JP2013200006A - 玉軸受およびその保持器 - Google Patents

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Abstract

【課題】高速回転時の保持器の変形を抑制し、保持器とボールの接触状態を安定化させ、音響面でも優れた玉軸受およびその保持器を提供する。
【解決手段】外輪と、内輪と、複数のボールと、ボールをポケット18に収容する保持器5とからなる玉軸受において、保持器は、軸方向一端側15の環状部16とこの環状部から軸方向他端側17に延び、周方向複数個所にポケットを形成する柱部19からなり、ポケットが軸方向他端側に開口部を有し、この開口部の入口寸法をボール直径より小さくした冠型保持器であって、保持器の外周面は、軸方向一端側から軸方向他端側に向けた途中位置までを円筒状面21とし、その位置から軸方向他端側の柱部の先端に向けて縮径する傾斜面22として形成したものであって、柱部の先端の外径CをボールPCDBより小さくする共に、ボールとポケットとをボールPCDBより軸受中心側に寄った位置で接触させた。
【選択図】図3

Description

この発明は、玉軸受およびその保持器に関する。
例えば、自動車の電装部品や補機部品、すなわち、ファンカップリング装置、オルタネータ、アイドラプーリ、カーエアコン用電磁クラッチ、電動ファンモータ等に組込まれる転がり軸受としては、回転軸や回転部品を静止部材に回転自在に支持するために深溝玉軸受やアンギュラ玉軸受が広く使用されている。
一般に、玉軸受31は、図11に示すように、外輪32、内輪33、この外輪32と内輪33との間に介装される転動体としてのボール34と、このボール34を保持する保持器35とを主な構成とする。保持器35には樹脂製冠型保持器を使用する場合がある。この保持器35は、耐摩耗性や耐焼付き性等に優れた樹脂からなり、図12に示すように、軸方向一端側45の環状部46と、この環状部46から軸方向他端側37に延び、周方向複数個所にボール34を収容するポケット38を形成する柱部39からなり、柱部39の先端に爪部41が形成され、ポケット38が軸方向他端37に開口部40を有し、この開口部40の入口寸法をボール直径より小さく形成されている。この保持器35では、ポケット38とボール34とがボールPCD上で接触する構成となっている。
ところが、近年のエンジンの高速化に伴い、例えば、外輪回転するエンジン用アイドラプーリ軸受などでは、軸受の限界回転数近くの高速で使用される。この場合、内部のボール34を一定のピッチで保持する保持器35は、比較的柔らかい材料で作られているので、遠心力によって外側に変形し、通常とは異なる部分でボール34と保持器35とが接触し、保持器35の摩耗が促進される場合がある。また、このような変形状態では、ボール34と保持器35のポケットすきまが減少しており、かつ、ボール34とボール34のピッチ距離がさまざまな寸法公差によって回転中に変化する現象、所謂、ボール34の遅れ進みによって、ポケット38とボール34とが接触する。そして、図12に示す保持器35ではポケット38とボール34とがボールPCD上で接触するため、保持器35に矢印で示す大きな荷重Fが負荷され、強度面でも問題となる可能性がある。さらに、保持器35の変形により、他の構成部品と干渉した場合、摩耗粉の発生や異常発熱により、グリース劣化やこれに伴う短寿命の可能性も懸念される。
図12に示す従来の軸受の樹脂製冠型保持器35は、保持器の断面積を大きくして強度を増すことで、遠心力に対し変形量を抑える構造であったが、近年の高速化に対しては、重量が増加することで遠心力も増加し、これがかえって問題になっている。
上記のような高速回転時にも、樹脂製冠型保持器の爪部と外輪との干渉を防止するために、爪部の肉厚を先端側に向けて小さくすることが提案されている(特許文献1)。これにより、低トルク化、低発熱化、低騒音化を図るとしている。
特開2002−147463号公報
ところが、特許文献1に記載の技術は、保持器の爪部の先端部の肉厚を小さくすることにより、遠心力や円周方向の力の低減を図り、爪部を弾性変形しにくくするという技術内容に止まっている。
