JP3627974B2 - パネル貫通型コネクタの防水構造及び組付方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、例えば自動車のダッシュパネルを貫通してECU(エンジン制御ユニット)のコネクタを配置し、エンジンルーム側でワイヤハーネスのコネクタと接続させると共に、防水グロメットで両コネクタを防水させるパネル貫通型コネクタの防水構造及び組付方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
図6は、自動車のエンジンルーム41と室内42とを隔てるダッシュパネル43から離れた位置で、ECU(エンジン制御ユニット又は電子制御ユニット)44を車室側に取り付け、ECU44のコネクタ45に相手側コネクタ46で接続されたワイヤハーネス47をダッシュパネル43の孔部48に貫通させ、孔部48を合成ゴム製の防水グロメット49で塞いで防水を図った構造を示すものである。
【0003】
ECU44は例えばエンジンへの燃料噴射制御やブレーキのアンチロック制御等を行わせるものであり、金属製ないし合成樹脂製のボックス本体50内に制御用の電子部品を含む回路基板等を有している。ボックス本体50の一端(前端)に例えば雄型のコネクタ45が突設され、コネクタ45内に、ボックス本体50内の回路基板に接続した雌型の複数の端子(図示せず)が収容されている。コネクタ45は絶縁樹脂製のコネクタハウジングと導電金属製の端子とを含むものである。なお、雄型のコネクタ45に代えて雌型のコネクタを設けることもある。
【0004】
ECU44のコネクタ45はワイヤハーネス47の雌型のコネクタ46に嵌合接続されている。ワイヤハーネス47のコネクタ46内には複数の雄型の端子(図示せず)が収容され、雄型の端子は、ワイヤハーネス47を構成する電線の一端に圧着等の手段で接続されている。両コネクタ45,46は例えばボルト51を用いて強制的に嵌合され、且つ抜け出しなくロックされる。ECU44のコネクタ45内にナット(図示せず)が固定され、ワイヤハーネス47のコネクタ46にボルト51が回動自在に組み込まれている。
【0005】
ワイヤハーネス47はコネクタ46の側方から導出され、90°の角度で前向きに屈曲されてダッシュパネル43に向けて延び、ダッシュパネル43の孔部48を貫通して例えばバッテリ等に接続されている。ダッシュパネル43は例えば垂直な壁部である。孔部48に防水グロメット49のカップ部52の外周溝53が嵌着されている。防水グロメット49はエンジンルーム41側からダッシュパネル43の孔部48に嵌合されている。
【0006】
ワイヤハーネス47はカップ部52の内側の孔部(図示せず)と孔部に続く中径のポット部54とを貫通し、図7の如くポット部54内に樹脂シール材55が充填されて、ワイヤハーネス貫通部の隙間が封止されている。図7で符号56は環状の空間を示す。図6で防水グロメット49の先端側の小径部57がビニルテープ(図示せず)でワイヤハーネス47に巻回固定されている。防水グロメット49でダッシュパネル43の孔部48が封止され、防水グロメット49内でワイヤハーネス47との隙間が樹脂シール材55(図7)で封止されて、ECU44がコネクタ45を含めて室内42側で確実に防水されている。
【0007】
しかしながら、上記従来の構造にあっては、ECU44を室内42側で固定し、ワイヤハーネス47とそのコネクタ46とをエンジンルーム41側からダッシュパネル43の孔部48に通して、室内側でワイヤハーネス47のコネクタ46をECU44のコネクタ45に嵌合接続させ、防水グロメット49をエンジンルーム41側でダッシュパネル43の孔部48に嵌合するというように、エンジンルーム41側と室内42側との両方で作業を行わなければならず、接続及び防水のための作業が極めて面倒で多くの工数を要するという問題があった。特に、ワイヤハーネス47のコネクタ46をダッシュパネル43の小さな孔部48に挿通させたり、ワイヤハーネス47を室内42側に配索する作業が面倒で多くの工数を必要とした。
