は、ポリエステル系樹脂と付加重合体との溶融混練により得られた樹脂を固化し、粒状化した後、それを適当な固相重合反応装置に移し、予備処理として120〜180℃の温度下で乾燥や結晶化などを行い、ついで固相重合させることにより行うことができる。固相重合反応は、通常、ポリエステル系樹脂の融点よりも5〜60℃程度低い温度に保ちながら、不活性気流下または真空中で行うとよい。固相重合はバッチ方式または連続方式のいずれで行ってもよく、固相重合反応装置における滞留時間や処理温度などを適宜調節することによって、所望の重合度および反応率とすることができる。
【0039】
上記において、固相重合により得られるポリエステル系反応生成物からのポリエステルブロック(I)と付加重合体ブロック(II)を有するブロック共重合体の抽出・回収は、例えば、ポリエステル系反応生成物をヘキサフルオロイソプロパノール/クロロホルム混合溶媒に溶解させ、その溶液をテトラヒドロフラン中に注入して沈殿させ、沈殿物を回収してクロロホルムに溶解させ、そのクロロホルム溶液から不溶物を濾過などにより除去した後、そのクロロホルム溶液を濃縮、乾固してポリエステルブロック(I)と付加重合体ブロック(II)を有するブロック共重合体を固形分として回収する方法により行うことができる。
【0040】
また、ポリエステルブロック(I)と付加重合体ブロック(II)を有するブロック共重合体の製造に用いる、ポリエステル系樹脂と反応し得る官能基を有する付加重合体としては、上記した付加重合体ブロック(II)に官能基がついた構造を有する付加重合体が好ましく用いられる。その場合の官能基としては、ポリエステル系樹脂と反応し得る官能基であれば特に制限はなく、例えば、水酸基、カルボキシル基、エステル基、アミド基、アミノ基、エポキシ基、チオール基、チオエステル基、2−オキサゾリン基などの環状イミノエーテル基、無水コハク酸−2−イル基、無水コハク酸−2,3−ジイル基などの酸無水物構造を有する基などを挙げることができる。
【0041】
ポリエステル系樹脂と反応し得る官能基を有する付加重合体においては、その官能基は、付加重合体の分子主鎖や分子側鎖の途中または分子末端のいずれに位置していてもよいが、本発明のブロック共重合体改質剤をなすポリエステルブロック(I)と付加重合体ブロック(II)を有するブロック共重合体の好ましいブロック形態である、1個のポリエステルブロック(I)と1個の付加重合体ブロック(II)とが鎖状に結合したジブロック形態のブロック共重合体を形成するためには、付加重合体の末端に官能基を有しているのが好ましい。また、付加重合体における官能基の含有量は、平均して1分子当たり0.5個以上であることが好ましく、0.7〜1個であるのがより好ましい。
【0042】
本発明のブロック共重合体改質剤は、必要に応じて、ガラス繊維などの補強剤およびその表面処理剤、酸化防止剤、熱分解防止剤、紫外線吸収剤、タルクなどの結晶化核剤、結晶化促進剤、着色剤、難燃剤、充填剤、離型剤、可塑剤、帯電防止剤、加水分解防止剤、接着助剤、粘着剤、他のポリマーなどの1種または2種以上を含有していてもよい。
【0043】
本発明のブロック共重合体改質剤は、オレフィン系重合体、スチレン系重合体、ポリカーボネート系重合体、ポリアミド系重合体、ポリフェニレンエーテル系重合体および/またはアイオノマー系樹脂用の改質剤として用いられる
【0044】
本発明のブロック共重合体改質剤の被改質ポリマーへの配合量は特に制限されず、被改質ポリマーの種類、物性、用途などに応じて調節できるが、一般には、被改質ポリマー100重量部に対して本発明のブロック共重合体改質剤を2〜50重量部の割合で配合すると、その改質効果が発揮される。
【0046】
