JP3598430B2 - 重合体組成物 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、溶融時の流動性に優れていて成形加工性が良好であり、しかも耐候性、耐熱性および耐衝撃性に優れた成形品を与えることのできる重合体組成物およびそれよりなる成形品に関する。
【0002】
【従来の技術】
一般に熱可塑性樹脂の耐衝撃性を改良する手段として、いわゆるエラストマー成分を混合して重合体組成物とする方法が行われている。そのような方法の一つとして、スチレン系エラストマーとの混合が一般的であるが、スチレン系エラストマーは通常耐候性に劣るために、その重合体組成物は屋外で使用される用途には適当でない場合がある。
【0003】
耐候性を低下させることなく耐衝撃性を付与するために、一部に架橋重合体の層を含む多層構造を有するアクリル系重合体を、熱可塑性樹脂に混合する例が多数提案されている(米国特許第3808180号明細書、米国特許第3793402号明細書、米国特許第4730023号明細書、特開昭62−230841号公報)。しかし、これらの方法では耐候性の低下は防止できるものの、架橋重合体成分の配合により熱可塑性樹脂が本来持つ溶融時の流動性を低下させ、射出成形や押出し成形などにおける成形加工性を低下させる傾向があるという問題がある。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、機械的強度、加熱溶融時の流動性(成形加工性)、耐候性、耐熱性などにおける熱可塑性樹脂に由来する優れた性質と、改善された耐衝撃性とを兼ね備えた重合体組成物を提供すること、そして、機械的強度、耐候性、耐熱性などにおける熱可塑性樹脂に由来する優れた性質と、改善された耐衝撃性とを兼ね備えた成形品を提供することである。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明者らが検討を重ねた結果、熱可塑性樹脂に対して、ポリアクリル酸アルキルエステルブロックの両末端にそれぞれ高シンジオタクチックなポリメタクリル酸アルキルエステルブロックが結合した構造を分子内に少なくとも1つ有するブロック共重合体を混合することによって、上記の目的に適合した重合体組成物および成形品が得られることを見いだし、本発明を完成するに至った。
【0006】
すなわち、本発明は第一に、アクリル系樹脂(a)、およびポリアクリル酸アルキルエステルブロックの両末端にそれぞれ高シンジオタクチックなポリメタクリル酸アルキルエステルブロックが結合した構造を分子内に少なくとも1つ有するブロック共重合体(b)を含有し、かつ{アクリル系樹脂(a)}:{ブロック共重合体(b)}の重量比が97:3〜50:50の範囲内であることを特徴とする重合体組成物である。
【0007】
そして、本発明は第二に、該重合体組成物からなる成形品である。
【0008】
【発明の実施の形態】
本発明において(a)成分としては、ポリメチルメタクリレートなどのアクリル系樹脂を用いる。
【0009】
アクリル系樹脂としては、例えば、メタクリル酸エステル−アクリル酸エステル共重合体樹脂、メタクリル酸エステル−無水マレイン酸共重合体樹脂、メタクリル酸エステル−スチレン共重合体樹脂、メタクリル酸エステル−スチレン−置換マレイミド共重合体樹脂、メタクリル酸エステル−置換マレイミド共重合体樹脂、メタクリル酸エステル−メタクリル酸共重合体樹脂、シンジオタクチックポリ(メタ)アクリル酸エステル樹脂、アイソタクチックポリ(メタ)アクリル酸エステル樹脂、アタクチックポリ(メタ)アクリル酸エステル樹脂、複数種の(メタ)アクリル酸エステル単位からなる(メタ)アクリル酸エステル共重合体樹脂などが挙げられるが、これらに限定されるものではない。なお、本明細書において、「(メタ)アクリル酸エステル」とは、「メタクリル酸エステル」と「アクリル酸エステル」との総称を意味する。
