JP3918900B2 - 潤滑剤含有ポリマ充填転がり軸受及びその製造方法 - Google Patents

潤滑剤含有ポリマ充填転がり軸受及びその製造方法 Download PDF

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    • F16C33/6648Retaining the liquid in or near the bearing in a porous or resinous body, e.g. a cage impregnated with the liquid

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、潤滑剤含有ポリマを充填した転がり軸受及びその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
一般に、転がり軸受の外輪、内輪及び転動体の間の空間には、潤滑性を付与するために潤滑油やグリースが充填されている。しかし、これら潤滑油やグリースは液体または半固体状の物質であるため、軸受回転中に飛散したり流動化するのを防止するために必ずシール板等により密封されている。このため、小型の特殊軸受にはこれら潤滑剤やグリースを使用することが困難であった。
【0003】
そこで、潤滑剤を含有するポリマを軸受の外輪、内輪及び転動体の間の空間に充填することが提案されており、例えば特公昭63−23239号公報には、グリースとポリエチレンとからなる潤滑剤含有ポリマ(プラスチックグリース)を軸受の外輪、内輪及び転動体からなる空間内に充填することが開示されている。この潤滑剤含有ポリマ充填転がり軸受では、潤滑剤含有ポリマが軸受の回転に伴ってその内部に取り込んだ潤滑成分であるグリースを徐放して、長期にわたる潤滑を維持する。
しかし、この潤滑剤含有ポリマ充填転がり軸受では、特に、外輪と内輪との間の空間を転動体の占める空間を除いて全て埋めるように潤滑剤含有ポリマが充填された場合、潤滑剤含有ポリマが転動体の回転を阻害したり、また軸受の回転に伴って発生した潤滑剤含有ポリマの摩耗粉が転動体と内輪及び外輪との隙間に入り込んで所謂かみ付き現象を起こしたり、軸受全体が振動したりして軸受としての機能が大きく低下することがあった。また、それに伴って軸受の温度上昇を起こすこともあった。
【0004】
このような問題を解決するために、特開平8−312652号公報では、保持器と転動体との間に潤滑剤含有ポリマの潤滑成分の被膜を形成することにより、潤滑剤含有ポリマと転動体との直接接触を回避することを提案している。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、前記潤滑剤含有ポリマの潤滑成分の被膜を形成した転がり軸受においても、以下のような問題があった。
即ち、潤滑剤含有ポリマ充填転がり軸受は、通常、潤滑剤含有ポリマを外輪、内輪及び転動体により形成される空間内に充填し、固化して得られるが、その際に未焼成の潤滑剤含有ポリマを固形化する場合には、潤滑剤含有ポリマを構成する熱可塑性樹脂(例えば、ポリエチレン)の融点以上にして未焼成の潤滑剤含有ポリマを融解させる必要がある。しかし、この融解時には、樹脂と潤滑剤とは相溶した状態になっており、樹脂は他の成分を最も取り込みやすい状態となっている。従って、このような状態では転動体等の表面に成膜された潤滑成分もこの溶融した樹脂に取り込まれてしまい、潤滑剤含有ポリマが転動体に接触するようにして固化する可能性が高くなり、それによって転動体の回転が拘束され、潤滑成分の被膜によるトルク低減効果があまり発揮されない場合がでてくる。
【0006】
そこで、本発明は上記の問題点を解決することを目的とし、即ち潤滑剤含有ポリマと転動体との接触を防いで、円滑な回転を長期にわたり維持できる潤滑剤含有ポリマ充填転がり軸受並びにその製造方法を提供することを目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】
