JP3615620B2 - 貼付剤 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、貼付剤に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、種々の薬物が経皮吸収製剤化され、従来の経口剤、注射剤等の欠点を補ってきた。例えば、特開昭57−185217号公報には、向精神薬であるロラゼパム又はフルニトラゼパムの経皮吸収製剤が開示されている。
特に近年では、単に経皮吸収製剤化するだけでなく、より小面積で取扱い易い製剤とするための吸収促進剤の研究が盛んに行われている。しかし、経皮吸収製剤に吸収促進剤を添加すると、薬物吸収量が増大する反面、皮膚刺激も増大することが知られている。
【0003】
上記皮膚刺激としては、上記吸収促進剤を過剰添加することによって貼付中に生じる化学的刺激以外に、粘着剤層の粘着力が大きいために貼付後剥離時に不快な痛みを伴う物理的刺激の例が挙げられる。このような物理的刺激は、特に吸収促進剤の過剰添加により、粘着剤層が必要以上に可塑化されることに起因することも多い。
【0004】
このような剥離時の痛み(物理的刺激)を軽減するための手段としては、次の方法が挙げられる。
(イ)粘着剤の分子量を大きくする。
(ロ)粘着剤の電子線、光などの照射により架橋させる。
(ハ)多官能イソシアネート等を含有させた粘着剤をシート状にした後、活性水素を含有する剥離剤で処理する(特開昭53−74539号公報参照)。
【0005】
しかし、上記の方法(イ)では、製造時に粘度が上昇し、医療用粘着剤として用いるためにフィルター等で濾過することが困難となり、製造コストも高くなるという問題点があった。また、上記方法(ロ)、(ハ)では、粘着力を低下させることは可能であるが、製造時に架橋処理を行うため、薬物等の安定性に注意を払う必要があり、さらに、架橋という工程が増えると共にそのための設備投資を必要とするため、製造コストの上昇を招くという問題点があった。
以上のように、上記従来の方法では、簡便な方法により、低コストで粘着力を低減させることが困難であった。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、上記欠点を解決するために、高い薬物放出性を維持し、皮膚に対する適度な粘着性を有すると共に、皮膚刺激性が低く、かつ剥離時の痛みが少ない貼付剤を提供することを目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の貼付剤は、支持体の片面に薬物を含有する粘着剤層が設けられた貼付剤であって、該粘着剤層が、炭素数10〜20の高級脂肪酸を該粘着剤層の飽和溶解度以上の濃度で含有し、該高級脂肪酸の結晶粒子が粘着剤層中に分散して存在することを特徴とするものである。
【0009】
本発明で用いられる粘着剤としては、薬物を溶解することができ、かつ常温で皮膚に対して長時間貼付し得る感圧接着性を有する(共)重合体であれば、特に限定されず、例えば、アクリル系粘着剤、ゴム系粘着剤、シリコーン系粘着剤等が好適に使用される。
【0010】
上記アクリル系粘着剤としては、例えば、(メタ)アクリル酸アルキエステルを主体とする(共)重合体が好適に使用されるが、(メタ)アクリル酸アルキエステル及び該(メタ)アクリル酸アルキエステルと共重合可能な官能性モノマーの共重合体であってもよい。
【0011】
