JP3622348B2 - ポリプロピレン系樹脂組成物及びそれよりなるライナー材 - Google Patents
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Description
【発明に属する技術分野】
本発明は、耐熱性、柔軟性に優れるポリプロピレン系樹脂組成物及びそれよりなるライナー材に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来、ライナー材には分岐型低密度ポリエチレン、エチレン・酢酸ビニル共重合体等にスチレン系熱可塑性エラストマー、軟化剤等をブレンドしたものが中心に使用されていたが、滅菌時間短縮等の要望から耐熱性の高い材料が求められている。
【0003】
その中でも、ポリプロピレン系樹脂は耐熱性が優れるばかりでなく、キャップにも多用されていることからリサイクル、接着性の観点からもポリプロピレン系樹脂系ライナー材が求められていた。しかしながら、ポリプロピレン系樹脂は剛性が高いため、ライナー材としては不適であり、剛性低下を目的として軟化剤、ゴムを多量に添加すると力学的性質が劣り、わずかな歪でも破壊してしまうため、ライナー材としては使用することができなかった。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、耐熱性、柔軟性に優れるポリプロピレン系樹脂組成物及びそれよりなるライナー材を提供することである。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記課題を達成するために鋭意検討を行った結果、ポリプロピレン系樹脂に、特定の特性と有するエチレン/α−オレフィン系共重合体エラストマー及び軟化剤を特定量配合して成るポリプロピレン系樹脂組成物がライナー材として優れた特性を有することを見いだし本発明を完成させるに至った。
【0006】
即ち、本発明は、ポリプロピレン系樹脂(A)、下記に示す(a)〜(d)の特性を有するエチレン/α−オレフィン系共重合体エラストマー(B)及び軟化剤(C)よりなり、それぞれの重量比率割合が((A)+(B))/(C)=20/80〜99/1、(A)/(B)=70/30〜99/1であることを特徴とするポリプロピレン系樹脂組成物及びライナー材に関するものである。
【0007】
(a)α−オレフィンの炭素数:4以上20以下
(b)α−オレフィンの含量:65重量%より大きく95重量%以下
(c)示差走査型熱量計による結晶融解ピーク:観測されない
(d)23℃における密度が0.880g/cm3未満
以下に、本発明を詳細に説明する。
【0008】
本発明に用いられるポリプロピレン系樹脂(A)は、一般な結晶性ポリプロピレン系樹脂を用いることができ、例えば、ポリプロピレンホモポリマー、エチレン含量0.5〜12重量%のプロピレン/エチレンランダム共重合体、エチレン含量0.5〜12重量%,1−ブテン等のα−オレフィン含量0.5〜20重量%のプロピレン/エチレン/α−オレフィン系三元共重合体、エチレン含量1〜60重量%のインパクトポリプロピレン、シンジオタクチック構造である結晶性ポリプロピレン系樹脂等が挙げられ、これらのうち1種又は2種以上が用いられる。
【0009】
本発明において用いられるポリプロピレン系樹脂(A)は、メルトフローレートは特に限定を受けず、230℃、2.16kg荷重のもと、0.01〜100g/10分のものが加工性に優れたポリプロピレン系樹脂組成物となることから好ましく用いられる。
【0010】
本発明において用いられるエチレン/α−オレフィン系共重合体エラストマー(B)は、α−オレフィンが炭素数4以上20以下のものであり、そのようなα−オレフィンとしては、例えば1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、4−メチル−1−ペンテン、1−ヘプテン、1−オクテン、1−ノネン、1−デセン、1−ウンデセン、1−ドデセン、1−トリデセン、1−テトラデセン、1−ペンタデセン、1−ヘキサデセン、1−ヘプタデセン、1−オクタデセン、1−ノナデセン、1−エイコセン等が挙げられ、これらの1種又は2種以上が用いられる。中でも、入手の容易さから1−ブテン、1−ヘプテン、1−ヘキセン、1−オクテン等が好ましい。α−オレフィンの炭素数が4未満あるいは20を越える場合は、ポリプロピレン系樹脂との相溶性が低下し、耐熱性、柔軟性等が損なわれるため好ましくない。
