JP3617935B2 - ブレーキ液圧保持装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、ドライバがブレーキペダルの踏込みを開放した後も引続きホイールシリンダ内にブレーキ液圧を作用させるブレーキ液圧保持装置であって、ブレーキ液圧保持装置を、ドライバのブレーキペダルの踏込み力に応じたブレーキ液圧を発生するマスタシリンダとホイールシリンダを結ぶ液圧通路に形成した絞りによる流量制限により、ドライバのブレーキペダルの踏込み力の低下速度に対してホイールシリンダ内のブレーキ液圧の低下速度を小さくするブレーキ液圧低下速度減少手段で構成する、ブレーキ液圧保持装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
本出願人による特願平10−370249号には、ブレーキペダルBPの踏込み力を緩めたときにホイールシリンダWC内のブレーキ液圧がマスタシリンダMCとホイールシリンダWC間の液圧通路FPに設けられた絞りDを介してマスタシリンダMCに戻されるようにし、絞りDによる流量制限によりブレーキペダルBPの踏込み力の低下速度に対して、ホイールシリンダWC内のブレーキ液圧の低下速度が小さくなるようにして、これによりドライバがブレーキペダルBPの踏込みを開放した後も引続きホイールシリンダWC内にブレーキ液圧が作用するようにしたブレーキ液圧保持装置RU’(以下「従来の保持装置」という)が提案されている(図8(a)参照)。そして、この従来の保持装置RU’によれば、上り坂で車両の後ずさりを生じない円滑な発進を容易に行なえるだけでなく、ブレーキペダルBPの踏込みを緩めた場合のホイールシリンダWC内のブレーキ液圧は、電磁弁SVが遮断位置にあってもそのままの大きさに維持されず徐々に低下することから、下り坂においてブレーキペダルBPの踏込みを緩める(開放する)という操作だけで車両を発進させることも可能となる。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
ところで前記した従来の保持装置RU’は、何らかの原因によりブレーキ液に異物ASが混入しその異物ASがブレーキ液の流れに乗って絞りDに達すると(図8(b)左図参照)、絞りDが詰まることが考えられ(図8(b)右図参照)、こうした場合は絞りDによる流量制限によりブレーキペダルBPの踏込み力の低下速度に対して、ホイールシリンダWC内のブレーキ液圧の低下速度を小さくするという前記した従来の保持装置RU’特有の作用が得られなくなることから、仮に異物ASによって絞りDに詰まりを生じるようなことがあっても、その詰まりが自己解除される液圧通路FPの構造になっていることが望まれる。
そこで、本発明はかかる要望を満たすブレーキ液圧保持装置を提供することを目的とする。
【0004】
【課題を解決するための手段】
前記要望を満たすブレーキ液圧保持装置を提供すべく、本発明においては、マスタシリンダとホイールシリンダとを結ぶ液圧通路に、該液圧通路を連通及び遮断する電磁弁と、該電磁弁に対して並列にブレーキ液圧低減用のシート弁たるリリーフ弁及びブレーキ液圧増加用のシート弁たるチェック弁を設けると共に、絞りをリリーフ弁及び/又はチェック弁の弁体と弁座の間に形成するようにした。ここで、シート弁とは、ボールやポペットからなる弁体を弁座に押し付けたり、離したりすることで液圧通路の開閉を行なう弁を意味し、本発明の実施の形態のリリーフ弁、チェック弁及び電磁弁がこのシート弁に相当する。
【0005】
前記のように絞りをシート弁(チェック弁及び/又はチェック弁)の弁体と弁座間に形成したので、弁体が弁座から離れた時は液圧通路に絞りによる流路が形成されない(あるいは役割を果さない)ことになり、多量のブレーキ液が絞りによる流量制限を受けることなく液圧通路を流れる。したがって、弁体が弁座に接して絞りによる流路が液圧通路に形成されているときにブレーキ液内の異物により絞りに詰まりを生じても、弁体が弁座から離れたときに液圧通路を流れる多量のブレーキ液とともに異物は流され、再度弁体が弁座に接して液圧通路に絞りによる流路が形成されたときには絞りの詰まりは解除されている。
このように電磁弁に加えてチェック弁及びリリーフ弁の双方を備える構成のブレーキ液圧保持装置では、他に特別の構成を付け加えることなく、ドライバの操作によりチェック弁及びリリーフ弁を何度でも続けて作動させることができる。
【0006】
【発明の実施の形態】
本発明のブレーキ液圧保持装置は、油圧(ブレーキ液圧)により作動するブレーキ装置を備え、かつ原動機を搭載する全ての車両に適用することができる。なお、原動機には、ガソリンなどを動力源とするエンジンや電気を動力源とするモータなどが含まれる。また、車両には、手動変速機を搭載したマニュアルトランスミッション車(以下「MT車」という)や自動変速機を搭載したオートマチックトランスミッション車(以下「AT車」という)があるが、いずれにも本発明のブレーキ液圧保持装置を適用することができる。
以下、本発明のブレーキ液圧保持装置の実施の形態を詳細に説明する。
【0007】
《ブレーキ液圧保持装置の構成》
〔液圧式ブレーキ装置〕 先ず、液圧式ブレーキ装置BKの説明を行う(図1参照)。液圧式ブレーキ装置BKのブレーキ液圧回路BCは、マスタシリンダMCとホイールシリンダWCとこれを結ぶ液圧通路FPよりなる。ブレーキは安全走行のために極めて重要な役割を有するので、液圧式ブレーキ装置BKはそれぞれ独立した2系統のブレーキ液圧回路(BC(A)、BC(B))が設けられる。
【0008】
