JP3631026B2 - 溶融めっき用酸洗済み熱延鋼帯の前処理方法 - Google Patents

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Description

【0001】
【産業上の利用分野】
本発明は、酸洗後の鋼帯表面に残存するスマットを完全に除去し、熱延鋼帯のめっき性を向上させる前処理方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
連続溶融めっき設備では、鋼帯を還元焼鈍炉に通板し、鋼帯表面を活性化させた後、スナウトを介して溶融めっき槽に送り込んでいる。酸洗された熱延鋼帯をめっき原板として使用するとき、めっき性を著しく阻害するスマットが鋼帯表面に残存しているため、焼鈍炉に配置されている直火型バーナでスマットを焼却除去している。
スマットの焼却除去のため、スマットが残存している鋼帯表面が弱酸化性雰囲気に維持されるように空燃比1.0〜1.2で直火型バーナを稼動させている。直火型バーナでスマットが焼却除去された熱延鋼帯は、次いで還元ゾーンに送り込まれ、水素濃度50〜60%程度の還元雰囲気で加熱される。この加熱により、鋼帯表面の酸化物が還元され、溶融めっき金属に対して活性度の高い表面状態に調整される。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、スマットの焼却除去に使用される直火型バーナは、ノズル詰り,バーナ自体の劣化,燃料供給量の変動等の影響を受け、1.0〜2.0と極めて狭い範囲に空燃比を維持することは実操業上で非常に困難である。
空燃比が1.0を下回ると十分な燃焼反応が得られず、スマットがそのまま鋼帯表面に残留し、溶融めっき後に不めっき等のめっき欠陥を発生させる原因となる。逆に2.0を超える空燃比では鋼帯表面の酸化が進行するため、後続する還元ゾーンにおける負荷が大きくなる。何れの場合も、安定した品質の溶融めっき鋼帯を製造する条件維持が困難になる。
【0004】
【課題を解決するための手段】
本発明は、このような問題を解消すべく案出されたものであり、還元焼鈍に先立って熱延鋼帯を電解洗浄及びブラッシングすることにより、鋼帯表面に残留している大半のスマットを還元焼鈍炉の前段階で除去し、熱延鋼帯のめっき性を改善し、優れた品質の溶融めっき鋼帯を製造することを目的とする。
本発明の前処理方法は、その目的を達成するため、酸洗された熱延鋼帯をキレート剤を含む電解液に送り込み陽極電解した後、鋼帯表面をブラッシングして残留スマットを除去し、次いで還元焼鈍炉の還元ゾーンで直火型還元バーナにより鋼帯表面を加熱し、更に還元ゾーンを経て熱延鋼帯を溶融めっき金属浴に導入することを特徴とする。
【0005】
【実施の形態】
本発明に従った連続溶融めっきラインは、図1に示すように熱延鋼帯Sの走行方向に関して還元焼鈍炉10の上流側に電解洗浄槽20を配置している。
めっき原板である熱延鋼帯Sは、払出しリール1から払い出されて電解洗浄槽20に送り込まれる。電解洗浄槽20にはキレート剤を含むアルカリ性電解液が収容されており、電解液に浸漬された熱延鋼帯Sが陽極電解される。陽極電解によって鋼帯表面で酸素バブルが発生すると共に、鋼帯の表面層が一部溶解する。酸素発生及び素地の溶解は、鋼帯表面に付着しているスマットの密着性を低下させ、鋼帯表面から分離させる。このとき、電解液にキレート剤が含まれているため、鋼帯表面から分離したスマットは電解液中のキレート剤で捕捉され、鋼帯表面に対する再付着が防止される。
【0006】
酸洗後の鋼帯表面に残存しているスマットは、セメンタイトFe Cを主成分としている。したがって、鋼帯表面から分離したスマットを効率よく電解液中に保持するため、Feイオンに対するキレート力の大きなカルボン酸系,アミノカルボン酸系等のキレート剤を添加量0.01〜2重量%で電解液に添加することが好ましい。
