JP3609310B2 - 能動型防振装置を用いたエンジン支持機構 - Google Patents
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Description
【技術分野】
本発明はエンジンユニットを所定の支持体に対して防振支持せしめるエンジン支持機構に係り、特に支持体側に伝達される振動に応じて防振特性を能動的に制御するようにした能動型防振装置を用いたエンジン支持機構に関するものである。
【0002】
【背景技術】
従来から自動車におけるエンジンユニットの支持機構等においては、エンジンユニットの支持体による支持部位に防振装置を装着することによって、エンジンユニットを支持体側に防振支持せしめた支持機構が採用されている。また、近年ではより高度な防振性能を得るために、加振手段を備えた能動型防振装置を用い、支持体側に及ぼされる振動荷重に対応した加振力を生ぜしめることによって、伝達される振動を積極的乃至は相殺的に低減せしめるようにしたエンジン支持機構が開発され検討されている。
【0003】
ところで、このようなエンジン支持機構に用いられる従来の能動型防振装置においては、一般に防振装置において1箇所に設けられた支持体側への取付部位に、荷重センサなどの振動センサを装着せしめてその検出信号に基づいて加振手段を制御するようになっている。しかしながら、このような従来の能動型防振装置においては防振装置に及ぼされる支持荷重や振動荷重がそのまま全て一つの振動センサに及ぼされるために、振動センサに対する入力荷重やその変動幅が非常に大きく振動センサの強度や出力特性が安定して得られ難く、また、大型で高価な振動センサが必要となる等といった問題があった。
【0004】
なお、特開平8−145114号公報には、加振手段と支持体への取付部材との間に振動センサとしての荷重センサを装着することによって、荷重センサへの入力荷重を低減せしめた構造の防振装置が提案されているが、このような防振装置においては、荷重センサを防振装置の内部に組み込む必要があるために構造が複雑で製造が難しいなどという問題があったのである。
【0005】
【解決課題】
ここにおいて、本発明は、上述の如き事情を背景としてなされたものであって、その解決課題とするところは、振動センサによる伝達振動の検出精度を損なうことなく、振動センサへの入力荷重とその変動幅が軽減されると共に、振動センサを容易に装着することが出来る新規な構造の能動型防振装置を用いたエンジン支持機構を提供することにある。
【0006】
また、本発明は、エンジンユニットにおけるロール方向の入力振動に対して優れた防振効果を得ることが出来、例えば自動車用エンジンの支持機構に適用することにより、アイドリング振動に対して優れた防振効果を得ることの出来る、新規なエンジン支持機構を提供することも、解決すべき課題とする。
【0007】
【解決手段】
以下、このような課題を解決するために為された本発明の態様を記載する。なお、以下に記載の各態様における構成要素は、可能な限り任意の組み合わせで採用可能である。また、本発明の態様及び技術的特徴は以下に記載のものに限定されることなく、明細書全体及び図面に記載され或いはそれらの記載から当業者が把握することの出来る発明思想に基づいて、認識されるものであることが理解されるべきである。
【0008】
先ず、請求項1に記載された本発明の第一の態様は、第一の取付部材と第二の取付部材を本体ゴム弾性体で連結する一方、それら第一の取付部材と第二の取付部材の間に加振力を及ぼし得る加振手段を設けた能動型防振装置を用い、前記第一の取付部材をエンジン側に取り付けると共に、前記第二の取付部材を支持体側に取り付けることにより、エンジンユニットを支持体に防振支持せしめる一方、前記支持体側に振動センサを設けて、該振動センサの検出信号に基づいて前記加振手段を制御するようにしたエンジン支持機構において、前記能動型防振装置を前記エンジンユニットの慣性主軸に対して少なくとも鉛直方向に偏倚した位置に配する一方、かかる能動型防振装置における前記第二の取付部材に、前記能動型防振装置の弾性中心軸に対して側方に延び出す張出部を設けて、該張出部における複数箇所で該第二の取付部材を前記支持体に対してボルト固定すると共に、それら複数のボルト固定箇所のうち、能動型防振装置の弾性中心軸を含んで前記エンジンユニットの慣性主軸と平行に広がる面に最も近い一箇所だけに、前記振動センサとしての荷重センサを共締めして装着したことを特徴とする能動型防振装置を用いたエンジン支持機構を、特徴とする。
