JP2004205016A - 直動装置 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】本発明の直動装置10は、外方部材12と、外方部材12に隙間を介して対向する内方部材11と、外方部材12と内方部材11との間に転動自在に配設され、内方部材11に対して外方部材12を相対移動させる複数の転動体と、隙間の開口をシールする接触シール装置18とを備えている。そして、接触シール装置18の少なくとも内方部材11との接触部分の表面に硬質炭素皮膜を形成した。
【選択図】 図1
Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、直動案内装置に用いられるリニアガイド装置や直動駆動装置に用いられるボールねじ装置等の直動装置に使用する接触シール装置の改良に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、マシニングセンタ等の工作機械や産業用ロボットでは、回転運動の直進運動への変換や、ワークテーブル等の直進運動を円滑に行わせるために、リニアガイド装置が多用されている。
【0003】
リニアガイド装置は、外面にレール側転動体転動溝を有して軸方向に延びる内方部材である案内レールと、案内レールを跨いで組み付けられた外方部材であるスライダとを備える。
【0004】
スライダは、スライダ本体と、その両端部に取付けられたエンドキャップとからなり、スライダ本体は、両袖部の内側面に案内レールのレール側転動体転動溝に対向するスライダ側転動体転動溝を有するとともに、袖部の肉厚部分を軸方向に貫通する転動体戻し路を有している。
【0005】
エンドキャップは、スライダ本体のスライダ側転動体転動溝と平行な転動体戻し路と両端に配された湾曲路とにより転動体の循環経路が形成される。そして、循環経路内に例えば鋼球からなる複数の転動体が装填されている。
【0006】
案内レールに組み付けられたスライダは、対向する両転動体転動溝内の転動体の転動を介し案内レールに沿って滑らかに往復移動する。その際、転動体はスライダ内の循環経路を無限に循環する。
【0007】
そして、スライダには、案内レールとの間の隙間の開口を密封する接触シール装置として、各エンドキャップの端面において案内レールに対してマイナスの隙間を形成する接触シールとして機能するサイドシールと、各エンドキャップの下面において案内レールに対してマイナスの隙間を形成する接触シールとして機能するアンダーシールとが装着されている。サイドシール、アンダーシールは、一般的に、鋼板等の補強部材にNBR(アクリロニトリルブタジエンゴム)等のゴムを一体化したものである。特に、耐薬品性や耐熱性が必要とされる場合は、FKM(フッ素ゴム)が使用される。(例えば、特許文献1参照)
【0008】
一方、ボールねじ装置は、ねじ軸の外周面に設けた螺旋状の軸側ねじ溝と、ナット体の内周面に設けた螺旋状のナット側ねじ溝との間に装填された複数の転動体であるボールを介して、ねじ軸またはナット体の回転をナット体またはねじ軸における軸方向の往復移動に伴う変位に変換する構造をもつ。
【0009】
ボールねじ装置では、ナット体の両端に接触シール装置として、例えばプラスチック製シールを装着することにより、外部からの異物の侵入や潤滑剤の外部への飛散を防止する。
【0010】
接触シール装置は、一般的に、ポリアセタール樹脂等の樹脂材でもってリング形状に形成され、その内周面にねじ軸の軸側ねじ溝に嵌合する凸部を有するとともに、そのリング形状を切断する径方向の切欠き(切割)が設けてある。そして、その切割を開き、リング形状を拡開させてねじ軸に嵌め合わせた後に、ナット体の端部外周面から取り付けねじをねじ込み、接触シール装置の外径面を内側に圧迫することにより固定されている。
【0011】
このようなボールねじ装置においても、シール性の向上を目的として、ねじ軸の回転に併せてリップ先端部がねじ軸との接触状態を常に維持するための開発が進められている。
【0012】
【特許文献1】
特開2002−168248号公報
【0013】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記のリニアガイド装置やボールねじ装置に用いられている接触シール装置には、以下のような問題点がある。
すなわち、外方部材に相当するスライダやナット体が、内方部材に相当する案内レールやねじ軸に対して往復運動することによって、両端に配設されている接触シール装置が内方部材に押し付けられるとともに屈曲運動を繰り返し行い、その結果、接触部に摩耗が生じ、シール性が低下する。摩耗の進行は、相手材が一定位置で回転するように使用される転がり軸受や軸シールに比べて、屈曲運動を伴う分、かなり早い傾向にある。そのため、特にゴム表面に表面処理を施さないと、ゴム材料自体の耐摩耗性、耐屈曲疲労性やシールの接触部の形状、締め代に起因して、摩耗の発生速度が決まってくる。
また、直動装置の使用される環境としては、溶接粉や木屑等の異物が多い箇所も想定され、その場合、ゴムの摩耗がさらに促進される。
