JP3737234B2 - ポリマー用改質剤 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、ポリエーテル系重合体、ポリカーボネート系重合体、ポリアミド系重合体およびアイオノマー系樹脂から選ばれるポリマー用の改質剤に関する。より詳細には、本発明は、ポリエステル系重合体ブロックと特定の付加重合体ブロックを有するポリエステル系共重合体、およびオレフィン系重合体から主としてなる汎用性のある、ポリエーテル系重合体、ポリカーボネート系重合体、ポリアミド系重合体およびアイオノマー系樹脂から選ばれるポリマー用改質剤に関するものであり、本発明の改質剤を前記したポリマーに配合することによって、前記したポリマーの流動性、成形性、耐衝撃性、引張強度、引張伸び、弾性、反撥弾性、耐熱性、耐薬品性、塗装性などの表面加工性、耐候性、寸法安定性などを改良したり、ポリマーの軽量化をはかることができる。そのため、本発明のポリマー用改質剤は、電気/電子部品、自動車部品、機械部品、日用品、事務用部品、その他の広範な用途に用いられる前記ポリマーの改質に極めて有効に使用することができる。
【0002】
【従来の技術】
ポリマーの改質技術は、分子設計に基づく新規なポリマーの開発に比べて、開発経費や開発時間などが大幅に低減できるという利点を有しており、そのため自動車部品、電気・電子部品、機械部品用のポリマーをはじめとして、多くの分野でポリマーの改質に関する研究が盛んに行われている。ポリマーの改質技術のうちでも、有機重合体などの高分子改質剤を被改質ポリマー中にブレンドする方法が、改質剤の成形品表面へのブリードアウトが少なく、しかも設備、手間、時間などの点でも有利に実施できることから重要な位置を占めている。
【0003】
しかしながら、多種類のポリマーに対して共通して使用できる汎用性のあるポリマー用改質剤は極めて少なく、特定のポリマーに対しては改質作用を示すが、別のポリマーに配合した場合には流動性の低下やゲル化などが生じてその改質作用を示さず、むしろ物性低下を招くものが多い。
例えば、ポリマー用の高分子改質剤としては、プロピレン重合体中で(メタ)アクリル酸エステル、(メタ)アクリロニトリル、ビニルエステルなどの単量体と共に分子内にエーテル結合および/またはエステル結合を有する特定のラジカル重合性有機過酸化物単量体を重合してなるグラフト化前駆体またはそのグラフト化物が提案されている(特開昭63−270713号公報、特開昭63−312305号公報および特開昭63−312306号公報)。しかしながら、これらの改質剤は分子中に複数の官能基を有しているために、それを配合するポリマーの種類によっては、流動性の低下やゲル化の発生などの問題がある。
また、芳香族ビニル系重合体ブロックとポリエステルに親和性のある重合体ブロックを有するブロック共重合体からなる樹脂用改質剤が提案されている(特開平2−199127号公報)。しかし、この樹脂用改質剤はオレフィン系重合体などに対しては充分な改質作用をもたず、多種類のポリマーに対して汎用性のある改質剤であるとは言い難い。
【0004】
そのため、多種類のポリマーに対して共通して使用でき、しかも被改質ポリマー中に配合したときにポリマー組成物の流動性の低下やゲル化を生じず、取り扱い性に優れる汎用性のあるポリマー用改質剤が求められてきたが、そのような要望を充分に満たすポリマー用改質剤は未だ得られていないのが現状である。
【0005】
さらに、本発明者らは、汎用性のあるポリマー用の改質剤に関する研究と並行して、ポリエステル系樹脂の物性向上などについても長年研究を行ってきた。そして、そのような研究の一環として、ポリエステル系樹脂および特定の付加重合系ブロック共重合体を含有する重合体組成物中に、ポリエステルブロックと特定の付加重合系共重合体ブロックを有するポリエステル系共重合体[これを「ポリエステル系共重合体(イ)」ということがある]をさらに含有させると、それが相容性向上成分として作用し、ポリエステル系樹脂と該特定の付加重合系ブロック共重合体との相溶性が向上して、ポリエステル系樹脂が本来有する特性、特に高強度やその他の優れた力学的特性、良好な耐熱性、耐薬品性、電気的特性、成形性などの特性と、該特定の付加重合系ブロック共重合体が有する耐衝撃性という両方の特性を備えるポリエステル系樹脂組成物が得られることを見出して先に出願した(特開平8−127710号公報)。
【0006】
【発明の内容】
上記のような状況下に、本発明者らは、多種類のポリマーに対して共通して使用できる汎用性のあるポリマー用改質剤、さらには種々のポリマー中に配合した場合に流動性の低下やゲル化の発生などの問題が生じず、取り扱い性に優れるポリマー用改質剤を開発すべく更に検討を重ねてきた。
また、本発明者らは、そのような研究と並行して、上記した本発明者らによる特開平8−127710号の発明に関して、そのポリエステル系樹脂組成物において、ポリエステル系樹脂と付加重合系ブロック共重合体との間の相溶性向上用成分として用いている上記したポリエステル系共重合体(イ)の物性などについてもさらに詳細に研究を続けてきた。
【0007】
その結果、上記特開平8−127710号の発明で用いているポリエステル系共重合体(イ)が、ポリエステル系樹脂と付加重合系ブロック共重合体との相溶性向上用成分として機能するだけではなく、それ自体でポリエステル系樹脂の改質作用を有し、ポリエステル系樹脂に単独で配合した場合にもポリエステル系樹脂の耐衝撃性や引張伸びなどを向上させ得ることを見出した。
さらに、本発明者らは、そのポリエステル系共重合体(イ)が、ポリエステル系樹脂とは全く異なる他のポリマー、例えばオレフィン系重合体、スチレン系重合体、ポリカーボネート系重合体、ポリアミド系重合体、ポリフェニレンエーテル系重合体、アイオノマー系樹脂などの他のポリマーに対しても良好な改質作用を有し、それらのポリマーの耐衝撃性、引張強度、引張伸び、耐熱性、塗装性、耐候性、弾性、反撥弾性、流動性、寸法安定性、耐薬品性などを向上させる機能を有することを見出し、そのような知見に基づいて先に特許出願した(特願平8−330334号)。
【0008】
そして、本発明者らが、上記した特願平8−330334号の発明をベースにしてさらに検討を重ねた結果、上記したポリエステル系共重合体(イ)からなるポリマー用改質剤にオレフィン系重合体を併用したものが、ポリエステル系共重合体(イ)を単独で用いる場合と同様に、種々のポリマーに対して良好な改質作用を示すこと、そしてオレフィン系重合体を併用する場合は、高価なポリエステル系共重合体(イ)の使用量を低減でき、改質効果の高いポリマー用改質剤を低コストで調製したり提供できること、その場合に、ポリエステル系共重合体(イ)におけるポリエステルブロックと付加重合系共重合体ブロックとの結合形態は、鎖状(いわゆるブロック共重合体状)、分岐状(いわゆるグラフト共重合体状)、放射状およびそれらの共存した形態のいずれであってもよいことを見出し、そのような種々の知見に基づいて本発明を完成した。
【0009】
すなわち、本発明は、(i) ポリエステル系共重合体およびオレフィン系重合体から主としてなる、ポリエーテル系重合体、ポリカーボネート系重合体、ポリアミド系重合体およびアイオノマー系樹脂から選ばれるポリマー用改質剤であって;
(ii) 前記ポリエステル系共重合体が、ポリエステルブロック(I)と、下記の付加重合体ブロック(II−1)および付加重合体ブロック(II−2)から選ばれる少なくとも1種の付加重合体ブロック(II)を有する共重合体である;
○付加重合体ブロック(II−1):
芳香族ビニル化合物単位から主としてなる重合体ブロック(a1)および水素添加された1,2−結合量が30モル%未満のポリブタジエンブロック(a2)のうちの少なくとも1種からなる重合体ブロック(A)と、水素添加されたポリイソプレンブロック(b1)、水素添加された1,2−結合量が30〜80モル%のポリブタジエンブロック(b2)および水素添加されたイソプレン/ブタジエン共重合体ブロック(b3)からなる群から選ばれる少なくとも1種からなる重合体ブロック(B)とからなる付加重合系ブロック共重合体から誘導される付加重合体ブロック;
○付加重合体ブロック(II−2):
芳香族ビニル化合物単位から主としてなる重合体ブロック(C)とイソブチレン単位から主としてなる重合体ブロック(D)とからなる付加重合系ブロック共重合体から誘導される付加重合体ブロック;
ことを特徴とする、ポリエーテル系重合体、ポリカーボネート系重合体、ポリアミド系重合体およびアイオノマー系樹脂から選ばれるポリマー用改質剤である。
