JP3613955B2 - ワイピングクロス - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、拭き取り性と吸水性に優れた、ソフトな風合いを有する作業性の良いワイピングクロスに関するものである。さらに詳しくは、貴金属、食器、家具、自動車、OA機器、楽器、ガラス製品、ショーケース、ショーウインドウおよび鏡などに付着した指紋や油汚れを、毛羽を残すことなく、乾・水拭きにより除去することが可能であり、特にガラス製品の乾拭きに優れたソフトな風合いのワイピングクロスに関するものである。
【0002】
【従来の技術】
貴金属、食器および家具などに付着した指紋や油汚れは、水拭きを行なった場合、乾燥時に拭き跡に曇り汚れが目立つことが多い。特に、食器乾燥機を用いて乾燥されたグラスなどのガラス製品には、汚れを含む微細な水分の残存に起因する曇り汚れが残ることが多い。
【0003】
従来、このようなガラス製品等のワイピングクロスとしては、吸水性のよい木綿などの天然繊維からなる織物が使用されているが、この織物の場合は拭き残しが多く、また自己発塵した毛羽が付着するなどの欠点がある。このようなワイピングクロスにおいて自己発塵を防ぐためには、合成繊維フィラメントを用いることが有効で、これまでにも合成繊維フィラメントを用いた布帛が提案されている。例えば、特開昭61−103428号公報では、単繊維繊度が0.9デニール以下の極細繊維で構成された嵩高性のある布帛をワイピングクロスとして使用することが提案されている。しかしながら、このワイピングクロスは、グラスなどのガラス製品を洗浄した後に乾拭きした場合、水分を完全に除去することができず、いわゆる磨きのかかった乾拭き取り乾拭き仕上げはできないなど、なお課題がある。
【0004】
また、特開昭63−211342号公報では、単繊維繊度が0.5デニール以下の極細繊維のみで構成された超極細繊維交絡織編物およびその製造方法が提案されている。この提案の織編物では、液体を多数の小孔から織編物に噴射させて糸−糸間に絡まりを生じさせ、拭き取り性と嵩高性を向上させている。しかしながら、この織編物の場合、織編物の収縮により織編密度が大きくなるために、風合いが硬くなり作業性が悪いという欠点があった。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、自己発塵を起こさず、嵩高性と吸水性を有し、ソフトな風合いで作業性がよく、拭き取り性に優れたワイピングクロス、特に、グラスなどのガラス製品の磨きのかかった乾拭き仕上げに適したワイピングクロスを提供することにある。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明は、上記課題を解決するために次のような手段を採用する。すなわち、本発明のワイピングクロスは、単繊維繊度が0.1デニール以下の極細繊維からなる生糸と、単繊維繊度が0.01〜0.1デニールの捲縮を有する極細繊維からなる捲縮糸と、単繊維繊度が0.5〜7.0デニールの高収縮糸との合成繊維マルチフィラメント複合糸で構成された、目付100〜300g/m2 の織編物からなることを特徴とするものである。
【0007】
そして本発明においては、合成繊維マルチフィラメント複合糸として、上記極細繊維からなる生糸と極細繊維からなる捲縮糸の糸長差が5〜15%であり、また上記極細繊維からなる生糸と高収縮糸の糸長差が8〜20%である合成繊維マルチフィラメント複合糸を用いること、前記合繊繊維マルチフィラメント複合糸に占める極細繊維の割合が生糸20重量%以上、捲縮糸40重量%以上であること、前記合成繊維マルチフィラメント複合糸において、該捲縮糸が主に外層部を、該生糸が主に中層部を、該高収縮糸が主に内層部をそれぞれ構成していること、前記高収縮糸の沸騰水収縮率が12〜25%であること、織編物の剛軟度が10〜50であること、さらに、前記織物の吸水速度が、タテ・ヨコ方向とも100mm以上であることが、好ましい実施態様として包含される。
【0008】
【発明の実施の形態】
