JP3626548B2 - 印刷装置 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、孔版印刷装置等の印刷装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
孔版印刷装置は、回転自在な版胴に巻き付いた製版済みのマスタに位置を合わせて印刷用紙を給紙する。この印刷用紙をマスタを介して版胴に押し付け、版胴内のインキを版胴の孔及びマスタの穿孔から滲み出させて印刷用紙にインキを転移させることにより印刷用紙に画像を印刷する。
【0003】
このような孔版印刷装置においては、版胴に巻き付いた製版済みのマスタに弛みがあり、マスタを介して印刷用紙を版胴に押し付けた際にマスタの弛みが押し潰されてマスタに皺が生じると、印刷用紙に印刷される画像の画像品質が悪化してしまう。
【0004】
従来の孔版印刷装置では、マスタを介して印刷用紙を版胴に押し付けた際にマスタ自体の腰の強さによりインキの粘着力に打ち勝ってマスタが版胴の外周面を移動する。これにより、マスタの弛みが伸ばされ、マスタに皺が生じるのが防止される。従って、従来の孔版印刷装置では、熱可塑性樹脂フィルムに多孔性支持体を貼り合わせた腰の強いマスタが使用される。多孔性支持体は、和紙繊維又は合成繊維により形成されたものである。
【0005】
ところが、孔版印刷装置では、マスタの穿孔から滲み出したインキを印刷用紙に転移するので、熱可塑性樹脂フィルムに多孔性支持体を貼り合わせた腰の強いマスタを使用すると、多孔性支持体において繊維が複雑に絡み合って塊となっている部分がある場合や太い繊維がマスタの穿孔を横切っている場合に、印刷用紙に印刷された画像のベタ部が抜けたり細線や太線が切れたりかすれたりしてしまう、俗に繊維目と呼ばれる問題が生じる。
【0006】
そこで、多孔性支持体を削除又は薄くすることにより繊維目を低減させる試みがされている。
【0007】
しかし、多孔性支持体を削除又は薄くしたマスタ(以下、腰の弱いマスタと表す)を加熱穿孔すると、熱可塑性樹脂フィルムが収縮して腰の弱いマスタに皺が生じてしまう。また、版胴に巻き付いた腰の弱いマスタに弛みがある場合、腰の弱いマスタを介して印刷用紙を版胴に押し付けたとしてもマスタ自体の腰が弱いため、インキの粘着力により腰の弱いマスタが版胴の外周面を移動できずに押し潰されて腰の弱いマスタに皺が生じてしまう。さらに、マスタを加熱穿孔して製版すると共に搬送ローラでマスタを版胴へ搬送する製版部を備えた孔版印刷装置では、マスタを版胴へ搬送する際にマスタ自体の腰の強さによりマスタが波打つのを防止しているため、腰の弱いマスタでは波打ちを押えることができず、波打った状態のまま版胴へ搬送されて版胴に巻き付く。従って、版胴に巻き付いた腰の弱いマスタに弛みが生じやすいので、腰の弱いマスタに皺が生じやすくなる。
【0008】
それに対して、マスタの弛みや皺を伸ばすことができる孔版印刷装置が考えられて実公昭60−21243号公報、実公昭61−30866号公報及び実開昭60−119565号公報に記載されている。これらの孔版印刷装置は、版胴へ給版されるマスタの弛みや皺を伸ばしてマスタを弛みや皺のない状態にする原紙取付装置を備えている。これらの原紙取付装置は、マスタを版胴へ案内するガイド部材と、このガイド部材にマスタを介して当接してマスタの搬送に従って従動回転することによりマスタに対してマスタの幅方向に張力を加える回転自在な伸張部材とにより形成されている。
【0009】
このような孔版印刷装置によれば、版胴の回転に伴ってマスタが原紙取付装置から引き出されて版胴へ給版される。このとき、原紙取付装置内では、ガイド部材に沿ってマスタが搬送され、マスタの搬送に従って伸張部材が従動回転してマスタに対してマスタの幅方向に張力が加えられる。これにより、マスタの弛みや皺を伸ばすことができるため、弛みや皺のない状態でマスタが版胴に巻き付く。
【0010】
【発明が解決しようとする課題】
ところが、前述の実公昭60−21243号公報、実公昭61−30866号公報及び実開昭60−119565号公報に記載されている孔版印刷装置においては、版胴の回転に伴ってマスタがガイド部材と伸張部材とのニップ部分から引き出されて版胴へ給版される。このとき、ニップ部分と版胴との間でマスタに対してマスタの給版方向に張力が加えられる。このため、腰の弱いマスタを使用した場合に、マスタの給版方向に腰の弱いマスタが伸びて腰の弱いマスタに縦皺が生じるという問題点がある。
【0011】
また、前述の孔版印刷装置においては、ガイド部材と伸張部材とのニップ部分が版胴から離れた位置に配置されている。この孔版印刷装置では、腰の強いマスタを使用した場合、マスタ自体の腰の強さにより波打ちが防止されるので、ニップ部分から引き出されたマスタの後端が版胴に巻き付いた際にマスタに弛みが生じることがない。しかし、腰の弱いマスタを使用した場合、ニップ部分から引き出された腰の弱いマスタの後端が波打ってしまい、波打った状態のまま腰の弱いマスタの後端が版胴に巻き付いて腰の弱いマスタの後端に弛みが生じてしまう。従って、腰の弱いマスタを介して印刷用紙が版胴に押し付けられた際に腰の弱いマスタの弛みが押し潰されて腰の弱いマスタの後端に皺が生じるという問題がある。
【0012】
【課題を解決するための手段】
