JP3600330B2 - 無鉛ガソリン - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、新規な無鉛ガソリンに関し、詳しくは自動車の運転性能に優れ、さらに大気汚染の少ない無鉛ガソリンに関する。
【0002】
【従来の技術】
近年の自動車エンジンの高性能化に伴い、ガソリンの品質は、自動車の運転性に大きく影響する。特に、オクタン価の高低は、自動車の運転性と密接な関係があるため、市販ガソリンには軽質接触分解ガソリン、改質ガソリン、アルキレート、メチルターシャリーブチルエーテル(MTBE)等の高オクタン価ガソリン基材を配合したものが多い。
一方、自動車排ガス中には環境汚染物質が含まれていることから、その低減化が求められて来ており、排ガス中のNOx、CO、HCについては、既にその規制が実施されている。最近ではこれらの汚染物質以外でも、人体に悪影響を及ぼす自動車排ガス成分が注目され、特に、排ガス中のベンゼンについては、その発ガン性が検討されている。また、米国では走行中の排出ガスだけではなく、エンジン停止時にガソリンが燃料タンクを含む燃料系統から蒸発して大気中に放出される、いわゆるエバポエミッションに対しても規制が導入されつつある。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、このような状況を鑑み、自動車ガソリンとして性能に優れるばかりでなく、排ガスに含まれる各種の有害成分(NOx、CO、HC、ベンゼン、オゾン生成能、エバポエミッション等)の量を低減させ得る環境対応型無鉛ガソリンを提供することを目的とする。
【0004】
【課題を解決するための手段】
すなわち、本発明に係る無鉛ガソリンは、下記の(1)〜(11)に示す条件を悉く満足し、かつ、下記の(12)〜(14)に示す条件の少なくとも1つを満たすものである。
(1)リサーチ法オクタン価96以上
(2)硫黄含有量50ppm以下
(3)50%留出温度が75〜100℃
(4)90%留出温度が110〜160℃
(5)蒸留終点が130〜210℃
(6)未洗実在ガム20mg/100ml以下および洗浄実在ガム3mg/100ml以下
(7)含酸素化合物含有量が酸素原子換算で0〜2.7質量%
(8)密度(15℃)が0.73〜0.77g/cm
(9)総発熱量が40000J/g以上
(10)酸化安定度が480分以上
(11)銅板腐食が1
(12)各芳香族成分が以下のような条件を満たす
▲1▼V(Ar):40容量%以下
▲2▼V(Bz):0〜1容量%
▲3▼V(Tol):5〜30容量%
▲4▼V(CA):0〜20容量%
▲5▼V(CA):0〜5容量%
▲6▼V(C10 A):0〜3容量%
▲7▼(V(CA)+V(C10 A))/(V(Tol)+V(CA)):0〜0.2
▲8▼V(PA)=0またはV(PA)≠0の際にV(MA)/V(PA):1以上
(上記▲1▼〜▲8▼において、V(Ar)、V(Bz)、V(Tol)、V(CA)、V(CA)、V(C10 A)、V(MA)およびV(PA)は、それぞれ無鉛ガソリン全量基準の全芳香族分、ベンゼン、トルエン、炭素数8の芳香族化合物、炭素数9の芳香族化合物、炭素数10以上の芳香族化合物、モノアルキル置換芳香族化合物および2以上のアルキル基で置換された芳香族化合物の含有量を表す。)
(13)各脂肪族分が以下の条件を満たす
▲1▼V(C):15〜35容量%
▲2▼V(C):10〜30容量%
▲3▼V(C7+p):10〜30容量%
(上記において、V(C)、V(C)およびV(C7+p)は、それぞれ無鉛ガソリン全量基準の炭素数5の脂肪族炭化水素化合物、炭素数6の脂肪族炭化水素化合物および炭素数7以上の飽和脂肪族炭化水素化合物の含有量を表す。)
(14)炭素数4の炭化水素化合物の含有量が0〜5容量%
【0005】
