JP3603573B2 - 電子写真感光体及びそれを用いた画像形成方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、電子写真感光体及びそれを用いた画像形成方法に関し、より詳しくは、レーザ光をライン走査する方式により、濃度むらのない解像性の高い画像が得られる電子写真感光体及びその感光体を用いた画像形成方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
レーザ光をライン走査する電子写真方式において、半導体レーザ光を使用したレーザ出力装置は、小型化及び低コスト化できることから広く普及しており、その半導体レーザの発光波長である近赤外光に対して、高感度を有する電子写真感光体が開発されている。
【0003】
現在、レーザ出力装置には、文字だけでなく画像出力のニーズの高まりとともに、中間調を含む高画質化の要求が強まっている。その中で、記録密度を低下させずに高解像度が得られ、各画素において中間調を形成する方式として、パルス幅変調方式が提案されている。この方式は、画像信号によりレーザ光の照射時間を変調して1画素毎に露光スポットにより形成されるドットの面積階調を行うものであり、解像度を低下させることなく中間調が表現できるため、高解像度かつ高階調性を必要とするカラー画像形成装置に特に適している。
【0004】
ところが、このパルス幅変調方式においても、更に画像密度を上昇させて行くと、露光スポット径に対して画素が相対的に小さくなるために、階調を十分に確保できなくなる傾向がある。そこで、階調性を保持させた状態で解像度を向上させるためには、露光スポット径をより小さくする必要があり、そのためには、例えば、レーザ光を短波長化したり、或いはf−θレンズのNA(開口率)を大きくすること等が必要となる。しかし、青色又は緑色半導体レーザについては、研究段階の報告はあるものの、一般的には普及していないのが現状である。また、レンズやスキャナの大型化及び焦点深度の低下による、機械精度に関する要求の高まり等の理由から、これらの装置は、大型化してコストの上昇が避けられず、実用的なものではない。
【0005】
一方、レーザ光出力装置においては、可干渉光であるレーザ光を露光光源としているため、干渉縞による画像の濃度むらが発生し易いという欠点がある。その理由としては、例えば、積層型感光層を有する電子写真感光体では、レーザ光は、電荷発生層内で完全に吸収されないで、電荷発生層の導電性基体から遠い側の界面で反射し、また、その透過光は導電性基体で反射するために、感光層内においてレーザ光の多重反射を引き起こすことが挙げられる。
【0006】
この問題を解決する方法として、従来より電子写真感光体に用いられる導電性基体の表面を陽極酸化やホーニング法等により粗面化する方法、感光層と基体の間に光吸収層又は反射防止層を設ける方法等が提案され、感光層内において発生する多重反射の解消が計られているが、これらの従来方法は、実際には感光体の製造コストが上昇する等の欠点を有するものであり、未だ満足できるものは得られていない。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、従来技術における上記のような問題を解消させることを目的としてなされたものである。すなわち、本発明の目的は、レーザ光をライン走査する電子写真方式の画像形成方式において、良好な電子写真特性を示し、干渉縞による画像の濃度むらを防止し、かつ高解像度の画像を得ることができる電子写真感光体及びその感光体を用いる画像形成方法を提供する。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明者等は、レーザ光を用いて高解像な画像が得られる画像形成方法について鋭意検討した結果、露光波長において可飽和吸収性を呈する可飽和吸収色素と下記特定の電子受容性物質を含有する層を有する電子写真感光体を用いれば、感光層内における吸収減衰により、レーザ光の照射スポット径を小さくしたことと同様の効果を得ることが可能であること、さらには干渉縞による画像の濃度むらを防止できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0009】