請求項1記載の発明は、回転自在に設けられて製版済みのマスタが巻き付く版胴を備え、前記マスタに位置を合わせて印刷用紙を給紙し、前記印刷用紙を前記マスタを介して前記版胴に押し付け、インキを前記印刷用紙に転移させることにより前記印刷用紙に画像を印刷する印刷装置において、前記マスタの幅方向の両端に対応するそれぞれの位置で前記版胴に対して接離自在で前記マスタの給版方向の下流側の間隔を前記マスタの幅方向に広げて前記マスタの給版方向に対して傾斜させて設けられ、前記マスタを介して前記版胴に当接する回転自在なテンションコロを備える。従って、版胴が回転してマスタが版胴に巻き付くとき、テンションコロがマスタを介して版胴に当接して回転し、テンションコロがマスタの給版方向に対して傾斜した方向に張力を加えることにより、マスタに対してマスタの幅方向に張力を加えることができるので、マスタをその幅方向に伸ばすことができる。また、テンションコロがマスタを介して版胴に当接するので、マスタの後端に至るまでテンションコロでマスタに対してその幅方向に張力を加えることができる。このため、腰の弱いマスタを使用した場合にも、腰の弱いマスタの弛みや皺が伸ばされ、また、腰の弱いマスタがその後端において波打った状態のまま版胴に巻き付くのが防止されるので、腰の弱いマスタを介して印刷用紙を版胴に押し付けた際に腰の弱いマスタに皺が生じるのが防止され、印刷用紙に印刷される画像の画像品質がマスタの皺により悪化するのが防止される。また、マスタの弛みや皺を伸ばすための装置を版胴から離れた位置に設ける必要がなくなるので、マスタに対してマスタの給版方向に張力が加えられることがなくなるため、腰の弱いマスタを使用した場合にも、腰の弱いマスタに縦皺が生じるのが防止される。
【0013】
請求項記載の発明は、テンションコロがマスタを介して版胴に当接して回転することにより前記マスタに対して前記マスタの幅方向に張力を加える伸張動作を前記版胴が所定の回数回転する間行なわせる伸張動作制御手段を更に備える。従って、テンションコロがマスタを介して版胴に当接して回転することによりマスタに対してマスタの幅方向に張力を加える伸張動作を伸張動作制御手段により版胴が所定の回数回転する間行なわせることにより、版胴に巻き付いたマスタの弛みや皺を伸ばす動作を所定の回数繰り返して行なうことができるため、腰の弱いマスタを使用した場合にも、腰の弱いマスタの弛みや皺が確実に伸ばされ、腰の弱いマスタを介して印刷用紙を版胴に押し付けた際に腰の弱いマスタに皺が生じるのが防止される。
【0014】
請求項記載の発明は、請求項記載の印刷装置において、印刷用紙に印刷される画像の画像量を検出する画像量検出手段と、この画像量検出手段により検出された画像量に基づいて伸張動作を行なう期間である版胴の回転回数を設定する回転回数設定手段とを備える。従って、画像量検出手段により検出された画像量に基づいて伸張動作を行なう期間である版胴の回転回数を回転回数設定手段により設定することにより、画像量が多くてマスタに形成された穿孔の面積が大きい場合には、腰の弱いマスタを加熱穿孔した際に生じる腰の弱いマスタの収縮量が大きいので、版胴の回転回数を多く設定して伸張動作を行なう期間を長くすることでマスタの皺を伸ばすことができるため、腰の弱いマスタに皺が生じるのが確実に防止される。また、画像量が少なくてマスタに形成された穿孔の面積が小さい場合には、腰の弱いマスタを加熱穿孔した際に生じる腰の弱いマスタの収縮量が小さいので、版胴の回転回数を少なく設定して伸張動作を行なう期間を短くしてもマスタの皺を伸ばすことができるため、伸縮動作にかかる時間が短縮され、腰の弱いマスタに皺が生じるのが確実に防止される。
【0015】
請求項記載の発明は、請求項1又は2記載の印刷装置おけるテンションコロが、芯体と粘着性又は吸着性を有する部材とにより形成されている。従って、版胴とマスタとの間に生じる摩擦抵抗よりもテンションコロとマスタとの間に生じる摩擦抵抗を大きくすることができるため、マスタに対してテンションコロでマスタの幅方向に張力が確実に加えられ、マスタの弛みや皺が確実に伸ばされる。
【0016】
請求項記載の発明は、請求項1又は2記載の印刷装置におけるテンションコロが、芯体と版胴の摩擦係数よりも摩擦係数が高い部材とにより形成されている。従って、版胴とマスタとの間に生じる摩擦抵抗よりもテンションコロとマスタとの間に生じる摩擦抵抗を大きくすることができるため、マスタに対してテンションコロでマスタの幅方向に張力が確実に加えられ、マスタの弛みや皺が確実に伸ばされる。
【0017】
請求項記載の発明は、請求項1,2,3又は4記載の印刷装置において、版胴の周速度よりも速い周速度でテンションコロを回転させる駆動手段を備える。従って、駆動手段により版胴の周速度よりも速い周速度でテンションコロを回転させることにより、テンションコロが版胴の回転に従って従動回転する場合よりもマスタに対してマスタの幅方向に加える張力を大きくすることができるため、マスタの弛みや皺が確実に伸ばされる。
【0018】
【発明の実施の形態】
本発明の一実施の形態の印刷装置を図1ないし図7に基づいて説明する。本実施の形態の印刷装置を適用した孔版印刷装置を図1に示す。この孔版印刷装置には、製版済みのマスタ1が巻き付く版胴2が回転自在に設けられている。前記版胴2の周囲には、前記マスタ1を加熱穿孔して製版し、前記マスタ1を前記版胴2へ給版する製版部3と、この製版部3から前記版胴2へ給版された前記マスタ1を前記版胴2へ押し付けると共に、前記マスタ1に対して前記マスタ1の幅方向に張力を加えるテンションコロ4と、前記版胴2に巻き付いた前記製版済みのマスタ1に位置を合わせて印刷用紙5を給紙する給紙部6と、この給紙部6から給紙された印刷用紙5を前記マスタ1を介して前記版胴2に押し付けて印刷用紙5に画像を印刷するプレスローラ7と、このプレスローラ7により前記版胴2に押し付けられて画像が印刷された印刷用紙5を前記版胴2から剥離して排紙する排紙部8とが配置されている。
【0019】
