JP3618429B2 - 熱可塑性重合体組成物 - Google Patents

熱可塑性重合体組成物 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、ポリエステル系樹脂、付加重合系ブロック共重合体、ポリエステル系ブロック共重合体およびタルクを含有する熱可塑性重合体組成物;前記の重合体組成物中に更に有機ポリシロキサンを含有する熱可塑性重合体組成物;並びに、これらの熱可塑性重合体組成物からなる成形品に関するものである。
本発明の熱可塑性重合体組成物およびそれからなる成形品は、耐衝撃性、剛性、強度などの力学的特性および荷重たわみ温度等の耐熱性に優れていることから、電気/電子部品、自動車部品、機械部品、その他の広範な用途に極めて有効に使用することができる。
【0002】
【従来の技術】
ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート(PBT)などのポリエステル系樹脂は、耐熱性、耐溶剤性、電気的性質、成形性などに優れており、それらの特性を活かして、単独でまたはガラス繊維などの充填材や各種の添加剤などを配合して、電気/電子部品、自動車部品、機械部品などの種々の用途に広く用いられている。しかしながら、ポリエステル系樹脂、そのうちでもポリブチレンテレフタレート系樹脂には耐衝撃性が低いという欠点があり、その改善が望まれている。
【0003】
ポリエステル系樹脂の耐衝撃性を改善する目的で提案された従来技術としては、ポリエステル系樹脂にゴム成分を混合した熱可塑性重合体組成物(特公昭46−5224号公報、特公昭46−5225号公報、特公昭46−4227号公報、特公昭46−32866号公報等)が知られている。しかしながら、一般にポリエステル系樹脂と相溶性のよい重合体は極めて少なく、ポリエステル系樹脂と通常のゴム成分との相溶性も不良であることから、ポリエステル系樹脂にゴム成分を混合した上記した従来の重合体組成物でも、多くの場合に相溶性の悪さに起因する不均一性、相間剥離などの問題が生じ、実際上はポリエステル系樹脂の耐衝撃性があまり改善されていない。
【0004】
ゴム成分含有ポリエステル系熱可塑性重合体組成物の特殊な製造方法として、特開平7−173269号公報には、ポリエステル系樹脂を製造するための重合系に、その重縮合反応が完了するまでの時期に、下記のブロック共重合体(B1’)およびブロック共重合体(B2’)からなる群から選ばれる少なくとも1種の付加重合系ブロック共重合体(B’)を、{前記のポリエステル系樹脂形成用原料から形成されるポリエステル系樹脂の理論重量}と、{ブロック共重合体(B1’)およびブロック共重合体(B2’)の合計重量}との比が98:2〜40:60となる割合で添加すること、およびそのようにして得られたポリエステル系反応生成物に更に有機ポリシロキサンを配合することが提案されている。
ブロック共重合体(B1’):
芳香族ビニル化合物単位から主としてなる重合体ブロック(a1)および水素添加された1,2−結合量が30%未満のポリブタジエンブロック(b1)からなる群から選ばれる少なくとも1種の重合体ブロック(i)と、水素添加されたポリイソプレンブロック(c)、水素添加された1,2−結合量が30〜80%のポリブタジエンブロック(b2)および水素添加されたイソプレン/ブタジエン共重合体ブロック(d)からなる群から選ばれる少なくとも1種の重合体ブロック(ii)とを含有し、且つ分子鎖末端に水酸基を有するブロック共重合体;
ブロック共重合体(B2’):
芳香族ビニル化合物単位から主としてなる重合体ブロック(a2)とポリイソブチレンブロック(e)とを含有し、且つ分子鎖末端に水酸基を有するブロック共重合体
上記の特定のゴム成分を重合系に添加する方法によれば、重合反応で得られたポリエステル系反応生成物自体または該反応生成物に更に有機ポリシロキサンを配合した組成物として、耐衝撃性の改善されたポリエステル系熱可塑性重合体組成物を得ることができる。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
一般にゴム成分はポリエステル系樹脂と比べて強度および弾性率が低いため、ポリエステル系樹脂の製造後にゴム成分を混合して得られた上記の熱可塑性重合体組成物では、ポリエステル系樹脂が本来有する優れた強度、弾性率、および荷重たわみ温度等の耐熱性が大幅に低下する。該重合体組成物に無機充填剤または結晶核剤を添加することにより、強度、弾性率および荷重たわみ温度を改善することは可能であるが、耐衝撃性が大きく低下するので、ゴム成分の添加による耐衝撃性の改善効果が相殺されてしまう。
本発明者らの検討によれば、上記の特定のゴム成分を重合系に添加する方法によって得られたポリエステル系反応生成物および該反応生成物に更に有機ポリシロキサンを配合した組成物においても、ポリエステル系樹脂単独と比較して、荷重たわみ温度等の耐熱性が低下しており、強度および弾性率が低下する傾向があることが判明した。さらに、本発明者らは、該反応生成物およびそれに更に有機ポリシロキサンを配合した組成物に対して無機充填剤または結晶核剤の添加を試みたが、通常、荷重たわみ温度の改善はほとんど認められず、耐衝撃性も低下することが判明した。
本発明の目的は、ゴム成分含有ポリエステル系熱可塑性重合体組成物において、その優れた耐衝撃性を損なうことなく、強度、弾性率などの力学的特性および荷重たわみ温度等の耐熱性を改善することによって、ポリエステル系樹脂並の優れた耐熱性と改善された耐衝撃性とを両立させたポリエステル系熱可塑性重合体組成物およびそれからなる成形品を提供することである。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記の課題を解決するために鋭意検討した結果、ポリエステル系樹脂の製造反応中に特定の付加重合系ブロック共重合体を特定の割合で添加して得られる反応生成物にタルクを混合すると、荷重たわみ温度等の耐熱性が大幅に改善され、強度、弾性率も改善されるのみならず、元の反応生成物が有していた優れた耐衝撃性がほとんど損なわれないことを見出した。一般にPBT等の結晶性ポリエステル樹脂にタルク等の無機充填剤または結晶核剤を添加すると、結晶化度の上昇に伴い成形性、強度および弾性率は上昇するが、耐衝撃性、引張伸度等の靭性が顕著に低下するので、上記の反応生成物にタルクを混合した熱可塑性重合体組成物において認められる挙動は、極めて特異なものである。
また、本発明者らは、前記の反応生成物とタルクとを含む熱可塑性重合体組成物に、更に少量の有機ポリシロキサンを混合すると、その耐衝撃性が一層向上することを見出した。
【0007】
すなわち、本発明は、第1に、
(1) ポリエステル系樹脂(A)、付加重合系ブロック共重合体(B)、ポリエステル系ブロック共重合体(C)およびタルク(D)を含有し;
(2) 付加重合系ブロック共重合体(B)が、下記のブロック共重合体(B1)およびブロック共重合体(B2)からなる群から選ばれる少なくとも1種のブロック共重合体であり;
ブロック共重合体(B1):
芳香族ビニル化合物単位から主としてなる重合体ブロック(a1)および水素添加された1,2−結合量が30%未満のポリブタジエンブロック(b1)からなる群から選ばれる少なくとも1種の重合体ブロック(i)と、水素添加されたポリイソプレンブロック(c)、水素添加された1,2−結合量が30〜80%のポリブタジエンブロック(b2)および水素添加されたイソプレン/ブタジエン共重合体ブロック(d)からなる群から選ばれる少なくとも1種の重合体ブロック(ii)とを有するブロック共重合体;
ブロック共重合体(B2):
芳香族ビニル化合物単位から主としてなる重合体ブロック(a2)とポリイソブチレンブロック(e)とを有するブロック共重合体;
(3) ポリエステル系ブロック共重合体(C)が、ポリエステルブロックと、前記のブロック共重合体(B1)およびブロック共重合体(B2)からなる群から選ばれる少なくとも1種のブロック共重合体の分子鎖に相当する化学構造を有する重合体ブロックとを有するブロック共重合体であり;
(4) {ポリエステル系樹脂(A)の重量とポリエステル系ブロック共重合体(C)中に含まれるポリエステルブロックの重量との合計量}と、{付加重合系ブロック共重合体(B)の重量とポリエステル系ブロック共重合体(C)中に含まれるブロック共重合体(B1)およびブロック共重合体(B2)からなる群から選ばれる少なくとも1種のブロック共重合体の分子鎖に相当する化学構造を有する重合体ブロックの重量との合計量}との比が、98:2〜40:60であり;そして、
(5) {ポリエステル系樹脂(A)と付加重合系ブロック共重合体(B)とポリエステル系ブロック共重合体(C)の合計重量}と、{タルク(D)の重量}との比が99.99:0.01〜99.240.76である;
ことを特徴とする熱可塑性重合体組成物である。
【0008】
本発明は、第2に、
(1) ポリエステル系樹脂(A)、付加重合系ブロック共重合体(B)、ポリエステル系ブロック共重合体(C)、タルク(D)および有機ポリシロキサン(E)を含有し;
(2) 付加重合系ブロック共重合体(B)が、前記のブロック共重合体(B1)およびブロック共重合体(B2)からなる群から選ばれる少なくとも1種のブロック共重合体であり;
(3) ポリエステル系ブロック共重合体(C)が、ポリエステルブロックと、前記のブロック共重合体(B1)およびブロック共重合体(B2)からなる群から選ばれる少なくとも1種のブロック共重合体の分子鎖に相当する化学構造を有する重合体ブロックとを有するブロック共重合体であり;
(4) {ポリエステル系樹脂(A)の重量とポリエステル系ブロック共重合体(C)中に含まれるポリエステルブロックの重量との合計量}と、{付加重合系ブロック共重合体(B)の重量とポリエステル系ブロック共重合体(C)中に含まれるブロック共重合体(B1)およびブロック共重合体(B2)からなる群から選ばれる少なくとも1種のブロック共重合体の分子鎖に相当する化学構造を有する重合体ブロックの重量との合計量}との比が、98:2〜40:60であり;
(5) {ポリエステル系樹脂(A)と付加重合系ブロック共重合体(B)とポリエステル系ブロック共重合体(C)の合計重量}と、{有機ポリシロキサン(E)の重量}との比が99.99:0.01〜95:5であり;そして、
(6) {ポリエステル系樹脂(A)と付加重合系ブロック共重合体(B)とポリエステル系ブロック共重合体(C)と有機ポリシロキサン(E)の合計重量}と、{タルク(D)の重量}との比が99.99:0.01〜99.240.76である;
ことを特徴とする熱可塑性重合体組成物である。
【0009】
本発明は、第3に、
(1) ポリエステル系反応生成物(I)とタルク(D)を含有する熱可塑性重合体組成物であって;
