JP3625489B2 - 小径玉軸受と小径玉軸受用保持器の製造方法 - Google Patents

小径玉軸受と小径玉軸受用保持器の製造方法 Download PDF

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Description

【0001】
【産業上の利用分野】
この発明に係る小径玉軸受は、ハードディスクドライブ(HDD)、ビデオテープレコーダ(VTR)、ディジタルオーディオテープレコーダ(DAT)、レーザビームプリンタ(LBP)の如き各種情報機器等の回転支持部分に組み込んだ状態で使用する。又、小径玉軸受用保持器の製造方法は、この様な小径玉軸受に組み込む保持器を造る為に利用する。
【0002】
【従来の技術】
各種回転部分を支持する為に、図1に示す様な玉軸受が広く使用されている。この玉軸受は、外周面に内輪軌道1を有する内輪2と、内周面に外輪軌道3を有する外輪4とを同心に配置し、上記内輪軌道1と外輪軌道3との間に複数個の玉5、5を転動自在に設ける事で構成されている。上記外輪4の両端部内周面には、それぞれ円輪状のシール板6、6の外周縁を係止し、両シール板6、6によって、上記玉5、5設置部分に存在するグリースや発生したダスト(発塵)が外部に漏洩したり、或は外部に浮遊する塵芥がこの設置部分に進入したりするのを防止している。
【0003】
又、上記複数個の玉5、5は、図2〜3に示す様な保持器7に、転動自在に保持されている。この保持器7は、合成樹脂を射出成形する事により、一体に形成されている。即ち、この保持器7は、円環状の主部8と、この主部8の片面に設けられた複数組の保持部9、9とを備えている。各保持部9、9は、互いに間隔をあけて配置された1対の弾性片10、10から成る。各保持部9、9を構成する1対の弾性片10、10の互いに対向する面は、互いに同心の球状又は円筒状の凹面をなしている。上記各玉5、5は、各弾性片10、10の間隔を弾性的に押し広げつつ、上記1対の弾性片10、10の間に押し込む事により、各保持部9、9に転動自在に保持する。この様な玉軸受のうち、前述した各種情報機器等の回転支持部分に組み込む玉軸受としては、内径が6 mm 以下の、小径玉軸受を使用する。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の小径玉軸受と小径玉軸受用保持器の製造方法は、十分な耐久性を確保しつつ、回転に要するトルクを低減させると共に、このトルクの変動を小さくし、且つ回転に伴なって発生する塵の量(発塵量)並びに音響の低減を図れる小径玉軸受を、安価に得る事を目的としている。
【0005】
シール板6、6の間に充填したグリースにより、玉5、5の転動部分の潤滑を図る玉軸受の場合、グリースの撹拌抵抗の為、玉軸受により支持された軸等を回転させる為に要するトルクが大きく、しかも回転に伴なってこのトルクが変動し易かった。しかも、やはりグリースの存在に起因して、玉軸受の周囲に比較的多量の塵が浮遊する状態となり易い。そして、この様な塵の発生が少ないグリースを使用すると、回転時に音響(軸受音響)が発生し易い。
【0006】
この様な大トルク、トルク変動、多発塵、軸受音響発生は、HDD、VTR、DAT、LBP等に組み込まれる、内径が6mm以下である小径玉軸受に於いて、実用上問題となりがちである。特にHDDに於いては、多発塵に起因する清浄度の劣化は、ヘッドの損傷や読み取り及び書き込みエラーに結び付く為、好ましくない。
【0007】
この様な事情に鑑みて従来から、例えば特開昭61−6429号公報、特開平1−93623号公報には、保持器に潤滑油を含浸させる事でグリースを省略した玉軸受が、特開昭64−46011号公報には、潤滑油としてグリース以外の微量のオイルを使用した回転支持装置が、それぞれ記載されている。
【0008】