マスタシリンダMCの本体にはピストンMCPが挿入されており、ドライバがブレーキペダルBPを踏込むことによりピストンMCPが押されてマスタシリンダMC内のブレーキ液に圧力が加わり機械的な力がブレーキ液圧に変換される。ドライバがブレーキペダルBPから足を放して踏込みを開放すると、戻しバネMCSの力でピストンMCPが元に戻され、同時にブレーキ液圧も元に戻る。図1に示すマスタシリンダMCは、独立したブレーキ液圧回路BCを2系統設けるというフェイルアンドセーフの観点から、ピストンMCPを2つ並べてマスタシリンダMCの本体を2分割した、タンデム式のマスタシリンダMCである。なお、マスタシリンダMCには、図示しないブレーキ液のリザーバタンクが接続され、ブレーキ液圧回路BC内のブレーキ液の量を調節する。
【0009】
プレーキペダルBPの操作力を軽くするために、ブレーキペダルBPとマスタシリンダMCの間にマスターパワMP(ブレーキブースタ)が設けられる。図1に示すマスターパワMPは、バキューム(負圧)サーボ式のものであり、図示しないエンジンの吸気マニホールドから負圧を取出して、ドライバによるブレーキペダルBPの操作を容易にしている。
【0010】
液圧通路FPは、マスタシリンダMCとホイールシリンダWCを結び、マスタシリンダMCで発生したブレーキ液圧を、ブレーキ液を移動させることによりホイールシリンダWCに伝達する流路の役割を果たす。また、ホイールシリンダWCのブレーキ液圧の方が高い場合には、ホイールシリンダWCからマスタシリンダMCにブレーキ液を戻す流路の役割を果す。ブレーキ液圧回路BCは前記のとおりそれぞれ独立したものが設けられるため、液圧通路FPもそれぞれ独立のものが2系統設けられる。
【0011】
ホイールシリンダWCは車輪ごとに設けられ、マスタシリンダMCにより発生し液圧通路FPを通してホイールシリンダWCに伝達されたブレーキ液圧を、車輪を制動するための機械的な力(ブレーキ力)に変換する役割を果す。ホイールシリンダWCの本体には、ピストンが挿入されており、このピストンがブレーキ液圧に押されて、ディスクブレーキの場合はブレーキパッドをドラムブレーキの場合はブレーキシューを作動させて、車輪を制動するブレーキ力を作り出す。
【0012】
〔ブレーキ液圧保持装置〕 次に、ブレーキ液圧保持装置RUの説明を行う(図1参照)。ブレーキ液圧保持装置RUは、液圧通路FP内にブレーキ液の流れを遮断する電磁弁SV及びブレーキ液の流量制限を行なう絞りDを備える。電磁弁SVは、制御手段CUにより遮断位置と連通位置の切換えが行なわれる。
また、図1に示すように、必要に応じて液圧通路FP内には、チェック弁CV及びリリーフ弁RVを備えることもできる。
【0013】
電磁弁SVは、制御手段CUからの電気信号により作動し、遮断位置で液圧通路FP内のブレーキ液の流れを遮断してホイールシリンダWCに加えられたブレーキ液圧を保持する。そして、連通位置で液圧通路FPのブレーキ液の流れを連通する。この電磁弁SVにより、登坂発進時にドライバがブレーキペダルBPの踏込みを開放した場合でも、ホイールシリンダWCにブレーキ液圧が保持され、車両の後ずさりを防止することができる。なお、後ずさりとは、車両の自重によりドライバが進もうとする方向とは逆の方向に車両が進んでしまうこと(坂道を下ってしまうこと)を意味する。
【0014】
ブレーキ液圧減少手段の要部をなす絞りDは、従来例における図8に示すように液圧通路FPに細い流路として独立して形成されるのではなく、液圧通路FPに取付けられたシート弁V(例えばリリーフ弁RV)の弁体Veと弁座Vsの間に形成される(図1、図3など参照)。なお、絞りDを形成する態様については、後に詳細に説明する。
絞りDは、電磁弁SVが遮断位置にある場合でもマスタシリンダMCとホイールシリンダWCとを常に連通する。殊に電磁弁SVが遮断位置にあり、かつドライバがブレーキペダルBPの踏込みを開放したか踏込みを緩めた場合に、ホイールシリンダWC内に閉じ込められたブレーキ液を徐々にマスタシリンダMC側に逃がし、ホイールシリンダWC内のブレーキ液圧を所定速度で低下させる役割を果す。
【0015】
この絞りDの存在により、ドライバがブレーキペダルBPの踏込みを開放したり緩めたりすれば、電磁弁SVが遮断位置にあっても、ブレーキが永久に効きっぱなしという状態がなく、徐々にブレーキ力(制動力)が低下して行く。すなわち、ドライバのブレーキペダルBPの踏込み力の低下速度に対して、ホイールシリンダWC内のブレーキ液圧の低下速度を小さくすることができる。これにより、電磁弁SVが遮断位置にあっても所定時間後にはブレーキ力が充分弱まり、発進駆動力により車両を発進(登坂発進)させることが可能になる。また、下り坂では、ドライバがアクセルペダルを踏込むことなくブレーキペダルBPの踏込みを開放したり緩めたりするだけで、車両の自重により発進させることができる。
【0016】
なお、ドライバがブレーキペダルBPを踏込んでいる状態で、マスタシリンダMCのブレーキ液圧がホイールシリンダWCのブレーキ液圧よりも高い限りは、絞りDの存在によりブレーキ力が低下することはない。絞りDは、ホイールシリンダWCとマスタシリンダMCのブレーキ液圧の差(差圧)によりブレーキ液圧の高い方からブレーキ液圧の低い方にブレーキ液を所定速度で流す役割を有するからである。すなわち、ドライバがブレーキペダルBPの踏込みを緩めない限りは、ホイールシリンダWCのブレーキ液圧が絞りDの存在により上昇することはあっても低下することはない。
【0017】
