JP3676014B2 - 熱可塑性樹脂組成物の製造方法 - Google Patents

熱可塑性樹脂組成物の製造方法 Download PDF

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【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、熱可塑性樹脂組成物の製造方法に関する。本発明によれば、多種類のポリマーとの相容性に優れ、互いに非相容である異種ポリマーを相容化させ均一なポリマーアロイを与える相容化剤、他のポリマーにおける耐衝撃性、引張強度、引張伸び、耐熱性、塗装性、耐候性、弾性、反撥弾性、流動性、寸法安定性、耐薬品性等の性能を改良する改良剤などの樹脂用改質剤として有用な熱可塑性樹脂組成物を短時間に製造することができる。
【0002】
【従来の技術】
ポリマー改質技術は、分子設計に基づく新規ポリマーの開発に比べ、開発経費および開発時間が大幅に少なくなるという利点を有しており、自動車部品、電機・電子材料部品などの分野で盛んに研究されている。ポリマー改質技術としては改質剤によるものが重要な位置を占めており、2成分以上のポリマーのポリマーアロイに使用する相容化剤、ポリマーの特定の性能を改良する改良剤などの樹脂用改質剤が求められている。
【0003】
しかしながら、多種類のポリマーとの相容性に優れる改質剤は極めて少なく、特にそのポリマー(ポリマーアロイではその構成ポリマーの一成分)がポリエステル系樹脂の場合には、相容性の悪さに起因する不均一性、相間剥離等の問題が生じ、ポリエステル系樹脂の改質にはあまり効果がないのが実状である。
上記の問題点を解決するために、例えば、ポリスチレンの側鎖にエチルグリシジルメタクリレートを付加させたもの、ポリメタクリレートの側鎖にエチルグリシジルメタクリレートを付加させたものなど(特開昭63−270713号公報、特開昭63−312305号公報および特開昭63−312306号公報参照)が用いられているが、ポリエステル系樹脂に対して有効な改質剤は極めて少なく、またその合成法も複雑な場合が多い。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかして、本発明の目的は、多種類のポリマーとの相容性に優れ、互いに非相容である異種ポリマーを相容化させ均一なポリマーアロイを与える相容化剤、他のポリマーにおける耐衝撃性、引張強度、引張伸び、耐熱性、塗装性、耐候性、弾性、反撥弾性、流動性、寸法安定性、耐薬品性等の性能を改良する改良剤などの樹脂用改質剤として有用な熱可塑性樹脂組成物を短時間に製造することができる方法を提供することにある。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記の課題を解決すべく鋭意検討を重ねた結果、ポリエステル系樹脂およびポリエステル系樹脂と反応し得る官能基を一方の末端に0.5〜1個有する付加重合体を溶融条件下に混合した後、固相重合することによって、多種類のポリマーとの相容性に優れ、樹脂用改質剤として有用な熱可塑性樹脂組成物が得られることを見出し先に出願した(特願平7−264276号)。そして、この知見を踏まえてさらに研究を重ねた結果、ポリエステル系樹脂として、炭素数3以上のジオール単位およびエチレングリコール単位を主体とするジオール単位とジカルボン酸単位とから主としてなり、かつ炭素数3以上のジオール単位とエチレングリコール単位とのモル比が98/2〜50/50であるポリエステル系樹脂を用いると、極めて短時間の固相重合で多種類のポリマーとの相容性に優れ、樹脂用改質剤として有用な熱可塑性樹脂組成物が得られることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0006】
すなわち、本発明は、炭素数3以上のジオール単位およびエチレングリコール単位を主体とするジオール単位とジカルボン酸単位とから主としてなり、かつ炭素数3以上のジオール単位とエチレングリコール単位とのモル比が98/2〜50/50であるポリエステル系樹脂(I)、並びにポリエステル系樹脂と反応し得る官能基を一方の末端に0.5〜1個有する付加重合体(II)を前者対後者の重量比が97/3〜20/80の割合で溶融条件下に混合した後、9時間以下の固相重合を行なうことを特徴とする;
[1]ポリエステル系樹脂(I)から誘導された高分子量化ポリエステル系樹脂(I’)、[2]ポリエステル系樹脂と反応し得る官能基を一方の末端に0.5〜1個有する付加重合体(II)および[3]ポリエステル系樹脂(I)から誘導されるポリエステルブロック(i)と付加重合体(II)から誘導される重合体ブロック(ii)とからなるブロック共重合体(III)からなり;
{ポリエステル系樹脂(I’)の重量およびブロック共重合体(III)に含有されるポリエステルブロック(i)の重量の合計}と{付加重合体(II)の重量およびブロック共重合体(III)に含有される重合体ブロック(ii)の重量の合計}との比が97/3〜20/80であり;かつ
ブロック共重合体(III)と付加重合体(II)とのモル比が20/80以上である熱可塑性樹脂組成物の製造方法である。
【0007】
【発明の実施の形態】
本発明におけるポリエステル系樹脂(I)としては、炭素数3以上のジオール単位およびエチレングリコール単位を主体とするジオール単位とジカルボン酸単位とから主としてなるポリエステル系樹脂が用いられる。ポリエステル系樹脂(I)を構成する炭素数3以上のジオール単位としては、プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、2−メチルプロパンジオール、1,5−ペンタンジオール等の炭素数3〜10の脂肪族ジオール;シクロヘキサンジメタノール、シクロヘキサンジオール等の脂環式ジオール;ジエチレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリ−1,3−プロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコール等の分子量6000以下のポリアルキレングリコールなどから誘導されるジオール単位を挙げることができる。炭素数3以上のジオール単位は、上記のジオール単位の1種からなっていても、2種以上からなっていてもよいが、得られる熱可塑性樹脂組成物の他のポリマーに対する相容性が良好になる点から、1,4−ブタンジオール単位から主としてなっているのが好ましい。