上記の目的を達成するために、本発明の潤滑剤含有ポリマ充填転がり軸受は、外輪、内輪及び転動体により形成される空間内に潤滑剤含有ポリマを充填してなる転がり軸受において、前記潤滑剤含有ポリマが炭化水素を主鎖とする樹脂に炭化水素系潤滑剤を保持させたものであり、かつ前記転がり軸受の少なくとも外輪の内周面、内輪の外周面及び転動体の表面に、平均分子量1000〜10000のパーフルオロアルキルカルボン酸及びパーフルオロアルキルポリエーテルカルボン酸の少なくとも一方からなる被膜が0.1〜30μmの膜厚で形成されていることを特徴とする。
また、同様の目的を達成するために、本発明の潤滑剤含有ポリマ充填転がり軸受の製造方法は、転がり軸受を組立後、少なくとも外輪の内周面、内輪の外周面並びに転動体の表面に、平均分子量1000〜10000のパーフルオロアルキルカルボン酸及びパーフルオロアルキルポリエーテルカルボン酸の少なくとも一方からなる被膜を0.1〜30μmの膜厚で形成し、次いで外輪、内輪及び転動体により形成される空間内に、炭化水素を主鎖とする樹脂に炭化水素系潤滑剤を保持させてなる潤滑剤含有ポリマを充填し、固化させることを特徴とする。
【0008】
【発明の実施の形態】
以下、本発明に関して図面を参照して詳細に説明する。
図1は、本発明に係る潤滑剤含有ポリマ充填転がり軸受の一実施形態である玉軸受を示す要部断面図である。図示されるように、玉軸受1は外輪2の内周面、内輪3の外周面並びに転動体である玉4の表面に、パーフルオロアルキルカルボン酸及びパーフルオロアルキルポリエーテルカルボン酸の少なくとも一方からなる被膜5が成膜されており、更にこれら吸着被膜5が成膜された外輪2、内輪3及び玉4により形成される空間内に、炭化水素を主鎖とする樹脂(以下、炭化水素系樹脂と呼ぶ)に炭化水素系の潤滑剤を保持させてなる潤滑剤含有ポリマ6が充填されている。
【0009】
上記の玉軸受1においては、従来と同様に、潤滑剤含有ポリマ6が玉軸受1の回転に伴ってその内部に取り込んだ潤滑成分を徐放して、長期にわたる潤滑を維持する。また、この潤滑剤含有ポリマ6は、被膜5の存在により外輪2、内輪3並びに玉4と直接接触することが無くなり、玉4の回転を阻害することがない。また、被膜5は、玉4と外輪2及び内輪3との隙間にも形成されるため、これらの隙間に潤滑剤含有ポリマ6の摩耗粉が入り込むのを防止する。しかも、被膜5を形成するパーフルオロアルキルカルボン酸及びパーフルオロアルキルポリエーテルカルボン酸は、潤滑剤含有ポリマ6の形成材料である炭化水素系物質に対する親和性が低く、特に炭化水素系潤滑油に対して撥油性を有しているため、玉4、外輪2の内周面及び内輪3の外周面と潤滑剤含有ポリマ6との間に油膜を保持して両者の接触をより確実に防止する。また、潤滑剤含有ポリマ6の玉4に噛み付きを起こすエッジ部が少なくなり、低トルクでスムーズな軸受の回転を維持できるようになる。
このように、玉4をはじめとする玉軸受1の構成部位と潤滑剤含有ポリマ6との間に、潤滑剤含有ポリマ6に対する親和性の低い材料からなる被膜5が介在することにより、玉軸受1にその運転初期から長期にわたり低トルクで、円滑な回転を行わせることができる。
【0010】
被膜5の膜厚は、0.1μm〜30μmである。被膜5の膜厚が0.1μm未満では、潤滑剤含有ポリマ6と外輪2、内輪3及び転動体4との接触を防止する作用が充分に発現しない。一方、膜厚が厚くなると、特に100μmを越すような場合には、前記隙間に潤滑剤含有ポリマ6の摩耗粉が入り込みやすくなる。
また、被膜5を形成するパーフルオロアルキルカルボン酸またはパーフルオロアルキルポリエーテルカルボン酸としては、例えば下記化学式(1)〜(4)に示すようなものを好適に使用することができる。
【0011】
【化1】
Figure 0003918900
【0012】