すなわち、本発明の電子写真感光体は、導電性基体上に電荷発生層及び電荷輸送層を順次積層して形成される電子写真感光体であって、該電荷輸送層が、結着樹脂中に電荷輸送材料と露光波長において可飽和吸収性を呈する可飽和吸収色素と下記一般式(1)、(2)、(4)〜(8)のいずれかで表される電子受容性物質とを含有することを特徴とする。その電荷輸送層中の電子受容性物質は、可飽和吸収色素に対して0.1〜100当量含まれることが好ましい。
【0010】
【化11】
(式中、R1 及びR2 は、それぞれ水素原子、アルキル基、アルキルカルボニル基、ニトロ基、アルコキシ基、アルコキシカルボニル基、置換もしくは未置換アリール基、アリールオキシ基、アリールカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、ハロゲン原子又はシアノ基を示し、n及びmは、それぞれ0〜2の整数である。)
【0011】
【化12】
[式中、R3 〜R6 は、それぞれ水素原子、アルキル基、アルキルカルボニル基、ニトロ基、アルコキシ基、アルコキシカルボニル基、置換もしくは未置換アリール基、アリールオキシ基、アリールカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、ハロゲン原子、シアノ基又は下記一般式(3)で示されるビニル基を示す。
【化13】
(ただし、R7 は水素原子又はアルキル基を示し、R8 及びR9 は、少なくともその一方が置換もしくは未置換フェニル基であり、他方が水素原子を示す。)]
【0012】
【化14】
(式中、R10〜R13は、それぞれ水素原子、アルキル基、アルキルカルボニル基、ニトロ基、アシル基、アルコキシ基、アルコキシカルボニル基、置換もしくは未置換アリール基、アリールオキシ基、アリールカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、アリール置換ボロニル基、アラルキル基、置換アミノ基、アラルキルオキシ基、アラルキルオキシカルボニル基、ハロゲン原子又はシアノ基を示すか、又はR10とR11もしくはR12とR13が、互いに結合して芳香族環又は複素環を形成してもよい。)
【0013】
【化15】
(式中、R14は水素原子、アルキル基又はシアノ基を示し、R15〜R19は、それぞれ水素原子、アルキル基、アルキルカルボニル基、ニトロ基、アシル基、アルコキシ基、アルコキシカルボニル基、置換もしくは未置換アリール基、アリールカルボニル基、アリールオキシ基、アリールオキシカルボニル基、アルケニル基、ハロゲン原子、シアノ基であるか又はそれらの隣接する2つが芳香族又は複素環を形成する基を示す。)
【化16】
(式中、R20〜R23は、それぞれ水素原子、アルキル基、アルキルカルボニル基、ニトロ基、アシル基、アルコキシ基、アルコキシカルボニル基、ベンジル基、置換もしくは未置換アリール基、アリールオキシ基、アリールオキシカルボニル基、アリール置換ボロニル基、置換アミノ基、アラルキル基、アラルキルオキシ基、アラルキルオキシカルボニル基、ハロゲン原子又はシアノ基を示すか、又はR20とR21もしくはR22とR23が、それぞれ結合して芳香族環又は複素環を形成してもよい。)
【0014】
【化17】
(式中、R24〜R27は、それぞれ水素原子、アルキル基、アルキルカルボニル基、ニトロ基、アシル基、アルコキシ基、アルコキシカルボニル基、置換もしくは未置換アリール基、アリールオキシ基、アリールカルボニル基、アリールオキシ
カルボニル基、アルキル置換アミノ基、水酸基、アルコキシカルボニルアルキル基、アラルキル基、アラルキルオキシ基、カルボキシアリール基、カルボキシアラルキル基、アラルキルオキシカルボニル基、ハロゲン原子又はシアノ基を示す。)