高速回転用玉軸受について種々検討した。その結果、高速回転時の変形状態におけるボールの遅れ進みによる保持器強度の問題や、その対策として過度にボールと保持器が接触しないようにポケットすきまを大きく設定すると、一方で音響面での問題の可能性があることが判明した。これに加えて、近年の高速化に対しては、更なる保持器の変形抑制対策が必要なことや、樹脂保持器の場合、ポケットへのボール組み込み時の爪部の変形面から樹脂の強度向上には限界があることなどの技術な問題があることも判明した。
上記のような問題に鑑み、本発明は、高速回転時の保持器の変形を抑制し、保持器とボールの接触状態を安定化させ、音響面でも優れた玉軸受およびその保持器を提供することを目的とする。
本発明者は、上記の目的を達成するために種々検討した結果、柱部の先端の肉厚を小さくすることに加えて、ボールとポケットとをボールPCDBより軸受中心側で接触させて柱部先端が逃げる構造にするという新たな着想が相俟って本発明に至った。
前述の目的を達成するための技術的手段として、本発明は、内周に外側軌道面が形成された外輪と、外周に内側軌道面が形成された内輪と、前記外側軌道面と内側軌道面間に配置された複数のボールと、このボールをポケットに収容する保持器とからなる玉軸受において、前記保持器は、軸方向一端側の環状部とこの環状部から軸方向他端側に延び、周方向複数個所にポケットを形成する柱部とからなり、前記ポケットが軸方向他端側に開口部を有し、この開口部の入口寸法をボール直径より小さくした冠型保持器であって、前記保持器の外周面は、前記軸方向一端側から軸方向他端側に向けて途中位置までを円筒状面とし、その位置から軸方向他端側の柱部の先端に向けて縮径する傾斜面として形成したものであって、前記柱部の先端の外径をボールPCDBより小さくする共に、ボールとポケットとをボールPCDBより軸受中心側に寄った位置で接触させたことを特徴とする。
上記の構成により、柱部先端に行くほど重量を小さくすることに加えて、軸受中心側へ向うボールからの力が保持器に作用することにより、高速回転時の保持器の変形を極力抑えることができ、保持器の異常摩耗やトルク損失を抑えることができる。また、ボールの遅れ進みに対して保持器の変形で逃がす構造にしたことより、小さなポケットすきまを採用でき、音響特性を向上させることができる。更には、柱部の先端の外径をボールPCDBより小さくすることでボールの保持器への組込み時に先端が開く方向の変形が小さくなり応力を軽減することができるので、保持器を樹脂で形成した場合、樹脂強化剤の添加量を増量して保持器の強度を向上させることができる。
具体的には、上記の柱部先端の半径方向肉厚を前記環状部の半径方向肉厚の1/2以下としたことにより、遠心力による保持器の変形を十分抑制することができる。
上記のポケットのPCDPをボールPCDBより大きくしたことにより、球面状のポケットとボールをボールPCDBより軸受中心側で確実に接触させることができる。
上記のポケットすきまを0.0〜0.2mmすることが好ましい。これにより、高速回転時にも極めて良好な音響特性を確保することができる。ボールが遅れ進みしても、保持器が軸受中心側へ変形して逃がす構造であるので、ポケットすきまは0でも問題は生じない。また、通常のポケットすきまである0.2mm以下に抑えることができる。
上記の環状部の減肉のため凹部あるいは除去部を設けたことにより、保持器をさらに軽量化し、遠心力による保持器全体の拡径変形を抑制することができる。
上記のボールとポケットとをボールPCDBより軸受中心側で接触させるためにポケットの内面に突起部を設けることができる。これにより、ボールとポケットとをボールPCDBより軸受中心側で確実に接触させることができる。また、この場合、点接触となるので抵抗を小さく抑えることができ、軸受のトルク損失を低減することができる。さらに、ポケットにボール中心を含む平面を跨いで両側に2箇所ずつ突起を設けた形状では、突起とボールとの接触点がボールの直径より回転半径が小さい部分で当たるため摩擦抵抗をさらに小さくすることができる。
上記の保持器を熱可塑性樹脂で形成したことより、耐摩耗性や耐焼き付性等に優れた保持器とすることができる。一方、上記の保持器を熱硬化性樹脂で形成することにより、高温での使用に適した保持器とすることができる。