また、本発明のブロック共重合体改質剤をオレフィン系重合体に配合した場合には、オレフィン系重合体の耐衝撃性、塗装性、耐候性、引張伸び、耐薬品性などを向上させることができる。その場合に、被改質オレフィン系重合体の種類は特に制限されず、従来既知のオレフィン系重合体のいずれに対しても本発明のブロック共重合体改質剤を有効に用いることができ、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブテン−1、ポリヘキセン−1、ポリ−3−メチル−ブテン−1、ポリ−4−メチル−ペンテン−1、エチレンと炭素数3〜20のα−オレフィン(例えばプロピレン、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、1−ヘプテン、1−オクテン、1−デセン、3−メチル−1−ブテン、4−メチル−1−ペンテン、6−メチル−1−ヘプテン、イソオクテン、イソオクタジエン、デカジエンなど)の1種または2種以上との共重合体、エチレン/プロピレン/ジエン共重合体(EPDM)、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−アクリル酸共重合体などのオレフィン系重合体の改質に有効に使用することができる。そのうちでも、本発明のブロック共重合体改質剤は、ポリプロピレンの改質剤として好ましく用いられる。
そして、オレフィン系重合体に本発明のブロック共重合体改質剤を配合して改質されたオレフィン系重合体組成物を調製するに当たっては、上記したようなオレフィン系重合体の1種または2種以上の100重量部(複数のオレフィン系重合体を用いる場合はその合計)に対して、該ブロック共重合体改質剤を2〜50重量部の割合で配合するのが好ましく、3〜30重量部の割合で配合するのがより好ましい。
【0047】
また、本発明のブロック共重合体改質剤をスチレン系重合体に配合した場合には、スチレン系重合体の引張伸び、耐薬品性、耐衝撃性などを向上させることができる。その場合に、被改質スチレン系重合体の種類は特に制限されず、例えば、ポリスチレン、ABS樹脂、AS樹脂、ASS樹脂、AES樹脂、ACS樹脂、MBS樹脂、SB樹脂、HIPS樹脂などのいずれに対してもその改質のために有効に使用することができ、それらのうちでも特にABS樹脂の改質に有効である。
そして、スチレン系重合体に本発明のブロック共重合体改質剤を配合して改質されたスチレン系重合体組成物を調製するに当たっては、スチレン系重合体100重量部に対して該ブロック共重合体改質剤を2〜50重量部の割合で配合するのが好ましく、3〜30重量部の割合で配合するのがより好ましい。
【0048】
また、本発明のブロック共重合体改質剤をポリカーボネート系重合体に配合した場合には、ポリカーボネート系重合体の耐衝撃性、特に低温耐衝撃性、塗装性、弾性、引張強度、引張伸び、流動性、耐薬品性などを向上させることができる。その場合に被改質ポリカーボネート系重合体の種類は特に制限されず、従来既知のポリカーボネート系重合体のいずれに対しても有効に用いることができ、例えば、ビスフェノールA、ヒドロキノン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ペンタン、2,4−ジヒドロキシジフェニルメタン、ビス(2−ヒドロキシフェニル)メタン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)メタンなどの2価のフェノール類と、ホスゲン、ハロゲンホルメート、カーボネートエステルなどのカーボネート前駆体とから製造されるポリカーボネート系樹脂の改質剤として有効に使用することができる。
そして、ポリカーボネート系重合体に本発明のブロック共重合体改質剤を配合して改質されたポリカーボネート系重合体組成物を調製するに当たっては、ポリカーボネート系重合体100重量部に対して該ブロック共重合体改質剤を2〜50重量部の割合で配合するのが好ましく、3〜30重量部の割合で配合するのがより好ましい。
【0049】
また、本発明のブロック共重合体改質剤をポリアミド系重合体に配合した場合には、ポリアミド系重合体の耐衝撃性、弾性、引張伸び、寸法安定性などを向上させることができる。その場合にポリアミド系重合体の種類は特に制限されず、従来既知のポリアミド系重合体のいずれに対しても有効に用いることができ、例えば、ナイロン6、ナイロン66、ナイロン610、ナイロン612、ナイロン46、ナイロン11、ナイロン12などの脂肪族鎖を主体とするポリアミド類、ポリパラフェニレンテレフタルアミド、ポリメタフェニレンイソフタルアミドなどの芳香族環に直結したアミド結合を有するアラミド類などのいずれに対しても有効に用いることができる。
