JP4857930B2 - 溶融亜鉛めっき鋼板の製造方法 - Google Patents
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上記の様な問題を解決する手法のひとつとして、めっき前の焼鈍過程前半で酸化し、後半で還元する方法がある。(例えば、特許文献1、特許文献2、特許文献3)
[1]Siを0.3 mass%以上含有する鋼板に溶融亜鉛めっき処理を施すに際し、400℃〜800℃の温度域において、燃焼ガス中にフラックス作用を持つ物質を混合燃焼させる直火バーナ方式の還元処理を行った後、溶融亜鉛めっき処理を施すことを特徴とする高張力溶融亜鉛めっき鋼板の製造方法。
[2]前記[1]において、前記フラックス作用を持つ物質は、硼素化合物を含むことを特徴とする高張力溶融亜鉛めっき鋼板の製造方法。
[3]前期[1]または[2]において、前記フラックス作用を持つ物質は、フッ素化合物を含むことを特徴とする高張力溶融亜鉛めっき鋼板の製造方法。
[4]前期[1]〜[3]のいずれかにおいて、前記フラックス作用を持つ物質は、ロジン、アミン、アミド類化合物の1種以上を含むことを特徴とする高張力溶融亜鉛めっき鋼板の製造方法。
すなわち、不めっきを生じさせる原因は、上述の通り、めっき処理前に行われる酸化/還元処理における、鋼中のSi、MnおよびCr等の表面濃化による酸化物形成である。そのため、酸化/還元処理を行うにあたっては、1)Si、Mn等が拡散する温度域(400〜700℃程度)に達する前までに、鋼板内部にある一定以上の酸素を存在させること(内部酸化を促進)、2)ある温度以上(400〜700℃程度)の領域では、ロールに接触する前に鋼板表層部に極力酸素を存在させないこと(外部酸化を抑制)が酸化物形成を防止するための要点となる。上記1)の内部酸化を促進させる条件としては、この温度域までに内部酸化量を確保することであり、内部酸化量を確保していれば、Si,Mnが鋼板内部の酸素と反応し、不メッキの原因となる表層酸化を起こさない。また、2)の条件で重要なのは、焼鈍途中での鋼板を層構造として、内部に酸素を含有し、最表層には酸素量を最小化するということである。そして、400〜700℃程度の温度域以上で酸化膜が表層に存在しなければ、ロールピックアップの問題は起きず、また不メッキも発生しないため、その点からも必要な条件となる。
その他添加元素については本発明の効果を妨げるものではなく、特に限定するものではなく、従来から公知の成分系を利用することができる。代表組成について述べると、次のとおりである。
C:0.25%以下
Cは鋼中に含有される元素であり、0.0001〜0.25%の範囲で一般的に含有される。本発明においても下地鋼鈑中にこの範囲でCを含有することができる。また、Cは、高強度化に対して有用なだけでなく、強度−延性バランスを向上させるために残留オーステナイトを生成させる等、組織制御を行う場合に有用な元素である。これらの作用を発現させるには、0.05%以上含有されていることが好ましい。しかしながら、含有量が0.25%を超えると、溶接性が劣化する。以上より、0.25%以下、好ましくは0.05%以上0.25%以下とする。
Mn:0.5〜5.0%
Mnは、鋼の高強度化に有用な元素であり、5.0%以下の範囲で通常鋼中に含有される。本発明においても下地鋼鈑中にこの範囲でMnを含有することができる。特に、0.5%以上含有させることによってその効果を発揮することができる。しかしながら、Mnも、Siと同様に、焼鈍時に酸化膜を形成する元素であり、その含有量が5.0%を超えて多量に含有されるとめっき密着性が劣化する傾向がある。また、溶接性や強度−延性バランスの確保にも悪影響を及ぼす。よって、Mnは0.5%以上5.0%以下とする。
Al:0.005〜3.0%
Alは、Siと補完的に添加される元素であり、0.005%以上含有させることが好ましい。しかしながら、3.0%を超えるとめっき密着性が劣化する傾向がある。また、溶接性や強度−延性バランスの確保にも悪影響を及ぼす。よって、Alは0.005%以上3.0%以下とする。
Ti(1%以下)、Nb(1%以下)、V(1%以下)、Cr(3%以下)、S(0.1%以下)、Mo(1%以下)、Cu(3%以下)、Ni(3%以下)、B(0.1%以下)、Ca(0.1%以下)、N(0.1%以下)、O(0.1%以下)、P(1%以下)、Sb(0.5%以下)を添加することができる。なお、上記以外の残部はFeおよび不可避的不純物である。
上記化学成分範囲に調整された鋼板に酸化/還元処理(加熱処理)を行い、次いで、溶融亜鉛めっきを施す。なお、本発明においては、酸化/還元処理(加熱処理)時に、400℃〜800℃の温度域において鋼板に対して直火バーナ方式の強還元処理を直火バーナ用燃焼ガス中に還元性のフラックスを加え混合燃焼させながら行うものとする。この強還元処理は本発明において重要な要件である。強還元処理処理を行うことで鋼中のSi、MnおよびCr等の表面濃化による酸化物形成を防止する。
常温から400℃までの加熱は、例えば、雰囲気ガス加熱など、通常行われている処理方法を用いることができる。鋼板を加熱する手段としては特に限定されず、バーナー加熱、誘導加熱、放射加熱、通電加熱等の従来から使用されている加熱方式でよく、特に限定するものではない。