【0008】
ポリエステル系樹脂(I)を構成するジカルボン酸単位としては、テレフタル酸、イソフタル酸、フタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、1,5−ナフタレンジカルボン酸、ビス(p−カルボキシフェニル)メタン、アントラセンジカルボン酸、4,4’−ジフェニルエーテルジカルボン酸、5−スルホイソフタル酸ナトリウム等の芳香族ジカルボン酸;アジピン酸、セバシン酸、アゼライン酸、ドデカンジオン酸等の脂肪族ジカルボン酸;1,3−シクロヘキサンジカルボン酸、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸等の脂環式ジカルボン酸;およびそれらのエステル形成性誘導体(メチルエステル、エチルエステルなどの低級アルキルエステル等)などから誘導されるジカルボン酸単位を挙げることができる。ポリエステル系樹脂(I)を構成するジカルボン酸単位は、上記したジカルボン酸単位の1種からなっていても、2種以上からなっていてもよいが、得られる熱可塑性樹脂組成物の他のポリマーに対する相容性が良好になる点から、テレフタル酸単位から主としてなっているのが好ましい。
【0009】
また、ポリエステル系樹脂(I)を構成するジオール単位において、炭素数3以上のジオール単位とエチレングリコール単位とのモル比は、得られる熱可塑性樹脂組成物の他のポリマーに対する相容性を良好にするとともに、該熱可塑性樹脂組成物を製造する際の固相重合時間を短縮する観点から、98/2〜50/50の範囲内であることが必要であり、97/3〜70/30の範囲内であるのが好ましい。
【0010】
そして、ポリエステル系樹脂(I)としては、1,4−ブタンジオール単位およびエチレングリコール単位を主体とするジオール単位とテレフタル酸単位とから主としてなり、かつ1,4−ブタンジオール単位とエチレングリコール単位とのモル比が98/2〜50/50、好ましくは97/3〜70/30の範囲内であるポリエステル系樹脂が好適に用いられる。
【0011】
さらに、ポリエステル系樹脂(I)は、全構造単位の合計モル数に基づいて1モル%以下であれば、例えばグリセリン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、トリメリット酸、ピロメリット酸などの3官能以上のモノマーから誘導される構造単位を有していてもよい。
【0012】
ポリエステル系樹脂(I)の極限粘度としては、フェノール/テトラクロロエタン(重量比=1/1)混合溶媒中、30℃で測定したときに、0.3〜1.5dl/gの範囲内であるのが好ましい。
【0013】
本発明における付加重合体(II)が有するポリエステル系樹脂と反応し得る官能基としては、ポリエステル系樹脂と反応し得るものであれば特に制限はなく、例えば、水酸基、カルボキシル基、エステル基、アミド基、アミノ基、エポキシ基、チオール基、チオエステル基などを挙げることができる。付加重合体(II)は、上記の官能基を有する開始剤を用いて付加重合体を構成するモノマーを重合する方法、官能基を有する停止剤に対してカルボアニオン等の活性末端を有する付加重合体を付加させる方法などによって製造することができる。
【0014】
付加重合体(II)はポリエステル系樹脂と反応し得る官能基を付加重合体(II)の一方の分子末端に有しており、これに起因して、ブロック共重合体(III)は、ポリエステル系樹脂(I)から誘導されるポリエステルブロック(i)と付加重合体(II)から誘導される重合体ブロック(ii)とからなるジブロック共重合体が主体となる。該官能基を分子鎖中または分子側鎖に有する付加重合体を用いると、グラフト共重合体が生成し、他のポリマーに対する相容性が低下する。また、該官能基を分子両末端に有する付加重合体を用いると、トリブロック体以上のマルチブロック体が主に生成し、他のポリマーに対する相容性が低下する。
【0015】
付加重合体(II)が一方の分子末端に有するポリエステル系樹脂と反応し得る官能基の含有量は、平均して1分子当たり0.5〜1個である。該官能基の量が上記の範囲を外れる場合は、得られる熱可塑性樹脂組成物の他のポリマーに対する相容性が低下する。また、付加重合体(II)がポリエステル系樹脂と反応し得る官能基を全く含有しない場合は、ブロック共重合体(III)が生成しないため、他のポリマーとの相容性が不十分となる。そして、得られる熱可塑性樹脂組成物の他のポリマーに対する相容性をより向上させる観点から、付加重合体(II)におけるポリエステル系樹脂と反応し得る官能基の含有量は、0.7〜1個の範囲内であるのが好ましい。
【0016】
本発明における付加重合体(II)としては、単一のモノマー単位からなる付加重合体、複数のモノマー単位からなる付加重合系ランダム共重合体、複数のモノマー単位からなる付加重合系ブロック共重合体などいずれの形態の付加重合体を用いてもよいが、他のポリマーとの相容性を向上させる観点から、▲1▼芳香族ビニル化合物単位を主体とする重合体ブロック(a−1)[以下、これを芳香族ビニル重合体ブロック(a−1)ということがある]および水素添加された1,2−結合量が30%未満のポリブタジエンブロック(a−2)[以下、これを水添ポリブタジエンブロック(a−2)ということがある]のうちの少なくとも1種からなる重合体ブロック(A)と、水素添加されたポリイソプレンブロック(b−1)[以下、これを水添ポリイソプレンブロック(b−1)ということがある]および水素添加されたイソプレン/ブタジエン共重合体ブロック(b−2)[以下、これを水添イソプレン/ブタジエン共重合体ブロック(b−2)ということがある]のうちの少なくとも1種からなる重合体ブロック(B)とからなり、かつポリエステル系樹脂と反応し得る官能基を一方の末端に0.5〜1個有する付加重合系ブロック共重合体(II−1)[以下、これを付加重合系ブロック共重合体(II−1)ということがある]、▲2▼ポリエステル系樹脂と反応し得る官能基を一方の末端に0.5〜1個有するポリオレフィン系樹脂(II−2)[以下、これをポリオレフィン系樹脂(II−2)ということがある]、並びに▲3▼ポリエステル系樹脂と反応し得る官能基を一方の末端に0.5〜1個有する芳香族ビニル系樹脂(II−3)[以下、これを芳香族ビニル系樹脂(II−3)ということがある]が好ましい。
