JPH08302477A - 金属材料用りん酸亜鉛系化成処理液および処理方法 - Google Patents

金属材料用りん酸亜鉛系化成処理液および処理方法

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JPH08302477A
JPH08302477A JP31831195A JP31831195A JPH08302477A JP H08302477 A JPH08302477 A JP H08302477A JP 31831195 A JP31831195 A JP 31831195A JP 31831195 A JP31831195 A JP 31831195A JP H08302477 A JPH08302477 A JP H08302477A
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chemical conversion
conversion treatment
treatment
treatment liquid
zinc phosphate
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JP31831195A
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Hitoshi Ishii
均 石井
Yasuhiko Nagashima
康彦 永嶋
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Nihon Parkerizing Co Ltd
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Nihon Parkerizing Co Ltd
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 金属材料表面に、耐食性、塗膜密着性に優
れ、クロムを含有しない化成皮膜を形成する。 【解決手段】 亜鉛イオンおよびりん酸イオンと、さら
に50〜1500ppm の有機過酸化物からなる化成促進
剤と、必要により界面活性剤とを含有する化成処理液に
より、金属材料表面上に、微細化された結晶を含むりん
酸亜鉛系化成皮膜を形成する。この方法において、表面
調整処理を省略することが可能となる。また界面活性剤
の添加により表面洗浄と化成処理を同時に施すことがで
きる。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、金属材料、例えば
スチール材料又は亜鉛めっきスチール材料などのため
の、りん酸亜鉛系化成処理液および、金属材料をりん酸
亜鉛系化成処理する方法に関するものである。さらに詳
しく述べるならば、本発明は金属材料上に、きわめて微
細な化成結晶を含む緻密なりん酸亜鉛系化成皮膜を均一
に形成することができ、前記微細結晶によりりん酸亜鉛
系化成皮膜の塗膜に対する密着性を向上させることがで
きるりん酸亜鉛系化成処理液および処理方法に関するも
のである。
【0002】
【従来の技術】現在、各種金属材料に対して塗装あるい
は塑性加工等を施す際、塗装後の耐食性および塗膜密着
性を向上させ、かつ塑性加工時の潤滑性を向上させるた
めに、その前処理として、りん酸亜鉛系化成処理を施す
ことが知られている。
【0003】りん酸亜鉛系化成処理に使用される化成処
理液は、基本的に亜鉛イオン、りん酸イオン、および酸
化剤を含む酸性水溶液である。前記酸化剤としては一般
に、亜硝酸塩、塩素酸塩、過酸化水素、有機ニトロ化合
物、ヒドロキシルアミン等が検討されている。これらの
酸化剤は化成反応を促進させる作用を有することから、
一般に化成促進剤と称される。なお、化成処理液中に硝
酸塩が含まれることがあるが、硝酸塩はりん酸亜鉛系化
成処理液中において酸化作用を示さないため、化成促進
剤から区別されている。
【0004】りん酸亜鉛系化成処理中の化成促進剤の役
割としては、鉄系金属を化成処理した場合に化成処理液
中に溶出する2価の鉄イオンを3価の鉄イオンに酸化す
ることである。例えば鉄系金属を連続的に化成処理し、
2価の鉄イオンが化成処理液中に蓄積すると、化成反応
が阻害されるので、2価の鉄イオンの蓄積を阻止すると
いう化成促進剤の役割は、非常に重要である。
【0005】しかし、既知の化成促進剤にはそれぞれ解
決すべき問題点がある。例えば、現在、化成促進剤とし
て最も広く使用されている亜硝酸塩の場合には、それが
酸性領域において不安定な化合物であるため、化成処理
を行わない場合(貯蔵・期間)にも自然分解が進行して
消費されてしまうため、その濃度を一定に保持するため
に常時消費分を補充しなければならない。また、亜硝酸
塩の一部は、酸化作用もしくは自然分解の際にNOxガ
スとなって大気中に拡散し、これを汚染することが知ら
れている。
【0006】塩素酸塩を化成促進剤として用いる場合に
は、化成処理中に分解生成物として塩素イオンが発生
し、これが化成処理液中に蓄積される。このような化成
処理液中の塩素イオンが被処理金属表面に微量でも残存
すると、当該金属材料の耐食性を著しく低下させるとい
う悪影響がある。また、塩素酸塩は通常亜硝酸塩等の他
の化成促進剤と併用されているが、これを単独で用いた
場合には化成反応速度が著しく低下するという欠点があ
る。
【0007】過酸化水素を化成促進剤として用いる場合
も、化成処理液中における安定性に問題があり、化成液
中の溶存酸素によって容易に分解してしまうという欠点
がある。さらに過酸化水素は、化成処理に対して適正濃
度の範囲が狭いために、化成処理液の管理が難しく、溶
存濃度が過剰であると、金属表面上に密着性が悪いパウ
ダー状の化成皮膜が析出してしまうという問題がある。
【0008】化成促進剤として、窒素含有有機化合物、
例えばニトログアニン、メタニトロベンゼンスルホン酸
ナトリウム等の有機ニトロ化合物を用いた場合にも、次
のような問題点がある。例えば、ニトログアニンの場合
には水に対する溶解度が低いために濃厚溶液として化成
処理液に添加できず、また2価の鉄イオンの酸化能力が
弱いために化成処理液中の2価鉄イオン濃度の制御が困
難である。一方、メタニトロベンゼンスルホン酸ナトリ
ウムの場合には、単独では化成性が劣っているので、一
般により強力な他の化成促進剤と併用する必要がある。
また、濃度管理を行うためには、イオンクロマトグラフ
のような大がかりな測定装置を必要とするなどの問題点
がある。さらに、これらの有機ニトロ化合物およびその
分解生成物が化成処理液中に蓄積すると、化成処理排液
中のCOD値が上昇し、自然環境に好ましくない影響を
与えるのである。
【0009】化成促進剤として上記窒素含有有機化合
物、例えばヒドロキシルアミン化合物を用いる場合、こ
れを化成処理液中に1000ppm 以上の濃度となるよう
に添加する必要があるので、化成促進剤の消費量が多く
なり経済的に不利である。
【0010】その他にクロム酸および過マンガン酸塩を
りん酸亜鉛系化成処理液の化成促進剤として用いた場合
については、佐藤教男他;防食技術、Vol.15,No. 5
(1966)にその検討結果が記載されており、5ミリ
モル/リットルおよび10ミリモル/リットルの濃度に
おいては化成皮膜の形成が認められないと報告されてい
る。
【0011】また、既知の上記化成促進剤の多くは窒素
化合物であるが、これらの窒素化合物は化学的な排水処
理法によって除去することが困難であり、その除去には
微生物処理を施す必要がある。しかし、微生物処理によ
っても高濃度の窒素化合物を除去することは困難であ
り、またそれが低濃度であっても完全に除去することは
不可能である。近年、窒素化合物は河川湖沼海湾におけ
る富栄養化の要因の一つであるとして、排出規制の強化
の対象とされてきており、このような環境上の理由か
ら、窒素化合物を含まないりん酸亜鉛系化成処理液の開
発が要望されていた。
【0012】なお、上記化成促進剤のいずれを用いて
も、塗装下地として利用することを目的とする薄膜で均
一緻密な化成皮膜を得るために、化成処理の直前に、金
属材料表面に、チタンコロイド系の表面調整処理を施す
必要がある。しかしながら、表面調整剤の処理液管理は
煩雑であり、かつ処理設備の設置、処理スペースの拡大
等の問題を生ずる。このため、表面調整工程を施さなく
とも、金属材料表面に良好な化成皮膜を形成できるよう
な化成促進剤の開発要求も、最近強くなっている。
【0013】一方現在、各種金属材料の塗装後の耐食性
および塗膜密着性を向上させるための塗装下地処理とし
ては、りん酸亜鉛系化成処理およびクロメート処理が広
く用いられている。しかし、被処理金属が鉄、もしくは
複数種の素材が混在している複合材料の場合、これにク
ロメート処理で対応することが困難であるため、このよ
うな場合には主としてりん酸亜鉛系化成処理が適用され
ている。
【0014】一般に、りん酸亜鉛系化成処理によって得
られる皮膜結晶は、処理条件によってその結晶粒径が大
きく変化する。粗大結晶から成る厚膜タイプの皮膜で
は、塑性加工や防錆を目的とした場合には好適である
が、その後、これに塗装を施した場合、充分な塗膜密着
性が得られないという問題がある。従って、塗装下地と
