JP4013016B2 - 潤滑剤供給組成物及びそれを充填した転がり軸受 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、予め潤滑を含有させた合成樹脂からなる潤滑剤供給組成物及びそれを充填した転がり軸受の改良に関する。
【0002】
【従来の技術】
一般に、転がり軸受の外輪、内輪、転動体及び保持器により形成される空間(以下、内部空間と呼ぶ)には、潤滑性を付与するために潤滑油やグリースが充填されている。しかし、これら潤滑油やグリースは液体または半固体状の物質であるため、軸受回転中に飛散したり流動化するのを防止するために必ずシール板等により密封されている。このため、小型の特殊軸受ではこれら潤滑剤やグリースを使用することが困難であった。
【0003】
そこで、潤滑剤を含有するポリマを軸受の内部空間に充填することが提案されており、例えば米国特許第3729415号、同3547819号、同3541011号の各明細書には、潤滑油を含有するポリエチレンからなる潤滑剤供給組成物が記載されている。また、特公昭63−23239号公報には、分子量が1×106 〜5×106 程度の超高分子量ポリエチレンに潤滑グリースを保持させてなる潤滑剤供給組成物が記載されている。
これらの潤滑剤供給組成物は、含有している潤滑剤(潤滑油やグリース)を徐々に滲み出すことにより近接する被潤滑部材(内輪や外輪、転動体、保持器)に潤滑剤を供給し、長期にわたる潤滑を維持する。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、前記の潤滑剤供給組成物では、ポリエチレン及び潤滑剤は共に熱伝導率が低く、特に潤滑剤供給組成物が軸受の内部空間に隙間無く充填される場合、軸受の回転に伴って発生する熱が放出されなくなる。近年では軸受を高速で回転させる傾向にあり、潤滑剤供給組成物はより高温になり、樹脂成分が軟化して械的強度が低下し、破損に至る可能性が高くなってきている。また、潤滑剤供給組成物は、高温になるほど含有する潤滑剤の放出量が多くなるため、早期に枯渇するという問題もある。
【0005】
本発明は上記の問題点を解決することを目的とし、即ち長期にわたる潤滑を確保できる潤滑剤供給組成物及びそれを充填した転がり軸受を提供することを目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】
上記の目的を達成するために、本発明は、潤滑剤を含有した状態で固形化した合成樹脂からなり、含有している潤滑剤を徐々に滲み出すことにより近接する被潤滑部材に潤滑剤を供給する潤滑剤供給組成物において、合成樹脂を全体の10〜47重量%、潤滑剤として潤滑油を全体の85〜50重量%、熱伝導率が 20 W/m・K以上である固体潤滑剤を全体の3〜25重量%の割合で含有することを特徴とする潤滑剤供給組成物を提供する。
また、同様の目的を達成するために、本発明は、外輪、内輪、転動体及び保持器からなる転がり軸受において、内輪と外輪との間に形成される空間に、上記潤滑剤供給組成物を充填したことを特徴とする転がり軸受を提供する。
【0007】
固体潤滑剤を含有させることにより、潤滑剤供給組成物全体としての熱伝導率が高まり、軸受の回転に伴って発生する熱を効果的に軸受外部に放熱する。特に、固体潤滑剤の中でも、その熱伝導率が20W/m・K以上のものを使用することがより効果的であることも同時に見い出した。
本発明はこのような知見に基づくものである。
【0008】
【発明の実施の形態】
以下、本発明に関して詳細に説明する。
本発明の潤滑剤供給組成物は、潤滑剤及び固体潤滑剤を含有した状態で固形化した合成樹脂からなる。潤滑剤、固体潤滑剤及び合成樹脂は特に制限されるのではないが、以下に好ましい例を説明する。
【0009】
