JP3622369B2 - 車両のフェンダ内遮音構造 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、フェンダ内に配置されるエンジンの吸気ダクトから室内又は外部に洩れる騒音を防止する車両のフェンダ内遮音構造に関する。
【0002】
【従来の技術】
エンジンルーム内の高温の空気をエンジン内に吸入させると吸気充填効率が低下し、エンジン出力の向上が図れない。そのため、エンジンの吸気口をフェンダ内に設ける技術が従来より採用されている。これに関する公知技術としては、例えば実開平3−51618号公報および特開平5−294148号公報が挙げられる。
【0003】
実開平3−51618号公報の「エンジンの吸気構造」は、エンジンの吸気系におけるエアクリーナ上流側の吸気ダクト(22)をフェンダ(4)とホイールエプロン(8)とによって囲まれるフェンダ空間(10)に配設し、該フェンダ空間(10)内に遮蔽部材(18)を設けこの遮蔽部材(18)に吸気ダクト(22)を支持させる構造からなる。この遮蔽部材(18)によりフェンダ空間(10)内の騒音(吸気騒音)が車室内に入り込むことを防止するものである。
【0004】
一方、特開平5−294148号公報の「車両装備品の配設構造」は、ホイールエプロン(1)にフェンダ(3)内に連通する吸気口(4c)を形成し、フェンダ(3)内から吸気口(4c)を介してエンジンのエアクリーナ(4)側に吸気をするようにしたものである。
【0005】
図5乃至図7は従来一般に使用されているフェンダ空間内の遮音構造を示す。例えば、図5に示すように車両のフェンダパネル4の内部には図6および図7に示すようなフェンダ空間3が形成される。このフェンダ空間3には図5に示すように吸気ダクト2が配置され、図略のエンジン側に連結される。吸気ダクト2はフェンダ空間3内に吸気口12を開口して配置されるため吸気音がフエンダ空間3内に生じ、これが外部や車室内に回り込み騒音の原因となる。この騒音を防止するため、従来技術では図6に示す板金製の遮音板16や図7に示す発泡スポンジからなる充填物17がフェンダ空間3内に設けられていた。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
前記した実開平3−51618号公報に開示する「エンジンの吸気構造」ではその考案の詳細な説明および第1図,第2図に表示されているように吸気ダクト(22)はレゾネータチャンバ(30)を介して遮蔽部材(18)に連結されるものであり、そのフェンダ空間10内に開口している吸込み口(28)側は遮蔽部材(18)に連結されず自由状態に保持されている。また、遮蔽部材(18)もウレタン又は発泡樹脂等の弾性板材からなるが、その周縁部はフロントフェンダ(4)やホイールエプロン(8)に嵌合固定されていると記載されているのみで図示の構造ではフロントフェンダ(4)とホイールエプロン(8)と遮蔽部材(18)との間には間隙がある。以上の構造から吸気ダクト(22)は振動し易く、振動音が発生すると共に吸込み口(28)まわりの吸気音が遮蔽部材(18)とフロントフェンダ(4)やホイールエプロン(8)との間隙から洩れ、車室内に回り込む。そのため、騒音を完全に防止することができない問題点がある。
【0007】
また、特開平5−294148号公報の場合には、その特許請求の範囲の記載内容やその図1に明示されているように、吸気口(4c)がフェンダパネル(3)内の空間に開口されているため、そのまわりに生ずる吸気音が車室側にそのまま回り込む問題点がある。
【0008】
一方、図5乃至図7に示した従来技術の場合は、吸気ダクト2と遮蔽板16や充填物17とが連結されず、かつ図6に示すように、遮蔽板16とフェンダ空間3との間には大きな隙間18があり車室側への吸気音の回り込みを防止することはできない。また、図7の充填物17の場合も、フェンダ空間3に低剛性の発泡ウレタン等からなる充填物17をバラツキなく完全に充填することは困難であり、フェンダ空間3と充填物17との間に隙間が生ずる問題点が依然として存在する。
【0009】
本発明は、以上の問題点を解決するもので、フェンダ空間内に隙間なく配置され車室側への騒音洩れを完全に防止すると共に、適度の剛性を有し組み付け性がよくバラツキなく正確に所定位置に取り付けられ、かつ吸気ダクトの吸気口を所定位置に固定し、吸気ダクトの振動を防止し、振動騒音の発生を防止する比較的簡便構造の車両のフェンダ内遮音構造を提供することを目的とする。
【0010】
【課題を解決するための手段】
