JP3608780B2 - 被覆層除去剤、基材の再生方法及び被覆層を有する物品の製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、有機ケイ素系被覆層又は酸化物被覆層の除去剤、この除去剤により被覆層を除去して基材を再生する方法、及び再生された基材に被覆層を設ける被覆層を有する物品の製造方法に関する。
特に本発明は、樹脂製物品に付着した不必要な硬化被膜の除去に用いる除去剤、この除去剤を用い、欠陥のある被覆層を除去して基材を再生する方法に関する。さらに、本発明は、再生した基材を再利用して、資源の有効活用と製品のコストダウンを図ることを目的とするものである。
【0002】
【従来の技術】
樹脂製物品は、軽量、透明性、易加工性等の利点を生かして多くの用途に用いられている。そして、樹脂製物品を更に高機能化する目的で、樹脂製物品に各種の表面加工を施すことが試みられている。例えば、樹脂製物品は、一般に耐磨耗性に劣る。そこで、表面硬度を上げて耐磨耗性を向上させることを目的として、その表面に有機ケイ素系の硬化被膜を施すことが行われている。また、樹脂製物品表面の光の反射を防止する目的で金属酸化物等からなる単層又は多層の反射防止膜が設られることもある。
【0003】
ところが、これらの硬化被膜や反射防止膜を形成する過程で、膜に欠陥が生じることがある。その場合、欠陥が生じた膜を除去して、基材である樹脂製物品(以下、樹脂製基材又は基材と呼ぶことがある)を再生使用できれば、コストを低減し、かつ資源を有効利用するという観点から大きなメリットがある。
【0004】
そこで従来から、樹脂製基材に付着した硬化被膜や反射防止膜を除去する方法が提案されている。例えば、フッ化水素化合物(例えばフッ化水素酸、フッ化水素アンモニウム)と過酸化水素とを含有する除去剤に、硬化被膜や反射防止膜を有する樹脂製物品を浸漬して、硬化被膜や反射防止膜を除去する方法が知られている(特開平7−149931号公報)。あるいは、硬化被膜や反射防止膜を有する樹脂製物品を酸化処理し、その後、水酸化ナトリウム等のアルカリや界面活性剤を含有したアルカリ水溶液に浸漬する方法も知られている(特公平2−36309号公報、特公平3−5227号公報)。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
フッ化水素酸やフッ化水素アンモニウムと過酸化水素とを含有する除去剤を使用する方法の場合、除去剤がフッ化水素酸と過酸化水素との組み合わせである場合には、比較的短時間で皮膜除去が可能であるが、フッ化水素酸は毒物であり、使用上、細心の注意が必要であった。また、除去剤がフッ化水素アンモニウムと過酸化水素との組み合わせである場合には、フッ化水素アンモニウムは毒物ではないが、上記組み合わせの場合に比べて処理時間が長くなるという問題があった。
【0006】
また、アルカリ及び界面活性剤を含むアルカリ水溶液に浸漬する方法は、有機ケイ素系(ポリシロキサン系)硬化被膜には、ある程度有効である。しかし、処理時間が長いという問題があった。さらには、金属酸化物膜は容易に除去できないという欠点があった。また、樹脂製基材を酸化処理した後にアルカリ水溶液へ浸漬する方法では、酸化処理工程を加えることで、工程が複雑化するという問題が生じ、かつアルカリ水溶液での除去も大幅に短縮できるものではなかった。
【0007】
そこで本発明の目的は、樹脂製基材に設けられた有機ケイ素系被覆層及び/又は酸化物被覆層を短時間に、容易かつ安全に除去できる除去剤を提供することにある。
さらに本発明の目的は、樹脂製基材に設けられた有機ケイ素系被覆層及び/又は酸化物被覆層を容易かつ安全に除去して、樹脂製基材を回収、再生する方法を提供することにある。
また、本発明の別の目的は、上記の再生された基材に、新たな被覆層を設ける被覆層を有する物品の製造方法を提供することにある。
【0008】
【問題点を解決するための手段】
そこで本発明は、フッ化水素化合物と界面活性剤とを含有することを特徴とする有機ケイ素系被覆層及び/又は酸化物被覆層の除去剤に関する。
【0009】
さらに本発明は、フッ化水素化合物と界面活性剤とを含有する水溶液に、基材上に有機ケイ素系被覆層、酸化物被覆層、又は有機ケイ素系被覆層及び酸化物被覆層を有する物品を浸漬して、前記被覆層の少なくとも一部または全部を除去することを含むことを特徴とする基材の再生方法に関する。