本発明の潤滑剤供給組成物は、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブチレン、ポリメチルペンテン等の基本的に同じ化学構造を有するポリオレフィン系樹脂の群から選定された合成樹脂に、潤滑剤としてポリα−オレフィン油のようなパラフィン系炭化水素油、ナフテン系炭化水素油、鉱油、ジアルキルジフェニルエーテル油のようなエーテル油、フタル酸エステルのようなエステル油等の何れか単独若しくは混合油の形で混ぜて調製したものに、更に固体潤滑剤を配合した原料を、樹脂の融点以上で加熱して可塑化し、その後冷却することで固形状にしたものであり、潤滑剤の中に予め酸化防止剤、錆止め剤、摩耗防止剤、あわ消し剤、極圧剤等の各種添加剤を加えたものでもよい。
また、固体潤滑剤としては、熱伝導率が 20 W/m・K以上のものを用いる。具体的には黒鉛(グラファイト)(熱伝導率100〜150W/m・K)、窒化硼素(h−BN)(50〜85W/m・K)が好ましい。これらは、粒子状のほか、繊維状やウィスカー状で使用することができる。
【0010】
上記潤滑剤供給組成物の組成比は、全重量に対してポリオレフィン系樹脂10〜47重量%、潤滑剤85〜50重量%、固体潤滑剤3〜25重量%である。ポリオレフィン系樹脂が10重量%未満の場合は、あるレベル以上の硬さ・強度が得られず、軸受の回転などによって負荷がかかった時に初期の形状を維持するのが難しくなり、軸受の内部空間から脱着する等の不具合を生じる可能性が高くなる。一方、ポリオレフィン系樹脂が47重量%を越える場合は、相対的に潤滑剤の含有量が少なくなり、それだけ軸受への潤滑剤の供給が少なくなり、軸受の寿命が短くなる。また、固体潤滑剤が3重量%未満の場合は、潤滑剤供給組成物全体の熱伝導率を高める効果が少なく、それに対して25重量%を超えると、相対的に潤滑剤の含有量が少なくなり、それだけ軸受への潤滑剤の供給が少なくなり、軸受の寿命が短くなる。
【0011】
上記合成樹脂の群は、基本構造は同じでその平均分子量が異なっており、700 〜5×106 の範囲に及んでいる。使用に際しては、平均分子量700 〜1×104 のワックスに分類されるもの、平均分子量1×104 〜1×106 の比較的低分子量のもの、平均分子量1×106 〜5×106 の超高分子量のものを、単独で若しくは必要に応じて混合して用いる。
例えば、比較的低分子量のものと潤滑剤との組合わせによって、ある程度の機械的強度、潤滑剤供給能力、保油性を持つ潤滑剤供給組成物が得られる。また、この比較的低分子量のものの一部をワックスに分類されるものに置き換えると、ワックスに分類されるものと潤滑剤との分子量の差が小さいために潤滑剤との親和性が高くなり、結果として潤滑剤供給組成物の保油性が向上し、長期間にわたっての潤滑剤の供給が可能になる。但し、その反面機械的強度は低下する。ワックスとしては、ポリエチレンワックスのようなポリオレフィン系樹脂の他、融点が100 〜130 ℃以上の範囲にある炭化水素系のもの(例えば、パラフィン系合成ワックス)であれば使用できる。それに対して、比較的低分子量のものの一部を超高分子量のものに置き換えると、超高分子量のものと潤滑剤との分子量の差が大きいために潤滑剤との親和性が低くなり、結果として保油性が低下し、潤滑剤含有ポリマからの潤滑剤の滲み出しが速くなる。それによって、潤滑剤供給組成物から供給可能な潤滑剤の限界量に達する時間が短くなり、軸受の寿命が短くなる。ただし、機械的強度は向上する。
そこで、成形性、機械的強度、保油性、潤滑剤供給量のバランスを考慮すると、潤滑剤供給組成物の組成比をワックスに分類されるもの0〜5重量%、比較的低分子量のもの8〜45重量%、超高分子量のもの2〜15重量%で、3つの樹脂分の合計10〜47重量%とするのが実用上好適である。
【0012】
機械的強度の指標として、潤滑剤供給組成物の硬さ[HDA (スケールAを用いたデュロメータ硬さ)]が65〜85の範囲にあることが好ましく、70〜80の範囲にあることがより好ましい。硬さ[HDA ]が65未満の場合は、強度的に弱く軸受の回転によって破損する恐れがある。それに対して硬さ[HDA ]が85を越える場合は、転動体を拘束する力が大き過ぎ、それによって軸受のトルクが大きくなったり、軸受の回転による発熱が大きくなって軸受の温度が高くなる恐れがある。