前記版胴2は、開口部と非開口部とからなる多孔性支持円筒体の外周面にメッシュスクリーンを複数層巻き付けたものである。メッシュスクリーンは、樹脂又は金属の網体である。前記版胴2は、この版胴2の内部にインキを供給するインキパイプ9を中心に回転自在に設けられている。前記インキパイプ9の下面には、このインキパイプ9内のインキを前記版胴2内に供給する供給孔10が形成されている。前記インキパイプ9は、前記版胴2の外部に設けられたインキパック(図示せず)からインキを吸引して前記供給孔10から前記版胴2の内部にインキを供給する。前記インキパイプ9の下方には、このインキパイプ9から供給されたインキを保持して前記版胴2の内周面に供給するインキローラ11が回転自在に設けられている。このインキローラ11に対向する位置には、前記インキローラ11の外周面と僅かに間隔を開けてドクタローラ12が回転自在に設けられている。前記ドクタローラ12は、前記インキローラ11に保持されるインキの量を一定に保つ。前記インキローラ11と前記ドクタローラ12との間の楔状空間には、前記インキパイプ9から供給されたインキが溜ってインキ溜り13が形成されている。
【0020】
前記版胴2の側面には、前述の非開口部に対向する位置に形成された凹状の切欠き部14と前述の開口部に対向する位置に形成された遮蔽部15とからなる遮蔽板16が固定されている。前記版胴2の周囲には、発光素子と受光素子とにより形成され、前記インキパイプ9の上方で前述の発光素子と受光素子との間が前記遮蔽部15により遮られるが、それらの発光素子と受光素子との間が前記切欠き部14により遮られないように配置され、前記遮蔽板16において前記テンションコロ4に対向する位置にある部分が切欠き部14であるのか遮蔽部15であるのかを検知する遮蔽板センサ17が設けられている。
【0021】
前記版胴2の外周面には、前述の非開口部に対応する位置で前記マスタ1の先端を挟持するステージ18とクランパ19とが取り付けられている。前記ステージ18は、前記版胴2の軸心方向に沿って磁性体により形成されている。前記クランパ19は、前記ステージ18の長手方向に沿って配置されたクランパ軸20を支軸として回転自在に支持されている。
【0022】
前記製版部3は、前記孔版印刷装置の本体ケース(図示せず)に固定された固定部21と、この固定部21に対して開閉自在に設けられた開閉部22とにより形成されている。前記固定部21には、前記マスタ1がロール状に巻かれたマスタロール23が着脱自在で回転自在に支持されている。前記固定部21と前記開閉部22との間には、前記固定部21に対して前記開閉部22が閉じられた状態において、前記マスタロール23から引き出された前記マスタ1が前記版胴2へ向けて搬送されるマスタ搬送経路24が形成されている。前記マスタ搬送経路24には、前記マスタロール23から前記マスタ1を引き出して加熱穿孔する加熱穿孔部25と、前記マスタ1を搬送すると共に、前記マスタ1に所定の張力を加える上下一対の張りローラ26,27と、前記マスタ1を所定の長さで切断するカッタ部28と、前記マスタ1を吸引して一旦貯容する吸引ボックス29と、前記マスタ1を搬送する上下一対の搬送ローラ30,31とが前記マスタ1の搬送方向に沿って順に配置されている。
【0023】
前記開閉部22は、図2に示すように前記マスタ搬送経路24の下流側に形成された開閉軸32を支軸として前記固定部21に対して開閉自在に支持されている。前記開閉部22には、この開閉部22を前記固定部21に係止するストッパ33が回転自在に支持されている。前記固定部21には、前記ストッパ33が係合する被係合部34が形成されている。
【0024】
前記加熱穿孔部25は、前記マスタ1を加熱穿孔するサーマルヘッド35と、前記マスタ1を前記マスタロール23から引き出して前記サーマルヘッド35に押し付けるプラテンローラ36とにより形成されている。前記サーマルヘッド35は、前記開閉部22に固定されている。前記サーマルヘッド35には、多数の発熱素子が設けられている。前記プラテンローラ36は、前記固定部21に回転自在に支持されている。前記プラテンローラ36には、ステッピングモータ37(図5、参照)が連結されている。
【0025】
前記張りローラ26,27は、互いに押圧し合う状態で配置されている。前記上側の張りローラ26は、前記開閉部22に回転自在に支持されている。前記下側の張りローラ27は、前記固定部21に回転自在に支持されている。前記下側の張りローラ27には、トルクリミッタ(図示せず)を介して前記ステッピングモータ37が連結されている。前記張りローラ27は、前記プラテンローラ36よりも速い周速度で回転して前記加熱穿孔部25と前記張りローラ26,27との間で前記マスタ1に対して所定の張力を加える。
【0026】
前記カッタ部28は、前記固定部21に固定された固定カッタ刃と、開閉部22に設けられた可動カッタ刃とにより形成されている。可動カッタ刃は、回転刃と、この回転刃を回転させるモータと、それらの回転刃及びモータを保持して前記マスタ搬送経路24の幅方向にそれらの回転刃及びモータを移動させるガイドレール部材とにより形成されている。
【0027】
前記吸引ボックス29は、前記開閉部22に着脱自在に設けられている。前記吸引ボックス29には、前記マスタ搬送経路24に対向する位置に開口部が形成されている。前記吸引ボックス29における前記マスタ搬送経路24の上流側の側面には、その吸引ボックス29内に前記マスタ1を吸引する吸引ファン38が設けられている。前記吸引ボックス29における前記マスタ搬送経路24の下流側には、前記吸引ボックス29の側面に対向して前記吸引ボックス29内に吸引された前記マスタ1を検知する吸引ボックスセンサ39が設けられている。前記吸引ボックス29の開口部の下方には、前記マスタ1を案内する第一のガイド板40が配置されている。前記第一のガイド板40は、前記固定部21に固定されている。