【0009】
このような本態様に従う構造とされたエンジン支持機構においては、防振装置によるパワーユニットの分担支持荷重が、張出部に設けられた複数のボルト固定部位において分担して支持せしめられるのであり、その一つのボルト固定部位に荷重センサを装着したことにより、荷重センサに入力される荷重やその変動幅が低減されるのであり、その結果、荷重センサにおける耐久性や振動の検出精度の向上が図られる。しかも、荷重センサは能動型防振装置の外部において、支持体への取付部位にボルト固定されて装着されることから、荷重センサを防振装置内部に組み込む必要がないのであり、防振装置の構造が簡略化されると共に、防振装置に荷重センサを容易に装着することが出来る。
【0010】
また、本態様に従う構造とされたエンジン支持機構においては、能動型防振装置をエンジンユニットの慣性主軸に対して特定位置に配したことに加えて、該能動型防振装置の支持体に対する複数のボルト固定箇所のうち特定の箇所だけに荷重センサを装着したことにより、ただ一つの荷重センサによって、鉛直方向に入力される振動荷重だけでなく、エンジンユニットの略慣性主軸回りに及ぼされるロール反力などによる振動荷重に対しても、優れた検出精度を得ることが出来るのである。それ故、かかる荷重センサの検出信号に基づいて能動型防振装置の加振手段を制御することにより、鉛直上下方向だけでなくロール方向の入力振動に対しても優れた防振効果を得ることが出来るのである。
【0011】
なお、本態様において、第二の取付部材の支持体に対するボルト固定箇所における荷重センサの取付構造は張出部と支持体の間に荷重センサを介在せしめてエンジンユニットの支持荷重が荷重センサに入力される態様であっても良く、或いは張出部を挟んで支持体と反対側に荷重センサを配設することにより、エンジンユニットの支持荷重が荷重センサに及ぼされない態様で配設するようにしても良い。また、張出部における支持体へのボルト固定箇所の数は特に限定されるものではないが一般に2〜5箇所が設定される。また、本態様において採用される荷重センサとしては、ロードセルや磁歪式センサ等を採用することも可能であるが、特にピエゾ素子等の公知の圧電素子を利用したものが好適に採用される。更に、本態様は、自動車用エンジンユニットの支持機構に対して特に有利に適用されるものであって、クランクシャフトが車両の前後方向に配設された縦置き型のエンジンと、クランクシャフトが車両の横方向に配設された横置き型のエンジンの何れにも適用可能である。
【0012】
また、本態様は、防振装置がエンジンユニットの重心よりも鉛直下方に配設される下側支持タイプのエンジン支持機構の他、エンジンユニットの重心位置よりも鉛直上方に防振装置が配設される吊下げタイプのエンジン支持機構にも適用可能である。
【0013】
さらに、本態様における加振手段としては、発生加振力の制御を容易に且つ高精度に行うために、電気信号によって加振制御が可能なものが望ましく、例えば、磁歪素子や電歪素子を用いたアクチュエータ、または空気圧式のアクチュエータなども採用可能であるが、特に好適には、電磁力乃至は電磁石による力を利用したものが好適に採用され、例えば、ムービングマグネット型やボイスコイル型のアクチュエータが有利に採用される。
【0014】
また、能動型防振装置の具体的な構造は特に限定されるものでなく、例えば、特公平3−10818号公報に記載の如く、加振手段による加振力を、本体ゴム弾性体を介して第一の取付部材と第二の取付部材の間に直接に及ぼす構造のものや、或いは、特開昭61−2939号公報に記載の如く、壁部の一部が本体ゴム弾性体によって構成されて非圧縮性流体が封入された流体室の壁部の一部を加振手段によって加振せしめることにより、加振手段による加振力を封入された非圧縮性流体を介して第一の取付部材と第二の取付部材の間に及ぼすようにした流体封入式の能動型防振装置を用いることも可能である。更にまた、能動型防振装置の弾性中心軸は、一般に略鉛直方向に延びるように配設されることとなるが、傾斜して配設していても良い。特に、下側支持タイプのエンジン支持機構においては、弾性中心軸がエンジンユニットの慣性主軸方向に延びるように傾斜して配設する態様が、好適に採用され得、それによって、エンジンユニットの水平方向の支持剛性が向上されると共に、ローリング方向のバネ定数を小さくして、防振性能の向上、即ち振動絶縁性の更なる向上を図ることも可能となる。なお、能動型防振装置の弾性中心軸は、主たる振動の略入力方向となるように配設されることとなり、一般に、防振装置における弾性主軸の方向とされる。
