JP4345766B2 - 複列転がり軸受の製造方法、複列転がり軸受、自動調心ころ軸受 - Google Patents
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Description
この特許文献1に記載されている自動調心ころ軸受を図8に示す。この軸受は、内輪1に2列の軌道1aを有し、各軌道1aの外端部に脱落防止つば1bが、両軌道1aの間に案内つば1cがそれぞれ形成されている。ころ3は、各列毎に別体の保持器4によって保持され、ころ3の内端面は案内つば1cの側面に接触している。そして、この軸受のころ3の外端面より内側に存在する空間と、内輪1の脱落防止つば1bところ3の外端面との間に、潤滑剤含有ポリマ(プラスチックグリース)5が充填されて固化されている。
本発明は、このような従来技術の問題点に着目してなされたものであり、一対の複列内輪および複列外輪と、複列配置されている転動体とを備え、軸受の内部空間(例えば、各転動体列間、各転動体列の転動体同士の間、保持器と内輪および外輪との間)に、潤滑剤含有ポリマが充填されて固化されている複列転がり軸受において、充填・固化されている潤滑剤含有ポリマの機械的強度を高くして、高速・高荷重の使用条件下での信頼性を向上させることを課題とする。
充填する潤滑剤含有ポリマとしては、例えばポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブチレン、ポリメチルペンテン等のポリオレフィン系樹脂から選択されたポリマに、ポリα−オレフィン油等のα−オレフィンの重合油、ナフテン系油、鉱油、ジアルキルジフェニルエーテル油等のエーテル油、フタル酸エステル等のエステル油から選択された潤滑剤を単独でまたは2種類以上を組み合わせて混合したものが挙げられ、これらはポリマの融点以上の温度に加熱した後に冷却することによって固化する。この潤滑剤含有ポリマは、未焼成の場合は、例えばポリマに潤滑剤が均一に混合したペースト状である。この潤滑剤含有ポリマは、酸化防止剤、錆止め剤、摩耗防止剤、消泡剤、極圧剤等を含んでいてもよい。
なお、低分子量ポリオレフィンとしてはポリエチレンワックス等が用いられるが、融点が100〜130℃程度であるパラフィンワックスを用いてもよい。
潤滑剤含有ポリマの充填・固化後の硬さは、HDA (スケールAを用いたデュロメータ硬さ)65〜90の範囲であることが好ましい。HDA 65未満では機械的強度が不十分であり、軸受の回転によって破損する恐れがある。HDA 90を超えると、転動体を拘束する力が大きすぎて、軸受に生じるトルクが大きくなったり、軸受の回転に伴う発熱量が多くなって軸受温度が上昇したりする恐れがある。より好ましい硬さの範囲はHDA 70〜85である。
ポリオレフィン系樹脂に添加する熱可塑性樹脂としては、ポリアミド、ポリカーボネート、ポリブチレンテレフタレート、ポリフェニレンサルファイド、ポリエーテルスルホン、ポリエーテルエーテルケトン、ポリアミドイミド、ポリスチレン、ABS樹脂等が挙げられる。熱硬化性樹脂としては、不飽和ポリエステル樹脂、尿素樹脂、メラミン樹脂、フェノール樹脂、ポリイミド樹脂、エポキシ樹脂等が挙げられる。これらの樹脂は単独で添加しても良いし、2種類以上を添加しても良い。
また、潤滑剤含有ポリマの充填・固化後の機械的強度を向上させるために、以下に示すような充填剤を添加しても良い。このような充填剤としては、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、無機ウィスカー類(チタン酸カリウムウィスカーやホウ酸アルミニウムウィスカー)、あるいは無機繊維類(ガラス繊維や金属繊維)およびこれらを布状に編組したもの、カーボンブラック、黒鉛粉末、カーボン繊維、アラミド繊維、ポリエステル繊維等が挙げられる。
本発明の方法において、射出成形は以下のようにして行う。金型として、軸受の幅方向中心で2分割され、内輪と外輪の間に外側から転動体列を支持するつば部を有し、つば部の転動体間となる部分にゲートを設けたものを用い、この金型を軸受に外嵌させた状態で、射出成形機のスクリューで溶融された材料をゲートから軸受空間内に導入する。