【0008】
また、ワイヤハーネス47を室内42側に延長しなければならず、ワイヤハーネス47の重量が増加すると共に、ワイヤハーネス47が長い分、コストがアップするという問題があった。また、ECU44のコネクタ45とワイヤハーネス47のコネクタ46とが嵌合した状態で剥き出しである(露出している)ために、室内42側に配置されてはいてもゴミ等が付着しやすいという問題があった。また、室内42側の狭いスペースを利用して両コネクタ45,46を嵌合させるために、コネクタ接続作業が面倒で、ボルト51の締付作業に多くの工数がかかるという問題があった。
【0009】
これらの問題に対処すべく、図8に示すようにECU61をダッシュパネル62の直近に配置し、ECU61のコネクタ63をダッシュパネル62の孔部66からエンジンルーム67側に突出させると共に、孔部66の内周とコネクタ63の外周との間に防水グロメット69を装着し、ECU61のコネクタ63にワイヤハーネス65のコネクタ64を嵌合接続し、両コネクタ63,64として防水コネクタを用いた構造が提案されている。
【0010】
ECU61はダッシュパネル62ないしは室内68側のパネル等に固定されている。ECU61のコネクタ63は基部側の外周面で矩形環状の防水グロメット69の内周部に密着している。図9に示す如く、防水グロメット69は孔部66とコネクタ64の形状に合った矩形状を呈し、防水グロメット69の外周が孔部66の内周に密着している。
【0011】
ECU61のコネクタ63がダッシュパネル62の孔部66からエンジンルーム67側に突出した状態で、ワイヤハーネス65のコネクタ64が前例と同様にECU61のコネクタ63にボルト70で締付嵌合されている。各コネクタ63,64の内側には防水パッキン(図示せず)が設けられ、両コネクタ63,64の嵌合時に防水パッキンが圧縮されて両コネクタ間の隙間を封止するようになっている。また、ワイヤハーネス65のコネクタ64内には、ワイヤハーネス65の導出側において防水ゴム栓ないしは防水パッキン(図示せず)が設けられ、ワイヤハーネス65を構成する各電線の外周に防水ゴム栓ないしは防水パッキンの内周が密着している。
【0012】
この構造によって、室内68側への面倒なワイヤハーネス65の配索作業が廃止され、エンジンルーム67側からのコネクタ接続作業が可能となった。しかしながら、この構造にあっては、ECU61の種類毎にそのコネクタ63の外周に合う形状の防水グロメット69を用意しなければならず、グロメット成形用の金型をコネクタ63の大きさ形状に合わせてその都度形成する必要があるために、コストがアップするという問題があった。また、両コネクタ63,64をエンジンルーム67側に位置させるために、両コネクタ63,64として防水コネクタを用いなければならず、通常(非防水)のコネクタよりもコストがアップするという問題があった。
【0013】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、上記した各従来例の問題点に鑑み、パネルから室内側へのワイヤハーネスの配索作業をなくすと共に、非防水の通常の安価なコネクタを用いて、ECUといったユニット部品のコネクタとワイヤハーネスのコネクタを構成し、且つ両コネクタ接続部の防水を確実に行わせ、しかもコネクタ接続作業を作業性良く容易に且つ確実に行うことができるパネル貫通型コネクタの防水構造及び組付方法を提供することを目的とする。
【0014】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために、本発明は、パネルの孔部の両側に二本のボルトが立設され、該孔部にユニット部品のコネクタが貫通され、該コネクタにワイヤハーネスのコネクタが接続され、該ワイヤハーネスに装着した防水グロメットで両コネクタが覆われ、該防水グロメットは該二本のボルトを挿通させる二つの孔部を有し、該防水グロメットが該二本のボルトとナットで該パネルに密着固定されるパネル貫通型コネクタの防水構造において、前記二本のボルトのうちの一方のボルトを支点に前記防水グロメットを前記パネルに沿って正規固定位置よりも逃がし方向に回動させた位置で、該防水グロメットの他方の孔部を仮固定するための第三のボルトが該パネルに立設され、該一方のボルトと該第三のボルトとで該防水グロメットを仮固定した状態で前記両コネクタを嵌合接続可能としたことを特徴とする(請求項1)。