【0010】
【発明の実施の形態】
以下に本発明について詳細に説明する。
本発明のポリマー用改質剤(以下「ポリマー用改質剤」という)は、上記のようにポリエステルブロック(I)と付加重合体ブロック(II)を有するポリエステル系共重合体、およびオレフィン系重合体から主としてなっている。
本発明のポリマー用改質剤で用いるポリエステル系共重合体において、ポリエステルブロック(I)と付加重合体ブロック(II)は化学結合によって結合されており、例えばエステル結合、アミド結合、エーテル結合、ウレタン結合などによって結合されている。
その場合にポリエステル系共重合体におけるポリエステルブロック(I)と付加重合体ブロック(II)の結合形態は、鎖状(いわゆるブロック共重合体状)、分岐状(いわゆるグラフト共重合体状)、放射状およびそれらの共存した形態のいずれであってもよく、そのうちでも鎖状形態(ブロック共重合体状)であることが好ましい。
【0011】
ポリエステル系共重合体が鎖状共重合体(ブロック共重合体)である場合は、例えば、1個のポリエステルブロック(I)と1個の付加重合体ブロック(II)が結合しているジブロック共重合体、1個のポリエステルブロック(I)を挟んでその両側にそれぞれ1個の付加重合体ブロック(II)が結合しているトリブロック共重合体、1個の付加重合体ブロック(II)を挟んでその両側にそれぞれ1個のポリエステルブロック(I)が結合しているトリブロック共重合体、ポリエステルブロック(I)と付加重合体ブロック(II)が交互に合計で4個またはそれ以上の個数で結合しているポリブロック共重合体などを挙げることができる。
また、ポリエステル系共重合体が分岐状共重合体(グラフト共重合体)である場合は、例えば、ポリエステルブロック(I)を主鎖としてそれに付加重合体ブロック(II)が側鎖として1個または2個以上結合しているグラフト共重合体、付加重合体ブロック(II)を主鎖としてそれにポリエステルブロック(I)が側鎖として1個または2個以上結合しているグラフト共重合体などを挙げることができる。
【0012】
本発明では、ポリエステル系共重合体として上記したブロック共重合体および/またはグラフト共重合体の1種または2種以上を用いることができる。そのうちでも、被改質ポリマーに配合した場合にその被改質ポリマーが本来有する性質を保持しつつ、ゲルなどを発生することなく、被改質ポリマーの流動性、成形性、耐衝撃性、引張強度、引張伸び、弾性、反撥弾性、耐熱性、耐薬品性、表面加工性、耐候性、寸法安定性などの性質を向上させ得る点から、1個のポリエステルブロック(I)と1個の付加重合体ブロック(II)がブロック状に結合しているジブロック共重合体が好ましく用いられる。
【0013】
ポリエステル系共重合体におけるポリエステルブロック(I)は、熱可塑性のポリエステル系重合体から誘導されるポリエステル系重合体ブロックであればいずれであってもよく、例えば、ポリエチレンテレフタレート系樹脂、ポリブチレンテレフタレート系樹脂、ポリエチレンナフタレート系樹脂、ポリブチレンナフタレート系樹脂、ポリ−1,4−シクロヘキサンジメチレンテレフタレート系樹脂、ポリカプロラクトン系樹脂、p−ヒドロキシ安息香酸系ポリエステル樹脂、ポリアリレート系樹脂などのポリエステル系重合体から誘導される重合体ブロックを挙げることができる。
【0014】
上記したうちでも、本発明のポリマー用改質剤を被改質ポリマーにブレンドしたときに被改質ポリマーが本来有する性質を低下させることなく、流動性、成形性、耐衝撃性、引張強度、引張伸び、弾性、反撥弾性、耐熱性、耐薬品性、塗装性などの表面加工性、耐候性、寸法安定性などの性質を向上させることができ、特に耐薬品性の向上効果が大きいことから、ポリエステル系共重合体におけるポリエステルブロック(I)が、ポリエチレンテレフタレート系樹脂(以下「PET系樹脂」ということがある)およびポリブチレンテレフタレート系樹脂(以下「PBT系樹脂」ということがある)のうちの少なくとも一方から誘導されるポリエステル系重合体ブロックであることが好ましく、特にPBT系樹脂から誘導される重合体ブロックであることが好ましい。
【0015】
ポリエステル系共重合体におけるポリエステルブロック(I)をPBT系樹脂および/またはPET系樹脂から構成する場合は、そのPBT系樹脂はブチレンテレフタル酸単位のみからなるものであっても、PET系樹脂はエチレンテレフタル酸単位のみからなるものであっても、またはその全構造単位に基づいて20モル%以下であれば必要に応じて基本構造を構成するジカルボン酸単位以外の他のジカルボン酸単位、および/または基本構造を構成するジオール単位以外の他のジオール単位を有しているものであってもよい。
【0016】
ポリエステルブロック(I)を構成するPBT系樹脂、PET系樹脂が含み得る他のジカルボン酸単位の例としては、イソフタル酸、フタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、1,5−ナフタレンジカルボン酸、ビス(p−カルボキシフェニル)メタン、アントラセンジカルボン酸、4,4’−ジフェニルエーテルジカルボン酸、5−スルホイソフタル酸ナトリウムなどの芳香族ジカルボン酸;アジピン酸、セバシン酸、アゼライン酸、ドデカンジオン酸などの脂肪族ジカルボン酸;1,3−シクロヘキサンジカルボン酸、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸などの脂環式ジカルボン酸;およびそれらのエステル形成性誘導体(メチルエステル、エチルエステルなどの低級アルキルエステル等)などから誘導されるジカルボン酸単位を挙げることができる。ポリエステル系共重合体におけるポリエステルブロック(I)は、上記したジカルボン酸単位の1種のみを有していても、または2種以上を有していてもよい。
【0017】
また、ポリエステル系共重合体におけるポリエステルブロック(I)が含み得る他のジオール単位の例としては、エチレングリコール(PBT系樹脂の場合)、プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール(PET系樹脂の場合)、ネオペンチルグリコール、2−メチルプロパンジオール、1,5−ペンタンジオールなどの炭素数2〜10の脂肪族ジオール;シクロヘキサンジメタノール、シクロヘキサンジオールなどの脂環式ジオール;ジエチレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリ−1,3−プロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコールなどの分子量6000以下のポリアルキレングリコールなどから誘導されるジオール単位を挙げることができる。ポリエステル系共重合体におけるポリエステルブロック(I)は、上記のジオール単位の1種のみを有していても、または2種以上を有していてもよい。
【0018】
更に、ポリエステル系共重合体におけるポリエステルブロック(I)は、その全構造単位に基づいて1モル%以下であれば、例えばグリセリン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、トリメリット酸、ピロメリット酸などの3官能以上のモノマーから誘導される構造単位を有していてもよい。
【0019】
ポリエステル系共重合体におけるポリエステルブロック(I)は、本発明のポリマー用改質剤をポリマー中に添加したときに、被改質ポリマーの耐衝撃性を一層良好なものにできる点から、その数平均分子量が200〜150000であることが好ましく、200〜50000であることがより好ましい。
【0020】
また、ポリエステル系共重合体における付加重合体ブロック(II)は、上記したように、下記の付加重合体ブロック(II−1)および付加重合体ブロック(II−2)から選ばれる少なくとも1種からなっている。
○付加重合体ブロック(II−1):
芳香族ビニル化合物単位から主としてなる重合体ブロック(a1)[以下これを「芳香族ビニル重合体ブロック(a1)」ということがある]および水素添加された1,2−結合量が30モル%未満のポリブタジエンブロック(a2)[以下これを「水添ポリブタジエンブロック(a2)」ということがある]のうちの少なくとも1種からなる重合体ブロック(A)と、水素添加されたポリイソプレンブロック(b1)[以下これを「水添ポリイソプレンブロック(b1)」ということがある]、水素添加された1,2−結合量が30〜80モル%のポリブタジエンブロック(b2)[以下これを「水添ポリブタジエンブロック(b2)」ということがある]および水素添加されたイソプレン/ブタジエン共重合体ブロック(b3)[以下これを「水添イソプレン/ブタジエン共重合体ブロック(b3)」ということがある]からなる群から選ばれる少なくとも1種からなる重合体ブロック(B)とからなる付加重合系ブロック共重合体から誘導される付加重合体ブロック。