本発明者らは、上述の課題、すなわち 自己発塵を起こさず、嵩高性と吸水性を有し、ソフトな風合いで作業性が良く、しかも乾拭きで製品を磨き上げるのに適したワイピングクロスについて鋭意検討したところ、特定な繊維の組み合わせで構成された複合糸を使用した織物により、かかる課題を一挙に解決できることを究明し、本発明に到達したものである。
【0009】
本発明で使用される極細繊維は、海島型複合繊維、剥離分割型複合繊維および特殊ポリマブレンド型複合繊維などの極細繊維化可能な複合繊維を極細繊維化処理して得られるものであって、その繊維素材としては、ポリエステル系、ポリアミド系、ポリアクリル系、ポリオレフィン系等のホモポリマー、コポリマーなど公知の素材を使用することができるが、特に、ポリエステル系とポリアミド系のホモポリマー、コポリマーが好ましく使用される。
【0010】
本発明の合成繊維マルチフィラメント複合糸は、少なくとも3種類の繊維で構成される。その合成繊維マルチフィラメント複合糸を構成する一つの繊維は、単繊維繊度が0.1デニール以下の極細繊維からなる生糸であり、また別の繊維は単繊維繊度が0.01〜0.1デニールの、好適には仮ヨリ加工された捲縮を有する極細繊維からなる捲縮糸であり、さらに複合糸を構成する他の一つは単繊維繊度が0.5〜7.0デニールの高収縮糸である。以下、これらについて具体的に説明する。
【0011】
まず、捲縮を有する極細繊維からなる捲縮糸は、本発明の優れた拭き取り効果を発現させる上で重要な繊維であり、通常、単糸は細いほどその効果が大きい。すなわち、繊維の表面積が大きく、空隙率が多く、毛細管現象による水分の吸収を満足させるには、単繊維繊度が小さいほど好ましく、より好ましくは0.03〜0.1デニール の範囲のものがよい。捲縮糸の単繊維繊度が0.01デニール未満の場合には、ワイピング性能面では満足されるものであるが使用による摩擦で繊維の摩耗が起こり、単糸切れなどに起因する毛羽の発生で十分な耐久性が得られ難い。また、単繊維繊度が0.1デニールを超える場合には、微細な汚れを捕獲することが困難になり、かつ対象物の水分を完全に除去できなくなる。
【0012】
この捲縮糸のトータル繊度は、好ましくは10〜200デニールであり、さらに好ましくは50〜150デニールの範囲である。10デニールより細くなるとワイピング性能が劣り、200デニール撚り太いと嵩高になりすぎる傾向があるる。
【0013】
また本発明では、仮ヨリ加工等の捲縮加工により極細繊維に捲縮を付与することにより、1本1本の単繊維配列が乱れ、構成繊維の表面積が大きく作用することになり、しかも空隙率が大きくなる。加えて、毛細管現象により水分吸収能が増加され、織編物の拭き取り性、吸水性および嵩高性が満足される。極細繊維が捲縮されない場合は、1本1本の単繊維配列は乱れていないため、織物の嵩高性が小さくなり、拭き取り性、嵩高性および吸水性が低下する。この捲縮糸は、本発明の合成繊維マルチフィラメント複合糸の主に表層部を構成し、ワイピング機能に直接寄与する。
【0014】
極細繊維への捲縮は、脱海または分割する前の極細化可能な複合糸原糸に、仮ヨリ加工等を捲縮処理を施すことによって付与することができ、仮ヨリ加工の場合、通常2500〜4000回転/mの仮ヨリをかけ、好ましくは180〜200℃の温度で熱処理することによって行なわれる。
【0015】
また、本発明で用いられる捲縮糸の伸張率(捲縮率)は、好ましくは15〜50%、より好ましくは25〜40%である。
【0016】
次に、本発明の他の極細繊維からなる生糸は、単繊維繊度が0.1デニール以下であり、さらに好ましくは捲縮を有する極細繊維からなる捲縮糸と同等またはそれ以上0.1デニール以下の単繊維繊度である。ここにおいて生糸とは、前記の捲縮糸に対する言葉として用いられる。
【0017】
この生糸は、ワイピング素材として作用するとともに本発明の合成繊維マルチフィラメント複合糸の中層部を構成し、空隙率の拡大と塵埃の捕獲に寄与する。この生糸のトータル繊度は好ましくは40〜120デニールであり、1本または2本以上引き揃えて用いられる。この生糸の収縮率は、捲縮糸の収縮率よりも高いことが好ましい。
【0018】