また、前記防水グロメットのワイヤハーネス導出部が前記一方のボルト寄りに配設されたことも有効である(請求項2)。
また、前記防水グロメットにコネクタ嵌合離脱方向に伸縮自在な蛇腹部が形成され、該蛇腹部の圧縮時に前記ワイヤハーネスのコネクタが完全に露出されることも有効である(請求項3)。
また、前記ボルトを挿通させる前記防水グロメットの孔部に、該ボルトの雄ねじ部に密着する断面略クサビ状の小径部と傾斜ガイド部とが形成されたことも有効である(請求項4)。
また、パネルの孔部の両側に二本のボルトを立設し、該孔部にユニット部品のコネクタを貫通し、該コネクタにワイヤハーネスのコネクタを接続し、該ワイヤハーネスに装着した防水グロメットで両コネクタを覆い、該防水グロメットは該二本のボルトを挿通させる二つの孔部を有し、該防水グロメットを該二本のボルトとナットで該パネルに密着固定させるパネル貫通型コネクタの組付方法において、前記二本のボルトのうちの一方のボルトを支点に前記防水グロメットを前記パネルに沿って正規固定位置よりも逃がし方向に回動させて該防水グロメットの他方の孔部を該パネル上の第三のボルトに仮固定させ、その状態で前記両コネクタを嵌合接続させ、次いで該第三のボルトから該他方の孔部を離脱させて、該防水グロメットを前記正規固定位置に回動させ、該他方の孔部を他方のボルトに係合させて、両方のボルトで該防水グロメットを該パネルに密着固定させることを特徴とする(請求項5)。
【0015】
【発明の実施の形態】
図1〜図2は、本発明に係るパネル貫通型コネクタの防水構造及び組付方法の一実施形態を示すものである。
【0016】
この構造は、自動車のダッシュパネル(パネル)1ないしはその近傍の室内6側にECU(ユニット部品であるエンジン制御ユニット又は電子制御ユニット)2を固定し、ECU2のコネクタ3をダッシュパネル1の孔部4からエンジンルーム5側に突出させ、ECU2のコネクタ3にワイヤハーネス7のコネクタ8を嵌合接続し、ワイヤハーネス7を挿通させた蛇腹状の防水グロメット9で両コネクタ3,8を覆って、防水グロメット9の端部をダッシュパネル1にスタッドボルト(ボルト)10,11とナット13,14で締付固定したものである。
【0017】
防水グロメット9は略矩形筒状の蛇腹部15と、蛇腹部15の一端側に一体形成された封止壁16と、封止壁16と直交して蛇腹の伸縮方向に延長形成されたワイヤハーネス導出用の筒部(ワイヤハーネス導出部)17と、蛇腹部15の他端側に一体形成された外向きで且つ厚肉のフランジ部18と、フランジ部18をダッシュパネル1の表面(エンジンルーム側の面)に押え付けるための金属製の補強板19とで構成されている。
【0018】
図2の如くECU2のコネクタ3の横長形状に合わせて防水グロメット9は一方向にやや長く形成されている。フランジ部18と補強板19とには長手方向両端側においてダッシュパネル1側の二つのスタッドボルト10,11に対する挿通用の一対の孔部20,21が同心に設けられている。スタッドボルト10,11はダッシュパネル1の孔部22,23を貫通し、ダッシュパネル1の裏面(室内側の面)にボルト頭部24(図1)が当接固定されている。
【0019】
また、図2及び図5の如く、二つのスタッドボルト10,11を結ぶ直線に対してほぼ90°の角度で、一方のスタッドボルト10から二つのスタッドボルト10,11間の距離(ピッチ)と同じ距離で第三のスタッドボルト(ボルト)12がダッシュパネル1に立設されている。この第三のスタッドボルト12は後述する如く両コネクタ3,8の嵌合作業時に防水グロメット9を作業の邪魔に成らないように回動して仮固定しておくためのものである。
【0020】