【0010】
また、本発明は、上記の方法により回収した基材上に、有機ケイ素系被覆層、酸化物被覆層、又は有機ケイ素系被覆層及び酸化物被覆層を設けることを特徴とする、被覆層を有する物品の製造方法に関する。
【0011】
本発明の除去剤は、フッ化水素化合物と界面活性剤とを含む水溶液である。フッ化水素化合物としては例えば、フッ化水素酸、フッ化水素アンモニウム等を挙げることができる。水溶液中のフッ化水素化合物と界面活性剤の濃度には、特に限定はないが、フッ化水素化合物は1〜30重量%の範囲であり、これに界面活性剤を適量加えるのが望ましく、例えば、0.05〜3.0重量%の範囲であることができる。本発明の除去剤は、過酸化水素の毒性を考慮して過酸化水素は含まない。
【0012】
本発明の処理剤及び基材の再生方法において除去処理対象となる膜は、有機ケイ素系被覆層及び/又は酸化物被覆層である。但し、有機ケイ素系被覆層と酸化物被覆層の両者を積層したものであっても良い。
有機ケイ素系被覆層は、例えば、下記一般式で示される有機ケイ素化合物および/若しくはその加水分解物を含むコーティング液、又は下記一般式で示される有機ケイ素化合物および/若しくはその加水分解物と酸化物微粒子とを含むコーティング液を基材上に塗布、硬化したものである。
R1 a R2 b Si(OR3)4−a−b (1)
(ここで、R1、R2はそれぞれ独立にアルキル基、アルケニル基、アリール基、またはハロゲン基、グリシドキシ基、エポキシ基、アミノ基、メルカプト基、メタクリルオキシ基若しくはシアノ基を有する炭化水素基、R3は炭素数が1〜8のアルキル基、アルコキシアルキル基、アシル基、フェニル基、またはアリルアルキル基であり、aおよびbは独立に0または1である。)
【0013】
前記一般式(1)で表される有機ケイ素化合物の具体的な代表例としては、メチルシリケート、エチルシリケート、n−プロピルシリケート、i−プロピルシリケート、n−ブチルシリケート、sec−ブチルシリケート、t−ブチルシリケート、四アセトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、メチルトリメトキシエトキシシラン、メチルトリアセトキシシラン、メチルトリブトキシシラン、メチルトリプロポキシシラン、メチルトリアミロキシシラン、メチルトリフエノキシシラン、メチルトリベンジルオキシシラン、メチルトリフエネチルオキシシラン、グリシドキシメチルトリトキシシラン、グリシドキシメチルトリエトキシシラン、α−グリシドキシエチルトリメトキシシラン、α−グリシドキシエチルトリエトキシシラン、β−グリシドキシエチルトリメトキシシラン、α−グリシドキシエチルトリエトキシシラン、α−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、β−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリプロポキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリプトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシエトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリフエノキシシラン、α−グリシドキシブチルトリメトキシシラン、α−グリシドキシブチルトリエトキシシラン、β−グリシドキシブチルトリメトキシシラン、β−グリシドキシブチルトリエトキシシラン、γ−グリシドキシブチルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシブチルトリエトキシシラン、δ−グリシドキシブチルトリメトキシシラン、δ−グリシドキシブチルトリエトキシシラン、(3,4−エポキシシクロヘキシル)メチルトリメトキシシラン、(3,4−エポキシシクロヘキシル)メチルトリエトキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリエトキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリプロポキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリブトキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシエトキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリフエノキシシラン、γ−(3,4−エポキシシクロヘキシル)プロピルトリメトキシシラン、γ−(3,4−エポキシシクロヘキシル)プロピルトリエトキシシラン、δ−(3,4−エポキシシクロヘキシル)ブチルトリメトキシシラン、δ−(3,4−エポキシシクロヘキシル)ブチルトリエトキシシラン、グリシドキシメチルメチルジメトキシシラン、グリシドキシメチルメチルジエトキシシラン、α−グリシドキシエチルメチルジメトキシシラン、α−グリシドキシエチルメチルジエトキシシラン、β−グリシドキシエチルメチルジエトキシシラン、β−グリシドキシエチルメチルジエトキシシラン、α−グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、α−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、β−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルメチルジプロポキシシラン、γ−グリシドキシプロピルメチルジブトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルメチルジメトキシエトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルメチルジフエノキシシラン、γ−グリシドキシプロピルエチルジメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルエチルジエトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルビニルジメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルビニルジエトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルフエニルジメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルフエニルジエトキシシラン、エチルトリメトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリアセトキシシラン、ビニルトリメトキシエトキシシラン、フエニルトリメトキシシラン、フエニルトリエトキシシラン、フエニルトリアセトキシシラン、γ−クロロプロピルトリメトキシシラン、γ−クロロプロピルトリエトキシシラン、γ−クロロプロピルトリアセトキシシラン、3,3,3−トリフロロプロピルトリメトキシシラン、γ−メタクリルオキシプロピルトリメトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリエトキシシラン、β−シアノエチルトリエトキシシラン、クロロメチルトリメトキシシラン、クロロメチルトリエトキシシラン、N−(β−アミノエチル)γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−(β−アミノエチル)γ−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N−(β−アミノエチル)γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−(β−アミノエチル)γ−アミノプロピルメチルジエトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、フエニルメチルジメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、フエニルメチルジエトキシシラン、γ−クロロプロピルメチルジメトキシシラン、γ−クロロプロピルメチルジエトキシシラン、ジメチルジアセトキシシラン、γ−メタクリルオキシプロピルメチルジメトキシシラン、γ−メタクリルオキシプロピルメチルジエトキシシラン、γ−メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン、γ−メルカプトプロピルメチルジエトキシシラン、メチルビニルジメトキシシラン、メチルビニルジエトキシシランなどがある。これらの有機ケイ素化合物は、1種のみならず2種以上を併用して使用することも充分可能である。