ところが、特開昭61−6429号公報、特開平1−93623号公報に記載された、保持器に潤滑油を含浸させた玉軸受の場合、含浸量が多い為、保持器自体を多孔質なものや油を含み易い、特殊なものとする必要があり、製作費が嵩む事が避けられない。又、特開昭64−46011号公報に記載された回転支持装置の場合、潤滑油の量が必ずしも十分に確保できず、使用状態によっては十分な耐久性を確保できない場合が考えられる。
【0009】
本発明の小径玉軸受と小径玉軸受用保持器の製造方法は、上述の様な事情に鑑みて発明されたものである。
【0010】
【課題を解決するための手段】
本発明の小径玉軸受は、前述した従来の玉軸受と同様に、内周面に外輪軌道を有する外輪と、外周面に内輪軌道を有する内輪と、上記外輪軌道と内輪軌道との間に設けられた複数の玉と、この複数の玉を転動自在に保持する合成樹脂製の保持器とを備え、内径が6 mm 以下である。
【0011】
特に、本発明の小径玉軸受に於いては、上記保持器を構成する合成樹脂は、ポリアミド樹脂とポリアセタール樹脂との何れかであって、40℃での粘度が10〜150mm/s の潤滑油を、保持器の重量に対して0.1〜1.0重量%含浸させたものである事を特徴としている。
【0012】
又、本発明の小径玉軸受用保持器の製造方法は、合成樹脂を射出成形して所望形状を有すると共に、内径が6 mm 以下である小径玉軸受に組み込み可能な大きさを有する保持器とした後、40℃での粘度が10〜150mm/s の加温された潤滑油中に浸漬して上記保持器の内部にこの潤滑油を、この保持器の重量に対して0.1〜1.0重量%含浸させた後、この保持器の表面に付着した余分な潤滑油を除去するものである。尚、mm/s (=cSt )で表わされる粘度は、ISO VGで同じ数値で表わされる粘度範囲(中央値に±10%)の中央値に一致する。
【0013】
【作用】
上述の様に構成される本発明の小径玉軸受用保持器の製造方法により造られる保持器を組み込んだ、本発明の小径玉軸受の場合、回転に要するトルク、そのトルク変動、発塵量、軸受音響の何れもが小さくなる。しかも、保持器に含浸した潤滑油が長期間に亙って染み出すので、長期間に亙って良好な潤滑が行なわれ、優れた耐久性を得られる。更に、保持器中に必要量の潤滑油を含浸させる作業を容易に行なえる為、製作費が嵩む事もない。
【0014】
尚、保持器に含浸させる潤滑油の40℃での粘度を10〜150mm/s とし、含浸量を0.1〜1.0重量%としたのは、次の理由による。
【0015】
先ず、40℃での粘度が10mm/s 未満の場合、保持器に含浸させた潤滑油の保持性が悪く(早期に保持器から染み出し)、早期に潤滑油が不足すると考えられる。反対に、40℃での粘度が150mm/s を越える様な、高粘度の潤滑油を使用した場合には、この潤滑油が保持器を構成する合成樹脂中に含浸しづらくなり、この保持器中に含浸する潤滑油が不足する。即ち、40℃での粘度が10〜150mm/s の範囲から何れの側に外れた場合にも、保持器から玉の転動部分に供給される潤滑油が早期に不足し、玉軸受の耐久性を損なう。そこで、保持器に含浸させる潤滑油の40℃での粘度を10〜150mm/s とした。
【0016】
次に、含浸量が0.1重量%未満の場合には、絶対的に潤滑油の量が不足し、保持器から玉の転動部分に供給される潤滑油が早期に枯渇して、小径玉軸受の耐久性を損なう。反対に、1.0重量%を越えて含浸させても、実用上必要な耐久性向上を図れないにも拘らず、保持器を構成する合成樹脂中に潤滑油を含浸させる為に要する時間が徒に長くなる。この様に、含浸時間が長くなると、保持器の生産効率を悪化させ、小径玉軸受の価格高騰の原因となる。そこで、保持器に含浸させる潤滑油の量を、保持器の重量に対して0.1〜1.0重量%とした。
【0017】
【実施例】