【0011】
本発明において用いられるエチレン/α−オレフィン系共重合体エラストマー(B)のα−オレフィン含量は、65重量%より大きく95重量%以下、好ましくは70重量%以上95重量%以下である。α−オレフィン含量が65重量%以下又は95重量%より大きい場合、得られるポリプロピレン系樹脂組成物の力学的性質が損なわれ、容易に破壊するものとなり好ましくない。
【0012】
本発明において用いられるエチレン/α−オレフィン系共重合体エラストマー(B)は、23℃における密度が0.880g/cm3未満のものである。実際の製造を考慮すると、エチレン/α−オレフィン系共重合体エラストマーの密度は、0.850g/cm3以上0.880g/cm3未満が好ましい。密度が0.880g/cm3以上のエチレン/α−オレフィン系共重合体エラストマーを用いた場合、得られるポリプロピレン系樹脂組成物の力学的性質が損なわれ好ましくない。
【0013】
本発明において用いられるエチレン/α−オレフィン系共重合体エラストマー(B)は、示差走査型熱量計(DSC)により結晶融解ピークが観測されないことを特徴とする。結晶融解ピークを示すエチレン/α−オレフィン系共重合体を用いた場合、得られるポリプロピレン系樹脂組成物の力学的性質が損なわれ好ましくない。
【0014】
本発明において用いられるエチレン/α−オレフィン系共重合体エラストマー(B)の分子量は、特に制限されるものではない。そして、得られるポリプロピレン系樹脂組成物が優れた加工性及び製品外観を有することから、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)によって測定した数平均分子量がポリエチレン換算で5000〜1000000であることが好ましく、良好な力学特性の発現することから30000〜500000であることが特に好ましい。
【0015】
本発明において用いられるエチレン/α−オレフィン系共重合体エラストマー(B)の分子量分布(Mw/Mn)は特に制限はないが、3以下が好ましく、また、組成分布の指標として、高分子量留分10%中の平均α−オレフィン含量 (モル%)に対する低分子量留分10%中の平均α−オレフィン含量(モル%)の比が1.2以下が好ましく、さらに1.15以下であることが特に好ましい。
上述のエチレン/α−オレフィン共重合体の製造方法は特に限定されず、チタン系触媒、バナジウム系触媒、メタロセン系の触媒等種々の触媒を用いて製造することができる。中でも、共重合性に優れたメタロセン触媒を用いて製造することが好ましい。この方法により高活性で、分子量分布及び組成分布の狭い共重合体を得ることが可能である。
【0016】
メタロセン触媒としては、メタロセン系化合物とアルミノキサン化合物との組み合わせ(特開昭58−19309号公報、同60−35006号公報、同61−130314号公報、特開平3−163088号公報)、あるいはメタロセン系化合物と、これと反応して安定なアニオンを形成するイオン化イオン性化合物との組み合わせ(特表平1−502036号公報、国際公表公報WO91/14713号公報、WO92/01723号公報、特開平5−310829号公報)が挙げられる。しかし、一般にエチレン/α−オレフィン共重合において、α−オレフィンの含量の増大とともに分子量が低下することが知られている。そこで、本発明のエチレン/α−オレフィン系共重合体エラストマーを効率よく生産するためには、以下に示す化合物からなる触媒を用いることが好ましい。
【0017】
a)下記一般式(1)で表される遷移金属化合物
b)下記一般式(2)、(3)、(4)、(5)で表される上記遷移金属化合物をカチオン性遷移金属化合物とし得る成分
c)下記一般式(6)で表される有機アルミニウム化合物
a)遷移金属化合物が下記一般式(1)
【0018】
【化1】
【0019】
