JP3849150B2 - 電子線改質エチレン・α−オレフィン系共重合体エラストマーおよびポリプロピレン系樹脂組成物 - Google Patents
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【0001】
【産業上の利用分野】
本発明は、ポリプロピレン系樹脂に添加することによりポリプロピレン系樹脂の難白化性、成形加工性を向上することが可能な電子線改質エチレン・α−オレフィン系共重合体エラストマー、また、これによって改質されたポリプロピレン系樹脂組成物に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
ポリプロピレン系樹脂は流動性に優れる高分子材料の1つとしてよく知られているが、成形加工時のドローダウンが激しく、真空、圧空、フィルム成形などで問題となることが多い。これらの現象は溶融張力が小さいことに由来する性質であり、同様の理由でブロー成形性も優れたものではない。
【0003】
こうした特性の改良には分子量分布を広げたり、分岐型低密度ポリエチレン (LDPE)を添加するなどの手法が採用されることが多いが、いずれの場合もその改質効果は小さく、一層の改良が望まれていた。
【0004】
一方、医療分野、文具などを中心に、耐熱性、柔軟性、耐白化性、成形性に優れた材料が望まれていた。これまで知られている材料では、ポリプロピレン系樹脂をマトリクスに有した熱可塑性ポリオレフィン系エラストマー(TPO)が、耐熱性、柔軟性の観点からその需要を伸ばしている。しかしながら、TPOは▲1▼フィルム、真空、圧空、ブロー成形性に劣り、▲2▼透明性が要求される用途には使用が制限され、▲3▼硬度が高くなると難白化性が劣る、など問題が多かった。また、難白化性に関する要求は自動車内装、家電分野で幅広くあるものの、ポリプロピレン系樹脂に対してはこれまで有効な改質材が存在しなかった。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
このような現状の中、本発明者らは(a)α−オレフィンが炭素数4以上20以下、(b)α−オレフィン含量が65重量%より大きく95重量%以下、(c)23℃における密度が0.88g/cm3未満、および(d)DSC法により結晶融解ピークが観測されない、以上の条件を満たすエチレン・α−オレフィン系共重合体エラストマーとポリプロピレン系樹脂組成物とからなる樹脂組成物は耐熱性、難白化性に優れることを見出した。
【0006】
しかしながら、この樹脂組成物にはエチレン・α−オレフィン系共重合体エラストマーのブレンド比率が増加するにつれ表面がベタつくという問題が生じていた。また、この樹脂組成物の溶融張力は小さく、フィルム、真空、圧空、ブロー成形などは依然として改良されていなかった。
【0007】
本発明は、前記問題点を解決するためになされたものであり、表面ベタつきを抑えながらポリプロピレン系樹脂の難白化性、成形加工性を向上することが可能な電子線改質エチレン・α−オレフィン系共重合体エラストマー、およびこれによって改質されたポリプロピレン系樹脂組成物を提供するものである。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記目的を達成するために鋭意検討を行った結果、本発明を完成するに至った。すなわち本発明は、(a)〜(d)の条件を満たすエチレン・α−オレフィン系共重合体エラストマーに1kGray以上100kGray以下の電子線を照射した電子線改質エチレン・α−オレフィン系共重合体エラストマー、及びこれをポリプロピレン系樹脂に添加することにより改質されたポリプロピレン系樹脂組成物に関するものである。
【0009】
(a)α−オレフィンの炭素数:4以上20以下
(b)α−オレフィンの含量:65重量%より大きく95重量%以下
(c)23℃における密度:0.88g/cm3未満
(d)示差走査型熱量計による結晶融解ピーク:観測されない
以下にその詳細について説明する。
【0010】
本発明において用いられるエチレン・α−オレフィン系共重合体エラストマーのα−オレフィンは、炭素数4以上20以下のものであり、例えば、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、4−メチル−1−ペンテン、1−ヘプテン、1−オクテン、1−ノネン、1−デセン、1−ウンデセン、1−ドデセン、1−トリデセン、1−テトラデセン、1−ペンタデセン、1−ヘキサデセン、1−ヘプタデセン、1−オクタデセン、1−ノナデセン、1−エイコセン等が挙げられ、これらの1種もしくは2種以上が用いられる。なかでも入手の容易さから1−ブテン、1−ヘプテン、1−ヘキセン、1−オクテン等が好ましい。
【0011】
本発明において用いられるエチレン・α−オレフィン系共重合体エラストマーのα−オレフィン含量は、65重量%より大きく95重量%以下、好ましくは70重量%以上90重量%以下である。α−オレフィン含量が65重量%以下または95%より大きくなると電子線によって改質した後、ポリプロピレン系樹脂に添加しても得られる樹脂組成物の難白化性の改質効果は劣る。
【0012】
本発明において用いられるエチレン・α−オレフィン系共重合体エラストマーの23℃における密度は0.88g/cm3未満のものである。0.88g/cm3以上のエチレン・α−オレフィン系共重合体エラストマーでは、電子線で改質した後にポリプロピレン系樹脂に添加しても得られる樹脂組成物の難白化性の改質効果は劣る。
【0013】