そして、ポリアミド系重合体に本発明のブロック共重合体改質剤を配合して改質されたポリアミド系重合体組成物を調製するに当たっては、ポリアミド系重合体100重量部に対して、該ブロック共重合体改質剤を2〜50重量部の割合で配合するのが好ましく、3〜30重量部の割合で配合するのがより好ましい。
【0050】
また、本発明のブロック共重合体改質剤をポリフェニレンエーテル系重合体に配合した場合には、ポリフェニレンエーテル系重合体の耐衝撃性、塗装性、耐薬品性などを向上させることができる。その場合にポリフェニレンエーテル系重合体の種類は特に制限されず、置換または非置換のフェニレン基が酸素を介してエーテル結合している従来既知のポリフェニレンエーテル系重合体のいずれに対しても有効に用いることができ、例えば、2,6−キシレノールを原料とするポリフェニレンエーテルなどの改質に有効に用いることができる。また、ポリフェニレンエーテルにポリスチレンを配合した変性ポリフェニレンエーテルに対しても有効に用いることができる。
そして、ポリフェニレンエーテル系重合体に本発明のブロック共重合体改質剤を配合して改質されたポリフェニレンエーテル系重合体組成物を調製するに当たっては、ポリフェニレンエーテル系重合体100重量部に対して、該ブロック共重合体改質剤を2〜50重量部の割合で配合するのが好ましく、3〜30重量部の割合で配合するのがより好ましい。
【0051】
また、本発明のブロック共重合体改質剤をアイオノマー系樹脂に配合した場合には、アイオノマー系樹脂の耐衝撃性、弾性、引張強度、引張伸び、反撥弾性などを向上させることができる。その場合に、アイオノマー系樹脂の種類は特に制限されず、従来既知のアイオノマー系樹脂のいずれに対しても有効に用いることができ、例えば、エチレン、プロピレンなどのオレフィン類やスチレンなどのような非極性単量体とα,β−不飽和カルボン酸との共重合体を金属イオンで架橋してなる従来既知のアイオノマー系樹脂の改質に有効に使用することができる。より具体的には、例えば、エチレン−アクリル酸共重合体、エチレン−メタクリル酸共重合体、エチレン−イタコン酸共重合体、エチレン−アクリル酸−メタクリル酸共重合体、エチレン−プロピレン−アクリル酸共重合体、エチレン−プロピレン−メタクリル酸共重合体などのα−オレフィン−α,β−不飽和カルボン酸共重合体をNa+,K+,Li+,Cs+,Ag+,Hg+,Cu+などの1価の金属イオン、Be2+,Mg2+,Ca2+,Sr2+,Ba2+,Cu2+,Cd2+,Hg2+,Sn2+,Pb2+,Fe2+,Co2+,Ni2+,Zn2+などの2価の金属イオン、Al3+,Fe3+,Se3+,Y3+などの3価の金属イオンの1種または2種以上で架橋してなるアイオノマー系樹脂の改質に有効に使用することができる。
そして、アイオノマー系樹脂に本発明のブロック共重合体改質剤を配合して改質されたアイオノマー系樹脂組成物を調製するに当たっては、アイオノマー系樹脂100重量部に対して、該ブロック共重合体改質剤を2〜50重量部の割合で配合するのが好ましく、3〜30重量部の割合で配合するのがより好ましい。
【0052】
さらに、本発明のブロック共重合体改質剤は、1種類の被改質ポリマー中に配合して用いる場合だけではなく、2種以上のポリマーからなるポリマー組成物中に配合して改質されたポリマー組成物を調製するのに用いることもできる。
また、本発明のブロック共重合体改質剤は、ポリマーに無機充填剤などを配合する際に、それをポリマー中に微細に分散させるための分散性向上剤などとしても有効に使用することができる。
【0053】