(2) 前記のポリエステル系反応生成物(I)が、ジカルボン酸またはそのエステル形成性誘導体とジオールを用いてポリエステル系樹脂を製造するか、或いはヒドロキシカルボン酸またはそのエステル形成性誘導体を用いてポリエステル系樹脂を製造するための重合系に、その重縮合反応が完了するまでの時期に、下記のブロック共重合体(B1’)およびブロック共重合体(B2’)からなる群から選ばれる少なくとも1種の付加重合系ブロック共重合体(B’)を、{前記のポリエステル系樹脂形成用原料から形成されるポリエステル系樹脂の理論重量}と、{ブロック共重合体(B1’)およびブロック共重合体(B2’)の合計重量}との比が、98:2〜40:60となる割合で添加して得られる反応生成物であり;
ブロック共重合体(B1’):
芳香族ビニル化合物単位から主としてなる重合体ブロック(a1)および水素添加された1,2−結合量が30%未満のポリブタジエンブロック(b1)からなる群から選ばれる少なくとも1種の重合体ブロック(i)と、水素添加されたポリイソプレンブロック(c)、水素添加された1,2−結合量が30〜80%のポリブタジエンブロック(b2)および水素添加されたイソプレン/ブタジエン共重合体ブロック(d)からなる群から選ばれる少なくとも1種の重合体ブロック(ii)とを含有し、且つ分子鎖末端に水酸基を有するブロック共重合体;
ブロック共重合体(B2’):
芳香族ビニル化合物単位から主としてなる重合体ブロック(a2)とポリイソブチレンブロック(e)とを含有し、且つ分子鎖末端に水酸基を有するブロック共重合体;そして、
(3) ポリエステル系反応生成物(I)の重量とタルク(D)の重量との比が99.99:0.01〜99.240.76である;
ことを特徴とする熱可塑性重合体組成物である。
【0010】
更に、本発明は、第4に、
(1) ポリエステル系反応生成物(I)、タルク(D)および有機ポリシロキサン(E)を含有する熱可塑性重合体組成物であって;
(2) 前記のポリエステル系反応生成物(I)が、ジカルボン酸またはそのエステル形成性誘導体とジオールを用いてポリエステル系樹脂を製造するか、或いはヒドロキシカルボン酸またはそのエステル形成性誘導体を用いてポリエステル系樹脂を製造するための重合系に、その重縮合反応が完了するまでの時期に、前記のブロック共重合体(B1’)およびブロック共重合体(B2’)からなる群から選ばれる少なくとも1種の付加重合系ブロック共重合体(B’)を、{前記のポリエステル系樹脂形成用原料から形成されるポリエステル系樹脂の理論重量}と、{ブロック共重合体(B1’)およびブロック共重合体(B2’)の合計重量}との比が、98:2〜40:60となる割合で添加して得られる反応生成物であり;
(3) ポリエステル系反応生成物(I)の重量と有機ポリシロキサン(E)の重量との比が99.99:0.01〜95:5であり;そして、
(4) {ポリエステル系反応生成物(I)と有機ポリシロキサン(E)の合計重量}と、{タルク(D)の重量}との比が99.99:0.01〜99.240.76である;
ことを特徴とする熱可塑性重合体組成物である。
【0011】
また、本発明は、第5に、上記の熱可塑性重合体組成物からなる成形品である。
【0012】
【発明の実施の形態】
以下に、本発明について詳細に説明する。
本発明の熱可塑性重合体組成物において、ポリエステル系樹脂(A)は、熱可塑性のポリエステル系樹脂であればいずれも使用でき、例えばポリエチレンテレフタレート系樹脂、ポリブチレンテレフタレート系樹脂、ポリエチレンナフタレート系樹脂、ポリブチレンナフタレート系樹脂、ポリ−1,4−シクロヘキサンジメチレンテレフタレート系樹脂、ポリカプロラクトン系樹脂、p−ヒドロキシ安息香酸系ポリエステル樹脂、ポリアリレート系樹脂などを挙げることができる。
【0013】
上記したポリエステル系樹脂のうちでも、本発明の熱可塑性重合体組成物の耐衝撃性の改善効果が特に著しくなる点などから、ポリエステル系樹脂(A)がポリエチレンテレフタレート系樹脂およびポリブチレンテレフタレート系樹脂のうちの少なくとも一方であることが好ましく、特にポリブチレンテレフタレート系樹脂(以下「PBT系樹脂」ということがある)がより好ましい。本発明の熱可塑性重合体組成物において好ましいPBT系樹脂は、テレフタル酸単位を主体とするジカルボン酸単位および1,4−ブタンジオール単位を主体とするジオール単位から主としてなり、その代表例としてはテレフタル酸単位と1,4−ブタンジオール単位のみからなるポリブチレンテレフタレート(以下「PBT」ということがある)を挙げることができる。
本発明で好ましく用いられるPBT系樹脂は、ポリブチレンテレフタレートに限定されるものではなく、全構造単位に基づいて20モル%以下であれば必要に応じて他のジカルボン酸単位および/または他のジオール単位を有していてもよい。
PBT系樹脂が含み得る他のジカルボン酸単位の例としては、イソフタル酸、フタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、1,5−ナフタレンジカルボン酸、ビス(p−カルボキシフェニル)メタン、アントラセンジカルボン酸、4,4’−ジフェニルエーテルジカルボン酸、5−スルホイソフタル酸ナトリウムなどの芳香族ジカルボン酸;アジピン酸、セバシン酸、アゼライン酸、ドデカンジオン酸などの脂肪族ジカルボン酸;1,3−シクロヘキサンジカルボン酸、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸などの脂環式ジカルボン酸;およびそれらのエステル形成性誘導体(メチルエステル、エチルエステルなどの低級アルキルエステル等)などから誘導されるジカルボン酸単位を挙げることができる。PBT系樹脂は、上記したジカルボン酸単位の1種のみを有していても、または2種以上を有していてもよい。
【0014】
また、PBT系樹脂が含み得る他のジオール単位の例としては、エチレングリコール、プロピレングリコール、ネオペンチルグリコール、2−メチルプロパンジオール、1,5−ペンタンジオール、シクロヘキサンジメタノール、シクロヘキサンジオールなどの炭素数2〜10の脂肪族ジオール;ジエチレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリ−1,3−プロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコールなどの分子量6000以下のポリアルキレングリコールなどから誘導されるジオール単位を挙げることができる。PBT系樹脂は、上記のジオール単位の1種のみを有していても、または2種以上を有していてもよい。
【0015】
更に、PBT系樹脂は全構造単位に基づいて1モル%以下であれば、例えばグリセリン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、トリメリット酸、ピロメリット酸などの3官能以上のモノマーから誘導される構造単位を有していてもよい。
【0016】
また、限定されるものではないが、ポリエステル系樹脂(A)は、フェノール/テトラクロロエタン(重量比=1/1)混合溶媒中で測定したときに、その極限粘度が0.5〜1.5の範囲にあるのが、熱可塑性重合体組成物における強度、弾性率、耐衝撃性などの力学的特性が特に優れる点から好ましい。
【0017】
次に、本発明の熱可塑性重合体組成物における付加重合系ブロック共重合体(B)は、上記したように、ブロック共重合体(B1)およびブロック共重合体(B2)からなる群から選ばれる少なくとも1種のブロック共重合体からなっており、したがって本発明の熱可塑性重合体組成物は、付加重合系ブロック共重合体(B)として、ブロック共重合体(B1)およびブロック共重合体(B2)のうちの一方のみを含有していても、また両方を含有していてもよい。
【0018】
ここで、ブロック共重合体(B1)は、上記したように、
○ 芳香族ビニル化合物単位から主としてなる重合体ブロック(a1)[以下これを「芳香族ビニル重合体ブロック(a1)」という]および水素添加された1,2−結合量が30%未満のポリブタジエンブロック(b1)[以下これを「水添ポリブタジエンブロック(b1)」という]からなる群から選ばれる少なくとも1種の重合体ブロック(i);ならびに、
○ 水素添加されたポリイソプレンブロック(c)[以下これを「水添ポリイソプレンブロック(c)」という]、水素添加された1,2−結合量が30〜80%のポリブタジエンブロック(b2)[以下これを「水添ポリブタジエンブロック(b2)」という]および水素添加されたイソプレン/ブタジエン共重合体ブロック(d)[以下これを「水添イソプレン/ブタジエン共重合体ブロック(d)」という]からなる群から選ばれる少なくとも1種の重合体ブロック(ii);をその分子中に有していればいずれでもよく、特に制限されない。しかしながら、後述するように、本発明の熱可塑性重合体組成物の製造上、ブロック共重合体(B1)は、重合体ブロック(i)および(ii)を分子中に有し且つ分子鎖末端に水酸基を有するブロック共重合体(B1’)であることが好都合である。なお、該ブロック共重合体(B1’)は、水酸基を、一方の分子鎖末端にのみ有していても、また両末端に有していてもよい。
【0019】
したがって、ブロック共重合体(B1’)としては、
(1) 重合体ブロック(i)として、芳香族ビニル重合体ブロック(a1)および水添ポリブタジエンブロック(b1)の両方を有し、重合体ブロック(ii)として、水添ポリイソプレンブロック(c)、水添ポリブタジエンブロック(b2)および水添イソプレン/ブタジエン共重合体ブロック(d)のうちの1種のみを有し、且つ分子鎖末端に水酸基を有するブロック共重合体;
(2) 重合体ブロック(i)として、芳香族ビニル重合体ブロック(a1)および水添ポリブタジエンブロック(b1)の両方を有し、重合体ブロック(ii)として、水添ポリイソプレンブロック(c)、水添ポリブタジエンブロック(b2)および水添イソプレン/ブタジエン共重合体ブロック(d)のうちの2種を有し、且つ分子鎖末端に水酸基を有するブロック共重合体;
(3) 重合体ブロック(i)として、芳香族ビニル重合体ブロック(a1)および水添ポリブタジエンブロック(b1)の両方を有し、重合体ブロック(ii)として、水添ポリイソプレンブロック(c)、水添ポリブタジエンブロック(b2)および水添イソプレン/ブタジエン共重合体ブロック(d)のすべてを有し、且つ分子鎖末端に水酸基を有するブロック共重合体;
(4) 重合体ブロック(i)として、芳香族ビニル重合体ブロック(a1)および水添ポリブタジエンブロック(b1)のうちの1種のみを有し、重合体ブロック(ii)として、水添ポリイソプレンブロック(c)、水添ポリブタジエンブロック(b2)および水添イソプレン/ブタジエン共重合体ブロック(d)のうちの1種のみを有し、且つ分子鎖末端に水酸基を有するブロック共重合体;