本発明において用いられるエチレン・α−オレフィン系共重合体エラストマーは、示差走査型熱量計(DSC)により結晶融解ピークが観測されないことを特徴とする。結晶融解ピークを示すエチレン・α−オレフィン系共重合体を用いると、電子線で改質した後にポリプロピレン系樹脂に添加しても得られる樹脂組成物の難白化性は劣る。
【0014】
本発明において用いられるエチレン・α−オレフィン系共重合体エラストマーの分子量は、特に制限されるものではないが、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)によって測定した数平均分子量がポリエチレン換算で5,000〜1,000,000であることが好ましい。この数平均分子量が5,000未満または1,000,000以上であると電子線を照射するまでの取り扱いが困難になる恐れがある。
【0015】
本発明において用いられるエチレン・α−オレフィン系共重合体エラストマーは、分子量分布(Mw/Mn)に特に制限はないが、3以下が好ましく、また、組成分布の指標として、高分子量留分10%中の平均α−オレフィン含量(モル%)に対する低分子量留分10%中の平均α−オレフィン含量(モル%)の比が1.2以下が好ましく、さらに好ましくは1.15以下である。一般に分子量分布が大きくなると組成分布も大きくなることが知られているが、組成分布が広いと電子線によって改質した後にポリプロピレン系樹脂に添加しても得られる樹脂組成物の難白化性は劣る恐れがある。
【0016】
本発明は、エチレン・α−オレフィン系共重合体エラストマーに1kGray以上100kGray以下の電子線を照射することを特徴とする。これによってエチレン・α−オレフィン系共重合体エラストマーの自着速度が低下し取り扱いが容易になると共に、ポリプロピレン系樹脂に添加して得られた樹脂組成物はベタつきが低減し、かつ溶融張力の増加による成形加工性の改良効果が顕著になる。電子線の照射量が1kGray未満であるとポリプロピレン系樹脂に添加しても成形加工性の改良効果が発現しない恐れがある。また、100kGrayを超えるとポリプロピレン系樹脂に添加して得られた樹脂組成物の表面が著しくベタつく恐れがある。
【0017】
電子線改質エチレン・α−オレフィン系共重合体エラストマーとポリプロピレン系樹脂とのブレンド比率は、特に限定されないが、ポリプロピレン系樹脂100重量部に対して1重量部以上300重量部以下であり、目的とする用途、要求特性に応じて任意に変えることができる。しかしながら、1重量部未満では得られる樹脂組成物の難白化性能が劣る場合があり、300重量部を超えると耐熱性が損なわれる恐れがある。また、本樹脂組成物に高い剛性を求める場合には、電子線改質エチレン・α−オレフィン系共重合体エラストマーの添加量を45重量部以下とすることが望ましい。
【0018】
本発明に用いるポリプロピレン系樹脂は一般に使用されている結晶性ポリプロピレン系樹脂を用いることができる。例えば、ポリプロピレンホモポリマー、エチレン含量が0.5〜12重量%のプロピレン・エチレンランダム共重合体、エチレン含量が0.5〜12重量%、1−ブテンのようなα−オレフィン含量が0.5〜20重量%のプロピレン・エチレン・α−オレフィン系三元共重合体、エチレン含量が1〜60重量%のインパクトポリプロピレン、シンジオタクチック構造である結晶性ポリプロピレン系樹脂などが挙げられ、これらのうち1種または2種以上が用いられる。
【0019】
ポリプロピレン系樹脂のメルトフローレートは、特に限定をされず、230℃、2.16kg荷重のもと、0.01〜100g/10分のものが用いられる。
【0020】
本発明で用いるエチレン・α−オレフィン系共重合体エラストマーの製造方法は、特に限定されず、チタン系触媒、バナジウム系触媒またはメタロセン系の触媒など種々の触媒を用いて製造することができる。なかでも、上述の分子量、分子量分布および組成分布を満たしたエチレン・α−オレフィン系共重合体エラストマーを得ることが容易なメタロセン系の触媒を用いることが好ましい。
【0021】
すなわち、(a)周期表4族の遷移金属を含む遷移金属化合物と、(b)これと反応してイオン性の錯体を形成する化合物、さらに必要に応じて(c)有機金属化合物からなる触媒の存在下でエチレンとα−オレフィンとを共重合することにより、エチレン・α−オレフィン系共重合体エラストマーを製造することができる。
【0022】
重合は、バッチ式、半連続式、連続式のいずれの方法でも行うことが可能であり、重合条件を変えて2段以上に分けて行うことも可能である。また、重合終了後に得られる共重合体は、従来公知の方法により重合溶液から分離回収され乾燥して固体状の共重合体を得る。
【0023】
本発明の電子線改質エチレン・α−オレフィン系共重合体エラストマーは、ポリプロピレン系樹脂との相溶性に優れることを特徴としている。相溶性の指標は様々であるがガラス転移温度などを調べることによって判断できる。例えば固体粘弾性の温度依存性を測定して−80℃〜40℃の範囲に生じる損失正接(tanδ)の極大はガラス転移温度を反映しているが、ポリプロピレン系樹脂に、本発明の電子線改質エチレン・α−オレフィン系共重合体エラストマーを添加してもtanδのピーク数に変化はなく両者が非晶領域で相溶している様子がわかる。相溶していない場合には、電子線改質エチレン・α−オレフィン系共重合体エラストマーのガラス転移温度に由来するtanδのピークが新たに観察できるが、このようなポリプロピレン系樹脂組成物は難白化性に劣る。
【0024】
また、本発明の電子線改質エチレン・α−オレフィン系共重合体エラストマーをポリプロピレン系樹脂に添加すると、結晶の重心の平均距離である長周期は、ポリプロピレン系樹脂単独の場合よりも3%以上増加する。この増加量が3%未満もしくは全く増加していない場合には樹脂組成物の難白化性が劣る。