【0010】
これらのアクリル系樹脂のうちアイソタクチックポリメタクリル酸アルキルエステル樹脂を本発明において用いた場合には、耐薬品性に優れた重合体組成物が得られる。これは、アイソタクチックポリメタクリル酸アルキルエステル樹脂がブロック共重合体(b)との溶液混合または溶融混合によって、ブロック共重合体(b)中の高シンジオタクチックなポリメタクリル酸アルキルエステルブロック部とアイソタクチックなポリメタクリル酸アルキルエステル樹脂が結晶性のコンプレックスを形成するためであると推定される。
【0011】
本発明で使用するブロック共重合体(b)は、ポリアクリル酸アルキルエステルブロックの両末端にそれぞれ高シンジオタクチックなポリメタクリル酸アルキルエステルブロックが結合した構造(すなわち、「高シンジオタクチックなポリメタクリル酸アルキルエステルブロック」−「ポリアクリル酸アルキルエステルブロック」−「高シンジオタクチックなポリメタクリル酸アルキルエステルブロック」の構造)を、分子内に少なくとも1つ有する。高シンジオタクチックなポリメタクリル酸アルキルエステルブロックがポリアクリル酸アルキルエステルブロックにまったく結合していないか、またはその片末端に結合しているだけの場合には、熱可塑性樹脂との重合体組成物は、耐衝撃性または機械的強度に劣ったものとなる。
【0012】
本発明におけるブロック共重合体(b)において、ポリメタクリル酸アルキルエステルブロックとは、主としてメタクリル酸アルキルエステルモノマーから誘導される構造単位から構成されるポリマーブロックであり、それを形成させるためのメタクリル酸アルキルエステルモノマーとしては、例えば、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸n−プロピル、メタクリル酸イソプロピル、メタクリル酸n−ブチル、メタクリル酸イソブチル、メタクリル酸sec−ブチル、メタクリル酸t−ブチル、メタクリル酸アミル、メタクリル酸イソアミル、メタクリル酸n−ヘキシル、メタクリル酸ペンタデシル、メタクリル酸シクロヘキシル、メタクリル酸ラウリル等の1種以上を使用することができるが、上記例示のものに限定されるものではなく、本発明の効果を喪失しない限りにおいては、その一部を、メタクリル酸アリル、メタクリル酸ビニル等の、メタクリル酸アルキルエステルモノマー以外のメタクリル酸系モノマーに置き換えても差し支えない。ただし、耐熱性等において特に優れた重合体組成物を得る目的においては、メタクリル酸アルキルエステルモノマーとして、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸n−プロピル、メタクリル酸イソプロピル等の、メタクリル酸と炭素数3以下のアルカノールとのエステルをモノマーの主成分として使用することが好ましい。本発明の重合体組成物においては、高温における耐衝撃性および機械的強度の点から、ブロック共重合体(b)中のポリメタクリル酸アルキルエステルブロックのシンジオタクチシチーが高いことが重要であり、そのシンジオタクチシチーはトライアッドで60以上であることが好ましく、75以上であることがより好ましい。
【0013】
ブロック共重合体(b)において、ポリアクリル酸アルキルエステルブロックとは、主としてアクリル酸アルキルエステルモノマーから誘導される構造単位から構成されるポリマーブロックであり、それを形成させるためのアクリル酸アルキルエステルモノマーとしては、例えば、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸n−プロピル、アクリル酸イソプロピル、アクリル酸n−ブチル、アクリル酸イソブチル、アクリル酸sec−ブチル、アクリル酸t−ブチル、アクリル酸アミル、アクリル酸イソアミル、アクリル酸n−ヘキシル、アクリル酸2−エチルヘキシル、アクリル酸ラウリル等の1種以上を使用することができるが、上記例示のものに限定されるものではなく、本発明の効果を喪失しない限りにおいては、その一部を、アクリル酸アリル、アクリル酸ビニル等の、アクリル酸アルキルエステルモノマー以外のアクリル酸系モノマーに置き換えても差し支えない。