して用いる場合のりん酸亜鉛系化成皮膜は、均一緻密な
皮膜結晶から成る薄膜タイプの化成皮膜であることが必
要である。
【0015】りん酸亜鉛系化成皮膜の薄膜化には2つの
方法が知られている。その一つは、皮膜析出反応の途中
で、化成処理液との接触を中断することにより反応を停
止させる方法であるが、この方法を用いた場合、化成皮
膜の析出が不完全になり、素地金属が完全に被覆され
ず、そのため、化成後の水洗工程あるいは乾燥工程によ
って素地が発錆してしまい、そればかりか、塗装後の耐
食性が不充分となるという欠点がある。一方、他の方法
は皮膜結晶を微細化する方法である。この方法によれ
ば、薄膜の状態で皮膜析出反応が終了するため、完成し
た化成皮膜は素地を完全に被覆しており、塗膜密着性お
よび塗装後の耐食性の双方を満足することができる。
【0016】前記りん酸亜鉛系化成処理方法としては、
主として浸漬法、あるいはスプレー法が適用されてい
る。浸漬法を適用した場合には、微細な皮膜結晶が得ら
れず、そればかりか、処理温度を55℃以上にしない
と、化成処理に長時間を要するという問題点を有してい
る。一方、スプレー処理を適用した場合には、浸漬処理
よりも皮膜結晶は若干微細化するものの、塗装性能を満
足するレベルではなく、やはり比較的短時間で処理する
ためには、55℃以上の処理温度が必要である。
【0017】通常、皮膜結晶の微細化および処理温度を
50℃以下にするためには、化成処理の直前に、当該金
属材料表面にチタンコロイド系の表面調整処理を施す必
要がある。この表面調整処理には、被処理金属表面を活
性化する作用があり、これによって浸漬処理、スプレー
処理を問わず、処理温度の低温化、処理時間の短縮化が
達成でき、しかも塗装性能を充分に満足し得るような微
細結晶皮膜の形成が可能になる。
【0018】上記のような目的で、金属材料表面に塗装
下地用のりん酸亜鉛系化成処理をする場合には、通常化
成処理工程の直前にチタンコロイド系の表面調整処理が
施されている。しかし、表面調整処理液中に分散してい
るチタンコロイドは、建浴後の時間経過によって凝集し
てしまうために、表面調整効果は時間の経過とともに低
下していく。そこで、チタンコロイドの安定性を増すた
めに、表面調整処理液中のMg/P2 7 比を管理する
方法が特公昭62−9190号公報に提案されており、
また表面調整処理液にチタンコロイドの安定化剤として
有機物を添加する方法が特開昭63−18084号公報
に開示されている。しかし、これらの方法はいずれもそ
の効果が不充分であり、実際には老化液の廃棄と新建浴
液の補給とを連続的に行って対応することが必要であ
る。このような表面調整処理液の調製および液管理は煩
雑であり、かなりの労力を必要とし、さらに、薬品消費
量が多いために経済的な負荷も大きい。また、当然のこ
とながら、表面調整処理を行うにはそのための処理設備
が必要となり、設備のメンテナンスや処理スペースの拡
大などの問題が付随する。
【0019】このため、上記のような問題点を有するチ
タンコロイド系の表面調整処理を行うことなく、金属材
料表面に塗装下地として好適な、均一かつ緻密で薄い化
成皮膜を形成し得るような表面処理方法の開発の要求
が、最近強くなってきたのである。
【0020】上述のように、現在、各種金属材料の塗装
後の耐食性および塗膜密着性を向上させるための塗装下
地処理としては、りん酸亜鉛系化成処理が広く用いられ
ている。この方法は被処理金属が鉄、もしくは複数種の
素材が混在している複合材料の場合であっても有効なも
のである。
【0021】各種金属材料に対してりん酸亜鉛系化成皮
膜を形成させるための処理方法は、例えば(1)アルカ
リ脱脂−(2)水洗−(3)化成−(4)水洗−(5)
水切り乾燥工程を上記の順に施す方法が一般的に用いら
れている。また、これを塗装下地用に適用する場合に
は、均一かつ緻密な化成皮膜結晶を形成させる目的で、
化成工程(3)の前工程としてチタンコロイド系処理液
による表面調整処理が施されている。
【0022】チタンコロイド系処理液による表面調整処
理は、被処理金属表面を活性化させ、析出する化成皮膜
結晶を微細化すると共に化成皮膜形成速度を速くする効
果がある。化成皮膜形成速度の違いは、特に60℃未満
の比較的低い処理温度の時に顕著に現われる。
【0023】前記のような従来の表面処理方法の第1の
問題点は、工程数が多く全工程が非常に長くなることで
ある。そのため、所要処理設備が大がかりになると共
に、多くのスペースが必要となる。上記表面処理方法は
5工程または6工程から構成されているが、アルカリ脱
脂工程および水洗工程に関しては清浄効率を向上させる
ために、多段処理を行うことが多いので、ますます設備
費用が高くなり、それとともに処理工程の全てを通過す
るのに長時間を要するため生産性が低くなるという問題
点が生ずる。
【0024】上記従来方法の第2の問題点としては、所
要管理項目が多いことが挙げられる。例えばアルカリ脱
脂工程では、脱脂液中のアルカリ度(全アルカリ度、遊
離アルカリ度)の管理が必要であり、また化成処理工程
では処理液の酸濃度(全酸度、遊離酸度)の管理が必要
である。このように所要管理項目が多岐にわたると、操
業上の負荷が大きくなる。しかも、個々の工程で薬剤が
消費されていくため、コスト負担が大きい。また、表面
調整剤は主成分がチタンコロイド分散液であるため、経
時安定性が必ずしも十分でなく、適正な管理と定期的な
廃棄更新が必要となる。
【0025】上記2つの問題点を解決する方法として、
界面活性剤を含有する脱脂化成兼用りん酸亜鉛系化成処
理液を用い、アルカリ脱脂から化成処理までの工程を同
一工程で処理する方法が考えられる。しかし、脱脂処理
と化成処理を同時に施そうとすると、被処理金属表面が
清浄化された部位から順番に化成反応が開始されるため
に、得られる化成皮膜の品質・外観が不均一になりやす
いという問題がある。
【0026】また、化成処理液による処理中に、金属材
料に対する表面調整効果を期待して、表面調整剤を化成
処理液中に添加しようとしても、主成分であるチタンコ
ロイドは酸性サイドでは不安定であるために、その表面
調整効果は全く期待できない。従って、表面調整剤と化
成処理液とを併用しても微細な皮膜結晶が得られないば
かりか、皮膜析出速度が遅いために化成皮膜外観の不均
一さが更に強調されてしまうのである。
【0027】このように、現行の処理工程を短縮し、設
備コスト、薬剤コスト、および処理液管理を簡素化しよ
うとする要望はかなり強いが、それを達成するための技
術的障壁が高いため、現状では実現には至っていないの
である。
【0028】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、化成促進剤
の有する上記の問題点を解決しようとするものである。
具体的には、本発明は被処理金属表面に均一で緻密なり
ん酸亜鉛系化成皮膜を析出させ、かつ化成皮膜結晶を微
細化させる効果を有する金属材料用りん酸亜鉛系化成処
理液および表面処理方法を提供しようとするものであ
る。
【0029】また、本発明は、金属材料表面上に、表面
調整剤による表面調整を施さなくても、この金属材料表
面上に、塗料皮膜に対して優れた密着性を有する微細皮
膜結晶を含み、塗料皮膜の下塗層(アンダーコート)と
して有効な、均一で緻密なりん酸亜鉛系化成皮膜を析出
形成することができるりん酸亜鉛系化成処理液、および
処理方法を提供しようとするものである。
【0030】
【課題を解決するための手段】上記課題は、下記本発明
の金属材料用りん酸亜鉛系化成処理液および処理方法に
より達成される。
【0031】本発明の金属材料用りん酸亜鉛系化成処理
液は、主成分として亜鉛イオンおよびりん酸イオンを含
み、さらに50〜1500ppm の、少なくとも1種の有
機過酸化物からなる化成促進剤を含むことを特徴とする
ものである。
【0032】本発明のりん酸亜鉛系化成処理液におい
て、窒素含有化合物の合計含有量が、窒素含有率として
0〜200ppm に制限されていることが好ましく、前記
有機過酸化物が水溶性であり、かつペルオキシ構造又は
ペルカルボキシル構造を有するものであることが好まし
く、前記有機過酸化物が、エチルヒドロペルオキシド、
イソプロピルヒドロペルオキシド、t−ブチルヒドロペ
ルオキシド、t−ヘキシルヒドロペルオキシド、ジエチ
ルペルオキシド、ジ−t−ブチルペルオキシド、アセチ
ルアセトンヒドロペルオキシド、クメンヒドロペルオキ
シド、t−ブチルペルオキシマレイン酸、過酢酸、モノ
過フタル酸、および過こはく酸からなる群から選ばれる
ことが好ましい。
【0033】本発明のりん酸亜鉛系化成処理液は界面活
性剤をさらに含んでいてもよい。
【0034】本発明の金属材料用りん酸亜鉛系化成処理
方法は主成分として亜鉛イオンおよびりん酸イオンを含
み、さらに50〜1500ppm の、少なくとも1種の有
機過酸化物からなる化成促進剤を含む化成処理液を、金
属材料の表面に接触させて、前記金属材料を表面上にり
ん酸亜鉛系化成処理皮膜を形成することを特徴とするも
のである。
【0035】本発明のりん酸亜鉛系化成処理方法におい
て前記処理液中の窒素含有化合物の合計含有量が、窒素
含有量として0〜200ppm に制限されていることが好
ましく、また、前記化成促進剤が水溶液であり、かつペ
ルオキシ構造又はペルカルボキシル構造を有するもので