【0025】
本発明の電子線改質エチレン・α−オレフィン系共重合体エラストマーおよびこれをポリプロピレン系樹脂に添加することにより改質されたポリプロピレン系樹脂組成物には、必要に応じて炭酸カルシウム、マイカ、タルク、シリカ、硫酸バリウム、硫酸カルシウム、カオリン、クレー、パイロフェライト、ベントナイト、セリサナイト、ゼオライト、ネフェリンシナイト、アタパルジャイト、ウォラストナイト、フェライト、ケイ酸カルシウム、炭酸マグネシウム、ドロマイト、三酸化アンチモン、酸化亜鉛、酸化チタン、酸化マグネシウム、酸化鉄、二硫化モリブデン、黒鉛、石こう、ガラスビーズ、ガラスパウダー、ガラスバルーン、ガラスファイバー、石英、石英ガラスなどの無機充填剤や有機、無機顔料を配合することもできる。また、結晶核剤、透明化剤、アンチブロッキング剤、離型剤、帯電防止剤、スリップ剤、防曇剤、滑剤、耐熱安定剤、紫外線安定剤、耐光安定剤、耐候性安定剤、発泡剤、防黴剤、防錆剤、イオントラップ剤、難燃剤、難燃助剤等を必要に応じて添加してもよい。
【0026】
さらに、本発明の電子線改質エチレン・α−オレフィン系共重合体エラストマーおよびこれをポリプロピレン系樹脂に添加することにより改質されたポリプロピレン系樹脂組成物に他の樹脂をブレンドすることも可能である。この場合、さらなる成分として相溶化剤を必要に応じて添加してもよい。このような他の樹脂としては、線状高密度ポリエチレン、線状低密度ポリエチレン、分岐型低密度ポリエチレン、エチレン・酢酸ビニル共重合体(EVA)、エチレン・エチルアクリレート共重合体、1−ポリブテン、ポリアミド、ポリエステル、エチレン・プロピレン共重合体エラストマー、スチレン−ブタジエン−スチレントリブロックコポリマーおよびその水素添加物、スチレンーイソプレンースチレントリブロックコポリマーおよびその水素添加物、ポリオレフィン系熱可塑性エラストマーなどが挙げられる。また、相溶化剤としては、酸変性ポリオレフィンおよびケン化EVAなどの接着性ポリマーやポリオレフィンーポリアミドグラフトまたはブロック共重合体などに代表されるブロックおよびグラフト共重合体が挙げられる。本発明の電子線改質エチレン・α−オレフィン系共重合体エラストマーは、任意の方法でポリプロピレン系樹脂に添加することが可能であるが、取り扱いの容易さ、および分散性の向上のためニーダー、ロール、バンバリミキサー、一軸および二軸押出機等を用い溶融ブレンドを行うことが好ましい。
【0027】
本発明の電子線改質エチレン・α−オレフィン系共重合体エラストマーをポリプロピレン系樹脂に添加することによって改質されたポリプロピレン系樹脂組成物は、フィルム、真空、圧空、ブロー、カレンダー、トランスファー、射出、圧縮、異形押出し、紡糸など任意の成形法によって成形されるが、特にフィルム、真空、圧空、ブロー、カレンダー成形性に優れ、ドローダウン性が改良されると共に溶融張力が増加する。
【0028】
【実施例】
以下に、実施例をあげて本発明を説明するが、これらは例示的なものであって、限定的なものではない。実施例中の各種測定およびエチレン・α−オレフィン系共重合体エラストマーの合成は、下記の方法により行った。
【0029】
(エチレン・α−オレフィン系共重合体のα−オレフィン含量の測定)
o−ジクロロベンゼンを溶媒に100MHz、13C−NMRスペクトル(日本電子(株)製JNM GX400)測定により算出した。
【0030】
(分子量、分子量分布の測定)
溶媒にo−ジクロロベンゼンを用いて140℃におけるゲルパーミエーションクロマトグラフィー(ミリポア(株)社製 150C型GPC)にてポリエチレン換算で求めた。
【0031】
参考例1 共重合体エラストマーの合成
5lのオートクレーブにトルエン 600mlおよび1−ヘキセン 900mlを加え40℃に昇温した。さらに、全圧が4kg/cm2になるようにエチレンを導入した。次に、別の反応容器にトルエン 10ml、メチルアルミノキサン 3mmol、ジフェニルメタン(シクロペンタジエニル−1−フルオレニル)ジルコニウムジクロライド 3μmolを加え、この混合溶液を20分間撹拌した後、オートクレーブに導入し、重合を開始した。この重合は全圧を4kg/cm2に保つようにエチレンを連続的に導入し、40℃で90分間行った。
【0032】
重合終了後、多量のエタノールによりポリマーを洗浄し、60℃で12時間減圧乾燥を行った。その結果、1−ヘキセン含量が78重量%のエチレン・1−ヘキセン共重合体エラストマーを85g得た。この得られた物質は、数平均分子量98,000、Mw/Mn=1.9、23℃における密度は0.860g/cm3であり、DSC測定によって結晶融解ピークは観測されなかった。
【0033】
実施例1
参考例1で得られたエチレン・1−ヘキセン共重合体エラストマーに25kGrayの電子線を照射し、電子線改質エチレン・1−ヘキセン共重合体エラストマー(MFR:2.0g/10分、190℃、2.16kg荷重)を得た。これを3.75gとポリプロピレンホモポリマー(東ソーポリプロJ5100A(MFR:10g/10分、230℃、2.16kg荷重))21.25g、熱安定剤としてヒンダードフェノール系安定剤(イルガノックス1010(チバ・ガイギー社製))、リン系安定剤(イルガフォス168(チバ・ガイギー社製))をそれぞれ2,000ppm、滑剤としてステアリン酸カルシウム:5,000ppmを内容積30ccのラボプラストミル(東洋精機製作所製)を用いて60rpmで200℃、5分間溶融ブレンドした。その後、得られた樹脂組成物をプレス成形機を用いて230℃にて10分間加圧後30℃で冷却し、1mmの厚みの成形品を得た。このプレス成形品を細かく切断し、溶融張力測定用の試料とした。