本発明のブロック共重合体改質剤の被改質ポリマーへの配合方法は特に制限されず、被改質ポリマーの種類や性質などに応じて適当な方法を採用して行えばよい。例えば、被改質ポリマーが熱可塑性重合体である場合には、被改質ポリマーの1種または2種以上に本発明のブロック共重合体改質剤を添加して、適当な溶融混練装置、例えば単軸押出機、二軸押出機、ニーダー、バンバリーミキサーなの混練機を使用して溶融混練することによって、本発明のブロック共重合体改質剤によって改質されて被改質ポリマー組成物を得ることができる。
また、本発明のブロック共重合体改質剤を含有する改質されたポリマー組成物の成形方法なども何ら制限されず、各々のポリマー組成物の物性などに応じて、例えば、射出成形、押出成形、プレス成形、ブロー成形、カレンダー成形、流延成形などの任意の成形法によって成形することができる。さらに、改質されたポリマー組成物の用途は成形品の製造に限られず、それぞれの被改質ポリマーの物性や用途などに応じて、例えば、塗料、接着剤、シーラント、繊維、その他の用途に用いられる。
【0054】
【実施例】
以下に本発明を実施例等により具体的に説明するが、本発明はそれにより限定されない。以下の試験例および比較試験例において、試験片の作製、衝撃強度、曲げ弾性率、引張降伏強度および引張破断伸びの測定、並びに塗装性の評価は次のようにして行った。
【0055】
試験片の作製
試験例または比較試験例で得られた重合体組成物のペレット、ポリプロピレンのペレットまたはポリカーボネートのペレットを成形材料として用いて、日精樹脂工業株式会社製の80トン射出成形機を使用して、シリンダー温度275℃および金型温度40℃の条件下で、衝撃強度測定用の試験片(寸法:長さ×厚さ×幅=64mm×12.7mm×3.2mm)、曲げ弾性率測定用および塗装性評価用の試験片(寸法:長さ×厚さ×幅=128mm×12.7mm×6.4mm)、並びに引張降伏強度と引張破断伸びの測定用のダンベル形試験片をそれぞれ作製した。
【0056】
衝撃強度の測定
上記で作製した試験片を用いて、JIS K7110に準じて、アイゾット衝撃試験器(株式会社東洋精機製作所製)を使用して、23℃または−20℃でノッチ付アイゾット衝撃値を測定した。
【0057】
曲げ弾性率の測定
上記で作製した試験片を用いて、JIS K7203に準じて、オートグラフ(株式会社島津製作所製)を使用して曲げ弾性率を測定した。
【0058】
引張降伏強度および引張破断伸びの測定
上記で作製した試験片を用いて、JIS K7113に準じて、オートグラフ(株式会社島津製作所製)を使用して引張降伏強度を測定した。
【0059】
塗装性の評価
上記で作製した試験片の表面にウレタン系塗料を塗り、110℃、1時間の条件で硬化させた。次いで、カッターナイフを用いて、その硬化塗膜に1mmの間隔で100個の碁盤目ができるように切れ目を入れ、その上にセロファン粘着テープを圧着させた後、粘着テープを強く引き剥がした。100個の碁盤目のうちで、剥がれてこなかった碁盤目(塗膜)の個数を数えて、塗装性の評価とした。
【0060】
また、以下の実施例1および実施例2で用いた水添SBIS−OHおよび水添SI−OHの内容は次のとおりである。
水添SBIS−OH
片末端に水酸基を有する、ポリスチレンブロック(数平均分子量6000)/1,3−ブタジエンとイソプレンの水添共重合体ブロック(数平均分子量28000)/ポリスチレンブロック(数平均分子量6000)からなるトリブロック共重合体(トリブロック共重合体における水酸基含有量=0.8個/分子;水素添加前のブロック共重合体におけるスチレン含量=30重量%;水素添加前の1,3−ブタジエン/イソプレンのモル比=1/1;水素添加前の1,3−ブタジエンとイソプレンとの共重合体ブロックにおける1,3−ブタジエン単位での1,4−結合量=95%、3,4−結合量=5%;水素添加された1,3−ブタジエンとイソプレン共重合体ブロック基準の不飽和度=5%;トリブロック共重合体全体の数平均分子量=40000)
【0061】
水添SI−OH
ポリスチレンブロック末端に水酸基を有する、ポリスチレンブロック(数平均分子量10000)/水素添加されたポリイソプレンブロック(数平均分子量20000)からなるジブロック共重合体(ジブロック共重合体における水酸基含有量=0.8個/分子;水素添加前のブロック共重合体におけるスチレン含量=33重量%;水素添加されたポリイソプレンブロック基準の不飽和度=5%;ジブロック共重合体全体の数平均分子量=30000)