【0015】
また、請求項2に記載された本発明の第二の態様は、前記第一の態様において、前記エンジンユニットと前記支持体の間における複数箇所に前記能動型防振装置を配設すると共に、それら各能動型防振装置に対して、それぞれ、前記荷重センサを装着して、各能動型防振装置を、それに装着した荷重センサの検出信号に基づいて独立的に制御するようにしたことを、特徴とする。このような本態様に従う構造とされたエンジン支持機構においては、それぞれの防振装置において、能動的な防振効果が有利に発揮されるのであり、それによってエンジン支持機構全体としての防振性能がより一層向上される。
【0016】
また、請求項3に記載された本発明の第三の態様は、前記第一又は第二の態様に従う構造とされたエンジン支持機構において、前記能動型防振装置を複数用い、前記エンジンユニットにおける慣性主軸を水平方向で挟んだ両側において、それぞれ、該慣性主軸に対して鉛直方向に偏倚した位置に配設したことを、特徴とする。このような本態様に従う構造とされたエンジン支持機構においては、慣性主軸を挟んだ両側に防振装置を配設したことによって、エンジンユニットを一層安定して支持することが出来、振動の連成的にも有利となる。なお、本態様においては、慣性主軸を水平方向に挟んだ両側で防振装置を略対称的に配設することが望ましく、それによって、より安定的なエンジン支持機構が実現される。
【0018】
【発明の実施形態】
以下、本発明を更に具体的に明らかにするために、本発明の実施形態を、図面を参照しつつ、詳細に説明する。
【0019】
先ず、図1及び図2には、本発明の一実施形態としての自動車用エンジンユニットの支持機構が概略的に示されている。これらの図中、10はエンジンユニットであり、内燃機関からなるエンジン12と、変速機14を含んで構成されている。そして、このエンジンユニット10が、複数箇所において、それぞれエンジンマウントを介して、ボデー18に防振支持されている。なお、本実施形態のエンジン支持機構は、エンジンマウントが、エンジンユニット10の重心:Gよりも鉛直下方に配設された下側支持タイプとされている。なお、以下の説明中、上下方向とは、原則として図中の上下方向を言うものとする。
【0020】
より詳細には、エンジンユニット10をボデー18に弾性支持せしめるエンジンマウントとして、本実施形態では、エンジン12を両側部分で支持せしめる二つの能動型マウント16,16と、図示はされていないが変速機14の略中央下面を支持せしめる一つのソリッドタイプのゴムマウントが採用されている。
【0021】
そこにおいて、能動型マウント16は、図3に拡大して示されているように、第一の取付部材としての第一の取付金具20と、第二の取付部材としての第二の取付金具22が、それらの間に介装された本体ゴム弾性体24によって弾性的に連結された構造とされている。第一の取付金具20は、円板形状を有しており、その中央上面には、軸方向上方に向かって突出する取付ボルト26が固設されている。また、第二の取付金具22は、上方に向かって開口する有底円筒形状とされており、第一の取付金具20と同一の中心軸上で下方に離間位置して配設されている。更にまた、第二の取付金具22における筒壁部の下端外周面には、径方向外方に向かって広がる略円環板形状の張出部28が一体形成されており、この張出部28に対して、複数個(本実施形態では3個)の取付孔30が、相互に周方向で所定間隔を隔てて形成されている。また、本体ゴム弾性体は、円錐台形状を有しており、その小径側端面に対して第一の取付金具20の下面が重ね合わされて加硫接着されている一方、大径側端部の外周部分に対して第二の取付金具22の開口部分が加硫接着されている。なお、このような構造の能動型マウント16においては、第一及び第二の取付金具20,22の対向方向に延びる本体ゴム弾性24の弾性主軸の一つが、弾性中心軸34とされる。
