JP3598984B2 - 回転検出装置 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、磁気抵抗素子を用いた回転検出装置に関するもので、例えば、車輪速度センサとして使用される回転検出装置に用いて好適である。
【0002】
【従来の技術】
近年、車輪速度センサによるABS制御を可能とするため、回転検出装置には回転方向の検出、すなわち正転および逆転の方向の検出という回転方向判定機能が要求されている。この回転方向判定機能を実現するためには、位相がずれた2つの信号が必要とされることから、従来では、磁気抵抗素子(MRE)で構成したブリッジを2組用意すると共に、各信号の位相が90°ずれるように各ブリッジを配置することで、回転方向判定機能が得られるようにしている(例えば、特開昭60−104262号公報、特開平3−191821号公報参照)。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、従来の構成においては、磁気抵抗素子ブリッジが配置されたセンサチップ等の組み付け誤差等により、信号のオフセットが発生してしまう。このオフセットは、各ブリッジからの信号が送られる回路側で学習制御等を実施することで取り除かれるが、このような処理を実施できる構成が必要となるために高コストになると共に、回転検出装置の耐ノイズ性が悪くなるという問題がある。
【0004】
本発明は上記問題に鑑みて、学習制御等を行わなくても回転方向検出が行える回転検出装置を提供することを目的とする。
【0005】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するため、請求項1に記載の発明では、回動する略円盤形状のロータ(1)に対して磁界を発生させるバイアス磁石(4)と、バイアス磁石とロータとの間に配置され、ロータの回動に伴って抵抗値を変化させる磁気抵抗素子(2A〜2C)と、磁気抵抗素子が形成された一面を有するセンサチップ(3)とを有してなる回転検出装置において、磁気抵抗素子は対称配置されたハの字形状を成して少なくとも3つ備えられており、そのうちの2つの磁気抵抗素子のハの字形状の中心線がロータの回転軸とは交差しない方向で、かつ、ロータの回転軸から径方向に伸びる仮想線に対してハの字形状の中心線が±所定角度ずつ傾斜するように配置されており、該少なくとも3つの磁気抵抗素子がロータの回転方向に並べられ、該少なくとも3つの磁気抵抗素子のうちから2つずつを組とした差動出力に基づいて、回転検出が行われるようになっていることを特徴としている。
【0006】
このように構成した回転検出装置においては、少なくとも3組の磁気抵抗素子をロータの回転方向に並べ、2つずつを組とした差動出力に基づいて回転方向の検出を行うようにしている。このため、各差動出力の位相をずらすことができ、学習制御等を行うことなく各差動出力に基づいて回転方向の検出を行うことができる。
【0007】
例えば、請求項2に示すように、ロータとして、該ロータの回転方向に対して所定周期でN極及びS極が交互に着磁された着磁ロータが用いられる場合に、少なくとも3つの磁気抵抗素子の間隔が磁極の周期(λ)の略1/4となるように設定すれば、各磁気抵抗素子の位相を90°ずらすことができる。この場合、請求項3に示すように、磁気抵抗素子を3つとし、該磁気抵抗素子のうち互いに隣接するもの同士を組として差動出力を得るようにすれば、各差動出力の位相を90°ずらすことができる。
【0008】
また、請求項5に示すように、磁気抵抗素子を4つとし、該4つの磁気抵抗素子のうち1つおきに配置されたもの同士を組みとして差動出力を得るようにすれば、各差動出力の位相を180°ずらすことができる。これにより、磁気抵抗素子と着磁ロータとの間の距離が狭いような狭ギャップにおいても、磁気抵抗素子の出力の歪みの部分で各磁気抵抗素子の出力の大小が入れ替わってしまうことをなくすことができ、高精度の検出が行えるようにできる。
【0009】
なお、上記各手段の括弧内の符号は、後述する実施形態に記載の具体的手段との対応関係を示すものである。
【0010】
【発明の実施の形態】
(第1実施形態)