○付加重合体ブロック(II−2):
芳香族ビニル化合物単位から主としてなる重合体ブロック(C)[以下これを「芳香族ビニル重合体ブロック(C)」ということがある]とイソブチレン単位から主としてなる重合体ブロック(D)[以下これを「ポリイソブチレンブロック(D)」ということがある]とからなる付加重合系ブロック共重合体から誘導される付加重合体ブロック。
【0021】
ポリエステル系共重合体における付加重合体ブロック(II)を構成し得る、上記した付加重合体ブロック(II−1)のブロック構造の例としては、下記の一般式(1)〜(4)で表されるものを挙げることができる。
【0022】
【化1】
(A−B)e (1)
(B−A)f (2)
A−(B−A’)g (3)
B’−(A−B)h (4)
[上記式中、AおよびA'はそれぞれ重合体ブロック(A)を示し、BおよびB'はそれぞれ重合体ブロック(B)を示し、e、f、gおよびhはそれぞれ独立して1以上の整数を示す。]
【0023】
上記の一般式(1)〜(4)で表される付加重合体ブロック(II−1)における反復数e、f、gおよびhはそれぞれ任意に決めることができるが、通常、1〜5の範囲内の整数であるのが好ましい。
そして、付加重合体ブロック(II−1)としては、上記の一般式(1)〜(4)で表される付加重合体ブロックのうちでも、上記の一般式(1)においてe=1である式:A−Bで表される付加重合系ジブロック構造または上記の一般式(3)においてg=1である式:A−B−A’で表される付加重合系トリブロック構造がより好ましい。
【0024】
また、ポリエステル系共重合体における付加重合体ブロック(II)を構成し得る、付加重合体ブロック(II−2)のブロック構造の例としては、下記の一般式(5)または(6)で表されるものを挙げることができる。
【0025】
【化2】
C−(D−C’)j (5)
D’−(C−D)k (6)
[上記式中、CおよびC’はそれぞれ芳香族ビニル重合体ブロック(C)を示し、DおよびD’はそれぞれポリイソブチレンブロック(D)を示し、jおよびkはそれぞれ独立して1以上の整数を示す]。
【0026】
上記の一般式(5)または(6)で表される付加重合体ブロック(II−2)におけるjおよびkはそれぞれ任意に決めることができるが、通常、1〜5の範囲内の整数であるのが好ましい。そして、付加重合体ブロック(II−2)としては、上記した一般式(5)または(6)で表される付加重合体ブロック(II−2)のうちでも、上記の一般式(5)においてj=1である式:C−D−C’で表される付加重合系トリブロック構造または上記の一般式(6)においてk=1である式:D'−C−Dで表される付加重合系トリブロック構造が好ましい。
【0027】
付加重合体ブロック(II−1)における重合体ブロック(A)の構成ブロックとなり得る芳香族ビニル重合体ブロック(a1)、および付加重合体ブロック(II−2)を構成することのある芳香族ビニル重合体ブロック(C)は、芳香族ビニル化合物単位を主体とするモノマー単位からなる重合体ブロックである。芳香族ビニル重合体ブロック(a1)および芳香族ビニル重合体ブロック(C)の芳香族ビニル化合物単位を与える芳香族ビニル化合物としては、スチレン、α−メチルスチレン、o−、m−またはp−メチルスチレン、2,4−ジメチルスチレン、ビニルナフタレン、ビニルアントラセンなどを挙げることができる。芳香族ビニル重合体ブロック(a1)および芳香族ビニル重合体ブロック(C)は、1種の芳香族ビニル化合物単位から構成されていても、または2種以上の芳香族ビニル化合物単位から構成されていてもよい。
そのうちでも、本発明のポリマー用改質剤を配合した被改質ポリマーの耐衝撃性、引張強度、引張伸び、耐熱性、塗装性、耐候性、弾性、反撥弾性、流動性、寸法安定性、耐薬品性などの性質の改良効果が高い点から、芳香族ビニル重合体ブロック(a1)および/または芳香族ビニル重合体ブロック(C)はスチレン、α−メチルスチレンから構成されているのが好ましく、スチレンから構成されているのが特に好ましい。
【0028】
また、付加重合体ブロック(II−1)における重合体ブロック(A)の構成ブロックとなり得る水添ポリブタジエンブロック(a2)は、その不飽和結合の一部または全部が水素添加されたポリブタジエンブロックであって且つ1,2−結合量が30%未満である水添ポリブタジエンブロックである。
水添ポリブタジエンブロック(a2)では、1,2−結合量[1,2−結合のブタジエン単位(すなわちビニルエチレン基);−CH(CH=CH2)−CH2−]の割合が25モル%以下であり、残りが2−ブテン−1,4−ジイル基(−CH2−CH=CH−CH2−;1,4−結合のブタジエン単位)であることが好ましい。
また、水添ポリブタジエンブロック(a2)では、不飽和結合の70%以上が水素添加されていることが好ましく、不飽和結合の75〜100%が水素添加されていることがより好ましい。
【0029】
そして、ポリエステル系共重合体の付加重合体ブロック(II−1)における重合体ブロック(B)の構成ブロックとなり得る水添ポリイソプレンブロック(b1)は、イソプレンに由来するモノマー単位から主としてなるポリイソプレンの不飽和結合の一部または全部が水素添加されて飽和結合になっている重合体ブロックである。水添ポリイソプレンブロック(b1)では、その水素添加前には、イソプレンに由来する単位は、2−メチル−2−ブテン−1,4−ジイル基[−CH2−C(CH3)=CH−CH2−;1,4−結合のイソプレン単位]、イソプロペニルエチレン基[−CH{−C(CH3)=CH2}−CH2−;3,4−結合のイソプレン単位]および1−メチル−1−ビニルエチレン基[−C(CH3)(CH=CH2)−CH2−;1,2−結合のイソプレン単位]からなる群より選ばれる少なくとも1種からなっており、各単位の割合は特に限定されない。
また、水添ポリイソプレンブロック(b1)では、不飽和結合の70%以上が水素添加されて飽和結合になっていることが好ましく、不飽和結合の75〜100%が水素添加されて飽和結合になっていることがより好ましい。
【0030】
付加重合体ブロック(II−1)における重合体ブロック(B)の構成ブロックとなり得る水添ポリブタジエンブロック(b2)は、ブタジエンに由来するモノマー単位からなるポリブタジエンの不飽和結合の一部または全部が水素添加されて飽和結合になっており、且つ1,2−結合量が30〜80モル%である水添ポリブタジエンブロックである。水添ポリブタジエンブロック(b2)では、水素添加前には35〜60モル%がビニルエチレン基[−CH(CH=CH2)−CH2−;1,2−結合のブタジエン単位]であり、65〜40モル%が2−ブテン−1,4−ジイル基(−CH2−CH=CH−CH2−;1,4−結合ブタジエン単位)であることが好ましい。
また、水添ポリブタジエンブロック(b2)では、不飽和結合の70%以上が水素添加されて飽和結合になっていることが好ましく、不飽和結合の75〜100%が水素添加されて飽和結合になっていることがより好ましい。
【0031】
また、付加重合体ブロック(II−1)における重合体ブロック(B)の構成ブロックとなり得る水添イソプレン/ブタジエン共重合体ブロック(b3)は、イソプレンに由来する単位およびブタジエンに由来する単位から主としてなっているイソプレン/ブタジエン共重合体であって、且つその不飽和結合の一部または全部が水素添加によって飽和結合になっている共重合体ブロックである。
水添イソプレン/ブタジエン共重合体ブロック(b3)においては、その水素添加前には、イソプレンに由来する単位は、2−メチル−2−ブテン−1,4−ジイル基、イソプロペニルエチレン基および1−メチル−1−ビニルエチレン基からなる群より選ばれる少なくとも1種の基であり、またブタジエンに由来する単位はビニルエチレン基および/または2−ブテン−1,4−ジイル基であるのが好ましい。水素添加前におけるイソプレン/ブタジエン共重合体ブロックにおけるそれらの基の割合は特に制限されない。また、水添イソプレン/ブタジエン共重合体ブロック(b3)において、ブタジエンに由来する単位とイソプレンに由来する単位とは、ランダム状、ブロック状、テーパーブロック状のいずれの配置形態になっていてもよい。