上記保持器の柱部の先端の外径をボールPCDBより小さくすることで、ボールを保持器のポケットへ組込み時に柱部の先端が開く方向の変形が小さくなり応力を軽減することができる。これにより、保持器を形成する樹脂に強化剤を40質量%以上添加することができ、保持器の強度を向上させることができる。
本発明によれば、高速回転時の保持器の変形を抑制し、保持器とボールの接触状態を安定化させ、音響面でも優れた玉軸受およびその保持器を実現することができる。
本発明の第1の実施形態の玉軸受を示す縦断面図である。 上記の玉軸受の保持器を示す面である。 上記の保持器の詳細を示す部分的な縦断面図である。 上記の保持器とボールとの関係を示す部分的な横断面図である。 上記の玉軸受の運転状態を示す縦断面図である。 上記の保持器の組込み状態を示す縦断面図である 第2の実施形態の玉軸受の保持器を示す図である。 第3の実施形態の玉軸受の保持器を示す部分的な縦断面図である。 第4の実施形態の玉軸受の保持器を示す縦断面図である。 第5の実施形態の玉軸受の保持器を示す縦断面図である。 従来の玉軸受を示す縦断面図である。 上記の玉軸受の保持器を示す図である。
以下に本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
本発明の第1の実施形態の玉軸受およびその保持器を図1〜6に基づいて説明する。図1は玉軸受を示す縦断面図である。図示のように、玉軸受1は、内周に外側軌道面2aが形成された外輪2と、外輪2の内側に配置され、外周に内側軌道面3aが形成された内輪3と、外輪2の外側軌道面2aと内輪3の内側軌道面3aとの間に転動自在に介在された転動体としての複数のボール(玉)4と、外輪2と内輪3との間に配置され、各ボール4を円周方向に所定間隔で保持する保持器5を主な構成とする。外輪2と内輪3との間に形成された環状空間6がシール部材7によって密封されている。シール部材7により密封された環状空間6にグリース等の潤滑剤が封入されている。玉軸受1は、プーリのような回転部品を支持する場合は外輪回転で使用され、逆に、回転軸を支持する場合は内輪回転で使用される。
シール部材7は、環状の芯金7aとこの芯金7aに一体に固着されたゴム状部7bとで構成され、外輪2の内周に形成されたシール取付溝8にシール部材7の外周部が嵌合され固定されている。内輪3には、シール部材7の内周部に対応する位置に、環状のシール溝9が形成され、シール部材7のゴム状部7bに形成されたシールリップ10が内輪3のシール溝9に摺接している。これにより、水やダスト等の異物が軸受内部に侵入することや、あるいは、軸受内部から潤滑剤が外部に漏れることが防止される。
図2に保持器を示す。図2(a)は保持器の縦断面図であり、図2(b)は保持器の右側面図である。保持器5は、軸方向一端側15の環状部16と、この環状部16から軸方向他端側17に延び、周方向複数個所にボール4を収容するポケット18を形成する柱部19からなり、ポケット18が軸方向他端側17に開口部20を有し、この開口部20の入口寸法Aがボール直径より小さく形成された、所謂、冠型保持器となっている。各ポケット18の表面は球面状に形成されている。
図3に保持器5の詳細形状を示す。保持器5の外周面は、軸方向一端側15の環状部16から軸方向他端側17に向けて途中位置までを円筒状面21とし、その位置から軸方向他端側17の柱部19の先端に向けて縮径する傾斜面22として形成されている。この傾斜面22はテーパ状のものを示すが、これに限られず、円弧状に湾曲した傾斜面とすることも可能である。柱部19の先端の側部に面取り部26が設けられている。この面取り部26は、後述するポケット18にボール4を挿入する際、ボール4に滑らかに当接し、柱部19の先端の損傷防止に有効である。この保持器5では、柱部19の先端は平坦面で、従来のような爪部は形成されていない。このため、射出成形の金型設計の容易化や射出成形性の向上を図ることができる。