電解条件は、熱延鋼帯Sの表面に付着しているスマットの量にもよるが、通電量5000クーロン/mm 以上に設定される。5000クーロン/mm 未満の通電量では、十分な酸素バブルの発生及び素地の一部溶解が進行せず、鋼帯表面に対するスマットの密着性を低下させる効果が弱くなる。
【0007】
電解洗浄された熱延鋼帯Sの表面に残留しているスマットは、電解洗浄前に比較して鋼帯表面に対する密着性が大幅に低下している。そこで、電解洗浄槽20の下流側に配置されているブラシ装置21で熱延鋼帯Sの表面をブラッシングすると、残留スマットは鋼帯表面から容易に除去される。ブラシ装置21には、本発明を拘束するものではないが、砥粒入りナイロンブラシ等が使用される。たとえば、直径0.4〜1.2mmのナイロンブラシを鋼帯表面に押し付けて800〜1800rpmで高速回転させると、ブラッシングされた熱延鋼帯Sは残留スマットがほとんど検出されない表面状態になる。
【0008】
表面調整された熱延鋼帯Sは、次いで還元焼鈍炉10に送り込まれる。還元焼鈍炉10は、還元雰囲気に維持されている内部が直火ゾーン11と還元ゾーン12に区分されている。直火ゾーン11では、熱延鋼帯Sの表面に僅かに残留しているスマットを還元除去するため、複数の直火型還元バーナ13を鋼帯表面に対向させている。
直火型還元バーナ13は、従来のスマットを焼却除去する空燃比1.0〜2.0の直火バーナと異なり、外乱の影響を受け難い1.0未満の広い空燃比範囲で稼動されるため後続する還元ゾーン12の負荷を増加させない。また、還元ゾーン12の水素濃度を低減させることも可能になる。
【0009】
直火型還元バーナ13としては、たとえば図2に示すように軸方向に供給された空気と周方向から供給された燃料とを混合するベンチュリミキサ室15をバーナごとに備えており、予混合ガスの容積を小さくした構造のバーナが使用される。空気/燃料の混合ガスは、還元焼鈍炉10の炉壁16を貫通して設けられたセラミック製の燃焼筒17に装着されている燃焼ノズル18から炉内に噴出する。この構造をもつ直火型還元バーナ13を使用すると、1.0未満の空燃比においても鋼帯表面に付着しがちな煤の発生がなく、鋼帯表面が高温加熱される。そのため、鋼帯表面に付着しているスマットは、還元炎で加熱されて速やかに分解される。
【0010】
直火型還元バーナ13による酸化―還元反応でスマットが分解除去されることは、鋼帯表面に残留しているスマット量が電解洗浄及びブラッシングで大幅に減少したこと及びスマットの密着力が低下したことに依る。すなわち、陽極電解時に鋼板素地の溶解及び酸素バブルの発生によって鋼板に対するスマットの密着力が弱められ、陽極電解後のブラッシングでスマットの大半が除去される。ブラッシング後に鋼板表面に残留しているスマットも、鋼板に対する密着力が弱く、除去されやすい状態にある。このようなスマットに対して直火型還元バーナを使用すると、バーナ単体での酸化→還元反応によりスマットが燃焼分解除去されると共に、めっき密着性に有効な活性状態に鋼板表面が還元される。スマットの燃焼分解除去及び鋼板表面の還元は、空燃比1.0未満で十分に作用し得るため、安定した操業も可能になる。これに対し、多量のスマットが残存している場合、従来のように酸化反応でスマットを焼却除去せざるを得ず、結果として還元ゾーンにおける負荷が増大する。
【0011】
直火ゾーン11でスマットが完全に除去された熱延鋼帯Sは、N −H 雰囲気に維持された還元ゾーン12で600〜900℃に加熱され、表面に付着している酸化物等が還元除去されると共に、表面活性が高められる。還元ゾーン12の水素濃度は、従来の直火型バーナを配置した場合に比較し、10〜40体積%と低い値に設定できる。
