JP3622540B2 - リアサスペンション装置 - Google Patents
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Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、自動車に用いられるいわゆるトーションビーム式のリアサスペンション装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来のトーションビーム式リアサスペンション装置としては、例えば特開平5−278424号公報に開示されたものがある。
【0003】
このような従来のリアサスペンション装置として、例えば図15(b)に示すものでは、左右の車輪を支持する車輪支持体205がトレーリングアーム205aに取り付けられ、該トレーリングアーム205aは車体前方に延びて前端部207が車体に上下揺動可能に回転支持され、左右のトレーリングアーム205a間にトーションビーム部材209が結合されている。
【0004】
このトーションビーム部材209は、車体ロール時に左右輪間でねじられ、スプリング反力を発生してロール剛性を高めるものであり、図15(a)に符号nで示すように、その断面において、せん断中心と称され、ねじり入力に対する断面のねじり中心となる点がある。
【0005】
ところで、従来のトーションビーム部材209は、単に直線状に設定され、各断面におけるせん断中心nを結ぶせん断中心線mも直線状になっていた(図15(b))。また、車体のロールに伴いトーションビーム部材209がねじられる際には、せん断中心線mと車両中心断面(垂直面)との交点がねじれ変形時の不動点P(ねじれ変形の中心点)となっていた。
【0006】
したがって、左右の車輪支持体205は、それぞれ、上記不動点Pとトレーリングアーム205aの前端部207の支持点中心207aとを結ぶ軸線Aの周りに回転するような動きをする。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、トーションビーム209が直線状であると、せん断中心線mがトーションビーム部材209に近く、不動点Pがトーションビーム部材209の近傍に位置することになる。このため、図16(平面視)における軸線Aとせん断中心線mとのなす角度αが大きくなり、車体ロール時の旋回外輪(例えば203L )の対車体ネガティブ方向のキャンバ角変化が大きくなるという問題があった。
【0008】
また、図17(後面視)に示すように、車両後面視における、軸線Aとせん断中心線mとのなす角度βは、車体ロール時の旋回外輪203L のトー角変化特性に影響し、軸線Aが外下がりになっていると、旋回外輪203L 側(対車体バウンド側車輪)がトーイン方向のトー角変化(ロールアンダステア)となり、軸線Aが外上がりになっていると、旋回外輪203L 側がトーアウト方向のトー角変化(ロールオーバステア)となる。
【0009】
これに対し、従来は、トーションビーム部材209の断面形状や断面の向きなどを調整して、サスペンションのキャンバ角変化特性や、トー角変化特性を調整していた。
【0010】
しかし、断面形状や向きを調整することにより不動点Pの位置をトーションビーム部材209から離して配置しようとしても、トーションビーム部材209が直線状であるため限界があり、望ましいキャンバ角変化特性や、トー角変化特性を得るのに困難を伴っていた。
【0011】
さらに図18(平面視)に示すように、サスペンション装置近傍にはトーションビーム部材209の配置を規制する燃料タンク211やスペアタイヤ収納部213などがあるため、望ましいキャンバ角変化特性の設定がより困難を伴っていた。
【0012】
また、図19(車両中心側から見た側面視)に示すように、車体フロアや車体サイドメンバ215を低く配置して、車両の室内・荷室スペースを大きく確保することを狙った車両の場合には、車両/サスペンション間のレイアウト上の制約があり、不動点Pの位置を、図18の軸線A’上のP’点(望ましいキャンバ角変化特性が得られる点)や、図19の軸線A”上のP”点(望ましいトー角変化特性が得られる点)とする配置が困難となっていた。
【0013】
一方、特開平8−324218号公報には、曲線部を持つ部材でトーションビーム部材を構成したものが開示されているが、トーションビーム部材とトレーリングアームとの連結点付近でトーションビーム部材の剛性を高めるようにガセット部材で補強しているので、前記と同様に、トーションビーム部材全体のねじれ中心が上記不動点Pとほぼ一致し、上記問題の解決には至っていない。
【0014】
そこで、本発明は、配置の自由度が大きく、かつ望ましいキャンバ角変化特性やトー角変化特性が得られるリアサスペンション装置の提供を課題とする。
【0015】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するために、請求項1に記載の発明は、車輪を支持する左右の車輪支持体が、それぞれ車両前方に延びるサスペンションアームに取り付けられ、該サスペンションアームの前端部が車体側に上下揺動可能に回転支持され、前記左右の車輪支持体またはサスペンションアームが、車両横方向に延びてねじれ変形を許容するトーションビーム部材で結合されたリアサスペンション装置において、前記トーションビーム部材は、横方向部および該横方向部の両側に延びる両端部で構成され、且つ各断面のせん断中心を結ぶせん断中心線が前記横方向部ではほぼ水平に延びると共に、前記両端部ではこれと交差して延び、前記両端部のねじり剛性が横方向部のねじり剛性よりも低くなるように設定したことを特徴とする。
【0016】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載のリアサスペンション装置であって、前記両端部のせん断中心線が、車両平面視において前記横方向部のせん断中心線に対し交差して設定されたことを特徴とする。
【0017】
請求項3に記載の発明は、請求項1または2に記載のリアサスペンション装置であって、前記両端部のせん断中心線が、車両後面視において前記横方向部のせん断中心線に対し交差して設定されたことを特徴とする。
【0018】
請求項4に記載の発明は、請求項3に記載のリアサスペンション装置であって、前記両端部のせん断中心線が、車両後面視において前記横方向部のせん断中心線に対し下方に傾斜して延びるように設定されたことを特徴とする。
【0019】
請求項5に記載の発明は、請求項1〜4のいずれかに記載のリアサスペンション装置であって、前記両端部が、前記トーションビーム部材と前記車輪支持体またはサスペンションアームとの結合部近傍に設けられたことを特徴とする。
【0020】
請求項6に記載の発明は、請求項5に記載のリアサスペンション装置であって、前記両端部は開断面に形成され、横方向部は閉断面に形成されたことを特徴とする。
【0021】
請求項7に記載の発明は、請求項5に記載のリアサスペンション装置であって、前記両端部は、各断面の図心から一方向に隔たった位置にせん断中心線を有し、前記横方向部および両端部のせん断中心線は、同一平面内に存在することを特徴とする。
【0022】
請求項8に記載の発明は、請求項5に記載のリアサスペンション装置であって、前記両端部が、連続的にひねられた断面形状を有することを特徴とする。
【0023】
【発明の効果】
請求項1に記載の発明によれば、車体ロール時にトーションビーム部材に生じるねじれ変位は、車両横方向のせん断中心線周りに回転するようなねじれ変位と、車両横方向のせん断中心線と交差して延びるせん断中心線周りに回転するようなねじれ変位とに分けて考えられ、それぞれのねじれ変位におけるトーションビーム部材の車両中心断面でのねじれ中心位置は、車両中心断面とそれぞれのせん断中心線との交点として得られ、両端部のせん断中心線との交点は横方向のせん断中心線との交点よりもトーションビーム部材からより大きく隔たって位置する。
【0024】
そして、ねじれ変位の大部分はねじり剛性が相対的に低い両端部で生じるので、トーションビーム部材全体の車両中心断面でのねじれ中心位置(不動点位置)は、両端部のせん断中心線との交点位置の近傍に位置し、トーションビーム部材からより隔たった位置に配置されることになる。このため、前記従来例と異なり、車両平面視における角度α(図16)を小さく設定することができ、また全体のねじれ中心位置をトーションビーム部材から上方へより隔たった位置に配置(図19)することができ、望ましいキャンバ角変化特性やトー角変化特性を設定するのが容易である。