図1に、本発明の一実施形態が適用された回転検出装置の上面模式図を示す。以下、この図に基づいて回転検出装置の構成についての説明を行う。
【0011】
図1に示される回転検出装置は、例えば、車両の各車輪毎に備えられ、車輪速度センサとして使用される。各車輪には、車軸と共に回動する略円盤形状の着磁ロータ1が備えられ、この着磁ロータ1の近傍に回転検出装置が配置されている。具体的には、着磁ロータ1は、回転方向に対して一定周期でN極及びS極が交互に着磁されており、回転検出装置は、着磁ロータ1の側面(端面)側において、着磁ロータ1の磁極の入れ替わりを検出するようになっている。
【0012】
回転検出装置は、通過する磁界の方向(磁束の方向)に基づいて抵抗値を変化させる磁気抵抗素子2A〜2Cと、磁気抵抗素子2A〜2Cが形成されたセンサチップ3と、着磁ロータ1に対して磁界を発生させるバイアス磁石4とを有して構成されている。
【0013】
磁気抵抗素子2A〜2Cは、ハの字形状のブリッジを成している。この磁気抵抗素子2A〜2Cは、センサチップ3の上に3組形成されており、1組は、着磁ロータ1の回動軸から径方向に伸びる仮想線を中心としてハの字形状が対称となるように、つまり磁気抵抗素子2が仮想線に対して45°の角度を成すように配置され、他の2組は、上記仮想線に対してハの字形状の中心線が±所定角度ずつ傾斜するように配置されている。これら各組の磁気抵抗素子2A〜2Cは、着磁ロータ1の側面に対向するように配置され、各組の間の距離は、着磁ロータ1の磁極の1周期をλとすると、λの略1/4となるように設定されている。このような構成においては、着磁ロータ1の磁極が回転によって入れ替わると、磁気抵抗素子2A〜2Cの表面に対して垂直方向に入力信号磁界が変化するようになっている。なお、各組の磁気抵抗素子2A〜2Cは、ハの字形状に並べられた各素子が直列接続され、その中点電位を検出出力として出力できるように構成されている。
【0014】
センサチップ3は、略直方体で構成され、その一面側に磁気抵抗素子2A〜2Cが形成された構成となっている。このセンサチップ3は、磁気抵抗素子2A〜2Cが形成された一面が着磁ロータ1の側面と略平行を成すように配置されている。
【0015】
バイアス磁石4は、例えば直方体や円筒形等で構成され、一端側がN極、他端側がS極となるように着磁されている。そして、バイアス磁石4は、その磁気的中心が仮想線S上に配置され、その仮想線上においてバイアス磁石4よりも着磁ロータ1側に配置された磁気抵抗素子2A〜2Cを通過するように、放物線状に着磁ロータ1の側面側にバイアス磁界を発生させられるようになっている。
【0016】
続いて、図2に、回転検出装置の模式的な回路構成を示し、この図に基づいて回転検出装置の回路構成の説明を行う。
【0017】
図に示すように、3組の磁気抵抗素子2A〜2Cのそれぞれには、電源電圧が印加され、ハの字状に並べられたブリッジの中点電位が出力電位として出力されるようになっている。そして、3組の磁気抵抗素子2A〜2Cのうち互いに隣接するもの同士(2Aと2B、2Bと2C)の出力電圧の差動分が第1、第2の増幅器4、5によって増幅されたのち、それぞれの差動出力が第1、第2のコンパレータ6、7を介して、分圧抵抗8a、8b及び9a、9bによって形成された参照電圧と大小比較されるようになっている。
【0018】
そして、第1のコンパレータ6の出力がEXOR回路10に入力されると共に、第2のコンパレータ7の出力がD型フリップフロップ11によって所定期間遅らされたのちEXOR回路10に入力されるようになっており、このEXOR回路10の出力が回転検出装置の検出信号として出力されるようになっている。
【0019】
なお、第1のコンパレータ6の出力に基づき立ち上がりエッジクロック抽出部12にて抽出される立ち上がりエッジタイミングと、第1のコンパレータ6の出力に基づきNOT回路13及び立ち下がりエッジクロック抽出部14にて抽出される立ち下がりタイミングとがOR回路15に入力されるようになっており、このOR回路15の出力がD型フリップフロップ11のクロック信号として用いられるようになっている。
【0020】
次に、上記構成の回転検出装置を用いた回転方向検出動作について、図3に示すタイミングチャートをもとに説明する。図3は、図2に示す回路構成中の各部の信号波形を表したものであり、着磁ロータ1が正転方向から逆転方向に変化させた場合におけるタイミングチャートに相当する。
