JP3944964B2 - 車両のこもり音低減構造 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、主としてエンジンやエアクリーナ等の付属機器から発生する音に起因する車室内のこもり音を低減するに好適な車両のこもり音低減構造に関する。
【0002】
【従来の技術】
例えば、エンジンのエアクリーナは一種の共鳴箱であり、高周波の音は消音されるが、その音響特性によっては低周波の音が共鳴し、この音が車室内に入り、こもり音となる。また、エンジンより放射された音がエンジンルーム内で共鳴し増幅され、車室内に入りこもり音の原因となる。
【0003】
図6は、一般の車両におけるエンジンまわりの車両構造の概要を示すものである。すなわち、エアクリーナ9等を備えるエンジン8は、前方側をグリル7等で遮蔽されると共に後方側にはダッシュパネル4が設けられ、上方はフード6で覆われる。すなわち、これ等によりエンジンルーム12を形成する。なお、エンジンルーム12は下方側は開放される。また、ダッシュパネル4の下端にはフロアパネル13が連結され、ダッシュパネル4の上端側は箱体状のカウル5に固着される。なお、カウル5は前記フード6の後端に配置されると共にフロントガラス10の下端側に配置される。
【0004】
以上の車両構造において、エンジン8より放射された音は、グリル7,ダッシュパネル4及びフード6等により囲まれているエンジンルーム12内で共鳴等の影響により増強され、エンジンルーム12内の音圧は反射端となるカウル5にてより大きくなる。この増強された音波がダッシュパネル4やカウル5を振動させる。この振動は車室11内に伝達され、200Hz乃至500Hz程度の周波数のいわゆるこもり音が発生する。また、エアクリーナ9からも前記したように低周波の共鳴音が車室11内に伝わりこもり音となる。
【0005】
エンジン8等によって発生する車両内の不快音を低減する公知技術としては従来より各種のものがある。例えば、特開平4−103473号公報や実開平6−44681号公報に開示する技術が挙げられる。特開平4−103473号公報の「エンジン音創出装置」はエンジン音のエンジンルーム内における間接音を集音させて車室内に放射し、エンジン音の直接音を間接音で遮音してエンジン音を低減せしめエンジンの位置が遠くあるように感じさせることを目的とするものである。具体的な構造としては、ダッシュパネルに集音口を有するダクトを設け、集音口からエンジンの間接音をダクトに導入し、ダクトからカウル内に導入し、更に、空気導入口から前記間接音を車室内に導入するものからなる。
【0006】
一方、実開平6−44681号公報の「車室内こもり音低減装置」は、車両走行時におけるエンジンの回転振動に起因して車室内に発生するこもり音を低減するものである。具体的構造としては、車室構造体の天井部を構成するルーフパネルに形成される補強用ビードを吸気レゾネータとして利用し、吸気レゾネータに連通する吸気レゾネータパイプを車室構造体のバックパネルの近傍において車室内に開口させてこもり音を低減させるものである。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
特開平4−103473号公報に開示する技術は、結果的に車室内のこもり音の低減の効果を有するものであるが、前記したように、この発明の目的はエンジンの直接音を間接音により消音させてエンジンの位置を遠くに感じさせる点にある。ダッシュパネルにダクトが設けられているが、このダクトはダッシュパネルを補強する形状のものでなく、かつダクトに設けた集音口はエンジンからの直接音が吸音されにくいストラットタワーの近傍に配置される。従って、この公知技術は後に詳述する本発明の車両のこもり音低減構造とは目的,構成において大きく相異するものである。一方、実開平6−44681号公報に開示する技術は車室内のこもり音の低減効果を有するものであるが、前記したようにルーフパネルに吸気レゾネータを形成するもので本発明のようにダッシュパネルやカウルにこもり音の低減構造を形成するものと構成上大きく相異するものである。
【0008】