【0034】
実施例2
実施例1で用いたポリプロピレンホモポリマーの代わりに、エチレン含有量が3.2重量%であるエチレン・プロピレンランダム共重合体(東ソーポリプロJ6080A(MFR:8.0g/10分、230℃、2.16kg荷重))を用いた以外は実施例1と同様の手法で成形品と試料を得た。
【0035】
実施例3
実施例1で用いた電子線改質エチレン・1−ヘキセン共重合体エラストマーを1.6g、ポリプロピレンホモポリマーを19.0gにした以外は実施例1と同様の手法で成形品と試料を得た。
【0036】
比較例1
実施例1で用いたポリプロピレンホモポリマーを25gとし、電子線改質エチレン・1−ヘキセン共重合体エラストマーを添加しない他は実施例1と同様の手法で成形品と試料を得た。
【0037】
比較例2
電子線によって改質していないエチレン・1−ヘキセン共重合体エラストマーを用いた以外は実施例1と同様の手法で成形品と試料を得た。
【0038】
比較例3
実施例1で用いた電子線改質エチレン・1−ヘキセン共重合体エラストマーのかわりに分岐型低密度ポリエチレン(東ソーペトロセン286(MFR:1.5g/10分、190℃、2.16kg荷重))を添加した以外は実施例1と同様の手法で成形品と試料を得た。
【0039】
比較例4
実施例1で用いたエチレン・1−ヘキセン共重合体エラストマーに150kGrayの電子線を照射した以外は実施例1と同様の手法で成形品と試料を得た。
【0040】
比較例5
実施例1で用いたエチレン・1−ヘキセン共重合体エラストマーの代わりに参考例1と同様の手法で合成されたプロピレン含量75重量%のエチレン・プロピレン共重合体エラストマーを用いた以外は実施例1と同様の手法で成形品と試料を得た。ここで用いたエチレン・プロピレン共重合体エラストマーの23℃における密度は0.857g/cm3、Mn=64,000、Mw/Mn=1.6であり、DSCによる結晶融解ピークは観察されなかった。
【0041】
参考例2 共重合体エラストマーの合成
5lのオートクレーブにトルエン 500mlおよび1−ブテン 1,000mlを加え40℃に昇温した。さらに、全圧が4kg/cm2になるようにエチレンを導入した。次に、別の反応容器にトルエン 10ml、メチルアルミノキサン 3mmol、公知の方法により合成したジメチルシランジイルビス(2−メチルインデニル)ジルコニウムジクロライド 3μmolを加え、この混合溶液を20分間撹拌した後、オートクレーブに導入し、重合を開始した。この重合は全圧を4kg/cm2に保つようにエチレンを連続的に導入し、40℃で30分間行った。
【0042】
重合終了後、多量のエタノールによりポリマーを洗浄し、60℃で12時間減圧乾燥を行った。その結果、1−ブテン含量が96重量%のエチレン・1−ブテン共重合体エラストマーを54g得た。この得られた物質は、数平均分子量76,000、Mw/Mn=2.4、23℃における密度は0.882g/cm3であり、DSC測定により、主ピークとして測定される結晶融点は45℃であった。
【0043】
比較例6
実施例1で用いたエチレン・1−ヘキセン共重合体エラストマーの代わりに参考例2で得られたエチレン・1−ブテン共重合体エラストマーを用いた以外は実施例1と同様の手法で成形品と試料を得た。
【0044】
比較例7
参考例1と同様の手法で合成された1−ブテン含量53重量%のエチレン・1−ブテン共重合体エラストマーを用いた以外は実施例1と同様の手法で成形品と試料を得た。ここで用いたエチレン・1−ブテン共重合体エラストマーの23℃における密度は0.859g/cm3、Mn=60,000、Mw/Mn=1.8であり、DSCによる結晶融解ピークは確認されなかった。
【0045】
比較例8
実施例2で用いたエチレン・プロピレンランダム共重合体を25gとし、電子線改質エチレン・1−ヘキセン共重合体エラストマーを添加しない他は実施例1と同様の手法でプレス成形し、成形品と試料を得た。
【0046】
以上得られた成形品を以下の方法で評価した。結果を表1に示す。
【0047】
【表1】
【0048】
(折曲げ白化試験)
1mm厚みの板を50mm×20mmに切り出し、これを180゜折曲げた際の白化の程度を目視によって観察した。
【0049】
(表面粘着性)
1mm厚みの板を20mm×20mmに切り出し、これを2枚重ねて50℃のの恒温室で1kg荷重の下、3日間放置した。その後、これを再び剥離して接着面の表面状態を目視によって観察した。
【0050】
(溶融張力)
フィルム、真空、圧空、ブロー成形性の目安となる溶融張力をキャピログラフ(東洋精機製作所製)にて評価した。バレル温度は190℃、バレル内径は9.55mm、ダイスのL/Dは2.95/8とし、シリンダーの降下速度10mm/分、引き取り速度10m/分で行った。
【0051】
【発明の効果】
以上述べたように、本発明の電子線改質エチレン・α−オレフィン系共重合体エラストマーをポリプロピレン系樹脂に添加することによって得られた樹脂組成物は、難白化性、成形加工性に優れ、かつ表面ベタつきが改善されると共に、溶融張力が大きくなることによってドローダウンが大幅に抑えられ、ブロー、フィルム、真空および圧空成形性に優れた材料となる。
【産業上の利用分野】
本発明は、ポリプロピレン系樹脂に添加することによりポリプロピレン系樹脂の難白化性、成形加工性を向上することが可能な電子線改質エチレン・α−オレフィン系共重合体エラストマー、また、これによって改質されたポリプロピレン系樹脂組成物に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