【0015】
【化18】
(式中、R28〜R31は、それぞれ水素原子、アルキル基、アルキルカルボニル基、ニトロ基、アシル基、アルコキシ基、アルコキシカルボニル基、置換もしくは未置換アリール基、アリールオキシ基、アリールカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、ハロゲン原子又は上記一般式(3)で示されるビニル基を示す。)
【0016】
本発明において、露光波長において可飽和吸収性を呈する可飽和吸収色素としては、下記一般式(9)で表されるナフタロシアニン系色素を用いることが好ましい。
【化19】
(式中、R51〜R74は、互いに同一でも異なってもよく、それぞれ水素原子又は置換もしくは未置換のアルキル基を示し、R75は、水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、アルコキシ基、水酸基、シロキシ基又は酸素原子を示し、nは0〜2の整数であり、Mはケイ素原子又は金属原子を示す。)
【0017】
本発明の画像形成方法は、導電性基体に電荷発生層及び電荷輸送層を順次積層され、その電荷輸送層が、結着樹脂中に電荷輸送材料と露光波長において可飽和吸収性を呈する可飽和吸収色素と電子受容性物質とを含有して作製される電子写真感光体の表面を一様に負帯電させた後、画像露光を施して静電潜像を形成し、得られた静電潜像の低電位部に負帯電したトナーを付着させてトナー像を形成し、得られたトナー像を保持する電子写真感光体に転写材を重ね合わせ、その転写材の裏面より正帯電を付与することにより、トナー像を転写材上に転写することを特徴とする。
【0018】
【発明の実施の形態】
本発明の電子写真感光体は、導電性基体上に感光層を有する電子写真感光体において、感光層は、電荷発生層とその上に積層される電荷輸送層とを有するものであり、その電荷輸送層には、少なくとも電荷輸送材料、結着樹脂、可飽和吸収色素及び電子受容性物質を含有し、また、その可飽和吸収色素としては、露光波長において可飽和吸収性を呈するものを使用することが必要である。
【0019】
また、本発明の画像形成方法は、上記の電子写真感光体を帯電させた後、レーザ光により画像信号に応じたポジ像様スキャン露光を与えてバックイメージに静電潜像を形成し、次いで、この静電潜像が持っている極性と同一極性のトナーを有する現像剤を静電潜像面に与えることにより、スキャン露光されたポジ像様露光部にトナーを付着させる反転現像方式である。
【0020】
すなわち、本発明の画像形成においては、電子写真感光体に露光用の光であるレーザ光を入射させ、露光波長において可飽和吸収性を呈する可飽和吸収色素と公知の電荷輸送材料を結着樹脂に含有させて形成された可飽和吸収色素を含有する電荷輸送層を透過させると、電荷輸送内における吸収減衰により、照射スポットの中心部分の強いレーザ光強度に対して、周辺部分の弱いレーザ光が除去されて、あたかも照射スポット径を小さくしたことと同様の現象が生じるという効果を得ることが可能となる。
【0021】
また、画像形成時に発生する干渉縞に対しては、露光波長において可飽和吸収性を呈する可飽和吸収色素を含有する電荷輸送層を用いていることから、レーザ光が電荷発生層の導電性基体から遠い側の界面で反射し、さらに電荷輸送層内で多重反射を生じたレーザ光は、吸収減衰されて入射光より弱められているので、感光層表面の反射光との間で干渉が生じなくなり、干渉縞による画像の濃度むらが生じないという利点がある。
【0022】
ところで、電子写真感光体として、露光波長において可飽和吸収性を呈する可飽和吸収色素を含有する電荷輸送層が導電性基体上に形成されている感光体を使用し、露光における光源にレーザ光を使用すると、電荷輸送層中の露光波長を吸収する可飽和吸収色素は、光吸収により電子及び正孔対を生成させるから、感光層表面を負帯電した場合、電荷輸送層中の電荷輸送材料により正孔は感光層表面に移動するが、電子は電荷輸送層中にトラップされて、残留電位が上昇することがあるが、本発明の電子写真感光体においては、可飽和吸収性を呈する可飽和吸収色素を含有する電荷輸送層に電子受容性物質を混入させることにより、残留電位の上昇を防止し、良好な電子写真特性を示すことが可能になった。