以下本発明の無鉛ガソリンに課せられる諸条件に関して詳述する。
(1) 本発明の無鉛ガソリンは、リサーチ法オクタン価(RON)が96以上、好ましくは98以上、より好ましくは99.5以上、最も好ましくは100以上である。本発明の無鉛ガソリンにおいて、RONが96に満たない場合は、耐ノッキング性が悪くなり好ましくない。本発明の無鉛ガソリンでは、RONが96以上であると共に、モーター法オクタン価(MON)が86以上、好ましくは87.5以上、最も好ましくは88以上であることが望ましい。モーター法オクタン価が86に満たない場合は、高速走行中のアンチノック性が劣るからである。
ここで、リサーチ法オクタン価およびモ−タ−法オクタン価とは、それぞれ、JIS K 2280「オクタン価及びセタン価試験方法」により測定されるリサーチ法オクタン価およびモ−タ−法オクタン価を意味する。
(2) 本発明の無鉛ガソリンは、硫黄分含有量がガソリン全量基準で、50ppm以下、好ましくは30ppm以下、より好ましくは20ppm以下、最も好ましくは10ppm以下であることが必要である。硫黄分含有量が50ppmを越える場合、排出ガス処理触媒の性能に悪影響を及ぼし、排出ガス中のNOx、CO、HCの濃度が高くなる可能性があり、またベンゼンの排出量も増加する可能性がある。
ここで、硫黄分とは、JIS K 2541「原油及び石油製品−硫黄分試験方法」により測定される硫黄分を意味している。
本発明の無鉛ガソリンは、また、JIS K 2254「石油製品−蒸留試験方法」によって測定される蒸留性状が、
(3)50容量%留出温度(T50):75〜100℃
(4)90容量%留出温度(T90):110〜160℃
(5)終点:130〜210℃
であることが必要である。
T50の下限値は75℃、好ましくは80℃であり、75℃に満たない場合は高温運転性に不具合が生じる可能性がある。一方、T50の上限値は100℃、好ましくは95℃、より好ましくは90℃であり、100℃を超える場合には、中低温運転性に不具合が生じる可能性がある。
T90の上限値は、160℃、好ましくは155℃、より好ましくは150℃、最も好ましくは145℃であり、160℃を越える場合は加速応答性に不具合が生じる、排出ガス中のHCの量が多くなる、排出ガスのオゾン生成能が高くなる、ベンゼン濃度が高くなるなどの可能性がある。またT90の下限値は110℃である。
蒸留終点の上限値は、210℃、好ましくは200℃、より好ましくは190℃、最も好ましくは180℃であり、終点が210℃を越える場合は吸気弁および燃焼室内にデポジットが増加する可能性があり、またプラグのくすぶりが起きやすくなる可能性がある。蒸留終点の下限値は130℃である。
(6) 本発明の無鉛ガソリンは、JIS K 2261「石油製品−自動車ガソリン及び航空燃料油−実在ガム試験方法−噴射蒸発法」により測定した未洗実在ガムが、20mg/100ml以下であって、洗浄実在ガムが3mg/100ml以下、好ましくは1mg/100ml以下であることが必要である。未洗実在ガムおよび洗浄実在ガムが上記の値を超えた場合は、燃料導入系統において析出物が生成したり、吸入弁が膠着する心配がある。
(7) 本発明の無鉛ガソリンにおいて、含酸素化合物の含有量は無鉛ガソリン全量基準で酸素元素換算で0〜2.7質量%、好ましくは0〜2.0質量%であることが必要である。2.7質量%を越える場合は、無鉛ガソリンの燃費が悪化し、また排出ガス中のNOxが増加する可能性がある。
ここで含酸素化合物とは、炭素数2〜4のアルコール類、炭素数4〜8のエーテル類などを指す。本発明の無鉛ガソリンに配合可能な含酸素化合物としては、エタノール、メチルターシャリーブチルエーテル(MTBE)、エチルターシャリーブチルエーテル、ターシャリーアミルメチルエーテル(TAME)、ターシャリーアミルエチルエーテルなどがあり、なかでもMTBE、TAMEが好ましく、最も好ましくはMTBEである。なお、メタノールは排出ガス中のアルデヒド濃度が高くなる可能性があり、腐食性もあるので好ましくない。