絞りDによるホイールシリンダWCのブレーキ液圧を低下させる速度は、例えば、上り坂などでドライバがブレーキペダルBPの踏込みを開放してアクセルペダルを踏込み(ペダルの踏替え)、車両自体に登坂発進するのに必要な発進駆動力が生じるまで車両の後ずさりを防ぐことができる時間を確保できるものであればよい。ペダルを踏替えて車両自体に登坂発進するのに必要な発進駆動力が生じるまでの時間は、通常0.5秒程度である。
ここで、「発進駆動力が生じるまで」とは、車両に備えられたエンジン、モータなどの原動機の出力が車輪に伝達されて、それによって生じる駆動力により登坂発進できるようになった時点を意味し、例えば、▲1▼手動変速機搭載車両(MT車)にあってはドライバの操作によりアクセルが踏込まれ、かつクラッチが接続された時点、▲2▼自動変速機搭載車両(AT車)にあってはドライバの操作によりアクセルペダルが踏込まれ時点、▲3▼自動変速機搭載車両(AT車)であって、ブレーキペダルBPの踏込み開放に応じて、自動的に坂道に抗する程度まで駆動力が大きくなるように発進クラッチのトルク伝達容量を増加するものにあってはその増加が達成された時点、などをいう。
【0018】
なお、絞りDによるホイールシリンダWCのブレーキ液圧を低下させる速度は、ブレーキ液の性状や絞りDの形状(流路の断面積・長さなどの形状)などに基づいて決定されるが、ブレーキ液圧を低下させる速度が早い場合は、電磁弁SVが遮断位置にあっても、ブレーキペダルBPの踏込みを開放するとすぐに(充分な発進駆動力を得るまでに)ブレーキ力がなくなり、車両が坂道を後ずさりしてしまう。逆に、ホイールシリンダWCのブレーキ液圧を低下させる速度が遅い場合は、ブレーキペダルBPの踏込みを開放してもホイールシリンダWC内にブレーキ液圧が作用してブレーキが良く効いた状態が続くため車両の後ずさりはなくなるが、ブレーキ力及び坂道に抗する発進駆動力を確保するために、余分な時間や動力を要することになり好ましくない。
ちなみに、本発明のブレーキ液圧保持装置RUは、絞りDが異物により詰まってしまいブレーキ液圧を低下させる速度が所定の速度よりも遅くなることによる不都合を、絞りDの詰まりを自己解除させることで解消する。この点は後に詳細に説明するが、詰まりの原因となる異物としてはシールや金属の摩耗粉などがあげられる。
【0019】
チェック弁CV(逆止め弁ともいう)は必要に応じて設けられるが、このチェック弁CVは電磁弁SVが遮断位置にあり、かつドライバがブレーキペダルBPを踏増しした場合に、マスタシリンダMCで発生したブレーキ液圧をホイールシリンダWCに伝える役割を果す。チェック弁CVは、マスタシリンダMCで発生したブレーキ液圧がホイールシリンダWCのブレーキ液圧を上回る場合に有効に作動し、ドライバのブレーキペダルBPの踏増しに対応して迅速にホイールシリンダWCのブレーキ液圧を上昇させる。
なお、マスタシリンダMCのブレーキ液圧がホイールシリンダWCのブレーキ液圧よりも上回った場合に一旦閉じた電磁弁SVが開状態になるような構成とすれば、電磁弁SVのみでブレーキペダルBPの踏増しに対応することができるので、チェック弁CVを設ける必要はまったくない。
【0020】
リリーフ弁RVも必要に応じて設けられるが、このリリーフ弁RVは電磁弁SVが遮断位置にある場合で、かつドライバがブレーキペダルBPの踏込みを開放したか踏込みを緩めた場合に、ホイールシリンダWCに閉じ込められたブレーキ液を所定のブレーキ液圧(リリーフ圧)になるまで迅速にマスタシリンダMC側に逃がす役割を果す。リリーフ弁RVは、ホイールシリンダWCのブレーキ液圧が予め定められたブレーキ液圧以上で、かつマスタシリンダMCのブレーキ液圧よりも高い場合に作動する。これにより、電磁弁SVが閉状態の場合でも、ホイールシリンダWC内の必要以上のブレーキ液圧をリリーフ圧まで迅速に低減することができる。したがって、「車両発進の際にドライバが必要以上に強くブレーキペダルBPを踏込んでいて、ブレーキペダルBPの踏込み開放後、絞りDのみによりホイールシリンダWCのブレーキ液圧を低下させるのでは時間がかかって好ましくない」という問題を、リリーフ弁RVにより解決することができる。
【0021】
制御手段CUは、車速、ブレーキペダルBPの踏込みや変速機における走行位置などを検知して、電磁弁SVを連通位置から遮断位置に切換え、また、電磁弁SVを遮断位置から連通位置に切換える。この電磁弁SVを切換えるロジックの一例を図2に示す。このロジックにおいては、電磁弁SVが遮断位置になるのは、車両停止時(車速=0km/hr)にブレーキペダルBPが踏込まれており(ブレーキスイッチ[ON])、かつ変速機において走行位置が選択されているときである(図2(a)参照)。一方、電磁弁SVが連通位置になるのは、ブレーキペダルBPの踏込みが開放されており(ブレーキスイッチBSW[OFF])かつ車両に発進駆動力が生じた時点(発進駆動力発生)などである(図2(b)参照)。
【0022】
なお、ブレーキスイッチBSWは、ブレーキペダルBPが踏込まれているか否かを検出する。そして、この検出値に基づいて制御手段CUが電磁弁SVの制御を行なう。ちなみに、ブレーキスイッチBSWは、ブレーキペダルBPが踏込まれた場合にONになり、ブレーキペダルBPの踏込みが開放された場合にOFFになる。
【0023】
〔絞りを形成する態様〕 前記の通り絞りDは、液圧通路FPに取付けられたシート弁Vの弁体Veと弁座Vsの間に形成されるが、この絞りDを形成する態様について、図3及び図4を用いてさらに詳細に説明する。
図3は、絞りをボール弁よりなるリリーフ弁内に形成した態様及び絞りの形成方法を示す図である。(a)はリリーフ弁と絞りの要部を拡大した概略的な断面図である。(b)は絞りを切削により形成する際の作用図を示し、(c)は絞りを押し付けにより形成する際の作用図を示す。また、(c−1)と(c−2)は、溝加工とコイニングを示した作用図である。図4は、絞りをポペット弁内に形成した態様を示す概略的な断面図である。(a)(b)は弁座に絞りを形成した態様を示し、(c)(d)は弁体の先端部に絞りを形成した態様を示す。
【0024】
先ず、図3(a)に示すリリーフ弁RVはシート弁Vの一種であり、ボールRVb(弁体Veに相当)をテーパ状に形成された弁座RVsに押圧バネRVoにより押圧する(押し付ける)ことで、ブレーキ液の流れを遮断する常時閉型の弁Vである。本明細書においては、この形式の弁Vを「ボール弁V」と呼ぶこととする。このボール弁Vを用いたリリーフ弁RVは、ホイールシリンダWC側のブレーキ液圧がマスタシリンダMC側のブレーキ液圧よりも高く、かつ両者の差圧が押圧バネRVoの押圧力よりも大きくなった場合に、ボールRVbが押圧バネRVoの押圧力に抗して弁座RVsより浮き上がり、リリーフ弁RVが開状態になる。そして、差圧が押圧バネRVoの押圧力よりも小さくなったとき、押圧バネRVoにより浮き上がっていたボールRVbが弁座RVsに押圧され、リリーフ弁RVが閉状態になる。
【0025】
図3(a)に示す絞りを形成する態様では、絞りDはテーパ状に形成された弁座RVsの一部にブレーキ液の流れに沿った小さな断面略V字状のV溝として形成される。したがって、リリーフ弁RVが閉状態であっても、絞りDによる流路はボールRVbにより塞がれることがないので、ブレーキ液を常に導通する。ちなみに、図3(a)に矢印で示すブレーキ液の流れは、マスタシリンダMC側のブレーキ液圧が低い場合の流れである。この絞りDの断面の形状はU字状などでもよく、ドライバがブレーキペダルBPの踏込みを開放した場合に、所定速度でブレーキ液をマスタシリンダMC側に流すことができるものであれば特定の形状に限定されない。
この絞りDをリリーフ弁RV内に形成したV溝(断面U字状などの溝を含む、以下同じ)として構成することにより、後に説明するように絞りDが異物により詰まった場合、従来の保持装置RU’にはない詰まりの自己解除機能を持たせることができる。加えて、部品点数や絞りDの設置スペースを削減することができるという利点がある。また、形成が容易である。
なお、前記の通りリリーフ弁RVはボール弁Vであるが、このリリーフ弁RVのボールRVbは押圧バネRVoで押圧されているだけなので、ボールRVbは自由に回転し得る。したがって、ボールRVb(ボール弁VのボールVb)にV溝としての絞りDを形成するのは、適当ではない。ボールRVbが回転した場合に、回転状況によっては、V溝による流路が形成されなくなってしまうことがあるからである。
【0026】
V溝としての絞りDは、図3(b)に示すように、刃具CBでテーパ状の弁座RVsを切削することにより形成することができる。また、図3(c)に示すように、治具JBをテーパ状の弁座RVsに押し付けることにより形成することもできる。なお、図3(b)(c)の矢印は、刃具CB・治具JBを動かす方向を示す。
【0027】
押し付けによるV溝の形成は、例えば、先端が楔状の治具JBを押し付けた後に(溝加工)、さらに、球状治具JB´を押し付けることにより(コイニング)行なうことができる(図3(c1),(c2)参照)。この形成方法の場合は、前段の溝加工により生じた返りREは、後段のコイニングにより平坦化される。なお、押し付けの場合は、材料の変形のみで絞りDを形成するため、切削屑が生じない利点がある。
【0028】
図3では、絞りDをリリーフ弁RV内(弁体たるボールRVbと弁座RVs間)に形成しているが、電磁弁SV内やチェック弁CV内に形成してもよい(図1参照)。また、複数のシート弁V内に形成してもよい。
この絞りDは、前記した本明細書にいうボール弁Vばかりでなく、ポペット弁Vにも形成することができる。なお、ポペット弁Vとは、弁がさと弁棒(両者を合わせて弁体Veという)を持つきのこ型の弁であり、弁体Veが弁座Vsシート面から直角方向に移動する形式の弁である。このポペット弁Vの弁がさは、円錐状のポペットVpであったり球(ボールVb)であったりする。これらポペット弁Vやボール弁Vは、シート弁Vに含まれる。
【0029】
次に、絞りDをシート弁の一種であるポペット弁V内に形成する態様について、図4を参照して説明する。
1) 絞りDは、ポペット弁Vの弁座Vsの一部にブレーキ液の流れに沿ったV溝として形成することができる。図4(a)(b)における形成の態様は、既に図3(a)を用いて説明した態様と基本的には変わるところがない。なお、図4(a)は弁体Veの先端部がボールVbであるポペット弁Vであり、図4(b)は弁体Veの先端部がポペットVpであるポペット弁Vを示す(以下図4(c)(d)において同じ)。
2) また、絞りDは、ポペット弁Vの先端部であるボールVbやポペットVpの、弁座Vsと当接する部分にブレーキ液の流れに沿ったV溝として形成することができる(図4(c)(d)参照)。なお、先端部がボールVbであるポペット弁Vについては、ボールVbが自由に回転するようなものであってはならない。前記した通りボールVbの回転状況によっては、V溝による流路が形成されなくなるからである。
3) さらに、絞りDは、ポペット弁Vの弁座Vs及び弁体Veの先端部(ボールVb・ポペットVp)の双方に、ブレーキ液の流れに沿ったV溝として形成することができる(図示せず)。この場合、弁座Vs側のV溝と弁体Ve側のV溝の位置が必ずしも一致している必要はない。ただし、ボールVbが自由に回転するようなものにあっては、前記した理由によりボールVbにV溝を形成するのは好ましくない。
【0030】