上記(メタ)アクリル酸アルキルエステルとしては、例えば、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸ブチル、アクリル酸イソブチル、アクリル酸ヘキシル、アクリル酸オクチル、アクリル酸2−エチルヘキシル、アクリル酸イソオクチル、アクリル酸デシル、アクリル酸イソデシル、アクリル酸ラウリル、アクリル酸ステアリル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸ブチル、メタクリル酸イソブチル、メタクリル酸2−エチルヘキシル、メタクリル酸イソオクチル、メタクリル酸デシル、メタクリル酸イソデシル、メタクリル酸ラウリル、メタクリル酸ステアリル等が挙げられ、これらは単独で使用されても、二種以上が併用されてもよい。
【0012】
上記アクリル系粘着剤は、薬物の溶解性向上を目的として、必要に応じて、主成分である(メタ)アクリル酸アルキエステル(共)重合体と、上記以外のモノマーとの共重合や他の重合体とのブレンドを行ってもよく、溶解助剤を添加してもよい。特に、共重合を行う場合は上記以外のモノマーとして、N−ビニル−2−ピロリドンが好適に用いられる。
【0013】
上記N−ビニル−2−ピロリドンとの共重合を行う場合は、アクリル系粘着剤の構成成分中、N−ビニル−2−ピロリドンの含有比率は、1〜60重量%が好ましく、より好ましくは5〜30重量%である。
1重量%未満では薬物の飽和溶解度が十分でなく、60重量%を超えると粘着性が低下する。
【0014】
上記(メタ)アクリル酸アルキエステルを主体とする(共)重合体は、通常、重合開始剤の存在下で上述のモノマーを配合して溶液重合を行うことにより調製される。溶液重合を行う場合は、所定量の各種モノマーに酢酸エチル又はその他の重合溶媒を加え、攪拌装置及び冷却還流装置を備えた反応器中で、アゾビス系、過酸化物系等の重合開始剤の存在下、窒素雰囲気中で70〜90℃、8〜40時間反応させればよい。また、モノマーは一括投入又は分割投入のいずれの方法であってもよい。
【0015】
上記アゾビス系重合開始剤としては、2,2−アゾビス−イソ−ブチロニトリル、1,1’−アゾビス(シクロヘキサン−1−カルボニトリル)、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレリニトリル)等が挙げられ、上記過酸化物系重合開始剤としては、過酸化ラウロイル、過酸化ベンゾイル、ジ(tert−ブチル)パーオキサイド等が挙げられる。
【0016】
上記アクリル系粘着剤には、さらに必要に応じて、粘着性を調整するために粘着性付与剤が配合されてもよい。
上記粘着性付与剤としては、ロジン系樹脂、テルペン系樹脂、クマロン−インデン樹脂、石油系樹脂、テルペン−フェノール樹脂等が挙げられ、好ましくは水添ロジンエステル等のロジン系樹脂である。
【0017】
上記ゴム系粘着剤としては、天然ゴム、スチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体、ポリイソプレン、ポリブテン、ポリイソブチレン、エチレン−酢酸ビニル共重合体等のゴム弾性体をベースポリマーとし、ベースポリマー100重量部に対して、上記粘着性付与剤20〜200重量部が配合されたものが挙げられる。
【0018】
上記ゴム系粘着剤には、必要に応じて、液状ポリブテン、鉱油、ラノリン、液状ポリイソプレン、液状ポリアクリレート等の軟化剤;酸化チタン等の充填剤;ブチルヒドロキシトルエン等の老化防止剤などが配合されてもよい。
【0019】
上記シリコーン系粘着剤としては、ポリジメチルシロキサン等を主成分とするものが挙げられる。
【0020】
上記アクリル系粘着剤、ゴム系粘着剤及びシリコーン系粘着剤には、さらに、可塑剤、無水珪酸等の充填剤、老化防止剤等が配合されてもよい。
【0021】
本発明で使用される薬物としては、経皮的に生体膜を透過しうるものであれば特に限定されず、例えば、次のものが挙げられる。