図3〜図4は、防水グロメット9のフランジ部18のボルト挿通用の孔部21を示すものであり、孔部21は、スタッドボルト11,12の外径と同等ないしはやや小径な二分割された小径部25と、小径部25から外向きにテーパ状に傾斜してフランジ部18の表裏面に続く傾斜ガイド部(傾斜ガイド面)26とを備えている。小径部25と傾斜ガイド部26とで断面略クサビ状を呈している。
【0021】
傾斜ガイド部26は中央の分割部(分割空間)27を介して対称に形成され、分割部27は孔部21の最大内径面を構成している。小径部25の内径先端は細幅に形成され、スタッドボルト11,12の雄ねじ部の谷部に係合して、スタッドボルト11,12に孔部21を引っ掛けるように仮固定可能となっている。この孔部形状は防水グロメット9の二つの孔部20,21に適用される。各スタッドボルト10〜12の外径や長さは同一である。
【0022】
図1〜図2の如く、防水グロメット9のワイヤハーネス挿通用の筒部17は一方の孔部20寄りに近接して配置され、図1の如く筒部17の外周面が蛇腹部15の外周面とほぼ同一直線上に位置している。これにより、一方の孔部20を一方(第一)のスタッドボルト10に係合させた状態で、一方(第一)のスタッドボルト10を中心として防水グロメット9を回動自在となっている。すなわち、ワイヤハーネス7の軸心が一方のスタッドボルト10の軸心と近接しているから、防水グロメット9を回動させた時にワイヤハーネス7の位置(コネクタ8の位置)がさほどずれることがなく、ワイヤハーネス7のコネクタ8をECU2のコネクタ3にスムーズ且つ確実に嵌合可能となる。
【0023】
ワイヤハーネス導出用の筒部17は、封止壁16に続く小径部17aと小径部17aに続く大径部17bとでポット部として構成されている。小径部17aの内周面はワイヤハーネス7の外周面に密着し、大径部17b内に樹脂シール材29が充填される。樹脂シール材29は溶融した状態で充填され、常温で放置することで例えば柔軟で弾力を維持した状態に固化する。樹脂シール材29が柔軟であるから、防水グロメット9の回動操作も容易である。
【0024】
なお、樹脂シール材29が硬く固化する材質のものであっても、小径部17aが捩じれることで防水グロメット9の回動が容易である。ポット部17に代えて小径部17aのみを延長して用い、小径部17aの外周とワイヤハーネス7の外周をビニルテープ(図示せず)で巻回して防水及び固定させることも可能である。ポット部17への樹脂シール材29の注入作業やテープ巻き作業はワイヤハーネス製造段階で行う。補強板19はフランジ部18に接着しておいてもよい。
【0025】
防水グロメット9の蛇腹部15はコネクタ嵌合方向に複数の山部と谷部を連続させたものであり、コネクタ嵌合方向に伸長し、コネクタ離脱方向に圧縮可能である。図1においてスタッドボルト10,11にナット13,14を螺合しない状態で、蛇腹部15を圧縮した際にフランジ部18は鎖線で示す如くワイヤハーネス7のコネクタ8を完全に露出させるまでダッシュパネル1から大きく離間する。
【0026】
すなわち、蛇腹部15の圧縮距離はダッシュパネル1からコネクタ8の端面8aまでの距離よりも長い。ワイヤハーネス7のコネクタ8の端面8aと防水グロメット9の封止壁16との間には蛇腹部15を圧縮させるための距離(空間)40が設けられており、両コネクタ3,8を嵌合させない状態で蛇腹部15を封止壁16の方向に圧縮した際に、フランジ部18はコネクタ8の端面8aを通過して封止壁16側に移動し、コネクタ8は完全に露呈される。
【0027】
図2の如く、ECU2(図1)を室内側に固定してECU2のコネクタ3をダッシュパネル1の孔部4からエンジンルーム側に突出させると共に、ワイヤハーネス7のコネクタ8(図1)を防水グロメット9で完全に覆う。防水グロメット9の自由状態(ダッシュパネル1に固定する前の状態)でワイヤハーネス7のコネクタ8は図1の如く防水グロメット8の蛇腹部15の伸縮方向の中間部に位置している。
【0028】