【0028】
前記搬送ローラ30,31は、互いに押圧し合う状態で配置されている。前記上側の搬送ローラ30は、前記開閉部22に回転自在に支持されている。前記下側の搬送ローラ31は、前記固定部21に固定されている。前記下側の搬送ローラ31には、ステッピングモータ37が連結されている。前記下側の搬送ローラ31は、前記下側の張りローラ27よりも速い周速度で回転して前記張りローラ26,27と前記搬送ローラ30,31との間で所定の張力を加える。前記搬送ローラ30,31よりも前記マスタ搬送経路24の下流側には、前記マスタ1を案内する第二のガイド板41が配置されている。
【0029】
前記給紙部6は、前記印刷用紙5が積載された給紙トレイ(図示せず)から前記印刷用紙5を一枚ずつ給紙する。前記給紙部6には、給紙トレイから一枚ずつ給紙された前記印刷用紙5を前記版胴2に巻き付いた前記マスタ1に位置を合わせて搬送するレジストローラ42が配置されている。
【0030】
前記プレスローラ7は、芯金に弾性体を円筒状に形成したものである。前述の弾性体には、ニトリルゴムやクロロプレンゴムが使用される。前記プレスローラ7は、プレスローラアーム43の一端に回転自在に支持されて前記版胴2に対して接離自在に設けられている。前記プレスローラアーム43は、このプレスローラアーム43の他端に形成されたプレスローラアーム軸44を支軸として回転自在に支持されている。前記プレスローラアーム軸44には、カムフォロア(図示せず)が設けられている。そのカムフォロアに対向する位置には、前記版胴2の回転に同期して回転し、前述のカムフォロアに当接して前記プレスローラを前記版胴2に対して当接又は離反させるカム(図示せず)が設けられている。前記プレスローラアーム43には、このプレスローラアーム43を時計回り方向に回転させて前記プレスローラ7を前記版胴2に当接させるスプリング(図示せず)が取り付けられている。前記プレスローラアーム43の近傍位置には、このプレスローラアーム43に係合して前記プレスローラ7を前記版胴2から離反した状態で保持する係止部45(図5、参照)が設けられている。
【0031】
前記排紙部8には、前記版胴2に接近して前記印刷用紙5を前記版胴2から剥離する剥離爪46と、この剥離爪46により前記版胴2から剥離された印刷用紙5が積載される排紙トレイ47とが配置されている。
【0032】
前記テンションコロ4は、芯体である芯金に軟質シリコンゴムを円筒状に形成したものである。前述の軟質シリコンゴムは、粘着性を有し、前記版胴2の摩擦係数よりも摩擦係数が高い弾性体である。前記テンションコロ4は、テンションコロアーム48の一端に回転自在に支持され、前記版胴2に対して接離自在に設けられて前記版胴2の略真上の位置に配置されている。前記テンションコロ4は、前記マスタ1の給版方向における下流側の間隔が前記マスタ1の幅方向に広がるように前記マスタ1の幅方向の両端に対応するそれぞれの位置に配置され、図3に示すように前記マスタ1の給版方向(図3中、下方向)に対して傾斜させて設けられている。前記テンションコロアーム48は、図1に示すように前記テンションコロアーム48の他端に形成されたテンションコロアーム軸49を支軸として回転自在に設けられている。前記テンションコロアーム軸49には、図4に示すようにテンションコロアームレバー50が固定されている。前記テンションコロアームレバー50には、このテンションコロアームレバー50を反時計回り方向に回転させて前記テンションコロ4を前記マスタ1を介して前記版胴2に当接させるテンションコロソレノイド51が取り付けられている。前記テンションコロアームレバー50には、このテンションコロアームレバー50を時計回り方向に回転させて前記テンションコロ4を前記版胴2から離反させるスプリング52が取り付けられている。前記テンションコロ4には、このテンションコロ4を前記版胴2の周速度よりも速い周速度で回転させる駆動手段であるテンションコロモータ53(図7、参照)が連結されている。前記テンションコロモータ53は、前記マスタ1の幅方向の両端に対応して配置された二つのテンションコロ4が互いに同期して回転するように前記テンションコロ4に連結されている。
【0033】
次に、図5に基づいて前記孔版印刷装置の電気的なハードウェア構成について説明する。前記孔版印刷装置には、前述の版胴2、製版部3、テンションコロ4、給紙部6、プレスローラ7及び排紙部8の動作を制御するCPU54が設けられている。前記CPU54には、バス55を介して前述した版胴2及びこの版胴2に設けられたインキパイプ9、インキローラ11、ドクタローラ12及びクランパ19を駆動する版胴駆動部56と、前述した製版部3におけるカッタ部28、サーマルヘッド35、ステッピングモータ37及び吸引ファン38を駆動する製版駆動部57と、前述した給紙部6におけるレジストローラ42を駆動する給紙駆動部58と、前述したプレスローラ7における係止部45を駆動する係止駆動部59と、前述した排紙部8における排紙爪46を駆動する排紙駆動部60と、前記テンションコロソレノイド51を駆動するテンションコロソレノイド駆動部61と、テンションコロモータ53を駆動するテンションコロモータ駆動部62と、原稿の画像を読み取る画像読取部63を駆動する画像読取駆動部64とが接続されている。
【0034】