ポリプロピレン系樹脂は流動性に優れる高分子材料の1つとしてよく知られているが、成形加工時のドローダウンが激しく、真空、圧空、フィルム成形などで問題となることが多い。これらの現象は溶融張力が小さいことに由来する性質であり、同様の理由でブロー成形性も優れたものではない。
【0003】
こうした特性の改良には分子量分布を広げたり、分岐型低密度ポリエチレン (LDPE)を添加するなどの手法が採用されることが多いが、いずれの場合もその改質効果は小さく、一層の改良が望まれていた。
【0004】
一方、医療分野、文具などを中心に、耐熱性、柔軟性、耐白化性、成形性に優れた材料が望まれていた。これまで知られている材料では、ポリプロピレン系樹脂をマトリクスに有した熱可塑性ポリオレフィン系エラストマー(TPO)が、耐熱性、柔軟性の観点からその需要を伸ばしている。しかしながら、TPOは▲1▼フィルム、真空、圧空、ブロー成形性に劣り、▲2▼透明性が要求される用途には使用が制限され、▲3▼硬度が高くなると難白化性が劣る、など問題が多かった。また、難白化性に関する要求は自動車内装、家電分野で幅広くあるものの、ポリプロピレン系樹脂に対してはこれまで有効な改質材が存在しなかった。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
このような現状の中、本発明者らは(a)α−オレフィンが炭素数4以上20以下、(b)α−オレフィン含量が65重量%より大きく95重量%以下、(c)23℃における密度が0.88g/cm3未満、および(d)DSC法により結晶融解ピークが観測されない、以上の条件を満たすエチレン・α−オレフィン系共重合体エラストマーとポリプロピレン系樹脂組成物とからなる樹脂組成物は耐熱性、難白化性に優れることを見出した。
【0006】
しかしながら、この樹脂組成物にはエチレン・α−オレフィン系共重合体エラストマーのブレンド比率が増加するにつれ表面がベタつくという問題が生じていた。また、この樹脂組成物の溶融張力は小さく、フィルム、真空、圧空、ブロー成形などは依然として改良されていなかった。
【0007】
本発明は、前記問題点を解決するためになされたものであり、表面ベタつきを抑えながらポリプロピレン系樹脂の難白化性、成形加工性を向上することが可能な電子線改質エチレン・α−オレフィン系共重合体エラストマー、およびこれによって改質されたポリプロピレン系樹脂組成物を提供するものである。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記目的を達成するために鋭意検討を行った結果、本発明を完成するに至った。すなわち本発明は、(a)〜(d)の条件を満たすエチレン・α−オレフィン系共重合体エラストマーに1kGray以上100kGray以下の電子線を照射した電子線改質エチレン・α−オレフィン系共重合体エラストマー、及びこれをポリプロピレン系樹脂に添加することにより改質されたポリプロピレン系樹脂組成物に関するものである。
【0009】
(a)α−オレフィンの炭素数:4以上20以下
(b)α−オレフィンの含量:65重量%より大きく95重量%以下
(c)23℃における密度:0.88g/cm3未満
(d)示差走査型熱量計による結晶融解ピーク:観測されない
以下にその詳細について説明する。
【0010】
本発明において用いられるエチレン・α−オレフィン系共重合体エラストマーのα−オレフィンは、炭素数4以上20以下のものであり、例えば、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、4−メチル−1−ペンテン、1−ヘプテン、1−オクテン、1−ノネン、1−デセン、1−ウンデセン、1−ドデセン、1−トリデセン、1−テトラデセン、1−ペンタデセン、1−ヘキサデセン、1−ヘプタデセン、1−オクタデセン、1−ノナデセン、1−エイコセン等が挙げられ、これらの1種もしくは2種以上が用いられる。なかでも入手の容易さから1−ブテン、1−ヘプテン、1−ヘキセン、1−オクテン等が好ましい。
【0011】
本発明において用いられるエチレン・α−オレフィン系共重合体エラストマーのα−オレフィン含量は、65重量%より大きく95重量%以下、好ましくは70重量%以上90重量%以下である。α−オレフィン含量が65重量%以下または95%より大きくなると電子線によって改質した後、ポリプロピレン系樹脂に添加しても得られる樹脂組成物の難白化性の改質効果は劣る。
【0012】
本発明において用いられるエチレン・α−オレフィン系共重合体エラストマーの23℃における密度は0.88g/cm3未満のものである。0.88g/cm3以上のエチレン・α−オレフィン系共重合体エラストマーでは、電子線で改質した後にポリプロピレン系樹脂に添加しても得られる樹脂組成物の難白化性の改質効果は劣る。
【0013】
本発明において用いられるエチレン・α−オレフィン系共重合体エラストマーは、示差走査型熱量計(DSC)により結晶融解ピークが観測されないことを特徴とする。結晶融解ピークを示すエチレン・α−オレフィン系共重合体を用いると、電子線で改質した後にポリプロピレン系樹脂に添加しても得られる樹脂組成物の難白化性は劣る。
【0014】
本発明において用いられるエチレン・α−オレフィン系共重合体エラストマーの分子量は、特に制限されるものではないが、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)によって測定した数平均分子量がポリエチレン換算で5,000〜1,000,000であることが好ましい。この数平均分子量が5,000未満または1,000,000以上であると電子線を照射するまでの取り扱いが困難になる恐れがある。