【0025】
請求項2に記載の発明によれば、請求項1の発明の効果に加え、車両平面視において角度αを小さく設定できるので、不動点をトーションビーム部材に対して大きく隔たって配置することができ、車体ロール時の旋回外輪の対車体ネガティブ方向キャンバ角変化を小さく抑えることができる。
【0026】
請求項3に記載の発明によれば、請求項1または2の発明の効果に加え、不動点をトーションビーム部材に対して上下へ大きく隔たって配置することができる。したがって、車両後面視における不動点とサスペンションアームの前端部とを結ぶ線を外下がりまたは外上がりに設定できるので、車体ロール時に旋回外輪のトー角変化をトーイン方向またはトーアウト方向とし、ロールアンダステア特性またはロールオーバ特性を得ることができる。
【0027】
請求項4に記載の発明によれば、請求項3の発明の効果に加え、不動点をトーションビーム部材に対して上方へ大きく隔たって配置することができるので、不動点とサスペンションアームの前端部とを結ぶ線を外下がりに設定でき、車体ロール時に旋回外輪のトー角変化をトーイン方向とし、ロールアンダステア特性を得ることができる。
【0028】
請求項5に記載の発明によれば、請求項1〜4のいずれかの発明の効果に加え、車輪支持体またはサスペンションアームとトーションビーム部材との結合部近傍にねじり剛性の低い両端部が設けられているので、不動点をトーションビーム部材から大きく隔たって位置させることができ、より確実な効果が得られる。
【0029】
請求項6に記載の発明によれば、請求項5の発明の効果に加え、両端部と横方向部とのそれぞれのねじり剛性違いを確実に設定することができる。
【0030】
請求項7に記載の発明によれば、請求項5の発明の効果に加え、トーションビーム部材の横方向部および両端部のせん断中心線が同一平面内に存在し、不動点のトーションビーム部材に対する水平方向、垂直方向、斜め方向の配置のいずれも容易となり、レイアウトの自由度を拡大することができる。
【0031】
請求項8に記載の発明によれば、請求項5の発明の効果に加え、両端部のひねり方により、不動点位置をトーションビーム部材から大きく隔たった位置に設定することが可能であり、より確実且つ自由度の大きな効果が得られる。
【0032】
【発明の実施の形態】
[第1実施形態]
本発明の第1実施形態を図1〜図5により説明する。図1は本実施形態のリアサスペンション装置1の構成概要を示す平面図と部分断面図であり、図の上方が車両前方である。図2〜図5は説明図であり、図の内容については後述する。まず、構成を説明する。
【0033】
図1(リアサスペンション装置1の平面視)に示すように、左右の後輪3L,3R を回転自在に支持する車輪支持体5,5はそれぞれ車体前方に延びるトレーリングアーム(サスペンションアーム)5a,5aに取り付けられている。トレーリングアーム5aの前端部は弾性ブッシュ7を介して図示しない車体側骨格部材に上下揺動可能に回転支持され、車幅方向に延びるクロスビーム(トーションビーム部材)9が左右のトレーリングアーム5a,5aを結合している。なお、クロスビーム9は、車輪支持体5を結合する構成にすることもできる。クロスビーム9の前方には燃料タンク11が配置されている。
【0034】
前記クロスビーム9は、車体横方向に延びる中央部(横方向部)13と、その両側に中央部13と交差して車両斜め後方に延びる両端部15,15とを有し、水平に配置されている。そして、両端部15,15の外端に、左右のトレーリングアーム5a,5aの後部を結合している。
【0035】
また、図1の各断面図(中央部13と両端部15,15における車両前後方向の断面図)に示すように、クロスビーム9の中央部13では、車両後方に開口したU字形断面が補強板17の接合により閉断面化され、両端部15,15の断面では、同じ向きのU字形開断面に形成されている。中央部13の閉断面におけるせん断中心nは閉断面内に存在している。一方、両端部15の開断面におけるせん断中心nは、各断面の図心(図示省略)から前方に離れて断面の前外側近傍に位置し、一水平面内に分布している。
【0036】
図2(クロスビーム9の平面視)は上記各断面のせん断中心nを結んだせん断中心線の分布状態を示す。図中に破線で示すように、中央部13では、せん断中心線mが車幅方向にほぼ水平に延び、両端部15,15のせん断中心線m’は中央部13のせん断中心線mに対し交差して車両斜め後方に延び、両せん断中心線m,m’は同一水平面内に位置している。
【0037】
上記のような断面構成により、クロスビーム9の両端部15,15のねじり剛性は中央部13のねじり剛性よりも低く設定されている。
【0038】
なお、中央部13のねじり剛性を高くするために、この部を閉断面にする代りに中央部13の板厚を厚くするなどしてもよい。
【0039】
つぎに、このリアサスペンション装置1の作用を図3〜図5により説明する。今、車両の右旋回時における左後輪(旋回外輪)3L 側を例にとって説明する。右旋回のロール時のクロスビーム9全体のねじれ変形は、ねじり剛性が比較的低い両端部15,15だけのねじれ変形の寄与と、ねじり剛性が高い中央部13だけのねじれ変形の寄与とに分けて考えられる。
【0040】
図3(a)は、両端部15,15だけのねじれ変形の寄与を考えた場合のねじれ状態を示す。この場合には、クロスビーム9のねじれはせん断中心線m’周りのねじれとなり、中央部13もあたかもせん断中心線m’周りに回転するように変位することになる。したがって、せん断中心線m’の延長線と車両中心断面(垂直面)との交点Pa が、クロスビーム9のこのねじれ変形による車両中心断面での動きの不動点に相当する。
【0041】
図3(b)は、中央部13だけのねじれ変形の寄与を考えた場合のねじれ状態を示す。この場合には、クロスビーム9のねじれはせん断中心線m周りに回転するように変位することになる。したがって、せん断中心線mと車両中心断面との交点Pb が、クロスビーム9のこのねじれ変形による車両中心断面での動きの不動点に相当する。
【0042】
図4(a)は、クロスビーム9全体のねじれ変形について考えた場合のねじれ状態を示す。この場合には、ねじれ変形の大部分はねじり剛性が低い端部15で起こるため、このときのクロスビーム9の車両中心断面の不動点Pt は、図示のように、上記不動点Pa ,Pb の間でPa に近い位置にあることになる。すなわち、不動点Pt はクロスビーム9から前方へ大きく隔たった位置にある。
【0043】
図4(b)は、不動点Pt の位置の求め方を示す。同図において、
L :クロスビームの車両中心断面での基準点Oと不動点Pt との間の距離
ds:クロスビームの微小区間長さ
K :微小区間dsでの単位長さ当りのねじり剛性
M :クロスビームで発生しているねじりモーメント
2θ:左右のトレーリングアームの相対回転角(クロスビームのねじれ角)
r :微小区間dsでの断面のせん断中心を結ぶせん断中心線と基準点Oとの間の距離
s :クロスビーム長さの1/2
としたとき、距離Lは次式により求められる。
【0044】
【数1】
こうして、クロスビーム9全体での車両中心断面での不動点Pt の位置がクロスビーム9から大きく隔たった位置に設定される。
【0045】
図5は、リアサスペンション装置1のねじれ変形の中心軸線を示す。図示のように、右旋回による車体のロール時には、旋回外輪3L の車輪支持体5は、上記不動点Pt とトレーリングアーム5aの弾性ブッシュ7の支持中心7aとを結ぶ軸線A周りに回転する。このとき、不動点Pt の位置がクロスビーム9から前方に隔たった位置に設定されているので、軸線Aが車幅方向線に対してなす角αが小さく、外輪3L の対車体ネガティブキャンバ変化は小さく抑えられ、旋回特性変化を抑制することができる。
【0046】
なお、図5では、図1と同様に燃料タンク11が近接配置され、クロスビーム9を比較的車両後方に配置せざるを得ない場合であるが、このような場合でも、ねじり剛性の低い端部15を中央部13に対して斜め後方へ延びるように設けることにより、不動点Pt をクロスビーム9から前方に離すことができ、これによって軸線Aの傾き角αを調整・設定し、所望のキャンバ角変化特性を得ることができる。