[Cp1シクロペンタジエニル基、インデニル基、フルオレニル基又はそれらの置換体であり、Cp2は無置換又は置換基(−R,−BR2,−SiR3,−NR2,−PR2,−OR,−SR,−F,−Cl,−Br,−I:ただし、Rは水素又は炭素数1〜20の炭化水素基である)を有するフルオレニル基であり、R1、R2は各々独立して水素、ハロゲン又は炭素数1〜12の炭化水素基、アルコキシ基又はアリーロキシ基であり、また、少なくとも一方がアリール基又は置換アリール基であり、Mはチタン、ジルコニウム又はハフニウムであり、R3、R4は各々独立して水素、ハロゲン又は炭素数1〜12の炭化水素基、アルコキシ基もしくはアリーロキシ基である]である。
【0020】
一般式(1)の具体例としては、ジフェニルメチレン(シクロペンタジエニル)(フルオレニル)ジルコニウムジクロライド、メチルフェニルメチレン(シクロペンタジエニル)(フルオレニル)ジルコニウムジクロライド、ジフェニルメチレン(シクロペンタジエニル)(2,7−ジ−t−ブチルフルオレニル)ジルコニウムジクロライド、メチルフェニルメチレン(シクロペンタジエニル)(2,7−ジ−t−ブチルフルオレニル)ジルコニウムジクロライド、ジフェニルメチレン(シクロペンタジエニル)(2,7−ジメチルフルオレニル)ジルコニウムジクロライド、メチルフェニルメチレン(シクロペンタジエニル)(2,7−ジメチルフルオレニル)ジルコニウムジクロライド、ジフェニルメチレン(シクロペンタジエニル)(2,7−ジフェニルフルオレニル)ジルコニウムジクロライド、メチルフェニルメチレン(シクロペンタジエニル)(2,7−ジフェニルフルオレニル)ジルコニウムジクロライド、ジフェニルメチレン(シクロペンタジエニル)(a,i−ジベンゾフルオレニル)ジルコニウムジクロライド、メチルフェニルメチレン(シクロペンタジエニル)(a,i−ジベンゾフルオレニル)ジルコニウムジクロライド、ジフェニルメチレン(シクロペンタジエニル)(b,h−ジベンゾフルオレニル)ジルコニウムジクロライド、メチルフェニルメチレン(シクロペンタジエニル)(b,h−ジベンゾフルオレニル)ジルコニウムジクロライド、ジ(4−トリル)メチレン(シクロペンタジエニル)(フルオレニル)ジルコニウムジクロライド、ジ(4−ビフェニル)メチレン(シクロペンタジエニル)(フルオレニル)ジルコニウムジクロライド、ジフェニルメチレン (シクロペンタジエニル)(2−ジメチルアミノフルオレニル)ジルコニウムジクロライド、メチルフェニルメチレン(シクロペンタジエニル)(2−ジメチルアミノフルオレニル)ジルコニウムジクロライド、ジフェニルメチレン(シクロペンタジエニル)(2−メトキシフルオレニル)ジルコニウムジクロライド、メチルフェニルメチレン(シクロペンタジエニル)(2−メトキシフルオレニル)ジルコニウムジクロライド、ジフェニルメチレン(3−メチルシクロペンタジエニル)(フルオレニル)ジルコニウムジクロライド、メチルフェニルメチレン (3−メチルシクロペンタジエニル)(フルオレニル)ジルコニウムジクロライド、ジフェニルメチレン(3,4−ジメチルシクロペンタジエニル)(フルオレニル)ジルコニウムジクロライド、メチルフェニルメチレン(3,4−ジメチルシクロペンタジエニル)(フルオレニル)ジルコニウムジクロライド及び上記化合物のジルコニウムをチタン又はハフニウムに置換した化合物等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。中でも、置換フルオレニル基を配位子に持ち、ジルコニウム、ハフニウムを中心金属とした化合物が共重合性に優れ、さらに、より高分子量化が可能という点で好ましい。
【0021】
b)上記遷移金属化合物をカチオン性遷移金属化合物としうる成分として、プロトン酸(2)、ルイス酸(3)、イオン化イオン性化合物(4)、ルイス酸性化合物(5)が挙げられる。
【0022】
プロトン酸は、下記一般式(2)
【0023】
【化2】
【0024】
[式中、Hはプロトンであり、L1は各々独立してルイス塩基であり、lは0<l≦2であり、M1はホウ素原子、アルミニウム原子又はガリウム原子であり、R5は各々独立して炭素原子数6〜20のハロゲン置換アリール基である。]で表される化合物である。
【0025】
ルイス酸は下記一般式(3)
【0026】
【化3】
【0027】