前記CPU54には、前記バス55を介して入出力ポート65が接続されている。前記入出力ポート65には、前記遮蔽板センサ17、前記吸引ボックスセンサ39、製版を開始させる情報を入力する製版スタートキー66及び前記テンションコロ4が前記マスタ1を介して前記版胴2に当接して前記マスタ1に対して前記マスタ1の幅方向に張力を加える伸張動作を行なう期間である前記版胴2の回転回数を設定する入力部67が接続されている。
【0035】
さらに、前記CPU54には、前記バス55を介して前述した各部の制御等に関する固定情報が記憶されているROM68と、前述した遮蔽板センサ17、吸引ボックスセンサ39、画像読取部63、製版スタートキー66及び入力部67から入力された情報を一時的に記憶しておくRAM69とが接続されている。前記ROM68には、前記画像読取部63により読み取られた画像情報から一版分の前記マスタ1に形成される穿孔の面積を求め、この穿孔の面積から前記印刷用紙5に印刷される画像の画像量を検出するための画像量検出情報と、検出された画像量に基づいて伸張動作を行なう期間である前記版胴2の回転回数を設定するための回転回数設定情報とが記憶されている。前記CPU54と前記ROM68に記憶されている画像量検出情報とにより、前記画像読取部63により読み取られた画像情報から前記印刷用紙5に印刷される画像の画像量を検出する画像量検出手段が構成されている。前記CPU54と前記ROM68に記憶されている回転回数設定情報とにより、画像量検出手段で検出された画像量に基づいて伸張動作を行なう期間である前記版胴2の回転回数を設定する回転回数設定手段が構成されている。
【0036】
このような構成において、図6に基づいて孔版印刷装置の給版動作について説明する。孔版印刷装置では、製版スタートキー66が押されると、版胴2が回転し始める。そして、クランパ19が略真上の位置に到達すると、版胴2が停止すると共に、クランパ19が開放される。その後、画像読取部63により原稿の画像が読み取られる(ステップSt.1)。
【0037】
次に、伸張動作を行なう期間である版胴2の回転回数が入力部67より入力されているか否かが判断される(ステップSt.2)。このSt.2において伸張動作を行なう期間である版胴2の回転回数が入力部67より入力されていると判断されると、製版駆動部57によりサーマルヘッド35が駆動され、前述のSt.1において読み取られた画像情報に基づいてサーマルヘッド35の各発熱素子が発熱すると共に、製版駆動部57によりステッピングモータ37が駆動されて回転し、マスタ1が加熱穿孔されて搬送される(ステップSt.3)。
【0038】
ところで、前述のSt.2において伸張動作を行なう期間である版胴2の回転回数が入力部67により入力されていないと判断されると、前述のSt.1おいて読み取られた画像情報とROM68に記憶されている画像量検出情報とに基づいてCPU54により一版分のマスタ1に製版される穿孔の面積を求め、求められた穿孔の面積から印刷用紙5に印刷される画像の画像量が検出される(ステップSt.4)。このSt.4において印刷用紙5に印刷される画像の画像量を検出する動作が画像量検出手段の動作として行なわれる。
【0039】
前述のSt.4において検出された画像量とROM68に記憶されている回転回数設定情報とに基づいて、CPU54によりテンションコロ4がマスタ1を介して版胴2に当接してマスタ1に対してマスタ1の幅方向に張力を加える伸張動作を行なう期間である版胴2の回転回数が設定される(ステップSt.5)。このSt.5において伸張動作を行なう期間である版胴2の回転回数を設定する動作が回転回数設定手段の動作として行なわれる。
【0040】
前述のSt.5において伸張動作を行なう期間である版胴2の回転回数が設定されると、前述のSt.3における動作が行なわれ、マスタ1が加熱穿孔されて搬送される。
【0041】
そして、製版動作開始後のステッピングモータ37の駆動ステップ数をカウントし、カウントされた駆動ステップ数からマスタ1の先端がクランパ19に到達したか否かが判断される(ステップSt.6)。このステップ6においてマスタ1の先端がクランパ19に到達したと判断されると、クランパ19が閉じられてマスタ1の先端がクランパ19とステージ18とにより挟持される(ステップSt.7)。
【0042】
このステップ7においてマスタ1の先端がクランパ19とステージ18とにより挟持されると、搬送ローラ30,31の回転が停止し、製版駆動部57により吸引ファン38が駆動されてマスタ1が吸引ボックス29内へ凸状に吸引される。そして、吸引ボックス29内へ凸状に吸引されたマスタ1が吸引ボックスセンサ39により検知されると、吸引ボックスセンサ39によりマスタ1が検知されなくなるまで版胴2が回転し、マスタ1が吸引ボックス29内から引き出される。その後、吸引ボックス29内へマスタ1を吸引した後、版胴2が回転してマスタ1を吸引ボックス29内から引き出す動作が繰り返されてマスタ1が版胴2に巻き付けられていく。
【0043】
このとき、遮蔽板16においてテンションコロ4に対応する位置である略真上に位置する部分が遮蔽部15であるのか切欠き部14であるのかが遮蔽板センサ17により検知されている。そして、遮蔽板16において略真上に位置する部分が切欠き部14であると遮蔽板センサ17により検知された場合には、クランパ19がテンションコロ4を通過していないと判断され、遮蔽板16において略真上に位置する部分が遮蔽部15であると遮蔽板センサ17により検知された場合には、クランパ19がテンションコロ4を通過したと判断される。このようにしてクランパ19がテンションコロ4を通過したか否かが判断される(ステップSt.8)。このステップ8においてクランパ19がテンションコロ4を通過したか否かを判断する動作は、そのステップ8においてクランパ19がテンションコロ4を通過したと判断されるまで繰り返し行なわれる。