ポペット弁V内にV溝としての絞りDを形成する方法は、図3(b)〜(c−2)を参照して説明した形成方法などをそのまま適用することができる。
【0031】
《ブレーキ液圧保持装置の作用など》
本発明のブレーキ液圧保持装置RUの作用などについて、図5及び図6を参照して説明する。
図5は、本発明のブレーキ液圧保持装置における絞りの詰まりの発生及び自己解除を説明する説明図である。図6は、本発明のブレーキ液圧保持装置を備えた車両における走行時の制御タイムチャートである。
【0032】
〔詰まりの発生〕 シート弁V内に形成した絞りDに詰まりが発生するのは、異物ASが絞りDによる流路(V溝)を塞ぐ場合である。異物ASとしては、前記した通りシールや金属の摩耗粉などがあげられるが、異物ASによる絞りDの詰まりは、絞りDが形成されたシート弁Vが閉じている場合であって、絞りDによる流路をブレーキ液が流れているときに主として発生する。すなわち、シート弁Vが閉じている場合は、ブレーキ液はブレーキ液圧の高い方(ホイールシリンダWC側)から低い方(マスタシリンダMC側)に向けて絞りDによる流路を通って流れるが、この絞りDによる流路は前記した通りブレーキ液の流量制限を行なうため断面積が小さくて狭く、異物ASが詰まりやすい構造でもある。仮に、液圧通路FPに異物ASがある場合は(図5(a)参照)、異物ASはブレーキ液の流れに乗って絞りDに到達するが、異物ASの大きさによっては絞りDによる流路に詰まってこの流路を塞いでしまう(図5(b)参照)。これにより、ブレーキ液の流れが完全に遮断されたり、流れが充分でなくなる。
図1に示すブレーキ液圧保持装置RUにこのような絞りDの詰まりが生じると、電磁弁SVが遮断位置にある場合の絞りDによるホイールシリンダWC内のブレーキ液圧の低下がなくなるか極めて小さい状態になり、車両が発進する際に不都合を生じることになる。例えば、下り坂においてアクセルペダルを踏込むことなく、ブレーキペダルBPの踏込みを開放する(緩める)という操作だけで車両を発進させることができなくなるか、発進するまでに相当の時間を要するなどの不都合である。また、車両に発進駆動力が生じた時点で電磁弁SVを連通位置にする制御を行なわない車両にあっては、通常の発進操作においても、車両を発進させることができくなってしまうかブレーキの大きな引きずりを生じてしまうなどという不都合を生じる。
【0033】
〔詰まりの自己解除〕 絞りDに詰まりが発生するのは従来の保持装置RU’も本発明のブレーキ液圧保持装置RUも同じであるが、本発明のブレーキ液圧保持装置RUの場合は、異物ASにより絞りDに詰まりが生じていても(図5(b)参照)、当該絞りDを形成したシート弁Vが作動することにより異物ASが除去され詰まりの自己解除が行なわれる(図5(c)参照)。つまり、シート弁Vが作動することにより弁体Ve(ポペットVp)が上昇して弁座Vsから離れ、異物ASは弁座Vsと弁体Veの先端部のポペットVpにより形成される絞りDの束縛から開放され自由に動き得る状態になる。同時に液圧通路FPに絞りDによる狭い流路が形成されないことになるので、多量のブレーキ液が絞りDによる流量制限を受けることなく液圧通路FPを流れる。このブレーキ液の流れによって異物ASは絞りDから除かれる(図5(c)参照)。そして、弁体Veが下降して弁座VsとポペットVpが接触し再び絞りDによる流路が形成されても、詰まりの原因となった異物ASは既に除去されているので、シート弁Vが閉じた状態でも、絞りDによりブレーキ液の流れは確保される。すなわち、絞りDを形成したシート弁Vが作動することにより、絞りDの詰まりの自己解除が行なわれる。
【0034】
このような詰まりの自己解除機能は、シート弁Vの弁体Veと弁座Vsの間に絞りDを形成することにより達成される。このシート弁Vは既に説明した通り、ポペット弁Vや本明細書にいうボール弁V(図1に示すチェック弁CV・リリーフ弁RV)が含まれる。
ちなみに、従来の保持装置RU’(図8(a)参照)にあっては、この詰まりを解除するのは容易なことではない。通常は、分解などして詰まりの原因となっている異物ASを除去することになる。
【0035】
〔制御タイムチャート〕 次に、詰まりの発生と詰まりの自己解除を車両走行時の制御タイムチャートである図6を参照して説明する。ちなみに、ここで説明する車両はMT車であり、本発明のブレーキ液圧保持装置RUを搭載するが、絞りDはリリーフ弁RVの弁座RVsとボールRVb(弁体Ve)間に形成されている(図1及び図3(a)参照)。また、ブレーキ液圧保持装置RUは、図2に例示する制御ロジックにより作動する。
なお、図6上段図は、車両の駆動力とブレーキ力の増減を時系列で示した図である。図中の太い線が駆動力を示し、細い線がブレーキ力を示す。図6下段図は、電磁弁SVのON/OFFの状態を示した図である。電磁弁SVは、ON(遮断位置)でブレーキ液の流れを遮断し、OFF(連通位置)でブレーキ液の流れを許容する。
【0036】
先ず、図6において、車両走行時ドライバが[a]ブレーキペダルBPを踏込むとブレーキ力が増して行く。ブレーキペダルBPを踏込む際には、ドライバはアクセルペダルの踏込みを開放するため駆動力が減衰して行く。次に、車両停止直前にドライバはクラッチペダルを踏込んでクラッチを切離すため、[b]駆動力がなくなる。そして、車速が0Km/hになると[c]電磁弁SVが遮断位置(ON)になりブレーキ力が保持される。
【0037】