このような現象によって、接触ゴムシール装置のリップ部が摩耗することによって、締め代が零(0)以下になり、シール性が著しく低下する。それによって、外方部材内に異物が徐々に侵入し、最終的にロックして往復運動ができなくなる、という最悪の状況も考えられる。
これに対し、シール性の向上を狙って、接触している部分における締め代を大きくすると、ゴム自体の摺動性があまり良くないため、往復運動時の摺動抵抗が高くなり、それが原因で、直動装置自体の作動性を低下させることにもなりかねない。
【0014】
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであり、その目的は、隙間の開口部を密封する接触シール装置の少なくとも内方部材との接触部分の表面に低摩擦で耐摩耗性に優れた硬質炭素皮膜を形成することによって、異物がかかりうる環境下で使用しても高いシール性を維持することができる長寿命な直動装置を提供することにある。
【0015】
【課題を解決するための手段】
本発明の請求項1記載の直動装置は、外方部材と、該外方部材に隙間を介して対向する内方部材と、前記外方部材と前記内方部材との間に転動自在に配設され、前記内方部材に対して前記外方部材を相対移動させる複数の転動体と、前記隙間の開口をシールする接触シール装置とを備えた直動装置において、前記接触シール装置の少なくとも前記内方部材又は前記外方部材との接触部分の表面に硬質炭素皮膜を形成したことを特徴とする。
【0016】
前記構成の直動装置によれば、少なくとも内方部材又は外方部材との接触部分の表面に硬質炭素皮膜が形成された接触シール装置が用いられる。
したがって、外方部材に相当するスライダやナット体が、内方部材に相当する案内レールやねじ軸に対して往復運動することによって、両端に配設されている接触シール装置が内方部材に押し付けられるとともに屈曲運動を繰り返し行っても、接触部に摩耗が生ずることがなく、シール性が低下することがない。
また、直動装置の使用される環境として、溶接粉や木屑等の異物が多い箇所であっても、接触シール装置の摩耗が抑制されるので、シール性の低下がなくなり、外方部材内に異物が徐々に侵入し、最終的にロックして往復運動ができなくなる、という状況になりえない。その結果、異物がかかりうる環境下で使用しても高いシール性を維持することができる長寿命な直動装置が得られる。
【0017】
請求項2記載の直動装置においては、前記接触シール装置は、芯材に弾性部材が一体成形されてなり、前記硬質炭素皮膜は、前記弾性部材の内方部材との接触部分の表面に形成されていることを特徴とする請求項1に記載の直動装置である。
【0018】
前記構成の直動装置によれば、芯材に弾性部材が一体成形された接触シール装置において、硬質炭素皮膜が、弾性部材の内方部材との接触部分の表面に形成されれば、弾性部材に有し、表面に硬質炭素皮膜が形成されたリップ部が、少なくとも内方部材に接触する。
したがって、リップ部に摩耗が生ずることがなく、シール性が低下することがないとともに、溶接粉や木屑等の異物が多い箇所で使用されても、リップ部の摩耗が抑制されるので、シール性の低下がなくなり、それによって、外方部材中に異物が徐々に侵入し、最終的にロックして往復運動ができなくなる、という状況になりえない。その結果、異物がかかりうる環境下で使用しても高いシール性を維持することができる長寿命な直動装置が得られる。
【0019】
請求項3記載の直動装置においては、前記直動装置には、前記接触シール装置に近接して、潤滑剤供給部材が配設されていることを特徴とする請求項1または2に記載の直動装置である。
【0020】
前記構成の直動装置によれば、接触シール装置に近接して、潤滑剤供給部材が配設されれば、保油性が向上し、長期間に渡る潤滑剤の供給が可能となるため、リップ部の摩耗が抑制され、高いシール性を長期に渡って維持することができる。
【0021】
請求項4記載の直動装置においては、前記外方部材がスライダであって、前記内方部材がレール部材であり、前記接触シール装置に有するリップ部に突部が形成されていることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の直動装置である。
【0022】
前記構成の直動装置によれば、外方部材がスライダであって、内方部材がレール部材であるリニアガイド装置に用いられて、接触シール装置に有するリップ部に突部が形成されれば、突部を含めたリップ部の摩耗が抑制され、高いシール性を長期に渡って維持することができる。
【0023】
請求項5記載の直動装置においては、前記外方部材がナット体であって、前記内方部材がねじ軸であり、前記接触シール装置が、前記ねじ軸に対して所定の締め代で組み付けられていることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の直動装置である。
【0024】
前記構成の直動装置によれば、外方部材がナット体であって、内方部材がねじ軸であるボールねじ装置に用いられて、接触シール装置が、ねじ軸に対して所定の締め代で組み付けられれば、接触シール装置のシール片に有するリップ部の摩耗が抑制され、高いシール性を長期に渡って維持することができる。