また、射出成形機としては、自重式ホッパーが付いた通常のインラインスクリュー式の射出成形機では、ペースト状の未焼成潤滑剤含有ポリマがスクリュー部に噛み込み難いため、特開平8−309793号公報に記載されているような、ホッパー部を圧送式にした射出成形機を用いることが好ましい。この射出成形機を用いると、ペースト状の潤滑剤含有ポリマをスクリュー部に安定的に送ることができるため、射出成形が容易に行われる。
[成形法の違いによる機械的強度の比較]
以下のようにして、同じ組成の潤滑剤含有ポリマを用い、射出成形と圧縮成形により同じ大きさのダンベル形試験片を成形し、これらの試験片を用いて引っ張り強度と硬さの測定を行った。
これらを先ず、高密度ポリエチレンが10重量%、超高分子量ポリエチレンが12.5重量%、ポリエチレンワックスが2.5重量%、鉱油が75重量%となるように混合した。次に、この混合物を150℃で1時間加熱した後、室温まで冷却して固化させた。これをさらに粉砕機で粉砕することにより、ペースト状の潤滑剤含有ポリマを得た。
引っ張り強度は、万能型強度試験機を用い、引っ張り速度10mm/分の条件で行い、破断点までの最大負荷荷重を測定した。この測定値を試験片の最小断面積で除した値を引っ張り強度として算出した(1Pa=1N/m2 )。硬さは、デュロメータスケールA硬度計を用いて測定した。これらの結果を下記の表1に示す。
先ず、図1および2に示す構造の自動調心ころ軸受を作製した。図1は図2のB−B線断面図に相当する。なお、図1の右側のころは断面であるがハッチングを省略してある。
この軸受は、内輪1に2列の軌道1aを有し、各軌道1aの外端部に脱落防止つば1bが形成されている。外輪軌道2aは、軸受中心を中心とする球状に形成されている。全てのころ3は一つの保持器4によって保持されている。この保持器4は、環状の環状部41と、環状部41から左右両側に櫛状に延びる保持部42とで構成されている。左右の保持部42は環状部41の異なる位置から交互に延びている。この保持器4により、軸受の軸方向において、一方の列のころ3は他方の列のころ3同士の間に配置される。
なお、図2において、ライン7aは案内輪7の幅方向(軸受の軸方向)中心線を、ライン4aは保持器の環状部41の幅方向中心線を、ライン3aはころ3の外端面の中心点を結ぶ線を示す。
金型は図3および4に示す構造のものを用いた。図3および4は、この軸受に金型を装着した状態を示す断面図であって、図3は図2のB−B線断面に対応する断面図であり、図4は図2のA−A線断面に対応する断面図である。
また、一方の分割体61のつば部6cにはゲート6dが設けてある。このゲート6dはピンポイントゲートであり、図2に示すように、保持器4の環状部41の外周ラインに沿って、ころ列内のころ3の設置間隔に対応させた間隔で、ころ列内のころ3の数と同じ数だけ設けてある。そして、この分割体61を軸受に取り付ける際には、ゲート6dが、この分割体61を取り付ける側のころ列(ここでは図3および4の左側のころ列)で隣合うころ3の間となる位置に配置されるようにする。
また、この軸受は、保持器4が複列の全てのころ3を保持する一体型保持器であるため、高速・高荷重の使用条件下であってもころが各列毎に異なる動きをすることはない。そのため、分離型保持器の場合と比較して、高速・高荷重の使用条件下での信頼性が高いものとなる。
この自動調心ころ軸受(実施例1)と、全く同じ構成の図1の軸受に対して同じ潤滑剤含有ポリマを同じ空間に圧縮成形法により充填・固化させた軸受(比較例1)とを用いて、回転試験を行った。圧縮成形条件は上述の試験片作製の際と同じにした。
この結果から分かるように、実施例1の軸受は比較例1の軸受よりも著しく高い回転速度での使用が可能となる。
分離型の保持器を有する自動調心ころ軸受として、図6に示す構造のものを作製した。この保持器4は、ころ3を各列毎に保持するポケット43aを有する主部43と、これと一体に形成された内向きフランジ44および外向きフランジ45とで主に構成される。この保持器の詳細な構造に関しては特開平8−296653号公報に開示されている。また、この軸受の外輪2には油穴21が設けてある。