薬物の例としては、全身麻酔剤、睡眠・鎮痛剤、解熱消炎鎮痛剤、ステロイド系抗炎症剤、興奮・覚醒剤、鎮暈剤、精神神経用剤、局所麻酔剤、骨格筋弛緩剤、自立神経用剤、鎮痙剤、抗パーキンソン剤、抗ヒスタミン剤、強心剤、不整脈用剤、利尿剤、血圧降下剤、血管収縮剤、血管拡張剤、動脈硬化用剤、呼吸促進剤、鎮咳去痰剤、消化性潰瘍治療剤、利胆剤、ホルモン剤、泌尿生殖器及び肛門用剤、寄生性皮膚疾患用剤、皮膚軟化剤、ビタミン剤、無機質製剤、止血剤、血液凝固阻止剤、肝臓疾患用剤、習慣性中毒用剤、痛風治療剤、糖尿病用剤、抗悪性腫瘍剤、放射線医薬品、漢方製剤、抗生物質、化学療法剤、駆虫剤・抗原虫剤、麻薬などが挙げられる。
【0022】
解熱消炎鎮痛剤としては、アセトアミノフェノン、フェナセチン、メフェナム酸、ジクロフェナックナトリウム、フルフェナム酸、アスピリン、サリチル酸ナトリウム、アミノピリン、アルクロフェナック、イブプロフェン、ナプロキセン、フルルビプロフェン、ケトプロフェン、アンフェナックナトリウム、メピリゾール、インドメタシン、ペンタゾシン、ピロキシカム等;ステロイド系抗炎症剤としては、ヒドロコルチゾン、トリアムシノロン、デキサメタゾン、ベタメタゾン、プレドニゾロン等が、それぞれ挙げられる。
【0023】
血管拡張剤としては、塩酸ジルチアゼム、四硝酸ペンタエリスリトール、硝酸イソソルビド、トラピジル、ニコランジル、ニトログリセリン、乳酸プレニラミン、モルシドミン、亜硝酸アミド、塩酸トラゾリン等;不整脈用剤としては、塩酸プロカインアミド、塩酸リドカイン、塩酸プロプラノロール、塩酸アルプレノロール、アテノロール、ナドロール、酒石酸メトプロロール、アジマリン、ジソピラミド、塩酸メキシチレン等;血圧降下剤としては、塩酸エカラジン、インダパミド、塩酸クロニジン、塩酸ブニトロロール、塩酸ラベタロール、カプトプリル、酢酸グアナベンズ、メブタメート、硫酸ベタニジン等が、それぞれ挙げられる。
【0024】
鎮咳去痰剤としては、クエン酸カルベタペンタン、クロペラスチン、タンニン酸オキセラジン、塩酸クロブチノール、塩酸クロフェダノール、塩酸ノスカピン、塩酸エフェドリン、塩酸イソプロテレノール、塩酸クロルプレナリン、塩酸メトキシフェナミン、塩酸プロカテロール、塩酸ツロブテロール、塩酸クレンブテロール、フマル酸ケトチフェン等;抗悪性腫瘍剤としては、シクロフォスファミド、フルオロウラシル、デガフール、マイトマイシンC、塩酸プロカルバジン、ドキシフルリジン、ラニムスチン等;局所麻酔剤としては、アミノ安息香酸エチル、塩酸テトラカイン、塩酸プロカイン、塩酸ジブカイン、塩酸オキシブプロカイン、塩酸プロピトカイン等が、それぞれ挙げられる。
【0025】
ホルモン剤としては、プロピルチオウラシル、チアマゾール、酢酸メテノロン、エストラジオール、エストリオール、プロゲステロン等;抗ヒスタミンとしては、塩酸ジフェノンヒドラミン、マレイン酸クロルフェニラミン、プロメタジン、塩酸シプロヘプタジン、塩酸ジフェニルピラリン等;血液凝固促進剤としては、ワルファリンカリウム、塩酸チクロピジン等;鎮痙剤としては、臭化メチルアトロピン、スコポラミン等;全身麻酔剤としては、チオペンタールナトリウム、ペントバルビタールナトリウム等;催眠・鎮痛剤としては、ブロムワレリル尿素、アモバルビタール、フェノバルビタール等;抗癲癇剤としてはフェニトインナトリウム等;興奮剤・覚醒剤としては塩酸メタンフェタミン等が、それぞれ挙げられる。
【0026】
鎮暈剤としては、塩酸ジフェニドール、メシル酸ベタヒスチン等;精神神経用剤としては、塩酸クロルプロマジン、チオリダジン、メプロバメート、塩酸イミプラミン、クロルジアゼポキシド、ジアゼパム等;骨格筋弛緩剤としては、塩酸スキサメトニウム、塩酸エペリゾン等;自律神経用剤としては、臭化ネオスチグミン、塩化ベタネコール等;抗パーキンソン剤としては塩酸アマンタジン等;利尿剤としては、ヒドロフルメチアジド、イソソルビド、フロセミド等;血管収縮剤としては塩酸フェニレフリン等;呼吸促進剤としては、塩酸ロベリン、ジモルホラミン、塩酸ナロキソン等;消化性潰瘍治療剤としては、臭化グリコピロニウム、プログルミド、塩酸セトラキサート、シメチジン、スピゾフロン等が、それぞれ挙げられる。