次に、本発明の効果を確認する為に、本発明者が行なった実験に就いて説明する。実験は、内径が5mm、外径が13mm、幅が4mmの小径玉軸受(ミニアチュア玉軸受を使用して行なった。保持器7は、ポリアミド樹脂製で、図1〜3に示す様な冠型のものを使用した。本発明の小径玉軸受を構成する場合、この保持器7を、40℃での粘度が46mm/s である、ポリアルファオレフィン系合成油である潤滑油中に浸漬し、この潤滑油の温度を100℃に保持した状態で、3時間放置した。この結果、上記保持器7には、この保持器7の重量に対して0.37重量%の潤滑油が含浸された。又、比較の為に使用した従来品は、グリースにより潤滑を行なった。グリースとしては、一般的に使用されているNS7グリース(リチウム石鹸グリース、商品名『NSハイリューブ』)とAKCグリース(ナトリウム石鹸グリース、商品名『アンドックC』)とを使用した。グリースの充填量は、何れも15mgとした。
【0018】
先ず、第一の実験では、この様にして得られた保持器7を組み込んだ本発明の小径玉軸受と、グリースにより潤滑される従来の小径玉軸受との回転トルクを測定した。この結果を、図4に示す。図4の(A)はNS7グリースにより潤滑された従来品の回転トルクを、(B)はAKCグリースにより潤滑された従来品の回転トルクを、(C)は本発明品の回転トルクを、それぞれ表わしている。この図4から明らかな通り、本発明の小径玉軸受は、回転に要するトルク並びにそのトルク変動が、従来品に比べて小さくなる。
【0019】
次に、第二の実験では、上記3種類の小径玉軸受を回転させた場合に於ける発塵量を測定した。玉軸受の回転は、予圧を2kgf 付与した状態で、内輪2を3600r.p.m.で回転させる事により行なった。又、発塵量は、0.1cf(立方フィート)中に存在する、粒径が0.1μm以上の塵の数をカウントする事で行なった。この結果を図5に示す。図5の(A)はNS7グリースにより潤滑された従来品の発塵量を、(B)はAKCグリースにより潤滑された従来品の発塵量を、(C)は本発明品の発塵量を、それぞれ表わしている。この図5から明らかな通り、本発明の小径玉軸受は、代表的な低発塵グリースであるAKCグリースを使用した小径玉軸受よりも発塵量が少ない。
【0020】
次に、第三の実験では、上記3種類の小径玉軸受を回転させた場合に発生する音響を測定した。小径玉軸受の回転は、予圧を2kgf 付与した状態で、内輪2を3600r.p.m.で回転させる事により行なった。この結果を図6に示す。この図6の縦軸は、軸受の音響特性に関して一般的に使用されているアンデロン値を表わしている。又、図6(A)は周波数が1000Hz前後の、所謂Mid Bandの音響特性を、(B)は1000Hzを越える、所謂Hi Band の音響特性を、それぞれ表わしている。それぞれの図で、左側の線はNS7グリースにより潤滑された従来品の音響特性を、中央の線はAKCグリースにより潤滑された従来品の音響特性を、右側の線は本発明品の音響特性を、それぞれ表わしている。又、各線の上端は発生した音響の最大値を、下端は最小値を、中間の黒点は平均値を、それぞれ表わしている。
【0021】
この図6の記載から明らかな通り、本発明の小径玉軸受は、AKCグリースを使用した小径玉軸受に比べて音響特性が遥かに優れているだけでなく、NS7グリースを使用した小径玉軸受と比較しても、同等かそれ以上に優れた音響特性を得られる。
【0022】
次に、第四の実験では、上記3種類の耐久性を測定した。耐久試験は、温度が60℃、軸受予圧が2kgf の条件の下で、内輪2を3600r.p.m.で10000時間回転させる事で行なった。この耐久試験の結果、アンデロン値がMid Band、Hi Band の何れか一方でも3を越えた場合に、その小径玉軸受が寿命に達したものと判定する事にした。この結果を、図7に示す。図7の(A)はNS7グリースにより潤滑された従来品のアンデロン値の変化を、(B)はAKCグリースにより潤滑された従来品のアンデロン値の変化を、(C)は本発明品のアンデロン値の変化を、それぞれ表わしている。又、図7で+はMid Bandのアンデロン値を、◇はHi Band のアンデロン値を、それぞれ表わしている。
【0023】