【0017】
付加重合系ブロック共重合体(II−1)としては、一方の末端に水酸基、カルボキシル基またはアミノ基を有するものが好ましく用いられ、例えば、水酸基を有するものとしては、下記の一般式(1)〜(4)で示されるものが挙げられる。
【0018】
(A−B)s−OH (1)
(B−A)t−OH (2)
A−(B−A’)u−OH (3)
B’−(A−B)w−OH (4)
(各式中、AおよびA’はそれぞれ重合体ブロック(A)、BおよびB’はそれぞれ重合体ブロック(B)、s、t、uおよびwはそれぞれ1以上の整数、OHは水酸基を表す。)
【0019】
付加重合系ブロック共重合体(II−1)における重合体ブロック(A)と重合体ブロック(B)との反復数s、t、uおよびwはそれぞれ任意に決めることができるが、1〜5の範囲内であるのが好ましい。
【0020】
付加重合系ブロック共重合体(II−1)としては、他のポリマーとの相容性を向上させる観点から、下記の一般式(5)
B−A−OH (5)
(式中、Aは重合体ブロック(A)、Bは重合体ブロック(B)、OHは水酸基を表す。)
で示される付加重合系ジブロック共重合体、および下記の一般式(6)
A−B−A’−OH (6)
(式中、AおよびA’はそれぞれ重合体ブロック(A)、Bは重合体ブロック(B)、OHは水酸基を表す。)
で示される付加重合系トリブロック共重合体がより好ましい。
【0021】
付加重合系ブロック共重合体(II−1)における重合体ブロック(A)の構成ブロックとなり得る芳香族ビニル重合体ブロック(a−1)は、芳香族ビニル化合物単位を主体とする重合体ブロックである。芳香族ビニル重合体ブロック(a−1)中の芳香族ビニル化合物単位を与える芳香族ビニル化合物としては、スチレン、α−メチルスチレン、o−メチルスチレン、m−メチルスチレン、p−メチルスチレン、2,4−ジメチルスチレン、ビニルナフタレン、ビニルアントラセンなどが挙げられ、ポリエステル系樹脂(I)との親和性の点から、スチレン、α−メチルスチレンが好ましい。芳香族ビニル重合体ブロック(a−1)は、1種類の芳香族ビニル化合物単位のみから構成されていても、2種類以上の芳香族ビニル化合物単位から構成されていてもよい。
【0022】
付加重合系ブロック共重合体(II−1)における重合体ブロック(A)の構成ブロックとなり得る水添ポリブタジエンブロック(a−2)は、そのポリブタジエンブロックにおける1,2−結合量が30%未満、好ましくは25%以下であり、しかも不飽和結合の一部または全部が水素添加によって飽和結合にされているポリブタジエンブロックである。水添ポリブタジエンブロック(a−2)を構成するポリブタジエンでは、水素添加前にはその30モル%未満、好ましくは25モル%以下がビニルエチレン基[−CH(CH=CH2)−CH2−;1,2−結合のブタジエン単位]であり、残りが2−ブテン−1,4−ジイル基(−CH2−CH=CH−CH2−;1,4−結合のブタジエン単位)である。
【0023】
付加重合系ブロック共重合体(II−1)における重合体ブロック(B)の構成ブロックとなり得る水添ポリイソプレンブロック(b−1)は、イソプレンに由来するモノマー単位から主としてなるポリイソプレンブロックの不飽和結合の一部または全部が水素添加によって飽和結合にされている重合体ブロックである。水添ポリイソプレンブロック(b−1)では、その水素添加前には、イソプレンに由来する単位は、2−メチル−2−ブテン−1,4−ジイル基[−CH2−C(CH3)=CH−CH2−;1,4−結合のイソプレン単位]、イソプロペニルエチレン基[−CH(C(CH3)=CH2)−CH2−;3,4−結合のイソプレン単位]および1−メチル−1−ビニルエチレン基[−C(CH3)(CH=CH2)−CH2−;1,2−結合のイソプレン単位]からなる群より選ばれる少なくとも1種の基である。
【0024】
付加重合系ブロック共重合体(II−1)における重合体ブロック(B)の構成ブロックとなり得る水添イソプレン/ブタジエン共重合体ブロック(b−2)は、イソプレンに由来する単位およびブタジエンに由来する単位から主としてなるイソプレン/ブタジエン共重合体ブロックであって、その不飽和結合の一部または全部が水素添加によって飽和結合にされている共重合体ブロックである。水添イソプレン/ブタジエン共重合体ブロック(b−2)においては、その水素添加前には、イソプレンに由来する単位は、2−メチル−2−ブテン−1,4−ジイル基、イソプロペニルエチレン基および1−メチル−1−ビニルエチレン基からなる群より選ばれる少なくとも1種の基である。また、ブタジエンに由来する単位は、2−ブテン−1,4−ジイル基および/またはビニルエチレン基である。そして、水素添加前におけるイソプレン/ブタジエン共重合体ブロックにおけるそれらの基の割合は特に制限されない。水添イソプレン/ブタジエン共重合体ブロック(b−2)において、イソプレンに由来する単位とブタジエンに由来する単位とは、ランダム状、ブロック状、テーパーブロック状のいずれの配置形態になっていてもよい。
【0025】