【0027】
利胆剤としては、ウルソデスオキシコール酸、オサルミド等;泌尿生殖器及び肛門用剤としては、ヘキサミン、スパルティン、ジノプロスト、塩酸リトドリン等;寄生性皮膚疾患用剤としては、サリチル酸、シクロピロクスオラミン、塩酸クロコナゾール等;皮膚軟化剤としては尿素等;ビタミン剤としては、カルシトリオール、塩酸チアミン、リン酸リボフラビンナトリウム、塩酸ピリドキシン、ニコチン酸アミド、パンテノール、アスコルビン酸等;無機質製剤としては、塩化カルシウム、ヨウ化カリウム、ヨウ化ナトリウム等;止血剤としてはエタンシラート等が、それぞれ挙げられる。
【0028】
肝臓疾患用剤としてはチオプロニン等;習慣性中毒用剤としてはシアナミド等;痛風治療剤としては、コルヒチン、プロベネシド、スルフィンピラゾン等;糖尿病用剤としては、トルブタミド、クロルプロパミド、グリミジンナトリウム、グリブゾール、塩酸ブホルミン、インスリン等;抗生物質としては、ベンジルペニシリンカリウム、プロピシリンカリウム、クロキサシリンナトリウム、アンピシリンナトリウム、塩酸バカンピシリン、カルベニシリンナトリウム、セファロリジン、セフォキシチンナトリウム、エリスロマイシン、クロラムフェニコール、テトラサイクリン、硫酸カナマイシン、サイクロセリン等;化学療法剤としては、イソニアシド、ピラジナミド、エチオナミド等;麻薬としては、塩酸モルヒネ、リン酸コデイン、塩酸コカイン、塩酸ペチジン等が、それぞれ挙げられる。
【0029】
上記薬物の配合量は、薬物の種類、貼付剤の使用目的等により異なるが、少なくなると薬物の高い放出性が得られず、多くなると粘着剤層の凝集力や粘着力が低下するので、通常、粘着剤層中0.01〜50重量%が好ましい。
但し、薬物が硝酸イソソルビドの場合は、粘着剤層中5〜30重量%が好ましい。
【0030】
薬物の粘着剤に対する飽和溶解度は粘着剤の組成により異なるが、薬物を飽和溶解度に可能な限り近い濃度で粘着剤層中に相溶させ、結晶析出が起こらないようにすることにより、薬物の高い放出性が得られる。尚、粘着剤層中に薬物が過飽和量存在したり、薬物の結晶が析出していても、特に支障はない。
また、薬物又は吸収促進剤をカプセル化したり、薬物又は吸収促進剤の貯蔵層を設けることも可能である。
【0031】
本発明で用いられる高級脂肪酸としては、カルボキシル基と結合する脂肪族官能基の炭素数合計が10〜20であれば特に限定されず、直鎖状又は分岐状のいずれであってもよいが、常温で固体のものが好ましい。また、カルボキシル基の数は、特に限定されないが、1〜3が好ましい。
このような高級脂肪酸としては、例えば、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、トリデカノイックアシッド、ペンタデカノイックアシッドなどが挙げられ、これらは単独で使用されてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0032】
上記高級脂肪酸は、粘着剤層に対する飽和溶解度以上の濃度で含有させ、結晶粒子を粘着剤層中に分散させた状態で用いられる。上記高級脂肪酸の配合量は、粘着剤に対する飽和溶解度によって異なるが、少なくなると粘着剤の剥離力を緩和する効果が小さくなり、多くなると皮膚に対する粘着力が低下するので、粘着剤層の飽和溶解度量の1〜50倍量が好ましく、より好ましくは1〜30倍量である。例えば、高級脂肪酸がステアリン酸の場合は、粘着剤層中の0.8〜20重量%が好ましく、より好ましくは1〜10重量%である。