【0025】
本発明の直動装置においては、硬質炭素皮膜が形成されることにより、耐摩耗性が向上するのはもちろんのこと、摺動性も向上し、接触シール装置の摩擦力(シールトルク)の低減にもつながる。
また、炭素(C)及び水素(H)のみからなる硬質炭素皮膜はダイヤモンドライクカーボン(DLC)とも呼ばれ、接触シール装置に有するリップ部の近傍に存在するグリース(潤滑剤)の基油が、炭化水素系、例えば、鉱油、ポリα−オレフィン油の場合、構造が近似していることから、濡れ性が改善され、リップ部と案内レール等の内方部材との良好な潤滑状態が保たれる。それによって、接触シール装置の摩擦力が安定し、硬質炭素皮膜自体の摩耗も最低限に抑制される。
【0026】
硬質炭素皮膜を形成する方法としては、炭化水素ガスをパルス的(断続的)に発生させたプラズマで分解して成膜するプラズマCVD法、炭素または炭化水素イオンを用いるイオンビーム蒸着法、プラズマイオン注入法等を挙げることができる。
この中でゴム表面にも処理が可能な方法としては、プラズマCVD法、プラズマイオン注入法があり、これら2つの方法のなかでは、プラズマイオン注入法によって得られた硬質炭素皮膜が、ゴム表面と最表面の硬質炭素皮膜との間に、つなぎの役割をする傾斜組成層が形成され、ゴムに対して優れた密着性を有するため、特に好ましい。
【0027】
プラズマイオン注入法における皮膜プロセスの一例としては、第1ステージで、アルゴン(Ar)とメタン(CH4)の混合ガスプラズマで中電圧パルス(−5kV〜−10kV)で表面スパッタを行い、ゴム表面のクリーニングを行う。第2ステージでは、比較的高電圧(−15kV〜−35kV)領域を使ってメタンガスプラズマによるイオン注入で0.1μm程度のカーボンミキシング傾斜層を形成する。次に、注入ステージと同じパルス電圧を用いて、先に注入したカーボン単原子とアセチレンガスに代表される直鎖状炭化水素とバインディングを行う。
更に、次の硬質炭素皮膜の皮膜ステージでは、イオン加速電圧を低く(−2kV〜−5kV)するとともに、プラズマガス圧を高く(0.2〜2Pa)し、パルス繰り返し数を可能な限り高く(2000〜10000pps)とり、成膜速度を得るようにする。更に必要に応じて、最終ステージにおいて、窒素(N)やカーボン(C)などのイオン注入や、アルゴン(Ar)による表面トリートメントを行う。
【0028】
硬質炭素皮膜の膜厚は、0.5〜10μm、好ましくは、1〜5μmが望ましい。更に、硬質炭素皮膜の成膜時間やガス圧のコントロール等からは、膜厚を1〜3μmとすることが好ましい。膜厚が0.5μmよりも薄い場合は、部分的に下地表面が露出し、耐摩耗性等の改善が不十分となり好ましくない。
また、それに対して、膜厚が10μmよりも厚くなると、硬質炭素皮膜の内部応力が増大して自己破壊が発生しやすくなり、結果的に、耐摩耗性等の改善効果が長続きしなくなって好ましくない。
【0029】
また、接触シール装置に有するリップ部を形成するゴム材料は、硬質炭素皮膜が形成可能であれば、特に限定されないが、本発明に係る接触シール装置が使用される環境から、耐熱性、耐水性、耐薬品性等を考慮して適宜選択されるのが好ましい。
【0030】
また、硬質炭素皮膜を形成した接触シール装置を備えた直動装置には、接触シール装置に近接して、潤滑剤含有ポリマからなる潤滑剤供給部材を配設するのが好ましい。潤滑剤含有ポリマは、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブチレン、ポリメチルペンテン等の基本的に同じ化学構造を有するポリオレフィン系樹脂の郡から選定された合成樹脂に、潤滑剤としてポリα−オレフィン油のようなパラフィン系炭化水素油、ナフテン系炭化水素油、鉱油、ジアルキルジフェニルエーテル油のようなエーテル油、フタル酸エステルのようなエステル油等のいずれか単独若しくは混合油の形で混ぜて調製した原料を、樹脂の融点以上で加熱して可塑化し、その後、冷却することで固形状にしたものであり、潤滑剤の中に予め酸化防止剤、錆止め剤、摩耗防止剤、あわ消し剤、極圧剤等の各種添加剤を加えたものでもよい。
【0031】
潤滑剤含有ポリマの組成化は、全重量に対してポリオレフィン系樹脂10〜50%、潤滑剤90〜50重量%である。ポリオレフィン系樹脂が10重量%未満の場合は、あるレベル以上の硬さ・強度が得られず、直動装置の稼動によって負荷がかかった時に破損等の不具合を生じる可能性が高くなる。
また、ポリオレフィン系樹脂が50重量%を越える場合(つまり、潤滑剤が50重量%未満の場合)は、リップ部への潤滑剤の供給が少なくなり、リップ部の摩擦低減効果が少なくなる。
【0032】
合成樹脂の郡は、基本構造は同じで、その平均分子量が異なっており、700〜5×106の範囲に及んでいる。平均分子量700〜1×104というワックス(ex ポリエチレンワックス)に分類されるものと、平均分子量1×104〜1×106という比較的低分子量のものと、平均分子量1×106〜5×106という超分子量のものとを、単独若しくは必要に応じて混合して用いる。