柱部19の先端の外径Cは、ボールPCDBより小さく形成し、柱部19の先端の半径方向肉厚Tを環状部16の軸方向一端側15における半径方向肉厚Bの1/2以下としている。このように、保持器5の外周面は、柱部19の先端に向けて縮径する傾斜面22で形成されているので、保持器5のポケット18のボール4を抱え込む部分の面積が小さくなり、柱部19の先端にいくほど重量を小さくすることで、遠心力による柱部19の先端の外側への変形を減少させ、保持器とボールとの接触状態を安定化させることができる。
次に、保持器5のポケット18とボール4との相対的な関係を図4に基づいて説明する。図4(a)は静止状態のボールと保持器の状態を示す横断面図であり、図4(b)は、運転状態のボールと保持器の状態を示す横断面図である。両図は、図2(a)のボール中心を含むD−D平面を矢視した横断面である。図4(a)に示すように、ポケット18のPCDPはボールPCDBより大きく形成されている。そのため、ボール4と球面状のポケット18との接触位置はボールPCDBよりも軸受中心側に寄った位置となる。ただし、この図では、ボール4がポケット18の円周方向の中央に位置し、円周方向でボール4が等しいピッチ距離にある状態で図示している。ここで、ボールPCDBは、各ボール4の中心を結んで形成されるピッチ円直径を意味し、ポケット18のPCDPは、各ポケット18を形成する球面の曲率中心を結んで形成されるピッチ円直径を意味する。これらを、本明細書および特許請求の範囲においてボールPCDBおよびポケットのPCDPという。
図4(b)に示すように、玉軸受が運転状態になると、ボール4とボール4のピッチ距離がさまざまな寸法公差によって回転中に変化する現象、所謂、ボール4の遅れ進みが生じる。ボール4の遅れ進みが生じると、ボール4が保持器5のポケット18に接触し、柱部19をボール4とボール4とで挟み込む状態となる。この場合、前述したようにポケット18のPCDPはボールPCDBより大きく形成されているため、ボール4と球面状のポケット18との接触位置はボールPCDBよりも軸受中心側に寄った位置となる。その結果、ボール4から柱部19に対して軸受中心側に傾斜した矢印で示す力Fが作用し、このため、柱部19は軸受中心側へ白抜き矢印の方向に変形する。柱部19が軸受中心側に変形すると、ボール4の接触位置が、ポケット18とポケット18とで区画された柱部19の円周方向幅の狭い部位に移動することになるので、上記のボール4の作用力Fを逃がす構造になる。したがって、ポケットすきまEを0〜0.2mmと小さく設定しても、ボール4の遅れ進みによる問題を解消することができる。
前述したボール4の遅れ進みにより生じるボール4の作用力Fによって、柱部19が軸受中心側へ変形した状態を図5に示す。この図では、軸受中心線Hより上側の半分だけの縦断面を図示し、下側の半分は省略する。保持器5が静止状態のときの柱部19を実線で示し、運転状態でボール4の遅れ進みによって柱部19が軸受中心側へ変形した状態を破線で示す。図示のように、柱部19の傾斜面22が形成された部位が変形し、柱部19に軸受中心側に向けて変形量Iが生じる。この変形量Iによって、ボール4の接触位置が、ポケット18とポケット18とで区画された柱部19(図4(b)参照)の円周方向幅の狭い部位に移動することになるので、上記のボール4の作用力Fを逃がす構造になる。これにより、前述したように、ポケットすきまEを0〜0.2mmと小さく設定しても、ボール4の遅れ進みによる問題を解消することができ、音響面でも優れた玉軸受を実現することができる。
本実施形態の玉軸受1の保持器5では、柱部19の先端に行くほど重量を小さくすることに加えて、ボール4と球面状のポケット18との接触位置をボールPCDBよりも軸受中心側に寄った位置にすることによって、軸受中心側へ向うボールの力が保持器5に作用するので、高速回転時の遠心力による保持器の外側への変形を極力抑えることができる。これにより、保持器の異常摩耗やトルク損失を抑えることができる。
次に、保持器5を組込む状態を図6に基づいて説明する。まず、組込み方法の概要を説明する。深溝玉軸受1は、通常、外輪2と内輪3を偏心させ、外輪2と内輪3との間に形成される三日月形状の間隙に所要個数のボール4を装填する。その後、ボール4を円周方向に移動させて等配し、外輪2と内輪3の中心軸線を一致させる。図6はボール4が等配され、外輪2と内輪3の中心軸線が一致した状態を示す。この状態で、保持器5の柱部19をボール4、4間の間隙に位置合わし、その後、保持器5を白抜き矢印の方向に挿入して組込まれる。