(8) 本発明の無鉛ガソリンの密度(15℃)は、0.73〜0.77g/cmであることが必要である。密度の下限値は0.73g/cm、好ましくは0.735g/cmであり、0.73g/cmに満たない場合は燃費が悪化する可能性がある。一方、密度の上限値は0.77g/cm、好ましくは0.76g/cmであり、0.77g/cmを超える場合は加速性の悪化やプラグのくすぶりを生じる可能性がある。
ここで、密度とは、JIS K 2249「原油及び石油製品の密度試験方法並びに密度・質量・容量換算表」により測定される密度を意味する。
(9) 本発明の無鉛ガソリンの、JIS K 2279「原油及び石油製品−発熱量試験方法及び計算による推定方法」により測定した総発熱量は、40000J/g以上、好ましくは45000J/g以上であることが必要である。
(10) 本発明の無鉛ガソリンの、JIS K 2287「ガソリン酸化安定度試験方法(誘導期間法)」によって測定した酸化安定度は、480分以上、好ましくは1440分以上であることが必要である。酸化安定度が480分に満たない場合は、貯蔵中にガムが生成する可能性がある。
(11) 本発明の無鉛ガソリンは、銅板腐食(50℃、3h)が1、好ましくは1aであることが望ましい。銅板腐食が1を越える場合は、燃料系統の導管が腐食する可能性がある。
ここで、銅板腐食とは、JIS K 2513「石油製品−銅板腐食試験方法」(試験温度50℃、試験時間3時間)に準拠して測定されるものである。
【0006】
本発明の無鉛ガソリンは、上記した全11条件をすべて満たすと共に、芳香族成分含有量に関する条件(12)、脂肪族成分含有量に関する条件(13)およびC4炭化水素含有量に関する条件(14)の3条件の少なくとも1つを満たすものである。もちろん、本発明の無鉛ガソリンは、(1)〜(11)の条件に加えて、(12)〜(14)の3条件の任意の2つを同時に満足していて差し支えなく、また3条件すべてを満足していても差し支えない。すなわち、本発明の無鉛ガソリンには、
(1)〜(11)+(12)
(1)〜(11)+(13)
(1)〜(11)+(14)
(1)〜(11)+(12)+(13)
(1)〜(11)+(12)+(14)
(1)〜(11)+(13)+(14)
(1)〜(11)+(12)+(13)+(14)
の条件を満足する各ガソリンが包含される。
(12)芳香族成分含有量に関する条件は次のように規定される。
▲1▼V(Ar):40容量%以下
▲2▼V(Bz):0〜1容量%
▲3▼V(Tol):5〜30容量%
▲4▼V(CA):0〜20容量%
▲5▼V(CA):0〜5容量%
▲6▼V(C10 A):0〜3容量%
▲7▼(V(CA)+V(C10 A))/(V(Tol)+V(CA)):0〜0.2
▲8▼V(PA)=0またはV(PA)≠0の際にV(MA)/V(PA):1以上
上記のV(Ar)は、ガソリン全量基準の全芳香族分含有量を示すが、これはJIS K 2536「石油製品−炭化水素タイプ試験方法」の蛍光指示薬吸着法により測定される値である。本発明の無鉛ガソリンの全芳香族分含有量は、プラグのくすぶりを低減させる、排出ガスのオゾン生成能を低く抑える、排出ガス中のベンゼン濃度を低減させるなどの観点から、無鉛ガソリン全量基準で40容量%以下、好ましくは35容量%以下、より好ましくは30容量%以下、最も好ましくは25容量%以下にある。また、上述の方法によって測定される飽和分、オレフィン分の含有量は、それぞれ無鉛ガソリン全量基準で30〜80容量%、0〜30容量%であることが望ましい。
上記のV(Bz)は、ガソリン全量基準のベンゼン含有量を示し、本発明ではその値が0〜1容量%、好ましくは0〜0.5容量%である。ベンゼンの含有量を0〜1容量%とすることによって、排出ガス中のベンゼン濃度を低く抑えることができる。