また、水添イソプレン/ブタジエン共重合体ブロック(b3)では、不飽和結合の70%以上が水素添加されて飽和結合になっていることが好ましく、不飽和結合の75〜100%が水素添加されて飽和結合になっていることがより好ましい。
【0032】
そして、付加重合体ブロック(II−1)の構成ブロックとなり得る水添ポリブタジエンブロック(a2)、水添ポリイソプレンブロック(b1)、水添ポリブタジエンブロック(b2)および水添イソプレン/ブタジエン共重合体ブロック(b3)では、上記したように、その炭素−炭素二重結合の一部が水素添加されていても、または全部が完全に水素添加されていてもよいが、付加重合体ブロック(II−1)において、ブタジエン単位および/またはイソプレン単位における炭素−炭素間二重結合の50%以上、特に80%以上が水素添加されていること(すなわち不飽和度が50%以下、特に20%以下になっていること)が、ポリエステル系共重合体の耐熱劣化性および耐候性が良好となり、ひいてはそのポリエステル系共重合体を含むポリマー用改質剤を添加して得られる被改質ポリマーの耐熱劣化性、耐候性が良好になり且つ粘着性の発現を防止できる点から好ましい。
【0033】
また、ポリエステル系共重合体では、その付加重合体ブロック(II−2)におけるポリイソブチレンブロック(D)は、イソブチレン単位[−C(CH3)2−CH2−]から主としてなる重合体ブロックである。
【0034】
ポリエステル系共重合体における付加重合体ブロック(II−1)においては、ポリエステル系共重合体の耐熱性を良好なものにする点から、{重合体ブロック(A)の含有量}:{重合体ブロック(B)の含有量}が1:9〜9:1(重量比)の範囲であることが好ましく、2:8〜7:3(重量比)であることがより好ましい。
また、ポリエステル系共重合体における付加重合体ブロック(II−2)においては、ポリエステル系共重合体の耐熱性を良好なものにする点から、{重合体ブロック(c)の含有量}:{重合体ブロック(d)の含有量}の重量比が、1:9〜9:1の範囲であることが好ましく、2:8〜7:3であることがより好ましい。
【0035】
また、ポリエステル系共重合体の付加重合体ブロック(II−1)における重合体ブロック(A)および付加重合体ブロック(II−2)における芳香族ビニル重合体ブロック(C)は、それぞれその数平均分子量が2500〜50000の範囲にあることが好ましい。
また、ポリエステル系共重合体の付加重合体ブロック(II−1)における重合体ブロック(B)および付加重合体ブロック(II−2)におけるポリイソブチレンブロック(D)の数平均分子量はそれぞれ10000〜100000の範囲にあることが好ましい。
そして、ポリエステル系共重合体の付加重合体ブロック(II−1)および付加重合体ブロック(II−2)の数平均分子量は、それぞれ12500〜150000の範囲にあることが好ましい。
本発明のブロック共重合体改質剤は、1種類または2種類以上の付加重合体ブロック(II−1)を有していても、および/または1種類または2種類以上の付加重合体ブロック(II−2)を有していてもよい。
【0036】
そして、ポリエステルブロック(I)および付加重合体ブロック(II)を有するポリエステル系共重合体は、その全体の数平均分子量が12700〜300000の範囲であることが好ましく、15000〜200000の範囲であることがより好ましい。
【0037】
ポリエステル系共重合体の製造法は特に制限されず、上記したポリエステルブロック(I)と、上記した付加重合体組成物ブロック(II)を有するポリエステル系共重合体を製造し得る方法であればいずれの方法で製造されたものを用いてもよい。何ら限定されるものではないが、ポリエステル系共重合体は、例えば、ポリエステル系樹脂、およびポリエステル系樹脂と反応し得る官能基を分子中に有する付加重合体とを溶融条件下で混練し、続いて固相重合し、その結果得られるポリエステル系反応生成物からポリエステルブロック(I)と付加重合体ブロック(II)を有するポリエステル系共重合体を抽出・回収することにより得ることができる。
【0038】
上記において、ポリエステル系共重合体を製造する際のポリエステル系樹脂と付加重合体との溶融混練は、単軸押出機、2軸押出機、ニーダー、バンバリーミキサーなどの溶融混練装置を用いて行うことができる。溶融混練の条件は、使用するポリエステル系樹脂や付加重合体の種類、装置の種類などに応じて適宜選択することができるが、通常、180〜300℃の温度で1〜15分間程度行うとよい。また、溶融混練後の固相重合は、ポリエステル系樹脂と付加重合体との溶融混練により得られた樹脂を固化し、粒状化した後、それを適当な固相重合反応装置に移し、予備処理として120〜180℃の温度下で乾燥や結晶化などを行い、ついで固相重合させることにより行うことができる。固相重合反応は、通常、ポリエステル系樹脂の融点よりも5〜60℃程度低い温度に保ちながら、不活性気流下または真空中で行うとよい。固相重合はバッチ方式または連続方式のいずれで行ってもよく、固相重合反応装置における滞留時間や処理温度などを適宜調節することによって、所望の重合度および反応率とすることができる。
【0039】
また上記において、固相重合により得られるポリエステル系反応生成物からポリエステルブロック(I)と付加重合体ブロック(II)を有するポリエステル系共重合体を抽出・回収するに当たっては、例えば、ポリエステル系反応生成物をヘキサフルオロイソプロパノール/クロロホルム混合溶媒に溶解させ、その溶液をテトラヒドロフラン中に注入して沈殿させ、沈殿物を回収してクロロホルムに溶解させ、そのクロロホルム溶液から不溶物を濾過などにより除去した後、そのクロロホルム溶液を濃縮、乾固してポリエステルブロック(I)と付加重合体ブロック(II)を有するポリエステル系共重合体を固形分として回収する方法などを採用することができる。
【0040】
また、ポリエステルブロック(I)と付加重合体ブロック(II)を有するポリエステル系共重合体の製造に用いる、ポリエステル系樹脂と反応し得る官能基を有する付加重合体としては、上記した付加重合体ブロック(II)に官能基がついた構造を有する付加重合体が好ましく用いられる。その場合の官能基としては、ポリエステル系樹脂と反応し得る官能基であれば特に制限はなく、例えば、水酸基、カルボキシル基、エステル基、アミド基、アミノ基、エポキシ基、チオール基、チオエステル基、2−オキサゾリン基などの環状イミノエーテル基、無水コハク酸−2−イル基、無水コハク酸−2,3−ジイル基などの酸無水物構造を有する基などを挙げることができる。これらの官能基を有する付加重合体は、例えば、官能基を有するモノマーと官能基を持たないモノマーとの共重合、活性末端を有する付加重合体への官能基を有するモノマーの付加反応、官能基を有するモノマーと付加重合体とのラジカル反応などにより製造することができる。
【0041】
ポリエステル系樹脂と反応し得る官能基を有する付加重合体において、その官能基は、付加重合体の分子主鎖や分子側鎖の途中または分子末端のいずれに位置していてもよいが、付加重合体の末端に官能基を有しているのが好ましく、片末端に官能基を有しているのがより好ましい。片末端に官能基を有する付加重合体とポリエステル系樹脂とを反応させた場合には、本発明で好ましく用いられる1個のポリエステルブロック(I)と1個の付加重合体ブロック(II)を有するジブロック共重合体が得られる。その際に付加重合体における末端官能基の含有量は、平均して1分子当たり0.5〜1個であることが好ましく、0.7〜1個であることがより好ましい。
【0042】
本発明のポリマー用改質剤における第2成分であるオレフィン系重合体としては、オレフィンモノマーから主としてなるモノマー成分を重合または共重合して得られるオレフィン系重合体、およびオレフィン重合体構造を有する重合体(例えば水素添加共役ジエン系重合体のようなオレフィンモノマーの重合により得られる重合体と同じかまたは近似した構造を有する重合体)のいずれも使用できる。そのうちでも、本発明では、オレフィン系重合体として、炭素数2〜20のオレフィンモノマーの単独重合体、1種のオレフィンモノマーと他のオレフィンモノマーおよび/またはオレフィン以外のモノマーとの共重合体、並びに水素添加された共役ジエン系重合体のうちの1種または2種以上が好ましく用いられる。
【0043】