次に、ドライバは車両を発進させるため、[d]ブレーキペダルBPの踏込みを開放する。ドライバがリリーフ弁RVの設定圧(リリーフ圧)以上にブレーキペダルBPを踏込んでいる場合は、上段図に示すように、ブレーキペダルBPの踏込みの開放によりリリーフ弁RVが作動して、[e]リリーフ圧までブレーキ力が短時間に低減する。電磁弁SVは、リリーフ弁RVの作動後も依然として遮断位置にあることから、ブレーキ力は絞りDによるブレーキ液の流量制限のもと徐々に低下して行く。
なお、上段図のブレーキ力を示す線において、[e]「リリーフ圧」の部分から右斜め下に伸びる仮想線は、ブレーキペダルBPの戻りを示す。この仮想線は、ブレーキ液圧が保持されない場合のブレーキ力の低下状況でもある。
【0038】
ここで、絞りDによりブレーキ力が徐々に低下している状況にあるとき、図5に示すような異物ASがリリーフ弁RVにつながる液圧通路FPに存在すると、絞りDによるブレーキ液の流れに乗って[f]異物ASが絞りDに詰まることになる。詰まりが発生すると絞りDによるブレーキ液の流れが遮断されるため、図6上段図に示すようにブレーキ力の低下がなくなる。
なお、上段図のブレーキ力を示す線において、[f]「詰まり発生」の部分から右斜め下に伸びる仮想線は、詰まりが発生していない場合のブレーキ力の低下状況を示す。
【0039】
図6上段図において、ドライバは絞りDに詰まりが生じた状態のまま、アクセルペダルを踏込みかつクラッチを接続して車両に[g]発進駆動力を発生させて車両を発進させるが、絞りDによるブレーキ力の低下がない場合は、発進の際に大きな動力を必要とするような不都合が生じることもある。特に下り坂において、絞りDによるブレーキ力の低下がない場合は、アクセルペダルを踏込むことなくブレーキペダルBPの踏込みを開放したり緩めたりするという操作だけで車両を発進させることができなくなるという不都合が生じる。なお、この車両は、ブレーキペダルBPの踏込みが開放されてブレーキスイッチBSWがOFFになり、かつドライバの操作により車両に発進駆動力が発生した時点で[h]電磁弁SVが連通位置(OFF)になる制御を行なっている。したがって、絞りDに詰まりが生じていても、発進駆動力により発進する限りは発進時に大きな支障はない。
【0040】
次に、再発進した車両が再び停止すると(停止までの操作の説明は省略する)、[i]再度電磁弁SVが遮断位置(ON)になり、ブレーキ液の流れを遮断する。図6上段図においては、ドライバはブレーキペダルBPを踏込んだ後、さらにリリーフ弁RVのリリーフ圧以上に[j]ブレーキペダルBPの踏増しを行なっている。このブレーキペダルBPの踏増しの際にはチェック弁CVが作動する。ちなみに、この時点でリリーフ弁RVに形成された絞りDには、依然として異物ASが詰まったままである。
【0041】
そして、ドライバが[k]ブレーキペダルBPの踏込みを開放すると、リリーフ弁RVが作動する。リリーフ弁RVが作動するとリリーフ弁RVの弁座RVsとボールRVbは図5(c)に示すような状態となるため、絞りDに詰まっていた異物ASがブレーキ液の流れとともに除去される。次に、リリーフ弁RVは、ホイールシリンダWC内のブレーキ液圧が[l]リリーフ圧以下になると閉じるが、既に異物ASは除去されているため、リリーフ弁RVが閉じた後の絞りDは通常通りの流量でブレーキ液をマスタシリンダMC側に流すことができる。つまり、リリーフ弁RVが作動することにより絞りDの詰まりが自己解除される。そして、車両はドライバの操作により生じた[m]発進駆動力により発進して行く。発進の際には、[n]電磁弁SVが連通位置に切換わる。
なお、上段図において[l]「リリーフ圧」のところから右横に伸びる仮想線は、詰まりの自己解除が行なわれない場合におけるブレーキ力を示す。また、同じ位置から右斜め下に伸びる仮想線は、ブレーキペダルBPの戻りを示す。
【0042】
このように詰まりが自己解除されることにより、下り坂においてブレーキペダルBPの踏込みを開放する(踏込みを緩める)という操作だけで車両を発進させることができる。また、平坦な場所での発進や登坂発進もスムースに行なうことができる。
また、この詰まりの自己解除により、わざわざブレーキ液圧保持装置RUを分解などして絞りDに詰まっている異物ASを除去する必要がないので、ドライバにとって車両の保守管理が容易になるとともに、保守管理に要する費用を節減することができる。
【0043】
なお、絞りDがリリーフ弁RV内に形成されているときは、詰まりの自己解除は、次にリリーフ弁RVが作動するときに行なわれる。また、絞りDが電磁弁SV内に形成されているときは、詰まりの自己解除は、次に電磁弁SVが作動するとき(連通位置に切換わるとき)に行なわれる。そして、絞りDがチェック弁CV内に形成されているときは、詰まりの自己解除は、次にチェック弁CVが作動するときに行なわれる。つまり、絞りDが形成されたシート弁Vが作動するときに、詰まりの自己解除が行なわれる。なお、シート弁Vが作動するときとは、弁体Veが弁座Vsから離れるとき(離れて再び戻るまで)をいう。
【0044】
ちなみに、電磁弁SV、チェック弁CV、リリーフ弁RVのうち、いずれのシート弁V内に絞りDを形成するのが適しているかについては、シート弁Vの作動頻度やドライバが任意にシート弁Vを作動させることができるかなどの点を考慮して決定される。作動頻度がもっとも高いという点を考慮すれば、絞りDは電磁弁SV内に形成するのが適している。一方、ドライバが任意にシート弁Vを作動させることができるという点を考慮すれば、絞りDはチェック弁CV内かリリーフ弁RV内に形成するのが適している。チェック弁CVはドライバがブレーキペダルBPを踏増しすることにより作動し、リリーフ弁はドライバがブレーキペダルBPの踏込みを開放することにより作動するからである。