(5) 重合体ブロック(i)として、芳香族ビニル重合体ブロック(a1)および水添ポリブタジエンブロック(b1)のうちの1種のみを有し、重合体ブロック(ii)として、水添ポリイソプレンブロック(c)、水添ポリブタジエンブロック(b2)および水添イソプレン/ブタジエン共重合体ブロック(d)のうちの2種を有し、且つ分子鎖末端に水酸基を有するブロック共重合体;
などを挙げることができるが、好ましいブロック共重合体(B1’)としては、例えば、下記の式▲1▼〜▲4▼のうちのいずれかの式で表されるブロック共重合体を挙げることができる。
【0020】
【化1】
(X−Y)k−OH ▲1▼
(Y−X)l−OH ▲2▼
X−(Y−X’)m−OH ▲3▼
Y’−(X−Y)n−OH ▲4▼
【0021】
[式中、XおよびX’は、それぞれ独立して、芳香族ビニル重合体ブロック(a1)および水添ポリブタジエンブロック(b1)からなる群から選ばれる少なくとも1種の重合体ブロック(i)を表し、YおよびY’は、それぞれ独立して、水添ポリイソプレンブロック(c)、水添ポリブタジエンブロック(b2)および水添イソプレン/ブタジエン共重合体ブロック(d)からなる群から選ばれる少なくとも1種の重合体ブロック(ii)を表し、そして、k、l、mおよびnは、それぞれ独立して、1以上の整数を表し、OHは水酸基を表す。]
【0022】
そして、上記の式▲1▼〜▲4▼で表されるブロック共重合体においては、k、l、mおよびnが1〜5の範囲内の整数であるのが好ましい。
【0023】
ブロック共重合体(B1’)としては、上記したブロック共重合体のうちでも、上記した重合体ブロック(i)を分子中に2個以上有するものが、本発明の熱可塑性重合体組成物の耐衝撃性が特に良好になる点から好ましく、特に、下記の式▲5▼;
【0024】
【化2】
X−Y−X’−OH ▲5▼
【0025】
[式中、XおよびX’は、それぞれ独立して、芳香族ビニル重合体ブロック(a1)または水添ポリブタジエンブロック(b1)を表し、Yは水添ポリイソプレンブロック(c)、水添ポリブタジエンブロック(b2)または水添イソプレン/ブタジエン共重合体ブロック(d)を表し、OHは水酸基を表わす。]
【0026】
で表されるトリブロック共重合体がより好ましい。
【0027】
上記したブロック共重合体(B1’)を包含するブロック共重合体(B1)において、重合体ブロック(i)を構成し得る芳香族ビニル重合体ブロック(a1)は、芳香族ビニル化合物に由来する単位から主としてなる重合体ブロックであり、その場合の芳香族ビニル化合物としては、スチレン、α−メチルスチレン、o−メチルスチレン、m−メチルスチレン、p−メチルスチレン、2,4−ジメチルスチレン、ビニルナフタレン、ビニルアントラセンなどを挙げることができ、それらのうちでも、スチレン、α−メチルスチレンなどが好ましく、スチレンが特に好ましい。芳香族ビニル重合体ブロック(a1)は、1種の芳香族ビニル化合物の単位から構成されていても、または2種以上の芳香族ビニル化合物の単位から構成されていてもよい。また、芳香族ビニル重合体ブロック(a1)は、その数平均分子量が2500〜50000の範囲にあるのが、熱可塑性重合体組成物の耐衝撃性および伸度が優れたものになる点から好ましい。
【0028】
ブロック共重合体(B1)における重合体ブロック(i)を構成し得る水添ポリブタジエンブロック(b1)は、そのポリブタジエンブロックにおける1,2−結合量が30%未満、好ましくは25%以下であり、しかも不飽和結合の一部または全部が水素添加によって飽和結合にされているポリブタジエンブロックである。水添ポリブタジエンブロック(b1)を構成するポリブタジエンでは、水素添加前において、その構成単位の30モル%未満、好ましくは25モル%以下がビニルエチレン基[−CH(CH=CH)−CH−;1,2−結合のブタジエン単位]であり、残りが2−ブテン−1,4−ジイル基(−CH−CH=CH−CH−;1,4−結合ブタジエン単位)である。水添ポリブタジエンブロック(b1)における1,2−結合量が30%以上であると、熱可塑性重合体組成物の耐衝撃性が不良となる。
そして、水添ポリブタジエンブロック(b1)は、その数平均分子量が2500〜50000であるのが、熱可塑性重合体組成物の耐衝撃性、伸度などが優れたものとなる点から好ましい。
【0029】
ブロック共重合体(B1)における重合体ブロック(ii)を構成し得る水添ポリイソプレンブロック(c)は、イソプレンに由来する単位から主としてなるポリイソプレンの不飽和結合の一部または全部が水素添加されて飽和結合になっている重合体ブロックである。水添ポリイソプレンブロック(c)では、その水素添加前には、イソプレンに由来する単位は、2−メチル−2−ブテン−1,4−ジイル基[−CH−C(CH)=CH−CH−;1,4−結合のイソプレン単位]、イソプロペニルエチレン基[−CH[−C(CH)=CH]−CH−;3,4−結合のイソプレン単位]および1−メチル−1−ビニルエチレン基[−C(CH)(CH=CH)−CH−;1,2−結合のイソプレン単位]からなる群より選ばれる少なくとも1種の基であり、各単位の割合は特に限定されないが、2−メチル−2−ブテン−1,4−ジイル基の割合が80%以上であるのが耐衝撃性が良好となる点から好ましい。
そして、水添ポリイソプレンブロック(c)は、その数平均分子量が10000〜100000であるのが、熱可塑性重合体組成物の耐衝撃性、伸度などが優れたものとなる点から好ましい。
【0030】
また、ブロック共重合体(B1)における重合体ブロック(ii)を構成し得る水添ポリブタジエンブロック(b2)は、そのポリブタジエンブロックにおける1,2−結合量が30〜80%、好ましくは35〜60%であり、しかも不飽和結合の一部または全部が水素添加によって飽和結合になっているポリブタジエンブロックである。水添ポリブタジエンブロック(b2)を構成するポリブタジエンでは、水素添加前には、その構成単位の30〜80モル%、好ましくは35〜60モル%がビニルエチレン基[−CH(CH=CH)−CH−;1,2−結合のブタジエン単位]であり、70〜20モル%、好ましくは65〜40モル%が2−ブテン−1,4−ジイル基(−CH−CH=CH−CH−;1,4−結合ブタジエン単位)である。水添ポリブタジエンブロック(b2)における1,2−結合量が上記した30〜80%の範囲から外れると、耐衝撃性が不良となる。そして、水添ポリブタジエンブロック(b2)は、その数平均分子量が10000〜100000であるのが、熱可塑性重合体組成物の耐衝撃性、伸度などが優れたものとなる点から好ましい。
【0031】
また、ブロック共重合体(B1)における重合体ブロック(ii)を構成し得る水添イソプレン/ブタジエン共重合体ブロック(d)は、イソプレンに由来する単位およびブタジエンに由来する単位から主としてなっており、且つその不飽和結合の一部または全部が水素添加によって飽和結合になっている共重合体ブロックである。水添イソプレン/ブタジエン共重合体ブロック(d)においては、その水素添加前には、イソプレンに由来する単位は、2−メチル−2−ブテン−1,4−ジイル基、イソプロペニルエチレン基および1−メチル−1−ビニルエチレン基からなる群より選ばれる少なくとも1種の基であり、またブタジエンに由来する単位はビニルエチレン基および/または2−ブテン−1,4−ジイル基である。そして、水素添加前でのイソプレン/ブタジエン共重合体ブロックにおけるそれらの基の割合は、特に制限されない。また、水添イソプレン/ブタジエン共重合体ブロック(d)において、ブタジエンに由来する単位とイソプレンに由来する単位とは、ランダム状、ブロック状、テーパーブロック状のいずれの配置形態になっていてもよい。
そして、水添イソプレン/ブタジエン共重合体ブロック(d)は、その数平均分子量が10000〜100000であるのが、熱可塑性重合体組成物の耐衝撃性、伸度などが優れたものとなる点から好ましい。
【0032】
そして、本発明においては、熱可塑性重合体組成物の耐衝撃性の改善効果の点から、ブロック共重合体(B1)を構成する重合体ブロック(ii)として、水添ポリイソプレンブロック(c)および水添イソプレン/ブタジエン共重合体ブロック(d)の少なくとも一方を有しているのが好ましく、水添イソプレン/ブタジエン共重合体ブロック(d)を有しているのがより好ましい。水添イソプレン/ブタジエン共重合体ブロック(d)では、(イソプレンに由来する単位):(ブタジエンに由来する単位)のモル比が1:9〜9:1の範囲内であるのが耐衝撃性の改善の点から好ましく、3:7〜7:3の範囲であるのがより好ましい。
【0033】
また、重合体ブロック(i)を構成し得る水添ポリブタジエンブロック(b1)、並びに重合体ブロック(ii)を構成し得る水添ポリイソプレンブロック(c)、水添ポリブタジエンブロック(b2)および水添イソプレン/ブタジエン共重合体ブロック(d)では、上記したように、その炭素−炭素二重結合の一部が水素添加されていても、または全部が完全に水素添加されていてもよい。しかしながら、熱可塑性重合体組成物およびそれから得られる成形品の耐熱劣化性および耐候性を良好なものにし、且つ粘着性の発現を防止する観点から、ブロック共重合体(B1)に含まれるブタジエン由来の単位およびイソプレン由来の単位の全量に基づいて、その不飽和結合の50モル%以上、特に80モル%以上が水素添加されていて、ブロック共重合体(B1)の不飽和度が50モル%以下、好ましくは20モル%以下になるように、水添ポリブタジエンブロック(b1)、水添ポリイソプレンブロック(c)、水添ポリブタジエンブロック(b2)および水添イソプレン/ブタジエン共重合体ブロック(d)における水素添加率を調整しておくのが望ましい。
【0034】
また、ブロック共重合体(B1)における重合体ブロック(i)と重合体ブロック(ii)の割合は、重量比で1:9〜9:1であるのが、熱可塑性重合体組成物およびそれから得られる成形品の耐熱性を良好なものとし、且つ耐衝撃性の改善効果が大きくなる点から好ましく、2:8〜7:3であるのがより好ましい。
【0035】
更に、ブロック共重合体(B1)における重合体ブロック(i)の数平均分子量は2500〜50000の範囲内であるのが好ましく、また重合体ブロック(ii)の数平均分子量は10000〜100000の範囲内であるのが好ましい。そして、ブロック共重合体(B1)の数平均分子量は、15000〜150000の範囲内であるのが好ましい。
【0036】