【0024】
本発明において、電子受容性物質として用いられる一般式(1)で表されるジシアノビニル化合物の具体例を下記に示す。
【化20】
(式中、R1 、R2 、n及びmは、前記したと同意義を有する。)
【0025】
【化21】
【0026】
また、一般式(2)で表されるジシアノビニル化合物の具体例を下記に示す。
【化22】
(式中、R3 〜R6 は、前記したと同意義を有する。)
【0027】
【化23】
【0028】
【化24】
【0029】
【化25】
【0030】
【化26】
【0031】
また、一般式(4)で表されるジシアノビニル化合物の具体例を下記に示す。
【化27】
(式中、R10〜R13は、前記したと同意義を有する。)
【0032】
【化28】
【0033】
【化29】
【0034】
【化30】
【0035】
【化31】
【0036】
【化32】
【0037】
【化33】
【0038】
【化34】
【0039】
【化35】
【0040】
次に、一般式(5)で表されるケトン化合物の具体例を下記に示す。
【化36】
(式中、R14〜R19は、前記したと同意義を有する。)
【0041】
【化37】
【0042】
【化38】
【0043】
また、一般式(6)で表されるケトン化合物の具体例を下記に示す。
【化39】
(式中、R20〜R23は、前記したと同意義を有する。)
【0044】
【化40】
【0045】
【化41】
【0046】
【化42】
【0047】
【化43】
【0048】
【化44】
【0049】
【化45】
【0050】
【化46】
【0051】
【化47】
【0052】
次に、一般式(7)で表されるアントラキノン化合物の具体例を下記に示す。
【化48】
(式中、R24〜R27は、前記したと同意義を有する。)
【0053】
【化49】
【0054】
【化50】
【0055】
次に、一般式(8)で表されるフルオレノン化合物の具体例を下記に示す。
【化51】
(式中、R28〜R31は、前記したと同意義を有する。)
【0056】
【化52】
【0057】
【化53】
【0058】
【化54】
【0059】
【化55】
【0060】
本発明の電子写真感光体に使用される「可飽和吸収色素」としては、入射光の波長において可飽和吸収性を呈することが必要であり、入射光として現在広く普及している波長780nm近傍の半導体レーザを用いた場合、上記の可飽和吸収色素としては、下記一般式(9)で表されるナフタロシアニン系色素が使用可能である。
【0061】
【化56】
(式中、R51〜R74は、互いに同一でも異なってもよく、それぞれ水素原子又は置換もしくは未置換のアルキル基を示し、R75は、水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、アルコキシ基、水酸基、シロキシ基又は酸素原子を示し、nは0〜2の整数であり、Mはケイ素原子又は金属原子を示す。)
【0062】
一般式(9)で表されるナフタロシアニン系色素のMとしては、ケイ素原子又はナフタロシアニン環が配位できる金属原子であれば如何なるものでもよく、例えば、マグネシウム、アルミニウム、カルシウム、銅、バナジウム、亜鉛、鉄、ルテニウム、マンガン、コバルト、ニッケル、鉛、イットリウム、インジウム、チタニウム、ガリウム、ジルコニウム又はニオブ等が挙げられる。特に、下記式(10)に示すビス(トリ−n−ヘキシルシロキシ)シリコンナフタロシアニン色素又は下記式(11)に示すジオクチロキシシリコンナフタロシアニン色素を使用することが好ましい。
【0063】
【化57】
【0064】
【化58】
【0065】