ワイヤハーネス7のコネクタ8をECU2のコネクタ3に嵌合させるに際しては、例えば防水グロメット9の蛇腹部15を作業者が手で圧縮しつつ、図5の鎖線の如く、正規の防水グロメット9の組付位置に対してほぼ90°回動して、蛇腹部15からワイヤハーネス7のコネクタ8を突出(露出)させた状態で、その90°回動した位置に防水グロメット9を仮固定する。すなわち、二等辺三角形の頂部をなす第一のスタッドボルト10と二等辺三角形の底部の一角をなす第三のスタッドボルト12とに、防水グロメット9のフランジ部18及び補強板19の二つの孔部20,21(図2)を係合させる。ナット13,14の締め付けは行わない。第一のボルト10にのみナット13を仮締めしてもよい。
【0029】
あるいは、図2の状態からワイヤハーネス7のコネクタ8をECU2のコネクタ3に初期嵌合させた状態(両コネクタ3,8の合成樹脂製のコネクタハウジングのみが初期的に嵌合し、両コネクタ3,8の雄・雌両端子同士は未だ嵌合していない状態)で、防水グロメット9の蛇腹部15を圧縮しつつ、図5の鎖線の如く防水グロメット9を90°回動させて、フランジ部18の一方の孔部20をダッシュパネル1の第一のボルト10に、他方の孔部21を第三のボルト12にそれぞれ同時に係合させる。ナット13,14の締め付けは行わない。第一のボルト10にのみナット13を仮締めしてもよい。
【0030】
スタッドボルト10,12への各孔部20,21の係合は、図3〜図4の傾斜ガイド部26に沿って相対的にスタッドボルト10,12の先端が摺接することでスムーズ且つ確実に行われる。スタッドボルト10,12は傾斜ガイド部26から小径部25に相対的に導かれ、スタッドボルト10,12の雄ねじ部に小径部25の内径先端が引っ掛かり、雄ねじ部が小径部25に食い込むように係合することで、防水グロメット9がスタッドボルト10,12から抜け出しなくしっかりと仮固定(仮保持)される。
【0031】
防水グロメット9を正規位置から90°ずらして仮固定した状態で、ワイヤハーネス7のコネクタ8をECU2のコネクタ3にボルト30で締付嵌合する。ボルト30に締付作業は防水グロメット9に邪魔されることなく、容易に且つ確実に行うことができる。
【0032】
両コネクタ3,8の完全嵌合後に防水グロメット9の仮固定を解除して、すなわち第三のスタッドボルト12からフランジ部18の他方の孔部21(図2)を離脱させて、防水グロメット9を図5の矢印イの如く正規位置に回動させ、他方の孔部21を二等辺三角形の他方の角部である第二のスタッドボルト11に係合させる。この際、第一のスタッドボルト10と一方の孔部20とは係合させたままであり、第一のスタッドボルト10を支点に防水グロメット9を回動させることで、作業が容易化・効率化する。孔部20,21は図3,図4の構成によってスタッドボルト10,11に抜け出しなく確実に係合するから、作業者が防水グロメット9を落ちないように手で押さえる必要がなく、ナット13,14の締め付け作業が容易である。
【0033】
両コネクタ3,8が嵌合しており、且つ防水グロメット9の筒部17がワイヤハーネス7に固定されているから、蛇腹部15の復元力(弾性力)で他方の孔部21が第二のボルト11に確実に係合し、フランジ部18がダッシュパネル1の表面に確実に密着する。この状態で図1及び図5の実線の如く、第一と第二の各スタッドボルト10,11にナット13,14を螺合して、フランジ部18を補強板19の上から締め付けてダッシュパネル1に固定する。
【0034】
これにより、両コネクタ3,8が接続した状態で防水グロメット9で覆われて雨水や泥や塵等から確実に保護される。特に両側の二本のボルト10,11とナット13,14の締付操作で防水グロメット9のフランジ部18をダッシュパネル1の表面に強く密着させるから、防水性が向上する。ダッシュパネル1の孔部4は防水グロメット9で封止されるから、孔部4から室内6(図1)への水や塵等の侵入も確実に防止される。
両コネクタ3,8として防水コネクタではなく安価な非防水コネクタを用いることは言うまでもない。
【0035】