【0033】
上記炭素数10〜20の高級脂肪酸には、粘着剤層中に含有される薬物の経皮吸収性を高める作用がある。従って、炭素数10〜20の高級脂肪酸を粘着剤層に対する飽和溶解度以上の濃度で含有させ、結晶粒子を粘着剤層中に分散した状態で存在させることにより、皮膚に対する粘着力を適度に軽減すると共に薬物の経皮吸収性を高めることができる。このような効果は、高級脂肪酸としてラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸を用いたときに、特に顕著に発現する。
【0034】
本発明で使用される支持体としては、柔軟性を有すると共に貼付剤に自己支持性を付与し、かつ粘着剤層中の薬物の揮散や移行を防止する役目を果たすものが好ましい。このような支持体の素材としては、例えば、酢酸セルロース、エチルセルロース、ポリエチレンテレフタレート(以下、PETという)、可塑化(酢酸ビニル−塩化ビニル)共重合体、ポリアミド、エチレン−酢酸ビニル共重合体(以下、EVAという)、エチレン−メチルアクリレート共重合体(以下、EMAという)、可塑化ポリ塩化ビニル、ポリウレタン、ポリエチレン、ポリ塩化ビニリデン等の樹脂フィルム:アルミニウムシート等が挙げられ、これらの素材は単層で用いられてもよく、2種以上の積層体として用いられてもよい。また、アルミニウムシート以外の素材は、織布や不織布の形態で用いられてもよい。
【0035】
さらに、上記支持体としては、皮膚面に対して追従性を有する素材から形成されるものが好ましく、このような性質を有する素材としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)とエチレン−酢酸ビニル(EVA)共重合体とのラミネートフィルム、ポリエチレンテレフタレート(PET)とエチレン−メチルアクリレート(EMA)共重合体とのラミネートフィルム等が挙げられる。
【0036】
上記支持体の厚みは、500μm以下が好ましく、より好ましくは5〜150μmである。
【0037】
本発明の貼付剤には、使用時まで粘着剤層表面を保護するために剥離紙が積層される。剥離紙としては、ポリエチレンテレフタレートフィルムの表面をシリコン処理されたものが一般に用いられるが、これに限定されるものではない。
上記剥離紙の厚みは、1,000μm以下が好ましく、より好ましくは30〜200μmである。
【0038】
本発明の貼付剤の調製において、粘着剤層を形成するには通常の粘着テープの製造方法が適用でき、例えば、溶剤塗工法、ホットメルト塗工法、電子線硬化エマルジョン塗工法等、従来公知の粘着テ−プの製造方法が使用可能であるが、特に溶剤塗工法が好適に使用される。
【0039】
上記溶剤塗工法では、上記粘着剤、薬物、高級脂肪酸、必要に応じて、その他の添加剤を、適当な溶媒に溶解又は分散させ、得られた溶液又は分散液を支持体表面に塗布し、乾燥させて溶媒を除去することにより、支持体上に所定の厚みの粘着剤層を形成し貼付剤を作製する。
また、上記溶液又は分散液を剥離紙上に一旦塗工、乾燥した後、得られた粘着剤層を支持体に密着させてもよい。
【0040】
上記粘着剤層の厚さは、使用目的により異なるが、薄くなると貼付剤の単位面積当たりの薬物含有量が不足すると共に粘着力が不十分となり、厚くなると支持体付近の粘着剤層に含有される薬物が十分に拡散せず、薬物放出量が低下するので、10〜200μmが好ましい。
【0041】
上記で得られた貼付剤は、通常は薬物を経皮的又は経粘膜的に体内循環器系へ投与する目的で、皮膚ないし粘膜の表面に直接貼付される。
さらに、該貼付剤は薬物を皮膚ないし粘膜の疾患部の治療を目的として皮膚ないし粘膜に貼付されることもある。本貼付剤の使用後、痛みを感じることなく皮膚から簡単に剥離することができる。