【0022】
さらに、第二の取付金具22の中空内部には、加振手段としてのアクチュエータ32が収容配置されており、このアクチュエータ32によって生ぜしめられる加振力が、本体ゴム弾性体24に対して直接及ぼされることにより、或いは内部に封入された非圧縮性流体の圧力変動乃至は流動作用を通じて本体ゴム弾性体24に及ぼされることにより、第一の取付金具20と第二の取付金具22の間に加振力が及ぼされるようになっている。なお、非圧縮性流体の封入構造としては、例えば、特開昭61−2939号公報等に記載されているように、壁部の一部が本体ゴム弾性体で構成されて非圧縮性流体が封入された流体室を形成すると共に、該流体室の壁部の別の一部を変位可能な加振板で構成せしめて、該加振板をアクチュエータで加振するようにした構造等が採用され得る。
【0023】
また、アクチュエータとしては、例えば、コイルへの通電によって生ぜしめられる電磁力乃至はローレンツ力に基づいて、通電電流の大きさと周波数に対応した大きさと周波数の加振力を生ぜしめ得る、電磁式アクチュエータ等が好適に採用される。
【0024】
このような構造とされた能動型マウント16は、その弾性中心軸34が略鉛直方向となる状態で、エンジンユニット10とボデー18の間に装着されている。即ち、エンジンユニット10には、重心:Gを通って略トルクロール軸方向に延びる慣性主軸36を挟んだ両側において、慣性主軸36よりも鉛直下方で略水平方向に張り出して延びる一対の取付ブラケット38,38が固設されている一方、ボデー18には、各取付ブラケット38に対応する位置に略水平な取付座面40が形成されている。そして、エンジンユニット10側の取付ブラケット38が、能動型マウント16における第一の取付金具20の上面に重ね合わされて、取付ボルト26によってねじ止め固定されている。また、ボデー18側の取付座面40には、能動型マウント16における第二の取付金具22の張出部28が重ね合わされて、各取付孔30に挿通された複数本の固定ボルト42によってねじ止め固定されている。
【0025】
また、二つの能動型マウント16,16は、エンジンユニット10に対して、その慣性主軸36を含む鉛直面を挟んだ両側で略対称的に配設されている。即ち、エンジンユニット10には、車両走行時に路面凹凸等に起因する略鉛直方向の振動荷重が生ぜしめられると共に、そのトルク変動に伴う振動荷重が略慣性主軸に近いトルクロール軸回りに生ぜしめられるのであり、これらの振動荷重が各能動型マウント16に及ぼされるようになっている。要するに、一対の能動型マウント16,16は、慣性主軸36を含む鉛直平面に対して、水平方向両側にそれぞれ所定距離だけ離間して配設されていると共に、慣性主軸36を含む略水平平面に対して、鉛直下方にそれぞれ所定距離だけ離間して配設されているのである。
【0026】
それ故、このような位置に配設された各能動型マウント16には、エンジン12の作動時において、エンジンユニット10の分担支持荷重の他、エンジン振動や走行振動が入力されることとなるが、特に、エンジン12の作動に関連する大きな振動荷重としてのトルク変動によるロール振動荷重:Fr が、図1に示されているように、エンジンユニット10の慣性主軸36を略中心とする回転方向に生ぜしめられて、各能動型マウント16に対して傾斜方向に入力されることとなる。
【0027】
また、このようにして装着された各能動型マウント16には、第二の取付金具22のボデー18への取付部位に対して一つの荷重センサ44が組み付けられている。この荷重センサ44は、圧電素子等を用いて形成されており、円環形状乃至は円筒形状を有している。そして、第二の取付金具22の張出部28の下面に重ね合わされて、3つの取付孔30の一つを固定する固定ボルト42に外挿されることにより、第二の取付金具22(張出部28)とボデー18(取付座面40)の間に介装されて締め付け固定されている。なお、3つの取付孔30の残りの二つを固定する固定ボルト42には、荷重センサ44と略同一形状のスペーサリング46が装着されて、張出部28の支持面が高さ合わせされている。
【0028】