回転試験は、自動調心ころ軸受(型番22310:外径110×内径50×幅40)を用い、ラジアル荷重280kgfを負荷して行い、一定回転数で24時間連続して回転させた後に、潤滑剤含有ポリマに亀裂等の破損が発生するかどうかを調べた。回転数は600rpmから100rpmずつ上げていき、破損が発生した回転数を破損回転数として調べた。その結果、破損回転数は実施例2で1000rpm、比較例2で600rpmであった。
また、この実施形態2の軸受は、保持器4が各列毎にころ3を保持する分離型保持器であるため、実施例1と実施例2の結果の比較から分かるように、実施形態1の軸受と比較して使用可能な回転速度は低くなるが、保持器が分離型保持器であっても潤滑剤含有ポリマを射出成形法により充填・固化することによって、1000rpmでの使用が可能となる。
なお、前記各実施形態では自動調心ころ軸受について述べてあるが、本発明はこれに限定されず、一対の複列内輪と複列外輪との間に転動体が複列に配置されている複列転がり軸受であればいずれのものにも適用される。これらの例としては、自動調心機能のない複列ころ軸受、複列玉軸受等が挙げられる。
2 外輪
3 ころ(転動体)
4 保持器
5 潤滑剤含有ポリマ
6a 金型のゲート
6e 金型のランナ
7 案内輪
61 金型の分割体
62 金型の分割体
Claims (3)
- 一対の複列内輪および複列外輪と、複列配置されているころと、環状部と環状部から左右両側に櫛状に延びる保持部とからなり、複列の全てのころを保持する一体型保持器と、保持器の環状部の内側で内輪の2つの軌道の間となる位置に配置された、各列のころを案内する案内輪と、内輪の各軌道の外端部に形成された脱落防止つばと、を備え、内部空間に潤滑剤含有ポリマが充填されて固化されている複列転がり軸受の製造方法において、
潤滑剤含有ポリマとして、ポリオレフィン系樹脂と潤滑油とからなり、潤滑剤含有ポリマの全重量に対するポリオレフィン系樹脂の含有率は10〜50重量%であり、潤滑剤の含有率は90〜50重量%であるものを使用し、前記ポリオレフィン系樹脂は、低分子量ポリオレフィンを含まないか5重量%以下の割合で含有し、中分子量ポリオレフィンを8〜48重量%の割合で含有し、超高分子量ポリオレフィンを2〜15重量%の割合で含有し、
金型として、軸受の幅方向中心で2分割され、内輪と外輪の間に外側からころ列を支持するつば部を有し、一方の分割体のつば部のころ間となる部分にゲートを設けたものを用い、この金型を軸受に外嵌させた状態で、射出成形機のスクリューで溶融された材料をゲートから軸受空間内に導入することで、潤滑剤含有ポリマを射出成形法により、保持器の環状部と外輪との間の空間、内輪の脱落防止つばの内側面ところの外端面との間の空間、案内輪ところの内端面との間の空間、およびころの内端面と保持器の環状部との間の空間に充填させて固化することを特徴とする複列転がり軸受の製造方法。 - 請求項1の方法で製造され、一対の複列内輪および複列外輪と、複列配置されているころと、環状部と環状部から左右両側に櫛状に延びる保持部とからなり、複列の全てのころを保持する一体型保持器と、保持器の環状部の内側で内輪の2つの軌道の間となる位置に配置された、各列のころを案内する案内輪と、内輪の各軌道の外端部に形成された脱落防止つばと、を備え、保持器の環状部と外輪との間の空間、内輪の脱落防止つばの内側面ところの外端面との間の空間、案内輪ところの内端面との間の空間、およびころの内端面と保持器の環状部との間の空間に潤滑剤含有ポリマが充填されて固化されている複列転がり軸受。
- 請求項1の方法で製造され、環状部と環状部から左右両側に櫛状に延びる保持部とからなり、複列の全てのころを保持する一体型保持器と、保持器の環状部の内側で内輪の2つの軌道の間となる位置に配置された、各列のころを案内する案内輪と、内輪の各軌道の外端部に形成された脱落防止つばと、を備え、保持器の環状部と外輪との間の空間、内輪の脱落防止つばの内側面ところの外端面との間の空間、案内輪ところの内端面との間の空間、およびころの内端面と保持器の環状部との間の空間に潤滑剤含有ポリマが充填されて固化されていることを特徴とする自動調心ころ軸受。
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