【0042】
(作用)
一般に、貼付剤の粘着剤層に吸収促進剤を添加すると、薬物の経皮吸収速度は向上するが、より大きな効果を得ようとすると添加量を増やさざるを得ず、その結果皮膚刺激が増大する、また、吸収促進剤の添加量が多くなると、粘着剤層が必要以上に可塑化されて粘着力が高くなり過ぎ、剥離時に不快な痛みが発生すること、が多く見られた。
本発明では、吸収促進性のある高級脂肪酸の添加量を粘着剤層に対して飽和溶解度以上に含有させることにより、薬物放出性及び吸収促進効果を高い水準で維持し、かつ剥離時に痛みの少ない貼付剤を得ることができる。
【0043】
その理由は、次のように考えられる。
(a)粘着剤層に溶解している高級脂肪酸の溶解成分は、主として薬物の経皮吸収性を高める吸収促進剤の働きをする。
(b)粘着剤層に分散している高級脂肪酸の非溶解成分(結晶)は、主として粘着剤の皮膚に対する接触面積を減少させ、剥離力を低減化する働きをする。
(c)高級脂肪酸の非溶解成分(結晶)の存在により、粘着剤層に常時高級脂肪酸が飽和溶解している状態(溶液平衡)を保つことができる。
【0044】
【発明の実施の形態】
次に、本発明の実施例を説明する。
(実施例1)
アクリル酸2−エチルヘキシル302g及びN−ビニル−2−ピロリドン98gをセパラブルフラスコに仕込み、さらに酢酸エチル400gを加えて、モノマー濃度が50重量%となるように調製した。この溶液を窒素雰囲気下で80℃に加熱し、重合開始剤として過酸化ラウロイル2gをシクロヘキサン100gに溶解した溶液及び酢酸エチル243gを少しずつ添加しながら、12時間重合を行い、アクリル系粘着剤の酢酸エチル溶液を得た。このアクリル系粘着剤溶液は、固形分濃度35重量%、粘度1.5×10cpsであった。
得られたアクリル系粘着剤溶液に、薬物として硝酸イソソルビド、高級脂肪酸としてステアリン酸を、固形分中の濃度がそれぞれ15重量%及び3重量%となるように加えて、塗工液を調製した。この塗工液をシリコン処理した35μm厚のPETフィルム(剥離紙)上に乾燥後の厚みが80μmとなるように塗布、乾燥させ、次いで、厚み35μmのPET/EVA積層フィルム(支持体)に貼り合わせて貼付剤を作製した。
【0045】
(実施例2)
ステアリン酸を固形分中の濃度が5重量%となるように加えて、塗工液を調製したこと以外は、実施例1と同様にして貼付剤を作製した。
【0046】
(実施例3)
ステアリン酸を固形分中の濃度が10重量%となるように加えて、塗工液を調製したこと以外は、実施例1と同様にして貼付剤を作製した。
【0047】
(実施例4)
ステアリン酸を固形分中の濃度が40重量%となるように加えて、塗工液を調製したこと以外は、実施例1と同様にして貼付剤を作製した。
【0048】
(実施例5)
ステアリン酸に代えてラウリン酸を固形分中の濃度が3重量%となるように加えて、塗工液を調製したこと以外は、実施例1と同様にして貼付剤を作製した。
【0049】
(実施例6)
ステアリン酸に代えてミリスチン酸を固形分中の濃度が3重量%となるように加えて、塗工液を調製したこと以外は、実施例1と同様にして貼付剤を作製した。
【0050】
(実施例7)
ステアリン酸に代えてパルミチン酸を固形分中の濃度が3重量%となるように加えて、塗工液を調製したこと以外は、実施例1と同様にして貼付剤を作製した。
【0051】
(実施例8)
ゴム弾性体としてスチレン−イソプレン−スチレン・ブロック共重合体100重量部、粘着付与剤として脂環族水素添加石油樹脂140重量部及び軟化剤としてポリブテン25重量部をシクロヘキサン490重量部に溶解させて、固形分濃度35重量%のゴム系粘着剤のシクロヘキサン溶液を得た。これに、薬物としてインドメタシン、高級脂肪酸としてステアリン酸を固形分濃度がそれぞれ10重量%、5重量%となるように加えて塗工液を調製した。