本発明は、以上の事情に鑑みて創案されたものであり、エンジンルームに近接して設けられているカウルに工夫を施すことによりエンジン等からの発生音に起因する車室内のこもり音を低減し、簡便な構造によって車室側への遮音性能を向上させる車両のこもり音低減構造を提供することを目的とする。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明は、以上の目的を達成するために、フロントガラスの下方に形成されると共にフロントピラ間に挟まれて配置される箱体状のカウルと、該カウルに上端側を固着すると共にエンジンの後方に配置され、下端がフロアパネルと連結するダッシュパネルと、前記エンジンを覆うフード等をエンジンまわりに備える車両の主にエンジン及びその付属機器から発生する音に起因する車両内のこもり音を低減させる車両のこもり音低減構造であって、前記カウルには、その上面側に大気側に連通する開口窓が形成され、前記カウルのエンジンルーム側には前記カウル内とエンジンルーム側とを連通させる開口部が形成され、前記カウル内には、一端側を前記開口部に連通し、他端側を前記カウル内に開口する貫通路を形成するダクトが固着される車両のこもり音低減構造を構成するものである。更に具体的に、前記ダクトは、断面形状がコ字形状のものからなり長手方向に沿う輪郭曲線が略船形状に形成されることを特徴とする。また、前記ダクト内には遮音材及び/又は吸音材が貼着されるものであることを特徴とするものである。
【0010】
エンジンやエアクリーナ等から発生したエンジンルーム内の音はカウルに形成される開口部からカウル内に導入される。これによりエンジンルームの共鳴は減衰され、カウルやダッシュパネルに入力される音が低下する。カウルは箱体状のものからなるが、上面側に大気側に連通する開口窓が形成されるためカウル内の共鳴が起こりにくくなり、共鳴による音圧の上昇が小さくなる。また、開口部からカウル内に導入されるエンジンルーム内の音は直接カウル内に導入されずにダクト内に導入される。従って、ダクトによる減音作用を受けるため、車室側へ伝達される音が低減し、遮音効果が向上すると共にこもり音の発生も低減する。更に、カウルはダクトにより補強されて剛性が向上するため音圧による振動が低減し、こもり音の低減が図られる。また、ダクトを長手方向に長い略船形状にすることによりエンジンルームからカウル内に伝達される音のカウル内における拡散が円滑に行われ、こもり音低減効果を向上することができる。また、開口窓,開口部及びダクトは構造上簡便なもので容易に、かつ安価に実施できる。
【0011】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の車両のこもり音低減構造の実施の形態を図面を参照して詳述する。図1及び図2は本発明のこもり音低減構造を備えたエンジンまわりの車両構造の概要を示すものである。エンジン8側と車室11とはダッシュパネル4により画成される。エンジン8を収納するエンジンルーム12は、グリル7とダッシュパネル4及びフード6により囲まれた空間からなり、下方側は開放している。一方、車室11はダッシュパネル4やフロントガラス10を前面側に配置し、上方にルーフパネル(図略)、後面にバックパネル(図略)、下面にフロアパネル13を配置した空間からなる。
【0012】
ダッシュパネル4の上方側には箱体状のカウル5が配置され、カウル5にはフード6及びフロントガラス10が接して配置される。また、カウル5の左右端はフロントピラ14,15(図1)が連結され、カウル5を水平支持する。また、カウル5にはステアリングコラム16を支持するブラケット17,18が固定されると共に、インストルメントパネル19が連結される。また、ダッシュパネル4の下端にはフロアパネル13が連結される。
【0013】
図1乃至図3に示すように、カウル5の上面側には開口窓2が形成される。開口窓2はカウル5の内部と大気側とを連通するものである。また、図1に示すように、開口窓2はカウル5の左右方向に沿って複数個形成される。また、開口窓2は比較的大きなゴミ等の侵入を防止するため完全開口の窓でなく、グリル状に区切られて形成される。カウル5内の前面側にはダクト1が設けられる。なお、ダクト1はカウル5内に突出して収納される。
【0014】
ダクト1が固着されるカウル5部位には、ダクト1内とエンジンルーム12側とを連通させる開口部3が形成される。
【0015】
ダクト1は、図1乃至図4に示すように、横断面形状がコ字形状のものからなり、図1や図4に示すように両端に開口する貫通路20を形成するものからなる。ダクト1は一定の深さのコ字形状の横断面を長手方向(左右方向)に沿って有するものでもよいが、図4に示すようにその長手方向の輪郭曲線が略船形状曲線を形成するものが一例として採用される。すなわち、図示のように、ダクト1はカウル5の前面に固着される鍔部21からその底面22までの深さが一端側から他端側に向かって次第に、かつ円滑に減少して行く曲線形状のものから形成される。なお、図1に示すように底面22までの深さの浅い他端側が開口部3に合致する位置に配置される。以上の構造により、開口部3からダクト1の一端側に導入された音波はダクト1の貫通路20内を円滑に進み、次第に拡散した状態で他端側に誘導され、減音された状態でカウル5内に導入される。以上のように、ダクト1を略船形状にすることにより、減音効果の向上が図れる。
