JP2528552Y2 - 自動車の車体前部構造 - Google Patents

Description

【考案の詳細な説明】 産業上の利用分野 本考案は自動車の車体前部構造，特にパワプラント支
持部付近の車体構造に関するものである。

従来の技術 車体前部に形成されたエンジンルーム内に、エンジ
ン，トランスミッション等のパワプラントを搭載するも
のにおいて、該パワプラントの複数の支持部のうちの少
なくとも１つの支持部がエンジンルームの側壁である場
合、該側壁のパワプラント支持部構造は、従来は第８図
に示すように、エンジンルームの側壁を構成するホイー
ルエプロン１と該ホイールエプロン１の内側下縁部に沿
って前後方向に接合固着されたサイドフレーム２とにま
たがるようにマウントブラケット４を固設（溶接にて固
着するか又はボルト・ナット等により固定する）し、該
マウントブラケット４にマウント部材５の一端部をマウ
ントラバー5aを介して軸着し、該マウント部材５の他端
部をパワプラントにボルト，ナット等にて締付固定した
構造を採っている（例えば実開昭61−75323号公報参
照）。３はリンホースメントである。

考案が解決しようとする課題 上記のような従来構造のものでは、パワプラントを車
両下方から上向きにエンジンルーム内に入れた後に、マ
ウント部材５を上方から挿し込みセットすることになる
ので、作業性が良くない上に、例えば軽自動車で横置き
４気筒エンジンを搭載する場合等は、エンジンおよびト
ランスミッション等よりなるパワプラントがエンジンル
ーム内ほぼ全幅に位置するので、マウントブラケット４
の上方部が大きく開いていないとマウント部材５をセッ
トすることができず、従ってマウントブラケット４の開
口寸法は符号ｂで示すように広範囲が必要となり、該マ
ウントブラケット４の充分な強度を確保するために板厚
アップを強いられるといった課題を有している。

本考案は上記のような従来の課題に対処することを主
目的とするものである。

課題を解決するための手段 本考案は上記のように車体前部のエンジンルームの側
壁を、ホイールエプロンとサイドフレームと該サイドフ
レームを補強するリンホースメントとで構成した自動車
の車体前部構造において、該リンホースメントの上部を
上方に延長してホイールエプロンに接合固着される上方
延長部を形成し、該リンホースメントの上方延長部に、
パワプラントに組み付けられるマウント部材を取付支持
するマウント部材取付部を内方に突出させて一体に形成
すると共に、ホイールエプロンと該マウント部材取付部
とに上記マウント部材が挿通するマウント部材取付用穴
を設けたことを第１の特徴とするものである。

又上記リンホースメントの上方延長部に一体に形成し
たマウント部材取付部の上面を、バッテリベース載置面
としたことを第２の特徴とし、更に上記リンホースメン
トの上方延長部に、バッテリベースを取付固定するバッ
テリベースを取付部を一体に形成したことを第３の特徴
とするものである。

更に又、上記ホイールエプロンとフロントフエンダと
により形成されるフロントタイヤハウス内に装着される
マッドガードに導風部を一体に形成し、該マッドガード
の導風部とホイールエプロンとで、前端部が車体前方に
開口し後端部がホイールエプロンとマウント部材取付部
とに設けたマウント部材取付用穴に連通する導風ダクト
部を形成したことを第４の特徴とするものである。

作用 上記第１の特徴の構造により、従来独立部品であった
マウント部材支持用のマウントブラケットを省略でき部
品点数の削減をはかり得ると共に、パワプラント搭載後
マウント部材をホイールエプロン及びマウント部材取付
部のマウント部材取付用穴から横方向に挿し入れセット
することができるので、パワプラントがエンジンルーム
内のほぼ全幅に位置してスペース的にあまり余裕がなく
てもマウント部材のセットが極めて容易となり、パワプ
ラントの取付作業性を大幅に改善することができ、又マ
ウント部材取付部の開口寸法も従来よりはるかに小とし
支持強度の向上をはかることができる。