[式中、Cはカルボニウムカチオン又はトロピニウムカチオンであり、M1はホウ素原子、アルミニウム原子又はガリウム原子であり、R5は各々独立して炭素原子数6〜20のハロゲン置換アリール基である。]で表される化合物である。
【0028】
イオン化イオン性化合物は下記一般式(4)
【0029】
【化4】
【0030】
[式中、M2は周期表2族、8族、9族、10族、11族又は12族から選ばれる金属の陽イオンであり、L2はルイス塩基又はシクロペンタジエニル基であり、mは0≦m≦2であり、M1はホウ素原子、アルミニウム原子又はガリウム原子であり、R5は各々独立して炭素原子数6〜20のハロゲン置換アリール基である。]で表される化合物である。
【0031】
ルイス酸性化合物は、下記一般式(5)
【0032】
【化5】
【0033】
[式中、M1はホウ素原子、アルミニウム原子又はガリウム原子であり、R5は各々独立して炭素原子数6〜20のハロゲン置換アリール基である。]で表される化合物である。
【0034】
本発明の触媒の構成成分として用いられるプロトン酸(2)、ルイス酸(3)、イオン化イオン性化合物(4)、ルイス酸性化合物(5)は、上記の遷移金属化合物と反応し、カチオン性遷移金属化合物を生成しうる化合物であり、生成したカチオン性遷移金属化合物に対して対アニオンを提供する化合物である。
【0035】
一般式(2)で表されるプロトン酸の具体例として、ジエチルオキソニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、ジメチルオキソニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、テトラメチレンオキソニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、N,N−ジメチルアニリニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、トリ−n−ブチルアンモニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、ジエチルオキソニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)アルミネート、ジメチルオキソニウムテトラキス (ペンタフルオロフェニル)アルミネート、テトラメチレンオキソニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)アルミネート、N,N−ジメチルアニリニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)アルミネート、トリ−n−ブチルアンモニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)アルミネート等を挙げることができるが、これらに限定されるものではない。
【0036】
一般式(3)で表されるルイス酸としては、具体的にはトリチルテトラキス (ペンタフルオロフェニル)ボレート、トリチルテトラキス(ペンタフルオロフェニル)アルミネート、トロピリウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、トロピリウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)アルミネート等を挙げることができるが、これらに限定されるものではない。
【0037】
一般式(4)で表されるイオン化イオン性化合物としては、具体的にはリチウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、リチウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)アルミネート等のリチウム塩、又はそのエーテル錯体、フェロセニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、フェロセニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)アルミネート等のフェロセニウム塩、シルバーテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、シルバーテトラキス (ペンタフルオレフェニル)アルミネート等の銀塩等を挙げることができるがこれらに限定されるものではない。