【0015】
本発明において用いられるエチレン・α−オレフィン系共重合体エラストマーは、分子量分布(Mw/Mn)に特に制限はないが、3以下が好ましく、また、組成分布の指標として、高分子量留分10%中の平均α−オレフィン含量(モル%)に対する低分子量留分10%中の平均α−オレフィン含量(モル%)の比が1.2以下が好ましく、さらに好ましくは1.15以下である。一般に分子量分布が大きくなると組成分布も大きくなることが知られているが、組成分布が広いと電子線によって改質した後にポリプロピレン系樹脂に添加しても得られる樹脂組成物の難白化性は劣る恐れがある。
【0016】
本発明は、エチレン・α−オレフィン系共重合体エラストマーに1kGray以上100kGray以下の電子線を照射することを特徴とする。これによってエチレン・α−オレフィン系共重合体エラストマーの自着速度が低下し取り扱いが容易になると共に、ポリプロピレン系樹脂に添加して得られた樹脂組成物はベタつきが低減し、かつ溶融張力の増加による成形加工性の改良効果が顕著になる。電子線の照射量が1kGray未満であるとポリプロピレン系樹脂に添加しても成形加工性の改良効果が発現しない恐れがある。また、100kGrayを超えるとポリプロピレン系樹脂に添加して得られた樹脂組成物の表面が著しくベタつく恐れがある。
【0017】
電子線改質エチレン・α−オレフィン系共重合体エラストマーとポリプロピレン系樹脂とのブレンド比率は、特に限定されないが、ポリプロピレン系樹脂100重量部に対して1重量部以上300重量部以下であり、目的とする用途、要求特性に応じて任意に変えることができる。しかしながら、1重量部未満では得られる樹脂組成物の難白化性能が劣る場合があり、300重量部を超えると耐熱性が損なわれる恐れがある。また、本樹脂組成物に高い剛性を求める場合には、電子線改質エチレン・α−オレフィン系共重合体エラストマーの添加量を45重量部以下とすることが望ましい。
【0018】
本発明に用いるポリプロピレン系樹脂は一般に使用されている結晶性ポリプロピレン系樹脂を用いることができる。例えば、ポリプロピレンホモポリマー、エチレン含量が0.5〜12重量%のプロピレン・エチレンランダム共重合体、エチレン含量が0.5〜12重量%、1−ブテンのようなα−オレフィン含量が0.5〜20重量%のプロピレン・エチレン・α−オレフィン系三元共重合体、エチレン含量が1〜60重量%のインパクトポリプロピレン、シンジオタクチック構造である結晶性ポリプロピレン系樹脂などが挙げられ、これらのうち1種または2種以上が用いられる。
【0019】
ポリプロピレン系樹脂のメルトフローレートは、特に限定をされず、230℃、2.16kg荷重のもと、0.01〜100g/10分のものが用いられる。
【0020】
本発明で用いるエチレン・α−オレフィン系共重合体エラストマーの製造方法は、特に限定されず、チタン系触媒、バナジウム系触媒またはメタロセン系の触媒など種々の触媒を用いて製造することができる。なかでも、上述の分子量、分子量分布および組成分布を満たしたエチレン・α−オレフィン系共重合体エラストマーを得ることが容易なメタロセン系の触媒を用いることが好ましい。
【0021】
すなわち、(a)周期表4族の遷移金属を含む遷移金属化合物と、(b)これと反応してイオン性の錯体を形成する化合物、さらに必要に応じて(c)有機金属化合物からなる触媒の存在下でエチレンとα−オレフィンとを共重合することにより、エチレン・α−オレフィン系共重合体エラストマーを製造することができる。
【0022】
重合は、バッチ式、半連続式、連続式のいずれの方法でも行うことが可能であり、重合条件を変えて2段以上に分けて行うことも可能である。また、重合終了後に得られる共重合体は、従来公知の方法により重合溶液から分離回収され乾燥して固体状の共重合体を得る。
【0023】
本発明の電子線改質エチレン・α−オレフィン系共重合体エラストマーは、ポリプロピレン系樹脂との相溶性に優れることを特徴としている。相溶性の指標は様々であるがガラス転移温度などを調べることによって判断できる。例えば固体粘弾性の温度依存性を測定して−80℃〜40℃の範囲に生じる損失正接(tanδ)の極大はガラス転移温度を反映しているが、ポリプロピレン系樹脂に、本発明の電子線改質エチレン・α−オレフィン系共重合体エラストマーを添加してもtanδのピーク数に変化はなく両者が非晶領域で相溶している様子がわかる。相溶していない場合には、電子線改質エチレン・α−オレフィン系共重合体エラストマーのガラス転移温度に由来するtanδのピークが新たに観察できるが、このようなポリプロピレン系樹脂組成物は難白化性に劣る。
【0024】
また、本発明の電子線改質エチレン・α−オレフィン系共重合体エラストマーをポリプロピレン系樹脂に添加すると、結晶の重心の平均距離である長周期は、ポリプロピレン系樹脂単独の場合よりも3%以上増加する。この増加量が3%未満もしくは全く増加していない場合には樹脂組成物の難白化性が劣る。
【0025】