次に、保持器5を挿入する際の詳細を説明する。柱部19の先端の面取り部26(図2、図3参照)がボール4の直径より軸受中心側に寄った小さい径の部分に当接する。その後、保持器5の挿入を続けると、図6の実線で示すように柱部19の先端が軸受中心側に変形し、それにより、面取り部26が当接するボール4の径はより小さい方に移動する。そして、柱部19の先端の変形量がKまで進むと、ボール3の当接部位の径がポケット18の開口部20の入口寸法A(図2参照)に達して、面取り部26がボール4の外表面を乗り越えて、ポケット18にボール4が嵌まり込む。本実施形態の保持器5では、上記のように柱部19の先端が軸受中心側に変形することを利用して組込まれるので、柱部19の先端の変形が小さくなり応力を軽減することができる。したがって、保持器5を樹脂で形成した場合、樹脂強化剤の添加量を増量することができる。具体的には、強化剤を40質量%以上添加することが可能であり、保持器の強度を大幅に向上させることができる。
上記に対して、図12に示す従来の保持器35は、柱部39の先端の爪部41がボール34の略直径部分を乗り越えて組込まれるので、爪部41の開く方向の変形が大きくなり、それに応じて応力が大きくなっていた。そのため、樹脂強化剤の添加量の余り多くできなかった。具体的には、強化剤の添加量は25〜30質量%が限度であり、保持器の強度面で限界があった。
本実施形態の保持器5は、一般的に使用される耐摩耗性や耐焼き付性等に優れた樹脂が好ましく、熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリエチレン、ポリアミド、ポリアセタール、ポリエチレンテレフタレート、ポリプチレンテレフタレート、ポリカーボネート、ポリフェニレンサルファイド、ポリエーテルサルフォン、ポリエーテルイミド、ポリアミドイミド、ポリエーテルエーテルケトン、熱可塑性ポリイミド等が挙げられ、また、熱硬化性樹脂としては、熱硬化性ポリイミド、エポキシ樹脂、フェノール樹脂等の合成樹脂が挙げられる。強度向上と寸法安定性のために、ポリアミド、ポリフェニレンサルファイド、あるいはポリエーテルエーテルケトン等の熱可塑性樹脂をベースとして、ガラス繊維や炭素繊維を添加することが好ましい。
保持器材料として、引張り伸び、引張り強度、耐衝撃性、耐摩耗性、潤滑性等に優れたポリアミド樹脂を用いることが好ましい。ポリアミド樹脂としては、PA66(ポリアミド66)、PA46(ポリアミド46)、PA9T(ポリアミド9T)、PA11(ポリアミド11)、PA6(ポリアミド6)が挙げられる。引張り伸び、引張り強度、耐衝撃性、耐摩耗性、潤滑性等に優れるので、高品質な保持器とすることができる。
保持器材料として、熱硬化性ポリイミド、エポキシ樹脂、フェノール樹脂等の熱硬化性樹脂を用いることにより、高温での使用に適した保持器とすることができる。
本実施形態の玉軸受1に充填されるグリースは、基油、増ちょう剤および添加剤からなる半固体状の潤滑剤である。潤滑グリースを構成する基油としては、例えば、パラフィン系鉱油、ナフテン系鉱油などの鉱油、ポリブデン、ポリ−α−オレフィン、アルキルベンゼン、アルキルナフタレン、脂環式化合物等の炭化水素系合成油、又は、天然油脂やポリオールエステル油、リン酸エステル、ジエステル油、ポリグリコール油、シリコーン油、ポリフェニルエーテル油、アルキルジフェニルエーテル油、フッ素化油等の非炭化水素系合成油等、一般に潤滑グリースの基油として使用されている油であれば、特に限定することなく使用できる。
増ちょう剤としては、アルミニウム石けん、リチウム石けん、ナトリウム石けん、複合リチウム石けん、複合カルシウム石けん、複合アルミニウム石けん等の金属石けん系増ちょう剤や、ジウレア化合物、ポリウレア化合物等のウレア系化合物が挙げられる。これらの増ちょう剤は、単独で又は2種類以上組み合わせて用いてもよい。
潤滑グリース用の添加剤としては、例えば、極圧剤、アミン径、フェノール系等の酸化防止剤、ベンゾトリアゾール等の金属不活性剤、ポリメタクリレート、ポリスチレン等の粘度指数向上剤、二硫化モリブデン、グラファイト等の固体潤滑剤等が挙げられる。これらの添加剤は、単独で又は2種類以上組み合わせて添加することができる。