【0038】
一般式(5)で表されるルイス酸性化合物の具体的な例として、トリス(ペンタフルオロフェニル)ボラン、トリス(2,3,5,6−テトラフルオロフェニル)ボラン、トリス(2,3,4,5−テトラフェニルフェニル)ボラン、トリス(3,4,5−トリフルオロフェニル)ボラン、フェニルビス(ペンタフルオロフェニル)ボラン、トリス(3,4,5−トリフルオロフェニル)アルミニウム等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0039】
c)有機金属化合物としては、周期表1族、2族、3族Sn又はZnを含む有機金属を挙げることができ具体的には下記一般式(6)
【0040】
【化6】
【0041】
[式中、M3は周期表1、2、3族、Sn又はZnの元素である。R6は各々独立して、水素原子、炭素数1〜24のアルキル基もしくはアルコキシ基、又は炭素数6〜24のアリール基、アリールオキシ基、アリールアルキル基、アリールアルコキシ基、アルキルアリール基もしくはアルキルアリールオキシ基であり、少なくとも1つのR6は水素原子、炭素数1〜24のアルキル基又は炭素数6〜24のアリール基、アリールアルキル基もしくはアルキルアリール基である。nはM3の酸化数に等しい。]で表される有機金属化合物である。
【0042】
前記一般式(6)で表される化合物としては、例えば、トリメチルアルミニウム、トリエチルアルミニウム、トリイソプロピルアルミニウム、トリ−n−プロピルアルミニウム、トリイソブチルアルミニウム、トリ−n−ブチルアルミニウム、トリアミルアルミニウム、ジメチルアルミニウムエトキサイド、ジエチルアルミニウムエトキサイド、ジイソプロピルアルミニウムエトキサイド、ジ−n−プロピルアルミニウムエトキサイド、ジイソブチルアルミニウムエトキサイド、ジ−n−ブチルアルミニウムエトキサイド、ジメチルアルミニウムハイドライド、ジエチルアルミニウムハイドライド、ジイソプロピルアルミニウムハイドライド、ジ−n−プロピルアルミニウムハイドライド、ジイソブチルアルミニウムハイドライド、ジ−n−ブチルアルミニウムハイドライド等を例示することができるが、これらに限定されるものではない。
【0043】
重合は、バッチ式、半連続式、連続式のいずれの方法でも行うことが可能であり、重合条件を変えて2段以上に分けて行うことも可能である。また、重合終了後に得られる共重合体は、従来公知の方法により重合溶液から分離回収され、乾燥して固体状の共重合体を得る。
【0044】
本発明に用いるポリプロピレン系樹脂(A)とエチレン/α−オレフィン系共重合体エラストマー(B)とは、相溶性に優れることを特徴としている。相溶性の指標はさまざまであるが、ガラス転移温度等を調べることによって判断できる。例えば固体粘弾性の温度依存性を測定して−80℃〜40℃の範囲に生じる損失正接(tanδ)の極大はガラス転移温度を反映しているが、本発明の樹脂組成物のtanδのピーク数は単一となり、ポリプロピレン系樹脂(A)とエチレン/α−オレフィン系共重合体エラストマー(B)とが非晶領域で相溶している様子がわかる。相溶していない場合には、ポリプロピレン系樹脂(A)のガラス転移に起因するピーク以外にエチレン/α−オレフィン系共重合体エラストマー(B)のガラス転移温度に由来するtanδのピークが観察できるが、このようなポリプロピレン系複合材料の力学的性質は劣る。なお、ポリプロピレン系樹脂(A)としてインパクトポリプロピレンを用いた場合には、ポリプロピレン系樹脂(A)中に含まれるエチレン/プロピレン共重合体に基づくtanδのピークも存在し、tanδのピーク数は2つ観察される場合もあるが、この場合も本発明の範囲内にある。この場合、ポリプロピレンの非晶領域に由来するtanδのピークのシフト温度がポリプロピレンホモポリマーを用いたときと同じであれば、エチレン/α−オレフィン共重合体エラストマーはポリプロピレンの非晶領域と相溶しているといえる。