あることが好ましく、さらに前記化成処理液が2.0〜
4.0のpH値を有することが好ましく、さらに前記化成
処理液が25〜50℃の温度を有することが好ましく、
さらに、前記化成処理の直前に、前記金属材料を表面洗
浄してもよい。
【0036】本発明のりん酸亜鉛系化成処理方法におい
て前記化成処理液がさらに界面活性剤を含み、前記金属
材料の表面が同時に洗浄され、かつ化成処理被覆されて
もよい。このとき、前記化成処理液中の前記界面活性剤
の濃度が0.5〜5g/リットルであることが好まし
い。
【0037】
【発明の実施の形態】本発明の発明者らは、金属材料表
面におけるりん酸亜鉛系化成処理液の化成反応を促進す
る手段について研究した。すなわち本発明者らは、金属
材料上のりん酸亜鉛系化成反応における、亜鉛イオン濃
度とりん酸イオン濃度の比率、化成促進剤として認めら
れていない種々の酸化剤、およびフッ素含有化合物又は
イオンのようなエッチング剤の影響について検討した。
その結果、種々の無機酸化剤、例えば過ほう酸イオン、
よう素酸イオン、および過硫酸イオンなど、並びにエッ
チング剤は、化成促進性において不満足なものであるこ
とを確認した。また、上記有機過酸化物に関する検討の
結果、化成処理液に可溶な有機過酸化物が前記処理液に
添加されたとき、化成反応が促進され、得られるりん酸
亜鉛系化成皮膜は均一で、かつ緻密であることが確認さ
れた。
【0038】また、有機過酸化物が化成促進剤として使
用されたとき、この有機過酸化物と一緒に、他の従来の
化成促進剤又は硝酸化合物を用いることは不必要である
ことも見出された。従って、この化成処理液は窒素含有
化合物を含有しないことが可能なのである。また、有機
過酸化物を化成促進剤として使用することによって、た
とえ表面調整処理が施されないときでも、金属材料表面
上に均一でかつ緻密なりん酸亜鉛系化成皮膜を形成する
ことができるということも見出された。さらに、処理温
度および処理液の亜鉛濃度に由来する制限なしに、金属
材料上に十分な性能を有するりん酸亜鉛系化成皮膜を形
成することができることも見出された。本発明は上記発
見に基いて完成されたものである。
【0039】本発明のりん酸亜鉛系化成処理液および処
理法は、この処理液が窒素含有化合物を、実質上含有し
ないので、本発明方法から排出される廃水は、実質上環
境を汚染することがなく、環境規制を満たすことができ
るという利点を有する。一般に処理液の窒素含有化合物
の合計含有量が窒素含有量として0〜200ppm に制限
されている場合、環境汚染の危険はきわめて低いのであ
る。
【0040】上述のように、本発明の化成処理液中に含
まれる窒素含有化合物の合計含有量は窒素含有量として
0〜200ppm 、好ましくは0〜100ppm 、より好ま
しくは0〜50ppm 、さらにより好ましくは0〜20pp
m に制限される。また、本発明の化成処理液において、
亜鉛イオンの含有量は、得られる化成皮膜の用途によ
り、適正範囲が異る。好ましくは、化成処理液中の亜鉛
イオンの含有量は0.5〜15g/リットルの範囲内に
ある。
【0041】例えば、本発明の化成処理液が金属材料の
塗装下地用として用いられる場合、形成される皮膜重量
は0.5〜10.0g/m2 程度の化成皮膜を形成させ
ることが好ましい。このため、化成処理液中の亜鉛イオ
ンの好ましい濃度範囲は0.5〜5.0g/リットルで
ある。亜鉛イオン濃度が0.5g/リットル未満である
と得られるりん酸亜鉛系化成皮膜の被覆率が低下し、塗
装後の塗膜密着性および塗装後耐食性が不十分になるこ
とがある。また、それが5.0g/リットルを超えた場
合は、皮膜結晶の粗大化により、特に塗装後の塗膜密着
性が低下することがある。
【0042】一方、化成処理液が金属材料の塑性加工用
に用いられる場合、この被処理材料の塑性変形に追従し
得る化成皮膜を形成するためには、皮膜重量が5.0〜
15.0g/m2 程度の厚膜型皮膜を形成することが好
ましい。この場合、化成処理液中の亜鉛イオンの好まし
い濃度範囲は5.0〜15.0g/リットルである。こ
の用途において、亜鉛イオン濃度が5.0g/リットル
未満であると、所定の皮膜重量を得ることが難しいこと
があり、また、それが15.0g/リットルを超えると
皮膜重量が飽和し、経済的に不利になる。亜鉛イオン
は、酸化亜鉛や水酸化亜鉛を化成処理液中の酸成分に溶
解させるか、あるいはりん酸塩、硫酸塩等の水溶性塩を
化成処理液中に溶解することにより生成する。
【0043】本発明の化成処理液において、りん酸イオ
ン濃度は5.0〜30.0g/リットルであることが好
ましい。それが5.0g/リットル未満では正常な化成
皮膜の形成が困難になることがあり、また、それが3
0.0g/リットルを超えると、その効果が飽和し経済
的に不利になる。りん酸イオンは、りん酸またはその水
溶液を化成処理液に添加するか、あるいはりん酸のナト
リウム、カリウム、マグネシウム、又は亜鉛等の塩を化
成処理液中に溶解することにより生成する。
【0044】本発明のりん酸亜鉛系化成処理液は、pH
2.0〜4.0、好ましくはpH2.5〜3.5程度の酸
性水溶液であり、このようなpH領域では、オルソりん酸
(H3PO4 )は、りん酸水素イオン(H2 PO4 -
およびりん酸イオン(PO4 3-)との間で下記式(I)
のような平衡関係を有しており、ここで言うりん酸イオ
ンとは前記両者を包含するものである。 H2 PO4 - +H+ ←→H3 PO4 (I)
【0045】本発明の化成処理液は、少なくとも1種の
有機過酸化物からなる化成促進剤を含有するものであ
る。この有機過酸化物は、好ましくは水溶液であり、か
つ、ペルオキシ構造又はペルカルボキシル構造を有する
化合物から選択される。本発明に使用される有機過酸化
物は芳香族過酸化物、環状脂肪族過酸化物、および脂肪
族過酸化物、好ましくは、1〜7炭素原子を有する脂肪
族過酸化物を包含する。芳香族過酸化物および長鎖アル
キル基を有する有機過酸化物のあるものは、水に対する
溶解度が不十分なことがあり、そのため化成促進効果が
不十分なことがある。
【0046】化成促進剤として有用な有機過酸化物は、
好ましくは、エチルヒドロペルオキシド、イソプロピル
ヒドロペルオキシド、t−ブチルヒドロペルオキシド、
t−ヘキシルヒドロペルオキシド、ジエチルペルオキシ
ド、ジ−t−ブチルペルオキシド、アセチルアセトンペ
ルオキシド、クメンヒドロペルオキシド、およびt−ブ
チルペルオキシマレイン酸のように単純なペルオキシ構
造を有するもの、並びに、過酢酸、モノ過フタル酸、お
よび過こはく酸などの過カルボン酸のようにペルカルボ
キシル構造を有するものから選ばれる。
【0047】有機過酸化物が化成処理液に対し、低い溶
解度を有する場合、少量の水溶性有機溶剤、例えば、t
−ブチルアルコールおよびイソプロピルアルコールを処
理液に添加することにより上記低溶解性化合物を可溶化
してもよい。
【0048】上述のように本発明の化成処理液は、化成
促進剤を50〜1500ppm 、好ましくは80〜120
0ppm の濃度で含んでいる。若し、化成促進剤の濃度
が、50ppm 未満であると、化成促進効果が不十分にな
る。また、化成促進剤の濃度が1500ppm を超える
と、化成促進効果が飽和し、経済的に不利になる。
【0049】また本発明の化成処理液は析出するりん酸
亜鉛系結晶を微細化する作用も有するので、化成処理直
前に皮膜結晶の微細化を目的とした表面調整処理を行わ
ずとも均一で緻密なりん酸亜鉛系化成皮膜を形成するこ
とができる。また、本発明の化成処理液においては、硝
酸、亜硝酸、有機ニトロ化合物等を添加する必要がない
ため、窒素化合物を全く含まないことも可能であり、こ
の場合には排水処理において窒素化合物処理工程が不要
となるという利点がある。なお、本発明の化成処理液中
に窒素化合物を添加することを妨げないが、上述のよう
に窒素濃度を0〜200ppm に制御することが好まし
い。
【0050】さらに本発明のりん酸亜鉛系化成処理液
に、亜鉛イオン以外の追加金属イオンを添加することが
できる。これらの追加金属イオンは、被処理金属表面を
均一にエッチングさせるためのエッチング剤として、ま
たは塗装下地として使用する場合に塗装性能向上剤とし
て作用する。
【0051】また亜鉛イオン以外の追加金属イオンとし
ては、ニッケルイオン、マンガンイオン、コバルトイオ
ン、鉄イオン、マグネシウムイオンおよびカルシウムイ
オン等を用いることができる。上記各追加金属イオン
は、該当追加金属の酸化物、水酸化物、炭酸塩、硫酸
塩、りん酸塩等を処理液中に溶解することにより生成す
る。
【0052】追加金属イオンは、本発明の化成処理液中
に100〜3000ppm 、好ましくは200〜2000
ppm の添加量で含有される。
【0053】鉄鋼材料が本発明の化成処理液により処理
される場合、3価鉄イオンは金属材料から処理液中に溶
解し、10〜50ppm の含有量で蓄積される。この量の
蓄積3価鉄イオンは本発明の処理液および方法の効果に
悪影響はない。よって、化成処理の前に、処理液中に3
価鉄イオンを上記の範囲内の量で添加、又は含有されて
もよい。
【0054】本発明の化成処理液は必要により、フッ化
物イオン又は例えば珪フッ化物イオン、ジルコニウムフ
ッ化物イオンのような錯フッ化物イオンのようなフッ素