400〜800℃の領域での加熱は、ロールに接触するまでの領域をいくつかのゾーンに分割し制御し、最終ゾーンのみを還元ゾーンとすることが好ましい。なぜなら、このような装置構成の場合、最終ゾーン前までは酸化ゾーンなので、必要な酸化量を確保するのに有利であり、さらに最終ゾーンは還元ゾーンなので、最表層の酸素量は最小化することができ、結局、メッキ性の確保とロールピックアップの抑制の両立が図れるためである。還元ゾーンでの空気量は、空気比0.95以下が好ましい。詳細については、前述した通りである。
強還元処理後850℃まで再度加熱処理を行う。処理方法は特に限定されない。例えば、輻射加熱方式が挙げられる。
前記還元処理後に非酸化性あるいは還元性雰囲気中でめっきに適した温度まで鋼板を冷却し、めっき浴中に浸漬してめっき処理する。溶融亜鉛めっき処理は従来から行われている方法に従えばよい。例えば、めっき浴温は440〜520℃程度、鋼板のめっき浴浸漬温度はほぼめっき浴温に等しくし、亜鉛めっき浴中のAl濃度は0.1〜0.2%とするのが一般的ではあるが、特に限定するものではない。
あるいは、製品の使用用途によってはめっき温度、めっき浴組成等の上記めっき条件を変更する場合があるが、めっき条件の違いは本発明の効果を害するものではなく、特に限定するものではない。例えば、めっき浴中にAl以外にPb、Sb、Fe、Mg、Mn、Ni、Ca、Ti、V、Cr、Co、Sn等の元素が混入していても本発明の効果は何ら変わらない。
さらに、めっき後のめっき層の厚さを調整する方法についても、特に限定するものではないが、一般的にはガスワイピングが使用され、ガスワイピングのガス圧、ワイピングノズル/鋼板間距離等を調節することによって、めっき層の厚さを調整する。このとき、めっき層の厚さは特に限定されるものではないが、3〜15μm程度とするのが好ましい。3μm未満では十分な防錆性が得られず、一方、15μm超えでは防錆性が飽和するだけでなく、加工性や経済性が損なわれるからである。但し、めっき層の厚さの違いは本発明の効果を妨げるものではなく、特に限定するものではない。
表1に示す成分からなる冷延鋼板(板厚:1.0mm、板幅:1200mm)を用いて連続溶融亜鉛めっきライン(CGL)で溶融亜鉛めっき鋼板を作製した。作製にあたっては、めっき処理前に、以下に示す条件にて加熱処理を行った。その後、Al:0.135%を含む(Fe飽和)460℃の亜鉛めっき浴を用いて、侵入板温:480℃でめっき処理を行った。処理速度は120mpmであった。めっき後ガスワイピング装置で片面付着量:40g/m2に調整した。
なお、上記加熱処理において、フラックス含有還元として、鋼板温度が500℃〜600℃の時に、燃焼ガス(コークスガス)中にトリメトキシボラン((CH3O)3B)60%とメタノール40%の混合液に窒素キャリアガスをバブリングし気化させたガスを混合し、そのガスを燃焼させることで、鋼板加熱を行った。
<加熱処理>
常温〜200℃未満 雰囲気ガス加熱
200℃以上〜600℃未満 直火バーナ加熱
600℃以上〜850℃未満 輻射加熱
炉内雰囲気
(直火加熱部) 燃焼空気比 1Z、2Z、3Z:1.15 4Z:0.95(なお、1Z、2Z、3Z、4Zは図1に示す炉内ゾーンを表す)
(輻射加熱部) H2:8%、露点-50℃
目視および光学顕微鏡にて外観観察を行い、不めっきが全くなく、かつその他ロールピックアップ等による表面欠陥のない場合を良好とし、目視にて不めっきが観察できる場合、あるいはロールピックアップ等による表面欠陥のある場合を不合格とした。
×:不合格
<加熱処理>
常温〜600℃未満:直火加熱(空気比1.15→0.95)
600℃以上〜850℃未満:輻射加熱(露点50℃、水素10%)
850℃2分保持後N2ガス冷却(50℃/sec、400℃)以後大気自然冷却
上記により得られた鋼板に対して、メッキ前直前状態のGDS分析を行った。得られた結果を図2に示す。図2より、フラックス無しの場合は、通常の表面酸化パターンをとっており、表層の酸素強度が高くなっている。一方、フラックス有りの場合は、表層から1μm近傍で酸素強度が高くなり、それより深い部分では酸素強度はほぼ変化していない。これより、フラックス有りの場合は、内部酸化膜は還元されずに、表層のみ、すなわち、外部酸化膜のみ還元されていることがわかる。
Claims (4)
- Siを0.3 mass%以上含有する鋼板に溶融亜鉛めっき処理を施すに際し、
400℃〜800℃の温度域において、燃焼ガス中にフラックス作用を持つ物質を混合燃焼させる直火バーナ方式の還元処理を行った後、
溶融亜鉛めっき処理を施すことを特徴とする高張力溶融亜鉛めっき鋼板の製造方法。 - 前記フラックス作用を持つ物質は、硼素化合物を含むことを特徴とする請求項1に記載の高張力溶融亜鉛めっき鋼板の製造方法。
- 前記フラックス作用を持つ物質は、フッ素化合物を含むことを特徴とする請求項1または2に記載の高張力溶融亜鉛めっき鋼板の製造方法。
- 前記フラックス作用を持つ物質は、ロジン、アミン、アミド類化合物の1種以上を含むことを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の高張力溶融亜鉛めっき鋼板の製造方法。
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