上記塗工液を使用し、実施例1と同様にして貼付剤を作製した。
【0052】
(実施例9)
ステアリン酸及びパルミチン酸を、固形分中の濃度がそれぞれ3重量%、2重量%となるように加えて、塗工液を調製したこと以外は、実施例7と同様にして貼付剤を作製した。
【0053】
(比較例1)
高級脂肪酸を全く添加せずに塗工液を調製したこと以外は、実施例1と同様にして貼付剤を作製した。
【0054】
(比較例2)
ステアリン酸を固形分中の濃度が0.5重量%となるように加えて、塗工液を調製したこと以外は、実施例1と同様にして貼付剤を作製した。
【0055】
(比較例3)
ステアリン酸に代えて、ミリスチン酸を固形分中の濃度が1重量%となるように加えて、塗工液を調製したこと以外は、実施例1と同様にして貼付剤を作製した。
【0056】
(比較例4)
高級脂肪酸を全く添加せずに塗工液を調製したこと以外は、実施例と同様にして貼付剤を作製した。
【0057】
尚、表1に粘着剤層の組成を示した。
【0058】
【表1】
Figure 0003615620
【0059】
上記実施例及び比較例で得られた貼付剤につき、下記の性能評価を行い、その結果を表2に示した。
(1)薬物の皮膚移行量
貼付剤を直径2cmの円形に切断した試料を、モルモット(雄性、5週齢)の除毛された腹部に貼付し24時間経過後に腹部から剥離した。
剥離した試料中の薬物をメタノールで抽出した後、液体クロマトグラフィーにより試料中に残存する薬物量を定量し、試料中の薬物の初期含有量から残存する薬物量を差し引いた値を、皮膚移行量とした。
【0060】
(2)皮膚刺激性
貼付剤を直径2cmの円形に切断した試料を、モルモット(雄性、5週齢)の除毛された腹部に貼付した。貼付24時間後試料を腹部から剥離し、剥離24時間経過後の腹部における紅斑の強度を目視観察により評価した。
評価の方法は、繰り返し数n=10で、下記の基準に従って紅斑の強度に対する評価点をつけ、合計評価点を10で割った平均値を皮膚刺激性指数とした。
0点:紅斑が全く認められない
1点:かろうじて識別できる程度の軽度の紅斑が認められた
2点:明らかな紅斑が認められた
3点:中程度の紅斑が認められた
4点:深紅色の強い紅斑が認められた
【0061】
(3)引き剥がし力の測定
JIS Z0237に準拠して、ステンレス板を用いた180度引き剥がし試験(SP)法によって、180度引き剥がし力を測定し、貼付剤剥離時の痛み評価の尺度とした。
【0062】
(4)高級脂肪酸結晶の有無
貼付剤の粘着剤層を目視観察し、高級脂肪酸の結晶が確認できたもの(飽和溶解度以上)を○、確認できなかったもの(飽和溶解度以下)を×とした。
【0063】
【表2】
Figure 0003615620
【0064】
【発明の効果】
本発明の貼付剤の構成は、上述の通りであり、炭素数10〜20の高級脂肪酸を粘着剤剤層に飽和溶解度以上に含有させ、高級脂肪酸の結晶粒子を分散させた状態で存在させることにより、高級脂肪酸の溶解成分が主として薬物の経皮吸収性を高めると共に、高級脂肪酸の非溶解成分が主として皮膚に対する粘着力及び剥離力を適度に軽減する。その結果、本発明の貼付剤は薬物放出性を高く維持し、かつ剥離時の痛みを軽減する。

Claims (1)

  1. 支持体の片面に薬物を含有する粘着剤層が設けられた貼付剤であって、該粘着剤層が、炭素数10〜20の高級脂肪酸を該粘着剤層の飽和溶解度以上の濃度で含有し、該高級脂肪酸の結晶粒子が粘着剤層中に分散して存在することを特徴とする貼付剤。
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