【0045】
本発明に用いる軟化剤(C)は、室温で液状又はワックス状である軟化剤であれば特に限定を受けない。そして、ポリプロピレン系樹脂(A)及び/又はエチレン/αーオレフィン系共重合体エラストマー(B)との相溶性に優れたものが得られるポリプロピレン系樹脂組成物のべた付きが生じにくいため好ましい。このような軟化剤としては、例えばパラフィン系軟化剤、ナフテン系軟化剤、アロマ系軟化剤、アスファルト、ワセリン、オゾケライト、トール油、低重合度フェノールホルムアルデヒド樹脂、低融点スチレン樹脂等が挙げられ、これらのうち1種又は2種以上が用いられる。
【0046】
本発明のポリプロピレン系樹脂組成物は、ポリプロピレン系樹脂(A)、エチレン/α−オレフィン系共重合体エラストマー(B)、軟化剤(C)よりなり、それぞれの重量比率割合は((A)+(B))/(C)=20/80〜99/1であることを特徴とする。軟化剤(C)の重量比率が80%を越えたり、1%未満であると適当な硬度のポリプロピレン系樹脂組成物を得ることができない。また、本発明のポリプロピレン系樹脂組成物は、ポリプロピレン系樹脂(A)とエチレン/α−オレフィン系共重合体エラストマー(B)が、それぞれの重量割合が(A)/(B)=70/30〜99/1であることを特徴とする。ポリプロピレン系樹脂(A)が99%を越えたり、70%未満であると得られるポリプロピレン系樹脂組成物の硬度が著しく高くなったり、表面粘着が生じ好ましくない。
【0047】
また、本発明のポリプロピレン系樹脂組成物には、本発明の目的を逸脱しない限りにおいて、充填剤を添加することも可能である。充填剤は、例えば、HAF、FEF、ISAF、SAF、SRF、FT、MT、EPC、MPC等に代表される補強性カーボンブラック、タルク、シリカ、クレー、カオリン、炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム、硫酸バリウム、水酸化アルミニウム、ウォラストナイト、モンモリロナイト、アタパルジャイト等が挙げられこれらの1種又は2種以上を併用することができる。
【0048】
また、本発明の樹脂組成物には必要に応じて有機,無機顔料、結晶核剤、透明化剤、アンチブロッキング剤、離型剤、帯電防止剤、スリップ剤、防曇剤、滑剤、耐熱安定剤、紫外線安定剤、耐光安定剤、耐候性安定剤、発泡剤、防黴剤、防錆剤、イオントラップ剤、難燃剤、難燃助剤等を必要に応じて添加してもよい。
【0049】
さらに、本発明のポリプロピレン系樹脂組成物にはその性能を損なわない程度にポリ(1−ブテン)、スチレン−エチレンブチレン−スチレンブロック共重合体、スチレン−エチレンプロピレン−スチレンブロック共重合体、スチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体、スチレン−ブタジエン−スチレンブロック共重合体を添加してもよい。
【0050】
本発明のポリプロピレン系樹脂組成物は、ポリプロピレン系樹脂(A)、エチレン/α−オレフィン系共重合体エラストマー(B)及び軟化剤(C)を任意の方法によって混合することにより得られるが分散性の向上のため、ニーダー、ロール、バンバリミキサー、一軸又は二軸押出機等を用い溶融ブレンドを行うことが好ましい。
【0051】
本発明のポリプロピレン系樹脂組成物は、ブロー成形、フィルム成形、真空成形、圧空成形、トランスファー成形又は射出成形等任意の方法によって成形され、ライナー材に好適な材料となる。
【0052】
【実施例】
以下に、実施例を挙げて本発明を説明するが、これらは例示的なものであって、限定的なものではない。実施例中の各種測定及びエチレン/α−オレフィン系共重合体エラストマーの合成は、下記の方法により行った。
【0053】
(α−オレフィン共重合量の測定)
エチレン/α−オレフィン共重合体エラストマー(B)のα−オレフィン共重合量はo−ジクロロベンゼン/ベンゼン−d6(75/25容量%)を溶媒に100MHz、13C−NMRスペクトル(日本電子(株)製JNM GX400)測定を行い、以下の文献によって算出した。
【0054】
Macromolecules, 15, 1150 (1982), Macromolecules, 15, 353 (1982),