熱延鋼帯Sは、還元ゾーン12からスナウト14を経て、ポット5に収容されている溶融めっき金属浴Mに送り込まれ、シンクロール6を周回した後、溶融めっき金属浴Mから引き上げられる。引上げ直後の鋼帯Sにワイピングガスを吹き付けてめっき付着量を調整した後、必要に応じて合金化処理等が施された溶融めっき鋼帯が製造される。溶融めっき金属浴Mに導入される熱延鋼帯Sは、電解洗浄,ブラッシング及び還元分解によってスマットが完全に除去された表面状態になっているので、スマットに起因する不めっき等のめっき欠陥がなく、良好なめっき表面をもつ溶融めっき鋼帯が得られる。
【0012】
【実施例】
板厚3.2mmの熱延鋼帯を酸洗したところ、単位面積当り20個/m のスマットが鋼帯表面に検出された。鋼帯表面に付着しているスマットを除去するため電解洗浄,ブラッシング,直火型還元バーナによる加熱処理を施した後、溶融Znめっき浴(450℃)に熱延鋼帯をラインスピード50m/分で導入し、めっき付着量150mg/m の溶融めっき鋼帯を製造した。
電解洗浄では、アミノカルボン酸系キレート剤を含みNaOHを主成分とする電解液を使用し、通電量5000クーロン/m で熱延鋼帯を陽極電解した。電解洗浄後の鋼帯表面を観察したところ、スマットの残留量は15個/m と減少しており、指先で擦ることで鋼帯表面から除去できる程度に鋼帯表面に対する密着力が低下していた。
電解洗浄された熱延鋼帯に直径0.6mmの砥粒入りナイロンブラシを押し付け、1000rpmで回転させた。ブラッシングにより残留スマットのほとんどが鋼帯表面から除去され、ブラッシング後の鋼帯表面に残留するスマットは6個/m と極端に低減した。
【0013】
次いで、熱延鋼帯を還元焼鈍炉に導き、空燃比0.9の直火型還元バーナで熱延鋼帯を550℃に加熱した後、N ―25体積%H の還元ゾーンで650℃に加熱し、溶融亜鉛浴に導き溶融亜鉛めっき鋼帯を製造した。
得られた溶融亜鉛めっき鋼帯の表面を観察したところ、スマット由来の不めっきは全く観察されず、良好な表面状態をもつ溶融めっき層が形成されていた。
比較のため、電解洗浄及びブラッシングに替えて空燃比1.2の直火型バーナでスマットを焼却除去する以外は同じ条件下で溶融めっき鋼帯を製造した。この場合に得られた溶融めっき鋼帯には5個/m の割合で不めっきが発生しており、不めっき発生部分の断面を顕微鏡観察したところスマットが噛み込まれていることが判った。
【0014】
【発明の効果】
以上に説明したように、本発明においては、酸洗後の熱延鋼帯表面に残留しているスマットの鋼帯表面に対する密着性を電解洗浄で弱め、ブラッシングによって熱延鋼帯表面から大半のスマットを除去した後、還元焼鈍炉に熱延鋼帯を送り込み、鋼帯表面に僅かに残留しているスマットを直火型還元バーナを用いた酸化−還元反応によって完全に除去している。この方法によるとき、従来のように酸化反応によってスマットを焼却除去する直火型バーナを還元焼鈍炉に組み込む必要がないため、還元ゾーンにおける負荷の増大を招くことなく鋼帯表面のめっき密着性が改善される。しかも、直火型還元バーナは外乱の影響を受けない1.0未満の広い空燃比範囲で稼動できるため、操業安定性が向上し、不めっきなどのめっき欠陥がない溶融めっき鋼帯が高い歩留で製造される。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に従った電解洗浄槽及びブラッシング装置を組み込んだ連続溶融めっきライン
【図2】本発明で使用する直火型還元バーナの一例
【符号の説明】
10:還元焼鈍炉 11:直火ゾーン 12:還元ゾーン 13:直火型還元バーナ
20:電解洗浄槽 21:ブラシ装置

Claims (1)

  1. 酸洗された熱延鋼帯をキレート剤を含む電解液に送り込み陽極電解した後、鋼帯表面をブラッシングして残留スマットを除去し、次いで還元焼鈍炉の還元ゾーンで直火型還元バーナにより鋼帯表面を加熱し、更に還元ゾーンを経て熱延鋼帯を溶融めっき金属浴に導入することを特徴とする溶融めっき用酸洗済み熱延鋼帯の前処理方法。
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