本発明のポリマー用改質剤で用いるオレフィン系重合体の例としては、エチレンの単独重合体や共重合体;プロピレンの単独重合体や共重合体;1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、1−ヘプテン、1−オクテン、1−デセン、2−メチル−1−ブテン、3−メチル−1−ブテン、4−メチル−1−ペンテン、6−メチル−1−ヘプテン、イソオクテン、イソオクタジエン、デカジエンなどの炭素数4〜20のα−オレフィンの単独重合体や共重合体;ブタジエン、イソプレンなどの共役ジエンの単独重合体または共重合体の水素添加物などを挙げることができる。
【0044】
より具体的には、本発明のポリマー用改質剤で用い得るオレフィン系重合体の例としては、低密度、中密度、高密度ポリエチレン;エチレンと炭素数3〜20のα−オレフィン、好ましくは炭素数3〜10のα−オレフィン(例えばプロピレン、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、1−ヘプテン、1−オクテン、1−デセン、2−メチル−1−ブテン、3−メチル−1−ブテン、4−メチル−1−ペンテン、6−メチル−1−ヘプテン、イソオクテン、イソオクタジエン、デカジエンなど)の共重合体、エチレンと前記したα−オレフィンとジエンとの共重合体[例えばエチレン/プロピレン/ジエン共重合体(EPDM)];ポリプロピレン;プロピレンと炭素数4〜20、好ましくは炭素数4〜10の上記したようなα−オレフィンとの共重合体;水素添加されたポリブタジエン重合体ブロックと芳香族ビニル化合物重合体ブロックを有するブロック共重合体;水素添加されたイソプレン重合体ブロックと芳香族ビニル化合物重合体ブロックを有するブロック共重合体;水素添加されたブタジエン/イソプレン共重合体ブロックと芳香族ビニル化合物重合体ブロックを有するブロック共重合体などを挙げることができる。そして、エチレン共重合体やプロピレン共重合体では、各共重合単位の結合単位はランダム状、テーパー状、ブロック状またはそれらの2つ以上の混在状のいずれであってもよい。
本発明のポリマー用改質剤では、上記したオレフィン系重合体の1種または2種以上を用いることができる。
【0045】
上記したうちでも、本発明のポリマー用改質剤では、そのオレフィン系重合体として、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン/α−オレフィン共重合体、水素添加された共役ジエン共重合体のうちの1種または2種以上が好ましく用いられる。その際に、エチレン/α−オレフィン共重合体としては、エチレン単位:α−オレフィン単位の重量比が50:50〜98:2の範囲のものが好ましく用いられ、60:40〜90:10の範囲のものがより好ましく用いられる。
【0046】
また、オレフィン系重合体として、その重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)との比(Mw/Mn)が4以下のものを用いることが好ましく、3.5以下のものを用いることがより好ましい。その場合には、本発明のポリマー用改質剤を配合してなる被改質ポリマーの常温での耐衝撃性および低温領域での耐衝撃性が良好なものとなる。
【0047】
本発明のポリマー用改質剤で好ましく用いられる、重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)との比(Mw/Mn)が4以下であるオレフィン系重合体の製造方法は何ら限定されず、市販のものをそのまま用いても、または重合により製造してもよい。何ら限定されるものではないが、重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)との比(Mw/Mn)が4以下のオレフィン系重合体は、例えば、重合活性点が均一なシングルサイト触媒(カミンスキー触媒と称されることもある)を用いて、溶液重合、塊状重合、気相重合などによって、通常0〜250℃の温度範囲で、常圧〜1000気圧の圧力下に、オレフィン類を重合させることによって製造することができる。その際のシングルサイト触媒としては、例えば、4価の遷移金属化合物からなるメタロセン化合物1モルと、メチルアルミノキサンおよび/または非配位性ホウ素化合物2〜1000000モル(好ましくは50〜5000モル)からなるものが用いられる。
【0048】
上記したメタロセン化合物の具体例としては、シクロペンタジエニルチタニウムトリス(ジメチルアミド)、メシルシクロペンタジエニルチタニウムトリス(ジメチルアミド)、ビス(シクロペンタジエニル)チタニウムジクロライド、ジメチルシリルテトラメチルシクロペンタジエニル−t−ブチルアミドジルコニウムジクロライド、ジメチルシリルテトラメチルシクロペンタジエニル−t−ブチルアミドハフニウムジクロライド、ジメチルシリルテトラメチルシクロペンタジエニル−p−n−ブチルフェニルアミドジルコニウムジクロライド、メチルフェニルシリルテトラメチルシクロペンタジエニル−t−ブチルアミドハフニウムジクロライド、(t−ブチルアミド)(テトラメチル−シクロペンタジエニル)−1,2−エタンジイルチタンジクロライド、インデニルチタニウムトリス(ジメチルアミド)、インデニルチタニウムトリス(ジエチルアミド)、インデニルチタニウムビス(ジ−n−ブチルアミド)(ジ−n−プロピルアミド)などを挙げることができる。
【0049】
また、本発明のポリマー用改質剤で用いるオレフィン系重合体は、そのメルトインデックス(以下「MI」ということがある)が0.1〜50g/10分の範囲にあることが好ましく、0.1〜15g/分の範囲にあることがより好ましい。その場合には、該オレフィン系重合体を含む本発明のポリマー用改質剤を添加してなる被改質ポリマーの耐衝撃性の改質効果が大きくなる。なお、本明細書でいうオレフィン系重合体のMIは、JIS K 7210に準じて、190℃、2.16kg荷重の条件下に測定したときの値をいう。
【0050】
さらに、本発明のポリマー用改質剤で用いるオレフィン系重合体は、その弾性率が、1×109dyn/cm2以下であることが好ましく、5×108dyn/cm2以下であることがより好ましい。その場合には、該オレフィン系重合体を含む本発明のポリマー用改質剤を添加してなる被改質ポリマーの耐衝撃性の改質効果が大きくなる。なお、本明細書でいうオレフィン系重合体の弾性率は、オレフィン系重合体フイルムからなる試験片(縦×横×厚さ=30mm×5mm×1mm)を用いて、動的粘弾性測定装置(株式会社レオロジ社製「動的粘弾性測定装置DVE−V4」)を用いて23℃で測定したときの貯蔵弾性率をいう。
【0051】
また、本発明のポリマー用改質剤で用いるオレフィン系重合体は、その比重が0.86〜0.96であることが好ましく、0.86〜0.90であることがより好ましい。その場合には、該オレフィン系重合体を含む本発明のポリマー用改質剤を添加してなる被改質ポリマーの低比重化(軽量化)をはかることができる。
【0052】
本発明のポリマー用改質剤は、ポリエステル系共重合体:オレフィン系重合体の重量比が80:20〜10:90の範囲内にあることが好ましく、70:30〜20:80の範囲内にあることがより好ましい。ポリエステル系共重合体とオレフィン系重合体の合計重量に基づいて、オレフィン系重合体の割合が90重量%よりも多いと、本発明のポリマー用改質剤を被改質ポリマーに添加したときに、耐衝撃性の改良効果が充分に発揮できず、また塗装性などの表面加工性、耐熱性の向上効果も発揮されにくくなる。また、本発明のポリマー用改質剤において、ポリエステル系共重合体とオレフィン系重合体の合計重量に基づいて、オレフィン系重合体の割合が20重量%よりも少なくても被改質ポリマーの物性改質効果に対する影響は小さいが、ポリマー用改質剤におけるポリエステル系共重合体の使用量を低減させて低コスト化をはかるという本発明のもう一つの目的を達成しにくくなる。
本発明では、ポリエステルブロック(I)と上記した付加重合体ブロック(II)からなるポリエステル系共重合体に対してオレフィン系重合体を組み合わせてポリマー用改質剤として用いることによって、高価な該ポリエステル系共重合体の使用量を低減させて低コスト化をはかりながら、種々の被改質ポリマーの各種物性の向上を円滑にはかることができる。
【0053】
また、本発明のポリマー用改質剤では、オレフィン系重合体の重量に対して、ポリエステル系共重合体における付加重合体ブロック(II)の割合が5重量%以上になっていることが好ましく、10重量%以上になっていることがより好ましい。付加重合体ブロック(II)の割合が上記した5重量%以上である場合には、被改質ポリマーに本発明のポリマー用改質剤を添加したときに、その耐衝撃性、成形加工性の向上効果が一層良好に発揮される。