上記のV(Tol)およびV(CA)は、それぞれガソリン全量基準のトルエン含有量およびC8芳香族炭化水素含有量を示し、本発明ではこれがそれぞれ5〜30容量%および0〜20容量%の範囲にある。なお、C8芳香族炭化水素には、エチルベンゼン、キシレン(全ての置換異性体を含む)等が含まれる。
上記のV(CA)は、ガソリン全量基準のC9芳香族炭化水素含有量を示し、本発明では排出ガスのオゾン生成能を低く抑えるために、その値は0〜5容量%、好ましくは0〜3容量%に抑えられる。C9芳香族炭化水素には、n−プロピルベンゼン、イソプロピルベンゼン(クメン)、エチルメチルベンゼン(全ての置換異性体を含む)、トリメチルベンゼン(全ての置換異性体を含む)等が包含される。
上記のV(C10 A)は、ガソリン全量基準のC10以上の芳香族炭化水素含有量を示し、本発明では排出ガスのオゾン生成能を低く抑えるために、その量が0〜3容量%、好ましくは0〜1容量%、より好ましくは0容量%に抑えられる。C10以上の芳香族炭化水素には、ジエチルベンゼン(全ての置換異性体を含む)、ジメチルエチルベンゼン(全ての置換異性体を含む)、テトラメチルベンゼン(全ての置換異性体を含む)、n−ブチルメチルベンゼン(全ての置換異性体を含む)等が包含される。
本発明の無鉛ガソリンにあっては、排気ガスのオゾン生成能を低く抑え、高い運転性を保証するために、炭素数9以上の芳香族炭化水素の含有量の合計量(V(C ))と、トルエンおよび炭素数8の芳香族炭化水素の含有量の合計量(V(C7,8))の比、すなわちV(C )/V(C7,8)が、0〜0.2、好ましくは0〜0.1に維持される。
上記のV(MA)およびV(PA)は、それぞれガソリン全量を基準としたモノアルキル置換芳香族炭化水素含有量および2つ以上のアルキル基で置換された芳香族炭化水素の含有量を示すが、本発明にあってはV(PA)が0またはV(PA)が0でない場合、前者の含有量と、後者の含有量の比、V(MA)/V(PA)は1以上、好ましくは1.5以上、より好ましくは2以上に維持される。なお、上記したV(Bz)、V(Tol)、V(CA)、V(CA)、V(C10 A)、V(C )、V(C7,8)、V(MA)およびV(PA)は、いずれもJIS K 2536「石油製品−炭化水素タイプ試験方法」のガスクロマトグラフ法で定量して得られる値である。
(13)脂肪族成分含有量に関する条件は次のように規定される。
▲1▼V(C):15〜35容量%
▲2▼V(C):10〜30容量%
▲3▼V(C7+p):10〜30容量%
上記のV(C)は、ガソリン全量を基準とした炭素数5の脂肪族炭化水素含有量を示し、本発明ではその量が15〜35容量%の範囲にある。炭素数5の脂肪族炭化水素の含有量を15容量%以上にすることで、常温運転性に優れた無鉛ガソリンが得られる。また、これを35容量%以下にすることで高温運転性に優れた無鉛ガソリンが得られる。そして、炭素数5の脂肪族炭化水素の中の不飽和炭化水素の含有量が0であるか、あるいは炭素数5の脂肪族炭化水素の中の飽和炭化水素の含有量(V(Cp))と、不飽和炭化水素の含有量(V(Co))との比、すなわち、V(Cp)/V(Co)が1以上、好ましくは1.5以上であることが望ましい。炭素数5の飽和脂肪族炭化水素には、n−ペンタン、2−メチルブタン(イソペンタン)、2,2−ジメチルプロパン(ネオペンタン)等が包含され、同じく不飽和脂肪族炭化水素にては、1−ペンテン、2−ペンテン、2−メチル−1−ブテン、2−メチル−2−ブテン、3−メチル−1−ブテン等が包含される。