含有イオンを含んでいてもよい。フッ素含有イオンは、
フッ素含有化合物、例えばフッ化水素酸、珪フッ化水素
酸、ジルコンフッ化水素酸、チタンフッ化水素酸あるい
はそれぞれの金属塩(ナトリウム塩、カリウム塩、マグ
ネシウム塩)を化成処理液中に溶解させることにより生
成することができる。
【0055】本発明方法は、りん酸亜鉛系化成処理液
を、金属材料表面に接触させる工程を含むものである。
金属材料の表面が清浄な場合には本発明方法によるりん
酸亜鉛系化成処理を、清浄な金属材料に直接施してもよ
い。しかし、金属材料の表面が微細金属粒子、塵埃、又
はグリースにより汚染されている場合には、化成処理前
に、金属材料表面に水性アルカリ脱脂液、水性洗浄エマ
ルジョン、又は洗浄溶剤による洗浄処理を施すことによ
って、汚染物質を金属材料表面から除去しなければなら
ない。水性洗浄液が用いられる場合、水によるすゝぎ洗
いを金属材料表面に施して、表面上に残存している洗浄
液を除去することが好ましい。
【0056】通常、金属材料の表面は、化成処理の前に
アルカリ脱脂剤を用いて脱脂され、水によりすゝぎ洗い
される。また、化成処理の後に、得られた化成皮膜は水
ですゝぎ洗いされ、次に乾燥される。前記脱脂およびす
ゝぎ洗い工程は、多段工程により行われてもよい。化成
皮膜が塗装の下塗り(アンダーコート)として形成され
る場合は、最終すゝぎ洗い工程は、脱イオン水を用いて
行われることが好ましい。
【0057】また、化成皮膜が、金属材料表面上に塗料
皮膜の下塗り(アンダーコート)として形成される場
合、この金属表面を、化成処理の直前にチタン化合物コ
ロイド含有表面調整剤を用いて表面調整処理することが
好ましい。しかしながら、本発明方法においては、この
表面調整処理を省略することができる。金属材料の化成
処理された表面を水ですゝぎ洗いし、必要により乾燥
し、その後に塗料により塗装する。
【0058】本発明の化成処理液を用いて金属材料に塑
性加工するための化成皮膜を形成する場合には、脱脂お
よび水すゝぎ洗い工程の後に、金属材料に酸洗い処理を
施して、当該表面からスケール除去することが好まし
い。
【0059】化成皮膜が、塑性加工に供される場合は、
皮膜表面を、潤滑剤、例えば石鹸により潤滑化し、化成
皮膜の潤滑性を向上させることが好ましい。
【0060】金属材料をりん酸亜鉛系化成処理するため
の本発明方法において、この化成処理は、例えば浸漬
法、スプレー法又はこれらの組み合わせにより行われる
のが通常である。化成処理が塗料皮膜用下塗り(アンダ
ーコート)を形成するために施される場合、この処理は
常温〜60℃の温度において0.5〜5分間施されるこ
とが好ましい。また化成処理が、塑性加工されるべき金
属材料に施される場合、処理温度が50〜90℃であ
り、処理時間が1〜15分間であることが好ましい。上
記の処理条件下において所望の化成皮膜が得られる。
【0061】本発明のりん酸亜鉛系化成処理液および方
法は、下記機能および効果を有する。本発明によるりん
酸亜鉛系化成処理において、化成皮膜析出反応は下記段
階を経て進行する。 被処理金属材料の一部分が化成処理液中に溶解す
る。 金属の溶解に伴い、化成処理液中の水素イオンが還
元され、金属表面のpH値が上昇する。 金属材料表面におけるpH値上昇によって化成処理液
中のりん酸イオンと亜鉛イオンが、りん酸亜鉛系結晶と
して金属材料表面に沈殿析出し、皮膜を形成する。
【0062】通常、酸性水性溶液が金属材料表面に接触
せしめられるとき、上記段階およびにおいて、金属
材料表面上に局部電池が形成され、この局部電池のアノ
ード部において金属の溶解が発生し、この局部電池のカ
ソード部において、水素イオンが還元される。すなわち
金属材料表面の互に隣接する部分において、アノード反
応とカソード反応とが同時に進行する。この現象は局部
分極と呼ばれている。りん酸亜鉛系化成皮膜結晶の析出
は、上記段階において、pH値が局部的に上昇する部
分、すなわちカソード部において発生する。このため、
アノード部およびカソード部の分布密度を増大させるこ
とによりきわめて微小なサイズを有する皮膜結晶を得る
ことができる。ところが、本発明の前には、従来の化成
処理液が用いられるとき、局部分極の分布密度の増大
は、化成処理の直前に、金属材料表面をチタン化合物コ
ロイド処理液により表面調整処理することにより得られ
るということだけが知られていたのである。
【0063】本発明において化成処理液に、少なくとも
1種の有機過酸化物からなる化成促進剤を添加すると、
前記段階において、有機過酸化物の還元が、水素イオ
ンの還元反応の代りに優先的に行われ、金属材料表面の
消極作用により金属材料表面上にエッチング反応が高い
効率で行われる。さらに、有機過酸化物の酸化作用は、
金属材料表面の不均一性を低減し、アノード部およびカ
ソード部の分布密度を増大させるように働く。このた
め、従来の表面調整処理を施さなくても、微細皮膜結晶
を有する、均一で、かつ緻密な化成皮膜を形成すること
が可能になるのである。前記分極分布密度における増大
作用は有機過酸化物に特有のものであって、この効果は
従来の無機酸化剤、例えば亜硝酸塩および塩素酸塩を用
いることによって得ることはできない。
【0064】金属材料が鉄含有金属材料である場合、こ
の金属材料の一部又は化成処理液中に溶解し、形成した
鉄イオンは処理液中に2価鉄イオンの状態で蓄積する。
この2価鉄イオンは、化成反応を阻害する。このため、
2価鉄イオンを、3価鉄イオンに酸化し、2価鉄イオン
の悪影響を防止しなければならない。2価鉄イオンの酸
化は化成処理液中に溶解している酸素により徐々に進行
するが、化成処理液に酸化剤を添加して、酸化反応を促
進することにより金属材料上に良品質の化成皮膜を、し
っかりと形成することができる。酸化により生成した3
価鉄イオンは処理液中においてりん酸イオンと反応し、
りん酸第二鉄(FePO4 ・xH2 O)を含むスラッジ
を形成する。このスラッジは処理液から除去される。
【0065】りん酸亜鉛系化成処理液中における有機過
酸化物による2価鉄イオンの酸化反応は、下記のように
行われる。すなわち有機過酸化物が有機ヒドロペルオキ
シドである場合、2価鉄イオンと有機過酸化物との間の
一電子移動反応により、下記式(II)に示されるように
アルコキシラジカル(RO・)を形成し、形成したアル
コキシラジカルは更に式(IV)に従って2価の鉄イオン
を酸化する。また、有機過酸化物がペルエステルである
場合、下記式(III )に示されるように、有機過酸化物
はアシルオキシラジカル(R′CO・)およびアルコキ
シラジカル(RO・)に分解し、生成したラジカルは、
下記式(IV)および式(V)に従って2価鉄イオンを酸
化する。 ROOH+Fe2+→Fe3++OH- +RO・ (II) R′COOR→R′CO・+RO・ (III ) RO・+Fe2+→Fe3++RO- (IV) R′CO・+Fe2+→Fe3++R′CO- (V)
【0066】さらに有機過酸化物には、被処理金属の溶
解時に、局部電池の形成を助ける作用も有するので、こ
れによって析出する皮膜結晶は微細化する。この作用効
果は有機過酸化物特有のものであり、かつ金属材料中の
金属の種類を問わず得られるものである。
【0067】本発明の化成処理液において有機過酸化物
(化成促進剤)は酸化剤として作用し、この有機過酸化
物から形成される分解生成物は処理液中に蓄積する。例
えば、ハイドロペルオキサイドの分解によりアルコール
が生成し、ペルオキシエステルの分解によりアルコール
とカルボン酸とが生成する。また、ペルカルボン酸の分
解によりカルボン酸が生成する。このような分解生成物
の蓄積は、本発明の処理液および方法に悪影響を与えな
い。よって、化成処理の前に、有機過酸化物の分解生成
物が、本発明の処理液中に含有され、又は添加されたと
しても、全く不都合は発生しない。
【0068】本発明方法において、金属材料の種類、形
状、寸法などに全く制限はない。すなわち、本発明方法
は、種々の鉄鋼材料、例えばスチールシート、亜鉛含有
金属めっきスチールシート、および種々のアルミニウム
含有金属材料、例えばアルミニウム材料、およびアルミ
ニウム合金材料、例えばアルミニウム−マグネシウム合
金材料およびアルミニウム−シリコン合金材料に適用す
ることができる。
【0069】本発明のりん酸亜鉛系化成処理液は、必要
により金属材料の表面洗浄用界面活性剤をさらに含んで
いてもよい。化成処理液中に界面活性剤を含ませること
により金属材料表面を、清浄化し、それと同時にりん酸
亜鉛化成皮膜により被覆することができるようになる。
この場合、金属材料の表面は汚れていてもよい。この汚
染物質には、それが界面活性剤含有化成処理液により除
去可能なものである限り全く制限はない。この汚染物質
は、油脂物質、例えばグリース、防錆油、プレス油(こ
れらは塵埃により汚されていてもよい)、微細金属粒
子、その他の物質を包含する、汚染物質の量にも全く制
限はない。
【0070】本発明に使用し得る界面活性剤は、ノニオ
ン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、アニオン性界
面活性剤、両性界面活性剤から選ばれた少なくとも1種
からなるものである。但し、カチオン性界面活性剤とア