付加重合系ブロック共重合体(II−1)における水添ポリブタジエンブロック(a−2)、水添ポリイソプレンブロック(b−1)および水添イソプレン/ブタジエン共重合体ブロック(b−2)における水素添加の状態は部分水素添加であっても、完全水素添加であってもよいが、付加重合系ブロック共重合体(II−1)において、ブタジエン単位および/またはイソプレン単位における炭素−炭素二重結合の50%以上、とりわけ80%以上が水素添加されていること(すなわち、不飽和度が50%以下、とりわけ20%以下となっていること)が、それから生成するブロック共重合体(III)の耐熱劣化性および耐候性が良好となり、さらに得られる熱可塑性樹脂組成物における粘着性の発現を防止することができる点から好ましい。
【0026】
付加重合系ブロック共重合体(II−1)における重合体ブロック(A)の合計重量と重合体ブロック(B)の合計重量との比は、熱可塑性樹脂組成物の耐熱性を高く保ち、かつ樹脂改質効果を大きくする観点から、前者対後者の比で1/9〜9/1の範囲内であるのが好ましく、2/8〜7/3の範囲内がより好ましい。
【0027】
付加重合系ブロック共重合体(II−1)における重合体ブロック(A)の数平均分子量は2500〜50000の範囲内であるのが好ましく、付加重合系ブロック共重合体(II−1)における重合体ブロック(B)の数平均分子量は10000〜100000の範囲内であるのが好ましい。さらに、付加重合系ブロック共重合体(II−1)の数平均分子量は、12500〜150000の範囲内であるのが好ましい。なお、使用する付加重合系ブロック共重合体(II−1)は1種のみであっても、2種以上であってもよい。
【0028】
付加重合体(II)として用いられるポリオレフィン系樹脂(II−2)は、ポリエステル系樹脂と反応し得る官能基を一方の末端に有するα−オレフィン系樹脂であり、これを構成するα−オレフィン単位を誘導するα−オレフィンとしては、エチレン、プロピレン、1−ブテン、4−メチル−1−ペンテン、1−ヘキセン、1−オクテン等が挙げられる。α−オレフィン系樹脂としては、高密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ−1−ブテン、ポリ(4−メチル−1−ペンテン)等の単独重合体、エチレン/プロピレン共重合体、エチレン/1−ブテン共重合体、エチレン/1−ヘキセン共重合体、エチレン/1−オクテン共重合体等の付加重合系ランダム共重合体または付加重合系ブロック共重合体などを挙げることができる。なかでも、高密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン、ポリプロピレンが好ましい。ここで、例えばポリプロピレンとは、プロピレン単位を主体とするα−オレフィン系樹脂を意味し、プロピレンの単独重合体の他、プロピレン単位以外に少量のエチレン単位、1−ブテン単位等のα−オレフィン単位を含む付加重合系ランダム共重合体および付加重合系ブロック共重合体を包含する。
【0029】
ポリオレフィン系樹脂(II−2)が有するポリエステル系樹脂と反応し得る官能基としては、水酸基、カルボキシル基、チオール基が好ましく、ポリオレフィン系樹脂(II−2)としては、一方の末端に水酸基を0.5〜1個有するポリプロピレン、一方の末端にチオール基を0.5〜1個有するポリプロピレンが好ましい。また、ポリオレフィン系樹脂(II−2)の数平均分子量としては、5000〜1000000の範囲内が好ましい。
【0030】
付加重合体(II)として用いられる芳香族ビニル系樹脂(II−3)は、芳香族ビニル化合物単位を主体とするモノマー単位からなり、これを構成する芳香族ビニル化合物単位を与える芳香族ビニル化合物としては、スチレン、α−メチルスチレン、o−メチルスチレン、m−メチルスチレン、p−メチルスチレン、2,4−ジメチルスチレン、ビニルナフタレン、ビニルアントラセンなどを挙げることができ、その中でもスチレン、α−メチルスチレンが好ましい。芳香族ビニル系樹脂(II−3)は、1種類の芳香族ビニル化合物単位のみから構成されていても、2種類以上の芳香族ビニル化合物単位から構成されていてもよい。
【0031】
芳香族ビニル系樹脂(II−3)が有するポリエステル系樹脂と反応し得る官能基としては、水酸基、カルボキシル基、アミノ基が好ましく、芳香族ビニル系樹脂(II−3)としては、一方の末端に水酸基を0.5〜1個有するポリスチレン、一方の末端にカルボキシル基を0.5〜1個有するポリスチレン、一方の末端にアミノ基を0.5〜1個有するポリスチレンがより好ましい。また、芳香族ビニル系樹脂(II−3)の数平均分子量としては、5000〜1000000の範囲内が好ましい。
【0032】
本発明においては、上記したポリエステル系樹脂(I)と付加重合体(II)を溶融条件下に混合した後、9時間以下の固相重合を行なうことが必要である。ポリエステル系樹脂(I)から誘導されるポリエステルブロック(i)と付加重合体(II)から誘導される重合体ブロック(ii)とからなるブロック共重合体(III)は、ポリエステル系樹脂(I)またはそれから誘導された高分子量化ポリエステル系樹脂(I’)と付加重合体(II)とが反応するか、またはその反応後に高分子量化することによって生成するが、ポリエステル系樹脂(I)と付加重合体(II)を溶融条件下に混合しただけでは、ブロック共重合体(III)の生成量が少なく、得られる熱可塑性樹脂組成物の他のポリマーに対する相容性はあまり高くならない。ポリエステル系樹脂(I)と付加重合体(II)を溶融条件下に混合した後、固相重合することによって、ポリエステル系樹脂(I)またはそれから誘導された高分子量化ポリエステル系樹脂(I’)と付加重合体(II)との反応が効率的に進行し、得られる熱可塑性樹脂組成物の他のポリマーに対する相容性が高くなる。
【0033】
また、本発明に用いるポリエステル系樹脂(I)を構成するジオール単位は炭素数3以上のジオール単位およびエチレングリコール単位を主体とするものであり、エチレングリコール単位の存在によって、ポリエステル系樹脂(I)と付加重合体(II)とを溶融条件下に混合した後、固相重合すると、極めて効率的にポリエステル系樹脂(I)またはそれから誘導された高分子量化ポリエステル系樹脂(I’)と付加重合体(II)との反応が進行し、エチレングリコール単位を含有しないポリエステル系樹脂を用いた場合よりも短時間の固相重合で他のポリマーに対する相容性が良好な熱可塑性樹脂組成物を得ることができる。