本発明は、以上の目的を達成するために、フェンダパネルとエンジンコンパートメントパネルとインナーライナとで囲まれて形成されるフェンダ空間内に配設される吸気ダクトの吸気騒音を遮音するために該吸気ダクトの吸気口側に連結されて前記フェンダ空間内に配設される遮音体を備えるフェンダ内遮音構造であって、前記遮音体は、樹脂板とその外周を覆う弾性部材とからなり、該弾性部材の外輪郭は、前記フェンダ空間を形成するフェンダパネル,エンジンコンパートメントパネルおよびインナーライナ等の部材の内壁に隙間なく当接する形状に形成される車両のフェンダ内遮音構造を構成するものである。更に具体的に、前記弾性部材が前記フェンダ空間を形成する前記部材の内壁に密接する圧縮代を有するスポンジ材,ゴム,その他の弾性材からなり、前記樹脂板が前記弾性部材の外輪郭とほぼ相似する外周を有するものからなり、前記吸気ダクトは、吸入口側に形成される外面のうちの少なくとも2面を樹脂板に当接して該樹脂板に固定されることを特徴とするものである。
【0011】
本発明の遮音体はフェンダ空間の輪郭に見合う外輪郭に形成される。具体的には、遮音体はフェンダ空間の輪郭と近似する外輪郭を有するスポンジ材等からなる弾性部材と、これとほぼ相似な外周を有する樹脂板とからなる。そのため、前記弾性部材が隙間なくフェンダ空間に密接することができる。また、フェンダ空間内に配置された吸気ダクトの吸気口側は遮音体の樹脂板に少なくとも2面を固定されて連結される。そのため、吸気ダクトは遮音体の所定位置に確実に連結される。従って、遮音体を予め吸気ダクトに取り付けた後に、遮音体と吸気ダクトをフェンダ空間の所定位置に正しく取り付けることが可能になる。以上により吸気音の車室側への侵入が確実に防止されると共に、組み付け性の向上が図れる。
【0012】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の車両のフェンダ内遮音構造の実施の形態を図面を参照して詳述する。図1に示すように、本発明ではフェンダパネル4内のフェンダ空間3内には後に説明する構造の遮音体1と、これに直接連結する吸気ダクト2が配置される。なお、吸気ダクト2は図2に示すようにエンジンコンパートメントパネル5内のエンジン7側に連結される。
【0013】
図2に示すように、フェンダ空間3は、フェンダパネル4と、これに連結されるエンジンコンパートメントパネル5と、フェンダパネル4とエンジンコンパートメントパネル5のそれぞれの下端に連結されるインナーライナ6とにより囲まれた空間からなり、図2に示すように、凹凸のある複雑な輪郭形状を有するものからなる。
【0014】
遮音体1は図3および図4に示すように、樹脂材を箱体状に成形してなる樹脂板8と、その外周を覆う弾性材からなる弾性部材9とを一体的に固着したものからなる。なお、本例では弾性材としてスポンジ材を採用するが、ゴムその他の弾性材であってもよい。
【0015】
樹脂板8は図4に示すようにフラット板部8aとその外縁に屈曲して形成されるフランジ板部8bとからなり、フランジ板部8bに弾性部材9が接着等により固着される。一方、弾性部材9は図2,図3に示すように、フェンダ空間3の輪郭形状に密接する必要があるため、フェンダ空間3の輪郭形状とほぼ等しい外輪郭形状を有するものからなり、かつフェンダ空間3を形成するフェンダパネル4,エンジンコンパートメントパネル5およびインナーライナ6の内面に密接し得る圧縮代を有する形状のものから形成される。また、樹脂板8のフランジ板部8bも弾性部材9の外輪郭形状とほぼ相似する外輪郭形状を有するものからなる。
【0016】
図1乃至図4に示すように、樹脂板8のフラット板部8aにはその面上からほぼ垂直に突出する取り付け板10が一体的に形成される。また、図4に示すようにフラット板部8aには吸気ダクト2を固定するための凹面部11が形成される。
【0017】
吸気ダクト2の吸気口12は図4に示すように本例では四角形状に形成され、その一側面12aと後面12bが遮音体1に連結する取り付け面となる。すなわち、一側面12aは取り付け板10に当接して、例えば、プラスチックリベット13等により固定される。一方、後面12bはフラット板部8aの凹面部11に当接し、同じくプラスチックリベット14等により固定される。以上により、吸気ダクト2と遮音体1とは一体構造のものとして予め組み立て形成することができる。
【0018】