比較的低分子量のものと潤滑剤との組合せによって、ある程度の機械的強度、潤滑剤供給能力、保油性をもつ潤滑剤含有ポリマが得られる。この中の比較的低分子量のものの一部を、ワックスに分類されるものに置き換えると、ワックスに分類されるものと潤滑油との分子量の差が小さいために、潤滑剤との親和性が高くなり、結果として潤滑剤含有ポリマの保油性が向上し、長期間に亘っての潤滑剤の供給が可能になる。ただし、その反面、機械的強度は低下する。
【0033】
ワックスとしては、ポリエチレンワックスのようなポリオレフィン系樹脂の他、融点が100〜130℃以上の範囲にある炭化水素系のもの(ex パラフィン系合成ワックス)であれば使用できる。それに対して、超高分子量のものに置き換えると、超高分子量のものと潤滑剤との分子量の差が大きいために潤滑剤との親和性が低くなり、結果として保油性が低下し、潤滑剤含有ポリマからの潤滑剤の滲み出しが速くなる。それによって、潤滑剤含有ポリマから供給可能な潤滑剤量に達する時間が短くなり、寿命が短くなる。
ただし、機械的強度は向上する。成形性、機械的強度、保油性、潤滑剤供給量のバランスを考慮すると、潤滑剤含有ポリマの組成比は、ワックスに分類されるもの0〜5重量%、比較的低分子量のもの8〜48重量%、超高分子量のもの2〜15重量%、3つの樹脂分の合計10〜50重量%(残りが潤滑剤90〜50重量%)が好適である。
【0034】
潤滑剤含有ポリマの機械的強度を向上させるため、上述のポリオレフィン系樹脂に、以下のような熱可塑性樹脂及び熱硬化性樹脂を添加したものでも良い。熱可塑性樹脂としては、ポリアミド、ポリカーボネート、ポリブチレンテレフタレート、ポリフェニレンサルファイド、ポリエーテルスルホン、ポリエーテルエーテルケトン、ポリアミドイミド、ポリスチレン、ABS樹脂等の各樹脂を使用することができる。
【0035】
熱硬化性樹脂としては、不飽和ポリエステル樹脂、尿素樹脂、メラニン樹脂、フェノール樹脂、ポリイミド樹脂、エポキシ樹脂等の各樹脂を使用することができる。これらの樹脂は、単独または混合して用いても良い。
更に、ポリオレフィン系樹脂とそれ以外の樹脂とを、より均一な状態で分散させるために、必要に応じて適当な相溶化剤を加えても良い。
【0036】
また、機械的強度を向上させるために、充填剤を添加しても良い。例えば、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、チタン酸カリウムウィスカーやホウ酸アルミニウムウィスカー等の無機ウィスカー類、或いはガラス繊維や金属繊維等の無機繊維類及びこれらを布状に編組したもの、また有機化合物では、カーボンブラック、無鉛粉末、カーボン繊維、アラミド繊維やポリエステル繊維等を添加しても良い。
【0037】
更に、ポリオレフィン系樹脂の熱による劣化を防止する目的で、N,N‘−ジフェニル−P−フェニルジアミン、2,2‘−メチレンビス(4−エチル−6−t−ブチルフェノール)等の老化防止剤、また光による劣化を防止する目的で、1−ヒドロキシ−4−n−オクトキシベンゾフェノン、2−(2‘−ヒドロキシ−3‘−t−ブチル−5’−メチル−フェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール等の紫外線吸収剤を添加しても良い。
【0038】
以上の全ての添加剤(ポリオレフィン系樹脂+潤滑剤以外)の添加量としては、添加剤全体として、成形原料全量の20重量%以下であることが、潤滑剤の供給能力を維持する上で好ましい。
【0039】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の直動装置の実施形態を図1〜図7に基づいて詳細に説明する。
図1は本発明の第1実施形態に係るリニアガイド装置(直動装置)の斜視図、図2は図1に示すリニアガイド装置に用いる接触シール装置のリップ部の拡大断面図、図3は本発明の第2実施形態に係るリニアガイド装置(直動装置)の分解斜視図、図4は本発明の第3実施形態に係るボールねじ装置(直動装置)の一部破断平面図、図5は図4の側面図、図6は図4に示すボールねじ装置におけるねじ軸と接触シール装置との接触部分の説明図、図7は図4に示すボールねじ装置における接触シール装置のねじ軸との当接部分の拡大図である。
【0040】
第1実施形態のリニアガイド装置10は、軸方向に沿って延びる案内レール(内方部材)11上に断面略コ字状のスライダ(外方部材)12が所定の隙間を介して軸方向に相対移動可能に跨架されている。案内レール11の上面11aと両側面11bとの境部には、第1転動体転動溝13が軸方向に沿って形成され、案内レール11の両側面11bの中間位置には、第2転動体転動溝14が軸方向に沿って形成されている。
【0041】
スライダ12は、スライダ本体15と、該スライダ本体15の軸方向両端部に着脱可能に取り付けられたエンドキャップ16,16とを備えており、スライダ本体15の両袖部17の内側のコーナ部には、案内レール11の第1転動体転動溝13に対向する直線状の第1転動体転動溝(図示せず。)が形成され、両袖部17の内側面の中央部には案内レール11の第2転動体転動溝14に対向する直線状の第2転動体転動溝(図示せず。)が形成されている。案内レール11の各転動体転動溝13,14とこれらに対向するスライダ本体15の両袖部17の各転動体転動溝とによって転動体の転動路が形成されている。