潤滑剤供給組成物の機械的強度を向上させるため、上述のポリオレフィン系樹脂に、以下のような熱可塑性樹脂及び熱硬化性樹脂を添加してもよい。
熱可塑性樹脂としては、ポリアミド、ポリカーボネート、ポリブチレンテレフタレート、ポリフェニレンサルファイド、ポリエーテルスルホン、ポリエーテルエーテルケトン、ポリアミドイミド、ポリスチレン、ABS樹脂等の各樹脂を使用することができる。
熱硬化性樹脂としては、不飽和ポリエステル樹脂、尿素樹脂、メラニン樹脂、フェノール樹脂、ポリイミド樹脂、エポキシ樹脂等の各樹脂を使用することができる。
これらの樹脂は、単独または混合して用いてもよい。
【0013】
同じく機械的強度を向上させるためには、充填材を添加しても良い。例えば、炭酸カルシウムウィスカーや炭酸マグネシウムウィスカー、チタン酸カリウムウィスカー、ホウ酸アルミニウムウィスカー等の無機ウィスカー類、またガラス繊維や金属繊維等の無機繊維類及びこれらを布状に編組したもの、あるいはアラミド繊維やポリエステル繊維等の有機繊維類及びこれらを布状に編組したものを添加してもよい。
【0014】
また、ポリオレフィン系樹脂とそれ以外の樹脂とをより均一な状態で分散させるために、必要に応じて適当な相溶化剤を加えてもよい。
更に、ポリオレフィン系樹脂の熱による劣化を防止する目的で、N,N′−ジフェニル−p−フェニルジアミン、2,2′−メチレンビス(4−エチル−6−t−ブチルフェノール)等の老化防止剤、また光による劣化を防止する目的で、2−ヒドロキシ−4−n−オクトキシベンゾフェノン、2−(2′−ヒドロキシ−3′−t−ブチル−5′−メチル−フェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール等の紫外線吸収剤を添加してもよい。
【0015】
以上に挙げたポリオレフィン系樹脂、潤滑剤及び固体潤滑剤以外の添加剤の添加量は、添加剤全体として成形原料全量の20重量%以下であることが、潤滑剤の供給能力を維持する上で好ましい。
【0016】
本発明で用いることのできる合成樹脂としては、上記で説明したようなポリオレフィン系樹脂をベースとしたものの他、射出成形可能な熱可塑性樹脂であれば使用でき、その中で含油量を多くすることができるものとして例えば、ポリエステル系エラストマー等がある。
また、熱可塑性樹脂の他に、ポリウレタン、ポリウレアエラストマー等の熱硬化性樹脂も用いることができる。ポリウレタンの場合は、潤滑剤としてグリースを用いて、反応原料となる。イソシアネート基を含有するウレタンプレポリマーとアミン系硬化剤とをそれぞれあるいはどちらか一方をグリースに均一に混合した後、2つの混合物をさらに混合して軸受に充填し、必要に応じて加熱して反応させ、グリースを含有させた状態で硬化させる。ポリウレアの場合は、分子鎖にソフトセグメントを含有する芳香族ポリアミン化合物及び芳香族ジアミンの混合物からなるアミン成分を、それと相溶性のある潤滑油或いはその潤滑油を基油とするグリースと均一に混合した混合物に、更にポリイソシアナート成分を加えて混合し、これを充填後、必要に応じて加熱して反応させ、潤滑剤を含有させた状態で硬化させる。
【0017】
本発明はまた、上記の潤滑剤供給組成物を充填した各種の転がり軸受を提供する。以下にその例を示す。
例えば、図1は玉軸受を示す断面図であるが、玉軸受は内輪1と外輪2との間に保持器3を介して複数個の転動体である玉4を保持して構成されており、本発明においては、内輪1、外輪2、保持器3及び玉4で形成される空間に、上記した潤滑剤供給組成物5が充填されている。
この玉軸受では、潤滑剤供給組成物5から徐々に滲み出した潤滑剤が内輪1の軌道面、外輪2の軌道面、保持器3の内周面及び玉4の表面に供給されて長期にわたる潤滑が維持できるとともに、固体潤滑剤の伝熱作用により、回転により発生する熱が潤滑剤供給組成物5に溜まることも抑制できる。
【0018】
また、図2に示すような潤滑剤供給組成物を充填した自動調心ころ軸受10とすることもできる。