又第2,第３の特徴の構造により、バッテリベース取付
支持用の各種ブラケットを省略でき、更に又第４の特徴
の構造により、上記マウント部材取付用穴を利用して車
両走行時エンジンルーム内に外気を強制的に導入し、エ
ンジンルーム内の熱気を掃気することができるものであ
る。

実施例 以下本考案の実施例を第１図乃至第７図を参照して説
明する。

第１図乃至第３図は本考案の第１の実施例を示すもの
で、１はホイールエプロン、２は該ホイールエプロン１
の下縁部に沿って前後方向に向けて接合固着されたサイ
ドフレーム、３はホイールエプロン１とコ字状断面をな
すサイドフレーム２とにより構成される箱型断面部内に
固設されたリンホースメントであり、該リンホースメン
ト３の上部はサイドフレーム２の上縁部より上方に延長
突出してホイールエプロン１に接合固着し、該リンホー
スメント３の上方延長部31の一部を内方に絞り出し成形
してパワプラントのマウント部材取付部（従来のマウン
トブラケット４に相当する）32を一体に構成すると共
に、該マウント部材取付部32の中央部にマウント部材取
付用穴34を形成している。

ホイールエプロン１には、上記マウント部材取付部32
のマウント部材取付用穴34に連通するマウント部材取付
用穴11が設けられており、第２図に示すようにホイール
エプロン１の外側即ちタイヤハウス内からマウント部材
５を上記マウント部材取付用穴11及び34を通して挿し込
みセットできるようになっている。

尚第１図乃至第３図において12はホイールエプロン１
に設けたストラットタワである。

上記のように、サイドフレーム２の補強用として、従
来よりサイドフレーム２とホイールエプロン１よりなる
箱型断面部内に設けられているリンホースメント３の上
部を該箱型断面部上縁より上方に延長させて延長部31を
ホイールエプロン１に接合固着し、該延長部31にて従来
のマウントブラケット４に相当するマウント部材取付部
32を一体に成形したことにより、第８図に示すような従
来構造のものに比し部品数の削減をはかり得ると共に、
ホイールエプロン１とマウント部材取付部32とにマウン
ト部材取付用穴11と34とを設けたことにより、パワプラ
ントをエンジンルーム内に車両下方から搭載した後、マ
ウント部材５を第２図に示すようにマウント部材取付用
穴11,34より横方向から挿し込みセットすることができ
るので、パワプラントがエンジンルーム内のほぼ全幅に
わたり位置するような場合でも、マウント部材５のセッ
トは極めて容易であり、パワプラントの組付作業性の大
幅な向上をはかることができ、且つマウント部材取付部
32の開口寸法も第２図の符号ａで示すようにパワプラン
トの動き量の範囲で必要最小限に止めることができ、板
厚を特別に厚くすることなく充分な強度を確保すること
ができる。

尚マウント部材５の一端部をマウントラバー5aを介し
てマウント部材取付部32に軸着し他端部をパワプラント
にボルト，ナット等にて締付固定してパワプラントを支
持するものであることは従来構造と同じであるが、本考
案では第１図乃至第３図示のようにサイドフレーム２の
補強用のリンホースメント３延長部31にてマウント部材
取付部32を一体に形成し該延長部31をホイールエプロン
１の内面に広範囲にわたり接合固着しているので、パワ
プラントの振動伝達が分岐され車室内こもり音の低減を
はかり得る。

第４図及び第５図は本考案の第２の実施例を示すもの
で、第１図乃至第３図の第１の実施例のものにおいて、
リンホースメント３の延長部31にて一体に形成したマウ
ント部材取付部32の上面を、バッテリ取付用のバッテリ
ベース６を載置するほぼ水平面をなすバッテリベース載
置面32aとしたものである。

第６図は本考案の第３の実施例を示すもので、この例
は上記第４図，第５図の第２実施例を更に改良したもの
である。

即ち、この第３実施例では、リンホースメント３の延
長部31にマウント部材取付部32とバッテリベース取付部
33とをそれぞれ一体に形成し、マウント部材取付部32の
上面に形成したバッテリベース載置面32aにバッテリベ
ース６を載置すると共に該バッテリベース６の後端部61
をバッテリベース取付部33にボルト，ナットにて締付固
定するよう構成したものである。