なお、ECU2に代えて補機や電装品といった他のユニット部品を用いることも可能である。また、ダッシュパネル1に限らず、車両等のあらゆるパネルにおいて本発明の構成を適用可能である。また、両コネクタ3,8をボルト30を用いず手嵌合で接続させ、ロックアームとロック突起といった図示しないロック手段でロックさせることも可能である。また、防水グロメット9を仮保持する際の回動角度は90°に限らず、90°以下であっても、コネクタ嵌合作業の邪魔にならない程度に防水グロメット9を一時退避させておける角度であればよい。ワイヤハーネス7の捩れが起こらなければ、防水グロメット9を180°回動させることも可能である。また、第三のスタッドボルト12に防水グロメット9の孔部21を係合させる代わりに、フランジ部18を引っかけて仮固定させることも可能であり、フランジ部18に引っ掛け用の溝部(図示せず)を設けることも可能である。また、図5で示した構成はパネル貫通型コネクタの組付方法又は嵌合方法としても有効である。
【0036】
【発明の効果】
以上の如く、請求項1,5記載の発明によれば、ユニット部品のコネクタとワイヤハーネスのコネクタとを接続した状態で防水グロメットで完全に覆うことができるから、安価な非防水型のコネクタを用いても、両コネクタを確実に防水することができ、コストが低減されると共に、コネクタの防塵・防水性が向上する。また、パネルの孔部にワイヤハーネスを貫通させる作業が不要であるから、作業が容易化し、パネルの一方の面側において突出したコネクタにワイヤハーネスのコネクタを嵌合させることで接続作業性が向上する。
【0037】
また、防水グロメットを正規位置よりも逃がし方向に移動させた状態で、仮固定のためのボルトに引っ掛ける等して仮固定させ、その状態でワイヤハーネスのコネクタをユニット部品のコネクタに接続させることで、コネクタ接続を防水グロメットに邪魔されずに容易に且つ確実に行うことができる。これによりコネクタの接続作業性が向上する。また、仮固定するためのボルトはその雄ねじ部が柔軟な防水グロメットに食い込むように係合するから、そのボルトと防水グロメットとの摩擦で防水グロメットの仮固定が抜け出しなく確実に行われる。また、仮固定部材として安価なボルトを使用したことで、仮固定のためのコストが最小限に抑えられる。
【0038】
また、防水グロメットを仮固定させた状態で両コネクタを嵌合し、次いで防水グロメットを一方のボルトを支点に正規組付位置(本固定位置)に回動させることで、防水グロメットの本固定作業を簡単に且つスムーズに行うことができる。また、両コネクタを初期嵌合させた後、防水グロメットを仮固定位置まで回動させる場合は、防水グロメットの仮固定作業を容易に且つスムーズに行うことができる。これらの際、一方のボルトのみをナットで仮締めしておいてもよく、それにより防水グロメットの回動操作を一層容易に且つスムーズに行うことができる。また、二本のボルトで防水グロメットをパネルに押圧して密着させることで、防水シール性が向上する。
【0039】
また、請求項2記載の発明によれば、防水グロメットを回動させる際に回動中心である一方のボルトとほぼ同心にワイヤハーネス導通部が位置するから、ワイヤハーネス導出部やワイヤハーネスが大きく回動したり引っ張られたり捩じれたりすることがなく、防水グロメットの回動操作を小さな力でスムーズに行うことができると共に、ワイヤハーネスのコネクタの位置がさほど変わらず、ユニット部品のコネクタとの嵌合接続作業を容易に且つ確実に行うことができる。
【0040】
また、請求項3記載の発明によれば、蛇腹部を圧縮してワイヤハーネスのコネクタを完全に露出させることで、防水グロメットをコネクタと干渉させずにスムーズ且つ確実に回動させることができ、防水グロメットの仮固定及び本固定を一層スムーズ且つ確実に行うことができる。
【0041】