この自動調心ころ軸受10は、転動体であるころ14が調心可能な構造となっており、それに伴い軸受全体として調心可能な構造となっている。具体的に説明すると、自動調心ころ軸受10は内輪13と外輪12との間に2列に、かつ径方向に互い違いに配置された樽型のころ14を一体型に構成された保持器15により保持し、更に保持器15と内輪13との間にころ14を案内する案内輪16が該保持器15と同心状に配置されて構成されている。そして、図3に示すように、内輪13と外輪12との間に存在する空所、内輪13ところ14の外端面との間の間隙及びころ14の内端面と案内輪16との間の間隙には、潤滑剤供給組成物17がそれぞれ充填されている。
この自動調心ころ軸受10では、潤滑剤供給組成物17から徐々に滲み出した潤滑剤が内輪13の軌道面、外輪12の軌道面、保持器14の表面、ころ14の表面及び案内輪16の表面に供給されて長期にわたる潤滑が維持できるとともに、固体潤滑剤の伝熱作用により、回転により発生する熱が潤滑剤供給組成物17に溜まることも抑制できる。
【0019】
尚、潤滑剤供給組成物17の充填方法は特に制限されないが、下記に示す射出成形法を用いるのが好ましい。
射出成形に際して図4及び図5に示すように、左右に2分割された2つの分割体30,31で構成される金型が使用される。両分割体30,31には、外輪12を嵌め入れる凹部32と、内輪13を嵌め入れる凹部33と、内輪13と外輪12との間に外側から嵌まるつば部34とが形成されている。つば部34は、ころ14の外端面に沿った面と、内輪13の脱落防止つば19の周面に沿った面と、外輪12の内周面の軌道より外側となる面に沿った面とを有する。従って、軸受の側面から各分割体30,31のつば部34を、内輪13と外輪12との間に先端面がころ14の外端面に接触するまで嵌め入れることにより、つば部34の各面が軸受の対応する前記各面に当接し、凹部32に外輪12の外周面と側面が嵌め入れられ、凹部33に内輪13の内周面と側面が嵌め入れられるようになっている。
また、一方の分割体30のつば部34にはゲート35が設けてある。このゲート35はピンポイントゲートであり、保持器15の環状部の外周ラインに沿って、ころ列内のころ14の設置間隔に対応させた間隔で、ころ列のころ14の数と同じ数だけ設けてある。そして、この分割体30を軸受に取り付ける際には、ゲート35がこの分割体30を取り付ける側のころ列(ここでは、図中左側のころ列)で隣合うころ14の間となる位置に配置されるようにする。
【0020】
各ゲート35の基端は円板状のランナ36に接続してあり、金型のパーティングライン(P.L.)より外側の部分には、軸受の軸中心となる位置にスプル(図示せず)が設けてある。従って、射出成形機から金型のスプルに導入された溶融潤滑剤供給組成物17はランナ36内に入って円板状に広げられた後、全てのゲート35から軸受内に導入される。そして、溶融潤滑剤供給組成物17は軸受内を、図中矢印で示すように移動する。
即ち、溶融潤滑剤供給組成物17は、先ず図4に示されるように、ゲート35の先端から図中左側の列のころ14同士の間に入り、その一部は保持器15の左側の保持部15aと外輪12との間を移動して、保持器15の環状部と外輪12との間の空間Aに達する。また、一部は保持器15の保持部15aの外端面と金型のつば部34との間を移動し、その一部は内輪13の脱落防止つば19の内側面ところ14の外端面との間の空間Bに入り、それ以外は保持部15aと内輪13の軌道13aとの間を移動して案内輪16ところ14の内端面との間の空間Cに入る。
空間Aに達した溶融潤滑剤供給組成物17は、次に、図5に示されるように、図中右側の列のころ14同士の間に入り、保持器15の右側の保持部15bと外輪12との間を移動する。その一部は、保持部15bの外端面と金型のつば部34との間を移動して内輪13の脱落防止用つば19との間の空間Dに入る。それ以外は、保持部15bと内輪13の軌道13aとの間を移動して案内輪16ところ14の内端面との間の空間Eに入る。また、空間Aに達した溶融潤滑剤供給組成物17は、ころ14の内端面と保持器15の環状部との間の空間Fにも入る。上記した射出成形においては、例えば本出願人による特開平8−309793号公報に記載の射出成形機を好適に使用することができる。