そして、付加重合系ブロック共重合体(B)として、単独で、またはブロック共重合体(B1)と共に用いるブロック共重合体(B2)は、芳香族ビニル化合物単位から主としてなる重合体ブロック(a2)[以下これを「芳香族ビニル重合体ブロック(a2)」という]とポリイソブチレンブロック(e)[以下これを「ポリイソブチレンブロック(e)」という]を、その分子中に有していればよく、特に制限されない。
ただし、後述するように、熱可塑性重合体組成物の製造上、ブロック共重合体(B2)は、芳香族ビニル重合体ブロック(a2)およびポリイソブチレンブロック(e)を分子中に有し、且つその分子鎖末端に水酸基を有するブロック共重合体(B2’)であることが好都合である。ブロック共重合体(B2)の水酸基は、分子鎖の一方の末端にのみ位置していても、また両末端に位置していてもよいが、本発明で好ましく用いられるブロック共重合体(B2’)の例としては、下記の式▲6▼または▲7▼で表わされるブロック共重合体を挙げることができる。
【0037】
【化3】
HO−U−(V−U’)p−OH ▲6▼
HO−V’−(U−V)q−OH ▲7▼
【0038】
[式中、UおよびU’は、それぞれ独立して芳香族ビニル重合体ブロック(a2)を表し、VおよびV’は、それぞれ独立してポリイソブチレンブロック(e)を表し、pおよびqは、それぞれ独立して1以上の整数を表し、HOおよびOHは、それぞれ独立して水酸基を表す。]
【0039】
上記の式▲6▼または▲7▼で表されるブロック共重合体において、pおよびqが1〜5の範囲内の整数であるのが好ましく、特に、芳香族ビニル重合体ブロック(a2)を分子中に2個以上有しているものが好ましい。
【0040】
ブロック共重合体(B2’)を包含するブロック共重合体(B2)において、芳香族ビニル重合体ブロック(a2)は、芳香族ビニル化合物に由来する単位から主としてなる重合体ブロックであって、その場合の芳香族ビニル化合物としては、ブロック共重合体(B1)に関して上記で説明したのと同様の種々の芳香族ビニル化合物を用いることができるが、そのうちでも、スチレン、α−メチルスチレンなどが好ましく、スチレンが特に好ましい。芳香族ビニル重合体ブロック(a2)は、1種の芳香族ビニル化合物に由来する単位から構成されていても、または2種以上の芳香族ビニル化合物に由来する単位から構成されていてもよい。また、ブロック共重合体(B2)を構成するポリイソブチレンブロック(e)は、イソブチレンに由来する単位[−C(CH−CH−]から主としてなる重合体ブロックである。
【0041】
ブロック共重合体(B2)における芳香族ビニル重合体ブロック(a2)とポリイソブチレンブロック(e)の割合は、重量比で1:9〜9:1であるのが、熱可塑性重合体組成物およびそれから得られる成形品の耐熱性を良好なものとし、且つ耐衝撃性の改善効果が大きくなる点から好ましく、2:8〜7:3であるのがより好ましい。
【0042】
また、ブロック共重合体(B2)における芳香族ビニル重合体ブロック(a2)の数平均分子量は2500〜50000の範囲内であるのが好ましく、ポリイソブチレンブロック(e)の数平均分子量は10000〜100000の範囲内であるのが好ましい。また、ブロック共重合体(B2)の数平均分子量は、15000〜150000の範囲内であるのが好ましい。
【0043】
そして、本発明の熱可塑性重合体組成物におけるポリエステル系ブロック共重合体(C)は、ポリエステルブロック[以下これを「ポリエステルブロック(f)」という]と、前記のブロック共重合体(B1)およびブロック共重合体(B2)からなる群から選ばれる少なくとも1種のブロック共重合体の分子鎖に相当する化学構造を有する重合体ブロック[以下これを「B1/B2相当重合体ブロック(h)」という]とを有するブロック共重合体であり、例えば、1個のポリエステルブロック(f)と1個のB1/B2相当重合体ブロック(h)とからなるジブロック共重合体、2個のポリエステルブロック(f)とそれらの間に位置する1個のB1/B2相当重合体ブロック(h)とからなるトリブロック共重合体、1個のポリエステルブロック(f)とその両側に位置する2個のB1/B2相当重合体ブロック(h)とからなるトリブロック共重合体などを挙げることができる。
【0044】
ポリエステル系ブロック共重合体(C)におけるポリエステルブロック(f)は、ポリエステル系樹脂(A)に関して上記で説明したものと同様の種々のポリエステルまたはそのオリゴマーに相当する化学構造を有することができ、ポリエステル系樹脂(A)と同種のポリエステルまたはそのオリゴマーに相当する化学構造を有することが好ましい。ポリエステル系ブロック共重合体(C)におけるポリエステルブロック(f)とB1/B2相当重合体ブロック(h)との含有割合は、重量比で約1:9〜9:1程度であるのが好ましい。ポリエステルブロック(f)とB1/B2相当重合体ブロック(h)との間の結合様式は特に限定されないが、例えば、両ブロックがエステル結合により結合しているのが好ましい。
【0045】
本発明において用いられるタルクは、通常、式;
【0046】
【化4】
Mg(Si10)(OH)
【0047】
で表されるものであり、通常のポリエステル系樹脂に配合されるものなどを使用することができる。その粒度分布としては、0.1〜50μm程度のものが好ましく、特に1〜20μm程度のものがより好ましい。
【0048】
本発明の熱可塑性重合体組成物は、上記したポリエステル系樹脂(A)、付加重合系ブロック共重合体(B)、ポリエステル系ブロック共重合体(C)およびタルク(D)から主としてなっていても、あるいは更に有機ポリシロキサン(E)を含有していてもよく、有機ポリシロキサン(E)を含有する場合は、熱可塑性重合体組成物およびそれから得られる成形品の耐衝撃性が一層良好なものとなることは前述のとおりである。そして、本発明の熱可塑性重合体組成物で有機ポリシロキサン(E)を用いる場合は、下記の式▲8▼;
【0049】
【化5】
−Si(R)(R)−O− ▲8▼
【0050】
(式中、RおよびRは、それぞれ独立して、アルキル基、アリール基またはアラルキル基を表す。)
【0051】
で表される繰り返し単位からなるポリジオルガノシロキサンを用いるのが、耐衝撃性の向上効果の点から好ましい。
【0052】
上記の式▲8▼において、RおよびRの好ましい例としては、メチル基、エチル基などの低級アルキル基;フェニル基などのアリール基;ベンジル基などのアラルキル基等を挙げることができる。有機ポリシロキサン(E)は、1種類の繰り返し単位のみからなっていても、または2種類以上の繰り返し単位からなっていてもよく、2種類以上の繰り返し単位からなる場合は、各繰り返し単位がランダム状、ブロック状、またはテーパーブロック状のいずれの形態で有機ポリシロキサン鎖中に結合していてもよい。有機ポリシロキサン(E)の好ましい例としては、ポリジメチルシロキサン、ポリメチルフェニルシロキサン、ポリジフェニルシロキサン、ポリメチルベンジルシロキサンなどを挙げることができ、それらのうちでもポリジメチルシロキサンが好ましい。
【0053】
有機ポリシロキサン(E)としては、25℃で測定したときの粘度が10〜1,000,000センチストークスの範囲内のものを用いるのが好ましく、50〜10,000センチストークスの範囲内のものを用いるのがより好ましい。有機ポリシロキサン(E)は1種類のみを使用しても、または2種類以上を使用してもよい。また、市販の有機ポリシロキサンは添加剤(例えばシリカ等の無機粒子分散剤等)を含有している場合があるが、本発明の効果に実質的に悪影響を与えない限りは、添加剤を含有する有機ポリシロキサンを使用してもよい。
【0054】
そして、本発明の熱可塑性重合体組成物では、有機ポリシロキサン(E)を含む組成物および有機ポリシロキサン(E)を含まない組成物のいずれの場合も、{ポリエステル系樹脂(A)の重量とポリエステル系ブロック共重合体(C)中に含まれるポリエステルブロック(f)の重量との合計量}(すなわち熱可塑性重合体組成物中に含まれるポリエステル部分の合計重量)(以下これを「ポリエステル合計重量」ということがある)と、{付加重合系ブロック共重合体(B)の重量とポリエステル系ブロック共重合体(C)中に含まれるB1/B2相当重合体ブロック(h)の重量の合計量}(すなわち熱可塑性重合体組成物中に含まれる付加重合系重合体部分の合計重量)(以下これを「付加重合体合計重量」ということがある)との比が、98:2〜40:60である。
【0055】
熱可塑性重合体組成物における付加重合体合計重量の割合が上記の範囲よりも多い(ポリエステル合計重量の割合が上記の範囲よりも少ない)と、熱可塑性重合体組成物およびそれから得られる成形品の耐熱性、強度などが低下する。一方、熱可塑性重合体組成物における付加重合体合計重量の割合が上記の範囲よりも少ない(ポリエステル合計重量の割合が上記の範囲よりも多い)と、熱可塑性重合体組成物およびそれから得られる成形品における耐衝撃性の改善効果が不充分となる。熱可塑性重合体組成物における(ポリエステル合計重量):(付加重合体合計重量)の割合が97:3〜60:40の範囲内にあると、強度および耐衝撃性の両方の特性が特に良好になるので好ましい。
【0056】
そして、有機ポリシロキサン(E)を含まない本発明の熱可塑性重合体組成物では、熱可塑性重合体組成物およびそれから得られる成形品の耐衝撃性と耐熱性を両立させるために、{ポリエステル系樹脂(A)と付加重合系ブロック共重合体(B)とポリエステル系ブロック共重合体(C)の合計重量}と{タルク(D)の重量}との比は、99.99:0.01〜99.240.76の範囲内である。タルク(D)の含有量がこの範囲よりも少ない場合には、耐熱性、弾性率、強度等の改善効果が不充分となる。一方、タルク(D)の含有量がこの範囲よりも多い場合には、耐衝撃性が不充分となる。
【0057】
また、有機ポリシロキサン(E)を含有する本発明の熱可塑性重合体組成物では、熱可塑性重合体組成物およびそれから得られる成形品の耐衝撃性と耐熱性を両立させるために、{ポリエステル系樹脂(A)と付加重合系ブロック共重合体(B)とポリエステル系ブロック共重合体(C)の合計重量}と、{有機ポリシロキサン(E)の重量}との比が99.99:0.01〜95:5であり、且つ{ポリエステル系樹脂(A)と付加重合体系ブロック共重合体(B)とポリエステル系ブロック共重合体(C)と有機ポリシロキサン(E)の合計重量}と{タルク(D)の重量}との比が99.99:0.01〜99.240.76である。タルク(D)の含有量が、この範囲よりも少ない場合には耐熱性、弾性率、強度等の改善効果が不充分となり、逆に、多い場合には耐衝撃性が不充分となる。また、有機ポリシロキサン(E)を上記の範囲よりも少ない量しか配合しない場合には耐衝撃性のさらなる向上は実質的に認められず、逆に、上記の範囲よりも多く配合した場合にはブリードアウトが生じやすくなる。