【0047】
こうして、本実施形態によれば、クロスビーム9の両端部15,15のねじり剛性が中央部13に比べて低く設定され、ねじれ変形の大部分がこの端部15で生じるため、車両レイアウト上の制約があっても、クロスビーム9全体での車両中心断面の不動点Pt の位置をクロスビーム9から大きく前方に隔たって配置設定することが可能となる。
【0048】
これにより、車体ロール時の旋回外輪3L の対車体ネガティブキャンバ変化は小さく抑えられ、旋回特性変化を抑制することができ、走行安定性をより向上することができる。
【0049】
[第2実施形態]
本発明の第2実施形態を図6、図7により説明する。図6は本実施形態のリアサスペンション装置21の構成概要を示す後面図と部分断面図であり、図7はせん断中心線の分布を示す説明図である。
【0050】
このリアサスペンション装置21は、クロスビーム(トーションビーム部材)29の両端部35,35が垂直面内で斜め下方に向って傾斜する構成である点と、クロスビーム29の断面形状とが上記第1実施形態と異なる。その他の構成は第1実施形態と同様であるので、同符号を付した部材の説明および重複する説明は省略する。
【0051】
図6(リアサスペンション装置21の後面視)に示すように、クロスビーム29は水平に車幅方向に延びる中央部33と、これと同一の垂直面内で車体外方に斜め下方に傾斜する両端部35,35とを有している。左右のトレーリングアーム(サスペンションアーム)5bは、その前端部の弾性ブッシュ7が地上高の低いところで車体側骨格部材に上下揺動可能に回転支持されている。従って、クロスビーム29は地上高の低いところで左右のトレーリングアーム5b,5bを結合している。
【0052】
また、図6の各断面図(中央部33と両端部35,35における垂直方向の断面図)に示すように、クロスビーム29の中央部33は、ほぼ四角形の閉断面に形成されてねじり剛性が高く、せん断中心nは閉断面内に存在している。一方、両端部35,35は車体下方に向って開口する逆V字形の開断面に形成されてねじり剛性が中央部33のそれよりも低く形成され、各断面におけるせん断中心nは、各断面の図心(図示省略)から上方に離れて断面の上外側近傍に位置し、一垂直面内に分布している。
【0053】
図7(クロスビーム29の後面視)はクロスビーム29の上記各断面のせん断中心nを結んだせん断中心線の分布状態を示す。図中に破線で示すように、中央部33ではせん断中心線mが車幅方向にほぼ水平に延び、両端部35,35のせん断中心nを結ぶせん断中心線m’が端部35の傾斜に沿って延び、両せん断中心線m,m’は垂直な同一平面内にある。
【0054】
上記のような構成により、図6に示すように、クロスビーム29全体の車両中心断面での不動点(回転中心)Pt はせん断中心線m’の延長線と車両中心断面との交点Pa よりも若干下方(路面側)に位置し、クロスビーム29からは大きく上方に隔たった位置にある。
【0055】
したがって、例えば前記従来例の図19(側面視)のP”点のように、クロスビーム29の地上高がレイアウト上、低く制限されているような場合においても、不動点Pt の地上高を高く配置することができる。
【0056】
こうして、図6(後面視)における、不動点Pt とトレーリングアーム5bの支持中心7aとを結ぶ軸線Aが外下がり状態となるので、ロール時の旋回外輪側(対車体バウンド側車輪)3L ではトーイン方向のトー角変化(ロールアンダステア)となる。
【0057】
こうして、本実施形態によれば、クロスビーム29の両端部35,35のねじり剛性が中央部33に比べて低く設定され、ねじれ変形の大部分がこの端部35で生じるため、上記のようなクロスビーム29のレイアウト上の制約があっても、クロスビーム29全体での車両中心断面の不動点Pt の位置をクロスビーム29から大きく上方に隔たって配置設定することが可能となる。
【0058】
これにより、車体ロール時に旋回外輪のトー角変化をトーイン方向とし、望ましいロールアンダステア特性を得ることができる。
【0059】
[第3実施形態]
本発明の第3実施形態を図8〜図10により説明する。図8は本実施形態のクロスビーム59の平面図と矢印部の断面図であり、図の上方が車両前方である。図9、図10は説明図であり、図の内容については後述する。まず、構成を説明する。
【0060】
本実施形態のリアサスペンション装置は、クロスビーム(トーションビーム部材)59の構造が上記第2実施形態(図6、図7)と異なる。その他の構成は第2実施形態と同様であるので相違点を説明し、重複する説明は省略する。
【0061】
図8(平面視)に示すように、クロスビーム59は水平に車幅方向に延びる中央部63と、その両側に車幅方向に延びる両端部65,65とを有し、また、図8の各断面図(中央部63の断面図と両端部65,65の矢印部の断面図)に示すように、中央部63は丸パイプ状断面(閉断面)に形成されてねじり剛性が高く、両端部65,65はほぼ車両後方に向って開口するU字状断面(開断面)形状に形成されると共に、中央部63と隣接する部分が一旦斜め下方にひねられ、この部分から両外方へ向かってそのひねりが連続して徐々に斜め上向きのひねりに変化するようにひねりを加えられて形成され、そのねじり剛性は中央部63のそれよりも低く設定されている。
【0062】
また、図8の各断面図に示すように、中央部63のせん断中心nは閉断面内に存在し、両端部65,65ではU字状断面の中心線上で湾曲した壁部の外側近傍に位置している。
【0063】
図9(後面視)は上記各断面のクロスビーム59のせん断中心nを結んだせん断中心線の分布状態を示す。図中に破線で示すように、中央部63では、せん断中心線mが車幅方向にほぼ水平に延び、両端部65,65のせん断中心線m’は中央部63のせん断中心線mに対し交差して車幅方向外下がりに傾斜している。
【0064】
このような構成により、クロスビーム59全体の車両中心断面の不動点(回転中心)Pt はせん断中心線m’の延長線と車両中心断面との交点Pa よりも若干下方(路面側)に位置し、クロスビーム59からは上方に隔たった位置にある。
【0065】
こうして、本実施形態によれば、上記第2実施形態と同様の作用・効果が得られると共に、本実施形態のクロスビーム59は、上記第2実施形態のクロスビーム29(図6、図7)よりも直線的な形状となるので、より狭いスペースに適用配置可能となり、適用性の面でより有利である。
【0066】
なお、本実施形態のクロスビーム59は、上記第1実施形態の平面視でのクロスビーム9(図1)のような傾斜した両端部15,15を有しない構成であるので、レイアウト上の競合要因との問題解消策として適用することも可能である。
【0067】
なお、図10(平面視)により、本第3実施形態(図8)および上記第2実施形態(図6)のクロスビーム59,29の適用によりトー角変化特性を改善した場合に、副次的に生じる作用を説明する。
【0068】
第3、第2実施形態では、クロスビーム59,29全体の車両中心断面での不動点(回転中心)Pt の地上高をクロスビーム59,29本体よりも高く配置できるので、トレーリングアーム5aを固定して考えると、クロスビーム59,29はねじれながら前後に変形するようなモードでねじれる。第3、第2実施形態の構成によれば、図10(a)に示すように、この前後への変形量Bを大きくすることができる。
【0069】
実際にはクロスビーム59,29の中央部63,33は両端部65,35と一体につながっているので、図10(b)に破線で全体の動きを示すように、サスペンションは、旋回外輪3L を外側に押し出すような横方向のスカッフ変化δを伴いながら、トー変化する。このスカッフ変化は、車両の横運動をより安定化させる。すなわち、上記第3、第2実施形態においては、トー角変化が改善されるだけでなく、ロールに伴うタイヤのスカッフ変化も、車両の応答性、安定性上、より望ましい方向に変化する。
【0070】
[第4実施形態]
本発明の第4実施形態を図11、図12により説明する。図11は本実施形態のリアサスペンション装置71の平面図と矢印部の断面図であり、図11の上方が車両前方である。図12は後面図である。
【0071】
本実施形態のリアサスペンション装置71は、クロスビーム(トーションビーム部材)79の構造が上記第1実施形態(図1)と異なる。その他の構成は第1実施形態と同様であるので相違点を説明し、重複する説明は省略する。