なお、電磁弁SVに加えてチェック弁CV及びリリーフ弁RVの双方を備える構成のブレーキ液圧保持装置RUでは、他に特別の構成を付け加えることなく、ドライバの操作によりチェック弁CV及びリリーフ弁RVを何度でも続けて作動させることができる。したがって、チェック弁CV及び/又はリリーフ弁RVに絞りDを形成すれば、ドライバが絞りDの詰まりを感じたときは、ブレーキペダルBPの踏込み・開放(開放・踏込み)を行なうことにより、即座に詰まりの自己解除を行なうことができる。
【0045】
このように、本発明のブレーキ液圧保持装置RUによれば、シート弁V内(弁体Veと弁座Vs間)に形成した絞りDに詰まりが生じても、当該詰まりが生じたシート弁Vを作動させることにより詰まりの自己解除を簡単に行なうことができる。
【0046】
【実施例】
次に、実施例により本発明のブレーキ液圧装置を説明する。図7は、本発明のブレーキ液圧保持装置の具体構成を示す断面図である。
【0047】
図7に示すブレーキ液圧保持装置RUは、電磁弁SV、チェック弁CV及びリリーフ弁RVを組み合せて一まとめにした構成を有するが、絞りDは、リリーフ弁RV内に一体として形成されている。なお、絞りDは、電磁弁SVやチェック弁CV内に形成することもできる。
ここで、前記3つの弁のうち、電磁弁SVはポペット弁であり、チェック弁CV及びリリーフ弁RVは本明細書にいうボール弁であり、いずれもシート弁に含まれる。
【0048】
電磁弁SVは、ブレーキ液圧保持装置RUの上部に位置するが、この電磁弁SVのコイル部SVcに電流が流れることにより磁力が発生し、この磁力により弁体SVeが上下してブレーキ液の流路を連通したり遮断したりする。弁体SVeの下端(先端部)にはボールSVbがかしめて取付けられており、弁体SVeが上下することによりボールSVbも上下して弁座SVsの開口部を開閉(流路を連通・遮断)する。電磁弁SVへの通電は2つの電極SVe・SVeを通して行なわれる。符号SVfは、弁体SVeを上方向に付勢する付勢バネである。
【0049】
電磁弁SVが流路を連通する連通位置にある場合は、マスタシリンダMCからのブレーキ液は、マスタシリンダ側ジョイントJmからブレーキ液圧保持装置RU内に入り、主流路Cm(主流路Cm、環状流路Cr、主流路Cm)、弁座SVsの開口部、主流路Cm、ホイールシリンダ側ジョイントJwを通過して、ホイールシリンダWCに達する。一方、ホイールシリンダWCからマスタシリンダMCにブレーキ液が流れる場合は、これとは逆の順路になる。なお、環状流路Crは、電磁弁SVの弁座SVsの下部近傍からチェック弁CVを取り囲むようにして配設された、リング状をしたブレーキ液の流路である。
この電磁弁SVによりブレーキ液の主流路Cmが遮断され、ホイールシリンダWCにブレーキ液圧が保持される。
【0050】
チェック弁CVは、電磁弁SVの弁座SVsの下部近傍に位置する。チェック弁CVは、電磁弁SVが遮断位置にあるときに、ドライバがブレーキペダルBPを踏増しした場合に作動し、マスタシリンダMCからのブレーキ液は、マスタシリンダ側ジョイントJmからブレーキ液圧保持装置RU内に入り、主流路Cm、環状流路Cr、チェック弁CVの弁座CVsの開口部、主流路Cm、ホイールシリンダ側ジョイントJwを通過してホイールシリンダWCに達する。チェック弁CVが作動するのは、マスタシリンダMCのブレーキ液圧がホイールシリンダWCのブレーキ液圧よりも高く、かつ両者のブレーキ液圧の差である差圧がチェック弁CVの作動圧よりも高い場合である。チェック弁CVの作動圧は、チェック弁CVの弁体たるボールCVbを押圧する押圧バネCVoの押圧力などにより設定される。なお、符号CVcで示される部材は、環状流路Crとの連通穴を塞ぐボールである。
このチェック弁CVにより、電磁弁SVが遮断位置にある場合でもドライバがブレーキペダルBPを踏増しすることにより、ブレーキ力を増加することができる。
【0051】
リリーフ弁RVは、ブレーキ液圧保持装置RUの下部に位置する。リリーフ弁RVの上部は、分岐流路Cbを介して環状流路Crに接続されている。したがって、電磁弁SVが遮断位置にあるとき、ドライバが強く踏込んでいたブレーキペダルBPの踏込みを開放した場合、ホイールシリンダWCからのブレーキ液は、ホイールシリンダ側ジョイントJw、主流路Cm、分岐流路Cb、リリーフ弁RVの弁座RVsの開口部、分岐流路Cb、環状流路Cr、主流路Cm、マスタシリンダ側ジョイントJmを通過してマスタシリンダMCに達する。リリーフ弁RVが開くのは、ホイールシリンダWCのブレーキ液圧がマスタシリンダMCのブレーキ液圧よりも高く、かつ両者のブレーキ液圧の差である差圧がリリーフ弁RVの作動圧(リリーフ圧)よりも高い場合である。リリーフ圧は、リリーフ弁RVの弁体たるボールRVbを押圧する押圧バネRVoの押圧力などにより設定される。
このリリーフ弁RVにより、電磁弁SVが遮断位置にある場合でもドライバが強く踏込んでいたブレーキペダルBPの踏込みを開放すれば、ホイールシリンダWCのブレーキ液圧を一気にリリーフ圧にまで低減させることができる。
【0052】
図7に示すブレーキ液圧保持装置RUにおける絞りDは、リリーフ弁RVの弁座RVsに小さな溝(V溝)として形成され、この溝はリリーフ弁RVが閉状態であっても、ボールRVbにより塞がれることがない。したがって、電磁弁SV、チェック弁CV、リリーフ弁RVの開閉(連通・遮断)状態にかかわらず、マスタシリンダMCとホイールシリンダWCとは常に絞りDを介して連通された状態にある。ホイールシリンダWCのブレーキ液圧がマスタシリンダMCのブレーキ液圧よりも高い場合は、ブレーキ液は、ホイールシリンダ側ジョイントJw、主流路Cm、分岐流路Cb、リリーフ弁RVの弁座RVsに設けた絞りD、分岐流路Cb、環状流路Cr、主流路Cm、マスタシリンダ側ジョイントJmを通過してマスタシリンダMCに達する。絞りDをどちらの方向にブレーキ液が流れるかは、マスタシリンダMCとホイールシリンダWCのブレーキ液圧の差圧のみに支配される。単位時間当りに絞りDを通過するブレーキ液の量は、絞りDによる流路の断面積、流路の長さ、マスタシリンダMCとホイールシリンダWCのブレーキ液圧の差圧、ブレーキ液の粘性などにより変化する。