【0014】
ブロック共重合体(b)は、少なくとも1個のポリアクリル酸アルキルエステルブロックと少なくとも2個の高シンジオタクチックなポリメタクリル酸アルキルエステルブロックを有するが、本発明の効果を喪失しない限りにおいては、これらのブロック中またはこれらのブロックとは別のブロック中に、アクリル酸アルキルエステルモノマーおよびメタクリル酸アルキルエステルモノマー以外のモノマーから誘導される構造単位を有していてもよい。そのような他のモノマーの例としては、エチレン、プロピレン、1−ヘキセン、1−オクテン、ブタジエン、イソプレン、スチレン、ε−カプロラクトン、バレロラクトンなどを挙げることができる。
【0015】
ブロック共重合体(b)の分子鎖形態としては、特に限定されることなく、例えば、線状、分枝状、放射状などのいずれでもよい。
【0016】
ブロック共重合体(b)の数平均分子量は、必ずしも限られるものではないが、一般に10,000〜1000,000の範囲にあるのがよく、15,000〜700,000の範囲にあるのがより好ましい。また、ポリアクリル酸アルキルエステルブロックの数平均分子量は、必ずしも限られるものではないが、一般に9,000〜900,000の範囲にあるのがよく、12,000〜600,000の範囲にあるのがより好ましい。また、高シンジオタクチックなポリメタクリル酸アルキルエステルブロックの数平均分子量は、必ずしも限られるものではないが、一般に1,000〜450,000の範囲にあるのがよく、8,000〜300,000の範囲にあるのがより好ましい。
【0017】
ブロック共重合体(b)におけるメタクリル酸アルキルエステルモノマー由来の構造単位とアクリル酸アルキルエステルモノマー由来の構造単位の割合は、必ずしも限られるものではないが、一般にメタクリル酸アルキルエステル構造単位/アクリル酸アルキルエステル構造単位の重量比で5/95〜80/20の範囲内であるのが、本発明の重合体組成物から得られる成形品の柔軟性、耐衝撃性などの点から好ましく、この点において10/90〜75/25の範囲内にあるのがより好ましい。
【0018】
本発明で使用するブロック共重合体(b)は、必要に応じて、分子鎖中または分子鎖末端に水酸基、カルボキシル基、酸無水物、アミノ基などの官能基を有していてもよい。
【0019】
本発明で使用するブロック共重合体(b)の製造方法としては、特に限定されることなく、公知の手法に準じた方法を採用することができる。例えば、適当な重合開始剤を用いて、不活性溶媒中で、メタクリル酸アルキルエステルモノマーを主体とするモノマーの重合と、アクリル酸アルキルエステルモノマーを主体とするモノマーの重合とを、所望のブロック結合順序になるように順に重合することにより製造することができる。その場合に使用する重合開始剤としては、形成されるポリメタクリル酸アルキルエステルブロックのシンジオタクチシチーを高くしやすいことから、有機希土類金属錯体を使用することが好ましい。有機希土類金属錯体としては、ペンタメチルシクロペンタジエニル基を配位子として有する有機希土類金属錯体、例えば、ビス(ペンタメチルシクロペンタジエニル)サマリウムメチルテトラヒドロフラナート、ビス(ペンタメチルシクロペンタジエニル)イットリウムメチルテトラヒドロフラナートなどの3価の希土類金属原子を含む有機希土類金属錯体;ビス(ペンタメチルシクロペンタジエニル)サマリウムビステトラヒドロフラナートなどの2価の希土類金属原子を含む有機希土類金属錯体などが挙げられる。さらに上記の有機希土類金属錯体と共に、必要に応じて、例えばトリメチルアルミニウムなどのアルキルアルミニウム類を使用してもよい。また、重合用の不活性溶媒としては、例えば、ベンゼン、トルエン、キシレン等の炭化水素系溶媒;クロロホルム、塩化メチレン、四塩化炭素等のハロゲン化炭化水素系溶媒;テトラヒドロフラン、ジエチルエーテル等のエーテル系溶媒などを使用することができる。