尚第６図においては、バッテリベース６にはマウント
部材取付部32の外側に沿う取付脚部62,62が設けられ、
バッテリベース６をバッテリベース載置面32aに載置し
且つその後端部61をバッテリベース取付部33に固定した
状態において、前記マウント部材５をマウント部材取付
部32に軸着する軸を、上記取付脚部62,62の取付穴62a,6
2aに挿し込み固定することにより、バッテリベース６を
前後２ヶ所においてリンホースメント３の延長部に固定
することができるようにした例を示している。

上記第４図，第５図に示す第２の実施例及び第６図に
示す第３の実施例のように、マウント部材取付部32を利
用しその上面をバッテリベース載置面32aとすることに
より、従来単独部品であったバッテリベース載置用ブラ
ケットが不要となり、又第６図に示す第３の実施例のよ
うにバッテリベース取付部33をリンホースメント３の延
長部31に一体に形成したことにより、更に部品点数の削
減，取付工数の削減をはかることができる。

第７図は本考案の第４の実施例を示すもので、この例
では第１図乃至第３図示の第１実施例におけるマウント
部材取付用穴11を利用し、ホイールエプロン１とその外
側のフロントフエンダ（図示省略）とにより形成される
フロントタイヤハウスの内部に装着される合成樹脂製の
マッドガード７に導風部71を形成することにより、走行
時外気が該マッドガード７の導風部71に導かれマウント
部材取付用穴11,34を通ってエンジンルーム内へと流通
し、エンジンルーム内の熱気を掃気し得るようにしたも
のである。

即ち、第７図に示すように、マッドガード７のホイー
ルエプロン１に接合される面に、上面部と側面部と底面
部とからなるほぼコ字状の導風部71を一体に形成し、該
マッドガード７をフロントタイヤハウス内に装着した状
態において、ホイールエプロン１と導風部71とで、前面
が開口し後端部が上記マウント部材取付用穴11に連通す
る断面ほぼ四角形の導風ダクト部８がフロントタイヤハ
ウス内において前後方向に向けて形成される構造とす
る。

フロントタイヤハウスの前面を覆うラジエータパネル
サイド９及びその前面のバンパ10にも上記導風ダクト部
８の前面開口部8aに通ずる導風口9a,10aをそれぞれ設け
る。

尚第７図において72はアンダカバー部、73はストラッ
ト貫通用穴である。

一般に軽自動車で横置き４気筒エンジンを搭載した車
両では、エンジン，トランスミッション及びバッテリ等
によりエンジンルーム内の通気性が妨げられ、特にラジ
エータ廻り等で熱気が滞留しがちであるが、上記第７図
示のように構成することにより、走行中外気が導風ダク
ト部８よりマウント部材取付用穴11,34を通ってエンジ
ンルーム内に強制的に導入され、エンジンルーム内の熱
気を掃気し、従来の通気性の問題を著しく改善すること
ができる。

考案の効果 以上のように本考案によれば、エンジン，トランスミ
ッション等よりなるパワプラントを、マウント部材によ
りエンジンルームの側壁に取付支持する自動車におい
て、ホイールエプロンと該ホイールエプロンの下縁部に
接合固着されたサイドフレームと該サイドフレーム内に
固着された補強用のリンホースメントとからなるエンジ
ンルーム側壁の該リンホースメントの上端部をサイドフ
レーム上端より上方に延長させてホイールエプロンに接
合固着し、該リンホースメントの上方延長部に上記マウ
ント部材を取付けるマウント部材取付部を一体に構成す
ると共に、該マウント部材取付部にマウント部材をホイ
ールエプロンの外側から挿し入れセットし得るマウント
部材取付用穴をホイールエプロンとマウント部材取付部
とに設けた構造としたことにより、従来独立部品であっ
たマウント部材支持用のマウントブラケットを省略でき
部品点数の削減をはかり得ると共に、パワプラント搭載
後従来はマウント部材を上方から挿し込みセットしなけ
ればならなかったのに対し、本考案ではマウント部材取
付用穴を用いてマウント部材をフロントタイヤハウス内
から横方向に挿し入れセットすることができるので、パ
ワプラントがエンジンルーム内のほぼ全幅に位置しスペ
ース的にあまり余裕がないような場合でもマウント部材
のセットが極めて容易となりパワプラント搭載の作業性
を大幅に改善することができ、且つマウント部材取付部
の開口寸法もパワプラントの動き範囲の必要最小限にと
どめ支持強度の向上をはかることができ、パワプラント
の振動伝達を分岐でき車室内こもり音の低減をも可能と
するもので、実用上多大の効果をもたらし得るものであ
る。