これらパーフルオロアルキルカルボン酸またはパーフルオロアルキルポリエーテルカルボン酸は、その平均分子量で1000〜10000の範囲、特に3000〜8000の範囲のものが好ましい。平均分子量が大きいものほど、炭化水素系潤滑剤に対する撥油性が大きくなると同時に、より厚い被膜5が形成されて玉軸受1の構成部位と潤滑剤含有ポリマ6との隙間が大きくなり、軸受の低トルク化につながる。従って、平均分子量で1000未満の場合は、このような効果が小さく、低トルク化が図られない。
被膜5は、その形成材料であるパーフルオロアルキルカルボン酸またはパーフルオロアルキルポリエーテルカルボン酸中のカルボキシル基が、軸受形成材料である金属表面に吸着した状態で成膜される。従って、平均分子量で10000を超える場合には、末端のカルボキシル基に比べて、パーフルオロアルキル基またはパーフルオロアルキルポリエーテル基が非常に大きくなり、軸受の構成部位に配向よく吸着させるのが難しくなり、被膜5の付着力及び均質性が低下する。
【0013】
潤滑剤含有ポリマ6の樹脂成分は炭化水素を主鎖とする樹脂であり、中でもポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブチレン、ポリメチルペンテン等などの基本的に同じ化学構造を有するポリオレフィン系樹脂が好ましい。そして、この炭化水素系樹脂に、ポリα−オレフィン油のようなパラフィン系炭化水素油、ナフテン系炭化水素油、鉱油、ジアルキルジフェニルエーテルのようなエーテル油、フタル酸エステルのようなエステル油等の炭化水素系潤滑剤を保持させて潤滑剤含有ポリマ6が得られる。尚、炭化水素系樹脂及び炭化水素系潤滑剤は、共に単独でもよいし、複数種を併用してもよい。
【0014】
ポリオレフィン系樹脂は、通常、基本構造は同じでその平均分子量が異なっており、700〜5×106の範囲に及んでいる。そこで、平均分子量700〜5×104というワックス(例えば、ポリエチレンワックス)に分類されるものと、平均分子量1×104〜1×106という比較的低分子量のものと、平均分子量1×106〜5×106という超高分子量のものとを、単独若しくは混合して用いることにより、潤滑剤含有ポリマ6に様々な特性を付与するとができる。
例えば、比較的低分子量のものと潤滑剤との組み合わせによって、ある程度の機械的強度、潤滑剤供給能力、保油性を持つ潤滑剤含有ポリマ6が得られる。この中の比較的低分子量のものの一部を、ワックスに分類されるものに置き換えると、ワックスに分類されるものと潤滑剤との分子量の差が小さくなるために潤滑剤との親和性が高くなり、結果として潤滑剤含有ポリマ6の保油性が向上し、長期間にわたっての潤滑剤の供給が可能になる。但し、その反面、機械的強度は低下する。ワックスとしては、ポリエチレンワックスのようなポリオレフィン系樹脂の他、融点が100〜130℃以上の範囲にあるもの(例えば、パラフィン系合成ワックス)であれば、使用できる。それに対して、超高分子量のものに置き換えると、超高分子量のものと潤滑剤との分子量の差が大きくなるために潤滑剤との親和性が低くなり、結果として保油性が低下し、潤滑剤含有ポリマ6からの潤滑油の滲み出しが速くなる。それによって、潤滑剤含有ポリマ6からの供給可能な潤滑剤量に達する時間が短くなり、長期間に亘っての潤滑剤の供給が難しくなる。但し、機械的強度は向上する。
従って、成形性や機械的強度、保油性、潤滑剤供給量のバランスを考慮すると、潤滑剤含有ポリマ6の組成比は、樹脂成分としてワックスに分類されるもの0〜5重量%、比較的低分子量のもの8〜50重量%、超高分子量のもの2〜15重量%で、かつ合計で20〜70重量%とし、潤滑剤を90〜50重量%とすることが好適である。
【0015】
また、潤滑剤含有ポリマ6の機械的強度を向上させるため、上述のポリオレフィン系樹脂に、以下のような炭化水素系の熱可塑性樹脂及び熱硬化性樹脂を添加してもよい。