上記のV(C)は、ガソリン全量を基準とした炭素数6の脂肪族炭化水素の含有量を示し、本発明ではその量が10〜30容量%の範囲にある。炭素数6の脂肪族炭化水素化合物の含有量を10容量%以上にすることで、常温運転性に優れた無鉛ガソリンが得られる。また、これを30容量%以下にすることで高温運転性に優れた無鉛ガソリンが得られる。そして、炭素数6の脂肪族炭化水素の中の飽和炭化水素の含有量が0であるか、或るいは炭素数6の脂肪族炭化水素の中の飽和炭化水素の含有量(V(Cp))と、不飽和炭化水素の含有量(V(Co))との比、すなわち、V(Cp)/V(Co)は2以上、好ましくは3以上であることが望ましい。炭素数6の飽和脂肪族炭化水素化合物としては、n−ヘキサン、2−メチルペンタン、3−メチルペンタン、2,2−ジメチルブタン、2,3−ジメチルブタン等があり、同じく不飽和脂肪族炭化水素化合物としては、1−ヘキセン、2−ヘキセン、3−ヘキセン、2−メチル−1−ペンテン、3−メチル−1−ペンテン、4−メチル−1−ペンテン、2−メチル−2−ペンテン、3−メチル−2−ペンテン、4−メチル−2−ペンテン、2,3−ジメチル−1−ブテン、3,3−ジメチル−1−ブテン、2,3−ジメチル−2−ブテン等がある。
上記のV(C7+p)は、ガソリン全量を基準とした炭素数7以上の飽和脂肪族炭化水素の含有量を示し、本発明ではその量が10〜30容量%の範囲にある。炭素数7以上の飽和脂肪族炭化水素の含有量を10容量%以上にすることで、常温運転性に優れた無鉛ガソリンが得られ、これを30容量%以下にすることで高温運転性に優れた無鉛ガソリンが得られる。炭素数7以上の飽和脂肪族炭化水素としては、n−ヘプタン、2−メチルヘキサン、3−メチルヘキサン、2,2−ジメチルペンタン、2,3−ジメチルペンタン、2,4−ジメチルペンタン、3,3−ジメチルペンタン、3−エチルペンタン、2,2,3−トリメチルブタン等ある。
なお、上記したV(C)(V(Cp)、(V(Co)、V(C)、(V(Cp)、(V(Co)およびV(C7+p)は、以下に示すガスクロマトグラフィー法により定量される値である。すなわち、カラムにはメチルシリコンのキャピラリーカラム、キャリアガスにはヘリウムまたは窒素を、検出器には水素イオン化検出器(FID)を用い、カラム長25〜50m、キャリアガス流量0.5〜1.5ml/min、分割比1:50〜1:250、注入口温度150〜250℃、初期カラム温度−10〜10℃、終期カラム温度150〜250℃、検出器温150〜250℃の条件で測定した値である。
(14) 炭素数4の炭化水素含有量に関する条件は、その量がガソリン全量基準で0〜5容量%、好ましくは0〜3容量%であることである。炭素数4の炭化水素化合物の含有量を5容量%以下にすることによって、エバポエミッションの量を低く抑えられる。なお、炭素数4の炭化水素化合物の含有量は、上記したガスクロマトグラフィー法により測定される値であり、炭素数4の炭化水素化合物としては、n−ブタン、2−メチルブタン(イソブタン)、1−ブテン、2−ブテン、2−メチルプロペン等がある。
【0007】
本発明の無鉛ガソリンは、四エチル鉛などのアルキル鉛化合物を実質的に含有しないガソリンであり、たとえ極微量の鉛化合物を含有する場合でも、その含有量はJIS K 2255「ガソリン中の鉛分試験方法」の適用区分下限値以下である。
本発明の無鉛ガソリンは、上記したような諸条件を満足することに加えて、高いガソリン性能を維持するため、下記の式(1)
NDI=4E1+3E2+2E3−E4−4E5 (1)
(式中、E1、E2、E3、E4、E5はそれぞれ、JIS K 2254の蒸留試験によって得られた蒸留曲線から求められる、70℃未満の留分量(容量%)、70〜100℃の留分量(容量%)、100〜130℃の留分量(容量%)、130〜160℃の留分量(容量%)、160℃以上の留分量(容量%)を表す。)
で表される運転性指標NDIが、200以上、好ましくは225以上であることが望ましい。
そしてまた、本発明の無鉛ガソリンは、下のような蒸留性状を有することが望ましい。