【0021】
まず、図3の期間t1においては、磁気抵抗素子2B、2Cの差動により第1のコンパレータ6の出力はHiレベルとなり、磁気抵抗素子2A、2Bの差動により第2のコンパレータ7の出力はLowレベルとなる。このとき、立ち上がりエッジクロック抽出部12によって第1のコンパレータ6の立ち上がりタイミングが抽出されることから、D型フリップフロップ11にクロック信号が入力されることになり、第2のコンパレータ7の出力に基づき、D型フリップフロップ11の出力がLowレベルとなる。従って、この期間にはEXOR回路10の出力はLowレベルとなる。
【0022】
続いて、期間t2、すなわち期間t1から着磁ロータ1の磁極が略1/4周期変化したタイミングにおいては、第1のコンパレータ6の出力は変化しないが、第2のコンパレータ7の出力がHiレベルとなる。一方、この時にはまだD型フリップ11にクロック信号が入力されないため、D型フリップフロップ11の出力はLowレベルのままとなる。従って、この期間にもEXOR回路10の出力はLowレベルとなる。
【0023】
そして、期間t3、すなわち期間t2から着磁ロータ1の磁極がさらに略1/4周期変化したタイミングにおいては、第1のコンパレータ6の出力がLowレベルとなり、第2のコンパレータ7の出力がHiレベルのままとなる。このとき、立ち下がりエッジクロック抽出部14によって第1のコンパレータ6の立ち下がりタイミングが抽出されることから、D型フリップフロップ11にクロック信号が入力されることになり、第2のコンパレータ7の出力に基づき、D型フリップフロップ11の出力がHiレベルとなる。従って、この期間にはEXOR回路10の出力はLowとなる。
【0024】
この後、上記したような動作が繰り返され、期間t4において着磁ロータ1の回転方向が正転方向から逆転方向に変化したとすると、第1、第2のコンパレータ6、7の出力が正転回転時と逆になる。
【0025】
そして、期間t5において、第1のコンパレータ6の出力がLowレベルからHiレベルに変わると、この立ち上がりタイミングが立ち上がりエッジクロック抽出回路12によって抽出され、D型フリップフロップ11にクロック信号が入力される。このとき、第2のコンパレータ7の出力がHiレベルとなっていることから、D型フリップフロップ11の出力が期間t4から引き続いてHiレベルとなる。このため、EXOR回路10の出力がLowレベルからHiレベルに切換る。これにより、着磁ロータ1の回転方向が変化したことが検出される。
【0026】
以上説明したように、本実施形態に示した回転検出装置においては、3組の磁気抵抗素子2A〜2Cを着磁ロータ1の磁極の周期の略1/4の間隔で配置し、隣接する組同士の差動出力に基づいて回転方向の検出を行うようにしている。このため、各差動出力の位相を90°ずらすことができ、これら各差動出力に基づいて確実に回転方向の検出を行うことができる。
【0027】
また、例えば、図4(a)に示すように、バイアス磁石の磁気的中心と磁気抵抗素子とが位置ずれを起こした場合、磁気の振れ角中心がずれることになるため、図4(b)の一点鎖線で示すように磁気振れ角にオフセットが生じることになる。しかしながら、本実施形態における回転検出装置のように、差動検出を実施することにより、位置ずれを起こしても同相のオフセット成分をキャンセルすることができる。このため、図4(b)の実線に示すように磁気振れ角のオフセットの影響を無くすことができる。
【0028】
(第2実施形態)
上記第1実施形態では3組の磁気抵抗素子2A〜2Cから互いに隣接する2つを選んで差動出力を得るようにしているが、必ずしもこのようにする必要はない。例えば、4組の磁気抵抗素子を用意し、これら4組の磁気抵抗素子の間の間隔が着磁ロータ1の磁極の略1/4周期となるようにし、例えば、4つの磁気抵抗素子の中から1つおきに配置された磁気抵抗素子を組みとして、各組の差動出力を得るようにしてもよい。
【0029】
このようにすれば、180°位相がずれた磁気抵抗素子から差動出力を得ることができるため、第1実施形態の場合(90°ずれ)の倍の位相ずれとなる磁気抵抗素子に基づいて差動出力を得ることができる。このようにすることで、さらに高精度の検出が行えるようにできる。