ニオン性界面活性剤とを併用すると、処理液安定性に問
題を生ずるから避けるべきである。
【0071】本発明方法に用いられるノニオン性界面活
性剤としては、例えばポリオキシエチレンアルキルフェ
ニルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、
ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレ
ンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン−ポ
リオキシプロピレン−ブロックポリマー等のポリエチレ
ングリコール型ノニオン性界面活性剤、ソルビタン脂肪
酸エステル等の多価アルコール型ノニオン性界面活性
剤、および脂肪酸アルキロールアミド等のアミド型ノニ
オン性界面活性剤が挙げられる。
【0072】本発明方法に用いられるカチオン性界面活
性剤としては高級アルキルアミン塩、ポリオキシエチレ
ン高級アルキルアミン等のアミン塩型カチオン性界面活
性剤、およびアルキルトリメチルアンモニウム塩等の第
4級アンモニウム塩型カチオン界面活性剤が挙げられ
る。
【0073】本発明方法に用いられる両性界面活性剤と
しては、アルキルアミノプロピオン酸メチル等のアミノ
酸型両性界面活性剤、およびアルキルジメチルベタイン
等のベタイン型両性界面活性剤等が挙げられる。
【0074】また、アニオン性界面活性剤は一般的に酸
性領域における溶解度が低く、この本発明に実用するこ
とが困難なものが多い。しかし、高級アルキルエーテル
硫酸エステル塩のようにエチレンオキサイドが付加され
ているタイプのものであれば、酸性領域においても良好
な溶解性が確保されるため、添加実用が可能となる。
【0075】本発明方法において、りん酸亜鉛系化成処
理液中へのこれらの界面活性剤の添加濃度は0.5〜5
g/リットル程度が適当である。界面活性剤の種類およ
び濃度は、清浄化すべき油脂分の種類および濃度(付着
量)などによって適宜選定することができる。
【0076】化成処理液が界面活性剤を含む場合、表面
清浄化処理が、化成処理と同時に行われる。よって、こ
の方法が連続的に行われる場合、除去された油脂物質が
処理液中に蓄積することは避けられない。この蓄積した
油脂物質は必ずしも化成処理に無害であるわけではな
い。よって、油脂物質の合計蓄積量は10g/リットル
以下の水準に限定されることが好ましい。但し、この合
計蓄積量の制限は油脂物質の種類、および界面活性剤の
種類および含有量により変動する。
【0077】界面活性剤含有化成処理液による化成処理
の後、得られた化成皮膜を水ですゝぎ洗いし、残留して
いる水を化成皮膜表面から除去する。この水すゝぎ洗い
工程は、単一段で行ってもよく、又は、多段で行っても
よい。しかし、最終水すゝぎ工程は脱イオン水を用いて
行うことが好ましい。
【0078】金属材料の化成皮膜面が塗料により例えば
電着塗装法により、被覆されるとき、上記水除去工程
(乾燥工程)は必ずしも必要ではない。乾燥温度および
時間に全く制限はない。すなわち乾燥工程は、室温で行
ってもよく、又は加熱により行ってもよい。
【0079】上述のように、金属材料表面を本発明の界
面活性剤含有化成処理液により処理することにより、油
脂物質、塵埃、および/又は金属粒子は、十分に除去さ
れ、それと同時に、化成促進剤(有機過酸化物)により
化成皮膜形成反応が促進される。よって、金属材料表面
は清浄化され、それと同時に、この清浄化された金属材
料表面に微細皮膜結晶を含む、均一で、かつ緻密なりん
酸亜鉛系化成皮膜が形成される。
【0080】本発明を、下記実施例によりさらに説明す
る。但し、これら実施例は単に説明のためのものであっ
て本発明の範囲を限定するものではない。
【0081】実施例1〜8および比較例1〜4 本実施例および比較例において下記金属材料が用いられ
た。 板厚0.8mmの冷延鋼板(SPCC−SD、以下S
PCと記す) 前記冷延鋼板に20g/m2 の電気亜鉛めっきを施
した亜鉛めっき鋼板(以下めっきと記す)。 それぞれの金属材料を70×150mmの寸法に切断し
た。
【0082】本実施例および比較例において、下記工程
により化成皮膜が塗料塗装の下塗り(アンダーコート)
として、上記金属材料上に形成された。 (1)脱脂〔アルカリ脱脂剤(商標:ファインクリーナ
ーL4460、日本パーカライジング社製)、A剤20
g/リットル、B剤12g/リットル〕 43℃、120秒、浸漬 (2)水洗〔水道水〕 常温、30秒、スプレー (3)表面調整〔チタンコロイド系表面調整剤(商標:
プレパレンZN、日本パーカライジング社製)1g/リ
ットル水溶液〕 常温、30秒、スプレー (4)りん酸亜鉛系化成処理(条件は下記実施例および
比較例に記載の通り) 43℃、120秒、浸漬 (5)水洗〔水道水〕 常温、30秒、スプレー (6)脱イオン水洗〔脱イオン水、電気伝導度:0.2
μS/cm〕 常温、20秒、スプレー (7)水切り乾燥 110℃熱風、180秒 ただし、実施例5,7および比較例3においては、上記
表面調整処理(3)を行わず、(1)脱脂、および
(2)水洗工程の後、直ちに(4)りん酸亜鉛系化成処
理を脱脂、水洗された金属材料表面に施した。
【0083】実施例1〜8および比較例1〜4の各々に
おいて、りん酸亜鉛系化成処理液の遊離酸度を、水酸化
ナトリウムによって、後記所定値に調整した。遊離酸度
(ポイント)の測定のために、供試処理液10mlを採取
し、ブロムフェノールブルーを指示薬として、0.1規
定水酸化ナトリウム水溶液で中和滴定を行い、黄色から
青色に変化するまでに要した前記水酸化ナトリウム水溶
液のml数を測定した。また、化成処理液中のフッ化物イ
オン濃度は、フッ素イオン電極によって測定した。
【0084】皮膜重量の測定方法としては、まず化成処
理後の処理板の重量(W1(g))を測定し、次いで処
理板に下記に示す剥離液、および剥離条件により皮膜剥
離処理を施し、その重量(W2(g))を測定し、下記
式(VI)を用いて算出した。 冷延鋼板の場合 剥離液 :5%クロム酸水溶液 剥離条件:75℃、15分、浸漬剥離亜鉛めっき鋼板の場合 剥離液 :重クロム酸アンモニウム2重量%+28%ア
ンモニア水49重量%+純水49重量% 剥離条件:常温、15分、浸漬剥離 皮膜重量〔g/m2 〕=(W1−W2)/0.021
(VI)
【0085】また、皮膜外観は目視による判定と、走査
型電子顕微鏡(SEM)観察により、化成皮膜中の粒子
形状および粒子径の評価を行った。
【0086】実施例1において、下記組成を有する化成
処理液〔1〕を調製した。 −化成処理液〔1〕組成− りん酸イオン :15g/リットル(75%りん酸を添
加) 亜鉛イオン :1.3g/リットル(酸化亜鉛を添
加) ニッケルイオン:1.0g/リットル(炭酸ニッケルを
添加) マンガンイオン:0.5g/リットル(炭酸マンガンを
添加) フッ化物イオン:100ppm (55%フッ化水素酸を添
加)
【0087】上記組成の化成処理液中に有機過酸化物と
してt−ブチルヒドロペルオキシド450ppm を添加
し、化成処理液の遊離酸度を0.9ポイントに調整し
た。そして供試冷延鋼板にチタンコロイド系の表面調整
処理(3)を施した後、上記化成処理液〔1〕を用い
て、処理温度43℃、処理時間120秒の条件下にて、
冷延鋼板に化成処理を施した。形成された化成皮膜の重
量は1.2g/m2 であり、その結晶は板状であり、粒
子径は平均6μmであった。この化成皮膜は灰黒色で均
一緻密なものであった。試験結果を表1に示す。
【0088】実施例2において、供試亜鉛めっき鋼板に
実施例1と同様にして脱脂処理(1)、水すゝぎ洗い処
理(2)および表面調整処理(3)を施した後、これに
実施例1と同じ化成処理液〔1〕を用いて化成処理を施
した。形成された化成皮膜の重量は2.8g/m 2 、結
晶は板状であり、粒子径は平均4μmであった。この化
成皮膜は灰白色で均一緻密なものであった。
【0089】実施例3において、供試冷延鋼板に実施例
1と同様にして表面調整処理を施した後、これに実施例
1と同じ化成処理液を用いて化成処理を施した。ただ
し、有機過酸化物としてt−ブチルヒドロペルオキシド
80ppm を添加し、遊離酸度を0.6に調整した。形成
された化成皮膜の重量は0.9g/m2 であり、その結
晶は板状であり、粒子径は平均8μmであった。この化
成皮膜は灰黒色で均一緻密なものであった。
【0090】実施例4において、供試冷延鋼板に実施例
1と同様にして表面調整処理を施した後、これに実施例
1と同じ化成処理液を用いて化成処理を施した。ただ
し、有機過酸化物としてt−ブチルヒドロペルオキシド
1200ppm を用い、さらに65.5%硝酸を窒素成分
含有量が500ppm になるように添加して化成処理液の
遊離酸度を0.9ポイントに調整した。形成された化成
皮膜の重量は1.1g/m2 であり、その結晶は板状で
あり、粒子径は平均7μmであった。この化成皮膜は灰
黒色で均一緻密なものであった。
【0091】実施例5において、供試冷延鋼板に、表面
調整処理を施すことなく、実施例1と同一の化成処理を
施した。ただし、有機過酸化物としてt−ヘキシルヒド
ロペルオキシド400ppm を添加し、遊離酸度を0.9
ポイントに調整した。形成された化成皮膜の重量は1.