本発明の合成繊維マルチフィラメント複合糸を構成する残りの高収縮糸は、単繊維繊度が0.5〜7.0デニール、好ましくは1.0〜3.0デニールの範囲であり、ワイピング素材としての機能効果は少ないが、合成繊維マルチフィラメント複合糸の芯部を主に構成し、収縮により織編物の空隙率を拡大する働きをするとともに、さらに寸法安定性にも大きく寄与する。単繊維繊度が0.5デニール未満では複合糸にコシがなく、また7.0デニールを超える場合には繊維の風合いが硬くなる。
【0019】
本発明の高収縮糸としては、ポリエチレンテレフタレート系、ポリアミド系およびポリアクリルニトリル系合成繊維からなる公知の高収縮糸が用いられる。かかる高収縮糸の収縮の程度は、沸騰水収縮率で12〜25%のものが好ましく用いられる。ここに、沸騰水収縮率とは、繊維を沸騰水中で処理した後の収縮率をいう。またこの高収縮糸のトータル繊度は、好ましくは30〜60デニールの範囲ものが好ましく、本発明の複合糸に占める割合は10〜20重量%程度が好ましい。
【0020】
本発明のワイピングクロスを構成する織編物は、この極細繊維からなる生糸と、極細繊維からなる捲縮糸および高収縮糸からなり、これらの三者が複合一体化した合成繊維マルチフィラメント複合糸で構成されている。このように合成繊維マルチフィラメント複合糸は、三者が複合一体化されているため、それぞれに糸長差をもたせることにより、それらの特徴をより強調させることができる。
【0021】
例えば、本発明の極細繊維からなる生糸と極細繊維からなる捲縮糸の糸長差は、好ましくは5〜15%であり、より好ましくは8〜12%の範囲である。極細繊維からなる生糸と捲縮糸の糸長差が5%未満の場合には、嵩高不足の織編物となり、また糸長差が15%を超える場合には布帛の表面品位が悪くなる傾向を示す。
【0022】
また、本発明の極細繊維の生糸と高収縮糸との糸長差は、好ましくは8〜20%であり、より好ましくは10〜15%の範囲である。極細繊維の生糸と高収縮糸との糸長差が8%未満の場合には、やはり嵩高不足の織編物となり、また20%を超える場合には布帛の表面品位が悪いくなる傾向を示す。
【0023】
本発明の合成繊維マルチフィラメント複合糸においては、捲縮糸を構成する極細繊維は、編織物の表面に現れており、嵩高性を増加させる。それ故、拭き取り性向上に直接効果的に作用する。また高収縮糸は、合成繊維マルチフィラメント複合糸の芯部を構成し、布帛の寸法安定性を向上させるとともに空隙率拡大に寄与する。さらに生糸は、上記捲縮糸と高収縮糸の中層部を構成して、織編物を嵩高にし、空隙率を拡大するとともに塵埃の捕獲に効果的に作用する。
【0024】
本発明の合成繊維マルチフィラメント複合糸における各繊維の割合は、主に最外層部を構成する極細捲縮糸は40重量%以上、主に中層部を構成する極細生糸は20%重量以上、さらに最内層部を構成する高収縮糸は10重量%以上であることが好ましい。より好ましくは、捲縮糸40〜60重量%、生糸20〜40重量%、高収縮糸10〜30重量%であり、特に捲縮糸50:生糸30:高収縮糸20の近辺の割合が塵埃の捕獲効果が高い。
【0025】
また、合成繊維マルチフィラメント複合糸としてのトータル繊度は、通常では80〜350デニールの範囲が好ましく用いられ、ワイピングクロスを構成する織密度、および目付により適宜選択される。
【0026】
このように本発明の複合糸は極細繊維の捲縮糸、極細繊維の生糸および高収縮糸の三種類からなることを基本とするが、四種類以上の繊維を混用しても何ら差し支えない。製造の複雑さなどの問題を除けば、むしろ嵩高性などの点で好ましいことがある。
【0027】
上記三種類の糸の複合の手段としては、引き揃え、撚糸および交絡などが挙げられるが、空気等による流体交絡処理が好ましい。
【0028】
本発明の織編物は、合成繊維マルチフィラメント複合糸を経緯糸に用いて織製されるが、本発明の効果を妨げない範囲で、さらに他の繊維、糸条等を混繊させることができる。具体的には、本発明の織物は、前述の三種類の繊維を複合した複合糸の他に1種類または2種類以上の糸条を経緯糸に併用することができる。例えば、経糸には寸法変化の少ないポリエステル繊維やポリアミド繊維糸条などを併用することができる。
【0029】
本発明のワイピングクロスを構成する織編物の組織は、平織り、綾織りおよび朱子織りなどいずれでもよいが、極細繊維糸使いの織物特有の地薄さをなくし、嵩高にし、吸水性と作業性をよくするためには、好ましくは綾織り、特に好ましくは二重織りであることが望ましい。