熱可塑性樹脂としては、ポリアミド、ポリカーボネート、ポリブチレンテレフタレート、ポリフェニレンサルファイド、ポリエーテルスルホン、ポリエーテルエーテルケトン、ポリアミドイミド、ポリスチレン、ABS樹脂等の各樹脂を使用することができる。
熱硬化性樹脂としては、不飽和ポリエステル樹脂、尿素樹脂、メラニン樹脂、フェノール樹脂、ポリイミド樹脂、エポキシ樹脂等の各樹脂を使用することができる。
これらの樹脂は、単独又は混合して用いてもよい。
【0016】
更に、ポリオレフィン系樹脂とそれ以外の樹脂とを、より均一な状態で分散させるために、必要に応じて適当な相溶化剤を加えてあってもよい。
また、機械的強度を向上させるために、充填材を添加してもよい。例えば、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、チタン酸カリウムウィスカーやホウ酸アルミニウムウィスカー等の無機ウィスカー類、或いはガラス繊維や金属繊維、カーボン繊維等の無機繊維類及びこれらを布状に編組したもの、あるいはカーボンブラック、黒鉛粉末、また、有機化合物ではアラミド繊維やポリエステル繊維等を添加してもよい。
更に、ポリオレフィン系樹脂の熱による劣化を防止する目的で、N,N’−ジフェニル−p−フェニルジアミン、2,2’−メチレンビス(4−エチル−6−t−ブチルフェノール)等の老化防止剤、また、光による劣化を防止する目的で、2−ヒドロキシ−4−n−オクトキシベンゾフェノン、2−(2’−ヒドロキシ−3’−t−ブチル−5’−メチル−フェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール等の紫外線吸収剤を添加してもよい。
【0017】
以上に挙げた各種の添加剤は、全体で潤滑剤含有ポリマ6の全量の20重量%以下であることが、潤滑剤の供給能力を維持する上で好ましい。
【0018】
本発明においては、潤滑剤含有ポリマ6の樹脂成分として、上記説明したようなポリオレフィン系樹脂をベースとしたものの他、射出成形可能な炭化水素系の熱可塑性樹脂も使用できる。中でも、含油量を多くすることができるものとして、例えば、ポリエステル系エラストマー等がある。
また、耐熱用途用にポリウレタン、ポリウレアエラストマー等の炭化水素系の熱硬化性樹脂も用いることができる。但し、ポリウレタンは炭化水素系潤滑剤をグリースの形で用いる。また、潤滑剤含有ポリマ6とするには、イソシアネート基を含有するウレタンプレポリマーとアミン系硬化剤とをそれぞれグリースに均一に混合した後、2つの混合物をさらに混合して充填し、必要に応じて加熱して反応させる。ポリウレタンエラストマーの場合は、分子鎖にソフトセグメントを含有する芳香族ポリアミン化合物及び芳香族ジアミンの混合物からなるアミン成分を、それと相溶性のある炭化水素系潤滑油またはそのグリースと均一に混合した混合物に、更にポリイソシアナート成分を加えて混合して充填し、必要に応じて加熱して反応させる。
【0019】
上記の如く形成される潤滑剤含有ポリマ6は、実用上必要な強度としてショアーA硬度〔HDA〕で65〜90の範囲、特に70〜85の範囲であることが好ましい。この〔HDA〕が65未満の場合は、軸受の回転により破損する恐れがある。これに対して〔HDA〕が90を超える場合は、玉4を拘束する力が大き過ぎ、それによって軸受の回転トルクが大きくなったり、軸受の回転による発熱が大きくなって軸受の温度が高くなる恐れがある。
【0020】
上記の玉軸受1は、通常の方法により軸受を組み立て、脱脂洗浄した後、被膜5を成膜し、次いで潤滑剤含有ポリマ6を充填、固化させる工程により製造される。
具体的に説明すると、被膜5の形成は、上記したパーフルオロアルキルカルボン酸またはパーフルオロアルキルポリエーテルカルボン酸を適当な溶媒に溶解させて得られる溶液に玉軸受1を浸漬するか、あるいは前記溶液を外輪2の内周面、内輪3の外周面並びに玉4の表面に噴霧した後、溶液の溶剤を蒸発させることによって行う。その際、被膜5の厚さが上記した膜厚となるように、溶液の濃度や浸漬又は噴霧時間を調整して行う。尚、使用する溶剤はその沸点が低い方が好ましく、例えばパーフルオロペンタンやパーフルオロヘキサン等の低沸点パーフルオロカーボン、HCFC−225(以下に示すCAとCBとの混合物)等のフッ素系溶剤が好適である。