【0058】
本発明の熱可塑性重合体組成物は、予め製造されたポリエステル系樹脂(A)、予め製造された付加重合系ブロック共重合体(B)、予め製造されたポリエステル系ブロック共重合体(C)およびタルク(D)を、場合によって上記した有機ポリシロキサン(E)と共に、熱可塑性重合体組成物中における各成分の含有割合および(ポリエステル合計重量):(付加重合体合計重量)の割合が上記した範囲になるようにして混合して製造してもよいが、以下に説明するポリエステル系反応生成物(I)を用いて製造するのが、製造操作の簡便さ、得られる熱可塑性重合体組成物の品質の良好さから好ましい。
【0059】
すなわち、上記したブロック共重合体(B1’)およびブロック共重合体(B2’)からなる群から選ばれる少なくとも1種の、分子鎖末端に水酸基を有する付加重合系ブロック共重合体(B’)の存在下にポリエステル系樹脂の製造反応を行うことによって、ポリエステル系樹脂(A)、付加重合系ブロック共重合体(B’)およびポリエステル系ブロック共重合体(C)を含有するポリエステル系反応生成物(I)をつくり、その反応前、反応中または反応後に、タルク(D)、更に場合により有機ポリシロキサン(E)を混合することにより、本発明の熱可塑性重合体組成物を製造してもよい。そして、この方法による場合は、ブロック共重合体(B1’)および/またはブロック共重合体(B2’)が微粒子状でポリエステル系樹脂のマトリックス中に均一に分散し、有機ポリシロキサン(E)をも添加する場合はそれも微粒子状で均一に分散して、耐衝撃性に極めて優れる熱可塑性重合体組成物が得られる。
【0060】
したがって、本発明は、
(イ) ジカルボン酸またはそのエステル形成性誘導体とジオールを用いてポリエステル系樹脂を製造するか、或いはヒドロキシカルボン酸またはそのエステル形成性誘導体を用いてポリエステル系樹脂を製造するための重合系に、その重縮合反応が完了するまでの時期に、上記したブロック共重合体(B1’)およびブロック共重合体(B2’)からなる群から選ばれる少なくとも1種の付加重合系ブロック共重合体(B’)を、{前記のポリエステル系樹脂形成用原料から形成されるポリエステル系樹脂の理論重量}と、{ブロック共重合体(B1’)およびブロック共重合体(B2’)の合計重量}との比が、98:2〜40:60となる割合で添加してポリエステル系反応生成物(I)をつくり、次いで、このポリエステル系反応生成物(I)に、ポリエステル系反応生成物(I)の重量とタルク(D)の重量との比が99.99:0.01〜99.240.76となるようにタルク(D)を添加することによって得られる熱可塑性重合体組成物;
(ロ) 前記の(イ)と同様にして製造したポリエステル系反応生成物(I)に、ポリエステル系反応生成物(I)の重量と有機ポリシロキサン(E)の重量との比が99.99:0.01〜95:5となり、且つ{ポリエステル系反応生成物(I)と有機ポリシロキサン(E)の合計重量}と{タルク(D)の重量}との比が99.99:0.01〜99.240.76となるようにタルク(D)と有機ポリシロキサン(E)を添加して得られる熱可塑性重合体組成物;および、
(ハ) 上記(イ)に記載したポリエステル系反応生成物(I)の製造開始前の時点、製造中の任意の時点、またはポリエステル系反応生成物(I)の製造後の時点で、ポリエステル系反応生成物(I)の重量と有機ポリシロキサン(E)の重量との比が99.99:0.01〜95:5となるようにして有機ポリシロキサン(E)を添加し、次いで、それにより得られる混合物に{ポリエステル系反応生成物(I)と有機ポリシロキサン(E)の合計重量}と{タルク(D)の重量}との比が99.99:0.01〜99.240.76となるようにタルク(D)を添加して得られる熱可塑性重合体組成物;
を好ましい態様として包含する。
【0061】
なお、本明細書における上記の「ポリエステル系樹脂の理論重量」とは、ポリエステル系樹脂を製造するための反応系にブロック共重合体(B1)およびブロック共重合体(B2)のいずれをも添加しないでポリエステル系樹脂のみを生成させた場合に、そこで用いたポリエステル用原料が100%反応するものとして計算して得られるポリエステル系樹脂の重量を意味する。
【0062】
上記した(イ)〜(ハ)に代表されるポリエステル系反応生成物(I)を含有する熱可塑性重合体組成物において、ポリエステル系反応生成物(I)の製造に用いるジカルボン酸成分の例としては、テレフタル酸、イソフタル酸、フタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、1,5−ナフタレンジカルボン酸、ビス(p−カルボキシフェニル)メタン、アントラセンジカルボン酸、4,4’−ジフェニルエーテルジカルボン酸、5−スルホイソフタル酸ナトリウムなどの芳香族ジカルボン酸;アジピン酸、セバシン酸、アゼライン酸、ドデカンジオン酸などの脂肪族ジカルボン酸;1,3−シクロヘキサンジカルボン酸、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸などの脂環式ジカルボン酸;およびそれらのエステル形成性誘導体(メチルエステル、エチルエステルなどの低級アルキルエステルなど)などを挙げることができ、それらのうちでもテレフタル酸またはその低級アルキルエステル(テレフタル酸ジメチル、テレフタル酸ジエチルなど)が好ましく用いられる。
【0063】
ポリエステル系反応生成物(I)の製造に用いるジオールの例としては、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、2−メチルプロパンジオール、1,5−ペンタンジオール、シクロヘキサンジメタノール、シクロヘキサンジオールなどの炭素数2〜10の脂肪族ジオール;ジエチレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリ−1,3−プロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコールなどの分子量6000以下のポリアルキレングリコールなどを挙げることができ、それらのうちでも1,4−ブタンジオールが好ましく用いられる。
【0064】
そして、ポリエステル系反応生成物(I)の製造に用いるヒドロキシカルボン酸成分の例としては、ヒドロキシ安息香酸およびそのエステル形成性誘導体などを挙げることができる。
【0065】
また、ポリエステル系反応生成物(I)の製造時に、上記したジカルボン酸成分、ジオールおよびヒドロキシカルボン酸成分の他に、必要に応じて、全ポリエステル系樹脂形成用原料に基づいて1モル%以下であれば、例えばグリセリン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、トリメリット酸、ピロメリット酸などの3官能以上のモノマー成分を用いてもよい。
【0066】
そして、上記のポリエステル系反応生成物(I)の製造に当たっては、その反応を上記したブロック共重合体(B1’)およびブロック共重合体(B2’)からなる群から選ばれる少なくとも1種の付加重合型ブロック共重合体(B’)を添加して行う以外は、通常のポリエステル系樹脂の製造におけるものと同様の製造法を適用することができる。例えば、テレフタル酸またはそのエステル形成性誘導体などのジカルボン酸成分と1,4−ブタンジオールなどのジオールを用いてポリエステル系反応生成物(I)を製造する場合は、ジカルボン酸とジオールとをエステル化反応させて低分子重合体(オリゴマー)をつくるか、またはジカルボン酸エステルとジオールとをエステル交換反応させて低分子重合体をつくり、その低分子重合体を高温、減圧下に重縮合反応させて製造することができる。
【0067】
ポリエステル系反応生成物(I)の製造において使用されるブロック共重合体(B1’)では、その分子鎖末端の水酸基は、重合体ブロック(i)および重合体ブロック(ii)のいずれか一方の重合体ブロックの末端に存在していても、両方の末端に存在していてもよいが、ブロック共重合体(B1’)中でハードブロックを形成している重合体ブロック(i)の末端に存在するのが好ましい。また、ブロック共重合体(B2’)では、その分子鎖末端の水酸基は、芳香族ビニル重合体ブロック(a2)およびポリイソブチレンブロック(e)のいずれか一方の重合体ブロックの末端に存在していても、両方の末端に存在していてもよいが、ハードブロックを形成する芳香族ビニル重合体ブロック(a2)の末端に存在するのが好ましい。ブロック共重合体(B1’)および(B2’)における末端の水酸基の含有量は、1分子当たり平均0.5個以上であるのが好ましく、0.7〜2個の範囲であるのがより好ましい。ブロック共重合体(B1’)およびブロック共重合体(B2’)の代わりに末端水酸基を全く有していないものを使用した場合には、重合反応中にポリエステル系ブロック共重合体(C)が生成せず、熱可塑性重合体組成物における耐衝撃性の改善が不充分となる。
【0068】
そして、上記のポリエステル系反応生成物(I)の製造方法によれば、使用したブロック共重合体(B1’)および/またはブロック共重合体(B2’)の一部において、その末端の水酸基が、ポリエステル系樹脂またはそのオリゴマーとの脱水反応および/またはエステル交換反応に関与して両重合体間にエステル結合が形成される結果、ポリエステル系ブロック共重合体(C)が形成される。この場合、得られるポリエステル系反応生成物(I)中には、生成したポリエステル系ブロック共重合体(C)の他に、生成したポリエステル系樹脂(A)、並びに未反応のブロック共重合体(B1’)および/またはブロック共重合体(B2’)が含まれる。なお、生成したポリエステル系ブロック共重合体(C)におけるポリエステルブロック(f)は、ポリエステル系樹脂(A)と同種のポリエステルまたはそのオリゴマーから形成される重合体ブロックであり、またB1/B2相当重合体ブロック(h)は、上記したブロック共重合体(B1)およびブロック共重合体(B2)の少なくとも1種のブロック共重合体から形成される重合体ブロックである。
【0069】
ポリエステル系反応生成物(I)を製造するために、反応系にブロック共重合体(B1’)および/またはブロック共重合体(B2’)を添加する時期は、上記した重縮合反応が完了するまでの時期であればいずれでもよく、例えばエステル化反応またはエステル交換反応の前、エステル化反応またはエステル交換反応の途中、エステル化反応またはエステル交換反応の終了後で重縮合反応を行う前、重縮合反応の途中などのいずれでもよい。前記したいずれの添加時期による場合も、ブロック共重合体(B1’)および/またはブロック共重合体(B2’)を反応系に添加して反応系をよく混合または混練すると、未反応のブロック共重合体(B1’)および/またはブロック共重合体(B2’)の微小粒子がポリエステル系樹脂のマトリックス中に均一に分散した状態になり、耐衝撃性に優れる熱可塑性重合体組成物を得ることができる。