【0030】
このようにして得られる本発明の織編物の剛軟度は、上述のように10〜50mmが好ましい。さらには20から30mm程度のものがより好ましい。
【0031】
本発明のワイピングクロスの目付は、100〜300g/m2であり、好ましくは150〜250g/m2である。100g/m2以下では嵩高性に欠け、吸水性も悪くなる。また300g/m2以上では嵩高になりすぎ、作業性が悪くなる。
【0032】
本発明の合成繊維マルチフィラメント複合糸からなる織編物は、後述する海成分除去加工または染色加工等の製造過程における高温下での処理によって、収縮率の差から糸長差を制御することが可能である。
【0033】
本発明のワイピングクロスは、その吸水速度がタテ/ヨコ方向とも100mm以上であることが好ましく、これによって対象物に残された水分を素早く吸収することが可能であり、水拭きでの使用でも優れた性能を有する。これは、本発明のワイピングクロスが糸長差の異なる3種の合成繊維、すなわち極細繊維からなる生糸と捲縮糸および高収縮糸を複合せしめた合成繊維マルチフィラメント複合糸からなる織編物であり、織編物が嵩高で繊維の空隙率が大きく、毛細管現象による優れた吸水性をもつことによる。本発明のワイピングクロスの上記吸水速度は、JIS L−1096 6.26.1B法(バイレック法)で測定される。
【0034】
次に本発明のワイピングクロスの製造方法を例示するが、本発明のワイピングクロスは、この製造方法により得られたものに限定されない。
【0035】
まず、極細繊維製造用として、溶解性の異なる2種のポリマーからなる海島型複合繊維糸を用意し、一つはそれを生糸のまま、他の一つは仮ヨリ加工により捲縮加工を施す。さらにこれらとは別に、例えば、ポリエステル共重合体等からなる高収縮糸を用意する。次に、これら三者を引きそろえ、必要に応じ適宜糸長差を付与して、複合糸形態の原糸とする。次いで、この原糸を経緯糸に用いて綾織り等に織製した後、海島型複合繊維の一性分を溶媒で除去し、極細繊維化する。
【0036】
本発明の極細繊維を含むワイピングクロスは、このように海島型複合繊維を用いて織製した織物を、化学的剥離、物理的剥離、溶解除去などの方法で処理し構成繊維を極細繊維化した織編物を作製し、通常の染色・仕上げ加工をすることにより得ることができる。なお、ワイピングクロスとしては、織編物の表面あるいは内部で極細繊維の単繊維同士を絡ませることが好ましく、本発明のワイピングクロスは特にウォータージェットパンチ加工などをしなくても十分に繊維同士が絡合し合っているが、本発明において絡合をより効果的に付与する手段としてウォータージェットパンチ加工などをすることは好ましい態様である。
【0037】
本発明ではさらに性能向上のため、染色加工や柔軟加工でポリアルキレングリコール系化合物、水溶性ポリエステルなどの親水化剤、ポリアクリル酸エステルなどの防汚剤およびカチオン系高分子活性剤などの分散剤など各種化学薬品を使用することも可能である。しかしながら、食器、グラスなどの直接人体内部への接触の可能性がある用途については、安全上、薬品や仕上げ剤の使用は避けるべきである。本発明のワイピングクロスはこの種の薬品、仕上げ剤を使用しなくても織物自体で十分に優れた拭き取り性、吸水性、ソフトな風合いを有する。
【0038】
【実施例】
以下、実施例に基づいて本発明を詳細に説明する。なお、評価は下記の評価方法で行なった。
【0039】
[剛軟度]
剛軟度はJIS L1096に準じて、次の方法によって測定した。2cm×15cmの試験片をタテ・ヨコ方向にそれぞれ5枚採取し、一端が45度の傾斜をもったカンチレバー型試験器を用いて、試験片の一端の短辺を試験器の傾斜面のスケールの基線に合わせる。次に、試験片を傾斜の方向に緩やかに滑らせて試験片の一端が傾斜面と接したときの他辺の位置をスケールで正確に読みとる。試験片を滑らせた長さ(mm)を剛軟度として、タテ・ヨコそれぞれ5枚の平均値で表す。
【0040】