【0014】
また、前記コーティング液に含まれるる酸化物微粒子には、とくに制限はないが、例えば、ケイ素、アンチモン、チタン、アルミニウム、スズ、タングステン、ジルコニウム等が挙げられる。これらの酸化物微粒子は粒径が、例えば1〜300nmであり、該微粒子を水、有機溶媒またはこれらの混合溶媒に分散させたコロイド溶液の形で用いられる。上記酸化物微粒子は、硬化膜の屈折率、耐擦傷性を高め、さらに耐水性を向上させるためのものである。
【0015】
前記コーティング液は、反応を促進し、低温で硬化させるために、さらに硬化剤を含有することもできる。そのような硬化剤としては、たとえばアリルアミン、エチルアミン等のアミン類、またルイス酸やルイス塩基を含む各種酸や塩基、例えば有機カルボン酸、クロム酸、次亜塩素酸、ホウ酸、臭素酸、亜セレン酸、チオ硫酸、オルトケイ酸、チオシアン酸、亜硝酸、アルミン酸、炭酸などの金属塩、さらにアルミニウム、ジルコニウム、チタニウムのアルコキシドまたはこれらの錯化合物などが挙げられる。
【0016】
酸化物被覆層は、単層または2層以上の金属酸化物被覆層である。酸化物を構成する金属成分としては、例えば、アルミニウム、セリウム、ハフニウム、インジウム、ランタン、ネオヂウム、アンチモン、スカンチウム、ケイ素、タンタル、チタン、イットリウム、亜鉛、ジルコニウム等が挙げられるがこれらに限定されるものではない。さらに、酸化物被覆層は、基材上に直接設けられたものでも、前記有機ケイ素系被覆層上に施されたものであっても良い。尚、本発明で除去対象である酸化物被覆層及び有機ケイ素系被覆層は、通常欠陥品であるが、欠陥品に限定されることはなく、理由の如何を問わず不必要になった被覆層である。
【0017】
前記の酸化物被覆層及び有機ケイ素系被覆層を設けた基材は、例えば、プラスチックレンズであることができ、プラスチックレンズは、例えば、メチルメタクリレート単独重合体、メチルメタクリレートと1種以上の他のモノマーをモノマー成分とする共重合体、ジエチレングリコールビスアリルカーボネート単独重合体、ジエチレングリコールビスアリルカーボネートと1種以上の他のモノマーとをモノマー成分とする共重合体、ポリカーボネート、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル、ポリエチレンテレフタレート、ポリウレタンなどのプラスチックであり、特にCR−39、シリアルイソ(テレ)フタレート、ベンジルメタクリレートの3元共重合体、m−キシリレンジイソシアネート、ペンタエリスリト−ルテトラキス(メルカプトプロピオネート)の反応物であることができる。
【0018】
本発明の基材の再生方法は、前記除去剤の水溶液に、前記の酸化物被覆層及び/又は有機ケイ素系被覆層を有する基材を浸漬することにより行う。除去水溶液の濃度、除去水溶液への浸漬時間及び除去水溶液の温度等は、除去液の種類や濃度及び除去対象である被覆層の種類及び厚み等により適宜決定変更することができる。例えば、除去水溶液の濃度は前記のように、フッ化水素化合物の濃度は1〜30重量%の範囲とし、界面活性剤の濃度は0.05〜3.0重量%の範囲とし、浸漬時間は30秒〜8時間、除去水溶液の温度は5〜40℃の範囲とすることが適当である。さらに、上記除去水溶液への浸漬中に処理物品を揺動させることは、被覆層の除去の促進に有効である。また、物品を除去水溶液から取り出した後、流水による洗浄後、洗剤による洗浄と乾燥および/または手拭きによる清浄乾燥を行うことで、被覆層を設ける前と同様の基材を回収し、再生することができる。
【0019】