【0070】
本発明の熱可塑性高分子組成物の製造においては、タルクの添加時期については特に限定されずに、ポリエステル反応生成物(I)を製造するための反応中または反応終了直後、または該ポリエステル反応生成物(I)の溶融混練時等いずれの時期であってもよい。溶融混練は、単軸押出機、二軸押出機、ニーダー、バンバリーミキサー等の混練機を使用して行うことができ、使用する装置の種類や溶融混練条件等は特に限定されないが、概ね180〜300℃で3〜30分間混練される。
【0071】
また、ポリエステル系反応生成物(I)中に有機ポリシロキサン(E)を含有させる場合は、上記の熱可塑性重合体組成物(ロ)および(ハ)の説明箇所で記載したように、例えばエステル化反応またはエステル交換反応の前、エステル化反応またはエステル交換反応の途中、エステル化反応またはエステル交換反応の終了後で重縮合反応を行う前、重縮合反応の途中、重縮合反応の終了直後、ポリエステル系反応生成物(I)とタルク(D)との混合時などに有機ポリシロキサン(E)を添加することができる。
【0072】
上記したポリエステル系反応生成物(I)を用いて本発明の熱可塑性重合体組成物を製造する際において、ポリエステル系反応生成物(I)もしくはそれと有機ポリシロキサン(E)との組成物にタルク(D)を混合する場合、またはポリエステル系反応生成物(I)もしくはそれとタルク(D)との混合物に有機ポリシロキサン(E)を混合する場合は、混合操作を、一般の熱可塑性重合体組成物の製造に用いられる既知の方法のいずれで行ってもよく、例えば、単軸押出機、2軸押出機、ニーダー、バンバリーミキサーなどの溶融混練装置を用いて行うことができる。また、上記したポリエステル系反応生成物(I)を用いずに、予め個別に製造されたポリエステル系樹脂(A)、付加重合系ブロック共重合体(B)およびポリエステル系ブロック共重合体(C)を用いて、それらをタルク(D)および場合により更に有機ポリシロキサン(E)と混合して本発明の熱可塑性重合体組成物を製造する場合においても、上記した種々の溶融混練装置を用いて本発明の熱可塑性重合体組成物を製造することができる。本発明の熱可塑性重合体組成物を製造する際の上記混合操作については、装置の種類や溶融混練条件などは特に制限されないが、通常、約180〜300℃の温度で約3〜30分間程度混練するとよい。
【0073】
本発明の熱可塑性重合体組成物は、必要に応じて、酸化防止剤、熱分解防止剤、紫外線吸収剤、結晶化促進剤、着色剤、難燃剤、補強剤、充填剤、離型剤、可塑剤、帯電防止剤、加水分解防止剤、接着助剤、粘着剤、上記以外のポリマー(例えばポリエチレン、ポリプロピレンなどのポリオレフィン類;ポリスチレン;ABS;ポリカーボネートなど)、リン系化合物に代表されるポリエステル系樹脂同士のエステル交換反応抑制剤などの1種または2種以上を含有することができる。
【0074】
本発明の熱可塑性重合体組成物は、熱可塑性重合体に対して一般に用いられている成形方法や成形装置を用いて成形することができ、例えば、射出成形、押出成形、プレス成形、ブロー成形、カレンダー成形、流延成形などの任意の成形法によって成形することができ、それによって電気/電子部品、機械部品、自動車部品、事務用機器部品、日用品、パイプ、シート、フイルムなどの任意の形状および用途の成形品を製造することができる。
【0075】
【実施例】
以下に本発明を実施例および比較例により具体的に説明するが、本発明はそれらにより限定されない。以下の実施例および比較例において、試験片の作製、耐衝撃性、弾性率(曲げ弾性率)、引張降伏強度および荷重たわみ温度の測定は次のようにして行った。
【0076】
試験片の作製:
各実施例または比較例で得られた熱可塑性重合体組成物のペレットを成形材料として用いて、射出成形法により、耐衝撃性試験用の短冊状試験片(寸法:長さ×厚さ×幅=64mm×12.7mm×3.2mm)、弾性率測定用および荷重たわみ温度測定用の短冊状試験片(寸法:長さ×厚さ×幅=128mm×12.7mm×6.4mm)、および引張降伏強度測定用のダンベル形試験片(JISダンベル状1号形)をそれぞれ作製した。
【0077】
耐衝撃性:
上記で作製した試験片を用いて、JIS K7110に準じて、アイゾット衝撃試験器(株式会社東洋精機製作所製)を使用して、23℃でノッチ付アイゾット衝撃値を測定した。
【0078】
弾性率(曲げ弾性率):
上記で作製した試験片を用いて、JIS K7203に準じて、オートグラフ(株式会社島津製作所製)を使用して、曲げ弾性率を測定した。
【0079】
引張降伏強度:
上記で作製した試験片を用いて、JIS K7113に準じて、オートグラフ(株式会社島津製作所製)を使用して、引張強度(引張降伏強度)を測定した。
【0080】
荷重たわみ温度:
上記で作製した試験片を用いて、JIS K7207に準じて荷重たわみ温度を測定した。
【0081】
また、以下の実施例および比較例で用いたタルク、ポリジメチルシロキサンおよび略号で表現された原料物質の内容は、以下に示すとおりである。
【0082】
○タルク:
林化成株式会社製ミクロンホワイト#5000A(平均粒子径:3.5μm)
【0083】
○ポリジメチルシロキサン:
東レ・ダウコーニング・シリコーン株式会社製「SH−200」[粘度100センチストーク(25℃)]
【0084】
○水添SIS−OH:
分子鎖末端に水酸基を有する水素添加されたポリスチレンブロック/ポリイソプレンブロック/ポリスチレンブロックからなるトリブロック共重合体;
[内容;2つのポリスチレンブロックの数平均分子量=6000、ポリイソプレンブロックの数平均分子量=28000、トリブロック共重合体の数平均分子量=40000;一方のポリスチレンブロックの片末端に水酸基が結合、トリブロック共重合体における平均水酸基含量=0.8個/分子;ポリイソプレンブロックにおける不飽和度=5%;水素添加前のトリブロック共重合体におけるスチレン単位含量=30重量%;水素添加前のポリイソプレンブロックにおける1,4−結合量=92%、3,4−結合量=8%]
【0085】
○水添SBIS−OH:
分子鎖末端に水酸基を有する水素添加されたポリスチレンブロック/1,3−ブタジエンとイソプレンとの共重合体ブロック/ポリスチレンブロックからなるトリブロック共重合体;
[内容;2つのポリスチレンブロックの数平均分子量=6000、1,3−ブタジエンとイソプレンとの共重合体ブロックの数平均分子量=28000、トリブロック共重合体の数平均分子量=40000;一方のポリスチレンブロックの片末端に水酸基が結合;トリブロック共重合体における平均水酸基含量=0.8個/分子;1,3−ブタジエンとイソプレンとの共重合体ブロックにおける1,3−ブタジエン単位とイソプレン単位のモル比=1/1;1,3−ブタジエンとイソプレンとの共重合体ブロックにおける不飽和度=5%;水素添加前のトリブロック共重合体におけるスチレン単位含量=30重量%;水素添加前の1,3−ブタジエンとイソプレンとの共重合体ブロック中の1,3−ブタジエン単位における1,4−結合量=95%、3,4−結合量=5%]
【0086】
○水添SBS−OH:
分子鎖末端に水酸基を有する水素添加されたポリスチレンブロック/ポリ(1,3−ブタジエン)ブロック/ポリスチレンブロックからなるトリブロック共重合体;
[内容;2つのポリスチレンブロックの数平均分子量=6000、ポリ(1,3−ブタジエン)ブロックの数平均分子量=28000、トリブロック共重合体の数平均分子量=40000;一方のポリスチレンブロックの片末端に水酸基が結合、トリブロック共重合体における平均水酸基含量=0.8個/分子;ポリ(1,3−ブタジエン)ブロックにおける不飽和度=5%;水素添加前のトリブロック共重合体におけるスチレン単位含量=30重量%;水素添加前のポリ(1,3−ブタジエン)ブロックにおける1,4−結合量=55%、1,2−結合量=45%]
【0087】
《実施例 1》
(1) テレフタル酸ジメチル88重量部、1,4−ブタンジオール49重量部およびテトライソプロピルチタネート0.035重量部を反応槽に仕込み(PBTの理論生成量=100重量部)、常圧下に170℃から230℃まで徐々に昇温しながら加熱してエステル交換反応を行い、メタノールが28重量部留出した時点でエステル交換反応を停止させた。その後、水添SIS−OHの10重量部を添加し、次いで約30分間かけて反応温度を230℃から250℃に昇温させ、且つ圧力を常圧から0.2mmHgまで減らした。この反応温度および圧力のもとで、約60分間かけて重縮合反応を行わせた。次に、反応槽に窒素ガスを供給して系を常圧に戻して重縮合反応を停止させて、上記したポリエステル系反応生成物(I)に相当するPBT系反応生成物を得た[この実施例1のPBT系反応生成物における(ポリエステル合計重量):(付加重合体合計重量)=100:10]。
そして、PBT系反応生成物のヘキサフルオロイソプロパノール/クロロホルム(体積比=1/1)溶液をTHF(テトラヒドロフラン)中で再沈殿させることによって得られた沈殿物および濾液成分のそれぞれを、(株)島津製作所製GPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)および日本電子(株)製270MHz H−NMRを用いて解析した結果、沈殿物中にはPBTの1ブロックと水添SIS−OHの1ブロックからなるジブロック共重合体およびPBTの2成分が含まれ、また濾液の濃縮物中にはPBTの1ブロックと水添SIS−OHの2ブロックからなるトリブロック共重合体および水添SIS−OHが含有されていることが判明した。以上の結果から、上記で得られたPBT系反応生成物中には、PBT、水添SIS−OH、およびPBTのブロックと水添SIS−OHのブロックからなるブロック共重合体の3者が含まれていることが確認された。
(2) 上記(1)で得られたPBT系反応生成物110重量部に対してタルク0.05重量部を加えて、2軸押出機で250℃で溶融混練した後、ストランド状に押出し切断して、熱可塑性重合体組成物のペレットを製造した。
(3) 上記(2)で製造した熱可塑性重合体組成物のペレットを用いて、各種試験片を上記にしたがって作製し、それを用いて耐衝撃性、弾性率(曲げ弾性率)、引張降伏強度および荷重たわみ温度を上記した方法で測定したところ、下記の表1に示すとおりの結果であった。
【0088】
《実施例 2》