本発明の電子線改質エチレン・α−オレフィン系共重合体エラストマーおよびこれをポリプロピレン系樹脂に添加することにより改質されたポリプロピレン系樹脂組成物には、必要に応じて炭酸カルシウム、マイカ、タルク、シリカ、硫酸バリウム、硫酸カルシウム、カオリン、クレー、パイロフェライト、ベントナイト、セリサナイト、ゼオライト、ネフェリンシナイト、アタパルジャイト、ウォラストナイト、フェライト、ケイ酸カルシウム、炭酸マグネシウム、ドロマイト、三酸化アンチモン、酸化亜鉛、酸化チタン、酸化マグネシウム、酸化鉄、二硫化モリブデン、黒鉛、石こう、ガラスビーズ、ガラスパウダー、ガラスバルーン、ガラスファイバー、石英、石英ガラスなどの無機充填剤や有機、無機顔料を配合することもできる。また、結晶核剤、透明化剤、アンチブロッキング剤、離型剤、帯電防止剤、スリップ剤、防曇剤、滑剤、耐熱安定剤、紫外線安定剤、耐光安定剤、耐候性安定剤、発泡剤、防黴剤、防錆剤、イオントラップ剤、難燃剤、難燃助剤等を必要に応じて添加してもよい。
【0026】
さらに、本発明の電子線改質エチレン・α−オレフィン系共重合体エラストマーおよびこれをポリプロピレン系樹脂に添加することにより改質されたポリプロピレン系樹脂組成物に他の樹脂をブレンドすることも可能である。この場合、さらなる成分として相溶化剤を必要に応じて添加してもよい。このような他の樹脂としては、線状高密度ポリエチレン、線状低密度ポリエチレン、分岐型低密度ポリエチレン、エチレン・酢酸ビニル共重合体(EVA)、エチレン・エチルアクリレート共重合体、1−ポリブテン、ポリアミド、ポリエステル、エチレン・プロピレン共重合体エラストマー、スチレン−ブタジエン−スチレントリブロックコポリマーおよびその水素添加物、スチレンーイソプレンースチレントリブロックコポリマーおよびその水素添加物、ポリオレフィン系熱可塑性エラストマーなどが挙げられる。また、相溶化剤としては、酸変性ポリオレフィンおよびケン化EVAなどの接着性ポリマーやポリオレフィンーポリアミドグラフトまたはブロック共重合体などに代表されるブロックおよびグラフト共重合体が挙げられる。本発明の電子線改質エチレン・α−オレフィン系共重合体エラストマーは、任意の方法でポリプロピレン系樹脂に添加することが可能であるが、取り扱いの容易さ、および分散性の向上のためニーダー、ロール、バンバリミキサー、一軸および二軸押出機等を用い溶融ブレンドを行うことが好ましい。
【0027】
本発明の電子線改質エチレン・α−オレフィン系共重合体エラストマーをポリプロピレン系樹脂に添加することによって改質されたポリプロピレン系樹脂組成物は、フィルム、真空、圧空、ブロー、カレンダー、トランスファー、射出、圧縮、異形押出し、紡糸など任意の成形法によって成形されるが、特にフィルム、真空、圧空、ブロー、カレンダー成形性に優れ、ドローダウン性が改良されると共に溶融張力が増加する。
【0028】
【実施例】
以下に、実施例をあげて本発明を説明するが、これらは例示的なものであって、限定的なものではない。実施例中の各種測定およびエチレン・α−オレフィン系共重合体エラストマーの合成は、下記の方法により行った。
【0029】
(エチレン・α−オレフィン系共重合体のα−オレフィン含量の測定)
o−ジクロロベンゼンを溶媒に100MHz、13C−NMRスペクトル(日本電子(株)製JNM GX400)測定により算出した。
【0030】
(分子量、分子量分布の測定)
溶媒にo−ジクロロベンゼンを用いて140℃におけるゲルパーミエーションクロマトグラフィー(ミリポア(株)社製 150C型GPC)にてポリエチレン換算で求めた。
【0031】
参考例1 共重合体エラストマーの合成
5lのオートクレーブにトルエン 600mlおよび1−ヘキセン 900mlを加え40℃に昇温した。さらに、全圧が4kg/cm2になるようにエチレンを導入した。次に、別の反応容器にトルエン 10ml、メチルアルミノキサン 3mmol、ジフェニルメタン(シクロペンタジエニル−1−フルオレニル)ジルコニウムジクロライド 3μmolを加え、この混合溶液を20分間撹拌した後、オートクレーブに導入し、重合を開始した。この重合は全圧を4kg/cm2に保つようにエチレンを連続的に導入し、40℃で90分間行った。
【0032】
重合終了後、多量のエタノールによりポリマーを洗浄し、60℃で12時間減圧乾燥を行った。その結果、1−ヘキセン含量が78重量%のエチレン・1−ヘキセン共重合体エラストマーを85g得た。この得られた物質は、数平均分子量98,000、Mw/Mn=1.9、23℃における密度は0.860g/cm3であり、DSC測定によって結晶融解ピークは観測されなかった。
【0033】
実施例1
参考例1で得られたエチレン・1−ヘキセン共重合体エラストマーに25kGrayの電子線を照射し、電子線改質エチレン・1−ヘキセン共重合体エラストマー(MFR:2.0g/10分、190℃、2.16kg荷重)を得た。これを3.75gとポリプロピレンホモポリマー(東ソーポリプロJ5100A(MFR:10g/10分、230℃、2.16kg荷重))21.25g、熱安定剤としてヒンダードフェノール系安定剤(イルガノックス1010(チバ・ガイギー社製))、リン系安定剤(イルガフォス168(チバ・ガイギー社製))をそれぞれ2,000ppm、滑剤としてステアリン酸カルシウム:5,000ppmを内容積30ccのラボプラストミル(東洋精機製作所製)を用いて60rpmで200℃、5分間溶融ブレンドした。その後、得られた樹脂組成物をプレス成形機を用いて230℃にて10分間加圧後30℃で冷却し、1mmの厚みの成形品を得た。このプレス成形品を細かく切断し、溶融張力測定用の試料とした。
【0034】
実施例2
実施例1で用いたポリプロピレンホモポリマーの代わりに、エチレン含有量が3.2重量%であるエチレン・プロピレンランダム共重合体(東ソーポリプロJ6080A(MFR:8.0g/10分、230℃、2.16kg荷重))を用いた以外は実施例1と同様の手法で成形品と試料を得た。
【0035】