この小さな溝である絞りDにより、ドライバがブレーキペダルBPの踏込みを緩めるか開放すると電磁弁SVが遮断位置にあっても、ブレーキ液がホイールシリンダWC側からマスタシリンダMC側に流れ、ブレーキ力が徐々に低減して行く。
【0053】
この絞りDによる流路は細いため、前記した通り異物ASにより詰まりを生じ易い(図5(a)(b)参照)。しかし、仮に異物ASにより詰まりを生じても、絞りDはリリーフ弁のRVのボールRVbと弁座RVs間に形成されているため、このリリーフ弁RVが作動することにより、容易に詰まりの自己解除が行なわれる(図5(c)参照)。
【0054】
なお、このブレーキ液圧保持装置RUには、異物を捕集するためのフィルタFが、環状流路Cr内、チェック弁CVの下部、リリーフ弁RVの下部の3箇所、つまりブレーキ液圧保持装置RUの出と入りの両側(マスタシリンダMC側・ホイールシリンダWC側)に設けてある。
【0055】
このように、本発明のブレーキ液圧保持装置RUによれば、絞りDに詰まりを生じても、絞りDが形成されたシート弁Vが作動することにより容易に詰まりの自己解除を行なうことができる。
【0056】
なお、本発明は必ずしも前記実施の形態及び前記実施例に限定されるものではなく、本発明にいう目的を達成し、本発明にいう効果を有する範囲において適宜に変更実施することが可能なものである。
【0057】
【発明の効果】
ブレーキ液圧保持装置RUの絞りDに異物ASによる詰まりが一旦生じても、絞りDを形成したシート弁Vの弁体が弁座Vsから離れること(シート弁Vが作動すること)により詰まりは解消される。したがって、仮に異物ASによって絞りDに詰まりを生じることがあっても、その詰まりが自己解除されるブレーキ液圧保持装置RUを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明のブレーキ液圧保持装置を示す構成図である。
【図2】本発明のブレーキ液圧保持装置の車両停止時における制御ロジックを例示する図である。(a)は電磁弁を遮断位置に切換えるロジックの例を、(b)は電磁弁を連通位置に切換えるロジックの例を示す。
【図3】絞りをボール弁よりなるリリーフ弁内に形成した態様及び絞りの形成方法を示す概略的な断面図である。(a)はリリーフ弁と絞りの要部を拡大した概略的な断面図、(b)は絞りを切削により形成する際の作用図、(c)は絞りを押し付けにより形成する際の作用図である。また、(c−1)と(c−2)は、溝加工とコイニングを示した作用図である。
【図4】絞りをポペット弁内に形成した態様を示す概略的な断面図である。(a)(b)は弁座に絞りを形成した態様を、(c)(d)は弁体の先端部に絞りを形成した態様を示す。
【図5】本発明のブレーキ液圧保持装置における絞りの詰まりの発生及び自己解除を説明する説明図である。
【図6】本発明のブレーキ液圧保持装置を備えた車両における走行時の制御タイムチャートであり、時系列に沿っての駆動力・ブレーキ力の変化、及び電磁弁の位置、並びに詰まりの発生及び詰まりの自己解除を示す。
【図7】本発明のブレーキ液圧保持装置の具体的構成を示す断面図である。
【図8】従来のブレーキ液圧保持装置の構成などを示す図である(1系統のブレーキ液圧回路のみを表示)。(a)は従来の保持装置の構成を示し、(b)は詰まりの発生を示す。
【符号の説明】
RU; ブレーキ液圧保持装置
V ; シート弁〔ポペット弁・ボール弁〕
Ve・・弁体
Vs・・弁座
FP; 液圧通路
D ; 絞り(ブレーキ液圧低下速度減少手段)
BP; ブレーキペダル
MC; マスタシリンダ(シリンダ)
WC; ホイールシリンダ(シリンダ)
Claims (1)
- ドライバがブレーキペダルの踏込みを開放した後も引続きホイールシリンダ内にブレーキ液圧を作用させるブレーキ液圧保持装置であって、
該ブレーキ液圧保持装置を、ドライバのブレーキペダルの踏込み力に応じたブレーキ液圧を発生するマスタシリンダとホイールシリンダを結ぶ液圧通路に形成した絞りによる流量制限によって、ドライバのブレーキペダルの踏込み力の低下速度に対してホイールシリンダ内のブレーキ液圧の低下速度を小さくするブレーキ液圧低下速度減少手段で構成する、ブレーキ液圧保持装置において、
液圧通路に、該液圧通路を連通及び遮断する電磁弁と、該電磁弁に対して並列にブレーキ液圧低減用のシート弁たるリリーフ弁及びブレーキ液圧増加用のシート弁たるチェック弁を設けると共に、電磁弁を作動させて液圧通路を遮断し、ブレーキペダルの踏み込み開放後もブレーキ液圧を保持させる制御手段を設け、
絞りをリリーフ弁及び/又はチェック弁の弁体と弁座の間に形成したことを特徴とするブレーキ液圧保持装置。
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-
1999
- 1999-03-26 JP JP08336199A patent/JP3617935B2/ja not_active Expired - Lifetime
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