[拭き取り性の評価] シリコーンオイルSH200(東レ・ダウコーニング・シリコーン株式会社製)を注射針で約5mgガラス板上に落とし、直径45mm、重さ1kgの円柱状荷重の一端面に厚さ約1mm相当の織物を介して固定し、試料(ワイピングクロス)をガラス板上に乗せ、1m/分の速度で移動させ、シリコーンを拭き取る。次に、乾式複写機用トナー(SF−76T:シャープ株式会社製)をガラス板上に振りかけ、そのトナーを圧縮空気(1kg/cm2)で吹き飛ばす。ガラス板表面にセロハンテープ(積水化学工業株式会社製)を貼り付けてガラス板上の残留トナーを取り、セロハンテープに付着したトナーの程度を判定する。トナーが全く付着しないもの(ガラス板のシリコーンを完全に拭き取ったもの)を5級、トナーが極めて多量に残るものを1級として、5段階で肉眼判定をした。
【0041】
[風合い」 感触による官能評価を行なった。
【0042】
[吸水性における吸水速度」 JIS L−1096 6.26.1B法(バイレック法)で行なった。
【0043】
[毛羽落ち] 肉眼観察により判定した。
【0044】
(実施例1)
海島型複合繊維として、トータル繊度100デニール、18フィラメント(70島/フィラメント)の海島型ポリエステル複合繊維で、島成分がポリエチレンテレフタレートで、海成分がポリエステルの酸成分としてテレフタル酸と5−ナトリウムスルホイソフタル酸の共重合体からなるアルカリ熱水可溶型ポリエステルからなる繊維(海島の比率は10/90)を用いた。この海島型複合繊維を仮ヨリ加工(仮ヨリ数:3000T/M、温度:180℃)により捲縮させ、同じくトータル繊度100デニール、18フィラメントの上記と同じ組成の海島型複合繊維の生糸と、さらにトータル繊度50デニール、24フィラメント、単繊維繊度2.1デニールである沸騰水収縮率21.0%のポリエステル高収縮糸を引き揃え(各糸長差は、高収縮糸1に対して極細繊維の生糸が1.2、極細繊維の捲縮糸が1.5)、流体交絡処理(オーバーフィード率:1%、空気圧3.5kg/cm2)し、合成繊維マルチフィラメント複合原糸を得た。この複合原糸をタテ糸/ヨコ糸にそれぞれ使用し、2/2の綾織りの織物(生機)を織製した。この生機を130℃で30分間マレイン酸処理することにより、海島型複合繊維の海成分を脆化させた後、80℃で45分間水酸化ナトリウムで処理することにより、その海成分を完全に除去して、生糸と捲縮糸の単繊維繊度がともに0.06〜0.07デニールの極細繊維を含む織物を作製した。次に、これを通常の方法で層部を、そして22.5重量%の分散染料で染色した。乾燥後、160℃でヒートセットしてワイピングクロスを製造した。得られた織物は、49.0重量%の捲縮糸が主に外層部を、28.5重量%の生糸が主に中高収縮糸が主に内層部からなる合成繊維マルチフィラメント複合糸で構成されており、その目付は225g/m2であった。拭き取り性等の評価結果を表1に示す。
【0045】
(比較例1)
綿100%のワイピングクロス(組織は平織り)を使用した。使用綿糸の単繊維繊度をデニールで表すと、タテ1.60デニール、ヨコ1.53デニールであった。また、目付は210g/m2であった。拭き取り性等の評価結果を表1に示す。
【0046】
(比較例2)
海島型複合繊維として、トータル繊度100デニール、18フィラメント(70島/フィラメント)の海島型ポリエステル複合繊維で、島成分がポリエチレンテレフタレートで、海成分がポリエステルの酸成分としてテレフタル酸と5−ナトリウムスルホイソフタル酸の共重合体からなるアルカリ熱水可溶型ポリエステルからなる繊維(海島の比率は10/90)を用いた。この海島型複合繊維を捲縮させず生糸のままで2本引き揃えた糸条を、タテ糸とヨコ糸にそれぞれ使用し、2/2の綾織りの織物を織製した。この織物を実施例1と同様に加工して海成分を除去し、単繊維繊度0.06〜0.07デニールの極細繊維からなる織物を作製した。これを実施例1と同様の方法で染色仕上げ加工した。得られた織物の目付は185g/m2であった。拭き取り性等の評価結果を表1に示す。
【0047】
(比較例3)