本発明によれば、上記のようにして再生された基材に、前記の酸化物被覆層及び/又は有機ケイ素系被覆層を設けることで、被覆層を有する物品を製造することができる。酸化物被覆層及び有機ケイ素系被覆層の形成は常法により行うことができる。例えば、酸化物被覆層は、基材上に真空蒸着法、イオンビーム蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング、イオンクラスタービーム蒸着等により設けることができる。この酸化物被覆層は単層または2層以上の金属酸化物被覆層であることができ、金属酸化物としては、前記の酸化物を例示できる。また、有機ケイ素系被覆層は、常法により、前記と同様のコーティング液を基材上に塗布し、次いで硬化させることにより形成することができる。
【0020】
【実施例】
以下、実施例により本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
実施例1〜8
ポリウレタン系(以下αと呼ぶ)プラスチックレンズ、アリル系(以下βと呼ぶ)プラスチックレンズ又はCR−39(以下γと呼ぶ)、エピチオ系(以下δと呼ぶ)、プラスチックレンズを基材とし、その上に被覆層として、以下に作製方法を示す硬化被膜(有機ケイ素系被覆層)及び多層反射防止膜(酸化物被覆層)を表1に示す組み合わせで設けて、実施例1〜8のプラスチックレンズをそれぞれ作成した。
得られた実施例1〜7のプラスチックレンズは、5重量%フッ化水素アンモニウム及び0.25重量%界面活性剤(ノニオン系)を含む除去剤水溶液に液温23℃で40分間浸漬した。また、実施例8のプラスチックレンズは、2.5重量%フッ化水素水及び0.2重量%界面活性剤(ノニオン系)を含む除去剤水溶液に液温23℃で40分間浸漬した。浸漬後、水道水流水にて洗浄後、清浄乾燥を行った。その結果、いずれのレンズについても、被覆層は完全に除去されており、ハガレ状態は良好であり基材が回収された。その結果は表1に示す。
【0021】
さらに、被覆層を除去し、回収した再生レンズに、再度、表1に示す被覆層を前記と同様の条件で形成した。その結果、再生した基材はいずれも、新品の基材と同様に被覆層を形成でき、得られた被覆層は優れた性能を有する良好なものであった。
【0022】
(コーティング液の調製および硬化被膜の形成)
コーティング液Aの調製および硬化被膜の形成
マグネッティックスターラーを備えたガラス製の容器に、γ−グリシドキシプロピルメトキシシラン142重量部を加え、攪拌しながら、0.01規定塩酸1.4重量部、水32重量部を滴下した。滴下終了後、24時間攪拌を行いγ−グリシドキシプロピルトリメトキシシランの加水分解物を得た。次に酸化第二スズ−酸化ジルコニウム複合体ゾル(エタノール分散、全金属酸化物31.5重量%、平均粒子径10〜15ミリミクロン)460重量部、エチルセロソルブ300重量部、さらに滑剤としてシリコーン系界面活性剤0.7重量部、硬化剤として、アルミニウムアルミニウムアセトネート8重量部を、上記γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシランの加水分解物中に加え、充分に攪拌した後、濾過を行ってコーティング液を作製した。
プラスチックレンズをアルカリ水溶液に浸漬処理し、充分に洗浄を行った後、上記コーティング液の中に浸漬させ、ディップ法(引き上げ速度14cm/分)により塗布した。塗布後、プラスチックレンズを130℃で2時間加熱して有機ケイ素系被覆層を有するプラスチックレンズを得た。
【0023】
コーティング液Bの調製および硬化被膜の形成
マグネティックスターラーを備えたガラス製の容器にγ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン120重量部を加え、攪拌しながら、0.1規定塩酸27重量部を滴下した。滴下終了後、24時間攪拌を行い加水分解物を得た。ついで、水分散シリカ微粒子(固形分20%、平均粒子径15ミリミクロン)200重量部、溶媒としてイソプロピルアルコール100重量部、エチルセルソルブ100重量部、さらに滑剤としてシリコーン系界面活性剤1重量部、硬化剤としてアルミニウムアセチルアセトネート5重量部、ジメチルジチオカルバミン酸亜鉛1重量部を加え、十分攪拌した後、濾過を行い、コーティング液を得た。