その他の可飽和吸収色素としては、近赤外域において吸収性を有するものは適宜使用可能であり、例えば、フタロシアニン系、アミノナフトキノン系、アントラキノン系、モノアゾ系等の化合物が用いられる。
【0066】
以下、本発明の電子写真感光体の層構成について、さらに詳しく説明する。
本発明において、導電性基体としては、従来から使用されている如何なるものも用いることができる。また、導電性基体の表面は、必要に応じて、画質に影響のない範囲で各種の処理を行うことができ、例えば、陽極酸化処理、薬品処理、着色処理等を行うことができる。
【0067】
電荷発生層は、電荷発生材料を適当な結着樹脂中に含有させて形成する。その電荷発生材料としては、無金属フタロシアニン、クロロガリウムフタロシアニン、ヒドロキシガリウムフタロシアニン、ジクロロスズフタロシアニン、チタニルフタロシアニン等のフタロシアニン顔料、キノン顔料、ペリレン顔料、インジゴ顔料、ビスベンゾイミダゾール顔料、アントロン顔料、キナクリドン顔料等を用いられる。これらの電荷発生材料は、単独で又は2種以上を混合して用いることができる。また、結着樹脂としては、従来公知のものを適宜使用できる。電荷発生材料と結着樹脂の配合比は40:1〜1:4、好ましくは20:1〜1:2である。電荷発生材料の比率が高すぎると塗布溶液の安定性が低下し、一方、その比率が低すぎると感度が低下するので、上記の範囲に設定することが好ましい。電荷発生材料の分散に使用される溶剤としては、結着樹脂を溶解させるものの中から適宜選択することができる。その分散手段としては、サンドミル、コロイドミル、アトライター、ボールミル、ダイノーミル、高圧ホモジナイザー、超音波分散機、コボールミル、ロールミル等の方法が利用できる。塗布方法としては、ブレードコーティング法、ワイヤーバーコーティング法、スプレーコーティング法、浸漬コーティング法、ビードコーティング法、カーテンコーティング法等の方法が用いられる。電荷発生層の膜厚は、0.01〜5μmの範囲、好ましくは0.03〜2μmの範囲である。
【0068】
本発明の電子写真感光体は、可飽和吸収色素と電子受容性物質を電荷輸送層に含有させたものであって、電子受容性物質としては、上記式(1)、上記式(2)、上記式(4)に示すジシアノビニル化合物が、または、上記式(5)、上記式(6)で表されるケトン化合物が、または、上記式(7)で表されるアントラキノン化合物が、または、上記式(8)で表されるフルオレノン化合物が、それぞれ使用される。可飽和吸収色素としては、上記式(9)で示されるナフタロシアニン系色素が好ましく使用される。
【0069】
可飽和吸収色素と電子受容性物質を含有する電荷輸送層は、電荷輸送材料、可飽和吸収色素、電子受容性物質及び結着樹脂より構成されるもので、電荷輸送材料は公知のものが適宜使用できる。結着樹脂に用いるものとしては、例えば、ポリカーボネート、ポリアリレート、ポリスチレン、ポリエステル、スチレン−アクリロニトリル共重合体、ポリスルホン、ポリメタクリル酸エステル、スチレン−メタクリル酸エステル共重合体、ポリオレフィン等が挙げられる。
【0070】
電荷輸送材料と結着樹脂の配合比(重量)は、5:1〜1:5、好ましくは3:1〜1:3である。電荷輸送材料の比率が高すぎる場合には、電荷輸送層の機械的強度が低下し、低すぎる場合には、感度が低下するので、上記の範囲に設定するのが好ましい。また、電荷輸送材料が成膜性を有する場合には、上記結着樹脂を省くこともできる。
【0071】
電子受容性物質と可飽和吸収色素の配合比は、モル比で1:10〜100:1、好ましくは1:2〜10:1の範囲である。電子受容性物質の比率が高すぎる場合には、暗減衰が大幅に増大し、帯電性が低下し、低すぎる場合には、残留電位が高くなり、背景部がかぶりやすくなるので、上記の範囲が好ましい。
【0072】