【0021】
【化2】
Figure 0003918900
【0022】
そして、被膜5を成膜した後、上記した炭化水素系樹脂と炭化水素系潤滑剤とを混練してなるゲル状またはペースト状の潤滑剤含有ポリマ6を玉軸受1の外輪2、内輪3及び玉4により形成される空間内に充填し、次いで玉軸受1ごと加熱して潤滑剤含有ポリマ6を前記空間内で固化させ、玉軸受1内に保持させる。この時の温度や加熱時間等は潤滑剤含有ポリマ6の種類により異なり、適宜選択される。潤滑剤含有ポリマ6を充填する方法には特に制限はないが、例えば特開平8−309793号公報に記載の射出成形機を好適に使用することができる。
その後、自然冷却して本発明に係る潤滑剤含有ポリマ6を充填した玉軸受1が得られる。
【0023】
本発明の潤滑剤含有ポリマ充填転がり軸受は、図1に示した玉軸受1の他に、図2に示すような自動調心ころ軸受11にも適用することができる。この自動調心ころ軸受11は、転動体であるころ14が調心可能な構造となっており、それに伴い軸受全体として調心可能な構造となっている。
具体的に説明すると、この自動調心ころ軸受11は内輪13と外輪12との間に2列に、かつ径方向に互い違いに配置された樽型のころ14を一体型に構成された保持器17により保持し、更に保持器17と内輪13との間にころ14を案内する案内輪18が該保持器17と同心状に配置して構成されている。また、内輪13の外周面と外輪12の内周面、ころ14及び案内輪18の表面には、パーフルオロアルキルカルボン酸またはパーフルオロアルキルポリエーテルカルボン酸からなる被膜15が成膜されており、更に内輪13と外輪12との間に存在する空所、内輪13ところ14の外端面との間の間隙及びころ14の内端面と案内輪18との間の間隙には、炭化水素系樹脂に炭化水素系潤滑剤を保持させてなる潤滑剤含有ポリマ16がそれぞれ充填されている。
【0024】
上記した自動調心ころ軸受11においては、ころ14の内端面が案内輪18とすべり接触して軸受トルクの上昇や軸受の温度上昇が起こる。しかし、本発明ではころ14及び案内輪18の表面に被膜15が成膜されているために、この接触抵抗が低減されて軸受トルクの上昇や軸受の温度上昇を効果的に抑制できる。
【0025】
【実施例】
以下、実施例により本発明をより明確にする。但し、本発明は本実施例に限定されるものではない。
(実施例及び比較例)
図2に示す自動調心ころ軸受(呼び番号:22311)を脱脂洗浄後、パーフルオロアルキルポリエーテルカルボン酸溶液〔パーフルオロアルキルポリエーテルカルボン酸:デュポン(株)製Krytox 157FSH ( 化学式(4) 、分子量:7000〜7600、濃度:5wt%;希釈溶剤:旭硝子(株)製アサヒクリンAK-225(HCFC-225)〕に浸漬し、その後90℃で1時間加熱処理を行い、パーフルオロアルキルポリエーテルカルボン酸の被膜を成膜した。膜厚は、1〜5μmであった。
次いで、潤滑剤含有ポリマとして以下の配合のものを特開平8−309793号公報に記載の含油ポリマ成形用の射出成形機を用いて外輪、内輪、ころ及び案内輪により形成される軸受の内部空間に充填した。
潤滑剤含有ポリマの配合:
高密度ポリエチレン 20wt%
超高分子量ポリエチレン 5wt%
ポリエチレンワックス 5wt%
鉱油 70wt%
また、比較のために上記自動調心ころ軸受においてパーフルオロアルキルポリエーテルカルボン酸の被膜を成膜することなく、上記の潤滑剤含有ポリマを充填した。
【0026】
以上の操作によって得られた各自動調心ころ軸受について、回転試験(N=800min-1、Fr=2744N)を行い、外輪外径温度と軸受トルクを測定した。結果を表1に示す。
【0027】
【表1】