【0062】
《実施例1》[ブロック共重合体改質剤(i)の製造]
(1) 予め乾燥しておいたポリブチレンテレフタレート(株式会社クラレ製「ハウザーS1000F」;極限粘度[η]=0.85)70重量部および上記の水添SBIS−OH30重量部を予備混合し、二軸押出機(株式会社日本製鋼所製「TEX44C」)を用いて250℃で溶融混練してペレットを製造した。このペレットを、ガス導入口、排気口、真空連結器を有する固相重合装置に移して、乾燥および結晶化のために120℃で約4時間予備処理を行った。その後、固相重合装置内の圧力を0.2mmHgに減圧し、且つ200℃まで昇温することにより固相重合反応を開始させた。約14時間後に固相重合装置の内圧を窒素ガスを導入して常圧に戻して、反応生成物を得た。
(2) 上記で得られた反応生成物を固相重合装置から取り出して、ヘキサフルオロイソプロパノール/クロロホルム(1/1容)の混合溶媒に溶解させ、その溶液をテトラヒドロフラン中に注入して沈殿を生成させ、その沈殿を回収した。それにより得られた沈殿物をクロロホルム中で加熱還流した後に濾別し、クロロホルム溶液を濃縮乾固することによって、1個のポリブチレンテレフタレートブロックと1個の水添SBIS−OHに由来する重合体ブロック(以下「水添SBISブロック」という)が結合したジブロック共重合体[以下「ブロック共重合体改質剤(i)」という]を得た。
【0063】
(3) なお、上記(2)で得られたブロック共重合体改質剤(i)が1個のポリブチレンテレフタレートブロックと1個の水添SBISブロックが結合したジブロック共重合体であることは、以下の点から確認された。
すなわち、上記(2)で得られたブロック共重合体改質剤(i)のH−NMR測定を行ったところ、ポリブチレンテレフタレートの化学構造に由来するピーク(8.1、4.1、2.2ppmのピーク)と、水添SBIS−OHの化学構造に由来するピーク(7.0、6.6、0.7〜2.0ppm)との両方を示し、かつ使用した水添SBIS−OHにおいて認められた分子末端の水酸基に隣接するメチレンプロトンのピークの化学シフトが移動していた。さらに、GPC測定を行ったところ、該(2)で得られたブロック共重合体改質剤(i)は単一の分子量を示し、かつその数平均分子量が、原料として用いたポリブチレンテレフタレートの数平均分子量および水添SBIS−OHの数平均分子量の合計にほぼ等しいものであった。したがって、それらの結果から、上記の(2)によって得られたブロック共重合体改質剤(i)は、1個のポリブチレンテレフタレートブロックと1個の水添SBISブロックとからなるジブロック共重合体であると同定された。
【0064】
《実施例2》[ブロック共重合体改質剤(ii)の製造]
水添SBIS−OHの代わりに、水添SI−OHを用いた以外は実施例1と同様にして、1個のポリブチレンテレフタレートブロックと1個の水添SI−OHに由来するブロック(以下「水添SIブロック」という)が結合したジブロック共重合体[以下「ブロック共重合体改質剤(ii)」という]を得た。このブロック共重合体改質剤(ii)が、1個のポリブチレンテレフタレートブロックと1個の水添SIブロックが結合したジブロック共重合体であることは、実施例1と同様にして確認された。
【0065】
《比較例1》[ブロック共重合体改質剤(iii)の製造]
(1) 予め乾燥しておいたポリブチレンテレフタレート(株式会社クラレ製「ハウザーS1000F」;極限粘度[η]=0.85)70重量部および片末端に水酸基を有するポリスチレン(数平均分子量15000、水酸基含量0.8個/分子)30重量部をセパラブルコルベンに仕込み、240℃で窒素気流下12時間脱水反応を行い、反応生成物を得た。