また、スライダ本体15の両袖部17の肉厚部分には軸方向に貫通する転動体通路(図示せず。)が片側2本ずつ上下方向に互いに離間して形成されている。
【0042】
エンドキャップ16には、前記転動体転動路とこれに平行な前記転動体循環通路とを連通する半円弧状に湾曲した転動体循環R部(図示せず。)が形成されており、前記転動体転動路、前記転動体通路及び前記転動体循環R部によって、転動体を無限に循環させる転動体無限循環軌道を構成している。この転動体無限循環軌道には、例えば鋼球からなる多数の転動体(図示せず。)が転動自在に装填されており、スライダ12は、前記転動体無限循環軌道の前記転動体転動路内の転動体の転動を介して案内レール11の軸方向に沿って滑らかに移動するようになっている。
【0043】
スライダ12には、案内レール11との間に形成される隙間の開口をシールする防塵用の接触シール装置18が取り付けられている。接触シール装置18は、スライダ12の軸方向端部側の隙間開口をシールすべくスライダ12の軸方向の両端部(エンドキャップ16の外面側)に装着されていて案内レール11に対してマイナス隙間の接触シールであるサイドシール部材と、スライダ12の下面側のすき間開口をシールすべくスライダ12の下面に装着されたアンダーシール部材とを備えている。
サイドシール部材及びアンダーシール部材には、案内レール11及びスライダ12に当接する各リップ部を有する。接触シール装置18には、前記転動体無限循環軌道に潤滑剤を供給するためのグリースニップル19が取り付けられている。
【0044】
サイドシール部材及びアンダーシール部材は共に所定のゴム材料組成物(弾性部材)で構成されており、SECC材(亜鉛めっき鋼板)等の芯金(補強部材)と加硫接着により一体化されている。そして、接触シール装置18のサイドシール部材及びアンダーシール部材の表面に、硬質炭素皮膜が形成されている。硬質炭素皮膜は、炭素(C)及び水素(H)のみからなる硬質炭素皮膜であって、ダイヤモンドライクカーボン(DLC)とも呼ばれる。
【0045】
サイドシール部材及びアンダーシール部材に対する硬質炭素皮膜の形成に際しては、まず、芯金部分にマスキングを施した後、真空容器内に入れて、3Dプラズマパック表面処理装置を用い、窒素によるプラズマイオンスパッタクリーニング、次にプラズマによるカーボンイオン注入を行い、基材と硬質炭素皮膜の剥離強度を向上されるためのカーボンミキシング傾斜層を0.1μm形成し、ゴム部分の外表面に1μmの硬質炭素皮膜を形成した。
【0046】
図2に示すように、接触シール装置18を構成するサイドシール部材と案内レール11とが摺接するリップ部20には、3個の突部20a,20a,20aが形成されており、これら突部20a,20a,20aがリップ部20の先端部において案内レール11に摺接することによって、シール性の向上が図られる。リップ部20は、案内レール11に対して200μmの締め代をもって組み付けられている。
【0047】
第1実施形態のリニアガイド装置10によれば、案内レール11及びスライダ12に接触するサイドシール部材及びアンダーシール部材の表面に硬質炭素皮膜が形成された接触シール装置18が用いられる。
したがって、スライダ12が、案内レール11に対して往復運動することによって、両端に配設されている接触シール装置18,18は案内レール11に押し付けられるとともに屈曲運動を繰り返し行っても、リップ部20に摩耗が生ずることがなく、シール性が低下することがない。
また、溶接粉や木屑等の異物が多い環境内で用いられても、接触シール装置18,18におけるサイドシール部材及びアンダーシール部材の摩耗が抑制されるので、シール性の低下がなくなり、スライダ内に異物が徐々に侵入し、最終的にロックして往復運動ができなくなるという状況になりえない。その結果、異物がかかりうる環境下で使用しても高いシール性を維持することができる長寿命なリニアガイド装置10が得られる。
【0048】
次に、本発明の第2実施形態に係るリニアガイド装置について説明する。なお、第2実施形態は、上記第1実施形態のリニアガイド装置の接触シール装置に近接して潤滑剤含有ポリマからなる潤滑剤供給部材を設けた点以外は第1実施形態と同一であるので、相違する部分についてのみ説明し、第1実施形態と重複する部分については、図中に同一符号を付してその説明を省略する。
【0049】
図3に示すように、第2実施形態のリニアガイド装置30では、スライダ12のスライダ本体15の軸方向の両端部に固着されているエンドキャップ16の外面に、エンドキャップ16に近い側から順番に補強板31、潤滑剤含有ポリマからなる潤滑剤供給部材32及び接触シール装置33が互いに重なり合った状態で固定されており、接触シール装置33に有するサイドシール部材及びアンダーシール部材の表面に、硬質炭素皮膜が形成されている。
硬質炭素皮膜は、炭素(C)及び水素(H)のみからなる硬質炭素皮膜であって、ダイヤモンドライクカーボン(DLC)とも呼ばれる。