そして、この荷重センサ44による検出信号に基づいて、能動型マウント16にコントローラ48から給電される電流を調節してアクチュエータ32を制御することにより、振動に対応した周波数と位相、大きさを有する加振力をエンジンユニット10とボデー18の間に及ぼしめ、以て、ボデー18側の振動を能動的乃至は相殺的に低減せしめるようになっている。即ち、コントローラ48において、エンジン12の点火信号等のようにエンジン振動に対応する周波数や位相を有する参照信号を利用し、センサ出力に基づいて振幅(発生加振力)を調節することによって、能動型マウント16を加振制御するようになっているのである。なお、コントローラ48における具体的な作動プログラムは、例えば特開平8ー145114号公報等に記載の公知の手法が適宜に採用可能であり、特に限定されるものではないが、例えば、コントローラ48において適応制御を採用し、荷重センサ44の出力が可及的に小さくなるように、フィルタ係数を書き換えることによって、フィードバック的な制御を行なうことが可能である。
【0029】
ここにおいて、本実施形態では、荷重センサ44が、第二の取付金具22に固設された張出部28における周上に設定された3つのボルト固定部位のうち、一箇所のみに設置されており、しかも、その設置箇所が、能動型マウント16における弾性中心軸34を含んでエンジンユニット10の慣性主軸36と平行に延びる面50に最も近い位置に選択設定されている。特に、本実施形態では、図2に明示されているように、第二の取付金具22の張出部28における3つのボルト固定部位(取付孔30)が、かかる張出部28の周上で、かかる面50から最も離れた位置に二箇所と、かかる面50上の位置に一箇所設定されており、この面50上のボルト固定部位(取付孔30)に対して荷重センサ44が装着されている。
【0030】
上述の如き構造とされたエンジン支持機構においては、各能動型マウント16に対してロール振動荷重:Fr が入力されるが、図4に示されているように、ロール振動荷重:Fr は能動型マウント16の弾性中心軸34に対する傾斜方向に入力されることとなる。それ故、かかるロール振動荷重:Fr は、弾性中心軸34に沿って延びる軸方向の振動荷重:Fv と、軸直角方向の振動荷重:Fh の二つに分力することが出来る。そして、第二の取付金具22(張出部28)のボデー18(取付座面40)への連結固定部においては、軸方向の振動荷重:Fv が面圧方向の荷重として作用せしめられる一方、軸直角方向の振動荷重:Fh がモーメント荷重として作用せしめられることとなり、その結果、図4に示されているように、第二の取付金具22のボデー18に対する3つのボルト固定部位における振動伝達力:F1 ,F2 ,F3 の間には、能動型マウント16の弾性中心軸34を含んで慣性主軸36と平行に延びる面50に対する離間距離と方向に対応した相対的な大きさの差が生ぜしめられるのである。
【0031】
ここにおいて、本実施形態のエンジン支持機構では、能動型マウント16の弾性中心軸34を含んで慣性主軸36と平行に延びる面50に最も近い位置に荷重センサ44が設置されていることから、荷重センサ44による振動伝達力の検出に際して、モーメント荷重による影響を可及的に軽減乃至は回避することが出来るのである。即ち、ボデー18側への振動伝達力は、張出部28における3つの連結固定部の合計値であるが、かかる荷重センサ44の出力信号に基づいて能動型マウント16を制御するようにしたことによって、張出部28における3つの連結固定部の合計値に対して、最も高精度に対応した検出信号を、複雑な信号レベルの調節操作を加えることなく容易に得ることが出来るのであり、それ故、かかる荷重センサ44の検出信号に基づいて能動型マウント16を加振制御することにより、振動荷重:Fr が傾斜方向に入力されることに起因する振動荷重の検出誤差を十分に小さく抑えて、目的とする能動的な防振効果を有利に且つ安定して得ることが可能となるのである。
【0032】