この図7から明らかな通り、何れの小径玉軸受も、耐久性は十分である。即ち、何れの小径玉軸受も、10000時間経過した時点でのアンデロン値が3に達しないだけでなく、10000時間経過した時点でアンデロン値が増加傾向にある事もなかった。この事から、何れの小径玉軸受も、10000時間を遥かに越える寿命を有する事が推定される。
【0024】
次に、保持器7に含浸させる潤滑油の粘度が小径玉軸受の耐久性に及ぼす影響を知る為に行なった実験に就いて説明する。試験品として次の(1)(2)に示す2種類のものを用意した。小径玉軸受の大きさ、保持器7の材質等は前述の通りである。(1) 40℃での粘度が46mm/s である潤滑油を0.37重量%含浸させた保持器7を組み込んだ小径玉軸受。
(2) 40℃での粘度が10mm/s である潤滑油を0.45重量%含浸させた保持器7を組み込んだ小径玉軸受。
【0025】
上記(1)(2)の試験品を、前述と同様の耐久試験(温度:60℃、軸受予圧:2kgf 、内輪回転速度:3600r.p.m.、10000時間連続回転)に供した。この耐久試験の結果を、図8に示す。図8の(A)は上記(1) に示した試験品のアンデロン値の変化を、(B)は上記(2) に示した試験品のアンデロン値の変化を、それぞれ表わしている。又、図8で+はMid Bandのアンデロン値を、◇はHi Band のアンデロン値を、それぞれ表わしている。
【0026】
この図8の記載から明らかな通り、保持器7に含浸させる潤滑油の40℃での粘度を10mm/s 以上にすれば、この保持器7を組み込んだ小径玉軸受の耐久性を十分に確保できる。
【0027】
次に、保持器7に含浸させる潤滑油の量が小径玉軸受の耐久性に及ぼす影響を知る為に行なった実験に就いて説明する。試験品として次の(3)(4)に示す2種類のものを用意した。小径玉軸受の大きさ、保持器7の材質等は前述の通りである。
(3) 40℃での粘度が150mm/s である潤滑油を0.07重量%含浸させた保持器7を組み込んだ小径玉軸受。
(4) 40℃での粘度が150mm/s である潤滑油を0.11重量%含浸させた保持器7を組み込んだ小径玉軸受。
【0028】
上記(3)(4)の試験品を、上述と同様の耐久試験(温度:60℃、軸受予圧:2kgf 、内輪回転速度:3600r.p.m.、10000時間連続回転)に供した。この耐久試験の結果を、図9に示す。図9の(A)は上記(3) に示した試験品のアンデロン値の変化を、(B)は上記(4) に示した試験品のアンデロン値の変化を、それぞれ表わしている。又、図9で+はMid Bandのアンデロン値を、◇はHi Band のアンデロン値を、それぞれ表わしている。
【0029】
この図9の記載から明らかな通り、保持器7に含浸させる潤滑油の量が0.10重量%を下回った場合には、高粘度(150mm/s )の潤滑油を使用した場合でも、小径玉軸受の耐久性が不十分になる。
【0030】
上述の実験は、本発明の小径玉軸受として、保持器7に潤滑油を含浸させたのみで、予め内輪軌道1、外輪軌道3、玉5、5の転動面には特に潤滑油を付着させない場合に就いて行なったが、これら内輪軌道1、外輪軌道3、玉5、5の転動面に予め適当な潤滑油を適量付着させておく事もできる。以下、この様に予め付着させておく(所謂オイルプレーティングを施す)潤滑油の粘度と量との適正値を求める為に行なった実験に就いて説明する。
【0031】
先ず、付着させる潤滑油の粘度の適正値を求める為に行なった実験に就いて説明する。実験は、内径が5mmの小径玉軸受(ミニアチュア玉軸受を使用して行ない、保持器7として、ポリアミド樹脂製で、40℃での粘度が46mm/s のポリアルファオレフィン系合成油を0.37重量%含浸させた、冠型の保持器7を使用した。
【0032】
オイルプレーティングは、上記保持器7を使用して組み立てられた小径玉軸受を、オイルプレーティング用の潤滑油(鉱油)を溶かし込んだ揮発性溶媒に浸漬した後引き上げ、この揮発性溶媒を蒸発させる事で行なった。内輪2の両端面及び内周面、並びに外輪4の両端面及び外周面に付着した潤滑油及び揮発性溶媒は、引き上げ直後に拭き取った。溶媒中への潤滑油の混入割合は3重量%とした。この作業により、小径玉軸受には1.5mm の鉱油が付着した。