【0050】
サイドシール部材及びアンダーシール部材に対する硬質炭素皮膜の形成は、第1実施形態と同様にして、芯金部分にマスキングを施した後、真空容器内に入れて、3Dプラズマパック表面処理装置を用い、窒素によるプラズマイオンスパッタクリーニング、次にプラズマによるカーボンイオン注入を行い、基材と硬質炭素皮膜の剥離強度を向上されるためのカーボンミキシング傾斜層を0.1μm形成し、ゴム部分の外表面に1μmの硬質炭素皮膜を形成した。
【0051】
補強板31はエンドキャップ16の外形形状に対応した略コ字状の鋼板で形成されており、案内レール11に対して非接触になっている。接触シール装置33と補強板31との間に挟まれる潤滑剤供給部材32についても、エンドキャップ16の外形形状に対応した略コ字状をなしている。そのコ字状の内側面は、案内レール11の上面11a及び両側面11bに非接触又は少なくとも一部分が摺接可能(潤滑剤供給部材32と案内レール11との隙間は、0〜0.2mm)になっている。
【0052】
本実施形態では、潤滑剤供給部材32を構成する潤滑剤含有ポリマの組成を、超高分子量ポリエチレン(超高分子量のもの)10重量%、高密度ポリエチレン(比較的低分子量のもの)20重量%、パラフィン系鉱油70重量%とし、該潤滑剤含有ポリマを射出成形により作成している。
【0053】
潤滑剤供給部材32には、潤滑剤供給部材32をスライダ本体15に固定する際の止めねじ34,34の挿通孔32a,32a、及びグリースニップル19の挿通孔32bが形成されている。挿通孔32a,32a及び32bには、止めねじ34,34が挿通するスリーブ35,35、及びグリースニップル19が挿通するスリーブ36が嵌め込まれるようになっている。
スリーブ35,35,36の軸方向長さは潤滑剤供給部材32の厚さと同一か若干長く(〜0.2mm程度)され、スリーブ35,35の外径は、挿通孔32a,32aに対応して形成された接触シール装置33の挿通孔33a,33a及び補強板31の挿通孔31a,31aよりも大径とされている。スリーブ36の外径は、接触シール装置33に形成された挿通孔33b,潤滑剤供給部材32の挿通孔32b,補強板31に形成された挿通孔31bよりも小径とされている。
【0054】
本実施形態では、止めねじ34,34を、接触シール装置33の挿通孔33a,33a、スリーブ35,35及び補強板31の挿通孔31a,31aに挿通して、接触シール装置33、潤滑剤供給部材32及び補強板31をエンドキャップ16と共にスライダ本体15の端面にねじ止め固定した際に、該ねじ止めによる締め付け力が接触シール装置33と補強板31との間に挟み込まれた潤滑剤供給部材32に作用するのを防止することができる。その結果、潤滑剤供給部材32の自己収縮作用が妨げられないようにすることができる。
【0055】
本実施形態のリニアガイド装置30においては、リニアガイド装置30が駆動されると、潤滑剤供給部材32が案内レール11に非接触又は接触した状態でスライダ12と共に案内レール11に沿って移動して潤滑剤供給部材32から潤滑剤が徐々に滲み出す。そして、滲み出した潤滑剤が潤滑剤供給部材32に近接配置された接触シール装置33のリップ部に供給されるため、接触シール装置33のリップ部における安定した潤滑を長期間に渡って維持することができる。
【0056】
また、潤滑剤供給部材32を案内レール11に接触させる場合には、案内レール11の表面を介して接触シール装置33のリップ部及びスライダ12内の転動体に潤滑剤が供給されるため、リップ部への潤滑剤の供給をより安定的なものとすることができると共に、スライダ12内の転動体に自己潤滑性を付与することができる。
【0057】
次に、本発明の第3実施形態に係るボールねじ装置について説明する。図4に示すように、第3実施形態のボールねじ装置40は、外周面に螺旋状のねじ溝41aを有するねじ軸(内方部材)41と、ねじ軸41のねじ溝41aに対向する螺旋状のねじ溝を内面に有してねじ軸41に所定の隙間を介して嵌合される円筒状のボールねじナット(外方部材、ナット体)42とを備えている。
また、ねじ軸41のねじ溝41aとボールねじナット42のねじ溝とから形成される断面略円形の螺旋状のボール転動空間に転動自在に装填される多数のボール(転動体:図示せず)を備えている。
【0058】
ボールねじナット42の軸方向両端部には、それぞれ潤滑剤含有ポリマからなる円筒状の潤滑剤供給部材43が嵌挿されており、潤滑剤供給部材43の内径面は、ねじ軸41の外径面にのみ接触し、ねじ溝41aには非接触となっている。
潤滑剤供給部材43は、2つの半円筒状部材で構成されるとともに、その外周面に細い周溝を有しており、この周溝に配置されたガータスプリング44によって一定の圧力でねじ軸41に向かってラジアル方向に押圧されている。これにより、たとえ長期間の動作により潤滑剤供給部材43の内周面が摩耗したとしても、ねじ軸41との適切な接触が常に保たれて、良好な潤滑が確保されるようになっている。ここで、本実施形態では、潤滑剤供給部材43を構成する潤滑剤含有ポリマの組成を、上記第2実施形態の潤滑剤供給部材32と同様にしている。