また、請求項4記載の発明によれば、小径部の内径側先端がボルトの雄ねじ部に引っ掛かるように係合することで、ボルトと孔部との摩擦力が高まり、防水グロメットの仮固定が一層確実に行われる。また、防水グロメットを本固定する(ボルトにナットを螺合させる)際も、孔部がボルトにしっかりと係合しているから、作業者が手で防水グロメットを押さえる必要がなく、組付作業性が向上する。また、ボルトが傾斜ガイド部に沿って小径部に導かれるから、孔部をボルトにスムーズ且つ容易に且つ確実に係合させることができ、作業性が向上する。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係るパネル貫通型コネクタの防水構造及び組付方法の一実施形態を示す要部を断面した正面図である。
【図2】同じくパネル貫通型コネクタの防水構造を示す分解斜視図である。
【図3】防水グロメットの固定用の孔部を示す平面図である。
【図4】図3のA−A断面図である。
【図5】防水グロメットを仮固定させた状態を鎖線で、本固定させた状態を実線でそれぞれ示す平面図である(ワイヤハーネスは断面で示している)。
【図6】従来の防水構造の一形態を示す正面図である(パネルは断面で示している)。
【図7】同じく防水グロメットを示す平面図である(ワイヤハーネスは断面で示している)。
【図8】従来の防水構造の他の形態を示す正面図である。
【図9】同じく防水グロメットとワイヤハーネスのコネクタを示す平面図である。
【符号の説明】
1 ダッシュパネル(パネル)
2 ECU(ユニット部品)
3,8 コネクタ
4 孔部
7 ワイヤハーネス
9 防水グロメット
10,11 ボルト
12 仮固定用のボルト
15 蛇腹部
17 筒部(ワイヤハーネス導出部)
20,21 孔部
25 小径部
26 傾斜ガイド部
Claims (5)
- パネルの孔部の両側に二本のボルトが立設され、該孔部にユニット部品のコネクタが貫通され、該コネクタにワイヤハーネスのコネクタが接続され、該ワイヤハーネスに装着した防水グロメットで両コネクタが覆われ、該防水グロメットは該二本のボルトを挿通させる二つの孔部を有し、該防水グロメットが該二本のボルトとナットで該パネルに密着固定されるパネル貫通型コネクタの防水構造において、
前記二本のボルトのうちの一方のボルトを支点に前記防水グロメットを前記パネルに沿って正規固定位置よりも逃がし方向に回動させた位置で、該防水グロメットの他方の孔部を仮固定するための第三のボルトが該パネルに立設され、該一方のボルトと該第三のボルトとで該防水グロメットを仮固定した状態で前記両コネクタを嵌合接続可能としたことを特徴とするパネル貫通型コネクタの防水構造。 - 前記防水グロメットのワイヤハーネス導出部が前記一方のボルト寄りに配設されたことを特徴とする請求項1記載のパネル貫通型コネクタの防水構造。
- 前記防水グロメットにコネクタ嵌合離脱方向に伸縮自在な蛇腹部が形成され、該蛇腹部の圧縮時に前記ワイヤハーネスのコネクタが完全に露出されることを特徴とする請求項1又は2の何れかに記載のパネル貫通型コネクタの防水構造。
- 前記ボルトを挿通させる前記防水グロメットの孔部に、該ボルトの雄ねじ部に密着する断面略クサビ状の小径部と傾斜ガイド部とが形成されたことを特徴とする請求項1〜3の何れかに記載のパネル貫通型コネクタの防水構造。
- パネルの孔部の両側に二本のボルトを立設し、該孔部にユニット部品のコネクタを貫通し、該コネクタにワイヤハーネスのコネクタを接続し、該ワイヤハーネスに装着した防水グロメットで両コネクタを覆い、該防水グロメットは該二本のボルトを挿通させる二つの孔部を有し、該防水グロメットを該二本のボルトとナットで該パネルに密着固定させるパネル貫通型コネクタの組付方法において、
前記二本のボルトのうちの一方のボルトを支点に前記防水グロメットを前記パネルに沿って正規固定位置よりも逃がし方向に回動させて該防水グロメットの他方の孔部を該パネル上の第三のボルトに仮固定させ、その状態で前記両コネクタを嵌合接続させ、次いで該第三のボルトから該他方の孔部を離脱させて、該防水グロメットを前記正規固定位置に回動させ、該他方の孔部を他方のボルトに係合させて、両方のボルトで該防水グロメットを該パネルに密着固定させることを特徴とするパネル貫通型コネクタの組付方法。
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