(2) 上記で得られた反応生成物を、ヘキサフルオロイソプロパノール/クロロホルム(1/1容)の混合溶媒に溶解させ、その溶液をテトラヒドロフラン中に注入して沈殿を生成させ、その沈殿を回収した。それにより得られた沈殿物を、クロロホルム中で加熱還流した後に濾別し、クロロホルム溶液を濃縮、乾固することによって、1個のポリブチレンテレフタレートブロックと1個の水酸基含有ポリスチレンに由来するブロック(以下「ポリスチレンブロック」という)が結合したジブロック共重合体[以下「ブロック共重合体改質剤(iii)」という]を得た。
【0066】
(3) なお、上記(2)で得られたブロック共重合体改質剤(iii)が1個のポリブチレンテレフタレートブロックと1個のポリスチレンブロックが結合したジブロック共重合体であることは、以下の点から確認された。
すなわち、上記(2)で得られたブロック共重合体改質剤(iii)のH−NMR測定を行ったところ、ポリブチレンテレフタレートの化学構造に由来するピーク(8.1、4.1、2.2ppmのピーク)と、水酸基含有ポリスチレンの化学構造に由来するピーク(7.0、6.6ppm)との両方を示し、かつ使用した水酸基含有ポリスチレンにおいて認められた分子末端の水酸基に隣接するメチレンプロトンのピークの化学シフトが移動していた。さらに、GPC測定を行ったところ、該(2)で得られたブロック共重合体改質剤(iii)は単一の分子量を示し、かつその数平均分子量が、原料として用いたポリブチレンテレフタレートの数平均分子量および水酸基含有ポリスチレンの数平均分子量の合計にほぼ等しいものであった。したがって、それらの結果から、上記の(2)によって得られたブロック共重合体改質剤(iii)は、1個のポリブチレンテレフタレートブロックと1個のポリスチレンブロックとからなるジブロック共重合体であると同定された。
【0067】
《試験例1〜4》
(1) ポリプロピレン(宇部興産株式会社製「J115」)に対して、上記の実施例1で得られた本発明のブロック共重合体改質剤(i)または上記の実施例2で得られた本発明のブロック共重合体改質剤(ii)を下記の表1に示す割合で予備混合した後、二軸押出機(株式会社日本製鋼所製「TEX44C」)に供給してシリンダー温度270℃の条件下に溶融混練して押し出し、冷却、切断して、ブロック共重合体改質剤を含有するポリプロピレン組成物のペレットをそれぞれ製造した。
(2) 上記(1)で得られたペレットを用いて上記した方法で試験片を作製し、その室温(23℃)における耐衝撃性、曲げ弾性率、引張降伏強度および引張破断伸びを上記した方法で測定したところ、下記の表1に示すとおりであった。
【0068】
《比較試験例1》
試験例1〜4で用いたのと同じポリプロピレンのペレットを用いて、上記した方法で試験片を作製し、その室温(23℃)における耐衝撃性、曲げ弾性率、引張降伏強度および引張破断伸びを上記した方法で測定したところ、下記の表1に示すとおりであった。
【0069】
《比較試験例2》
(1) 試験例1〜4で用いたのと同じポリプロピレンに対して、上記の比較例1で得られた本発明に含まれないブロック共重合体改質剤(iii)を下記の表1に示す割合で予備混合した後、二軸押出機(株式会社日本製鋼所製「TEX44C」)に供給してシリンダー温度270℃の条件下に溶融混練して押し出し、冷却、切断して、ブロック共重合体改質剤を含有するポリプロピレン組成物のペレットをそれぞれ製造した。
(2) 上記(1)で得られたペレットを用いて上記した方法で試験片を作製し、その室温(23℃)における衝撃強度、曲げ弾性率、引張降伏強度および引張破断伸びを上記した方法で測定したところ、下記の表1に示すとおりであった。
【0070】
【表1】
Figure 0003631571
【0071】
上記の表1の結果から、本発明のブロック共重合体改質剤(i)またはブロック共重合体改質剤(ii)をポリプロピレンに配合した試験例1〜4のポリプロピレン組成物では、ブロック共重合体改質剤を配合していない比較試験例1のポリプロピレン、本発明のブロック共重合体改質剤に包含されない比較例1で得られたブロック共重合体改質剤(iii)を配合した比較試験例2のポリプロピレン組成物に比べて、耐衝撃性が大幅に向上すると共に引張破断伸びも大幅の向上していること、したがって本発明のブロック共重合体改質剤はポリプロピレンの耐衝撃性や引張伸びなどの性質を向上させるための改質剤として極めて有効であることがわかる。