更に上記リンホースメントの延長部に一体に形成した
マウント部材取付部を利用しその上面をバッテリベース
の載置面とし、更に又リンホースメントの延長部にバッ
テリベース取付部を一体に形成することにより、バッテ
リベース取付用の各種ブラケットとそられの取付工数を
省略することができ、又上記ホイールエプロンとマウン
ト部材取付部とに設けたマウント部材取付用穴を利用
し、マッドガードに一体に形成した導風部と該マウント
部材取付用穴との組合せにより、車両走行時外気を強制
的にエンジンルーム内に取入れ、エンジンルーム内の熱
気を掃気することもできるもので、このようにパワプラ
ントの組付を容易とするための構成をバッテリ取付支持
やエンジンルーム内換気等の多目的に利用することがで
きる点、極めて効果的なるものである。

【図面の簡単な説明】

第１図乃至第３図は本考案の第１図の実施例を示すもの
で、第１図は斜視図、第２図は第１図のＡ−Ａ断面図、
第３図は分解斜視図である。第４図及び第５図は本考案
の第２の実施例を示す斜視図及び分解斜視図、第６図は
本考案の第３の実施例を示す分解斜視図、第７図は本考
案の第４の実施例を示す分解斜視図である。第８図は従
来のパワプラント取付支持部の縦断正面図である。 １…ホイールエプロン、11…マウント部材取付用穴、２
…サイドフレーム、３…リンホースメント、31…延長
部、32…マウント部材取付部、32a…バッテリベース載
置面、33…バッテリベース取付部、５…マウント部材、
６…バッテリベース、７…マッドガード、71…導風部、
８…導風ダクト部、8a…開口部。

Claims (4)

(57)【実用新案登録請求の範囲】
1. 【請求項１】車体前部のエンジンルームの側壁を、ホイ
   ールエプロンと該ホイールエプロンの下部に接合固着さ
   れたサイドフレームと該サイドフレーム内に固着された
   リンホースメントとで構成した自動車の車体前部構造に
   おいて、上記リンホースメントの上部をサイドフレーム
   上縁部より上方に突出延長させてホイールエプロンに接
   合固着される上方延長部を形成し、該リンホースメント
   の上方延長部に、パワプラントに組み付けられるマウン
   ト部材を取付支持するマウント部材取付部を内方に突出
   させて一体に形成すると共に、ホイールエプロンと該マ
   ウント部材取付部とに上記マウント部材が挿通するマウ
   ント部材取付用穴を設けたことを特徴とする自動車の車
   体前部構造。
2. 【請求項２】リンホースメントの上方延長部に一体に形
   成したマウント部材取付部は、その上面がバッテリ取付
   支持用のバッテリベースを載置支持するバッテリベース
   載置面に構成されていることを特徴とする請求項（１）
   に記載の自動車の車体前部構造。
3. 【請求項３】請求項（１）又は（２）に記載のリンホー
   スメントの上方延長部には、バッテリベースを取付固定
   するバッテリベース取付部が一体に形成されていること
   を特徴とする自動車の車体前部構造。
4. 【請求項４】請求項（１）乃至（３）のいずれかに記載
   のものにおいて、ホイールエプロン外側のフロントホイ
   ールハウス内に取付けられるマッドガードに、ホイール
   エプロンの外側面と共同して前端部が車体前方に開口し
   後部がホイールエプロンとマウント部材取付部とに設け
   たマウント部材取付用穴に連通する導風ダクト部を形成
   する導風部を一体に構成したことを特徴とする自動車の
   車体前部構造。