実施例3
実施例1で用いた電子線改質エチレン・1−ヘキセン共重合体エラストマーを1.6g、ポリプロピレンホモポリマーを19.0gにした以外は実施例1と同様の手法で成形品と試料を得た。
【0036】
比較例1
実施例1で用いたポリプロピレンホモポリマーを25gとし、電子線改質エチレン・1−ヘキセン共重合体エラストマーを添加しない他は実施例1と同様の手法で成形品と試料を得た。
【0037】
比較例2
電子線によって改質していないエチレン・1−ヘキセン共重合体エラストマーを用いた以外は実施例1と同様の手法で成形品と試料を得た。
【0038】
比較例3
実施例1で用いた電子線改質エチレン・1−ヘキセン共重合体エラストマーのかわりに分岐型低密度ポリエチレン(東ソーペトロセン286(MFR:1.5g/10分、190℃、2.16kg荷重))を添加した以外は実施例1と同様の手法で成形品と試料を得た。
【0039】
比較例4
実施例1で用いたエチレン・1−ヘキセン共重合体エラストマーに150kGrayの電子線を照射した以外は実施例1と同様の手法で成形品と試料を得た。
【0040】
比較例5
実施例1で用いたエチレン・1−ヘキセン共重合体エラストマーの代わりに参考例1と同様の手法で合成されたプロピレン含量75重量%のエチレン・プロピレン共重合体エラストマーを用いた以外は実施例1と同様の手法で成形品と試料を得た。ここで用いたエチレン・プロピレン共重合体エラストマーの23℃における密度は0.857g/cm3、Mn=64,000、Mw/Mn=1.6であり、DSCによる結晶融解ピークは観察されなかった。
【0041】
参考例2 共重合体エラストマーの合成
5lのオートクレーブにトルエン 500mlおよび1−ブテン 1,000mlを加え40℃に昇温した。さらに、全圧が4kg/cm2になるようにエチレンを導入した。次に、別の反応容器にトルエン 10ml、メチルアルミノキサン 3mmol、公知の方法により合成したジメチルシランジイルビス(2−メチルインデニル)ジルコニウムジクロライド 3μmolを加え、この混合溶液を20分間撹拌した後、オートクレーブに導入し、重合を開始した。この重合は全圧を4kg/cm2に保つようにエチレンを連続的に導入し、40℃で30分間行った。
【0042】
重合終了後、多量のエタノールによりポリマーを洗浄し、60℃で12時間減圧乾燥を行った。その結果、1−ブテン含量が96重量%のエチレン・1−ブテン共重合体エラストマーを54g得た。この得られた物質は、数平均分子量76,000、Mw/Mn=2.4、23℃における密度は0.882g/cm3であり、DSC測定により、主ピークとして測定される結晶融点は45℃であった。
【0043】
比較例6
実施例1で用いたエチレン・1−ヘキセン共重合体エラストマーの代わりに参考例2で得られたエチレン・1−ブテン共重合体エラストマーを用いた以外は実施例1と同様の手法で成形品と試料を得た。
【0044】
比較例7
参考例1と同様の手法で合成された1−ブテン含量53重量%のエチレン・1−ブテン共重合体エラストマーを用いた以外は実施例1と同様の手法で成形品と試料を得た。ここで用いたエチレン・1−ブテン共重合体エラストマーの23℃における密度は0.859g/cm3、Mn=60,000、Mw/Mn=1.8であり、DSCによる結晶融解ピークは確認されなかった。
【0045】
比較例8
実施例2で用いたエチレン・プロピレンランダム共重合体を25gとし、電子線改質エチレン・1−ヘキセン共重合体エラストマーを添加しない他は実施例1と同様の手法でプレス成形し、成形品と試料を得た。
【0046】
以上得られた成形品を以下の方法で評価した。結果を表1に示す。
【0047】
【表1】
【0048】
(折曲げ白化試験)
1mm厚みの板を50mm×20mmに切り出し、これを180゜折曲げた際の白化の程度を目視によって観察した。
【0049】
(表面粘着性)
1mm厚みの板を20mm×20mmに切り出し、これを2枚重ねて50℃のの恒温室で1kg荷重の下、3日間放置した。その後、これを再び剥離して接着面の表面状態を目視によって観察した。
【0050】
(溶融張力)
フィルム、真空、圧空、ブロー成形性の目安となる溶融張力をキャピログラフ(東洋精機製作所製)にて評価した。バレル温度は190℃、バレル内径は9.55mm、ダイスのL/Dは2.95/8とし、シリンダーの降下速度10mm/分、引き取り速度10m/分で行った。
【0051】
【発明の効果】
以上述べたように、本発明の電子線改質エチレン・α−オレフィン系共重合体エラストマーをポリプロピレン系樹脂に添加することによって得られた樹脂組成物は、難白化性、成形加工性に優れ、かつ表面ベタつきが改善されると共に、溶融張力が大きくなることによってドローダウンが大幅に抑えられ、ブロー、フィルム、真空および圧空成形性に優れた材料となる。
Claims (2)
- (a)〜(d)の条件を満たすエチレン・α−オレフィン系共重合体エラストマーに1kGray以上100kGray以下の電子線を照射した電子線改質エチレン・α−オレフィン系共重合体エラストマー。
(a)α−オレフィンの炭素数:4以上20以下
(b)α−オレフィンの含量:65重量%より大きく95重量%以下
(c)23℃における密度:0.88g/cm3未満
(d)示差走査型熱量計による結晶融解ピーク:観測されない - ポリプロピレン系樹脂に、請求項1に記載の電子線改質エチレン・α−オレフィン系共重合体エラストマーを添加してなる改質されたポリプロピレン系樹脂組成物。
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