次に、プラスチックレンズを50℃の10%NaOH水溶液に5分間浸漬して十分に洗浄を行った後、上記のコーティング液を用いて、ディップ法(引き上げ速度14cm/分)によりコーティングを行い、さらに130℃で2時間加熱して有機ケイ素系被覆層を有するプラスチックレンズを得た。
【0024】
コーティング液Cの調製および硬化被膜の形成
ステンレス製容器にγ−グリシドキシプロピル(トリメトキシ)シラン1045重量部と、γ−グリシドキシプロピルメチル(ジエトキシ)シラン200重量部とを入れ、撹拌しながら0.01モル/リットル塩酸299重量部を添加し、10℃のクリーンルーム内で一昼夜撹拌を続け、シラン加水分解物を得た。
別の容器内で酸化チタン、酸化ジルコニウム、酸化ケイ素を主体とする複合微粒子ゾル(メタノール分散、全固形分30重量%、平均粒子径5〜8mμ、核微粒子中の構成比:Ti/Siの重量比=84/16であるので、Ti/Si原子比=3.07である。核微粒子への酸化ジルコニウム−酸化ケイ素の被覆率:7重量%、表面改質剤:γ−グリシドキシプロピル(トリメトキシ)シラン)3998重量部にメチルセロソルブ4018重量部とイソプロパノール830重量部とを加え撹拌混合し、さらにシリコーン系界面活性剤(日本ユニカー株式会社製「L−7001」)4重量部とアルミニウムアセチルアセトネート100重量部とを加え、上記と同様に10℃のクリーンルーム内で一昼夜撹拌を続けたのち、上記加水分解物と合わせ、さらに一昼夜撹拌した。その後3μmのフィルターでろ過を行いハードコート膜形成用塗工液Aを得た。
次に、屈折率1.71のプラスチックレンズ基材(HOYA株式会社製、商品名:テスラリッド)を前記ハードコート膜形成用塗工液Aに浸漬させ、20秒後に引き上げ速度20cm/min.で引き上げ、さらに110℃に設定したオーブン内で1時間加熱してハードコート膜を形成した。
【0025】
(多層反射防止膜(酸化物被覆層)の形成)
コート▲1▼
プラスチックレンズ上に有機ケイ素系被覆層を施した後、または直接に先ず真空蒸着法(真空度2×10−5Torr)により二酸化ケイ素膜からなる第1層を形成した。
次にこの第1層の上に、真空蒸着法(真空度2×10−5Torr)により酸化ジルコニウムと二酸化ケイ素からなる2層等価膜からなる第2層を形成した。
次にこの第2層の上に、真空蒸着法(真空度2×10−5Torr)により酸化チタンからなる第3層を形成した。
次に、上で得られた第3層上に、真空蒸着法(真空度2×10−5Torr)により二酸化ケイ素からなる第4層を形成して、酸化物被覆層である反射防止膜を有するプラスチックレンズを得た。
【0026】
コート▲2▼
有機ケイ素系被覆層を施したプラスチックレンズ、又は基材レンズを80℃に加熱し、真空蒸着法(真空度2×10−5Torr)によりSiO2からなる下地層を形成した。
次にTa2O5 粉末、Y2O3粉末、およびAl2O3粉末を混合し、プレス加圧し、焼結温度1300℃で焼結して得られた蒸着組成物を電子銃出力電流170mAにて加熱して形成される混合層と、SiO2層よりなる第一の低屈折率層を形成した。この第一の低屈折率層の上に前記蒸着組成物と同じ蒸着組成物にて4成分高屈折率層を形成し、さらにその層の上にSiO2からなる第2の低屈折率層を形成して酸化物被覆層である反射防止膜を有するプラスチックレンズを得た。なお、前記低屈折率層および高屈折率層は、前記下地層を形成した同様の真空蒸着法により形成した。
【0027】
コート▲3▼
下地層膜厚、上記蒸着組成物の混合層膜厚、次のSiO2層膜厚、次の4成分高屈折率層膜厚、最終の低屈折率層膜厚を変更した以外は、コート▲3▼と同様の方法で酸化物被覆層である反射防止膜を有するプラスチックレンズを得た。
【0028】
コート▲4▼
プラスチックレンズ上に有機ケイ素系被覆層を施した後、または直接に先ず真空蒸着法(真空度2×10−5Torr)により二酸化ケイ素膜からなる第1層を形成した。
次にこの第1層の上に、真空蒸着法(真空度2×10−5Torr)により酸化ジルコニウムと二酸化ケイ素からなる2層等価膜からなる第2層を形成した。次にこの第2層の上に、真空蒸着法(真空度2×10−5Torr)により酸化ジルコニウムからなる第3層を形成した。