【0034】
さらに、本発明者らは、ブロック共重合体(III)の生成には、固相重合時のポリエステル系樹脂(I)またはそれから誘導された高分子量化ポリエステル系樹脂(I’)と付加重合体(II)との混合形態が重要であり、固相重合時に付加重合体(II)のマトリックス中にポリエステル系樹脂(I)またはそれから誘導された高分子量化ポリエステル系樹脂(I’)が島状に分散している場合に、最も効率的にブロック共重合体(III)が生成することを見出した。このような混合形態は、溶融条件下における混合中に、ポリエステル系樹脂(I)を付加重合体(II)のマトリックス中に分散させることにより形成される。そのためには、溶融条件下において、ポリエステル系樹脂(I)の溶融粘度(MVI)および付加重合体(II)の溶融粘度(MVII)が、下記式(7):
MVI≧MVII (7)
を満足するように、ポリエステル系樹脂(I)および付加重合体(II)の種類や分子量を選択し、溶融温度、溶融混合時のせん断速度を調節するのがよい。
【0035】
ポリエステル系樹脂(I)と付加重合体(II)との溶融条件下での混合は、単軸押出機、二軸押出機、ニーダー、バンバリーミキサー等の混練機により行うことができる。混合条件は、ポリエステル系樹脂(I)および装置の種類等を考慮して適宜選択することができるが、通常、180〜300℃で3〜15分行うのがよい。
【0036】
上記の固相重合に際しては、まずポリエステル系樹脂(I)と付加重合体(II)との混合によって得られる樹脂組成物を固化、粒状化する。これを固相重合反応装置へ移し、予備処理として120〜180℃の温度下で乾燥、結晶化等を行った後、固相重合反応を行う。固相重合反応は、不活性気流下または真空中で、通常、ポリエステル系樹脂(I)の融点より5〜60℃低い温度下に、ブロック共重合体(III)と付加重合体(II)とのモル比が20/80以上になるまで行う。固相重合反応装置としては、バッチ式、連続式のいずれを採用してもよく、所望の重合度および反応率になるように、滞留時間、処理温度等を適宜調節する。
【0037】
本発明により得られる熱可塑性樹脂組成物は、ポリエステル系樹脂(I)が上記の固相重合により高分子量化されたポリエステル系樹脂(I’)、付加重合体(II)およびブロック共重合体(III)からなる。そして、該熱可塑性樹脂組成物においては、{ポリエステル系樹脂(I’)の重量およびブロック共重合体(III)に含有されるポリエステルブロック(i)の重量の合計}と{付加重合体(II)の重量およびブロック共重合体(III)に含有される重合体ブロック(ii)の重量の合計}との比は、97/3〜20/80の範囲内であり、95/5〜30/70の範囲内であるのが好ましい。上記の比が97/3より大きい場合には、熱可塑性樹脂組成物の他のポリマーとの相容性が低下し、20/80未満の場合には、熱可塑性樹脂組成物の耐熱性が低下する。
【0038】
また、本発明により得られる熱可塑性樹脂組成物においては、ブロック共重合体(III)と付加重合体(II)とのモル比は20/80以上であり、20/80〜99/1の範囲内が好ましく、30/70〜90/10の範囲内がより好ましい。上記のモル比が、20/80未満の場合は、熱可塑性樹脂組成物の他のポリマーとの相容性が低下する。そして、本発明の熱可塑性樹脂組成物は、ポリエステル系樹脂(I’)、付加重合体(II)およびブロック共重合体(III)を上記の割合で有することにより、耐熱性にも優れるものとなる。
【0039】
本発明により得られる熱可塑性樹脂組成物は、ガラス繊維等の補強剤およびその表面処理剤、酸化防止剤、熱分解防止剤、紫外線吸収剤、タルク等の結晶化核剤、結晶化促進剤、着色剤、難燃剤、充填剤、離型剤、可塑剤、帯電防止剤、加水分解防止剤、接着助剤、粘着剤、上記以外のポリマーなどの1種または2種以上を含有していてもよい。
【0040】
本発明により得られる熱可塑性樹脂組成物は多種類のポリマーとの相容性に優れることから、2種以上の異種ポリマーのポリマーアロイに対する相容化剤として有用である。なかでも、ポリエステル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリアミド系樹脂等を1成分とするポリマーアロイに対する相容化効果に優れており、特にポリエステル系樹脂を1成分とするポリマーアロイ、例えばポリエステル系樹脂/ポリオレフィン系樹脂、ポリエステル系樹脂/付加重合系ブロック共重合体、ポリエステル系樹脂/ABS系樹脂、ポリエステル系樹脂/ポリアミド系樹脂、ポリエステル系樹脂/ポリカーボネート系樹脂、ポリエステル系樹脂/ポリフェニレンエーテル系樹脂、ポリエステル系樹脂/熱可塑性エラストマー、ポリエステル系樹脂/ポリスチレン系樹脂、ポリエステル系樹脂/他のポリエステル系樹脂等のポリマーアロイに対する相容化剤として極めて優れている。
【0041】
また、本発明により得られる熱可塑性樹脂組成物は、ポリエステル系樹脂の耐衝撃性、引張伸び;ポリオレフィン系樹脂、なかでもポリプロピレン系樹脂の耐衝撃性、塗装性、耐候性、引張伸び、耐薬品性;ABS系樹脂の引張伸び、耐薬品性、耐衝撃性;ポリカーボネート系樹脂の低温耐衝撃性、塗装性、弾性、引張強度、流動性、耐薬品性;ポリアミド系樹脂の耐衝撃性、弾性、引張強度、寸法安定性;ポリフェニレンエーテル系樹脂の耐衝撃性、塗装性、耐薬品性;アイオノマーの耐衝撃性、弾性、引張強度、引張伸び、反撥弾性を改良する改良剤として有用である。なかでも、本発明により得られる熱可塑性樹脂組成物は、ポリエステル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリフェニレンエーテル系樹脂、アイオノマーの改良剤として極めて優れている。