可飽和吸収色素と結着樹脂の配合比は、可飽和吸収色素のモル吸光係数、可飽和吸収色素を含有する層の膜厚及び使用される入射光の光量により変化するが、1:10〜1:107 、好ましくは1:103 〜1:106 である。可飽和吸収色素の比率が高すぎる場合には、感度が低下し、低すぎる場合には、解像性の低下とともに干渉縞による濃度むらが発生するので、上記の範囲に設定することが好ましい。
【0073】
可飽和吸収色素を含有する電荷輸送層は、上記電荷輸送材料、可飽和吸収色素、結着樹脂を適当な溶剤に溶解し、塗布することによって形成されるが、塗布溶液の溶解方法としては、まず、可飽和吸収色素を適当な溶剤に溶解し所望の濃度とした溶液に、電子受容性物質、続いて、電荷輸送材料と結着樹脂を溶解することが好ましい。また、これらの塗布方法としては、電荷発生層について述べたものと同様の方法が使用できる。可飽和吸収色素を含有する電荷輸送層の膜厚は、5〜50μmの範囲、好ましくは10〜40μmの範囲になるように形成することが好ましい。
【0074】
本発明の電子写真感光体は、必要に応じて、電荷発生層と導電性基体の間に下引き層を設けてもよい。下引き層は、導電性基体からの不必要な電荷の注入を阻止するために有効なものであり、感光体の帯電性を向上させる作用を有している。さらに、電荷輸送層と導電性基体との接着性をも向上させる作用を有している。さらに、本発明の電子写真感光体は、耐刷性を向上させるために、感光層の上に保護層を設けてもよい。
【0075】
本発明の画像形成方法は、上記の電子写真感光体を使用して、帯電、露光、現像及び転写する各工程を有するものであって、帯電工程においては、公知の帯電手段が使用される。また、露光工程においては、レーザ光をライン走査する電子写真方式が採用される。露光用のレーザ光としては、780nmの波長のものが好適に使用され、具体的には、半導体レーザ等が使用できる。また、現像及び転写工程は、公知の方法により実施することができる。
【0076】
【実施例】
以下、実施例により本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例により限定されるものではない。なお、「部」は「重量部」を意味する。
実施例1
まず、ポリビニルブチラール(商品名:エスレックBM−1、積水化学工業(株)製)8部をn−ブチルアルコール152部に加え、撹はん溶解し、5重量%のポリビニルブチラール溶液を作製した。次に、トリブトキシジルコニウム・アセチルアセトネートの50%トルエン溶液(商品名:ZC540、松本交商(株)製)100部、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン(商品名:A1100、日本ユニカー(株)製)10部およびn−ブチルアルコール130部を混合した溶液を、前述のポリビニルブチラール溶液中に加え、スターラーで撹はんし、下引き層形成用の塗布液を作製した。この塗布液を84φ×340mmの鏡面アルミパイプ上に浸漬塗布し、150℃において10分間加熱乾燥し、1.15μm厚の下引き層を形成させた。
【0077】
一方、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体(商品名:VMCH、ユニオンカ−バイド社製)3部を、予め酢酸n−ブチル100部に溶解した溶液に、CuKα特性X線に対するブラッグ角度(2θ±0.2)の7.4°、16.6°、25.5°及び28.3°に強い回折ピークを有するクロロガリウムフタロシアニン結晶1部を加え、24時間サンドミルで分散し、酢酸n−ブチルで希釈し、固形分濃度4.0重量%の電荷発生層形成用塗布液を調整した。得られた塗布液を上記の下引き層の上にリング塗布機によって塗布し、100℃において10分間加熱乾燥し、層厚0.15μmの電荷発生層を形成させた。
【0078】