【0030】
また、磁気抵抗素子と着磁ロータ1との距離が狭くなるような狭ギャップの場合には、各磁気抵抗素子の出力に歪みが生じ得る。このような場合に第1実施形態のような90°位相ずれとなる配置で差動出力を得ようとすると、図5(a)に示すように、歪みとなる部分において各磁気抵抗素子の出力の大小が入れ替わり、正確な差動出力が得られなくなる可能性がある。
【0031】
しかしながら、本実施形態のように、180°位相がずれた配置で差動出力が得られるようにすれば、図5(b)に示すように歪みとなる部分において各磁気抵抗素子の出力の大小が入れ替わることはない。これにより、より高精度の検出が行えるようにできる。
【0032】
(他の実施形態)
上記第1実施形態では、各磁気抵抗素子2A〜2Cを90°位相ずれが生じるような配置としたが、必ずしも90°である必要はない。例えば、上述したようにD型フリップフロップ11を用いることによって第1、第2のコンパレータ6、7の出力信号の位相差が入れ替わらないようにされていれば、90±44°の範囲で調整可能である。同様に、第2実施形態においても、必ずしも各磁気抵抗素子を180°位相ずれとする必要はない。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1実施形態における回転検出装置の概略構成を示す図である。
【図2】図1に示す回転検出装置の模式的な回路構成を示した図である。
【図3】図1に示す回転検出装置の各部のタイミングチャートを示した図である。
【図4】(a)は位置ずれが生じた場合の磁気振れ角の状態を示す図であり、(b)は位置ずれが生じた場合の磁気振れ角の変化を示した図である。
【図5】磁気抵抗素子を90°位相ずれで配置した場合と180°位相ずれで配置した場合とにおいて、差動出力の対象となる各磁気抵抗素子の出力波形の相違を示した図である。
【符号の説明】
1…着磁ロータ、2A〜2C…磁気抵抗素子、3…センサチップ、
4…バイアス磁石、4、5…第1、第2の増幅器、
6、7…第1、第2のコンパレータ、11…D型フリップフロップ。

Claims (5)

  1. 回動する略円盤形状のロータ(1)に対して磁界を発生させるバイアス磁石(4)と、
    前記バイアス磁石と前記ロータとの間に配置され、前記ロータの回動に伴って抵抗値を変化させる磁気抵抗素子(2A〜2C)と、
    前記磁気抵抗素子が形成された一面を有するセンサチップ(3)とを有してなる回転検出装置において、
    前記磁気抵抗素子は対称配置されたハの字形状を成して少なくとも3つ備えられており、そのうちの2つの磁気抵抗素子のハの字形状の中心線が前記ロータの回転軸とは交差しない方向で、かつ、前記ロータの回転軸から径方向に伸びる仮想線に対してハの字形状の中心線が±所定角度ずつ傾斜するように配置されており、該少なくとも3つの磁気抵抗素子が前記ロータの回転方向に並べられ、該少なくとも3つの磁気抵抗素子のうちから2つずつを組とした差動出力に基づいて、回転検出が行われるようになっていることを特徴とする回転検出装置。
  2. 前記ロータとして、該ロータの回転方向に対して所定周期でN極及びS極が交互に着磁された着磁ロータが用いられる場合に、前記少なくとも3つの磁気抵抗素子の間隔が前記磁極の周期(λ)の略1/4となるように設定されていることを特徴とする請求項1に記載の回転検出装置。
  3. 前記磁気抵抗素子は3つであり、該磁気抵抗素子のうち互いに隣接するもの同士を組として前記差動出力を得ていることを特徴とする請求項2に記載の回転検出装置。
  4. 前記3つの磁気抵抗素子のうちの1つは、前記仮想線を中心としてハの字形状が対称となるように配置され、他の2つは、前記仮想線に対してハの字形状の中心線が±所定角度ずつ傾斜するように配置されていることを特徴とする請求項3に記載の回転検出装置。
  5. 前記磁気抵抗素子は4つであり、該4つの磁気抵抗素子のうち1つおきに配置されたもの同士を組みとして前記差動出力を得ていることを特徴とする請求項2に記載の回転検出装置。
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