Macromolecules, 15, 1402 (1984), Polymer, 25, 441 (1984)
(分子量、分子量分布の測定)
溶媒にo−ジクロロベンゼンを用い、140℃におけるゲルパーミエーションクロマトグラフィー(ミリポア(株)製 150C型GPC)を用いて、ポリエチレン換算で求めた。
【0055】
(密度)
100℃の熱水に1時間浸し、その後室温まで放冷したものについて、JISK6760(1981)に準拠して、23℃に保った密度勾配管を用いて測定した。
【0056】
(融点)
示差走査型熱量計(DSC)(パーキンエルマー,DSC−7)を用いて測定した。DSC内で試料を200℃で5分間溶融し、その後10℃/分の速度で温度を−100℃まで下げて固化させた試料について、再度10℃/分の速度で昇温させたときに得られる吸熱曲線の最も高温に位置するピークのピーク温度を融点とした。
【0057】
(硬度の測定)
JISK6301(1975)に準拠し、厚さ5mm、50×50mmの平板を用いて、23℃においてショアーD硬度の測定を行った。
【0058】
(引張破断伸びの測定)
JISK6301(1975)に準拠し、23℃において、3号ダンベルを用い、引張速度500mm/minで引張試験を行い、破断時の伸びを測定した。
【0059】
合成例1 エチレン/α−オレフィン共重合体エラストマーの合成
5 lのオートクレーブにヘキサン2000ml及び1−ヘキセン 500mlを加え80℃に昇温した。さらに、全圧が4kg/cm2になるようにエチレンを導入した。次に、別の反応容器にトルエン10ml、トリイソブチルアルミニウム 1.5mmol、ジフェニルメチレン(シクロペンタジエニル)(フルオレニル)ハフニウムジクロライド 3μmol、ジメチルアニリニウムテトラキスペンタフルオロフェニルボレート 3.6μmolを加え、この混合溶液を20分間撹拌した後、オートクレーブに導入し、重合を開始した。この重合は全圧を4kg/cm2に保つようにエチレンを連続的に導入し、80℃で10分間行った。
【0060】
重合終了後、多量のエタノールによりポリマーを洗浄し、60℃で12時間減圧乾燥を行った。その結果、1−ヘキセン含量が82重量%のエチレン/1−ヘキセン共重合体エラストマー(B1)を95g得た。同様の手法により、種々のエチレン/α−オレフィン共重合体エラストマーを得た。得られた共重合体エラストマーの特性値は表1に示した。また、上述のポリマーは必要に応じて繰り返し重合を行い、多量の試料を得た。
【0061】
【表1】
【0062】
実施例1
プロピレンホモポリマー(東ソーポリプロJ5100A、東ソー(株)製、MFR=10g/10分)384g、合成例1で得たエチレン/1−ヘキセン共重合体エラストマ−(B1)96g、パラフィン系オイル(出光興産社製、商品名ダイアナプロセスオイルPW−380)160g、スチレンーエチレンブチレンースチレントリブロックコポリマー(シェル社製、商品名クレイトンG1651)、安定剤としてヒンダードフェノール系安定剤(イルガノックス1010チバ・ガイギー社製)、リン系安定剤(イルガフォス168 チバ・ガイギー社製)をそれぞれ1000ppm、滑剤としてステアリン酸カルシウム:5000ppmを添加して、内容積1 lの二軸混練機(東測精密)を用いて60rpmで200℃、10分間混練したのちストランドカットを行いペレットを得た。得られたペレットを、東芝IS−50Aを用い、シリンダー温度230℃、金型温度40℃にて射出成形し、試験片を得た。
【0063】
この試験片を用い、硬度、破断伸び、融点等を測定し、その結果を表2に示した。満足するものが得られた。
【0064】
【表2】
【0065】
実施例2
エチレン/1−ヘキセン共重合体エラストマー(B1)の代わりに、合成例2で得られたエチレン/1−ブテン共重合体エラストマー(B2)を用いた以外は実施例1と同様の方法で試験片を得た。実施例1と同様に硬度、破断伸び、融点を測定し、その結果を表2に示した。満足するものが得られた。
【0066】
実施例3〜実施例5