【0072】
《試験例5〜8》
(1) ポリカーボネート(帝人化成株式会社製「パンライトL1225」)に対して、上記の実施例1で得られた本発明のブロック共重合体改質剤(i)または上記の実施例2で得られた本発明のブロック共重合体改質剤(ii)を下記の表1に示す割合で予備混合した後、二軸押出機(株式会社日本製鋼所製「TEX44C」)に供給してシリンダー温度270℃の条件下に溶融混練して押し出し、冷却、切断して、ブロック共重合体改質剤を含有するポリカーボネート組成物のペレットをそれぞれ製造した。
(2) 上記(1)で得られたペレットを用いて上記した方法で試験片を作製し、その室温(23℃)および−20℃における衝撃強度、曲げ弾性率、引張降伏強度および引張破断伸びを上記した方法で測定すると共に、その塗装性を上記した方法で評価したところ、下記の表2に示すとおりであった。
【0073】
《比較試験例3》
試験例5〜8で用いたのと同じポリカーボネートのペレットを用いて、上記した方法で試験片を作製し、その室温(23℃)および−20℃における衝撃強度、曲げ弾性率、引張降伏強度および引張破断伸びを上記した方法で測定すると共に、その塗装性を上記した方法で評価したところ、下記の表2に示すとおりであった。
【0074】
【表2】
Figure 0003631571
【0075】
上記の表2の結果から、本発明のブロック共重合体改質剤(i)またはブロック共重合体改質剤(ii)をポリカーボネートに配合した試験例5〜8のポリカーボネート組成物では、ブロック共重合体改質剤を配合していない比較試験例3のポリカーボネートに比べて、その室温および低温(−20℃)における衝撃強度、曲げ弾性率、引張降伏強度および引張破断伸びが向上しており、しかも塗装性が著しく向上していること、したがって本発明のブロック共重合体改質剤はポリカーボネートの耐衝撃性、曲げ弾性率、引張強度、引張伸び、塗装性など向上させるための改質剤として極めて有効であることがわかる。
【0076】
【発明の効果】
本発明のブロック共重合体改質剤は、オレフィン系重合体、ABS系樹脂、ポリカーボネート系重合体、ポリアミド系重合体、ポリフェニレンエーテル系重合体および/またはアイオノマー系樹脂用の改質剤であり、本発明の改質剤を前記した各種ポリマーに配合することによって、それらのポリマーの耐衝撃性、引張強度、引張伸び、耐熱性、塗装性、耐候性、弾性、反撥弾性、流動性、寸法安定性、耐薬品性などを向上させることができる。
そして、本発明のブロック共重合体改質剤は、熱可塑性であって分子中に架橋し得る官能基を有していないので、取り扱い性に優れており、しかも被改質ポリマー中に配合した場合にポリマー組成物の流動性の低下、ゲル化の発生などの問題が生じず、品質の向上した被改質ポリマー組成物を得ることができる。

Claims (1)

  1. ポリエステルブロック(I)と付加重合体ブロック(II)を有するブロック共重合体からなる、オレフィン系重合体、スチレン系重合体、ポリカーボネート系重合体、ポリアミド系重合体、ポリフェニレンエーテル系重合体および/またはアイオノマー系樹脂用の改質剤であって、改質剤をなす前記ブロック共重合体における付加重合体ブロック(II)が、
    (i) 芳香族ビニル化合物単位から主としてなる重合体ブロック(a 1 )からなる重合体ブロック(A)と、水素添加されたポリイソプレンブロック(b 1 )および水素添加されたイソプレン/ブタジエン共重合体ブロック(b 2 )のうちの少なくとも1種からなる重合体ブロック(B)とからなる付加重合系ブロック共重合体(II−1);および、
    ii 芳香族ビニル化合物単位から主としてなる重合体ブロック(C)とポリイソブチレンブロック(D)とからなる付加重合系ブロック共重合体(II−2);
    のうちの少なくとも1種から誘導される付加重合体ブロックであることを特徴とする改質剤
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