【0020】
3価の希土類金属原子を含む有機希土類金属錯体を重合開始剤として使用してブロック共重合体(b)を製造する方法について例示すると、該方法は、有機希土類金属錯体を重合開始剤として使用してメタクリル酸アルキルエステルの重合を行う第1段階の重合工程、アクリル酸アルキルエステルの重合を行う第2段階の重合工程およびメタクリル酸アルキルエステルの重合を行う第3段階の重合工程を含む3段階以上の重合行程からなる。第1段階の重合工程で、活性アニオン末端を主鎖片末端に有するポリメタクリル酸アルキルエステルのリビングポリマーが生成し、第2段階の重合工程で活性アニオン末端をポリアクリル酸アルキルエステルブロックの片末端に有するポリメタクリル酸アルキルエステル−ポリアクリル酸アルキルエステルの2元ブロック構造のリビングポリマーが生成し、続く第3段階の重合工程で、活性アニオン末端を主鎖片末端に有する、ポリメタクリル酸アルキルエステル−ポリアクリル酸アルキルエステル−ポリメタクリル酸アルキルエステルの3元ブロック構造のリビングポリマーが生成する。4元以上のブロック共重合体を製造する場合には、所望のブロック構成となるまで、例えば、アクリル酸アルキルエステルの重合およびメタクリル酸アルキルエステルの重合をさらに交互に行えばよい。
【0022】
本発明の重合体組成物においては、{アクリル系樹脂(a)}:{ブロック共重合体(b)}の重量比が97:3〜50:50の範囲内、好ましくは95:5〜55:45の範囲内の場合には、アクリル系樹脂(a)に由来する性能が主体となり、ブロック共重合体(b)はアクリル系樹脂(a)に対して耐衝撃性を改善する作用を有する。
【0023】
なお、本発明の重合体組成物においては、ブロック共重合体(b)の含量が20重量%を越えると、蒸着膜密着性が良好となる。
【0024】
また本発明の重合体組成物は、本発明の効果を損なわない範囲であれば、上記した(a)成分および(b)成分の他に、必要に応じて他の重合体や添加剤を含有していてもよい。配合しうる他の重合体の例としては、ポリアクリレートゴム、ポリブテンゴム、ポリイソブチレンゴム、EPR、EPDM等の合成ゴムなどを挙げることができる。また、添加剤の例としては、成形加工時の流動性を向上させるためのパラフィン系オイル、ナフテン系オイルなどの鉱物油軟化剤;耐熱性、耐候性等の向上または増量などを目的とする炭酸カルシウム、タルク、カーボンブラック、酸化チタン、シリカ、クレー、硫酸バリウム、炭酸マグネシウムなどの無機充填剤;補強のためのガラス繊維、カーボン繊維などの無機繊維または有機繊維;熱安定剤;酸化防止剤;光安定剤;粘着剤;粘着付与剤;可塑剤;帯電防止剤;発泡剤などを挙げることができる。これらの添加剤の中でも、耐熱性、耐候性をさらに良好なものとするために、熱安定剤、酸化防止剤などを添加することが実用上好ましい。
【0025】
本発明の重合体組成物の調製方法は特に制限されず、例えば、アクリル系樹脂(a)およびブロック共重合体(b)を、必要に応じて上記した他の重合体や添加剤と同時に混合しても、ブロック共重合体(b)を、上記した他の重合体や添加剤とともに混合後、アクリル系樹脂(a)と混合してもよい。混合操作は、例えば、ニーダールーダー、押出し機、ミキシングロール、バンバリーミキサーなどの既知の混合または混練装置を使用して行うことができる。混合時または混練時の温度は、使用するアクリル系樹脂(a)の溶融温度などに応じて適宜調節するのがよく、通常、110℃〜300℃の範囲内の温度で混合するとよい。このようにして、本発明の重合体組成物を、ペレット、粉末などの任意の形態で得ることができる。ペレット、粉末などの形態の重合体組成物は、成形材料として使用するのに好適である。