【0059】
そして、ボールねじナット42の軸方向両端部の潤滑剤供給部材43の軸方向外側には、それぞれ接触シール装置45,45が配置されている。
【0060】
図5及び図6に示すように、接触シール装置45は、金属又はプラスチック製の芯金(補強部材)45bと、芯金45bを内包した円環板状のシール本体45cと、シール本体45cの内径部から斜めに延びた略円錐形(各図においては左側に傾斜)のシール片45dとを備えている。
そして、シール本体45cの表面に、硬質炭素皮膜が形成されている。硬質炭素皮膜は、炭素(C)及び水素(H)のみからなる硬質炭素皮膜であって、ダイヤモンドライクカーボン(DLC)とも呼ばれる。
【0061】
シール本体45cに対する硬質炭素皮膜の形成は、第1実施形態と同様にして、芯金部分にマスキングを施した後、真空容器内に入れて、3Dプラズマパック表面処理装置を用い、窒素によるプラズマイオンスパッタクリーニング、次にプラズマによるカーボンイオン注入を行い、基材と硬質炭素皮膜の剥離強度を向上されるためのカーボンミキシング傾斜層を0.1μm形成し、ゴム部分の外表面に1μmの硬質炭素皮膜を形成した。
【0062】
シール片45dの中心は,シール本体45cの中心に対して偏心しており、シール片45dの内径側開口縁(リップ部)45aはねじ軸41の外径より若干小径とされている。これにより、シール片45dのリップ部45aがねじ軸41の全周に沿って密着できるようになっている。
【0063】
また、シール本体45c及びシール片45dは第1実施形態と同様のゴム材料組成物で一体的に成形されており、シール本体45c及びシール片45dは加硫接着により芯金45bと一体化されている。そして、接触シール装置45のシール本体45cがボールねじナット42の端面に形成された凹部に圧入により取り付けられて潤滑剤供給部材43に近接配置されている。
【0064】
芯金45bは円環板状をなしており、外径部の中心がシール本体45cの中心と略同心とされ、内径部の中心がシール片45dのリップ部45aと略同心とされており、その幅は周方向で異なっている。
したがって、芯金45bの内周縁からシール本体45cの内径縁までの距離と、シール本体45cの内径縁からシール片45dのリップ部45aまでの距離とを全周に渡ってそれぞれ均一にすることができ、これにより、ねじ軸41に当接する際の接触シール装置45のシール部材の周方向の撓み量をほぼ一定とすることができる。
【0065】
図7に示すように、接触シール装置45のシール片45dがねじ軸41に当接して変形した状態では、図中に実線で示すシール片45dは、ねじ軸41に当接していない状態であり、二点鎖線で示すシール片45dは、ねじ軸41に当接して変形した状態である。
シール片45dのねじ軸41との接触部分(内径側開口縁45a:リップ部)は、ねじ軸41の外径面及びねじ溝41aに対して常に所定の締め代となっている(実際には、シール片45dの変形によりすき間を0以下に保つようになっている)。これにより、接触シール装置45がねじ軸41の何れの部分(ねじ軸41の外径面又はねじ溝41a)と当接した場合でも、シール片45dの撓む方向はその形状に基づいて予測することができる。
したがって、この予測結果に基づいてシール性が最も高くなるようにシール片45dの形状を設計することが可能となる。
【0066】
そして、ボールねじナット42の移動時に接触シール装置45のシール片45dがねじ軸41に摺接することにより、ねじ軸41とボールねじナット42との間の隙間の端部開口からボールねじナット42内に塵埃等の異物が侵入するのを防止すると共に、ボールねじナット42の外部へ潤滑剤が漏出するのを防止している。
【0067】
第3実施形態のボールねじ装置40によれば、ねじ軸41及びボールねじナット42に接触するシール片45dの表面に硬質炭素皮膜が形成された接触シール装置45が用いられる。
したがって、ボールねじナット42が、ねじ軸41に対して往復運動する際、及び、ねじ軸41が、ボールねじナット42に対して回転する際に、接触シール装置45,45が、ねじ軸41に押し付けられるとともに屈曲運動を繰り返し行っても、リップ部に摩耗が生ずることがなく、シール性が低下することがない。
また、溶接粉や木屑等の異物が多い環境内で用いられても、接触シール装置45,45におけるシール片45dの摩耗が抑制されるので、シール性の低下がなくなり、ボールねじナット42内に異物が徐々に侵入し、最終的にロックして往復運動ができなくなる、という状況になりえない。その結果、異物がかかりうる環境下で使用しても高いシール性を維持することができる長寿命なボールねじ装置40が得られる。
【0068】
【実施例】
上記第1実施形態に用いた接触シール装置(案内レール11に対する締め代200μm)18をリニアガイド装置(空間内に鉱油−リチウム石けん系グリース充填)10に組付けて、プッシュプルゲージで摩擦力を測定した。
測定には、硬質炭素皮膜が1μm形成された第1実施形態の接触シール装置18と、硬質炭素皮膜が形成されていないものとの比較で行った。