10容量%留出温度(T10):40〜60℃
30容量%留出温度(T30):60〜80℃
70容量%留出温度(T70):105〜130℃
なお、これらの値は前述したJIS K 2254によって測定された値を表す。
本発明の無鉛ガソリンの蒸気圧にはなんら制限はないが、ベーパーロックによる運転性の不具合が生じず、またエバポエミッションの量が抑えられることから、蒸気圧が70kPa以下、好ましくは65kPa以下、より好ましくは60kPa以下、最も好ましくは55kPa以下であることが望ましい。ここで言う蒸気圧とは、JIS K 2258「原油及び燃料油蒸気圧試験方法(リ−ド法)」により測定される蒸気圧(リード蒸気圧(RVP))を意味する。
さらに、本発明の無鉛ガソリンは、灯油混入量が4容量%以下であることが望ましい。ここで、灯油混入量とは無鉛ガソリン全量基準での炭素数13〜14の炭化水素含有量(容量%)を表し、この量は以下に示すガスクロマトグラフィー法により定量して得られるものである。すなわち、カラムにはメチルシリコンのキャピラリーカラム、キャリアガスにはヘリウムまたは窒素を、検出器には水素イオン化検出器(FID)を用い、カラム長25〜50m、キャリアガス流量0.5〜1.5ml/min、分割比1:50〜1:250、注入口温度150〜250℃、初期カラム温度−10〜10℃、終期カラム温度150〜250℃、検出器温150〜250℃の条件で測定した値である。
【0008】
【発明の実施の形態】
本発明の無鉛ガソリンは任意の方法で製造することができる。この際用いられるガソリン基材としては、例えば、任意の性状を有する、原油を常圧蒸留して得られる軽質ナフサ;接触分解法、水素化分解法などで得られる分解ガソリン;接触改質法で得られる改質ガソリン;オレフィンの重合によって得られる重合ガソリン;イソブタンなどの炭化水素に低級オレフィンを付加(アルキル化)することによって得られるアルキレート;軽質ナフサを異性化装置でイソパラフィンに転化して得られる異性化ガソリン;脱n−パラフィン油;ブタン;芳香族炭化水素化合物;プロピレンを二量化し、続いてこれを水素化して得られるパラフィン留分などが挙げられる。
典型的な配合例を説明すると、本発明の無鉛ガソリンは、例えば
(1)改質ガソリン:0〜70容量%
(2)改質ガソリンの軽質留分(沸点範囲:25〜120℃程度):0〜35容量%
(3)改質ガソリンの重質留分(沸点範囲:110℃〜200℃程度):0〜 45容量%
(4)分解ガソリン:0〜50容量%
(5)分解ガソリンの軽質留分(沸点範囲:25〜90℃程度):0〜45容量%
(6)アルキレート:0〜40容量%
(7)プロピレンを二量化し、続いてこれを水素化して得られるパラフィン留分:0〜30容量%
(8)異性化ガソリン:0〜30容量%
(9)MTBE:0〜15容量%
(10)軽質ナフサ:0〜10容量%
(11)ブタン:0〜10容量%
を調合することによって得られる。この場合、各調合基材の個々の配合量は、最終的に得られる無鉛ガソリンが、本発明の規定を満足するように、上に示した範囲から選択されることはもちろんである。
また、本発明の無鉛ガソリンを製造するにあたって、ベンゼンの含有量を低減させる場合、その低減方法は任意であるが、特にベンゼンは改質ガソリン中に多く含まれていることから、改質ガソリンの配合割合を少なくすること、および
(1)改質ガソリンを蒸留してベンゼン留分を除去する
(2)改質ガソリン中のベンゼンをスルホラン等の溶剤を用いて抽出する
(3)改質ガソリン中のベンゼンを他の化合物に転化する
(A)ベンゼンを水素化しシクロヘキサン、メチルシクロペンタン等に転化する
(B)ベンゼンおよび炭素数9以上の芳香族炭化水素化合物とを反応させ、トルエン、キシレン、エチルベンゼン等に転化する