【0072】
図11(リアサスペンション装置71の平面視)および図12(後面視)に示すように、クロスビーム79は、水平に車幅方向に延びる中央部83と、中央部83の両側に配置され、車両後方に傾斜して延びると共に、下方に傾斜して延びる両端部85,85とを有する。そして、図11の各断面図(中央部83と両端部85,85の矢印部の断面図)に示すように、中央部83はU字状の閉断面に形成され、各断面におけるせん断中心nは閉断面内に存在する。一方、両端部85,85は斜め下方に開口したU字状の開断面に形成され、各断面におけるせん断中心nはU字状断面の中心線上で湾曲した壁部の外側近傍に位置している。これにより、両端部85,85のねじり剛性は中央部83のそれよりも低く設定されている。
【0073】
図11(平面視)、図12(後面視)に破線で示すように、中央部83では、せん断中心nを結ぶせん断中心線mが車幅方向にほぼ水平に延び、両端部65,65のせん断中心線m’は中央部63のせん断中心線mに対し平面視および後面視で共に交差している。詳しくは、平面視では車両後方へ傾斜し、後面視では車幅方向外下がりに傾斜している。そして、せん断中心線mとm’とは路面に対して車両の前方向に傾斜した同一平面内にある。
【0074】
このような構成により、クロスビーム79全体の車両中心断面の不動点Pt の位置は、平面視および後面視において、それぞれ軸線m’と車両中心断面との交点よりも若干後方および下方に位置し、クロスビーム79から前方および上方に隔たった位置にある。
【0075】
こうして、本実施形態によれば、平面視における軸線Aの車幅方向とのなす角角度αが小さく抑えられ、上記第1実施形態と同様に車体ロール時の旋回外輪3L の対車体ネガティブキャンバ変化は小さく、旋回特性変化を抑制することができ、走行安定性をより向上することができる。
【0076】
また、後面視における軸線Aが外下がりとなるので、上記第2、第3実施形態と同様にロール時の旋回外輪3L 側(対車体バウンド側車輪)ではトーイン方向のトー角変化(ロールアンダステア)となって、望ましいロールアンダステア特性を得ることができる。
【0077】
[第5実施形態]
本発明の第5実施形態を図13により説明する。図13は、本実施形態のリアサスペンション装置91の構成を示す斜視図である。図13において、ほぼ左方が車両前方である。
【0078】
本実施形態はいわゆるパナールロッドと呼ばれるリンクを用いている点と、クロスビーム(トーションビーム部材)の断面形状が上記第1実施形態と異なる。その他の構成は第1実施形態と同様であるので、重複する説明は省略する。
【0079】
図13に示すように、パナールロッド92はクロスビーム99の後部側に配置され、一端92aを車体側部材に、他端92bを車輪支持体5にそれぞれ弾性ブッシュを介して揺動可能に支持され、リアサスペンション装置91の横方向の動きを拘束している。また、左右のコイルスプリングおよびショックアブソーバ94が車輪支持体5に取り付けられている。
【0080】
そして、クロスビーム99は水平に配置され、その断面形状(図示)は上記第2実施形態(図6)と同様に、中央部103はほぼ四角形の閉断面に形成され、中央部103の両側に配置された両端部105,105は後方に開口するV字形断面の形状に形成されると共に車両斜め後方に延びている。両端部105,105のねじり剛性は中央部103のそれよりも低く設定されている。
【0081】
このような構成により、クロスビーム99全体の車両中心断面での不動点(回転中心)Pt は、両端部105,105のせん断中心線m’の延長線と車両中心断面との交点よりも若干車両後方に位置し、クロスビーム99から前方に離れて位置している。そして、中央部103のせん断中心線mと両端部105,105のせん断中心線m’(図示省略)とは水平の同一平面内にある。
【0082】
このような構成により、本実施形態によれば、パナールロッド92による横方向の拘束を受けつつ、上記第1実施形態と同様に、車体ロール時の旋回外輪の対車体ネガティブキャンバ変化は小さく抑えられ、旋回特性変化を抑制することができ、走行安定性をより向上することができる。
【0083】
[第6実施形態]
本発明の第6実施形態を図14により説明する。図14は本実施形態のクロスビーム(トーションビーム部材)119の平面図と部分断面図である。図14の上方が車両前方である。
【0084】
本実施形態はクロスビーム119の断面形状が上記第1実施形態と異なり、その他の構成は第1実施形態と同様であるので、重複する説明は省略する。
【0085】
図14に示すように、クロスビーム119は丸パイプ断面形状に形成され、水平に車幅方向に延びる中央部123と、中央部123よりも小径の丸パイプ断面形状に形成され中央部123の両側に車両斜め後方に延びる両端部125,125とを有する。こうして、両端部125,125のねじり剛性は中央部123のそれよりも低く設定されている。
【0086】
そして、クロスビーム119全体の車両中心断面での不動点Pt は、両端部125,125のせん断中心線m’と車両中心断面との交点Pa よりも若干車両後方に位置し、クロスビーム119から前方に離れて位置している。
【0087】
このような構成により、本実施形態によれば、上記第1実施形態と同様に車体ロール時の旋回外輪の対車体ネガティブキャンバ変化は小さく抑えられ、旋回特性変化を抑制することができ、走行安定性をより向上することができる。
【0088】
また、クロスビーム119は、いわゆるハイドロフォーミングといった高能率の生産方式で製造できるので、生産性が向上する。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1実施形態の構成概要を示す平面図と部分断面図である。
【図2】第1実施形態のせん断中心線の分布状態を示す説明図である。
【図3】第1実施形態のねじれ中心の説明図である。
【図4】第1実施形態のねじれ中心の説明図である。
【図5】第1実施形態の作用説明図である。
【図6】本発明の第2実施形態の構成概要を示す後面図と部分断面図である。
【図7】第2実施形態のせん断中心線の分布状態を示す説明図である。
【図8】本発明の第3実施形態の要部の平面図と矢印部の断面図である。
【図9】第3実施形態のせん断中心線の分布状態を示す説明図である。
【図10】第3実施形態の作用説明図である。
【図11】本発明の第4実施形態の平面図と矢印部の断面図である。
【図12】第4実施形態の後面図である。
【図13】本発明の第5実施形態の構成概要を示す斜視図である。
【図14】本発明の第6実施形態の要部の平面図と部分断面図である。
【図15】a図は従来例の要部の断面図で、b図は従来例の斜視図である。
【図16】従来例の作用説明図である。
【図17】従来例の作用説明図である。
【図18】従来例の作用説明図である。
【図19】従来例の作用説明図である。
【符号の説明】
3L ,3R 左右の後車輪
5 車輪支持体
5a,5b トレーリングアーム(サスペンションアーム)
7a トレーリングアームの前端支持点
9,29,59,79,99.119 クロスビーム(トーションビーム部材)
13,33,63,83,103,123 中央部(横方向部)
15,35,85,125 端部
m,m’ せん断中心線
Pt 車両中心断面での不動点
【発明の属する技術分野】
本発明は、自動車に用いられるいわゆるトーションビーム式のリアサスペンション装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来のトーションビーム式リアサスペンション装置としては、例えば特開平5−278424号公報に開示されたものがある。
【0003】
このような従来のリアサスペンション装置として、例えば図15(b)に示すものでは、左右の車輪を支持する車輪支持体205がトレーリングアーム205aに取り付けられ、該トレーリングアーム205aは車体前方に延びて前端部207が車体に上下揺動可能に回転支持され、左右のトレーリングアーム205a間にトーションビーム部材209が結合されている。
【0004】
このトーションビーム部材209は、車体ロール時に左右輪間でねじられ、スプリング反力を発生してロール剛性を高めるものであり、図15(a)に符号nで示すように、その断面において、せん断中心と称され、ねじり入力に対する断面のねじり中心となる点がある。