なお、リップ部20を形成するゴム材は、HAFカーボンブラックを補強材とし、硫黄を加硫剤とする硬さ75(JISA)のアクリロニトリルブタジエンゴムを用いた。
また、比較例の摩擦力を1としたときにおける実施例の摩擦力を相対値で示した。また、接触シール装置18の耐摩耗特性を評価するために、異物の混入を想定し、木屑が案内レール11に絶えず降りかかるようにしてリニアガイド装置10の走行試験を実施した。走行条件は以下の条件であり、走行後の案内レール11に対する締め代を測定した。
【0069】
<走行条件>
送り速度:平均32m/min
ストローク:800mm
試験温度:40℃(雰囲気)
予圧:Z1
走行距離:10km
試験リニアガイド装置:LH30,高さ45,幅60,長さ85.6,レール幅28
【0070】
【表1】
【0071】
表1により明らかなように、接触シール装置18のリップ部20に硬質炭素皮膜を形成した実施例は、形成していない比較例に比べて、作動性に優れるとともに、耐摩耗性にも優れ、高いシール性が保たれ、リニアガイド装置10の低摩耗化と長寿命化に寄与することがわかった。
【0072】
なお、本発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく、適宜な変形、改良等が可能である。例えば、突部の数については、図示した3個に限らず、1個や2個または複数個でも良いが、溶接粉や木屑等の異物の発生量に応じて多くするのが好ましい。
また、リニアガイド装置を複数列配することにより構成されるテーブル装置に本発明を用いても、同様な作用・効果を奏することができる。
【0073】
【発明の効果】
以上説明したように本発明に係る直動装置によれば、少なくとも内方部材又は外方部材との接触部分の表面に硬質炭素皮膜が形成された接触シール装置が用いられる。
したがって、外方部材に相当するスライダやナット体が、内方部材に相当する案内レールやねじ軸に対して往復運動することによって、両端に配設されている接触シール装置は内方部材に押し付けられるとともに屈曲運動を繰り返し行っても、接触部に摩耗が生ずることがなく、シール性が低下することがない。
また、直動装置の使用される環境として、溶接粉や木屑等の異物が多い箇所であっても、接触シール装置の摩耗が抑制されるので、シール性の低下がなくなり、外方部材中に異物が徐々に侵入し、最終的にロックして往復運動ができなくなるという状況になりえない。その結果、異物がかかりうる環境下で使用しても高いシール性を維持することができる長寿命な直動装置が得られる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1実施形態に係るリニアガイド装置の斜視図である。
【図2】図1に示したリニアガイド装置に用いた接触シール装置のリップ部の拡大断面図である。
【図3】本発明の第2実施形態に係るリニアガイド装置の分解斜視図である。
【図4】本発明の第3実施形態に係るボールねじ装置の一部破断平面図である。
【図5】図4の側面図である。
【図6】図4に示したボールねじ装置におけるねじ軸と接触シール装置との接触部分の説明図である。
【図7】図4に示したボールねじ装置における接触シール装置のねじ軸との当接部分の拡大図である。
【符号の説明】
10,30 リニアガイド装置(直動装置)
11 案内レール(内方部材)
12 スライダ(外方部材)
18,33,45 接触シール装置
20,45d リップ部
20a 突部
32,43 潤滑剤供給部材
40 ボールねじ装置(直動装置)
41 ねじ軸(内方部材)
42 ナット体(外方部材、ボールねじナット)
45b 芯材
Claims (5)
- 外方部材と、該外方部材に隙間を介して対向する内方部材と、前記外方部材と前記内方部材との間に転動自在に配設され、前記内方部材に対して前記外方部材を相対移動させる複数の転動体と、前記隙間の開口をシールする接触シール装置とを備えた直動装置において、
前記接触シール装置の少なくとも前記内方部材又は前記外方部材との接触部分の表面に硬質炭素皮膜を形成したことを特徴とする直動装置。 - 前記接触シール装置は、芯材に弾性部材が一体成形されてなり、前記硬質炭素皮膜は、前記弾性部材の内方部材との接触部分の表面に形成されていることを特徴とする請求項1に記載の直動装置。
- 前記直動装置には、前記接触シール装置に近接して、潤滑剤供給部材が配設されていることを特徴とする請求項1または2に記載の直動装置。
- 前記外方部材がスライダであって、前記内方部材がレール部材であり、前記接触シール装置に有するリップ部に突部が形成されていることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の直動装置。
- 前記外方部材がナット体であって、前記内方部材がねじ軸であり、前記接触シール装置が、前記ねじ軸に対して所定の締め代で組み付けられていることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の直動装置。
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