【0044】
前述のステップ8においてクランパ19がテンションコロ4を通過したと判断されると、テンションコロソレノイド駆動部61によりテンションコロソレノイド51が駆動されてテンションコロアームレバー50及びテンションコロアーム48が反時計回り方向に回転し、図7に示すようにテンションコロ4がマスタ1を介して版胴2に当接してマスタ1が版胴2に押し付けられる(ステップSt.9)。このステップ9においてテンションコロ4がマスタ1を介して版胴2に当接すると、テンションコロモータ駆動部62によりテンションコロモータ53が駆動されてテンションコロ4が版胴2の周速度よりも速い周速度で回転し、マスタ1の給版方向に対して傾斜した方向にテンションコロ4により張力が加えられてマスタ1に対してマスタ1の給版方向に張力が加えられる。
【0045】
その後、製版動作開始後のステッピングモータ37の駆動ステップ数をカウントし、カウントされた駆動ステップ数から一版分の長さのマスタ1が加熱穿孔部25を通過したか否かを判断して一版分のマスタ1が加熱穿孔されたか否かが判断される(ステップSt.10)。
【0046】
このSt.10において一版分のマスタ1が加熱穿孔されたと判断されると、製版駆動部57によりカッタ部28が駆動されてマスタ1が切断される。この時、プラテンローラ36及び張りローラ26,27の回転が停止する。そして、切断されたマスタ1の後端が版胴2の回転により引き出されて版胴2にマスタ1が巻き付く(ステップSt.11)。
【0047】
このSt.11においてマスタ1が版胴2に巻き付いた後、版胴2が回転し続ける。このとき、遮蔽板16においてテンションコロ4に対応する位置である略真上に位置する部分が遮蔽部15であるのか切欠き部14であるのかが遮蔽板センサ17により検知されている。そして、遮蔽板16において略真上に位置する部分が遮蔽部15であると遮蔽板センサ17により検知された場合には、クランパ19がテンションコロ4に接近していないと判断し、遮蔽板16において略真上に位置する部分が切欠き部14であると遮蔽板センサ17により検知された場合には、クランパ19がテンションコロ4に接近したと判断する。このようにしてクランパ19がテンションコロ4に接近したか否かが判断される(ステップSt.12)。このSt.12においてクランパ19がテンションコロ4に接近したか否かを判断する動作は、そのSt.12においてクランパ19がテンションコロ4に接近したと判断されるまで繰り返し行なわれる。
【0048】
前述のSt.12においてクランパ19がテンションコロ4に接近したと判断されると、テンションコロソレノイド51の駆動が停止し、テンションコロアームレバー50及びテンションコロアーム48がスプリング52により時計回り方向に回転してテンションコロ4が版胴2から離反される(ステップSt.13)。
【0049】
このSt.13においてテンションコロ4が版胴2から離反されると、伸張動作を行なう期間である版胴2の回転回数分版胴2が回転したか否かが判断される(ステップSt.14)。このSt.14において伸張動作を行なう期間である版胴2の回転回数分版胴2が回転していないと判断されると、前述のSt.8と同様にしてクランパ19がテンションコロ4を通過したか否かが判断される(ステップSt.15)。このSt.15においてクランパ19がテンションコロ4を通過したか否かを判断する動作は、そのSt.15においてクランパ19がテンションコロ4を通過したと判断されるまで繰り返し行なわれる。
【0050】
前述のSt.15においてクランパ19がテンションコロ4を通過したと判断されると、St.7と同様にしてテンションコロソレノイド駆動部61が駆動されてテンションコロアームレバー50及びテンションコロアーム48が回転し、テンションコロ4がマスタ1を介して版胴2に当接してマスタ1が版胴2に押し付けられる(ステップSt.16)。
【0051】
その後、前述のSt.14において伸張動作を行なう期間である版胴2の回転回数分版胴2が回転したと判断されるまで前述のSt.12からSt.16までの動作が繰り返し行なわれ、テンションコロ4がマスタ1を介して版胴2に当接してマスタ1に対してマスタ1の給版方向に張力を加える伸張動作を版胴2が所定の回数回転するまでの間行なう。
【0052】
そして、前述のSt.14において伸張動作を行なう期間である版胴2の回転回数分版胴2が回転したと判断されると、伸張動作が終了し、給紙部6の給紙トレイから印刷用紙5が一枚給紙される。すると、給紙駆動部58によりレジストローラ42が駆動されて印刷用紙5がマスタ1に位置を合わせて版胴2とプレスローラ7との間へ搬送される。レジストローラ42により搬送された印刷用紙5が印刷用紙検知センサ(図示せず)により検知されると、係止駆動部59により係止部45が駆動されてプレスローラ7の係止が解除され、プレスローラ7が印刷用紙5及びマスタ1を介して版胴2に当接してマスタ1を介して印刷用紙5を版胴2に押し付けることによりマスタ1を版胴2に密着させる版付け動作が行なわれる(ステップSt.17)。
【0053】
このSt.17において版付け動作が行なわれる際に、吸引ファン38が停止する。その後、製版駆動部57によりステッピングモータ37が駆動されてプラテンローラ36、張りローラ26,27及び搬送ローラ30,31が回転し、マスタ搬送経路24に沿ってマスタ1が搬送される。そして、マスタ1の先端が搬送ローラ30,31により挟持される位置へ到達すると、プラテンローラ36、張りローラ26,27及び搬送ローラ30,31の回転が停止する。
【0054】