【0021】
そして、このようにして射出成形を行った後に金型を外すことにより、図3に示されるように、軸受の内部空間、即ち前記各空間A〜F及び各列の隣り合うころ14同士の間に、潤滑剤供給組成物17が充填され固化された自動調心ころ軸受10が得られる。
尚、成形に先立ち、軸受を脱脂洗浄すること、並びに本出願人による特開平7−139551号公報に記載されているフッ素系離型剤を塗布しておくことが好ましい。
【0022】
また、図6に示すような潤滑剤供給組成物を充填したアンギュラ玉軸受40とすることもできる。
即ち、アンギュラ玉軸受40は、内輪41と外輪42との間に、所定の接触角をもって玉43を冠型の保持器44により保持して構成され、玉43の外側に潤滑剤供給組成物45が充填される。また、潤滑剤供給組成物45は、内輪41との間に間隙C1(例えば0.5mm )が形成されるように充填される。
このアンギュラ玉軸受40では、潤滑剤供給組成物45から徐々に滲み出した潤滑剤が内輪41の軌道面、外輪42の軌道面、保持器44の表面及び玉43の表面に供給されて長期にわたる潤滑が維持できるとともに、固体潤滑剤の伝熱作用により、回転により発生する熱が潤滑剤供給組成物45に溜まることも抑制できる。
【0023】
上記のアンギュラ玉軸受40は、図7に示されるように、治具A,Bを用いて作製される。治具A,Bの当て板50の内輪41または外輪42の側面に押し当てる側の面には、垂直に突起させた間隙成形用リング突起51を1個ずつ備えている。これらのリング突起51の突起長さLは、内輪41の外周面41aにおける端面(側面)から軌道溝41b側端までの長さと略同じである。また、間隙C1は、このリング突起51の厚さにより調整される。なお、当て板50は、間隙形成用リング突起51を突設した板に、平板を固定ねじ52で一体に連結して形成している。成形は、治具Bを下にして、未焼成の潤滑剤供給組成物45を充填し、加熱成形で行う。
【0024】
【実施例】
以下に実施例を挙げて本発明を更に説明する。但し、本発明は以下に限定されるものではない。
【0025】
(潤滑剤供給組成物の調製)
高密度ポリエチレン(比較的低分子量に分類)10重量%と、超高分子量ポリエチレン(超高分子量に分類)12.5重量%と、ポリエチレンワックス(ワックスに分類)2.5 重量%とからなる樹脂に、黒鉛粉末8重量%と鉱油67重量%とを混合して潤滑剤供給組成物Aを調製した。
また、潤滑剤供給組成物Aの黒鉛粉末を窒化硼素(h−BN)に代えた以外は同様にして潤滑剤供給組成物Bを調製した。
更に、高密度ポリエチレン(比較的低分子量に分類)10重量%と、超高分子量ポリエチレン(超高分子量に分類)12.5重量%と、ポリエチレンワックス(ワックスに分類)2.5 重量%とからなる樹脂と、鉱油75重量%を混合して潤滑剤供給組成物Cを調製した。
【0026】
(熱伝導率測定)
上記の潤滑剤供給組成物A、B及びCを溶融し、所定の型に充填した後冷却して試験片を成形した。そして、各試験片についてレーザーフラッシュ法により室温で熱伝導率を測定した。
測定の結果、潤滑剤供給組成物Aの試験片は0.35W/m・Kであり、潤滑剤供給組成物Bの試験片は0.33W/m・Kであり、潤滑剤供給組成物Cの試験片は0.21W/m・Kであった。このことから、熱伝導率が20W/m・K以上の固体潤滑剤を含有させることにより、潤滑剤供給組成物の熱伝導率が大幅に高まることが確認された。
【0027】
(軸受回転試験)
また、自動調心ころ軸受22331 を脱脂洗浄した後、特開平7−139551号公報に記載されているフッ素系離型剤を塗布し、図4,5に示すようにこの軸受を金型中で保持した状態で、上記の各潤滑剤供給組成物A、B及びCを射出成形(インサート成形)して試験軸受を作製した。尚、潤滑剤供給組成物の射出は片側から行い、ゲートは各ころの間に設けた(ピンポイントゲート)。また、射出成形機は、特開平8−309793号公報に記載されているもの(ホッパー部を改良)を用いた。