【0033】
鉱油の粘度を変えて複数種類の小径玉軸受を造り、各玉軸受の回転トルク(動トルク)と粘度との関係を測定したところ、図10に示す様な結果を得られた。この図10で、直線aはAKCグリースによる潤滑を行なう従来品の回転トルクを、直線bは同じくNS7グリースによる潤滑を行なう従来品の回転トルクを、それぞれ表わしている。この図10から明らかな通り、オイルプレーティングに使用する潤滑油の40℃での粘度を100mm/s 以下に規制すれば、従来品よりも低い回転トルクを得られる。
【0034】
次に、オイルプレーティングにより小径玉軸受に付着させる潤滑油の量と、この小径玉軸受の回転に伴なう発塵量との関係に就いて測定した実験に就いて説明する。使用する潤滑油としては、40℃での粘度が68mm/s の鉱油を使用した。又、付着量の調節は、揮発性溶媒に混入する鉱油の量(重量%)を変える事で行なった。この実験の結果を図11に示す。この図11で直線イは、AKCグリースを使用した従来品の発塵量を示している。この図11から明らかな通り、付着量を5mm 以下にすれば、発塵量を上記従来品より少なくできる。尚、オイルプレーティングによる付着量の違いは、小径玉軸受の回転トルク並びにその変動に対して、殆ど影響を及ぼさなかった。
【0035】
尚、40℃での粘度が68mm/s の鉱油を1.5mm 付着させ、40℃での粘度が46mm/s である、ポリアルファオレフィン系合成油である潤滑油を0.37重量%含浸させた保持器7を組み込んだ、内径が5mmの小径玉軸受の回転トルク、発塵量、音響特性、寿命に就いて、オイルプレーティングを施さない小径玉軸受と同様の試験を施した結果、ほぼ同様の結果を得られた。但し、オイルプレーティングを施す事により、保持器から潤滑油が染み出す以前から、回転トルク、音響特性の面から良好な性能を得られる。
【0036】
次に、合成樹脂製の小径玉軸受用保持器7に所定量の潤滑油を含浸させる為の方法の発明に関する、7種類の実施例に就いて説明する。図12並びに下記の表1に示した▲1▼〜▲7▼は、小径玉軸受用保持器の製造方法に関する、この7種類の実施例の工程を、それぞれ示している。
【0037】
【表1】
Figure 0003625489
【0038】
尚、▲1▼の方法を除いて行なっている乾燥工程は、成形後に大気中に放置した保持器7内に進入した水分(水蒸気)を取り除いて、この保持器7内に潤滑油が含浸し易くする為に行なった。上記▲1▼の方法の場合には、成形直後、内部に水分が入り込む前に、保持器7を潤滑油等の油脂に浸漬する為、上記乾燥工程は不要となる。
【0039】
又、重量測定工程は、保持器7中に潤滑油が含浸した割合(含油率)を知る為に行なった。従って、この重量測定工程は、実際に保持器7を大量生産する際に、全数に就いて行なう必要はない。又、洗浄工程は、保持器7内に潤滑油を含浸させる含油工程の後、この保持器7の表面に付着した余分の潤滑油を取り除き、更に保持器7中に含浸した潤滑油の重量を正確に測定する為に行なった。
【0040】
更に、上記含油工程での潤滑油の含浸作業は、▲1▼〜▲4▼、▲6▼、▲7▼に就いては図13に示す様な装置により、▲5▼に就いては図14に示す様な装置により、それぞれ行なった。
【0041】
先ず、図13に示した装置により潤滑油の含浸作業を行なう場合には、上方が開放されたオイルバス11内に貯溜された潤滑油12(40℃での粘度が10mm/s である、エステル系合成油)を、ヒータ13により80℃に加温する。そして、金網により造られた籠14に入れた保持器7を、上記潤滑油12中に5時間浸漬する。この潤滑油12は、上記保持器7を浸漬している間中、モータ15により駆動される撹拌翼16によって攪拌し続ける。
【0042】