(C)ベンゼンを低級オレフィン(エチレン、プロピレン等)または低級アルコール(メタノール、エタノール等)を用いてアルキル化する
(4)接触改質装置の原料として、炭素数6の炭化水素化合物を蒸留して除去した脱硫重質ナフサを用いる
(5)接触改質装置の運転条件を変更する
などの方法によって、改質ガソリン中のベンゼン濃度を低下させる処理を行い、これをガソリン基材として用いることなどが、好適なものとして挙げられる。
本発明の無鉛ガソリンには、コハク酸イミド、ポリアルキルアミン、ポリエーテルアミンなどの清浄分散剤を添加することが望ましいが、その清浄分散剤は空気中300℃熱分解をした場合に、残分が無いものが好ましい。
また、本発明の無鉛ガソリンには、必要に応じて、その他の公知の燃料油添加剤を添加することができる。この様な添加剤としては、具体的には例えばフェノール系、アミン系などの酸化防止剤;シッフ型化合物やチオアミド型化合物などの金属不活性化剤;有機リン系化合物などの表面着火防止剤;多価アルコールおよびそのエーテルなどの氷結防止剤;有機酸のアルカリ金属塩またはアルカリ土類金属塩、高級アルコール硫酸エステルなどの助燃剤;アニオン系界面活性剤、カチオン系界面活性剤、両性界面活性剤などの帯電防止剤;アゾ染料などの着色剤;アルケニルコハク酸エステルなどのさび止め剤;キリザニン、クマリンなどの識別剤;天然精油合成香料などの着臭剤等が挙げられる。これらの添加剤は、1種または2種以上を添加することができ、その合計添加量はガソリン全量基準で0.1質量%以下とすることが好ましい。
【0009】
【実施例】
次に実施例および比較例により本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの例によって何ら限定されるものではない。
実施例1〜5および比較例1〜4
まず、実施例、比較例で用いたガソリン基材の組成、性状を表1に示す。
【表1】
Figure 0003600330
表1に示した各ガソリン基材を、表2〜表3に示すような配合割合で混合し、実施例、比較例の各試料油を調製した。これらの各試料油を用いて、次のような運転性試験を行った。結果を表2〜表3に示す。
[加速性試験]
シャーシーダイナモ上で排気量2.0L、燃料噴射方式の車両を30km/h一定で走行し、スロットルを全開にして30km/h→100km/hの所要時間を求めた。
[応答性試験]
排気量2.0Lのエンジン単体を油水温80℃、回転数1200rpmで運転し、吸気圧を−66.7kPaから−40kPaに急開したときのトルク変化を測定した。スロットルを急開してからトルクが安定するまでの時間を応答時間として求めた。
【表2】
Figure 0003600330
【表3】
Figure 0003600330
また、実施例、比較例の試料油を用いて、下記に示す方法により排出ガス中のベンゼン濃度、排出ガスのオゾン生成能、エバポエミッションの量、排出ガス中のNOx、CO、HCの量を測定した。
[ベンゼン排出量]
排気量2.0L、燃料噴射方式の車両を用いて、TRIAS 23−4−1991「ガソリン自動車アイドリングおよび10・15モード排出ガス試験方法」に準拠して10・15モードの排気ガスを測定した。採取した排出ガスを高沸点炭化水素用ガスクロマトグラフィーと低沸点炭化水素ガスクロマトグラフィーを用いて炭化水素成分分析した。この結果よりベンゼン排出量を求めた。結果を表4に示す。
【表4】
Figure 0003600330
[排出ガスのオゾン生成能]
排気量2.0L、燃料噴射方式の車両を、TRIAS 23−4−1991「ガソリン自動車アイドリングおよび10.15モード排出ガス試験方法」に準拠して10・15モードの排気ガスを測定した。採取した排出ガスをガスクロマトグラフィーを用いて各炭化水素化合物の成分分析を行った。この分析結果より、SAE Paper 920325に記載の方法に準拠して、すなわち各炭化水素化合物成分の個々のオゾン生成能の値から、排出ガス全体のオゾン生成能の指標であるOFT−MIR、OFT−MOR、SR−MIR、SR−MORを求めた。結果を表5に示す。