【0005】
ところで、従来のトーションビーム部材209は、単に直線状に設定され、各断面におけるせん断中心nを結ぶせん断中心線mも直線状になっていた(図15(b))。また、車体のロールに伴いトーションビーム部材209がねじられる際には、せん断中心線mと車両中心断面(垂直面)との交点がねじれ変形時の不動点P(ねじれ変形の中心点)となっていた。
【0006】
したがって、左右の車輪支持体205は、それぞれ、上記不動点Pとトレーリングアーム205aの前端部207の支持点中心207aとを結ぶ軸線Aの周りに回転するような動きをする。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、トーションビーム209が直線状であると、せん断中心線mがトーションビーム部材209に近く、不動点Pがトーションビーム部材209の近傍に位置することになる。このため、図16(平面視)における軸線Aとせん断中心線mとのなす角度αが大きくなり、車体ロール時の旋回外輪(例えば203L )の対車体ネガティブ方向のキャンバ角変化が大きくなるという問題があった。
【0008】
また、図17(後面視)に示すように、車両後面視における、軸線Aとせん断中心線mとのなす角度βは、車体ロール時の旋回外輪203L のトー角変化特性に影響し、軸線Aが外下がりになっていると、旋回外輪203L 側(対車体バウンド側車輪)がトーイン方向のトー角変化(ロールアンダステア)となり、軸線Aが外上がりになっていると、旋回外輪203L 側がトーアウト方向のトー角変化(ロールオーバステア)となる。
【0009】
これに対し、従来は、トーションビーム部材209の断面形状や断面の向きなどを調整して、サスペンションのキャンバ角変化特性や、トー角変化特性を調整していた。
【0010】
しかし、断面形状や向きを調整することにより不動点Pの位置をトーションビーム部材209から離して配置しようとしても、トーションビーム部材209が直線状であるため限界があり、望ましいキャンバ角変化特性や、トー角変化特性を得るのに困難を伴っていた。
【0011】
さらに図18(平面視)に示すように、サスペンション装置近傍にはトーションビーム部材209の配置を規制する燃料タンク211やスペアタイヤ収納部213などがあるため、望ましいキャンバ角変化特性の設定がより困難を伴っていた。
【0012】
また、図19(車両中心側から見た側面視)に示すように、車体フロアや車体サイドメンバ215を低く配置して、車両の室内・荷室スペースを大きく確保することを狙った車両の場合には、車両/サスペンション間のレイアウト上の制約があり、不動点Pの位置を、図18の軸線A’上のP’点(望ましいキャンバ角変化特性が得られる点)や、図19の軸線A”上のP”点(望ましいトー角変化特性が得られる点)とする配置が困難となっていた。
【0013】
一方、特開平8−324218号公報には、曲線部を持つ部材でトーションビーム部材を構成したものが開示されているが、トーションビーム部材とトレーリングアームとの連結点付近でトーションビーム部材の剛性を高めるようにガセット部材で補強しているので、前記と同様に、トーションビーム部材全体のねじれ中心が上記不動点Pとほぼ一致し、上記問題の解決には至っていない。
【0014】
そこで、本発明は、配置の自由度が大きく、かつ望ましいキャンバ角変化特性やトー角変化特性が得られるリアサスペンション装置の提供を課題とする。
【0015】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するために、請求項1に記載の発明は、車輪を支持する左右の車輪支持体が、それぞれ車両前方に延びるサスペンションアームに取り付けられ、該サスペンションアームの前端部が車体側に上下揺動可能に回転支持され、前記左右の車輪支持体またはサスペンションアームが、車両横方向に延びてねじれ変形を許容するトーションビーム部材で結合されたリアサスペンション装置において、前記トーションビーム部材は、横方向部および該横方向部の両側に延びる両端部で構成され、且つ各断面のせん断中心を結ぶせん断中心線が前記横方向部ではほぼ水平に延びると共に、前記両端部ではこれと交差して延び、前記両端部のねじり剛性が横方向部のねじり剛性よりも低くなるように設定したことを特徴とする。
【0016】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載のリアサスペンション装置であって、前記両端部のせん断中心線が、車両平面視において前記横方向部のせん断中心線に対し交差して設定されたことを特徴とする。
【0017】
請求項3に記載の発明は、請求項1または2に記載のリアサスペンション装置であって、前記両端部のせん断中心線が、車両後面視において前記横方向部のせん断中心線に対し交差して設定されたことを特徴とする。
【0018】
請求項4に記載の発明は、請求項3に記載のリアサスペンション装置であって、前記両端部のせん断中心線が、車両後面視において前記横方向部のせん断中心線に対し下方に傾斜して延びるように設定されたことを特徴とする。
【0019】
請求項5に記載の発明は、請求項1〜4のいずれかに記載のリアサスペンション装置であって、前記両端部が、前記トーションビーム部材と前記車輪支持体またはサスペンションアームとの結合部近傍に設けられたことを特徴とする。
【0020】
請求項6に記載の発明は、請求項5に記載のリアサスペンション装置であって、前記両端部は開断面に形成され、横方向部は閉断面に形成されたことを特徴とする。
【0021】
請求項7に記載の発明は、請求項5に記載のリアサスペンション装置であって、前記両端部は、各断面の図心から一方向に隔たった位置にせん断中心線を有し、前記横方向部および両端部のせん断中心線は、同一平面内に存在することを特徴とする。
【0022】
請求項8に記載の発明は、請求項5に記載のリアサスペンション装置であって、前記両端部が、連続的にひねられた断面形状を有することを特徴とする。
【0023】
【発明の効果】
請求項1に記載の発明によれば、車体ロール時にトーションビーム部材に生じるねじれ変位は、車両横方向のせん断中心線周りに回転するようなねじれ変位と、車両横方向のせん断中心線と交差して延びるせん断中心線周りに回転するようなねじれ変位とに分けて考えられ、それぞれのねじれ変位におけるトーションビーム部材の車両中心断面でのねじれ中心位置は、車両中心断面とそれぞれのせん断中心線との交点として得られ、両端部のせん断中心線との交点は横方向のせん断中心線との交点よりもトーションビーム部材からより大きく隔たって位置する。
【0024】
そして、ねじれ変位の大部分はねじり剛性が相対的に低い両端部で生じるので、トーションビーム部材全体の車両中心断面でのねじれ中心位置(不動点位置)は、両端部のせん断中心線との交点位置の近傍に位置し、トーションビーム部材からより隔たった位置に配置されることになる。このため、前記従来例と異なり、車両平面視における角度α(図16)を小さく設定することができ、また全体のねじれ中心位置をトーションビーム部材から上方へより隔たった位置に配置(図19)することができ、望ましいキャンバ角変化特性やトー角変化特性を設定するのが容易である。
【0025】
請求項2に記載の発明によれば、請求項1の発明の効果に加え、車両平面視において角度αを小さく設定できるので、不動点をトーションビーム部材に対して大きく隔たって配置することができ、車体ロール時の旋回外輪の対車体ネガティブ方向キャンバ角変化を小さく抑えることができる。
【0026】
請求項3に記載の発明によれば、請求項1または2の発明の効果に加え、不動点をトーションビーム部材に対して上下へ大きく隔たって配置することができる。したがって、車両後面視における不動点とサスペンションアームの前端部とを結ぶ線を外下がりまたは外上がりに設定できるので、車体ロール時に旋回外輪のトー角変化をトーイン方向またはトーアウト方向とし、ロールアンダステア特性またはロールオーバ特性を得ることができる。
【0027】
請求項4に記載の発明によれば、請求項3の発明の効果に加え、不動点をトーションビーム部材に対して上方へ大きく隔たって配置することができるので、不動点とサスペンションアームの前端部とを結ぶ線を外下がりに設定でき、車体ロール時に旋回外輪のトー角変化をトーイン方向とし、ロールアンダステア特性を得ることができる。