さらに、本発明により得られる熱可塑性樹脂組成物は、ポリマーに無機フィラーを微細に分散させる際のフィラー分散剤としても使用できる。
【0042】
本発明により得られる熱可塑性樹脂組成物を上記した相容化剤、改良剤、フィラー分散剤等の樹脂用改質剤として使用する場合には、例えば、1種または2種以上のポリマーと同時に溶融混練する方法、2種以上のポリマーの混合物と溶融混練する方法などを採用することができる。
【0043】
【実施例】
以下、実施例等により本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらにより限定されるものではない。
ポリエステル系樹脂(I)としては、以下の略号で示すものを使用した。
【0044】
EG−co−PBT(10):テレフタル酸単位と1,4−ブタンジオール単位およびエチレングリコール単位とからなるポリエステル系樹脂(1,4−ブタンジオール単位とエチレングリコール単位とのモル比:90/10;250℃、100sec-1における溶融粘度:1800poise)
【0045】
EG−co−PBT(20):テレフタル酸単位と1,4−ブタンジオール単位およびエチレングリコール単位とからなるポリエステル系樹脂(1,4−ブタンジオール単位とエチレングリコール単位とのモル比:80/20;250℃、100sec-1における溶融粘度:1500poise)
【0046】
PBT:株式会社クラレ製ポリブチレンテレフタレート「ハウザーS1000F」(250℃、100sec-1における溶融粘度:2000poise)
【0047】
また、ポリエステル系樹脂と反応し得る官能基を有する付加重合体(II)としては、以下に示すものを使用した。
【0048】
SEEPS−OH;一方のポリスチレンブロック末端に水酸基を有する、ポリスチレンブロック(数平均分子量:6000)/1,3−ブタジエンとイソプレンとの共重合体の水素添加物のブロック(数平均分子量:28000)/ポリスチレンブロック(数平均分子量:6000)のトリブロック共重合体(水酸基含量:0.8個/分子;水素添加前のブロック共重合体基準でのスチレン単位含量:30重量%;イソプレン単位/1,3−ブタジエン単位のモル比が1/1;水素添加前の1,3−ブタジエンとイソプレンとの共重合体ブロック中の1,3−ブタジエン単位における1,4−結合量:95%、3,4−結合量:5%;1,3−ブタジエンとイソプレンとの共重合体の水素添加物のブロック基準の不飽和度:5%;数平均分子量:40000;250℃、100sec-1における溶融粘度:900poise)
【0049】
PP−SH:一方の末端にチオール基を有するポリプロピレン[数平均分子量:10000、チオール基含有量:0.7個/分子;250℃、100sec-1における溶融粘度:測定不能(流動)]
【0050】
PS−OH:一方の分子末端に水酸基を有するポリスチレン[数平均分子量:15000、水酸基含量:0.8個/分子;250℃、100sec-1における溶融粘度:測定不能(流動)]
【0051】
(実施例1)
あらかじめ予備乾燥したEG−co−PBT(10)70重量部およびSEEPS−OH30重量部を予備混合し、二軸押出機(株式会社日本製鋼所製、TEX44C)を用いて250℃で溶融混練し、ペレットを得た。このペレットをガス導入口、排気口、真空連結器等を有する固相重合装置に移し、乾燥および結晶化のため120℃にて約4時間予備処理を行った。その後、反応容器内を約0.2mmHgに減圧し、かつ温度を200℃まで昇温することにより固相重合反応を開始した。9時間後、反応系を窒素ガスで常圧に戻し、熱可塑性樹脂組成物を得た。
【0052】
(実施例2)
あらかじめ予備乾燥したEG−co−PBT(20)70重量部およびSEEPS−OH30重量部を予備混合し、二軸押出機(株式会社日本製鋼所製、TEX44C)を用いて250℃で溶融混練し、ペレットを得た。このペレットをガス導入口、排気口、真空連結器等を有する固相重合装置に移し、乾燥および結晶化のため120℃にて約4時間予備処理を行った。その後、反応容器内を約0.2mmHgに減圧し、かつ温度を200℃まで昇温することにより固相重合反応を開始した。7時間後、反応系を窒素ガスで常圧に戻し、熱可塑性樹脂組成物を得た。
【0053】
(実施例3および4)
SEEPS−OHの代わりにPP−SH(実施例3)、PS−OH(実施例4)を用いた以外は実施例1と同様に溶融混練および固相重合を行い、熱可塑性樹脂組成物を得た。
【0054】
(比較例1)
EG−co−PBT(10)70重量部およびPS−OH30重量部をセパラブルコルベンに仕込み、240℃で窒素気流下12時間脱水反応を行い、熱可塑性樹脂組成物を得た。
【0055】
(参考例1)
あらかじめ予備乾燥したPBT70重量部およびSEEPS−OH30重量部を予備混合し、二軸押出機(株式会社日本製鋼所製、TEX44C)を用いて250℃で溶融混練し、ペレットを得た。このペレットをガス導入口、排気口、真空連結器等を有する固相重合装置に移し、乾燥および結晶化のため120℃にて約4時間予備処理を行った。その後、反応容器内を約0.2mmHgに減圧し、かつ温度を200℃まで昇温することにより固相重合反応を開始した。14時間後、反応系を窒素ガスで常圧に戻し、熱可塑性樹脂組成物を得た。
実施例1〜4、比較例1および参考例1で得られた熱可塑性樹脂組成物の分析結果を下記の表1に示した。
【0056】
【表1】
Figure 0003676014
【0057】
上記の表1の結果から、本発明により得られる実施例1〜4の熱可塑性樹脂組成物は、参考例1の熱可塑性樹脂組成物に比べ、短時間の固相重合により製造されることがわかる。また、固相重合処理を施していない比較例1の熱可塑性樹脂組成物は、ブロック共重合体(III)の含有量が少ないことがわかる。
【0058】
以下に、本発明により得られる熱可塑性樹脂組成物を樹脂用改質剤として使用した例を示す。下記の使用例において、相容性の評価、試験片の作成、耐衝撃性、弾性率、引張降伏強度および引張破断伸びの測定、並びに塗装性の評価は次のようにして行った。