(1) 実施例1の(1)において、PBTの理論生成量=100重量部に対する水添SIS−OHの添加量を15重量部に変えた以外は実施例1の(1)と同様にしてPBT系反応生成物を製造した[この実施例2のPBT系反応生成物における(ポリエステル合計重量):(付加重合体合計重量)=100:15]。そして、ここで得られたPBT系反応生成物の組成を実施例1の(1)におけるのと同様にして分析したところ、PBT系反応生成物中には、PBT、水添SIS−OH、およびPBTのブロックと水添SIS−OHのブロックからなるブロック共重合体の3者が含まれていることが確認された。
(2) 上記(1)で得られたPBT系反応生成物115重量部に対してタルク0.1重量部を加えて、実施例1と同様にして熱可塑性重合体組成物のペレットを製造し、そのペレットから試験片を作製して、その耐衝撃性、弾性率(曲げ弾性率)、引張降伏強度および荷重たわみ温度を上記した方法で測定したところ、下記の表1に示すとおりの結果であった。
【0089】
《実施例 3》
(1) 実施例1の(1)において、PBTの理論生成量=100重量部に対する水添SIS−OHの添加量を30重量部に変えた以外は実施例1の(1)と同様にしてPBT系反応生成物を製造した[この実施例2のPBT系反応生成物における(ポリエステル合計重量):(付加重合体合計重量)=100:30]。そして、ここで得られたPBT系反応生成物の組成を実施例1の(1)におけるのと同様にして分析したところ、PBT系反応生成物中には、PBT、水添SIS−OH、およびPBTのブロックと水添SIS−OHのブロックからなるブロック共重合体の3者が含まれていることが確認された。
(2) 上記(1)で得られたPBT系反応生成物130重量部に対してタルク1.0重量部(PBT系反応生成物:タルク=99.24:0.76)を加えて、実施例1と同様にして熱可塑性重合体組成物のペレットを製造し、そのペレットから試験片を作製して、その耐衝撃性、弾性率(曲げ弾性率)、引張降伏強度および荷重たわみ温度を上記した方法で測定したところ、下記の表1に示すとおりの結果であった。
【0090】
《実施例 4》
(1) 実施例2の(1)において、水添SIS−OHの15重量部の代わりに水添SBIS−OHの15重量部を用いた以外は、実施例2の(1)と同様にして、PBT系反応生成物を製造した[この実施例4のPBT系反応生成物における(ポリエステル合計重量):(付加重合体合計重量)=100:15]。
そして、ここで得られたPBT系反応生成物の組成を分析したところ、PBT系反応生成物中には、PBT、水添SBIS−OH、およびPBTのブロックと水添SBIS−OHのブロックからなるブロック共重合体の3者が含まれていることが確認された。
(2) 上記(1)で得られたPBT系反応生成物115重量部に対してタルク0.1重量部を加えて、実施例2の(2)と同様にして熱可塑性重合体組成物のペレットを製造し、そのペレットから試験片を作製し、その耐衝撃性、弾性率(曲げ弾性率)、引張降伏強度および荷重たわみ温度を上記した方法で測定したところ、下記の表1に示すとおりの結果であった。
【0091】
《実施例 5》
(1) 実施例2の(1)において、水添SIS−OHの15重量部の代わりに、水添SBS−OHの15重量部を用いた以外は、実施例2の(1)と同様にして、PBT系反応生成物を製造した[この実施例5のPBT系反応生成物における(ポリエステル合計重量):(付加重合体合計重量)=100:15]。
そして、ここで得られたPBT系反応生成物の組成を実施例1の(1)におけるのと同様にして分析したところ、PBT系反応生成物中には、PBT、水添SBS−OH、およびPBTのブロックと水添SBS−OHのブロックからなるブロック共重合体の3者が含まれていることが確認された。
(2) 上記(1)で得られたPBT系反応生成物115重量部に対してタルク0.1重量部を加えて、実施例2の(2)と同様にして熱可塑性重合体組成物のペレットを製造し、そのペレットから試験片を作製し、その耐衝撃性、弾性率(曲げ弾性率)、引張降伏強度および荷重たわみ温度を上記した方法で測定したところ、下記の表1に示すとおりの結果であった。
【0092】
《実施例 6》
(1) テレフタル酸ジメチル88重量部、1,4−ブタンジオール49重量部およびテトライソプロピルチタネート0.035重量部を反応槽に仕込み(PBTの理論生成量=100重量部)、常圧下に170℃から230℃まで徐々に昇温しながら加熱してエステル交換反応を行い、メタノールが28重量部留出した時点でエステル交換反応を停止させた。その後、水添SBIS−OHの15重量部およびポリジメチルシロキサン0.5重量部を添加し、次いで系を減圧にして重縮合反応系に移行させた。すなわち、約30分間かけて反応温度を230℃から250℃に昇温させ、且つ圧力を常圧から0.2mmHgまで減らした。この反応温度および圧力のもとで、約60分間かけて重縮合反応を行わせた。次に、反応槽に窒素ガスを供給して系を常圧に戻して重縮合反応を停止させて、上記したポリエステル系反応生成物(I)に相当するPBT系反応生成物(ただし、ポリジメチルシロキサンを含有する)を得た[この実施例6のPBT系反応生成物における(ポリエステル合計重量):(付加重合体合計重量)=100:15]。そして、ここで得られたPBT系反応生成物の組成を実施例1の(1)におけるのと同様にして分析したところ、このPBT系反応生成物中には、PBT、水添SBIS−OH、PBTのブロックと水添SBIS−OHのブロックからなるブロック共重合体およびポリジメチルシロキサンの4者が含まれていることが確認された。
(2) 上記(1)で得られたPBT系反応生成物115.5重量部に対してタルク0.1重量部を加えて、2軸押出機で250℃で溶融混練した後、ストランド状に押出し、切断して、熱可塑性重合体組成物のペレットを製造した。
(3) 上記(2)で製造した熱可塑性重合体組成物のペレットを用いて、各種試験片を上記にしたがって作製し、それを用いて耐衝撃性、弾性率(曲げ弾性率)、引張降伏強度および荷重たわみ温度の測定を上記した方法で行ったところ、下記の表1に示すとおりの結果であった。
【0093】
《実施例 7》
(1) 実施例6の(1)において、PBTの理論生成量=100重量部に対する水添SBIS−OHの添加量を5重量部に変えた以外は実施例6の(1)と同様にしてPBT系反応生成物(ただし、ポリジメチルシロキサンを含有する)を製造した[この実施例7のPBT系反応生成物における(ポリエステル合計重量):(付加重合体合計重量)=100:5]。そして、ここで得られたPBT系反応生成物の組成を実施例1の(1)におけるのと同様にして分析したところ、このPBT系反応生成物中には、PBT、水添SBIS−OH、PBTのブロックと水添SBIS−OHのブロックからなるブロック共重合体およびポリジメチルシロキサンの4者が含まれていることが確認された。
(2) 上記(1)で得られたPBT系反応生成物105.5重量部に対してタルク0.05重量部を加えて、実施例6と同様にして熱可塑性重合体組成物のペレットを製造し、そのペレットから試験片を作製して、その耐衝撃性、弾性率(曲げ弾性率)、引張降伏強度および荷重たわみ温度を上記した方法で測定したところ、下記の表1に示すとおりの結果であった。
【0094】
《比較例 1〜7》
実施例1〜7の(1)でそれぞれ得られたものと同じPBT系反応生成物のペレットを、タルクを添加することなくそのまま使用して、上記にしたがって各種試験片を作製し、それを用いて耐衝撃性、弾性率(曲げ弾性率)、引張降伏強度および荷重たわみ温度の測定を上記した方法で行ったところ、下記の表1に示すとおりの結果であった。
【0095】
《参考例》
実施例1の(1)において、水添SIS−OHを添加しない以外は実施例1の(1)と同様にしてPBTを製造した。実施例1と同様にして、得られたPBTのペレットから試験片を作製して、その耐衝撃性、弾性率(曲げ弾性率)、引張降伏強度および荷重たわみ温度を上記した方法で測定したところ、下記の表1に示すとおりの結果であった。
【0096】
【表1】
Figure 0003618429
【0097】
上記の表1の結果から、PBT、上記した特定の付加重合系ブロック共重合体(水添SIS−OH、水添SBIS−OHまたは水添SBS−OH)、およびPBTのブロックと前記の付加重合系ブロック共重合体のブロックからなるブロック共重合体を含むPBT系反応生成物、並びにタルクを含有する実施例1〜7の本発明の熱可塑性重合体組成物では、タルクを含有しない点以外は同様の比較例1〜7の熱可塑性重合体組成物のそれぞれと比較して、それから得られる成形品(試験片)の耐衝撃性(ノッチ付アイゾット衝撃値)が高い水準を保持したまま、耐熱性(荷重たわみ温度)が顕著に向上してPBTとほぼ同じかまたはそれ以上の高水準となり、さらに弾性率、引張降伏強度も向上しているのがわかる。
また、本発明の熱可塑性重合体組成物では、有機ポリシロキサンを添加することにより、良好な弾性率、引張降伏強度および荷重たわみ温度を保持したまま、耐衝撃性が一層向上することがわかる。
【0098】
《比較例 8》
タルク0.1重量部の代わりに、シリカ(日本シリカ工業(株)製「ニップシールVN3」)を0.1重量部添加した以外は実施例4と同様にして、熱可塑性重合体組成物のペレットを製造し、そのペレットから試験片を作製して、その耐衝撃性、弾性率(曲げ弾性率)、引張降伏強度および荷重たわみ温度を上記した方法で測定したところ、下記の表2に示すとおりの結果であった。
【0099】
《比較例 9》
タルク0.1重量部の代わりに、酸化チタン((株)石原産業製「CR60」)を0.1重量部添加した以外は実施例4と同様にして、熱可塑性重合体組成物のペレットを製造し、そのペレットから試験片を作製して、その耐衝撃性、弾性率(曲げ弾性率)、引張降伏強度および荷重たわみ温度を上記した方法で測定したところ、下記の表2に示すとおりの結果であった。
【0100】
《比較例 10》
タルク0.1重量部の代わりに、安息香酸アルミニウム((株)サンド製「サンドスタブ4030」)を0.1重量部添加した以外は実施例4と同様にして、熱可塑性重合体組成物のペレットを製造し、そのペレットから試験片を作製して、その耐衝撃性、弾性率(曲げ弾性率)、引張降伏強度および荷重たわみ温度を上記した方法で測定したところ、下記の表2に示すとおりの結果であった。
【0101】
《比較例 11》
タルク0.1重量部の代わりに、ソジウム2,2’−エチリデン−ビス(4,6−ジ−t−ブチルフェニル)ホスフェート((株)旭電化製「アデカスタブ NA11」)を0.1重量部添加した以外は実施例4と同様にして、熱可塑性重合体組成物のペレットを製造し、そのペレットから試験片を作製して、その耐衝撃性、弾性率(曲げ弾性率)、引張降伏強度および荷重たわみ温度を上記した方法で測定したところ、下記の表2に示すとおりの結果であった。
【0102】
【表2】
Figure 0003618429
【0103】