前述のSt.17において版付け動作が行なわれた後、排紙駆動部60により剥離爪46が駆動されて剥離爪46の先端が版胴2に接近する。剥離爪46により印刷用紙5が版胴2から剥離され、排紙トレイ47に印刷用紙5が排紙される。そして、印刷用紙5が排紙トレイ47に排紙されたことにより製版動作が終了し、印刷待機状態となる。
【0055】
このように、版胴2が回転してマスタ1が版胴2に巻き付くとき、テンションコロ4がマスタ1を介して版胴2に当接して回転し、テンションコロ4がマスタ1の給版方向に対して傾斜した方向に張力を加えることにより、マスタ1に対してマスタ1の幅方向に張力を加えることができので、マスタ1をその幅方向に伸ばすことができる。また、テンションコロ4がマスタ1を介して版胴2に当接するので、マスタ1の後端に至るまでテンションコロ4でマスタ1に対してその幅方向に張力を加えることができる。このため、腰の弱いマスタ1を使用した場合にも、腰の弱いマスタ1の弛みや皺が伸ばされ、また、腰の弱いマスタ1がその後端において波打った状態のまま版胴2に巻き付くのが防止されるので、腰の弱いマスタ1を介して印刷用紙5を版胴2に押し付けた際に腰の弱いマスタ1に皺が生じるのが防止され、印刷用紙5に印刷される画像の画像品質がマスタ1の皺により悪化するのが防止される。また、マスタ1の弛みや皺を伸ばすための装置を版胴2から離れた位置に設ける必要がなくなるので、マスタ1に対してマスタ1の給版方向に張力が加えられることがなくなるため、腰の弱いマスタ1を使用した場合にも、腰の弱いマスタ1に縦皺が生じるのが防止される。さらに、テンションコロ4がマスタ1を介して版胴2に当接して回転することによりマスタ1に対してマスタ1の幅方向に張力を加える伸張動作を版胴2が所定の回数回転する間行なわせることにより、版胴2に巻き付いたマスタ1の弛みや皺を伸ばす動作を所定の回数繰り返して行なうことができるため、腰の弱いマスタ1を使用した場合にも、腰の弱いマスタ1の弛みや皺が確実に伸ばされ、腰の弱いマスタ1を介して印刷用紙5を版胴2に押し付けた際に腰の弱いマスタ1に皺が生じるのが防止される。また、印刷用紙5に印刷される画像の画像量に基づいて伸張動作を行なう期間である版胴2の回転回数を設定することにより、画像量が多くてマスタ1に形成された穿孔の面積が大きい場合には、腰の弱いマスタ1を加熱穿孔した際に生じる腰の弱いマスタ1の収縮量が大きいので、版胴2の回転回数を多く設定して伸張動作を行なう期間を長くすることでマスタ1の皺を伸ばすことができるため、腰の弱いマスタ1に皺が生じるのが確実に防止される。また、画像量が少なくてマスタ1に形成された穿孔の面積が小さい場合には、腰の弱いマスタ1を加熱穿孔した際に生じる腰の弱いマスタ1の収縮量が小さいので、版胴2の回転回数を少なく設定して伸張動作を行なう期間を短くしてもマスタ1の皺を伸ばすことができるため、伸縮動作にかかる時間が短縮され、腰の弱いマスタ1に皺が生じるのが確実に防止される。さらに、テンションコロ4が、粘着性を有し、版胴2の摩擦係数よりも摩擦係数の高い弾性体である軟質シリコンゴムを芯金に円筒状に形成したものであるので、版胴2とマスタ1との間に生じる摩擦抵抗よりもテンションコロ4とマスタ1との間に生じる摩擦抵抗を大きくすることができるため、マスタ1に対してテンションコロ4でマスタ1の幅方向に張力を確実に加えられ、マスタ1の弛みや皺が確実に伸ばされる。また、版胴2の周速度よりも速い周速度でテンションコロ4を回転させることにより、テンションコロ4が版胴2の回転に従って従動回転する場合よりもマスタ1に対してマスタ1の幅方向に加える張力を大きくすることができるため、マスタ1の弛みや皺が確実に伸ばされる。
【0056】
なお、本実施の形態においては、芯金に軟質シリコンゴムを円筒状に形成したテンションコロ4について説明したが、テンションコロが略円筒状のものに限定される訳ではなく、図8に示すように芯金に軟質シリコンゴムを円錐台状に形成したテンションコロ70を用いても良い。このテンションコロ70を用いる場合には、テンションコロ70の母線がマスタ1に当接するようにマスタ1に対して芯金を傾斜させて設ける。また、テンションコロ4,70が芯金の外周に軟質シリコンゴムを形成したものに限定される訳ではなく、テンションコロ4,70は芯金の外周に粘着性を有するゴム糊を形成したものでも良い。さらに、テンションコロ4,70は外周面上にマイクロ吸盤を複数備えて吸着性を有するものでも良い。
【0057】
また、前述の実施の形態においては、印刷用紙5を版胴2に押し付け、版胴2の内部からインキを滲み出させて、印刷用紙5にインキを転移させることにより画像を印刷する孔版印刷装置について説明したが、例えば、特開平7−17013号公報に記載されている印刷装置のように、版胴2の外周面に対向する位置でマスタ1にインキを供給するインキ供給部を設け、版胴2に巻き付いたマスタ1に版胴2の外部からインキを供給する印刷装置に適用しても良い。
【0058】
【発明の効果】
請求項1記載の発明によれば、版胴が回転してマスタが版胴に巻き付くとき、テンションコロがマスタを介して版胴に当接して回転し、テンションコロがマスタの給版方向に対して傾斜した方向に張力を加えることにより、マスタに対してマスタの幅方向に張力を加えることができるので、マスタをその幅方向に伸ばすことができる。また、テンションコロがマスタを介して版胴に当接するので、マスタの後端に至るまでテンションコロでマスタに対してその幅方向に張力を加えることができる。このため、腰の弱いマスタを使用した場合にも、腰の弱いマスタの弛みや皺を伸ばすことができ、また、腰の弱いマスタがその後端において波打った状態のまま版胴に巻き付くのを防止できるので、腰の弱いマスタを介して印刷用紙を版胴に押し付けた際に腰の弱いマスタに皺が生じるのを防止でき、印刷用紙に印刷される画像の画像品質がマスタの皺により悪化するのを防止できる。また、マスタの弛みや皺を伸ばすための装置を版胴から離れた位置に設ける必要がなくなるので、マスタに対してマスタの給版方向に張力が加えられることがなくなるため、腰の弱いマスタを使用した場合にも、腰の弱いマスタに縦皺が生じるのを防止できる。