次に、得られた電荷発生層の上に可飽和吸収色素と電子受容性物質を含有する電荷輸送層を形成させた。すなわち、ビス(トリ−n−ヘキシルシロキシ)シリコンナフタロシアニン色素を(以下、「SiNc」と記す。)をモノクロロベンゼンに超音波を用いて十分に溶解させ、得られたSiNcを190ppm含む溶液46部に、電子受容性物質としてジシアノビニル化合物(例示化合物1−1)を、SiNcに対して、5.0当量となるように加え、さらに、N,N−ビス(3,4−ジメチルフェニル)ビフェニル−4−アミン6部を電荷輸送材料とし、ポリカーボネートZ樹脂4部と共に溶解させ、得られた塗布溶液を用いてリング塗布機により上記電荷発生層上に塗布し、115℃で60分間にわたって加熱乾燥させて、24μm厚の可飽和吸収色素と電子受容性物質を含有する電荷輸送層を形成させることにより、電子写真感光体を作製した。
【0079】
このようにして得られた電子写真感光体を、20℃で50%RHの環境下に、グリッド印加電圧−650Vのスコロトロン帯電器で帯電し(A)、780nmの半導体レーザを用いて、0.5秒後に9.0mJ/m2 の光を照射して放電を行い(B)、さらに、その3秒後に50mJ/m2 の赤色LED光を照射して除電を行う(C)というプロセスによって、各部の電位を測定した。この測定においては、(A)の電位VH は、高い程感光体の受容電位が高いためにコントラストを高くすることが可能であり、(B)の電位VL は、低い程高感度であり、 (C)VRPの電位は、低い程残留電位が少なく、画像メモリー及びカブリの少ない感光体であると評価することができる。
また、上記の電子写真感光体を、20℃50%RHの環境下で、Aカラ−635(富士ゼロックス社製)に装着し、パルス幅変調方式を用いて階調記録を行い、出力した画像から最小解像スポット径を測定し、階調濃度の再現性について目視により評価を行った。さらに、全面にラインスキャンを行って全面が薄いトナー像となる画像について、干渉縞の発生の有無について目視により評価した。
【0080】
実施例2〜5
実施例1において、ジシアノビニル化合物(例示化合物1−1)の添加量を、SiNcに対して、それぞれ0.5当量(実施例2)、1.0当量(実施例3)、10.0当量(実施例4)及び20.0当量(実施例5)に代えたこと以外は、実施例1と同様にして電子写真感光体を作製し、同様に評価を行った。
【0081】
実施例6〜17
実施例1において、ジシアノビニル化合物を、それぞれ、例示化合物1−4(実施例6)、例示化合物1−5(実施例7)、例示化合物1−7(実施例8)、例示化合物1−8(実施例9)、例示化合物2−5(実施例10)、例示化合物2−10(実施例11)、例示化合物2−13(実施例12)、例示化合物2−14(実施例13)、例示化合物4−2(実施例14)、例示化合物4−11(実施例15)、例示化合物4−34(実施例16)、例示化合物4−72(実施例17)に代えたこと以外は、実施例1と同様にして電子写真感光体を作製し、同様に評価を行った。
【0082】
比較例1
実施例1において、SiNc及びジシアノビニル化合物を添加しなかったこと以外は、実施例1と同様にして電子写真感光体を作製し、同様に評価を行った。
比較例2
実施例1において、ジシアノビニル化合物を添加しなかったこと以外は、実施例1と同様にして電子写真感光体を作製し、同様に評価を行った。
【0083】
上記各実施例及び比較例で得られた結果を、表1に示す。
【表1】
【0084】
実施例18
実施例1において、ジシアノビニル化合物をケトン化合物(例示化合物5−10)に代えたこと以外は、実施例1と同様にして電子写真感光体を作製し、同様に評価を行った。
実施例19〜22
実施例18において、ケトン化合物(例示化合物5−10)の添加量を、SiNcに対して、それぞれ0.5当量(実施例19)、1.0当量(実施例20)、10.0当量(実施例21)及び20.0当量(実施例22)に代えたこと以外は、実施例18と同様にして電子写真感光体を作製し、同様に評価を行った。その結果を表2に示す。
【0085】
実施例23〜30