次に、本発明の第2の実施形態に係る玉軸受の保持器を図7に基づいて説明する。図7(a)は保持器の部分的な縦断面部であり、図7(b)は、図7(a)のD−D平面を矢視した部分的な横断面図である。本実施形態の保持器5は、ポケット18に突起23を設けた点が第1の実施形態と異なる。その他の構成は第1の実施形態と同じであるので、第1の実施形態と同様の機能を有する部位には同じ符号を付与して重複説明を省略する。以降の実施形態も同様とする。
保持器5のポケット18の円周方向に対向する表面に、1箇所ずつ突起23が形成されている。この突起23は、各ボール4(図示省略)の中心を含む平面、すなわち、D−D平面上の軸受中心側に寄った位置にある。突起23により、ボール4とポケット18とをボールPCDBより軸受中心側に寄った位置で確実に接触させることができる。また、突起23での点接触により抵抗を小さく抑えることができ、軸受のトルク損失を低減することができる。高速回転時の保持器の変形抑制に関する作動、ボールの遅れ進みに対する作動、保持器の組み込みや材料、潤滑グリースなどに関する内容については、前述した第1の実施形態と同様であるので、重複説明を省略する。
本発明の第3の実施形態に係る玉軸受の保持器を図8に基づいて説明する。図8は保持器の部分的な縦断面部である。本実施形態の保持器5は、ポケット18の円周方向に対向する表面に、2箇所ずつ突起23を形成した点が第1の実施形態と異なり、その他の構成は第1の実施形態と同じである。
本実施形態では、ポケット18にボール中心を含む平面D−Dを跨いで両側に2箇所ずつ突起23を設けたので、ポケット18とボール4(図示省略)との接触点がボール4の直径より回転半径が小さい部分となるため摩擦抵抗を第2の実施形態よりもさらに小さくすることができる。高速回転時の保持器の変形抑制に関する作動、ボールの遅れ進みに対する作動、保持器の組み込みや材料、潤滑グリースなどに関する内容については、前述した第1の実施形態と同様であるので、重複説明を省略する。
本発明の第4の実施形態に係る玉軸受の保持器を図9に基づいて説明する。図9は保持器の部分的な縦断面部である。本実施形態の保持器5は、環状部16の減肉のため凹部24を設けた点が第1の実施形態と異なり、その他の構成は第1の実施形態と同じである。保持器5には、軸方向一端側15において、柱部19が形成された円周方向位置に凹部24が形成されている。これにより、保持器をさらに軽量化し、遠心力による保持器全体の拡径変形を抑制することができる。
また、保持器5の成形面では、凹部24は、成形時の冷却速度を均一化してボイド(成形品の内部にできる空洞)やヒケ(成形品の外面に現れる収縮歪)やそり等の発生を防止する効果もある。本実施形態においても、高速回転時の保持器の変形抑制に関する作動、ボールの遅れ進みに対する作動、保持器の組み込みや材料、潤滑グリースなどに関する内容については、前述した第1の実施形態と同様であるので、重複説明を省略する。
本発明の第5の実施形態に係る玉軸受の保持器を図10に基づいて説明する。図10は保持器の部分的な縦断面部である。本実施形態の保持器5は、環状部16の減肉のため除去部25を設けた点が第1の実施形態と異なり、その他の構成は第1の実施形態と同じである。保持器5には、軸方向一端側15において、柱部19が形成された円周方向位置に、破線より右側の半径方向全域にわたる除去部25が形成されている。これにより、第4の実施形態よりもさらに保持器を軽量化し、遠心力による保持器全体の拡径変形を抑制することができる。高速回転時の保持器の変形抑制に関する作動、ボールの遅れ進みに対する作動、保持器の組み込みや材料、潤滑グリースなどに関する内容については、前述した第1の実施形態と同様であるので、重複説明を省略する。
以上の実施形態では、保持器材料を樹脂としたものを示したが、これに限定されるものではなく、黄銅やアルミニウム、ステンレス鋼等の金属製であってもよい。