【0028】
請求項5に記載の発明によれば、請求項1〜4のいずれかの発明の効果に加え、車輪支持体またはサスペンションアームとトーションビーム部材との結合部近傍にねじり剛性の低い両端部が設けられているので、不動点をトーションビーム部材から大きく隔たって位置させることができ、より確実な効果が得られる。
【0029】
請求項6に記載の発明によれば、請求項5の発明の効果に加え、両端部と横方向部とのそれぞれのねじり剛性違いを確実に設定することができる。
【0030】
請求項7に記載の発明によれば、請求項5の発明の効果に加え、トーションビーム部材の横方向部および両端部のせん断中心線が同一平面内に存在し、不動点のトーションビーム部材に対する水平方向、垂直方向、斜め方向の配置のいずれも容易となり、レイアウトの自由度を拡大することができる。
【0031】
請求項8に記載の発明によれば、請求項5の発明の効果に加え、両端部のひねり方により、不動点位置をトーションビーム部材から大きく隔たった位置に設定することが可能であり、より確実且つ自由度の大きな効果が得られる。
【0032】
【発明の実施の形態】
[第1実施形態]
本発明の第1実施形態を図1〜図5により説明する。図1は本実施形態のリアサスペンション装置1の構成概要を示す平面図と部分断面図であり、図の上方が車両前方である。図2〜図5は説明図であり、図の内容については後述する。まず、構成を説明する。
【0033】
図1(リアサスペンション装置1の平面視)に示すように、左右の後輪3L,3R を回転自在に支持する車輪支持体5,5はそれぞれ車体前方に延びるトレーリングアーム(サスペンションアーム)5a,5aに取り付けられている。トレーリングアーム5aの前端部は弾性ブッシュ7を介して図示しない車体側骨格部材に上下揺動可能に回転支持され、車幅方向に延びるクロスビーム(トーションビーム部材)9が左右のトレーリングアーム5a,5aを結合している。なお、クロスビーム9は、車輪支持体5を結合する構成にすることもできる。クロスビーム9の前方には燃料タンク11が配置されている。
【0034】
前記クロスビーム9は、車体横方向に延びる中央部(横方向部)13と、その両側に中央部13と交差して車両斜め後方に延びる両端部15,15とを有し、水平に配置されている。そして、両端部15,15の外端に、左右のトレーリングアーム5a,5aの後部を結合している。
【0035】
また、図1の各断面図(中央部13と両端部15,15における車両前後方向の断面図)に示すように、クロスビーム9の中央部13では、車両後方に開口したU字形断面が補強板17の接合により閉断面化され、両端部15,15の断面では、同じ向きのU字形開断面に形成されている。中央部13の閉断面におけるせん断中心nは閉断面内に存在している。一方、両端部15の開断面におけるせん断中心nは、各断面の図心(図示省略)から前方に離れて断面の前外側近傍に位置し、一水平面内に分布している。
【0036】
図2(クロスビーム9の平面視)は上記各断面のせん断中心nを結んだせん断中心線の分布状態を示す。図中に破線で示すように、中央部13では、せん断中心線mが車幅方向にほぼ水平に延び、両端部15,15のせん断中心線m’は中央部13のせん断中心線mに対し交差して車両斜め後方に延び、両せん断中心線m,m’は同一水平面内に位置している。
【0037】
上記のような断面構成により、クロスビーム9の両端部15,15のねじり剛性は中央部13のねじり剛性よりも低く設定されている。
【0038】
なお、中央部13のねじり剛性を高くするために、この部を閉断面にする代りに中央部13の板厚を厚くするなどしてもよい。
【0039】
つぎに、このリアサスペンション装置1の作用を図3〜図5により説明する。今、車両の右旋回時における左後輪(旋回外輪)3L 側を例にとって説明する。右旋回のロール時のクロスビーム9全体のねじれ変形は、ねじり剛性が比較的低い両端部15,15だけのねじれ変形の寄与と、ねじり剛性が高い中央部13だけのねじれ変形の寄与とに分けて考えられる。
【0040】
図3(a)は、両端部15,15だけのねじれ変形の寄与を考えた場合のねじれ状態を示す。この場合には、クロスビーム9のねじれはせん断中心線m’周りのねじれとなり、中央部13もあたかもせん断中心線m’周りに回転するように変位することになる。したがって、せん断中心線m’の延長線と車両中心断面(垂直面)との交点Pa が、クロスビーム9のこのねじれ変形による車両中心断面での動きの不動点に相当する。
【0041】
図3(b)は、中央部13だけのねじれ変形の寄与を考えた場合のねじれ状態を示す。この場合には、クロスビーム9のねじれはせん断中心線m周りに回転するように変位することになる。したがって、せん断中心線mと車両中心断面との交点Pb が、クロスビーム9のこのねじれ変形による車両中心断面での動きの不動点に相当する。
【0042】
図4(a)は、クロスビーム9全体のねじれ変形について考えた場合のねじれ状態を示す。この場合には、ねじれ変形の大部分はねじり剛性が低い端部15で起こるため、このときのクロスビーム9の車両中心断面の不動点Pt は、図示のように、上記不動点Pa ,Pb の間でPa に近い位置にあることになる。すなわち、不動点Pt はクロスビーム9から前方へ大きく隔たった位置にある。
【0043】
図4(b)は、不動点Pt の位置の求め方を示す。同図において、
L :クロスビームの車両中心断面での基準点Oと不動点Pt との間の距離
ds:クロスビームの微小区間長さ
K :微小区間dsでの単位長さ当りのねじり剛性
M :クロスビームで発生しているねじりモーメント
2θ:左右のトレーリングアームの相対回転角(クロスビームのねじれ角)
r :微小区間dsでの断面のせん断中心を結ぶせん断中心線と基準点Oとの間の距離
s :クロスビーム長さの1/2
としたとき、距離Lは次式により求められる。
【0044】
【数1】
こうして、クロスビーム9全体での車両中心断面での不動点Pt の位置がクロスビーム9から大きく隔たった位置に設定される。
【0045】
図5は、リアサスペンション装置1のねじれ変形の中心軸線を示す。図示のように、右旋回による車体のロール時には、旋回外輪3L の車輪支持体5は、上記不動点Pt とトレーリングアーム5aの弾性ブッシュ7の支持中心7aとを結ぶ軸線A周りに回転する。このとき、不動点Pt の位置がクロスビーム9から前方に隔たった位置に設定されているので、軸線Aが車幅方向線に対してなす角αが小さく、外輪3L の対車体ネガティブキャンバ変化は小さく抑えられ、旋回特性変化を抑制することができる。
【0046】
なお、図5では、図1と同様に燃料タンク11が近接配置され、クロスビーム9を比較的車両後方に配置せざるを得ない場合であるが、このような場合でも、ねじり剛性の低い端部15を中央部13に対して斜め後方へ延びるように設けることにより、不動点Pt をクロスビーム9から前方に離すことができ、これによって軸線Aの傾き角αを調整・設定し、所望のキャンバ角変化特性を得ることができる。
【0047】
こうして、本実施形態によれば、クロスビーム9の両端部15,15のねじり剛性が中央部13に比べて低く設定され、ねじれ変形の大部分がこの端部15で生じるため、車両レイアウト上の制約があっても、クロスビーム9全体での車両中心断面の不動点Pt の位置をクロスビーム9から大きく前方に隔たって配置設定することが可能となる。
【0048】
これにより、車体ロール時の旋回外輪3L の対車体ネガティブキャンバ変化は小さく抑えられ、旋回特性変化を抑制することができ、走行安定性をより向上することができる。
【0049】
[第2実施形態]
本発明の第2実施形態を図6、図7により説明する。図6は本実施形態のリアサスペンション装置21の構成概要を示す後面図と部分断面図であり、図7はせん断中心線の分布を示す説明図である。
【0050】
このリアサスペンション装置21は、クロスビーム(トーションビーム部材)29の両端部35,35が垂直面内で斜め下方に向って傾斜する構成である点と、クロスビーム29の断面形状とが上記第1実施形態と異なる。その他の構成は第1実施形態と同様であるので、同符号を付した部材の説明および重複する説明は省略する。
【0051】