【0054】
本発明のポリマー用改質剤は、必要に応じて、酸化防止剤、熱分解防止剤、紫外線吸収剤、着色剤、難燃剤、補強剤、充填剤、離型剤、可塑剤、帯電防止剤、耐加水分解防止剤、接着助剤、粘着剤などの成分の1種または2種以上を含有していてもよく、或いはこれらの成分の1種または2種以上を、本発明のポリマー用改質剤を被改質ポリマーに添加する際に一緒に添加してもよい。
【0055】
上記したポリエステル系共重合体とオレフィン系重合体から主としてなる本発明の改質剤は、ポリマー用改質剤であるから、被改質ポリマーに配合して用いられる。本発明のポリマー用改質剤の使用対象である被改質ポリマーは、ポリフェニレンエーテルなどのポリエーテル系重合体、ポリカーボネート系重合体、ポリアミド系重合体およびアイオノマー系樹脂から選ばれるポリマーである
【0056】
本発明のポリマー用改質剤の被改質ポリマーへの配合量は特に制限されず、被改質ポリマーの種類、物性、用途などに応じて調節できるが、一般には、被改質ポリマー100重量部に対して、本発明のポリマー用改質剤を2〜50重量部、好ましくは3〜30重量部の割合で配合すると、その改質効果が良好に発揮される。
【0057】
改質ポリマーがポリカーボネート系重合体の場合は、本発明のポリマー用改質剤を、好ましくはポリカーボネート系重合体100重量部当たり上記した2〜50重量部、より好ましく3〜30重量部の割合で添加することにより、ポリカーボネート系重合体の耐衝撃性、特に低温耐衝撃性、塗装性などの表面加工性、弾性、引張強度、引張伸び、流動性、耐薬品性などを向上させることができる。その場合に、被改質ポリカーボネート系重合体の種類は特に制限されず、従来既知のポリカーボネート系重合体のいずれに対しても有効に用いることができ、例えば、ビスフェノールA、ヒドロキノン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ペンタン、2,4−ジヒドロキシジフェニルメタン、ビス(2−ヒドロキシフェニル)メタン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)メタンなどの2価のフェノール類と、ホスゲン、ハロゲンホルメート、カーボネートエステルなどのカーボネート前駆体とから製造されるポリカーボネート系樹脂などを挙げる。
【0058】
また、被改質ポリマーがポリフェニレンエーテル系重合体の場合は、本発明のポリマー用改質剤を、好ましくはポリフェニレンエーテル系重合体100重量部当たり上記した2〜50重量部、より好ましく3〜30重量部の割合で添加することにより、ポリフェニレンエーテル系重合体の耐衝撃性、塗装性などの表面加工性、耐薬品性などを向上させることができる。その際に、被改質ポリフェニレンエーテル系重合体の種類は特に制限されず、置換または非置換のフェニレン基が酸素を介してエーテル結合している従来既知のポリフェニレンエーテル系重合体のいずれに対しても有効に用いることができ、例えば、2,6−キシレノールを原料とするポリフェニレンエーテルなどを挙げることができる。
0059
また、被改質ポリマーがリアミド系重合体の場合は、本発明のポリマー用改質剤を、好ましくはポリアミド系重合体100重量部当たり上記した2〜50重量部、より好ましくは3〜30重量部の割合で添加することにより、ポリアミド系重合体の耐衝撃性、弾性、引張伸び、寸法安定性などを向上させることができる。その際にポリアミド系重合体の種類は特に制限されず、いずれのポリアミドに対して有効であり、例えば、ナイロン6、ナイロン66、ナイロン610、ナイロン612、ナイロン46、ナイロン11、ナイロン12などの脂肪族鎖を主体とするポリアミド類、ポリパラフェニレンテレフタルアミド、ポリメタフェニレンイソフタルアミドなどの芳香族環に直結したアミド結合を有するアラミド類などを挙げることができる。
0060
そして、被改質ポリマーがイオノマー系樹脂の場合は、本発明のポリマー用改質剤を、好ましくはアイオノマー系樹脂100重量部当たり上記した2〜50重量部、より好ましくは3〜30重量部の割合で添加することにより、アイオノマー系樹脂の耐衝撃性、弾性、引張強度、引張伸び、反撥弾性などを向上させることができる。その場合に、アイオノマー系樹脂の種類は特に制限されず、従来既知のアイオノマー系樹脂のいずれに対しても有効であり、例えば、エチレン、プロピレンなどのオレフィン類やスチレンなどのような非極性単量体とα,β−不飽和カルボン酸との共重合体を金属イオンで架橋してなるアイオノマー系樹脂を挙げることができる。
0061
さらに、本発明のポリマー用改質剤は、1種類の被改質ポリマー中に配合して用いる場合だけではなく、2種以上のポリマーからなるポリマー組成物中に配合して改質されたポリマー組成物を調製するのに用いることもできる。
また、本発明のポリマー用改質剤は、ポリマーに無機充填剤などを配合する際に、それをポリマー中に微細に分散させるための分散性向上剤などとしても有効に使用することができる。
0062
本発明のポリマー用改質剤の被改質ポリマーへの配合方法は特に制限されず、被改質ポリマーの種類や性質などに応じて適当な方法を採用して行えばよく、例えば、本発明のポリマー用改質剤を構成するポリエステル系共重合体とオレフィン系重合体の各々を所定の量で被改質ポリマー中に個別に配合しても、ポリマー用改質剤を構成するポリエステル系共重合体とオレフィン系重合体を予めドライブレンドしたものを被改質ポリマーの配合しても、ポリマー用改質剤を構成するポリエステル系共重合体およびオレフィン系重合体を溶融混合してペレットやその他の形状のポリマー用改質剤を予め調製しておいてそれを被改質ポリマーに配合してもよい。
0063
そして、被改質ポリマーが熱可塑性重合体である場合は、被改質ポリマー中に上記したいずれかの方法で本発明のポリマー用改質剤を配合した後に、または配合すると同時に、適当な溶融混練装置、例えば単軸押出機、二軸押出機、ニーダー、バンバリーミキサーなの混練機を使用して溶融混練することによって、本発明のポリマー用改質剤によって改質された被改質ポリマー組成物を得ることができる。
本発明のポリマー用改質剤を含有する改質されたポリマー組成物の成形方法なども何ら制限されず、各々のポリマー組成物の物性などに応じて、例えば、射出成形、押出成形、プレス成形、ブロー成形、カレンダー成形、流延成形などの任意の成形法によって成形することができる。さらに、改質されたポリマー組成物の用途は成形品の製造に限られず、それぞれの被改質ポリマーの物性や用途などに応じて、例えば、塗料、接着剤、シーラント、繊維、その他の用途に用いることができる。
0064
【実施例】
以下に本発明を実施例等により具体的に説明するが、本発明はそれにより限定されない。以下の試験例および比較試験例において、試験片の作製、比重の測定、衝撃強度、曲げ弾性率、引張降伏強度および引張破断伸びの測定、並びに表面加工性および耐薬品性の評価は次のようにして行った。
0065
試験片の作製:
以下の試験例または比較試験例で得られた樹脂組成物のペレット、ポリフェニレンエーテル樹脂、ポリカーボネート樹脂またはポリプロピレン樹脂のペレットを成形材料として用いて、日精樹脂工業株式会社製の80トン射出成形機を使用して、シリンダー温度275℃および金型温度40℃の条件下で、比重測定用の試験片および衝撃強度測定用の試験片(寸法:長さ×厚さ×幅=64mm×12.7mm×3.2mm)、曲げ弾性率測定用および表面特性評価用の試験片(寸法:長さ×厚さ×幅=128mm×12.7mm×6.4mm)、引張降伏強度と引張破断伸びの測定用のダンベル形試験片(JIS 1号ダンベル)、および表面性評価用試験片(寸法:長さ×厚さ×幅=80mm×80mm×3.2mm)をそれぞれ作製した。
0066
比重の測定:
実施例、比較例で得られた樹脂組成物を用いて上記で作製した試験片を使用して、JIS 7112のA法(水中置換法)により比重を求めた。
0067
衝撃強度の測定:
上記で作製した試験片を用いて、JIS K7110に準じて、アイゾット衝撃試験器(株式会社東洋精機製作所製)を使用して、23℃でノッチ付アイゾット衝撃値を測定した。
0068
曲げ弾性率の測定:
上記で作製した試験片を用いて、JIS K7203に準じて、オートグラフ(株式会社島津製作所製)を使用して曲げ弾性率を測定した。
0069
引張降伏強度および引張破断伸びの測定:
上記で作製した試験片を用いて、JIS K7113に準じて、オートグラフ(株式会社島津製作所製)を使用して引張降伏強度を測定した。
0070
成形品の表面性の評価:
実施例、比較例で得られた樹脂組成物の表面性評価試験用試験片を用いて、目視によりゲート付近の成形品の表面を観察した。成形品表面の平滑性および光沢が良好なものを○とし、良好でないものを△として評価した。
0071
耐薬品性の評価:
ベルゲン(Bergen)の1/4楕円法に準拠して評価した。すなわち、以下の実施例または比較例で得られた樹脂組成物のペレット、或いはポリブチレンテレフタレート(PBT)のペレットを成形材料として用いて、温度220℃、圧力100kg/cm2の条件下にプレス成形を行って、厚さ2mmの成形品を製造し、そのプレス成形品を200mm×200mmの寸法に切り出して試験片とし、80℃で48時間アニーリングした後、試験片を一定の曲率(曲歪み率=0.2〜1.6%)を持つ各々の治具に取り付けた。その後、ガーゼにアセトンをしみ込ませたものを成形品上に置き、そのまま温度23℃で密閉容器内に24時間放置し、クラックを生じている最小の曲げ歪み率の値(%)を耐薬品性の指標とした。この値が大きいほど、耐薬品性に優れていることを示す。
0072
また、以下の例で用いたポリマー用改質剤の構成成分であるオレフィン系重合体(ポリプロピレン樹脂、エチレン/オクテン−1共重合体およびエチレン/ブテン−1共重合体);被改質ポリマーであるポリフェニレンエーテル樹脂、ポリカーボネート樹脂およびポリプロピレン樹脂;ポリマー用改質剤の構成成分であるポリエステル系共重合体の製造に用いた末端水酸基含有水添付加重合系ブロック共重合体(水添SBIS−OH);比較例試験例で用いたポリブチレンテレフタレート樹脂および水素添加付加重合系ブロック共重合体(水添SBIS)の内容および略号は、下記に示すとおりである。
0073
○ポリマー用改質剤成分であるオレフィン系重合体:
(i)ポリプロピレン樹脂(i):
株式会社グランドポリマー製「J106W」[Mw/Mn=5.1、MI=15g/10分(190℃、2.16kg荷重)
(ii)エチレン/オクテン−1共重合体:
ダウ・ケミカル日本株式会社製「EG8200」[Mw/Mn=3.7、MI=5g/10分(190℃、2.16kg荷重)
(iii)エチレン/ブテン−1共重合体:
住友化学工業株式会社製「エスプレンN 0416」[Mw/Mn=5.1、MI=7g/10分(190℃、2.16kg荷重)]
0074
○ポリプロピレン樹脂(ii):
株式会社グランドポリマー製「J104W」
○ポリフェニレンエーテル樹脂:
株式会社日本GEP製「PP 0534」
○ポリカーボネート樹脂:
帝人化成株式会社製「L1225」
○ポリブチレンテレフタレート樹脂:
株式会社クラレ製「S1000F」([η]=0.85)(「PBT」と略記)
0075
○水素添加付加重合系ブロック共重合体(水添SBIS):
ポリスチレンブロック(数平均分子量6000)/1,3−ブタジエンとイソプレンの水添共重合体ブロック(数平均分子量28000)/ポリスチレンブロック(数平均分子量6000)からなる官能基を持たないトリブロック共重合体(トリブロック共重合体の数平均分子量40000;水添前のスチレン含量30重量%;水素添加前の1,3−ブタジエンとイソプレンの共重合体ブロックにおいて1,3−ブタジエンとイソプレンのモル比=1/1;1,3−ブタジエン単位での1,4−結合量=95モル%、3,4−結合量=5モル%;1,3−ブタジエン単位およびイソプレン単位における不飽和度=5%、官能基数=0個/分子、Mw/Mn=1.11)(以下「水添SBIS」と略記する)
0076
○末端水酸基含有付加重合系ブロック共重合体(水添SBIS−OH):
一方のポリスチレンブロックの末端に水酸基を1個有する以外は、上記の水添SBISと全く同じである水添された片末端水酸基含有トリブロック共重合体(水酸基0.8個/分子)(以下「水添SBIS−OH」と略記する)
0077
《参考例1》[ポリエステル系共重合体(i)の製造]
(1) 予備乾燥したPBTの50重量部および水添SBIS−OHの50重量部を予備混合し、二軸押出機(株式会社日本製鋼所製「REX44C」)に供給して250℃の温度で溶融混練した後ストランド状に押し出し、冷却、切断してペレットを得た。このペレットをガス導入口、排気口、真空連結器などを有する固相重合装置に移して、窒素ガスの導入下に120℃で約4時間処理して乾燥および結晶化を行った。その後、固相重合装置の内圧を約0.2mmHgまで減圧するとともに200℃まで昇温して固相重合反応を開始した。約12時間の固相重合反応の後に、窒素ガスを供給して系を常圧に戻して、ポリエステル系反応生成物を得た。
(2) 上記(1)で得られたポリエステル系反応生成物を、ヘキサフルオロイソプロパノール/クロロホルム混合溶媒(体積比1/1)に溶解させ、その溶液をテトラヒドロフランに注入して沈殿を生成させ、その沈殿物を回収した。沈殿を回収した後のテトラヒドロフラン溶液を濃縮することにより、未反応の水添SBIS−OHを回収し、ポリエステル系反応生成物における水添SBIS−OHの反応率を算出した結果、水添SBIS−OHの68%がPBTと反応していた。
0078
(3) 上記(2)で得られた沈殿物をクロロホルム中に添加して加熱還流した後、固形分を濾別して除去し、クロロホルム溶液を濃縮、乾固することによって、PBTブロックと水添SBISブロックからなるポリエステル系共重合体[以下「ポリエステル系共重合体(i)」という]を単離した。
(4) 上記(3)で得られたポリエステル系共重合体(i)のNMR測定を行ったところ、PBTの化学構造に由来するピークと水添SBIS−OHの化学構造に由来するピークの両方を示し、且つ使用した水添SBIS−OHにおいて認められた分子末端の水酸基に隣接するメチレンプロトンのピークの化学シフトが移動していた。さらに該ポリエステル系共重合体(i)のGPC測定を行ったところ、単一の分子量を示し、且つその数平均分子量から、上記(3)で得られたポリエステル系共重合体(i)は、1個のPBTブロックと1個の水添SBISブロックとからなるジブロック共重合体であると同定された。
0079
《参考例2》[ポリエステル系共重合体(ii)の製造]
(1) テレフタル酸ジメチル88重量部、1,4−ブタンジオール49重量部およびテトライソプロピルチタネート0.035重量部を反応槽に仕込み(PBTの理論量100重量部)、常圧下に170℃から230℃まで徐々に昇温しながら加熱してエステル交換反応を行い、メタノールが28重量部留出した時点でエステル交換反応を停止した。その後、水添SBIS−OHの30重量部を添加し、次いで系を減圧にして重縮合反応系に移行させた。すなわち、約30分かけて、系の反応温度を230℃から250℃に昇温させ且つ圧力を常圧から0.2mmHgまで減じた。この反応温度および圧力の下で約60分間重縮合反応を行った。次に、反応槽に窒素ガスを供給して系を常圧に戻すことにより重縮合反応を停止させ、ポリエステル系反応生成物を得た。
(2) 上記(1)で得られたポリエステル系反応生成物を、ヘキサフルオロイソプロパノール/クロロホルム混合溶媒(体積比1/1)に溶解させ、その溶液をテトラヒドロフランに注入して沈殿を生成させ、その沈殿物を回収した。沈殿を回収した後のテトラヒドロフラン溶液を濃縮することにより、未反応の水添SBIS−OHを回収し、ポリエステル系反応生成物における水添SBIS−OHの反応率を算出した結果、水添SBIS−OHの82%が、上記(1)の反応で生成したPBTと反応していた。
0080
(3) 上記の(2)で回収した沈殿物をクロロホルム中に添加して加熱還流した後、固形分を濾別して除去し、クロロホルム溶液を濃縮、乾固することによって、PBTブロックと水添SBISブロックからなるポリエステル系共重合体[以下「ポリエステル系共重合体(ii)」という]を単離した。
(4) 上記(3)で得られたポリエステル系共重合体(ii)のNMR測定を行ったところ、PBTの化学構造に由来するピークと水添SBIS−OHの化学構造に由来するピークの両方を示し、且つ使用した水添SBIS−OHにおいて認められた分子末端の水酸基に隣接するメチレンプロトンのピークの化学シフトが移動していた。さらに該ポリエステル系共重合体(ii)のGPC測定を行ったところ、2つの分子量ピークを示し、2成分の混合物であることが判明した。そしてその数平均分子量から、上記(3)で得られたポリエステル系共重合体(ii)のうち、高分子量の成分は1個のPBTブロックの両端にそれぞれ1個の水添SBISが結合しているトリブロック共重合体であり、その低分子量の成分は1個のPBTブロックと1個の水添SBISブロックとからなるジブロック共重合体であると同定された。また、ポリエステル系共重合体(ii)におけるトリブロック共重合体:ジブロック共重合体の重量比は、37:63であった。