又、図14に示した装置により潤滑油の含浸作業を行なう場合には、外部とは遮断されたオイルバス11a内に貯溜された潤滑油12(40℃での粘度が10mm/s である、エステル系合成油)を、ヒータ13a、13aにより80℃に加温する。そして、金網により造られた籠14に入れた保持器7を、上記潤滑油12中に5時間浸漬する。この潤滑油12は、上記保持器7を浸漬している間中、モータ15により駆動される撹拌翼16によって攪拌し続ける。尚、上記オイルバス11a内には、給気管17を通じて高圧(8kgf/cm )の窒素ガス(N )を送り込み、浸漬している間中、上記オイルバス11a内を上記高圧に維持する。
【0043】
上述の様な装置を使用して、図12並びに前記表1に記載した様な▲1▼〜▲7▼に示す様な方法で合成樹脂製の小径玉軸受用保持器7中に潤滑油を含浸させたところ、次の表2に示す様な割合(含油率)で、保持器7内に潤滑油が含浸した。尚、この表2に示した含油率(重量%)は、次式で表わされる。
含油率=(含油工程及び洗浄工程後の重量−完全乾燥重量)×100/完全乾燥重量
【0044】
【表2】
Figure 0003625489
【0045】
この表2の記載から明らかな通り、本発明の方法によれば、保持器7を組み込んだ小径玉軸受の耐久性を向上させるべく、合成樹脂製の保持器7内に十分な量の潤滑油を含浸させる事ができる。
【0046】
【発明の効果】
本発明の小径玉軸受と小径玉軸受用保持器の製造方法は、以上に述べた通り構成され作用する為、十分な耐久性を確保しつつ、回転に要するトルクを低減させると共に、このトルクの変動を小さくし、且つ発塵量並びに音響の低減を図れる小径玉軸受を、安価に得られる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の対象となる玉軸受の1例を示す断面図。
【図2】保持器の1例を示す半部拡大平面図。
【図3】同じく拡大斜視図。
【図4】回転トルクの測定値を示す線図。
【図5】発塵量の測定値を示す線図。
【図6】音響特性の測定値を示す線図。
【図7】耐久性試験の結果の第1例を示す経過時間と音響特性との関係を示す線図。
【図8】同じく第2例を示す経過時間と音響特性との関係を示す線図。
【図9】同じく第3例を示す経過時間と音響特性との関係を示す線図。
【図10】オイルプレーティングに使用する潤滑油の粘度と回転トルクとの関係を示す線図。
【図11】オイルプレーティングに使用する潤滑油の付着量と発塵量との関係を示す線図。
【図12】保持器に潤滑油を含浸させる方法の7例を示す工程図。
【図13】保持器に潤滑油を含浸させる為の装置の第1例を示す略縦断面図。
【図14】同じく第2例を示す略縦断面図。
【符号の説明】
1 内輪軌道
2 内輪
3 外輪軌道
4 外輪
5 玉
6 シール板
7 保持器
8 主部
9 保持部
10 弾性片
11、11a オイルバス
12 潤滑油
13、13a ヒータ
14 籠
15 モータ
16 撹拌翼
17 給気管

Claims (2)

  1. 内周面に外輪軌道を有する外輪と、外周面に内輪軌道を有する内輪と、上記外輪軌道と内輪軌道との間に設けられた複数の玉と、この複数の玉を転動自在に保持する合成樹脂製の保持器とを備え、内径が6 mm 以下である小径玉軸受に於いて、この保持器を構成する合成樹脂は、ポリアミド樹脂とポリアセタール樹脂との何れかであって、40℃での粘度が10〜150mm/s の潤滑油を、保持器の重量に対して0.1〜1.0重量%含浸させたものである事を特徴とする小径玉軸受。
  2. ポリアミド樹脂とポリアセタール樹脂との何れかの合成樹脂を射出成形して所望形状を有すると共に、内径が6 mm 以下である小径玉軸受に組み込み可能な大きさを有する保持器とした後、40℃での粘度が10〜150mm/s の加温された潤滑油中に浸漬して上記保持器の内部にこの潤滑油を、この保持器の重量に対して0.1〜1.0重量%含浸させた後、この保持器の表面に付着した余分な潤滑油を除去する、小径玉軸受用保持器の製造方法。
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