実施例18において、ケトン化合物を、それぞれ例示化合物5−6(実施例23)、例示化合物5−16(実施例24)、例示化合物5−18(実施例25)、例示化合物5−20(実施例26)、例示化合物6−3(実施例27)、例示化合物6−30(実施例28)、例示化合物6−62(実施例29)及び例示化合物6−71(実施例30)に代えたこと以外は、実施例18と同様にして電子写真感光体を作製し、同様に評価を行った。得られた結果を表2に示す。
【0086】
【表2】
【0087】
実施例31
実施例1において使用したジシアノビニル化合物をアントラキノン化合物(例示化合物7−10)に代えたこと以外は、実施例1と同様にして電子写真感光体を作製し、同様に評価を行った。
実施例32〜35
実施例31において、アントラキノン化合物(例示化合物7−10)の添加量を、SiNcに対して、それぞれ0.5当量(実施例32)、1.0当量(実施例33)、10.0当量(実施例34)及び20.0当量(実施例35)に代えたこと以外は、実施例31と同様にして電子写真感光体を作製し、同様に評価を行った。
【0088】
実施例36〜39
実施例31において、アントラキノン化合物の種類を、それぞれ例示化合物7−5(実施例36)、例示化合物7−6(実施例37)、例示化合物7−17 (実施例38)、例示化合物7−22(実施例39)に代えたこと以外は、実施例31と同様にして電子写真感光体を作製し、同様に評価を行った。
【0089】
上記の実施例31〜39で得られた結果を、表3に示す。
【表3】
【0090】
実施例40
実施例1において、ジシアノビニル化合物をフルオレノン化合物(例示化合物8−15)に代えたこと以外は、実施例1と同様にして電子写真感光体を作製し、同様に評価を行った。
実施例41〜44
実施例40において、フルオレノン化合物(例示化合物8−15)の添加量を、SiNcに対して、それぞれ0.5当量(実施例41)、1.0当量(実施例42)、10.0当量(実施例43)及び20.0当量(実施例44)に代えたこと以外は、実施例40と同様にして電子写真感光体を作製し、同様に評価を行った。
【0091】
実施例45〜48
実施例40において、フルオレノン化合物の種類を、それぞれ例示化合物8−5(実施例45)、例示化合物8−7(実施例46)、例示化合物8−16(実施例47)及び例示化合物8−22(実施例48)に代えたこと以外は、実施例40と同様にして電子写真感光体を作製し、同様に評価を行った。
【0092】
上記の実施例40〜48で得られた結果を、表4に示す。
【表4】
【0093】
【発明の効果】
以上のように、本発明は、導電性基体上に、電荷発生層と露光波長において可飽和吸収性を呈する可飽和吸収色素と上記一般式(1)、(2)、(4)〜(8)のいずれかで表される電子受容性物質を含有する電荷輸送層を有する感光層を設けた電子写真感光体を用いるから、露光用の光としてレーザ光を使用しても、残留電位が高くならずに良好な電子写真特性を示しながら、干渉縞による画像の濃度むらの発生が防止され、さらに、従来の電子写真感光体を用いた場合に比べて、高解像度で諧調性の良好な画像を形成することができる。
Claims (4)
- 導電性基体上に電荷発生層及び電荷輸送層を順次積層して形成される電子写真感光体において、該電荷輸送層が、結着樹脂中に電荷輸送材料と露光波長において可飽和吸収性を呈する可飽和吸収色素と下記一般式(1)、(2)、(4)〜(8)のいずれかで表される電子受容性物質とを含有することを特徴とする電子写真感光体。
- 電子受容性物質が、可飽和吸収色素に対して0.1〜100当量含まれることを特徴とする請求項1に記載の電子写真感光体。
- 請求項1〜3のいずれか1項に記載の電子写真感光体の表面を一様に負帯電させた後、画像露光を施して静電潜像を形成し、得られた静電潜像の低電位部に負帯電したトナーを付着させてトナー像を形成し、得られたトナー像を保持する電子写真感光体に転写材を重ね合わせ、その転写材の裏面より正帯電を付与することにより、トナー像を転写材上に転写することを特徴とする画像形成方法。
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