0g/m2 であり、その結晶は板状であり、粒子径は6
μmであった。この化成皮膜は灰黒色であり、均一緻密
なものであった。
【0092】実施例6において、供試冷延鋼板に、実施
例1と同様にして表面調整処理を施した後、これに実施
例1と同じ化成処理液を用いて化成処理を施した。ただ
し、有機過酸化物として過酢酸100ppm を添加し、遊
離酸度を0.6ptに調整した。形成された化成皮膜の重
量は1.3g/m2 であり、その結晶は板状であり、粒
子径は10μmであった。この化成皮膜は灰黒色であ
り、均一緻密なものであった。
【0093】実施例7において、供試冷延鋼板に、表面
調整処理を施すことなく、これに実施例1と同じ化成処
理液を用いて、化成処理を施した。ただし、有機過酸化
物としてt−ブチルヒドロペルオキシド500ppm を添
加し、遊離酸度を0.6ptに調整した。形成された化成
皮膜の重量は1.1g/m2 であり、その結晶は板状で
あり、粒子径は10μmであった。この化成皮膜は灰黒
色であり、均一緻密なものであった。
【0094】実施例8において、下記組成を有する化成
処理液〔2〕を調製した。 −化成処理液〔2〕組成− りん酸イオン :15g/リットル(75%りん酸を添
加) 亜鉛イオン :1.3g/リットル(酸化亜鉛を添
加) ニッケルイオン:1.0g/リットル(硝酸ニッケルを
添加) マンガンイオン:0.5g/リットル(炭酸マンガンを
添加) フッ化物イオン:100ppm (55%フッ化水素酸を添
加) 硝酸イオン :7.2g/リットル(硝酸ナトリウ
ム、硝酸ニッケルを添加) (窒素濃度として1.4g/リットル) 上記組成の化成処理液中に有機過酸化物としてt−ブチ
ルヒドロペルオキシド450ppm を添加し、その遊離酸
度を0.9ポイントに調整した。そして供試冷延鋼板に
チタンコロイド系の表面調整処理を施した後、上記化成
処理液を用いて、処理温度43℃、処理時間120秒の
条件下にて化成処理を施した。形成された化成皮膜の重
量は1.1g/m2 であり、その結晶は板状であり、粒
子径は平均5μmであった。この化成皮膜は灰黒色で均
一かつ緻密なものであった。
【0095】比較例1において、供試冷延鋼板に実施例
1と同様の表面調整処理を施した後、これに実施例1と
同様の化成処理を施した。但し、有機過酸化物としてt
−ブチルヒドロペルオキシド5ppm を添加した。化成皮
膜重量は0.5g/m2 であり、黄色い鉄錆が発生し
た。
【0096】比較例2において、供試亜鉛めっき鋼板に
実施例1と同様の化成処理を施した。但し、有機過酸化
物としてt−ブチルヒドロペルオキシド5ppm を添加し
た。化成皮膜の重量は0.9g/m2 であり、粒子径は
平均15μmであって、疎らな皮膜であった。
【0097】比較例3において、供試冷延鋼板に、表面
調整処理(3)を施すことなく実施例8と同様の化成処
理を施した。但し、有機過酸化物の代わりに亜硝酸イオ
ン150ppm を化成処理液中に添加した。化成皮膜の重
量は0.1g/m2 であり、化成皮膜はほとんど析出せ
ず、全面に黄錆が発生した。
【0098】比較例4において、供試冷延鋼板に実施例
1と同様の化成処理を施した。但し、有機過酸化物の代
わりに、塩素酸イオン濃度が1.5g/リットルとなる
ように塩素酸ナトリウムを化成処理液中に添加した。化
成皮膜の重量は0.9g/m2 であり、その結晶は柱状
であり、粒子径は平均15μmであった。この化成皮膜
は疎らに析出し黄色い鉄錆が認められた。
【0099】テスト結果を表1に示す。
【表1】
【0100】実施例1〜8で用いた有機過酸化物の濃度
は50〜1500ppm の範囲内であり、このような濃度
範囲であれば冷延鋼板に対しても、亜鉛めっき鋼板に対
しても良好な化成皮膜が得られることが確認された。ま
た、表面調整処理を行わなくても均一緻密な皮膜が得ら
れた。
【0101】これに対し比較例1および2では、有機過
酸化物の濃度が50ppm 未満であり、化成促進剤の有す
る酸化効果が不充分で疎らな皮膜結晶が析出するため素
地金属の均一被覆性が低下することが確認された。
【0102】比較例3,4はそれぞれ有機過酸化物とは
異なる化成促進剤を用いた場合の例であり、比較例3は
化成促進剤として亜硝酸イオンを用い、表面調整処理を
行わない例であり、この場合化成皮膜が全く析出しない
ことが確認された。
【0103】比較例4は、化成促進剤として塩素酸イオ
ンを単独で用いた例であり、この場合化成反応速度が著
しく鈍化することが確認された。
【0104】実施例9〜15 本実施例において、下記金属材料を用いた。 冷延鋼板(板厚:0.8mm、SPCC−SD、以下
SPCと記す) 電気亜鉛めっき鋼板(板厚:0.8mm、めっき付着
量:両面30g/m2、以下EGと記す) 合金化溶融亜鉛めっき鋼板(板厚:0.8mm、めっ
き付着量:両面45g/m2 、以下GAと記す) アルミニウム−マグネシウム合金板(A5052、
板厚:1.0mm、以下ALと記す)。 これらの金属材料を70×150mmの寸法に切断して供
試片を作成し、これに下記実施例および比較例の処理を
施した。なお、各試験材料は市販の洗浄防錆油が2g/
2 塗布されたものであった。
【0105】実施例9〜15の各々において、実施例1
と同様の処理を上記金属材料に施した。但し、表面調整
処理を省略し、前記化成処理液〔1〕の代りに、下記組
成を有する化成処理液〔3〕,〔4〕、又は〔5〕を用
いた。
【0106】−化成処理液〔3〕− りん酸イオン :15g/リットル(75%りん酸を添
加) 亜鉛イオン :1.3g/リットル(酸化亜鉛を添
加) ニッケルイオン:0.5g/リットル(炭酸ニッケルを
添加) フッ素成分 :1.0g/リットル(珪フッ化ナトリ
ウムを添加) 2−ブタノール:30g/リットル 化成促進剤 :後記の通り 遊離酸度 :0.6ポイント
【0107】−化成処理液〔4〕− りん酸イオン :13g/リットル(75%りん酸を添
加) 亜鉛イオン :1.1g/リットル(酸化亜鉛を添
加) コバルトイオン:0.4g/リットル(塩基性炭酸コバ
ルトを添加) フッ素成分 :0.4g/リットル(フッ化水素ナト
リウムを添加) 化成促進剤 :後記の通り 遊離酸度 :0.4ポイント
【0108】−化成処理液〔5〕− りん酸イオン :17g/リットル(75%りん酸を添
加) 亜鉛イオン :1.5g/リットル(酸化亜鉛を添
加) 化成促進剤 :後記の通り 遊離酸度 :0.7ポイント
【0109】なお化成処理液〔3〕〜〔5〕の各々は、
水酸化ナトリウムによって所定の遊離酸度に調整され
た。遊離酸度(ポイント)、化成皮膜重量、皮膜結晶の
状況およびサイズは、前記と同様にして測定された。
【0110】皮膜結晶粒子の粒子径を下記のように評価
した。 冷延鋼板:35μm未満:○、35μm以上:× 電気亜鉛めっき鋼板:25μm未満:○、25μm以
上:× 合金化溶融亜鉛めっき鋼板:30μm未満:○、30
μm以上:× アルミニウム−マグネシウム合金板:30μm未満:
○、30μm以上:×
【0111】金属材料被覆度を下記のように評価した。
全素材について、 素地の露出が全く無い:○ 素地の露出が認められる:×
【0112】また、化成処理後の試験板に対し、カチオ
ン電着塗料(商標:エレクロン2000、関西ペイント
社製)を用いて電着塗装を施し、膜厚20μmの塗膜を
形成させた。次にこの塗装試料について下記の塗装性能
試験を行い、その塗装性能を評価した。
【0113】(1)塗装後の耐食性試験 塗装試料の塗膜にカット傷を入れ、50℃に加温した5
%塩化ナトリウム水溶液中に塗板を浸漬した。これを2
40時間後に引き上げ、水洗、乾燥後、セロハンテープ
を用いてカット傷周辺をテープ剥離した。テープ剥離後
の塗膜の片側最大剥離幅を測定し、下記評価基準に従っ
て評価した。 ・塗装後の耐食性評価基準 片側最大剥離幅:7mm未満:○ 片側最大剥離幅:7mm以上10mm未満:△ 片側最大剥離幅:10mm以上:×
【0114】(2)耐水二次密着性試験 塗装試料を40℃に加温した純水中に浸漬した。これを
240時間後に引き上げ、乾燥後、塗膜にカット傷を十
文字に入れた。エリクセン試験機にてカット傷の中心部
を3mm押し出し、セロハンテープ剥離後の塗膜剥離率
(剥離面積/押し出し面積)を測定した。評価は下記評
価基準に従った。 ・耐水二次密着性評価基準 塗膜剥離率:10%未満:○ 塗膜剥離率:10%以上20%未満:△ 塗膜剥離率:20%以上:×
【0115】実施例9において、化成処理液〔3〕の化
成促進剤として200ppm のt−ブチルヒドロペルオキ
シドを添加し、この処理液に処理温度45℃にて冷延鋼
板を浸漬し化成処理した。処理条件を表2に、また試験
結果を表3に示す。
【0116】実施例10において、化成処理液〔3〕の
化成促進剤として80ppm のジ−t−ブチルペルオキシ
ドを用い、この処理液中に処理温度45℃にて電気亜鉛
めっき鋼板を浸漬し化成処理した。処理条件を表2に、
また試験結果を表3に示す。
【0117】実施例11において、化成処理液〔4〕の
化成促進剤として500ppm のt−ブチルヒドロペルオ
キシドを用い、この処理液を処理温度40℃にて冷延鋼
板にスプレーして化成処理した。処理条件を表2に、ま
た試験結果を表3に示す。
【0118】実施例12において、化成処理液〔4〕の
化成促進剤として1100ppm のアセチルアセトンペル
オキシドを用い、この処理液中に、処理温度40℃にて
電気亜鉛めっき鋼板を浸漬し化成処理した。処理条件を
表2に、また試験結果を表3に示す。
【0119】実施例13において、化成処理液〔3〕の
化成促進剤として500ppm のジ−t−ブチルペルオキ
シドを用い、この処理液中に処理温度43℃にて冷延鋼
板を浸漬し化成処理した。処理条件を表2に、また試験
結果を表3に示す。