実施例1で用いたポリプロピレンとエチレン/1−ヘキセン共重合体エラストマー(B1)を用い、表2に示す配合に従い、実施例1と同様に試験片を得た。この試験片を用い、硬度、破断伸び、融点等を測定し、その結果を表2に示した。満足するものが得られた。
【0067】
比較例1
エチレン/1−ヘキセン共重合体エラストマー(C1)を用いない以外は実施例1と同様の方法で混練を行ったが、軟化剤による滑りが激しく、有効なせん断を与えることができなかったため試験片を得ることができず、以降の測定は不可能となった。
【0068】
【表3】
【0069】
比較例2
軟化剤を用いない以外は実施例1と同様の方法で試験片を得た。実施例1と同様に硬度、破断伸び、融点を測定し、その結果を表3に示した。硬度、破断伸びとも満足するものが得られなかった。
比較例3
エチレン/1−ヘキセン共重合体エラストマー(B1)のかわりに、合成例1で得られた1−ヘキセン含量56重量%のエチレン/1−ヘキセン共重合体エラストマー(E1)を用いた以外は実施例1と同様の方法で試験片を得た。実施例1と同様に硬度、破断伸び、融点を測定し、その結果を表3に示した。硬度、破断伸びとも満足するものが得られなかった。
【0070】
比較例4
エチレン/1−ヘキセン共重合体エラストマー(B1)のかわりに、合成例1で得られたプロピレン75重量%のエチレン/プロピレン共重合体エラストマー(E2)を用いた以外は実施例1と同様の方法で試験片を得た。実施例1と同様に硬度、破断伸び、融点を測定し、その結果を表3に示した。硬度、破断伸びとも満足するものが得られなかった。
【0071】
合成例2 エチレン/1−ブテン共重合体エラストマーの合成
5lのオートクレーブにトルエン500ml及び1−ブテン 1000mlを加え40℃に昇温した。さらに、全圧が4kg/cm2になるようにエチレンを導入した。次に、別の反応容器にトルエン10ml、メチルアルミノキサン3mmol、ジメチルシリルビス(2−メチルインデニル)ジルコニウムジクロライド3μmolを加え、この混合溶液を20分間撹拌した後、オートクレーブに導入し、重合を開始した。この重合は全圧を4kg/cm2に保つようにエチレンを連続的に導入し、40℃で30分間行った。
【0072】
重合終了後、多量のエタノールによりポリマーを洗浄し、60℃で12時間減圧乾燥を行った。その結果、1−ブテン含量が96重量%のエチレン/1−ブテン共重合体エラストマー(E3)を54g得た。本操作を数回繰り返して試料とした。また、本エラストマーの特性は表1に示した。
【0073】
比較例5
エチレン/1−ヘキセン共重合体エラストマー(B1)の代わりに、合成例2で得られたエチレン/1−ブテン共重合体エラストマー(E3)を用いた以外は実施例1及び2と同様の方法で行い、成形品と試料を得た。実施例1と同様に硬度、破断伸び、融点を測定し、その結果を表3に示した。硬度、破断伸びとも満足するものが得られなかった。
【0074】
比較例6
実施例1で用いたポリプロピレンとエチレン/1−ヘキセン共重合体エラストマー(B1)を用い、表3に示す配合に従い、実施例1と同様に試験片を得た。この試験片を用い、硬度、破断伸び、融点等を測定し、その結果を表3に示した。満足するものが得られなかった。
【0075】
【発明の効果】
以上述べたように、本発明のポリプロピレン系樹脂組成物はポリプロピレンの優れた耐熱性を損なうことなく、柔軟でかつ力学的性質に優れたものとなり、ライナー材に適した材料となる。
Claims (2)
- ポリプロピレン系樹脂(A)、下記に示す(a)〜(d)の特性を有するエチレン/α−オレフィン系共重合体エラストマー(B)及び軟化剤 (C)よりなり、それぞれの重量比率割合が((A)+(B))/(C)=20/80〜99/1、(A)/(B)=70/30〜99/1であることを特徴とするポリプロピレン系樹脂組成物。
(a)α−オレフィンの炭素数:4以上20以下
(b)α−オレフィンの含量:65重量%より大きく95重量%以下
(c)示差走査型熱量計による結晶融解ピーク:観測されない
(d)23℃における密度が0.880g/cm3未満 - 請求項1に記載のポリプロピレン系樹脂組成物よりなることを特徴とするからなるライナー材。
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