要約すると、本発明の以上の実施形態では、柱部先端に行くほど重量を小さくすることに加えて、軸受中心側へ向うボールからの力が保持器に作用することにより、高速回転時の保持器の変形を極力抑えることができ、保持器の異常摩耗やトルク損失を抑えることができる。また、ボールの遅れ進みに対して保持器の変形で逃がす構造にしたことより、小さなポケットすきまを採用でき、音響特性を向上させることができる。更には、柱部の先端の外径をボールPCDBより小さくすることでボールの保持器への組込み時に先端が開く方向の変形が小さくなり応力を軽減することができるので、保持器を樹脂で形成した場合、樹脂強化剤の添加量を増量して保持器の強度を向上させることができる。加えて、ポケットの内面に突起部を設けた場合には、ボールとポケットとをボールPCDBより軸受中心側で確実に接触させることができると共に、点接触となるので抵抗を小さく抑えることができ、軸受のトルク損失を低減することができる。
また、本発明は前述した実施形態に何ら限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において、さらに種々の形態で実施し得ることは勿論のことであり、本発明の範囲は、特許請求の範囲によって示され、さらに特許請求の範囲に記載の均等の意味、および範囲内のすべての変更を含む。
1 玉軸受
2 外輪
3 内輪
4 ボール
5 保持器
7 シール部材
15 軸方向一端側
16 環状部
17 軸方向他端側
18 ポケット
19 柱部
20 開口部
21 円筒状面
22 傾斜面
23 突起
24 凹部
25 除去部
A 入口寸法
B 半径方向肉厚
C 柱部の先端部外径
E ポケットすきま
I 変形量
K 変形量
PCDB ボールのピッチ円直径
PCDP ポケットのピッチ円直径
T 半径方向肉厚

Claims (10)

  1. 内周に外側軌道面が形成された外輪と、外周に内側軌道面が形成された内輪と、前記外側軌道面と内側軌道面間に配置された複数のボールと、このボールをポケットに収容する保持器とからなる玉軸受において、
    前記保持器は、軸方向一端側の環状部とこの環状部から軸方向他端側に延び、周方向複数個所にポケットを形成する柱部からなり、前記ポケットが軸方向他端側に開口部を有し、この開口部の入口寸法をボール直径より小さくした冠型保持器であって、前記保持器の外周面は、前記軸方向一端側から軸方向他端側に向けて途中位置までを円筒状面とし、その位置から軸方向他端側の柱部の先端に向けて縮径する傾斜面として形成したものであって、前記柱部の先端の外径をボールPCDBより小さくする共に、ボールとポケットとをボールPCDBより軸受中心側に寄った位置で接触させたことを特徴とする玉軸受。
  2. 前記柱部先端の半径方向肉厚を前記環状部の半径方向肉厚の1/2以下としたことを特徴とする請求項1に記載の玉軸受。
  3. 前記ポケットのPCDPを前記ボールPCDBより大きくしたことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の玉軸受。
  4. 前記ポケットすきまを0.0〜0.2mmとしたことを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の玉軸受。
  5. 前記環状部の減肉のため凹部あるいは除去部を設けたことを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の玉軸受。
  6. 前記ボールとポケットとをボールPCDBより軸受中心側で接触させるためにポケットの内面に突起部を設けたことを特徴とする請求項1に記載の玉軸受。
  7. 前記保持器を熱可塑性樹脂で形成したこと特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載の玉軸受。
  8. 前記保持器を熱硬化性樹脂で形成したこと特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載の玉軸受。
  9. 前記保持器を形成する樹脂に強化剤を40質量%以上添加したことを特徴とする請求項1〜8のいずれか1項に記載の玉軸受。
  10. 請求項1〜9のいずれか1項に記載した玉軸受の保持器。
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