例えば、エンジン振動を、一つの荷重センサ44の検出信号に基づく能動型マウント16の能動制御で軽減する際に、能動型マウント16の弾性中心軸34を含んで慣性主軸36と平行に延びる面50から大きく離間した部位に荷重センサ44を設置すると、モーメント荷重に起因して振動荷重の検出信号レベルが異常に小さくなったり(F1 )、逆に大きくなったり(F3 )するのであり、小さいセンサ出力:F1 に基づいて加振制御すると発生加振力が小さすぎて有効な防振効果が得られ難く、逆に大きいセンサ出力:F3 に基づいて加振制御すると発生加振力が大きくなり過ぎて反対に発生加振力に起因する振動が生じてしまう結果となるのであり、何れにしても、目的とする能動的防振効果を有効に得ることが極めて困難となる。これに対して、上述の如く、能動型マウント16の弾性中心軸34を含んで慣性主軸36と平行に延びる面50上かそれに近い位置に設置した荷重センサ44の検出信号に基づいて能動型マウント16を能動制御した場合には、入力振動のレベルに応じた大きさの検出信号レベルが安定して維持されて、有効な能動的防振効果が発揮されるのである。
【0033】
因みに、上述の如き構造とされたエンジンユニット支持機構において、技術的効果を検証するために行なった実験の測定結果を、図5に示す。本実験に際しては、能動型マウント16の張出部28における3つのボルト固定部位にそれぞれ荷重センサ44を装着し、エンジン12の運転状態下で、各荷重センサ44の検出信号に基づいて能動型マウント16を能動制御せしめた場合に、3つの荷重センサ44の検出レベルの合計値を測定することによって行なった。このようにして得られた測定値(3つの荷重センサの出力レベルの合計値)は、振動伝達力の大きさと考えることが出来る。なお、図5において、「制御なし」は、能動型マウント16を能動制御しなかった場合の測定値であり、「比較例1」は、図4におけるA点の荷重センサ44aの検出信号に基づいて能動型マウント16を能動制御した場合の測定値であり、「比較例2」は、図4におけるB点の荷重センサ44bの検出信号に基づいて能動型マウント16を能動制御した場合の測定値であり、「参考例」は、図4におけるA,B,Cの各点の荷重センサ44a,44b,44cの3つの検出信号の平均値に基づいて能動型マウント16を能動制御した場合の測定値である。
【0034】
かかる図5の実験結果からも、前記実施形態に従い、図4におけるC点の荷重センサ44cの検出信号に基づいて能動型マウント16を能動制御した場合には、他の比較例と大きく異なり、理想的形態と考えられる参考例に殆ど重なる程に近い防振効果を得ることの出来ることが、明らかところである。
【0035】
以上、本発明の一実施形態について詳述してきたが、これはあくまでも例示であって、本発明は、かかる実施形態における具体的な記載によって、何等、限定的に解釈されるものではない。
【0036】
例えば、前記実施形態では、慣性主軸36を含む鉛直面を挟んだ両側に配設された能動型マウント16,16について、それぞれ、荷重センサ44が装着されて、各能動型マウント16毎に能動的制御が独立的に行なわれるようになっていたが、能動型マウント16,16の相対的な配設位置や自動車ボデー18の構造等によっては、一方の能動型マウント16にだけ荷重センサを装着し、該荷重センサの検出信号に基づいて、両方の能動型マウント16を能動制御することも可能である。
【0037】
また、エンジンユニット10とボデー18の間における能動型マウント16の配設位置や配設数は、前記実施形態の記載によって、何等、限定されるものでない。
【0038】
更にまた、採用される能動型マウント16の具体的構造は、何等、限定されるものでなく、前記実施形態においては、加振手段として電磁式のものが採用されていたが、その他、例えば特開平11−241749号公報等に記載の如く、空気圧式の加振手段を備えた能動型防振装置を採用することも可能であり、その場合にも同様に、加振力(負圧力)の制御用の荷重センサの配設形態を含んで、本発明に従って有利に構成され得る。
【0039】
また、本発明においては、請求項1乃至3の何れに従う構造とされたエンジン支持機構であって、能動型防振装置として、本体ゴム弾性体によって壁部の一部が構成されて、振動が入力される流体室を形成すると共に、該流体室の壁部の別の一部を可動部材によって構成する一方、加振手段を、該可動部材を加振変位させる電磁式アクチュエータによって構成せしめて、荷重センサによる検出信号に基づいて該電磁式アクチュエータを制御して該可動部材を加振変位させることにより該流体室の圧力を介して第一の取付部材と第二の取付部材の間に加振力を及ぼすようにした能動型防振装置を適用した態様も、採用され得る。このような本態様に採用される防振装置においては、可動部材の加振によって流体室に生ぜしめられる流体の共振作用等の流動作用を利用することが出来ることから、加振手段による加振力が一層効率的に第一の取付部材と第二の取付部材との間に及ぼされることとなり、それによって、目的とする能動的な防振効果を一層有利に得ることが出来るのである。また、電磁式アクチュエータを採用したことによって、加振力をより高精度に且つ容易に制御することが出来るのである。