そして、上記各試験軸受について、Fr=500 kgf の負荷を与え、回転数を300rpmから100rpmずつ上げていき、潤滑剤供給組成物が溶融等により破損するまでの回転数を調べた。その際、回転数の上昇毎に3〜4時間回転停止し、また各回転数で20〜24時間保持した。その結果、潤滑剤供給組成物Aを充填した試験軸受は1200 rpmまで、潤滑剤供給組成物Bを充填した試験軸受は1100 rpmまで破損しなかったのに対して、潤滑剤供給組成物Cを充填した試験軸受は900rpmで破損した。
また、回転数の上昇毎に軸受外輪温度を測定した。結果を図8に示すが、図示されるように、固体潤滑剤の熱伝導率が高いものほど温度上昇の勾配が小さくなっており、それに伴って破損に至るまでの回転数も高くなっている。
これらの結果から、固体潤滑剤を含有することにより、潤滑剤供給組成物の熱伝導性が改善されて使用可能な回転数が向上することが確認された。
【0028】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明の潤滑剤供給組成物は放熱効果が高く、それを充填した転がり軸受は、軸受の回転に伴う発熱による破損が抑えられ、長期にわたり良好な回転が確保される。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る潤滑剤供給組成物を充填した転がり軸受の一実施形態(玉軸受)を示す要部断面図である。
【図2】本発明に係る潤滑剤供給組成物を充填した転がり軸受の他の実施形態(自動調心ころ軸受)において、潤滑剤供給組成物を充填する前の状態を示す要部断面図である。
【図3】図2に示した自動調心ころ軸受において、潤滑剤供給組成物を充填した後の状態を示す要部断面図である。
【図4】射出成形法による潤滑剤供給組成物の充填過程を説明するための図である。
【図5】射出成形法による潤滑剤供給組成物の充填過程を説明するための図である。
【図6】本発明に係る潤滑剤供給組成物を充填した転がり軸受の他の実施形態(アンギュラ玉軸受)を示す要部断面図である。
【図7】図6に示したアンギュラ玉軸受の作製過程を説明するための図である。
【図8】実施例の軸受回転試験において、軸受回転数毎に外輪温度を測定した結果を示すグラフである。
【符号の説明】
1 内輪
2 外輪
3 保持器
4 玉
5 潤滑剤供給組成物
10 自動調心ころ軸受
12 外輪
13 内輪
14 ころ
15 保持器
17 潤滑剤供給組成物
30,31 金型分割体
40 アンギュラ玉軸受
41 内輪
42 外輪
43 玉
44 保持器
45 潤滑剤供給組成物

Claims (4)

  1. 潤滑剤を含有した状態で固形化した合成樹脂からなり、含有している潤滑剤を徐々に滲み出すことにより近接する被潤滑部材に潤滑剤を供給する潤滑剤供給組成物において、合成樹脂を全体の10〜47重量%、潤滑剤として潤滑油を全体の85〜50重量%、熱伝導率が 20 W/m・K以上である固体潤滑剤を全体の3〜25重量%の割合で含有することを特徴とする潤滑剤供給組成物。
  2. 前記合成樹脂がポリオレフィン系樹脂であることを特徴とする請求項1記載に潤滑剤供給組成物。
  3. 前記固体潤滑剤が黒鉛または窒化硼素であることを特徴とする請求項1または2記載の潤滑剤供給組成物。
  4. 外輪、内輪、転動体及び保持器からなる転がり軸受において、内輪と外輪との間に形成される空間に、請求項1〜3の何れか1項に記載の潤滑剤供給組成物を充填したことを特徴とする転がり軸受
JP15394799A 1999-06-01 1999-06-01 潤滑剤供給組成物及びそれを充填した転がり軸受 Expired - Fee Related JP4013016B2 (ja)

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