【0016】
ダクト1は、前記のようにコ字形状のものからなり、比較的横長のものからなるため、このダクト1を固着したカウル5の剛性の向上が図られる。そのため、エンジンルーム12側からの音波によるカウル5の振動が低減し、結果としてこもり音が低減されることになる。
【0017】
以上の説明によって明らかなように、エンジン8やエアクリーナ9等から発した音波は図3に示すように、開口部3からダクト1内に入り、貫通路20を通過する際に減音されてカウル5内に導入される。カウル5には開口窓2が形成されているため、共鳴が生じにくく、音圧の上昇が抑制される。以上によりこもり音が低減する。更に、前記のようにダクト1によりカウル5が補強されるためその面剛性が大幅に向上し、振動が低減し、車室11内のこもり音の発生が低減される。
【0018】
図5は、ダクト1内に遮音材及び/又は吸音材23を貼着した実施の形態を示す。遮音材及び/又は吸音材23としては、例えば、スポンジや発泡ウレタン等が使用されるが、勿論これ等に限定するものではない。このような遮音材及び/又は吸音材23をダクト1内に貼着することにより、例えば500Hz以上の高周波の音波の減音効果が生じ、遮音性能の一層の向上が図れる。
【0019】
【発明の効果】
1)本発明の請求項1に記載の車両のこもり音低減構造によれば、カウルの固着されるダッシュパネルにエンジンルームに連通する開口部を形成すると共に、開口部とカウル内に連通する貫通路を有する両端開口のダクトをカウルの前面に固着し、かつカウルの上面側に開口窓を外気側に連通させて開口形成するという比較的簡単な構造の手段によりエンジンルーム内の音波の共鳴を低減し車室内に発生するこもり音を低減することができる。また、ダクトはカウルの剛性向上に機能するため、エンジンルーム側からの音圧による振動が低減し、こもり音の大幅な低減ができる。
2)本発明の請求項2に記載の車両のこもり音低減構造によれば、ダクトが略船形状の輪郭曲線を有するものからなり、その貫通路を通過する音波の拡散が生じ、減音効果の向上が図れる。
3)本発明の請求項3に記載の車両のこもり音低減構造によれば、ダクト内に遮音材及び/又は吸音材を貼着することにより、比較的低周波の200Hz乃至500Hzのこもり音よりもやや高い周波数の音波の低減効果を上げることが可能になり、一層の遮音性能の向上が図れる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の車両のこもり音低減構造を備えたエンジンまわりの車両構造の概要を示す斜視図。
【図2】図1のA−A線に沿う断面図。
【図3】本発明の車両のこもり音低減構造の主要部の構造を示す断面図。
【図4】本発明の車両のこもり音低減構造に使用されるダクトの形状を示す斜視図。
【図5】遮音材及び/又は吸音材を内部に貼着した本発明におけるダクトの形状を示す断面図。
【図6】従来のエンジンまわりの車両構造の概要を示す断面図。
【符号の説明】
1 ダクト
2 開口窓
3 開口部
4 ダッシュパネル
5 カウル
6 フード
7 グリル
8 エンジン
9 エアクリーナ
10 フロントガラス
11 車室
12 エンジンルーム
13 フロアパネル
14 フロントピラ
15 フロントピラ
16 ステアリングコラム
17 ブラケット
18 ブラケット
19 インストルメントパネル
20 貫通路
21 鍔部
22 底面
23 遮音材及び/又は吸音材

Claims (3)

  1. フロントガラスの下方に形成されると共にフロントピラ間に挟まれて配置される箱体状のカウルと、該カウルに上端側を固着すると共にエンジンの後方に配置され、下端がフロアパネルと連結するダッシュパネルと、前記エンジンを覆うフード等をエンジンまわりに備える車両の主にエンジン及びその付属機器から発生する音に起因する車両内のこもり音を低減させる車両のこもり音低減構造であって、前記カウルには、その上面側に大気側に連通する開口窓が形成され、前記カウルのエンジンルーム側には前記カウル内とエンジンルーム側とを連通させる開口部が形成され、前記カウル内には、一端側を前記開口部に連通し、他端側を前記カウル内に開口する貫通路を形成するダクトが固着されることを特徴とする車両のこもり音低減構造。
  2. 前記ダクトは、断面形状がコ字形状のものからなり長手方向に沿う輪郭曲線が略船形状に形成されるものからなる請求項1に記載の車両のこもり音低減構造。
  3. 前記ダクト内には遮音材及び/又は吸音材が貼着されるものである請求項1に記載の車両のこもり音低減構造。
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