次に、上で得られた第3層上に、真空蒸着法(真空度2×10−5Torr)により二酸化ケイ素からなる第4層を形成して、酸化物被覆層からなる反射防止膜を有するプラスチックレンズを得た。
【0029】
コート▲5▼
有機ケイ素系被覆層を施したプラスチックレンズ、又は基材レンズを75℃に加熱し、酸素イオンビーム照射処理を施した後、真空蒸着法(真空度2×10−5Torr)によりSiO2からなる層を形成した。
次にコート▲2▼、▲3▼で用いた蒸着組成物を電子銃出力電流170mAにて加熱して形成される第2層を形成した。第2層の上に再び第3層のSiO2を蒸着した。次に第3層の上に前期蒸着組成物蒸着層と、SiO2層よりなる二層等価膜を形成した。この二層等価膜の上に前記蒸着組成物と同じ蒸着組成物にて4成分高屈折率層を形成し、さらにその層の上にSiO2からなる低屈折率層を形成して酸化物被覆層である反射防止膜を有するプラスチックレンズを得た。なお、前記各層は、第1層を形成したのと同様の真空蒸着法により形成した。
【0030】
比較例 1〜9
実施例と同様に作成した1〜7のレンズを従来の方法であるフッ化水素アンモニウムと過酸化水素の混合物(フッ化水素アンモニウム4重量%、過酸化水素11重量%)に浸漬し、剥がれ具合を比較した。但し、浸漬時間は60分とした。その結果、表1に示すように実施例に示した組み合わせで成膜されたレンズは従来の方法と同様に剥がすことができ、剥がれ具合も良好であることが確認できた。また、それぞれの再成膜後の状態も良好であった。
それに対して、実施例と同様に作成した8及び9のレンズを従来の方法であるフッ化水素アンモニウムと過酸化水素の混合物(フッ化水素アンモニウム4重量%、過酸化水素11重量%)に浸漬し、剥がれ具合を比較した。但し、浸漬時間は実施例と同様の40分とした。その結果、表1に示すように実施例に示した組み合わせで成膜されたレンズに被覆された酸化皮膜を一部剥がすことができなかった。従って、再度、成膜を行うこともできなかった。
【0031】
【表1】
【0032】
更に、回収された基材に表2に示した組み合わせで剥がし前と異なる種類の再コーティングを行ったがこれも、従来方法での剥がし品と同様な良好な仕上がりであった。次に、その再生品の性能調査を行った。その結果、表2に示したように再生品も従来方法による基材回収後の再生品に劣らないという結果が得られた。
【0033】
【表2】
【0034】
【発明の効果】
本発明の除去剤、及び基材の再生方法により得られる効果は以下とおりである。
1)酸化物被覆層の除去が従来方法より安全、容易に行える。
2)浸漬除去処理時間がより短くてすむ。
3)基材に損傷を与えずに膜の除去ができる。そのため、再度、その上に有機ケイ素系被覆層および/または酸化物被覆層を付けても、新品の基材を用いた直行品、従来の方法によるコーティング除去基材と同等の性能を有する製品が得られる。
4)基材に損傷を与えずに膜の除去ができる。そのため、再塗布において、初めに施したものと異なる被覆層を付けても、新しい基材、または従来の方法によるコーティング除去基材にそれを付けた場合と同等の性能を有する製品が得られる。
Claims (7)
- フッ化水素化合物と界面活性剤とを含有することを特徴とする有機ケイ素系被覆層及び/又は酸化物被覆層の除去剤。
- フッ化水素化合物と界面活性剤とを含有する水溶液に、基材上に有機ケイ素系被覆層、酸化物被覆層、又は有機ケイ素系被覆層及び酸化物被覆層を有する物品を浸漬して、前記被覆層の少なくとも一部または全部を除去することを含むことを特徴とする基材の再生方法。
- 前記有機ケイ素系被覆層が、酸化物微粒子を含有する有機ケイ素化合物の硬化被覆層である、請求項2記載の方法。
- 前記酸化物被覆層が、2層以上の酸化物被覆層からなる多層被覆層である、請求項2記載の方法。
- 前記有機ケイ素系被覆層及び/又は酸化物被覆層が欠陥品である、請求項2記載の方法。
- 前記基材がプラスチックレンズである、請求項2〜5のいずれか1項に記載の方法。
- 請求項2〜6のいずれか1項に記載の方法により再生した基材上に、有機ケイ素系被覆層、酸化物被覆層、又は有機ケイ素系被覆層及び酸化物被覆層を設けることを特徴とする、被覆層を有する物品の製造方法。
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