【0059】
相容性の評価
下記の使用例で得られたポリマーアロイにおける相容性の評価はSEM(JEOL製、JSM−T100)による分散状態の観察により行い、分散粒子の粒径が微細になっている状態を相容性が大きいと判断した。また、SEM観察は、ポリマーアロイを液体窒素中で破断した試料、または破断面から一方のポリマー成分を溶出させた試料を用いて行った。
【0060】
試験片の作製
各使用例で得られた樹脂組成物のペレットまたはポリカーボネートのペレットを成形材料として用いて、日精樹脂工業株式会社製の80トン射出成形機を使用して、シリンダー温度275℃および金型温度40℃の条件下で、耐衝撃性試験用の試験片(寸法:長さ×厚さ×幅=64mm×12.7mm×3.2mm)、弾性率と塗装性の測定用の試験片(寸法:長さ×厚さ×幅=128mm×12.7mm×6.4mm)、および引張降伏強度と引張破断伸びの測定用のダンベル形試験片をそれぞれ作製した。
【0061】
耐衝撃性
上記で作製した試験片を用いて、JIS K7110に準じて、アイゾット衝撃試験器(株式会社東洋精機製作所製)を使用して、23℃および−20℃でノッチ付アイゾット衝撃値を測定した。
【0062】
弾性率(曲げ弾性率)
上記で作製した試験片を用いて、JIS K7203に準じて、オートグラフ(株式会社島津製作所製)を使用して、曲げ弾力性を測定した。
【0063】
引張降伏強度および引張破断伸び
上記で作製した試験片を用いて、JIS K7113に準じて、オートグラフ(株式会社島津製作所製)を使用して、引張降伏強度および引張破断伸びを測定した。
【0064】
塗装性の評価
上記で作成した試験片の表面にウレタン系塗料を塗り、110℃、1時間の条件で硬化させた。その後、カッターナイフを用いて硬化塗膜に1mm間隔で100個の碁盤目ができるように切れ目を入れ、その上にセロファン粘着テープを圧着させた後、強く引き剥がした。100個の碁盤目中で剥がれなかった碁盤目状の塗膜の個数の割合により、塗装性を評価した。
【0065】
(使用例1)
ポリブチレンテレフタレート(株式会社クラレ製、ハウザーS1000)80重量部、ポリプロピレン(チッソ株式会社製、K5019)20重量部、および実施例1で得られた熱可塑性樹脂組成物10重量部をあらかじめ予備混合し、二軸押出機(株式会社日本製鋼所製、TEX44C)を用いて250℃で溶融混練し、ポリマーアロイを得た。
【0066】
(使用例2)
ポリブチレンテレフタレート(株式会社クラレ製、ハウザーS1000)80重量部、ポリプロピレン(チッソ株式会社製、K5019)20重量部、および実施例2で得られた熱可塑性樹脂組成物10重量部をあらかじめ予備混合し、二軸押出機(株式会社日本製鋼所製、TEX44C)を用いて250℃で溶融混練し、ポリマーアロイを得た。
【0067】
(使用例3)
ポリブチレンテレフタレート(株式会社クラレ製、ハウザーS1000)80重量部、ポリプロピレン(チッソ株式会社製、K5019)20重量部、および実施例3で得られた熱可塑性樹脂組成物10重量部をあらかじめ予備混合し、二軸押出機(株式会社日本製鋼所製、TEX44C)を用いて250℃で溶融混練し、ポリマーアロイを得た。
【0068】
(使用例4)
ポリブチレンテレフタレート(株式会社クラレ製、ハウザーS1000)80重量部、ポリスチレン(旭化成工業会社製、スタイロンXG805)20重量部、および実施例4で得られた熱可塑性樹脂組成物10重量部をあらかじめ予備混合し、二軸押出機(株式会社日本製鋼所製、TEX44C)を用いて250℃で溶融混練し、ポリマーアロイを得た。
【0069】
(使用例5)
ポリエチレンテレフタレート(株式会社クラレ製、クラペットKS750R)80重量部、ポリスチレン(旭化成工業会社製、スタイロンXG805)20重量部、および実施例1で得られた熱可塑性樹脂組成物10重量部をあらかじめ予備混合し、二軸押出機(株式会社日本製鋼所製、TEX44C)を用いて280℃で溶融混練し、ポリマーアロイを得た。
【0070】
(使用例6)
ポリカーボネート(三菱化成工業株式会社製、ノバレックス7025A)80重量部、ポリプロピレン(チッソ株式会社製、K5019)20重量部、および実施例2で得られた熱可塑性樹脂組成物10重量部をあらかじめ予備混合し、二軸押出機(株式会社日本製鋼所製、TEX44C)を用いて270℃で溶融混練し、ポリマーアロイを得た。
【0071】
(比較使用例1)
使用例1において、実施例1で得られた熱可塑性樹脂組成物を加えない以外は使用例1と同様にして、ポリマーアロイを得た。
【0072】
(比較使用例2)
使用例4において、実施例4で得られた熱可塑性樹脂組成物を加えない以外は使用例4と同様にして、ポリマーアロイを得た。
【0073】
(比較使用例3)
使用例5において、実施例1で得られた熱可塑性樹脂組成物を加えない以外は使用例5と同様にして、ポリマーアロイを得た。
【0074】
(比較使用例4)
使用例6において、実施例2で得られた熱可塑性樹脂組成物を加えない以外は使用例6と同様にして、ポリマーアロイを得た。
【0075】
(比較使用例5)
ポリブチレンテレフタレート(株式会社クラレ製、ハウザーS1000)80重量部、ポリスチレン(旭化成工業会社製、スタイロンXG805)20重量部、および比較例1で得られた熱可塑性樹脂組成物10重量部をあらかじめ予備混合し、二軸押出機(株式会社日本製鋼所製、TEX44C)を用いて250℃で溶融混練し、ポリマーアロイを得た。
【0076】
(参考使用例1)
ポリブチレンテレフタレート(株式会社クラレ製、ハウザーS1000)80重量部、ポリプロピレン(チッソ株式会社製、K5019)20重量部、および参考例1で得られた熱可塑性樹脂組成物10重量部をあらかじめ予備混合し、二軸押出機(株式会社日本製鋼所製、TEX44C)を用いて250℃で溶融混練し、ポリマーアロイを得た。
使用例1〜6、比較使用例1〜5および参考使用例1の評価結果を表2に示した。
【0077】
【表2】