【0120】実施例14において、化成処理液〔5〕の
化成促進剤として500ppm のt−ブチルヒドロペルオ
キシドを用い、この処理液を処理温度33℃にて合金化
溶融亜鉛めっき鋼板にスプレーし化成処理した。処理条
件を表2に、また試験結果を表3に示す。
【0121】実施例15において、化成処理液〔3〕の
化成促進剤として150ppm のジ−t−ブチルペルオキ
シドを用い、この処理液を処理温度43℃においてアル
ミニウム−マグネシウム合金板にスプレーし化成処理し
た。処理条件を表2に、また試験結果を表3に示す。
【0122】
【表2】
【0123】
【表3】
【0124】比較例5〜9 比較例5〜9の各々において、実施例9と同一の処理お
よびテストを、下記の変更事項を除き、行った。
【0125】比較例5において、化成処理液〔3〕の化
成促進剤として200ppm の亜硝酸イオンを用い、この
処理液中に処理温度43℃にて冷延鋼板を浸漬し化成処
理した。処理条件を表4に、また試験結果を表5に示
す。
【0126】比較例6において、化成処理液〔3〕を、
化成促進剤なしで、43℃に加温し、この処理液中に冷
延鋼板を浸漬し化成処理した。処理条件を表4に、また
試験結果を表5に示す。
【0127】比較例7において、化成処理液〔4〕に化
成促進剤として2000ppm の塩素酸イオンを添加し、
この処理液中に、処理温度40℃にて電気亜鉛めっき鋼
板を浸漬し化成処理した。処理条件を表4に、また試験
結果を表5に示す。
【0128】比較例8において、化成処理液〔5〕を、
化成促進剤なしで33℃に加温し、これを合金化溶融亜
鉛めっき鋼板にスプレーし化成処理した。処理条件を表
4に、また試験結果を表5に示す。
【0129】比較例9において、化成処理液〔3〕を化
成促進剤なしで43℃に加温し、これをアルミニウム−
マグネシウム合金板にスプレーし化成処理した。処理条
件を表4に、また試験結果を表5に示す。
【0130】
【表4】
【0131】
【表5】
【0132】表2〜5に明瞭に示されているように、本
発明の表面処理方法を用いた実施例9〜15は、化成促
進剤として有機過酸化物を含有する化成処理液にて処理
しているので、被処理金属表面に薄膜で均一かつ緻密な
りん酸亜鉛系化成皮膜が析出し、優れた塗装性能(塗装
後の耐食性および塗装性能)が得られることが確認され
た。これに対し、化成促進剤を全く含有しない化成処理
液にて処理された比較例6、比較例8および比較例9で
は、酸化効果が不充分で、疎らな皮膜結晶しか析出せ
ず、素地金属が均一に被覆されない。また、化成促進剤
として従来から最も一般的に使用されている亜硝酸イオ
ンを用いた比較例5、塩素酸イオンを用いた比較例7に
おいては、緻密な皮膜が析出されないので、満足できる
塗装性能が得られないことが明らかとなった。
【0133】実施例16〜22および比較例10〜14 実施例16〜22および比較例10〜14の各々におい
て、実施例9と同様の冷延鋼板(SPCシート)、実施
例10と同様の亜鉛電気めっき鋼板、合金化溶融亜鉛め
っき鋼板(板厚:2.8mm、めっき付着量:両面45g
/m2 )、および実施例15と同様のアルミニウム−マ
グネシウム合金板を用いた。これらの金属材料板は、市
販の洗浄防錆油(商標:NOX−RUST550、パー
カー興産社製)が2g/m2 塗布されたものであった。
【0134】実施例16〜22および比較例10〜14
に共通の処理工程を下記に示す。 (1)清浄化成処理(条件は後記実施例および比較例中
に記載の通りである。) (2)水洗〔水道水〕 常温、30秒、スプレー (3)脱イオン水洗〔脱イオン水(電気伝導度:0.2
μS/cm)〕 常温、20秒、スプレー (4)水切り乾燥 110℃熱風、180秒
【0135】なお下記実施例および比較例に用いられた
清浄化成処理液は、特に断らない限り水酸化ナトリウム
によって後記所定の遊離酸度に調整したものである。ま
た、処理液の遊離酸度(ポイント)は、実施例1と同様
に測定した。
【0136】化成皮膜重量は実施例1と同様の測定方法
により測定した。この測定において、皮膜剥離は下記方
法により行われた。 剥離処理条件 (1)冷延鋼板の場合 剥離液 :5%クロム酸水溶液 剥離条件:75℃、15分、浸漬剥離 (2)亜鉛めっき板の場合 剥離液 :重クロム酸アンモニウム2重量%+28%ア
ンモニア水49重量%+純水49重量% 剥離条件:常温、15分、浸漬剥離 (3)アルミニウム−マグネシウム合金板の場合 剥離液 :5%クロム酸水溶液 剥離条件:常温5分、浸漬剥離
【0137】析出した皮膜結晶は走査型電子顕微鏡(S
EM)を用いて1000倍に拡大して観察した。この拡
大像より、化成皮膜結晶の粒子径を測定し、結晶粒子の
微細化度合を評価するとともに、金属材料の被覆性(素
地の露出の有無)を評価した。なお、結晶粒子の微細化
度合の評価および素地の被覆性の評価は、次に示す評価
基準に従った。 (1)結晶粒子径評価基準 30μm未満 →○(良好) 30μm以上50μm未満→△(やや不良) 50μm以上 →×(不良) (2)素地金属被覆性評価基準 素地の露出が全く無い →○(良好) 素地が若干露出している →△(やや不良) 完全に素地が露出している→×(不良)
【0138】実施例16において、下記清浄化成処理液
〔6〕を45℃に加温し、その中に冷延鋼板を180秒
間浸漬し化成処理した。得られた皮膜重量は1.2g/
2 であり、結晶粒子の微細化度合と素地金属の被覆性
はともに良好であった。 −化成処理液〔6〕− りん酸イオン :15g/リットル(75%りん酸を添
加) 亜鉛イオン :1.3g/リットル(酸化亜鉛を溶
解) ニッケルイオン:0.5g/リットル(炭酸ニッケルを
添加) フッ素成分 :1.0g/リットル(珪フッ化ナトリ
ウムを添加) 有機過酸化物 :500ppm (t−ブチルヒドロペルオ
キシドを使用) t−ブタノール:4.0g/リットル 界面活性剤 :1.0g/リットル(ポリオキシエチ
レン・ポリオキシプロピレン・ブロックポリマー〔平均
分子量:10000、エチレンオキサイド付加率:80
%〕を添加) 油分 :2.0g/リットル(NOX−RUS
T550を添加) 遊離酸度 :0.6ポイント 試験結果を表6に示す。
【0139】実施例17において、実施例1と同一の清
浄化成処理液〔6〕を用い、その中に亜鉛めっき板を1
80秒間浸漬し化成処理した。得られた皮膜重量は3.
5g/m2 であり、その結晶粒子の微細化度合と素地金
属の被覆性はともに良好であった。試験結果を表6に示
す。
【0140】実施例18において、下記清浄化成処理液
〔7〕を40℃に加温し、これを冷延鋼板に120秒間
スプレーし化成処理した。得られた皮膜重量は1.2g
/m2 であり、その結晶粒子の微細化度合と素地金属の
被覆性はともに良好であった。 −化成処理液〔7〕− りん酸イオン :14g/リットル(75%りん酸を添
加) 亜鉛イオン :1.3g/リットル(酸化亜鉛を添
加) コバルトイオン:0.5g/リットル(塩基性炭酸コバ
ルトを添加) 有機過酸化物 :1000ppm (ジ−t−ブチルペルオ
キシドを添加) t−ブタノール:2.0g/リットル 界面活性剤 :1.0g/リットル(ポリオキシエチ
レンソルビタンモノラウレート〔EO付加モル数:2
0〕を添加) 0.5g/リットル(ラウリルエーテル硫酸エステル塩
〔EO付加モル数:3〕を添加) 油分 :3.0g/リットル(NOX−RUS
T550を添加) 遊離酸度 :0.5ポイント 試験結果を表6に示す。
【0141】実施例19において、実施例18と同一の
清浄化成処理液〔7〕を用い、これを亜鉛めっき板に1
20秒間スプレーし化成処理した。得られた皮膜重量は
3.3g/m2 であり、その結晶粒子の微細化度合と素
地金属の被覆性はともに良好であった。試験結果を表6
に示す。
【0142】実施例20において、下記清浄化成処理液
〔8〕を43℃に加温し、これを冷延鋼板に30秒間ス
プレーし化成処理した後、さらに90秒間浸漬処理し
た。形成された皮膜重量は1.3g/m2 であり、その
結晶粒子の微細化度合と素地金属の被覆性はともに良好
であった。 −化成処理液〔8〕− りん酸イオン :17g/リットル(75%りん酸を添
加) 亜鉛イオン :1.5g/リットル(酸化亜鉛を添
加) フッ素成分 :0.4g/リットル(フッ化ナトリウ
ムを添加) 有機過酸化物 :100ppm (アセチルアセトンペルオ
キシドを添加) 油分 :2.0g/リットル(NOX−RUS
T550を添加) 界面活性剤 :1.5g/リットル(ポリオキシエチ
レンオレイルエーテル〔EO付加モル数:7〕を添加) 0.5g/リットル(ラウリルジメチルベタインを添
加) 遊離酸度 :0.7ポイント 試験結果を表6に示す。
【0143】実施例21において、実施例20と同様の
化成処理液〔8〕を用い、これを亜鉛めっき板に30秒
間スプレーし化成処理した後、さらに90秒間浸漬処理
した。形成された皮膜重量は3.6g/m2 であり、そ
の結晶粒子の微細化度合と素地金属の被覆性はともに良
好であった。試験結果を表6に示す。
【0144】実施例22において、実施例20と同様の
化成処理液〔8〕を用い、これをアルミニウム合金板に
30秒間スプレーし化成処理した後、さらに90秒間浸
漬処理した。形成された皮膜重量は2.5g/m2 であ
り、その結晶粒子の微細化度合と素地金属の被覆性はと
もに良好であった。試験結果を表6に示す。
【0145】比較例10において、下記化成処理液
〔9〕を45℃に加温し、その中に冷延鋼板を180秒
間浸漬し化成処理した。この処理液中には有機過酸化物
および界面活性剤が添加されていないため、処理を終了
しても油分が除去されておらず、皮膜は全く析出してい
なかった。 −化成処理液
〔9〕− りん酸イオン :15g/リットル(75%りん酸を添