上記表2から明らかなように、PBT、特定の付加重合系ブロック共重合体、PBTのブロックと前記付加重合系ブロック共重合体のブロックからなるブロック共重合体を含むPBT系反応生成物(比較例4)に対して、結晶核剤として知られている添加剤のうち、タルク以外の添加剤を配合した場合(比較例8〜11)には、荷重たわみ温度等の耐熱性の向上がほとんど或いは全くなく、しかも多くの場合、アイゾット衝撃値等の耐衝撃性がむしろ低下することがわかる。これに対して、タルクを配合した場合(実施例4)では、特異的に、耐熱性が大幅に向上し、しかも耐衝撃性がほとんど低下しないことがわかる。
【0104】
【発明の効果】
ポリエステル系樹脂(A)、付加重合系ブロック共重合体(B)、ポリエステル系ブロック共重合体(C)およびタルク(D)を含有する本発明の熱可塑性重合体組成物では、ポリエステル系樹脂(A)、付加重合系ブロック共重合体(B)およびポリエステル系ブロック共重合体(C)を含有する組成物が有する高い耐衝撃性を保持したまま、荷重たわみ温度等の耐熱性がポリエステル系樹脂(A)並またはそれ以上の水準まで大幅に改善され、更に強度および弾性率も改善される。
そして、上記した4成分に更に少量の有機ポリシロキサンが配合された本発明の熱可塑性重合体組成物では、その耐衝撃性がさらに改善される。
そのために、本発明の熱可塑性重合体組成物からなる成形品は、該組成物が有する上記した種々の優れた特性を活かして、電気/電子部品、自動車部品、機械部品、事務用機器部品、日用品、その他の広範な用途に有効に使用することができる。

Claims (5)

  1. (1) ポリエステル系樹脂(A)、付加重合系ブロック共重合体(B)、ポリエステル系ブロック共重合体(C)およびタルク(D)を含有し;
    (2) 付加重合系ブロック共重合体(B)が、下記のブロック共重合体(B1)およびブロック共重合体(B2)からなる群から選ばれる少なくとも1種のブロック共重合体であり;
    ブロック共重合体(B1):
    芳香族ビニル化合物単位から主としてなる重合体ブロック(a1)および水素添加された1,2−結合量が30%未満のポリブタジエンブロック(b1)からなる群から選ばれる少なくとも1種の重合体ブロック(i)と、水素添加されたポリイソプレンブロック(c)、水素添加された1,2−結合量が30〜80%のポリブタジエンブロック(b2)および水素添加されたイソプレン/ブタジエン共重合体ブロック(d)からなる群から選ばれる少なくとも1種の重合体ブロック(ii)とを有するブロック共重合体;
    ブロック共重合体(B2):
    芳香族ビニル化合物単位から主としてなる重合体ブロック(a2)とポリイソブチレンブロック(e)とを有するブロック共重合体;
    (3) ポリエステル系ブロック共重合体(C)が、ポリエステルブロックと、前記のブロック共重合体(B1)およびブロック共重合体(B2)からなる群から選ばれる少なくとも1種のブロック共重合体の分子鎖に相当する化学構造を有する重合体ブロックとを有するブロック共重合体であり;
    (4) {ポリエステル系樹脂(A)の重量とポリエステル系ブロック共重合体(C)中に含まれるポリエステルブロックの重量との合計量}と、{付加重合系ブロック共重合体(B)の重量とポリエステル系ブロック共重合体(C)中に含まれるブロック共重合体(B1)およびブロック共重合体(B2)からなる群から選ばれる少なくとも1種のブロック共重合体の分子鎖に相当する化学構造を有する重合体ブロックの重量との合計量}との比が、98:2〜40:60であり;そして、
    (5) {ポリエステル系樹脂(A)と付加重合系ブロック共重合体(B)とポリエステル系ブロック共重合体(C)の合計重量}と、{タルク(D)の重量}との比が99.99:0.01〜99.240.76である;ことを特徴とする熱可塑性重合体組成物。
  2. (1) ポリエステル系樹脂(A)、付加重合系ブロック共重合体(B)、ポリエステル系ブロック共重合体(C)、タルク(D)および有機ポリシロキサン(E)を含有し;
    (2) 付加重合系ブロック共重合体(B)が、下記のブロック共重合体(B1)およびブロック共重合体(B2)からなる群から選ばれる少なくとも1種のブロック共重合体であり;
    ブロック共重合体(B1):
    芳香族ビニル化合物単位から主としてなる重合体ブロック(a1)および水素添加された1,2−結合量が30%未満のポリブタジエンブロック(b1)からなる群から選ばれる少なくとも1種の重合体ブロック(i)と、水素添加されたポリイソプレンブロック(c)、水素添加された1,2−結合量が30〜80%のポリブタジエンブロック(b2)および水素添加されたイソプレン/ブタジエン共重合体ブロック(d)からなる群から選ばれる少なくとも1種の重合体ブロック(ii)とを有するブロック共重合体;
    ブロック共重合体(B2):
    芳香族ビニル化合物単位から主としてなる重合体ブロック(a2)とポリイソブチレンブロック(e)とを有するブロック共重合体;
    (3) ポリエステル系ブロック共重合体(C)が、ポリエステルブロックと、前記のブロック共重合体(B1)およびブロック共重合体(B2)からなる群から選ばれる少なくとも1種のブロック共重合体の分子鎖に相当する化学構造を有する重合体ブロックとを有するブロック共重合体であり;
    (4) {ポリエステル系樹脂(A)の重量とポリエステル系ブロック共重合体(C)中に含まれるポリエステルブロックの重量との合計量}と、{付加重合系ブロック共重合体(B)の重量とポリエステル系ブロック共重合体(C)中に含まれるブロック共重合体(B1)およびブロック共重合体(B2)からなる群から選ばれる少なくとも1種のブロック共重合体の分子鎖に相当する化学構造を有する重合体ブロックの重量との合計量}との比が、98:2〜40:60であり;
    (5) {ポリエステル系樹脂(A)と付加重合系ブロック共重合体(B)とポリエステル系ブロック共重合体(C)の合計重量}と、{有機ポリシロキサン(E)の重量}との比が99.99:0.01〜95:5であり;そして、
    (6) {ポリエステル系樹脂(A)と付加重合系ブロック共重合体(B)とポリエステル系ブロック共重合体(C)と有機ポリシロキサン(E)の合計重量}と、{タルク(D)の重量}との比が99.99:0.01〜99.240.76である;
    ことを特徴とする熱可塑性重合体組成物。
  3. (1) ポリエステル系反応生成物(I)とタルク(D)を含有する熱可塑性重合体組成物であって;
    (2) 前記のポリエステル系反応生成物(I)が、ジカルボン酸またはそのエステル形成性誘導体とジオールを用いてポリエステル系樹脂を製造するか、或いはヒドロキシカルボン酸またはそのエステル形成性誘導体を用いてポリエステル系樹脂を製造するための重合系に、その重縮合反応が完了するまでの時期に、下記のブロック共重合体(B1’)およびブロック共重合体(B2’)からなる群から選ばれる少なくとも1種の付加重合系ブロック共重合体(B’)を、{前記のポリエステル系樹脂形成用原料から形成されるポリエステル系樹脂の理論重量}と、{ブロック共重合体(B1’)およびブロック共重合体(B2’)の合計重量}との比が、98:2〜40:60となる割合で添加して得られる反応生成物であり;
    ブロック共重合体(B1’):
    芳香族ビニル化合物単位から主としてなる重合体ブロック(a1)および水素添加された1,2−結合量が30%未満のポリブタジエンブロック(b1)からなる群から選ばれる少なくとも1種の重合体ブロック(i)と、水素添加されたポリイソプレンブロック(c)、水素添加された1,2−結合量が30〜80%のポリブタジエンブロック(b2)および水素添加されたイソプレン/ブタジエン共重合体ブロック(d)からなる群から選ばれる少なくとも1種の重合体ブロック(ii)とを含有し、且つ分子鎖末端に水酸基を有するブロック共重合体;
    ブロック共重合体(B2’):
    芳香族ビニル化合物単位から主としてなる重合体ブロック(a2)とポリイソブチレンブロック(e)とを含有し、且つ分子鎖末端に水酸基を有するブロック共重合体;そして、
    (3) ポリエステル系反応生成物(I)の重量とタルク(D)の重量との比が99.99:0.01〜99.240.76である;
    ことを特徴とする熱可塑性重合体組成物。
  4. (1) ポリエステル系反応生成物(I)、タルク(D)および有機ポリシロキサン(E)を含有する熱可塑性重合体組成物であって;
    (2) 前記のポリエステル系反応生成物(I)が、ジカルボン酸またはそのエステル形成性誘導体とジオールを用いてポリエステル系樹脂を製造するか、或いはヒドロキシカルボン酸またはそのエステル形成性誘導体を用いてポリエステル系樹脂を製造するための重合系に、その重縮合反応が完了するまでの時期に、下記のブロック共重合体(B1’)およびブロック共重合体(B2’)からなる群から選ばれる少なくとも1種の付加重合系ブロック共重合体(B’)を、{前記のポリエステル系樹脂形成用原料から形成されるポリエステル系樹脂の理論重量}と、{ブロック共重合体(B1’)およびブロック共重合体(B2’)の合計重量}との比が、98:2〜40:60となる割合で添加して得られる反応生成物であり;
    ブロック共重合体(B1’):
    芳香族ビニル化合物単位から主としてなる重合体ブロック(a1)および水素添加された1,2−結合量が30%未満のポリブタジエンブロック(b1)からなる群から選ばれる少なくとも1種の重合体ブロック(i)と、水素添加されたポリイソプレンブロック(c)、水素添加された1,2−結合量が30〜80%のポリブタジエンブロック(b2)および水素添加されたイソプレン/ブタジエン共重合体ブロック(d)からなる群から選ばれる少なくとも1種の重合体ブロック(ii)とを含有し、且つ分子鎖末端に水酸基を有するブロック共重合体;
    ブロック共重合体(B2’):
    芳香族ビニル化合物単位から主としてなる重合体ブロック(a2)とポリイソブチレンブロック(e)とを含有し、且つ分子鎖末端に水酸基を有するブロック共重合体;
    (3) ポリエステル系反応生成物(I)の重量と有機ポリシロキサン(E)の重量との比が99.99:0.01〜95:5であり;そして、
    (4) {ポリエステル系反応生成物(I)と有機ポリシロキサン(E)の合計重量}と、{タルク(D)の重量}との比が99.99:0.01〜99.240.76である;
    ことを特徴とする熱可塑性重合体組成物。
  5. 請求項1、2、3または4記載の熱可塑性重合体組成物からなる成形品。
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