0081
《実施例1》[ポリマー用改質剤( )の調製]
上記の参考例1で得られたポリエステル系共重合体(i)とポリプロピレン樹脂(i)(株式会社グランドポリマー製「J106W」)のペレットを40:60の重量比で予備混合し、二軸押出機(株式会社日本製鋼所製「TEX44C」)に供給して250℃で溶融混練した後、ストランド状に押し出し、冷却、切断してポリマー用改質剤のペレットを調製した(以下「ポリマー用改質剤( )」という)。
0082
《実施例2》[ポリマー用改質剤(II)の調製]
上記の参考例1で得られたポリエステル系共重合体(i)とエチレン/オクテン−1共重合体(ダウ・ケミカル日本株式会社製「EG8200」)のペレットを20:80の重量比で予備混合し、二軸押出機(株式会社日本製鋼所製「TEX44C」)に供給して250℃で溶融混練した後、ストランド状に押し出し、冷却、切断してポリマー用改質剤のペレットを調製した(以下「ポリマー用改質剤(II)という)。
0083
《実施例3》[ポリマー用改質剤(III)の調製]
上記の参考例2で得られたポリエステル系共重合体(ii)とエチレン/ブテン−1共重合体(住友化学工業株式会社製「エスプレンN 0416」)のペレットを20:80の重量比で予備混合し、二軸押出機(株式会社日本製鋼所製「TEX44C」)に供給して250℃で溶融混練した後、ストランド状に押し出し、冷却、切断してポリマー用改質剤のペレットを調製した(以下「ポリマー用改質剤(III)という)。
0084
《試験例1〜3》
ポリフェニレンエーテル樹脂のペレット100重量部と、上記の実施例1〜3で調製しポリマー用改質剤( )(III)のペレットの1種20重量部を予備混合し、二軸押出機(株式会社日本製鋼所製「TEX44C」)に供給して250℃で溶融混練した後、ストランド状に押し出し、冷却、切断して、ポリフェニレンエーテル樹脂組成物のペレットを製造した。それにより得られたペレットを用いて、上記した方法で試験片を作製して、比重の測定、衝撃強度、曲げ弾性率、引張降伏強度および引張破断伸びの測定、並びに表面特性の評価を行ったところ、下記の表1に示すとおりであった。
0085
《比較試験例1〜3》
ポリフェニレンエーテル樹脂のペレットをそのまま用いて、またはポリフェニレンエーテル樹脂のペレット100重量部とPBT樹脂または水添SBISのペレット20重量部を用いて試験例1〜3と全く同様にしてポリフェニレンエーテル樹脂組成物のペレットを製造し、それらのペレットを用いて、上記した方法で試験片を作製して、比重の測定、衝撃強度、曲げ弾性率、引張降伏強度および引張破断伸びの測定、並びに表面特性の評価を行ったところ、下記の表1に示すとおりであった。
0086
【表1】
Figure 0003737234
0087
上記の表1の結果から、本発明のポリマー用改質剤を配合した試験例1〜3のポリフェニレンエーテル樹脂組成物では、ポリマー用改質剤を配合していない比較試験例1のポリフェニレンエーテル樹脂、およびPBT樹脂を配合してなる比較試験例2のポリフェニレンエーテル樹脂組成物に比べて、耐衝撃性および耐薬品性が大幅に向上し、低比重化(軽量化)され、表面加工性が向上していること、また水添SBISを配合してなる比較試験例3のポリフェニレンエーテル樹脂組成物に比べて、引張降伏強度や曲げ弾性率などの力学的特性が向上し、低比重化がなされていることがわかる。
0088
《試験例4〜6》
ポリカーボネート樹脂のペレット100重量部と、上記の実施例1〜3で調製しポリマー用改質剤( )(III)のペレットの1種20重量部を予備混合し、二軸押出機(株式会社日本製鋼所製「TEX44C」)に供給して250℃で溶融混練した後、ストランド状に押し出し、冷却、切断して、ポリカーボネート樹脂組成物のペレットを製造した。それにより得られたペレットを用いて、上記した方法で試験片を作製して、比重の測定、衝撃強度、曲げ弾性率、引張降伏強度および引張破断伸びの測定、並びに表面特性の評価を行ったところ、下記の表2に示すとおりであった。
0089
《比較試験例4〜6》
ポリカーボネート樹脂のペレットをそのまま用いて、またはポリカーボネート樹脂のペレット100重量部とPBT樹脂またはポリプロピレン樹脂(ii)のペレット20重量部を用いて試験例4〜6と全く同様にしてポリカーボネート樹脂組成物のペレットを製造し、それらのペレットを用いて、上記した方法で試験片を作製して、比重の測定、衝撃強度、曲げ弾性率、引張降伏強度および引張破断伸びの測定、並びに表面特性の評価を行ったところ、下記の表2に示すとおりであった。
0090
【表2】
Figure 0003737234
0091
上記の表2の結果から、本発明のポリマー用改質剤を配合した試験例4〜6のポリカーボネート樹脂組成物では、ポリマー用改質剤を配合していない比較試験例4のポリカーボネート樹脂に比べて引張降伏強度および耐薬品性が向上し、低比重化されていること、PBT樹脂を配合してなる比較試験例5のポリカーボネート樹脂組成物に比べて引張降伏強度および耐衝撃性が向上していること、またポリプロピレン樹脂を配合してなる比較試験例6のポリカーボネート樹脂組成物に比べて、引張降伏強度、引張破断伸び、曲げ弾性率、耐衝撃性、耐薬品性のすべてが優れており、しかも低比重化していることがわかる。
0092
【発明の効果】
本発明のポリマー用改質剤は、ポリエーテル系重合体、ポリカーボネート系重合体、ポリアミド系重合体およびアイオノマー系樹脂から選ばれるポリマーに対して共通して用い得る汎用のポリマー用改質剤であり、本発明の改質剤を前記ポリマーに配合することによって、前記ポリマーの流動性、成形性、耐衝撃性、引張強度、引張伸び、弾性、反撥弾性、耐熱性、耐薬品性、塗装性などの表面加工性、耐候性、寸法安定性などを向上させることができる。
そして、本発明のポリマー用改質剤は、熱可塑性であって分子中に架橋し得る官能基を有していないので、取り扱い性に優れており、しかも被改質ポリマー中に配合した場合にポリマー組成物の流動性の低下、ゲル化の発生などの問題が生じず、品質の向上したポリマー組成物を得ることができる。
さらに、本発明による場合は、上記した特定のポリエステル系共重合体に対して比較的安価なオレフィン系重合体を組み合わせてポリマー用改質剤としているため、上記した優れた改質効果を有するポリマー用改質剤を低コストで得ることができる。

Claims (3)

  1. (i) ポリエステル系共重合体およびオレフィン系重合体から主としてなる、ポリエーテル系重合体、ポリカーボネート系重合体、ポリアミド系重合体およびアイオノマー系樹脂から選ばれるポリマー用改質剤であって;
    (ii) 前記ポリエステル系共重合体が、ポリエステルブロック(I)と、下記の付加重合体ブロック(II−1)および付加重合体ブロック(II−2)から選ばれる少なくとも1種の付加重合体ブロック(II)を有する共重合体である;
    ○付加重合体ブロック(II−1):
    芳香族ビニル化合物単位から主としてなる重合体ブロック(a1)および水素添加された1,2−結合量が30モル%未満のポリブタジエンブロック(a2)のうちの少なくとも1種からなる重合体ブロック(A)と、水素添加されたポリイソプレンブロック(b1)、水素添加された1,2−結合量が30〜80モル%のポリブタジエンブロック(b2)および水素添加されたイソプレン/ブタジエン共重合体ブロック(b3)からなる群から選ばれる少なくとも1種からなる重合体ブロック(B)とからなる付加重合系ブロック共重合体から誘導される付加重合体ブロック;
    ○付加重合体ブロック(II−2):
    芳香族ビニル化合物単位から主としてなる重合体ブロック(C)とイソブチレン単位から主としてなる重合体ブロック(D)とからなる付加重合系ブロック共重合体から誘導される付加重合体ブロック;
    ことを特徴とする、ポリエーテル系重合体、ポリカーボネート系重合体、ポリアミド系重合体およびアイオノマー系樹脂から選ばれるポリマー用改質剤。
  2. ポリエステル系共重合体:オレフィン系重合体の重量比が80:20〜10:90である請求項1のポリマー用改質剤。
  3. オレフィン系重合体が、炭素数2〜20のオレフィンの単独重合体、共重合体および水素添加された共役ジエン系重合体のうちの少なくとも1種である請求項1または2のポリマー用改質剤。
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