Figure 0003918900
【0028】
表1の結果から明らかなように、実施例の軸受においては転動体の表面、内輪の外周面及び外輪の内周面にパーフルオロアルキルポリエーテルカルボン酸の被膜が形成されているため、軸受の構成部位と潤滑剤含有ポリマとが直接接触することがなく、比較例の軸受に比べて軸受トルクが小さくなり、それによって軸受の温度上昇も低く抑えられていることがわかる。
また、案内輪の表面にもパーフルオロアルキルポリエーテルカルボン酸の被膜が形成されているため、同じくパーフルオロアルキルポリエーテルカルボン酸の被膜が形成されているころの内端面との間の潤滑が安定に保たれ、これも軸受トルクの低減につながっているものと考えられる。
【0029】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明によると、パーフルオロアルキルカルボン酸及びパーフルオロアルキルポリエーテルカルボン酸の少なくと一方からなる被膜が軸受の各構成部位(内輪の外周面側、外輪の内周面側、転動体の表面等)に形成されているため、この被膜の厚さ分だけ軸受の各構成部位と潤滑剤含有ポリマとの間に隙間が形成されているのと同等となるのと同時に、被膜を形成するパーフルオロアルキルカルボン酸またはパーフルオロアルキルポリエーテルカルボン酸が炭化水素系潤滑剤に対する撥油性を有するため、前記隙間に油膜が保持され、良好な潤滑性が付与される。また、潤滑剤含有ポリマの転動体にかみつきを起こすエッジ部が少なくなり、軸受の回転不良が無くなることに加えて、潤滑剤含有ポリマと軸受の各構成部位との間の摩擦も少なくなり、トルク上昇や軸受の温度上昇も最小限に抑えられ、低トルクでスムーズな軸受の回転を維持できる。また、それと同時に、潤滑剤含有ポリマから徐放される潤滑剤によって安定した潤滑も維持される。
また、製造方法においても、潤滑剤含有ポリマを充填する前に、パーフルオロアルキルカルボン酸またはパーフルオロアルキルポリエーテルカルボン酸を含む溶液を塗工後放置する等の簡単な処理で被膜を形成でき、特に作業工程に支障を来すことなく作製することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る潤滑剤含有ポリマ充填転がり軸受の一実施形態(玉軸受)を示す要部断面図である。
【図2】本発明に係る潤滑剤含有ポリマ充填転がり軸受の他の実施形態(自動調心ころ軸受)を示す要部断面図である。
【符号の説明】
1 転動体軸受
2 外輪
3 内輪
4 玉
5 被膜
6 潤滑剤含有ポリマ
7 保持器
11 自動調心ころ軸受
12 外輪
13 内輪
14 ころ
15 被膜
16 潤滑剤含有ポリマ
17 保持器
18 案内輪

Claims (2)

  1. 外輪、内輪及び転動体により形成される空間内に潤滑剤含有ポリマを充填してなる転がり軸受において、前記潤滑剤含有ポリマが炭化水素を主鎖とする樹脂に炭化水素系潤滑剤を保持させたものであり、かつ前記転がり軸受の少なくとも外輪の内周面、内輪の外周面及び転動体の表面に、平均分子量1000〜10000のパーフルオロアルキルカルボン酸及びパーフルオロアルキルポリエーテルカルボン酸の少なくとも一方からなる被膜が0.1〜30μmの膜厚で形成されていることを特徴とする潤滑剤含有ポリマ充填転がり軸受。
  2. 転がり軸受を組立後、少なくとも外輪の内周面、内輪の外周面並びに転動体の表面に、平均分子量1000〜10000のパーフルオロアルキルカルボン酸及びパーフルオロアルキルポリエーテルカルボン酸の少なくとも一方からなる被膜を0.1〜30μmの膜厚で形成し、次いで外輪、内輪及び転動体により形成される空間内に、炭化水素を主鎖とする樹脂に炭化水素系潤滑剤を保持させてなる潤滑剤含有ポリマを充填し、固化させることを特徴とする潤滑剤含有ポリマ充填転がり軸受の製造方法。
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