海島型複合繊維の代わりに、トータル繊度100デニール、48フィラメント、単繊維繊度2.1デニールの普通ポリエステル繊維を用いた。この普通ポリエステル繊維のフィラメント糸を仮ヨリ加工(仮ヨリ数:3000T/M、温度:180℃)により捲縮させ、同じくトータル繊度100デニール、48フィラメント、単繊維繊度2.1デニールの普通ポリエステルフィラメント糸の生糸と、トータル繊度50デニール、24フィラメント、単繊維繊度2.1デニールである収縮率21.0%のポリエステル高収縮糸を引き揃え、流体交絡処理(オーバーフィード率:1%、空気圧3.5kg/cm2)し複合糸を得た。この複合糸をタテ糸およびヨコ糸にそれぞれ使用し、2/2の綾織りの織物を織製した。この織物を通常のリラックス精錬・染色加工した。得られた織物の目付は255g/m2であった。拭き取り性等の評価結果を表1に示す。
【0048】
上記のように、実施例1の織物は、拭き取り性と吸水性に優れており、毛羽落ちは全く見られなかった。実際にグラスを拭いてみるとグラスに良く密着して、すぐに曇り汚れを取り除くことができた。また水拭き時にも、拭き跡は全く残らなかった。
【0049】
比較例1は、拭き取り性、吸水性ともに悪く、実際にグラスを拭いてみると、何度も繰り返さないと曇り汚れを取り除くことはできなかった。また自己発塵した毛羽落ちが多く見られた。
【0050】
比較例2は、毛羽落ちは見られなかったものの、実施例1に比べ拭き取り性、吸水性において劣り、水拭き時には拭き跡が残った。実際にグラスを拭いてみると、布帛にボリュームがないため、拭き取り作業性も悪かった。
【0051】
比較例3は、拭き取り性・吸水性ともに悪く、実際グラスを拭いてみると、何度も繰り返さないと曇り汚れを取り除くことはできなかった。また自己発塵した毛羽落ちが少し見られた。
【0052】
【発明の効果】
以上のような構成としたことにより、本発明のワイピングクロスは、貴金属、食器、家具、自動車、OA機器、楽器、ガラス製品、ショーケース、ショーウインドウおよび鏡などに付着したした指紋や油汚れを、薬品を付与することなく乾・水拭き除去することが可能であるだけでなく、自己発塵を起こさず、嵩高性と吸水性があり、ソフトな風合いで作業性がよいために、特にガラス製品などの乾拭きにおいて従来にない優れたワイピング性能を示す。
特に、本発明によれば、糸長差のある極細繊維の生糸と極細繊維の捲縮糸と高収縮糸とを交絡させた合成繊維マルチフィラメント複合糸を用いることにより、吸水性・嵩高性・拭き取り性効果に優れたワイピングクロスが得られる。
Claims (8)
- 単繊維繊度が0.1デニール以下の極細繊維からなる生糸と、単繊維繊度が0.01〜0.1デニールの捲縮を有する極細繊維からなる捲縮糸と、単繊維繊度が0.5〜7.0デニールの高収縮糸との合成繊維マルチフィラメント複合糸で構成された、目付100〜300g/m2の織編物からなることを特徴とするワイピングクロス。
- 前記生糸と該捲縮糸の糸長差が5〜15%であり、かつ該生糸と該高収縮糸の糸長差が8〜20%であることを特徴とする請求項1記載のワイピングクロス。
- 前記合成繊維マルチフィラメント複合糸に占める極細繊維の割合が生糸20重量%以上、捲縮糸40重量%以上であることを特徴とする請求項1または2記載のワイピングクロス。
- 前記合成繊維マルチフィラメント複合糸において、該捲縮糸が主に外層部を、該生糸が主に中層部を、該高収縮糸が主に内層部をそれぞれ構成していることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のワイピングクロス。
- 前記高収縮糸の沸騰水収縮率が12〜25%であることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載のワイピングクロス。
- 前記織編物の剛軟度が10 〜50mmであることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載のワイピングクロス。
- 前記織編物の吸水速度が、タテ・ヨコ方向とも100mm以上であることを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載のワイピングクロス。
- 前記ワイピングクロスがガラス製品の乾拭き仕上げとして使用されることを特徴とする請求項1〜7のいずれかに記載のワイピングクロス。
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