加) 亜鉛イオン :1.3g/リットル(酸化亜鉛を溶
解) ニッケルイオン:0.5g/リットル(硝酸ニッケルを
添加) フッ素成分 :1.0g/リットル(珪フッ化ナトリ
ウムを添加) 硝酸イオン :7.0g/リットル(硝酸ナトリウム
を添加) 亜硝酸イオン :100ppm (亜硝酸ナトリウムを添
加) 油分 :2.0g/リットル(NOX−RUS
T550を添加) 遊離酸度 :0.6ポイント 試験結果を表6に示す。
【0146】比較例11において、下記化成処理液〔1
0〕を45℃に加温し、その中に亜鉛めっき板を180
秒間浸漬し化成処理した。形成された皮膜重量は5.3
g/m2 であり、素地金属の被覆性は良好であったが、
有機過酸化物の不存在により、結晶粒子が粗大化してお
り、微細化度合は不良であった。 −化成処理液〔10〕− りん酸イオン :15g/リットル(75%りん酸を添
加) 亜鉛イオン :1.3g/リットル(酸化亜鉛を添
加) ニッケルイオン:0.5g/リットル(硝酸ニッケルを
添加) フッ素成分 :1.0g/リットル(珪フッ化ナトリ
ウムを添加) 硝酸イオン :7.0g/リットル(硝酸ナトリウム
を添加) 亜硝酸イオン :100ppm (亜硝酸ナトリウムを添
加) 界面活性剤 :1.0g/リットル(ポリオキシエチ
レン・ポリオキシプロピレン・ブロックポリマー〔平均
分子量:10000、エチレンオキサイド付加率:80
%〕を添加) 油分 :2.0g/リットル(NOX−RUS
T550を添加) 遊離酸度 :0.6ポイント 試験結果を表6に示す。
【0147】比較例12において、下記化成処理液〔1
1〕を40℃に加温し、これを冷延鋼板に120秒間ス
プレーし化成処理した。形成された皮膜重量は0.3g
/m2 であったが有機過酸化物の不存在により結晶粒子
の微細化度合と素地金属の被覆性はともに不良であっ
た。 −化成処理液〔11〕− りん酸イオン :14g/リットル(75%りん酸を添
加) 亜鉛イオン :1.3g/リットル(酸化亜鉛を添
加) コバルトイオン:0.5g/リットル(塩基性炭酸コバ
ルトを添加) 界面活性剤 :1.0g/リットル(ポリオキシエチ
レンソルビタンモノラウレート〔EO付加モル数:2
0〕を添加) 0.5g/リットル(ラウリルエーテル硫酸エステル塩
〔EO付加モル数:3〕を添加) 油分 :3.0g/リットル(NOX−RUS
T550を添加) 遊離酸度 :0.5ポイント 試験結果を表6に示す。
【0148】比較例13において、下記化成処理液〔1
2〕を40℃に加温し、これを亜鉛めっき鋼板に120
秒間スプレーし化成処理した。形成された皮膜重量は
2.1g/m2 であったが、有機過酸化物の不存在によ
り結晶粒子の微細化度合は不良、素地金属の被覆性はや
や不良であった。 −化成処理液〔12〕− りん酸イオン :14g/リットル(75%りん酸を添
加) 亜鉛イオン :1.3g/リットル(酸化亜鉛を添
加) コバルトイオン:0.5g/リットル(塩基性炭酸コバ
ルトを添加) 塩素酸イオン :1.5g/リットル(塩素酸ナトリウ
ムを添加) 界面活性剤 :1.0g/リットル(ポリオキシエチ
レンソルビタンモノラウレート〔EO付加モル数:2
0〕を添加) 0.5g/リットル(ラウリルエーテル硫酸エステル塩
〔EO付加モル数:3〕を添加) 油分 :3.0g/リットル(NOX−RUS
T550を添加) 遊離酸度 :0.5ポイント 試験結果を表6に示す。
【0149】比較例14において、比較例13と同一の
化成処理液〔12〕を用い、これをアルミニウム板に1
20秒間スプレーし化成処理した。しかし有機過酸化物
の不存在により皮膜は全く析出していなかった。試験結
果を表6に示す。
【0150】
【表6】
【0151】 〔表6の註〕 *5 化成促進剤 a:t−ブチルヒドロペルオキシド(有機過酸化物) f:ジ−t−ブチルペルオキシド ( 〃 ) g:アセチルアセトンペルオキシド( 〃 ) h:硝酸イオン d:亜硝酸イオン e:塩素酸ナトリウム *6 界面活性剤 A:ポリオキシエチレン・ポリオキシプロピレン・ブロックコ ポリマー B:ポリオキシエチレンソルビタンモノラウレート C:ラウリルエーテル硫酸エステル塩 D:ポリオキシエチレンオレイルエーテル E:ラウリルジメチルベタイン
【0152】表6には、実施例16〜22および比較例
10〜14に用いた金属材料種、化成処理液中に含有す
る化成促進剤、界面活性剤、および処理後の皮膜結晶の
評価結果を表している。これらの結果からわかるよう
に、本発明の表面処理方法を適用した実施例16〜22
は、油分の付着した金属材料に対しても、その表面を清
浄化し、同時に均一かつ緻密なりん酸亜鉛系化成皮膜の
析出が得られることが確認された。
【0153】これに対し、界面活性剤を含有しない化成
処理液で処理した比較例10は、油脂分除去が充分にな
されないために、化成皮膜は析出しなかった。また処理
液中に化成促進剤を含有しない比較例12においては結
晶の微細度および被覆性が不良であり、無機系の化成促
進剤を含有するが有機過酸化物を含有しない比較例1
1,13については、皮膜結晶が粗大化してしまい、均
一緻密な化成皮膜は得られなかった。また比較例14に
おいては、無機系の化成促進剤が用いられたが、化成皮
膜は形成しなかった。
【0154】
【発明の効果】本発明の化成処理液および表面処理方法
は、金属材料に対して均一かつ緻密で、しかも塗装後の
耐食性や耐水二次密着性などの塗装性能に優れたりん酸
亜鉛系化成皮膜を析出させることができ、かつ、この際
に、清浄化(脱脂)−化成処理−水洗、という最もシン
プルな工程で行うことができる。従って、本発明の化成
処理液を用いる表面処理方法では、従来の技術では均一
かつ緻密な化成皮膜の析出には欠くことのできなかった
表面調整処理が不要であり、このため処理設備が簡略化
できるという利点、煩雑な表面処理液管理から解放され
るという利点、並びに表面調整剤が不要であることによ
る経済的利点等を有し、まさに画期的な技術といえる。
また、本発明の化成処理液に表面洗浄用界面活性剤を含
有させることにより、油脂分などの付着した金属材料表
面に対して、脱脂清浄化処理とりん酸亜鉛系化成処理を
同一工程で同時に施し、しかも均一かつ緻密な化成皮膜
の形成が可能になった。つまり、本発明の清浄化成処理
方法を用いることにより、大幅に処理工程を短縮でき、
処理設備の簡略化、省スペース化、生産性の向上、薬剤
コストの低減、薬剤管理の簡略化等等、多岐に渡るメリ
ットが得られる。

Claims (13)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 主成分として亜鉛イオンおよびりん酸イ
    オンを含む水溶液に、さらに50〜1500ppm の、少
    なくとも1種の有機過酸化物からなる化成促進剤を含む
    ことを特徴とする金属材料用りん酸亜鉛系化成処理液。
  2. 【請求項2】 窒素含有化合物の含有量が、窒素含有率
    として0〜200ppm に制限されている、請求項1に記
    載の金属材料用りん酸亜鉛系化成処理液。
  3. 【請求項3】 前記有機過酸化物が水溶性であり、かつ
    ペルオキシ構造又はペルカルボキシル構造を有するもの
    である、請求項1に記載の金属材料用りん酸亜鉛系化成
    処理液。
  4. 【請求項4】 前記有機過酸化物が、エチルヒドロペル
    オキシド、イソプロピルヒドロペルオキシド、t−ブチ
    ルヒドロペルオキシド、t−ヘキシルヒドロペルオキシ
    ド、ジエチルペルオキシド、ジ−t−ブチルペルオキシ
    ド、アセチルアセトンペルオキシド、クメンヒイドロペ
    ルオキシド、t−ブチルペルオキシマレイン酸、過酢
    酸、モノ過フタル酸、および過こはく酸からなる群から
    選ばれる請求項1に記載の金属材料用りん酸亜鉛系化成
    処理液。
  5. 【請求項5】 界面活性剤をさらに含む、請求項1に記
    載の金属材料用りん酸亜鉛系化成処理液。
  6. 【請求項6】 主成分として亜鉛イオンおよびりん酸イ
    オンを含み、さらに50〜1500ppm の、少なくとも
    1種の有機過酸化物からなる化成促進剤を含む化成処理
    液を、金属材料の表面に接触させて、前記金属材料表面
    上にりん酸亜鉛系化成処理皮膜を形成することを特徴と
    する金属材料用りん酸亜鉛系化成処理方法。
  7. 【請求項7】 前記処理液中の窒素含有化合物の合計含
    有量が、窒素含有量として0〜200ppm に制限されて
    いる、請求項6に記載のりん酸亜鉛系化成処理方法。
  8. 【請求項8】 前記化成促進剤が水溶液であり、かつペ
    ルオキシ構造又はペルカルボキシル構造を有するもので
    ある、請求項6に記載のりん酸亜鉛系化成処理方法。
  9. 【請求項9】 前記化成処理液が2.0〜4.0のpH値
    を有する請求項6に記載のりん酸亜鉛系化成処理方法。
  10. 【請求項10】 前記化成処理液が25〜50℃の温度
    を有する請求項6に記載のりん酸亜鉛系化成処理方法。
  11. 【請求項11】 前記化成処理の直前に、前記金属材料
    を表面洗浄する、請求項6に記載のりん酸亜鉛系化成処
    理方法。
  12. 【請求項12】 前記化成処理液がさらに界面活性剤を
    含み、前記金属材料の表面が同時に洗浄され、かつ化成
    処理被覆される、請求項6に記載のりん酸亜鉛系化成処
    理方法。
  13. 【請求項13】 前記水性化成処理液中の前記界面活性
    剤の濃度が0.5〜5g/リットルである、請求項12
    に記載のりん酸亜鉛系化成処理方法。
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