【表5】
Figure 0003600330
[エバポエミッション量]
10・15モード(TRIAS 23−4−1991)を3回運転し、燃料系大気開口部に取り付けたトラップの重量変化を測定した。これにより車両からの蒸発ガス量を測定した。結果を表6に示す。
【表6】
Figure 0003600330
[排出ガス中のNOx、CO、HC濃度の測定方法]
排気量2.0L、燃料噴射方式の車両を用いて、TRIAS 23−4−1991「ガソリン自動車アイドリングおよび10・15モード排出ガス試験方法」に準拠して10・15モードの排気ガスを採取し、NOx、CO、HCの量を測定した。結果を表7に示す。
【表7】
Figure 0003600330

Claims (7)

  1. 下記(1)〜(12)の条件を満たす無鉛ガソリン。
    (1)リサーチ法オクタン価96以上
    (2)硫黄含有量50ppm以下
    (3)50%留出温度が75〜100℃
    (4)90%留出温度が110〜160℃
    (5)蒸留終点が130〜210℃
    (6)未洗実在ガムが20mg/100ml以下および洗浄実在ガムが3mg/100ml以下
    (7)含酸素化合物含有量が酸素原子換算で0〜2.7質量%
    (8)密度(15℃)が0.73〜0.77g/cm3
    (9)総発熱量が40000J/g以上
    (10)酸化安定度が480分以上
    (11)銅板腐食が1
    (12)各芳香族成分が以下のような条件を満たす
    ▲1▼V(Ar):40容量%以下
    ▲2▼V(Bz):0〜1容量%
    ▲3▼V(Tol):5〜30容量%
    ▲4▼V(C8A):0〜20容量%
    ▲5▼V(C9A):0〜5容量%
    ▲6▼V(C10+A):0〜3容量%
    ▲7▼(V(C9A)+V(C10+A))/(V(Tol)+V(C8A)):0〜0.2
    ▲8▼V(PA)=0またはV(PA)≠0の際にV(MA)/V(PA):1以上
    (上記▲1▼〜▲8▼において、V(Ar)、V(Bz)、V(Tol)、V(C8A)、V(C9A)、V(C10+A)、V(MA)およびV(PA)は、それぞれ無鉛ガソリン全量基準の全芳香族分、ベンゼン、トルエン、炭素数8の芳香族化合物、炭素数9の芳香族化合物、炭素数10以上の芳香族化合物、モノアルキル置換芳香族化合物および2以上のアルキル基で置換された芳香族化合物の含有量を表す。)
  2. 前記(1)〜(11)および下記(13)の条件を満たす無鉛ガソリン。
    (13)各脂肪族分が以下の条件を満たす
    ▲1▼V(C5):15〜35容量%
    ▲2▼V(C6):10〜30容量%
    ▲3▼V(C7+p):10〜30容量%
    (上記において、V(C5)、V(C6)およびV(C7+p)は、それぞれ無鉛ガソリン全量基準の炭素数5の脂肪族炭化水素化合物、炭素数6の脂肪族炭化水素化合物および炭素数7以上の飽和脂肪族炭化水素化合物の含有量を表す。)
  3. 前記(1)〜(11)および下記(14)の条件を満たす無鉛ガソリン。
    (14)炭素数4の炭化水素化合物の含有量が0〜5容量%
  4. 前記(1)〜(13)の条件を満たす無鉛ガソリン。
  5. 前記(1)〜(12)および前記(14)の条件を満たす無鉛ガソリン。
  6. 前記(1)〜(11)、(13)および(14)の条件を満たす無鉛ガソリン。
  7. 前記(1)〜(14)の条件を満たす無鉛ガソリン。
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