図6(リアサスペンション装置21の後面視)に示すように、クロスビーム29は水平に車幅方向に延びる中央部33と、これと同一の垂直面内で車体外方に斜め下方に傾斜する両端部35,35とを有している。左右のトレーリングアーム(サスペンションアーム)5bは、その前端部の弾性ブッシュ7が地上高の低いところで車体側骨格部材に上下揺動可能に回転支持されている。従って、クロスビーム29は地上高の低いところで左右のトレーリングアーム5b,5bを結合している。
【0052】
また、図6の各断面図(中央部33と両端部35,35における垂直方向の断面図)に示すように、クロスビーム29の中央部33は、ほぼ四角形の閉断面に形成されてねじり剛性が高く、せん断中心nは閉断面内に存在している。一方、両端部35,35は車体下方に向って開口する逆V字形の開断面に形成されてねじり剛性が中央部33のそれよりも低く形成され、各断面におけるせん断中心nは、各断面の図心(図示省略)から上方に離れて断面の上外側近傍に位置し、一垂直面内に分布している。
【0053】
図7(クロスビーム29の後面視)はクロスビーム29の上記各断面のせん断中心nを結んだせん断中心線の分布状態を示す。図中に破線で示すように、中央部33ではせん断中心線mが車幅方向にほぼ水平に延び、両端部35,35のせん断中心nを結ぶせん断中心線m’が端部35の傾斜に沿って延び、両せん断中心線m,m’は垂直な同一平面内にある。
【0054】
上記のような構成により、図6に示すように、クロスビーム29全体の車両中心断面での不動点(回転中心)Pt はせん断中心線m’の延長線と車両中心断面との交点Pa よりも若干下方(路面側)に位置し、クロスビーム29からは大きく上方に隔たった位置にある。
【0055】
したがって、例えば前記従来例の図19(側面視)のP”点のように、クロスビーム29の地上高がレイアウト上、低く制限されているような場合においても、不動点Pt の地上高を高く配置することができる。
【0056】
こうして、図6(後面視)における、不動点Pt とトレーリングアーム5bの支持中心7aとを結ぶ軸線Aが外下がり状態となるので、ロール時の旋回外輪側(対車体バウンド側車輪)3L ではトーイン方向のトー角変化(ロールアンダステア)となる。
【0057】
こうして、本実施形態によれば、クロスビーム29の両端部35,35のねじり剛性が中央部33に比べて低く設定され、ねじれ変形の大部分がこの端部35で生じるため、上記のようなクロスビーム29のレイアウト上の制約があっても、クロスビーム29全体での車両中心断面の不動点Pt の位置をクロスビーム29から大きく上方に隔たって配置設定することが可能となる。
【0058】
これにより、車体ロール時に旋回外輪のトー角変化をトーイン方向とし、望ましいロールアンダステア特性を得ることができる。
【0059】
[第3実施形態]
本発明の第3実施形態を図8〜図10により説明する。図8は本実施形態のクロスビーム59の平面図と矢印部の断面図であり、図の上方が車両前方である。図9、図10は説明図であり、図の内容については後述する。まず、構成を説明する。
【0060】
本実施形態のリアサスペンション装置は、クロスビーム(トーションビーム部材)59の構造が上記第2実施形態(図6、図7)と異なる。その他の構成は第2実施形態と同様であるので相違点を説明し、重複する説明は省略する。
【0061】
図8(平面視)に示すように、クロスビーム59は水平に車幅方向に延びる中央部63と、その両側に車幅方向に延びる両端部65,65とを有し、また、図8の各断面図(中央部63の断面図と両端部65,65の矢印部の断面図)に示すように、中央部63は丸パイプ状断面(閉断面)に形成されてねじり剛性が高く、両端部65,65はほぼ車両後方に向って開口するU字状断面(開断面)形状に形成されると共に、中央部63と隣接する部分が一旦斜め下方にひねられ、この部分から両外方へ向かってそのひねりが連続して徐々に斜め上向きのひねりに変化するようにひねりを加えられて形成され、そのねじり剛性は中央部63のそれよりも低く設定されている。
【0062】
また、図8の各断面図に示すように、中央部63のせん断中心nは閉断面内に存在し、両端部65,65ではU字状断面の中心線上で湾曲した壁部の外側近傍に位置している。
【0063】
図9(後面視)は上記各断面のクロスビーム59のせん断中心nを結んだせん断中心線の分布状態を示す。図中に破線で示すように、中央部63では、せん断中心線mが車幅方向にほぼ水平に延び、両端部65,65のせん断中心線m’は中央部63のせん断中心線mに対し交差して車幅方向外下がりに傾斜している。
【0064】
このような構成により、クロスビーム59全体の車両中心断面の不動点(回転中心)Pt はせん断中心線m’の延長線と車両中心断面との交点Pa よりも若干下方(路面側)に位置し、クロスビーム59からは上方に隔たった位置にある。
【0065】
こうして、本実施形態によれば、上記第2実施形態と同様の作用・効果が得られると共に、本実施形態のクロスビーム59は、上記第2実施形態のクロスビーム29(図6、図7)よりも直線的な形状となるので、より狭いスペースに適用配置可能となり、適用性の面でより有利である。
【0066】
なお、本実施形態のクロスビーム59は、上記第1実施形態の平面視でのクロスビーム9(図1)のような傾斜した両端部15,15を有しない構成であるので、レイアウト上の競合要因との問題解消策として適用することも可能である。
【0067】
なお、図10(平面視)により、本第3実施形態(図8)および上記第2実施形態(図6)のクロスビーム59,29の適用によりトー角変化特性を改善した場合に、副次的に生じる作用を説明する。
【0068】
第3、第2実施形態では、クロスビーム59,29全体の車両中心断面での不動点(回転中心)Pt の地上高をクロスビーム59,29本体よりも高く配置できるので、トレーリングアーム5aを固定して考えると、クロスビーム59,29はねじれながら前後に変形するようなモードでねじれる。第3、第2実施形態の構成によれば、図10(a)に示すように、この前後への変形量Bを大きくすることができる。
【0069】
実際にはクロスビーム59,29の中央部63,33は両端部65,35と一体につながっているので、図10(b)に破線で全体の動きを示すように、サスペンションは、旋回外輪3L を外側に押し出すような横方向のスカッフ変化δを伴いながら、トー変化する。このスカッフ変化は、車両の横運動をより安定化させる。すなわち、上記第3、第2実施形態においては、トー角変化が改善されるだけでなく、ロールに伴うタイヤのスカッフ変化も、車両の応答性、安定性上、より望ましい方向に変化する。
【0070】
[第4実施形態]
本発明の第4実施形態を図11、図12により説明する。図11は本実施形態のリアサスペンション装置71の平面図と矢印部の断面図であり、図11の上方が車両前方である。図12は後面図である。
【0071】
本実施形態のリアサスペンション装置71は、クロスビーム(トーションビーム部材)79の構造が上記第1実施形態(図1)と異なる。その他の構成は第1実施形態と同様であるので相違点を説明し、重複する説明は省略する。
【0072】
図11(リアサスペンション装置71の平面視)および図12(後面視)に示すように、クロスビーム79は、水平に車幅方向に延びる中央部83と、中央部83の両側に配置され、車両後方に傾斜して延びると共に、下方に傾斜して延びる両端部85,85とを有する。そして、図11の各断面図(中央部83と両端部85,85の矢印部の断面図)に示すように、中央部83はU字状の閉断面に形成され、各断面におけるせん断中心nは閉断面内に存在する。一方、両端部85,85は斜め下方に開口したU字状の開断面に形成され、各断面におけるせん断中心nはU字状断面の中心線上で湾曲した壁部の外側近傍に位置している。これにより、両端部85,85のねじり剛性は中央部83のそれよりも低く設定されている。
【0073】
図11(平面視)、図12(後面視)に破線で示すように、中央部83では、せん断中心nを結ぶせん断中心線mが車幅方向にほぼ水平に延び、両端部65,65のせん断中心線m’は中央部63のせん断中心線mに対し平面視および後面視で共に交差している。詳しくは、平面視では車両後方へ傾斜し、後面視では車幅方向外下がりに傾斜している。そして、せん断中心線mとm’とは路面に対して車両の前方向に傾斜した同一平面内にある。
【0074】