Figure 0003676014
【0078】
上記の表2の結果から、本発明により得られる熱可塑性樹脂組成物を含有する使用例1〜6のポリマーアロイは、比較使用例1〜5のポリマーアロイに比べ、分散粒子の粒径が微細であり、相容性が向上していることがわかる。また、本発明により得られた熱可塑性樹脂組成物は、参考例1で得られた熱可塑性樹脂組成物と同等の相容化作用を有していることがわかる。
【0079】
(使用例7〜10)
ポリカーボネート(帝人化成株式会社製、パンライトL1225)および実施例1または実施例2で得られた熱可塑性樹脂組成物を表3に示した重量割合で、二軸押出機(株式会社日本製鋼所製、TEX44C)を用いて270℃で溶融混練し、樹脂組成物のペレットを得た。このペレットを用いて、試験片を上記に従って作成し、それを用いて、室温における耐衝撃性、−20℃における耐衝撃性、曲げ弾性率、引張降伏強度、引張破断伸び、および塗装性を上記した方法で測定したところ、下記の表3に示すとおりの結果であった。
【0080】
(比較使用例6)
ポリカーボネート(帝人化成株式会社製、パンライトL1225)のペレットを用いて、試験片を上記に従って作成し、それを用いて、室温における耐衝撃性、−20℃における耐衝撃性、曲げ弾性率、引張降伏強度、引張破断伸び、および塗装性を上記した方法で測定したところ、下記の表3に示すとおりの結果であった。
【0081】
(参考使用例2)
ポリカーボネート(帝人化成株式会社製、パンライトL1225)および参考例1で得られた熱可塑性樹脂組成物を表3に示した重量割合で、二軸押出機(株式会社日本製鋼所製、TEX44C)を用いて270℃で溶融混練し、樹脂組成物のペレットを得た。このペレットを用いて、試験片を上記に従って作成し、それを用いて、室温における耐衝撃性、−20℃における耐衝撃性、曲げ弾性率、引張降伏強度、引張破断伸び、および塗装性を上記した方法で測定したところ、下記の表3に示すとおりの結果であった。
【0082】
【表3】
Figure 0003676014
【0083】
上記の表3の結果から、本発明により得られる熱可塑性樹脂組成物を用いた使用例7〜10の樹脂組成物は、比較使用例6のポリカーボネートに比べ、低温における耐衝撃性、曲げ弾性率、引張降伏強度が改良され、かつ塗装性が付与されていることがわかる。また、本発明により得られた熱可塑性樹脂組成物は、参考例1で得られた熱可塑性樹脂組成物と同等の樹脂改質作用を有していることがわかる。
【0084】
【発明の効果】
本発明によれば、多種類のポリマーとの相容性に優れ、互いに非相容である異種ポリマーを相容化させ均一なポリマーアロイを与える相容化剤、他のポリマーにおける耐衝撃性、引張強度、引張伸び、耐熱性、塗装性、耐候性、弾性、反撥弾性、流動性、寸法安定性、耐薬品性等の性能を改良する改良剤などの樹脂用改質剤として有用な熱可塑性樹脂組成物を、短時間に製造することができる。

Claims (6)

  1. 炭素数3以上のジオール単位およびエチレングリコール単位を主体とするジオール単位とジカルボン酸単位とから主としてなり、かつ炭素数3以上のジオール単位とエチレングリコール単位とのモル比が98/2〜50/50であるポリエステル系樹脂(I)、並びにポリエステル系樹脂と反応し得る官能基を一方の末端に0.5〜1個有する付加重合体(II)を前者対後者の重量比が97/3〜20/80の割合で溶融条件下に混合した後、9時間以下の固相重合を行なうことを特徴とする;
    [1]ポリエステル系樹脂(I)から誘導された高分子量化ポリエステル系樹脂(I’)、[2]ポリエステル系樹脂と反応し得る官能基を一方の末端に0.5〜1個有する付加重合体(II)および[3]ポリエステル系樹脂(I)から誘導されるポリエステルブロック(i)と付加重合体(II)から誘導される重合体ブロック(ii)とからなるブロック共重合体(III)からなり;
    {ポリエステル系樹脂(I’)の重量およびブロック共重合体(III)に含有されるポリエステルブロック(i)の重量の合計}と{付加重合体(II)の重量およびブロック共重合体(III)に含有される重合体ブロック(ii)の重量の合計}との比が97/3〜20/80であり;かつ
    ブロック共重合体(III)と付加重合体(II)とのモル比が20/80以上である熱可塑性樹脂組成物の製造方法。
  2. 付加重合体(II)が、芳香族ビニル化合物単位を主体とする重合体ブロック(a−1)および水素添加された1,2−結合量が30%未満のポリブタジエンブロック(a−2)のうちの少なくとも1種からなる重合体ブロック(A)と、水素添加されたポリイソプレンブロック(b−1)および水素添加されたイソプレン/ブタジエン共重合体ブロック(b−2)のうちの少なくとも1種からなる重合体ブロック(B)とからなり、かつポリエステル系樹脂と反応し得る官能基を一方の末端に0.5〜1個有する付加重合系ブロック共重合体(II−1)である請求項1に記載の製造方法。
  3. 付加重合体(II)が、ポリエステル系樹脂と反応し得る官能基を一方の末端に0.5〜1個有するポリオレフィン系樹脂(II−2)である請求項1に記載の製造方法。
  4. 付加重合体(II)が、ポリエステル系樹脂と反応し得る官能基を一方の末端に0.5〜1個有する芳香族ビニル系樹脂(II−3)である請求項1に記載の製造方法。
  5. ポリエステル系樹脂(I)における炭素数3以上のジオール単位が1,4−ブタンジオール単位であり、かつジカルボン酸単位がテレフタル酸単位であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の製造方法。
  6. 溶融条件下における混合中にポリエステル系樹脂(I)を付加重合体(II)のマトリックス中に分散させることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の製造方法。
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