次に、本例の作用を説明する。前記したように、本例の遮音体1は樹脂板8のまわりに弾性部材9を固着したものでその外輪郭部は柔軟性を有すると共に全体としては比較的剛性のある組立構造体からなり、従来の単なる発泡スポンジからなる充填物17と比較すると定形性を有するものからなる。まず、前記したように遮音体1に吸気ダクト2の吸気口12側を固定し両者を一体的な組立構造体とする。この組立構造体をフェンダ空間3内に挿入し、遮音体1の弾性部材9の外輪郭部をフェンダパネル4,エンジンコンパートメントパネル5およびインナーライナ6の内壁に密接させると共に、吸気ダクト2のエンジン側をエンジンコンパートメントパネル5の貫通孔15(図1)に貫通させてエンジン7側に挿入し、エンジン7に連結する。以上により、遮音体1はフェンダ空間3の所定位置に装着され、フェンダ空間3を完全に遮蔽する。すなわち、遮音体1の弾性部材9が適宜の圧縮代を有するためフェンダ空間3の輪郭形状に多少のバラツキがあっても、ほぼ一定の位置に遮音体1は取り付けられ、かつフェンダ空間3を遮蔽することが可能である。また、その取り付け作業も遮音体1が比較的剛性を有するためやり易い。
【0019】
エンジン駆動時において吸気ダクト2の吸気口12まわりに吸気音が発生すると共に、吸引力により吸気ダクト2が振動しようとする。しかしながら、本例では吸気口12が遮音体1側に固定されているため吸気ダクト2はほとんど振動しない。そのため、振動による騒音は大巾に低減される。一方、吸気音はフェンダ空間3内に生ずるが、遮音体1がフェンダ空間3を完全に遮蔽しているため、車室側への吸気騒音の回り込みはほぼ完全に遮断される。
【0020】
【発明の効果】
1)本発明の請求項1および2に記載の車両のフェンダ内遮音構造によれば、遮音体が樹脂板とその外周を覆うスポンジ材等の弾性材からなる弾性部材から形成され、該弾性部材の外輪郭がフェンダ空間の輪郭とほぼ同一に形成され、かつ圧縮代を有するものからなるため、遮音体はフェンダ空間を完全に遮蔽することができる。そのため、車室側へのフェンダ空間内の騒音の回り込みを完全に防止できる。また、遮音体はほぼ相似の輪郭形状の樹脂板と弾性部材とを一体的に固着したものからなり、比較的高剛性で、取り扱い易く、かつフェンダ空間内の所定位置にバラツキなく装着することができる。
2)本発明の請求項3に記載の車両のフェンダ内遮音構造によれば、吸気ダクトと遮音体とが一体的に連結されるため、予め吸気ダクトと遮音体とを連結したものをフェンダ空間内に挿入して遮音体および吸気ダクトを所定位置に正確に装着することが比較的容易にできる。このため、遮音性の向上と組み立て作業性の向上とが図れる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の車両のフェンダ内遮音構造を構成する遮音体および吸気ダクトのフェンダパネル内の配置の概要を示す斜視図。
【図2】図1のA−A線拡大断面図。
【図3】本発明の車両のフェンダ内遮音構造を構成する遮音体の構造を示す斜視図。
【図4】図4のB−B線拡大断面図。
【図5】従来のフェンダ内遮音構造の概要を示す斜視図。
【図6】従来のフェンダ空間の遮蔽構造を示す部分断面図。
【図7】従来のフェンダ空間の遮蔽構造を示す部分断面図。
【符号の説明】
1 遮音体
2 吸気ダクト
3 フェンダ空間
4 フェンダパネル
5 エンジンコンパートメントパネル
6 インナーライナ
7 エンジン
8 樹脂板
8a フラット板部
8b フランジ板部
9 弾性部材
10 取り付け板
11 凹面部
12 吸気口
12a 一側面(吸気口)
12b 後面(吸気口)
13 プラスチックリベット
14 プラスチックリベット
15 貫通孔
Claims (3)
- フェンダパネルとエンジンコンパートメントパネルとインナーライナとで囲まれて形成されるフェンダ空間内に配設される吸気ダクトの吸気騒音を遮音するために該吸気ダクトの吸気口側に連結されて前記フェンダ空間内に配設される遮音体を備えるフェンダ内遮音構造であって、前記遮音体は、樹脂板とその外周を覆う弾性部材とからなり、該弾性部材の外輪郭は、前記フェンダ空間を形成する前記フェンダパネル,エンジンコンパートメントパネルおよびインナーライナ等の部材の内壁に隙間なく当接する形状に形成されることを特徴とする車両のフェンダ内遮音構造。
- 前記弾性部材が前記フェンダ空間を形成する前記部材の内壁に密接する圧縮代を有するスポンジ材,ゴム,その他の弾性材からなり、前記樹脂板が前記弾性部材の外輪郭とほぼ相似する外周を有するものからなる請求項1に記載の車両のフェンダ内遮音構造。
- 前記吸気ダクトは、吸入口側に形成される外面のうちの少なくとも2面を樹脂板に当接して該樹脂板に固定されることを特徴とする請求項1に記載の車両のフェンダ内遮音構造。
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