このような構成により、クロスビーム79全体の車両中心断面の不動点Pt の位置は、平面視および後面視において、それぞれ軸線m’と車両中心断面との交点よりも若干後方および下方に位置し、クロスビーム79から前方および上方に隔たった位置にある。
【0075】
こうして、本実施形態によれば、平面視における軸線Aの車幅方向とのなす角角度αが小さく抑えられ、上記第1実施形態と同様に車体ロール時の旋回外輪3L の対車体ネガティブキャンバ変化は小さく、旋回特性変化を抑制することができ、走行安定性をより向上することができる。
【0076】
また、後面視における軸線Aが外下がりとなるので、上記第2、第3実施形態と同様にロール時の旋回外輪3L 側(対車体バウンド側車輪)ではトーイン方向のトー角変化(ロールアンダステア)となって、望ましいロールアンダステア特性を得ることができる。
【0077】
[第5実施形態]
本発明の第5実施形態を図13により説明する。図13は、本実施形態のリアサスペンション装置91の構成を示す斜視図である。図13において、ほぼ左方が車両前方である。
【0078】
本実施形態はいわゆるパナールロッドと呼ばれるリンクを用いている点と、クロスビーム(トーションビーム部材)の断面形状が上記第1実施形態と異なる。その他の構成は第1実施形態と同様であるので、重複する説明は省略する。
【0079】
図13に示すように、パナールロッド92はクロスビーム99の後部側に配置され、一端92aを車体側部材に、他端92bを車輪支持体5にそれぞれ弾性ブッシュを介して揺動可能に支持され、リアサスペンション装置91の横方向の動きを拘束している。また、左右のコイルスプリングおよびショックアブソーバ94が車輪支持体5に取り付けられている。
【0080】
そして、クロスビーム99は水平に配置され、その断面形状(図示)は上記第2実施形態(図6)と同様に、中央部103はほぼ四角形の閉断面に形成され、中央部103の両側に配置された両端部105,105は後方に開口するV字形断面の形状に形成されると共に車両斜め後方に延びている。両端部105,105のねじり剛性は中央部103のそれよりも低く設定されている。
【0081】
このような構成により、クロスビーム99全体の車両中心断面での不動点(回転中心)Pt は、両端部105,105のせん断中心線m’の延長線と車両中心断面との交点よりも若干車両後方に位置し、クロスビーム99から前方に離れて位置している。そして、中央部103のせん断中心線mと両端部105,105のせん断中心線m’(図示省略)とは水平の同一平面内にある。
【0082】
このような構成により、本実施形態によれば、パナールロッド92による横方向の拘束を受けつつ、上記第1実施形態と同様に、車体ロール時の旋回外輪の対車体ネガティブキャンバ変化は小さく抑えられ、旋回特性変化を抑制することができ、走行安定性をより向上することができる。
【0083】
[第6実施形態]
本発明の第6実施形態を図14により説明する。図14は本実施形態のクロスビーム(トーションビーム部材)119の平面図と部分断面図である。図14の上方が車両前方である。
【0084】
本実施形態はクロスビーム119の断面形状が上記第1実施形態と異なり、その他の構成は第1実施形態と同様であるので、重複する説明は省略する。
【0085】
図14に示すように、クロスビーム119は丸パイプ断面形状に形成され、水平に車幅方向に延びる中央部123と、中央部123よりも小径の丸パイプ断面形状に形成され中央部123の両側に車両斜め後方に延びる両端部125,125とを有する。こうして、両端部125,125のねじり剛性は中央部123のそれよりも低く設定されている。
【0086】
そして、クロスビーム119全体の車両中心断面での不動点Pt は、両端部125,125のせん断中心線m’と車両中心断面との交点Pa よりも若干車両後方に位置し、クロスビーム119から前方に離れて位置している。
【0087】
このような構成により、本実施形態によれば、上記第1実施形態と同様に車体ロール時の旋回外輪の対車体ネガティブキャンバ変化は小さく抑えられ、旋回特性変化を抑制することができ、走行安定性をより向上することができる。
【0088】
また、クロスビーム119は、いわゆるハイドロフォーミングといった高能率の生産方式で製造できるので、生産性が向上する。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1実施形態の構成概要を示す平面図と部分断面図である。
【図2】第1実施形態のせん断中心線の分布状態を示す説明図である。
【図3】第1実施形態のねじれ中心の説明図である。
【図4】第1実施形態のねじれ中心の説明図である。
【図5】第1実施形態の作用説明図である。
【図6】本発明の第2実施形態の構成概要を示す後面図と部分断面図である。
【図7】第2実施形態のせん断中心線の分布状態を示す説明図である。
【図8】本発明の第3実施形態の要部の平面図と矢印部の断面図である。
【図9】第3実施形態のせん断中心線の分布状態を示す説明図である。
【図10】第3実施形態の作用説明図である。
【図11】本発明の第4実施形態の平面図と矢印部の断面図である。
【図12】第4実施形態の後面図である。
【図13】本発明の第5実施形態の構成概要を示す斜視図である。
【図14】本発明の第6実施形態の要部の平面図と部分断面図である。
【図15】a図は従来例の要部の断面図で、b図は従来例の斜視図である。
【図16】従来例の作用説明図である。
【図17】従来例の作用説明図である。
【図18】従来例の作用説明図である。
【図19】従来例の作用説明図である。
【符号の説明】
3L ,3R 左右の後車輪
5 車輪支持体
5a,5b トレーリングアーム(サスペンションアーム)
7a トレーリングアームの前端支持点
9,29,59,79,99.119 クロスビーム(トーションビーム部材)
13,33,63,83,103,123 中央部(横方向部)
15,35,85,125 端部
m,m’ せん断中心線
Pt 車両中心断面での不動点
Claims (8)
- 車輪を支持する左右の車輪支持体が、それぞれ車両前方に延びるサスペンションアームに取り付けられ、該サスペンションアームの前端部が車体側に上下揺動可能に回転支持され、
前記左右の車輪支持体またはサスペンションアームが、車両横方向に延びてねじれ変形を許容するトーションビーム部材で結合されたリアサスペンション装置において、
前記トーションビーム部材は、横方向部および該横方向部の両側に延びる両端部で構成され、且つ各断面のせん断中心を結ぶせん断中心線が前記横方向部ではほぼ水平に延びると共に、前記両端部ではこれと交差して延び、
前記両端部のねじり剛性が横方向部のねじり剛性よりも低くなるように設定したことを特徴とするリアサスペンション装置。 - 請求項1に記載のリアサスペンション装置であって、
前記両端部のせん断中心線が、車両平面視において前記横方向部のせん断中心線に対し交差して設定されたことを特徴とするリアサスペンション装置。 - 請求項1または2に記載のリアサスペンション装置であって、
前記両端部のせん断中心線が、車両後面視において前記横方向部のせん断中心線に対し交差して設定されたことを特徴とするリアサスペンション装置。 - 請求項3に記載のリアサスペンション装置であって、
前記両端部のせん断中心線が、車両後面視において前記横方向部のせん断中心線に対し下方に傾斜し延びるように設定されたことを特徴とするリアサスペンション装置。 - 請求項1〜4のいずれかに記載のリアサスペンション装置であって、
前記両端部が、前記トーションビーム部材と前記車輪支持体またはサスペンションアームとの結合部近傍に設けられたことを特徴とするリアサスペンション装置。 - 請求項5に記載のリアサスペンション装置であって、
前記両端部は、開断面に形成され、横方向部は閉断面に形成されたことを特徴とするリアサスペンション装置。 - 請求項5に記載のリアサスペンション装置であって、
前記両端部は、各断面の図心から一方向に隔たった位置にせん断中心線を有し、
前記横方向部および両端部のせん断中心線は、同一平面内に存在することを特徴とするリアサスペンション装置。 - 請求項5に記載のリアサスペンション装置であって、
前記両端部が、連続的にひねられた断面形状を有することを特徴とするリアサスペンション装置。
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