加えて、前記実施形態では、本発明を自動車用のエンジン支持機構に適用したものの具体例を示したが、本発明は、その他、例えば自動車以外のエンジン支持機構に対して広く適用可能であることは、勿論である。
【0040】
その他、一々列挙はしないが、本発明は、当業者の知識に基づいて種々なる変更,修正,改良等を加えた態様において実施され得るものであり、また、そのような実施態様が、本発明の趣旨を逸脱しない限り、何れも、本発明の範囲内に含まれるものであることは、言うまでもない。
【0041】
【発明の効果】
上述の説明から明らかなように、本発明に従う構造とされたエンジン支持機構においては、第二の取付部材を複数箇所で支持体に支持固定せしめると共に、それら支持固定箇所の一つだけに荷重センサを組み付けたことから、荷重センサへの入力荷重が軽減されて、荷重センサの小型化や耐久性向上が達成されるのであり、しかも、荷重センサの組み付け位置を、特定の最適位置に設定したことによって、目的とする能動的な防振効果を有利に且つ安定して得ることが可能となるのである。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施形態としての自動車用エンジン支持機構の概略を示す正面図である。
【図2】図1における平面図である。
【図3】図1に示されたエンジン支持機構における能動型防振装置の取付部分を拡大して示す説明図である。
【図4】図1に示された能動型防振装置の取付部分における振動荷重の作用を説明するための説明図である。
【図5】図1に示されたエンジン支持機構についての防振性能の実験結果を、比較例および参考例と共に示すグラフである。
【符号の説明】
10 エンジンユニット
16 能動型マウント
18 ボデー
20 第一の取付金具
22 第二の取付金具
24 本体ゴム弾性体
28 張出部
32 アクチュエータ
44 荷重センサ
Claims (3)
- 第一の取付部材と第二の取付部材を本体ゴム弾性体で連結する一方、それら第一の取付部材と第二の取付部材の間に加振力を及ぼし得る加振手段を設けた能動型防振装置を用い、前記第一の取付部材をエンジン側に取り付けると共に、前記第二の取付部材を支持体側に取り付けることにより、エンジンユニットを支持体に防振支持せしめる一方、前記支持体側に振動センサを設けて、該振動センサの検出信号に基づいて前記加振手段を制御するようにしたエンジン支持機構において、
前記能動型防振装置を前記エンジンユニットの慣性主軸に対して少なくとも鉛直方向に偏倚した位置に配する一方、かかる能動型防振装置における前記第二の取付部材に、前記能動型防振装置の弾性中心軸に対して側方に延び出す張出部を設けて、該張出部における複数箇所で該第二の取付部材を前記支持体に対してボルト固定すると共に、それら複数のボルト固定箇所のうち、能動型防振装置の弾性中心軸を含んで前記エンジンユニットの慣性主軸と平行に広がる面に最も近い一箇所だけに、前記振動センサとしての荷重センサを共締めして装着したことを特徴とする能動型防振装置を用いたエンジン支持機構。 - 前記エンジンユニットと前記支持体の間における複数箇所に前記能動型防振装置を配設すると共に、それら各能動型防振装置に対して、それぞれ、前記荷重センサを装着して、各能動型防振装置を、それに装着した荷重センサの検出信号に基づいて独立的に制御するようにした請求項1に記載のエンジン支持機構。
- 前記能動型防振装置を複数用い、前記エンジンユニットにおける慣性主軸を水平方向で挟んだ両側において、それぞれ、該慣性主軸に対して鉛直方向に偏倚した位置に配設した請求項1又は2に記載のエンジン支持機構。
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