【0059】
請求項記載の発明によれば、テンションコロがマスタを介して版胴に当接して回転することによりマスタに対してマスタの幅方向に張力を加える伸張動作を伸張動作制御手段により版胴が所定の回数回転する間行なわせることにより、版胴に巻き付いたマスタの弛みや皺を伸ばす動作を所定の回数繰り返して行なうことができるため、腰の弱いマスタを使用した場合にも、腰の弱いマスタの弛みや皺を確実に伸ばすことができ、腰の弱いマスタを介して印刷用紙を版胴に押し付けた際に腰の弱いマスタに皺が生じるのを防止できる。
【0060】
請求項記載の発明によれば、画像量検出手段により検出された画像量に基づいて伸張動作を行なう期間である版胴の回転回数を回転回数設定手段により設定することにより、画像量が多くてマスタに形成された穿孔の面積が大きい場合には、腰の弱いマスタを加熱穿孔した際に生じる腰の弱いマスタの収縮量が大きいので、版胴の回転回数を多く設定して伸張動作を行なう期間を長くすることでマスタの皺を伸ばすことができるため、腰の弱いマスタに皺が生じるのを確実に防止できる。また、画像量が少なくてマスタに形成された穿孔の面積が小さい場合には、腰の弱いマスタを加熱穿孔した際に生じる腰の弱いマスタの収縮量が小さいので、版胴の回転回数を少なく設定して伸張動作を行なう期間を短くしてもマスタの皺を伸ばすことができるため、伸縮動作にかかる時間が短縮され、腰の弱いマスタに皺が生じるのを確実に防止できる。
【0061】
請求項記載の発明によれば、テンションコロが、芯体と粘着性又は吸着性を有する部材とにより形成されているので、版胴とマスタとの間に生じる摩擦抵抗よりもテンションコロとマスタとの間に生じる摩擦抵抗を大きくすることができるため、マスタに対してテンションコロでマスタの幅方向に張力を確実に加えることができ、マスタの弛みや皺を確実に伸ばすことができる。
【0062】
請求項記載の発明によれば、テンションコロが、芯体と版胴の摩擦係数よりも摩擦係数が高い部材とにより形成されているので、版胴とマスタとの間に生じる摩擦抵抗よりもテンションコロとマスタとの間に生じる摩擦抵抗を大きくすることができるため、マスタに対してテンションコロでマスタの幅方向に張力を確実に加えることができ、マスタの弛みや皺を確実に伸ばすことができる。
【0063】
請求項記載の発明によれば、駆動手段により版胴の周速度よりも速い周速度でテンションコロを回転させることにより、テンションコロが版胴の回転に従って従動回転する場合よりもマスタに対してマスタの幅方向に加える張力を大きくすることができるため、マスタの弛みや皺を確実に伸ばすことができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施の一形態の印刷装置を適用した孔版印刷装置を示す縦断正面図である。
【図2】固定部に対して開閉部を開放したときの製版部を示す縦断正面図である。
【図3】マスタに対するテンションコロの位置関係を示す平面図である。
【図4】テンションコロを版胴に当接離反させる駆動部を示す正面図である。
【図5】電気的なハードウェア構成を示すブロック図である。
【図6】孔版印刷装置の製版動作を示すフローチャートである。
【図7】製版動作時の孔版印刷装置を示す縦断正面図である。
【図8】他の実施の形態のテンションコロを示す平面図である。
【符号の説明】
1 マスタ
2 版胴
4 テンションコロ
5 印刷用紙
53 テンションコロモータ
70 テンションコロ

Claims (5)

  1. 回転自在に設けられて製版済みのマスタが巻き付く版胴を備え、前記マスタに位置を合わせて印刷用紙を給紙し、前記印刷用紙を前記マスタを介して前記版胴に押し付け、インキを前記印刷用紙に転移させることにより前記印刷用紙に画像を印刷する印刷装置において、
    前記マスタの幅方向の両端に対応するそれぞれの位置で前記版胴に対して接離自在で前記マスタの給版方向の下流側の対向間隔を前記マスタの幅方向に広げて前記マスタの給版方向に対して傾斜させて設けられた回転自在なテンションコロと、
    前記テンションコロが前記マスタを介して前記版胴に当接して回転することにより前記マスタに対して前記マスタの幅方向に張力を加える伸張動作を前記版胴が所定の回数回転する間行なわせる伸張動作制御手段と、
    を備えることを特徴とする印刷装置。
  2. 印刷用紙に印刷される画像の画像量を検出する画像量検出手段と、
    この画像量検出手段により検出された画像量に基づいて伸張動作を行なう期間である版胴の回転回数を設定する回転回数設定手段と、
    を備えることを特徴とする請求項記載の印刷装置。
  3. テンションコロは、芯体と粘着性又は吸着性を有する部材とにより形成されていることを特徴とする請求項1又は2記載の印刷装置。
  4. テンションコロは、芯体と版胴の摩擦係数よりも摩擦係数が高い部材とにより形成されていることを特徴とする請求項1又は2記載の印刷装置。
  5. 版胴の周速度よりも速い周速度でテンションコロを回転させる駆動手段を備えることを特徴とする請求項1,2,3又は4記載の印刷装置。
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