【0026】
本発明の重合体組成物は、溶融流動性に優れるために、熱可塑性重合体に対して一般に用いられている成形加工方法や成形加工装置を用いて成形加工することができる。例えば、射出成形、押出し成形、圧縮成形、ブロー成形、カレンダー成形、真空成形などの任意の成形加工法によって成形加工することができ、それによって型物、パイプ、シート、フイルム、繊維状物、該重合体組成物からなる層を含む積層体等の任意の形態の成形品を得ることができる。
【0027】
上記のような本発明の重合体組成物からなる成形品は、機械的強度、耐候性、耐熱性および耐衝撃性に優れるために、食品包装シート、キャップライナーなどの食品包装材用途;日用雑貨用途;スキー靴等のスキー用具;ゴルフボールの外皮、コア材などの運動用具または玩具用途;デスクマットなどの文具用途;バンパーガードなどの自動車外内装用途;土木シート、防水シート、窓枠シーリング材、建築物用シーリング材などの土木建築用途;掃除機用コーナーバンパー、冷蔵庫用ドアシールなどの家電機器用途;AV機器用途;OA事務機器用途;靴底、トップリフト等の履き物・衣料用品用途;テキスタイル用途;医療用機器用途などとして種々の用途に用いることができる。
【0029】
【実施例】
以下に実施例などにより本発明を具体的に説明するが、本発明はそれにより限定されない。
【0030】
以下の実施例および比較例において、各ブロック共重合体の数平均分子量はゲルパーミエイションクロマトグラフィー(以下GPCと表す)により求めた。各ブロック共重合体中のポリメタクリル酸メチルブロックのシンジオタクチシチー(トライアッド)は、13C−NMR分析に基づいて求めた。また、重合体または重合体組成物の溶融流動性、重合体組成物から得られた成形品(試験片)の機械的強度、耐衝撃性、耐熱性および耐候性は、以下のようにして測定または評価した。
【0031】
(1)重合体または重合体組成物の溶融流動性:
ASTM D1238に準拠して、下記の実施例または比較例の重合体または重合体組成物のメルトフローレイト(MFR)を230℃、3.8kgの荷重、10分の条件で測定した。これを、溶融流動性の指標とした。
【0032】
(2)成形品の機械的強度:
下記の実施例または比較例の重合体または重合体組成物を用いて試験片を成形し、ASTM D638に準拠して破断強度を測定した。
【0033】
(3)成形品の耐衝撃性:
下記の実施例または比較例の重合体または重合体組成物を用いて、射出成形機により所定のシリンダー温度および金型温度で試験片を成形し、そのアイゾット衝撃強度を、ASTM D256に準拠してノッチ付き23℃の条件で測定した。
【0034】
(4)成形品の耐熱性:
下記の実施例または比較例の重合体または重合体組成物を用いて、射出成形機により所定のシリンダー温度および金型温度で成形して縦20cm×横20cm×厚さ2mmのシート状試験片を作製した。この試験片を150℃のエアーオーブン中に24時間置いた後取り出し、室温まで冷却した後のものについて、表面のべたつきを、指による触感に基づいて判定した。なお、耐熱性の評価は、下記の判定基準に従う4段階評価で行った。
耐熱性の評価:
◎:加熱前と同じでべたつきが全くなく良好
◯:ほとんどべたつきがない
△:ややべたつきがありやや劣る
×:激しくべたつきがあり劣る
【0035】
(5)成形品の耐候性:
耐熱性試験におけるのと同様のシート状試験片を作製し、この試験片をJISA1410に準拠して1カ月間の屋外暴露試験に供した。暴露試験後の試験片について、着色状態を肉眼観察すると共に表面のべたつき感を指での触感により判定し、これらの結果に基づいて耐候性を評価した。なお、耐候性の評価は下記の判定基準に従う5段階評価で行った。
耐候性の評価:
◎:着色およびべたつきが全くなく極めて良好
◯:着色およびべたつきがほとんどなく良好
△:着色およびべたつきがややある
×:着色およびべたつきがあり不良
××:着色およびべたつきが大きく極めて不良
【0036】
[実施例 1]
ポリメタクリル酸メチル−ポリアクリル酸n−ブチル−ポリメタクリル酸メチルのトリブロック構造を有するブロック共重合体(ポリメタクリル酸メチルブロックのシンジオタクチシチー:83.6%;数平均分子量:83,000;メタクリル酸メチル単位含有量:30重量%)の28重量部に、アクリル樹脂(メタクリル酸メチル約95重量%およびアクリル酸メチル約5重量%からなる共重合体樹脂)の72重量部および酸化防止剤(チバガイギー社製「イルガノックス1010」)の0.3重量部を加え、小型二軸押出し機により、220℃で溶融混練した後、押し出し、切断することによって、重合体組成物のペレットを製造した。この重合体組成物の溶融流動性(MFR)を上記した方法で測定したところ、下記の表1に示すとおりであった。
上記で得られた重合体組成物のペレットを用いて、上記した試験片を作製した。その耐衝撃性、機械的強度、耐熱性および耐候性を測定または評価したところ、下記の表1に示すとおりであった。
【0037】
[実施例 2〜4]
ブロック共重合体として、下記の表1に示すシンジオタクチシチー、数平均分子量およびメタクリル酸メチル単位含有量を有するポリメタクリル酸メチル−ポリアクリル酸n−ブチル−ポリメタクリル酸メチルのトリブロック構造を有するブロック共重合体を使用し、アクリル樹脂とブロック共重合体の混合割合を表1に示すものとした以外は、実施例1と同様にして重合体組成物のペレットを調製した。この重合体組成物の溶融流動性を測定すると共に、このペレットを用いて試験片を作製して上記した耐衝撃性、機械的強度、耐熱性および耐候性を測定または評価したところ、下記の表1に示すとおりであった。
【0038】
[比較例 1]
ブロック共重合体を加えずに実施例1で使用したものと同じアクリル樹脂のみを用いて、その溶融流動性を調べると共に、上記した試験片を作製した。さらに、その試験片を用いて、耐衝撃性、機械的強度、耐熱性および耐候性を測定または評価したところ、下記の表1に示すとおりであった。
【0039】
[比較例 2]
アクリル樹脂とブロック共重合体との混合比率(重量比)を99:1に変更した以外は実施例1と同様にして重合体組成物のペレットを調製した。この重合体組成物の溶融流動性を測定すると共に、このペレットを用いて試験片を作製して上記の諸性能を測定または評価したところ、下記の表1に示すとおりであった。
【0040】
[比較例 3]
ブロック共重合体の代わりに、多層構造を有するアクリル系重合体(ローム・アンド・ハース社製「DR−100」)を表1に示す割合で使用した以外は実施例1と同様にして、重合体組成物のペレットを調製した。この重合体組成物の溶融流動性を測定すると共に、このペレットを用いて試験片を作製して上記の諸性能を測定または評価したところ、下記の表1に示すとおりであった。
【0041】
[比較例 4]
アクリル樹脂を使用しないこと以外は実施例1と同様にして重合体組成物を製造し、その溶融流動性を調べると共に、上記した試験片を作製した。さらに、その試験片を用いて、耐衝撃性、機械的強度、耐熱性および耐候性を測定または評価したところ、下記の表1に示すとおりであった。
【0042】
【表1】
【0043】
上記表1中、比較例3における「アクリル樹脂/ブロック共重合体の重量比」の欄は、「アクリル樹脂/多層構造を有するアクリル系重合体の重量比」を示す。
【0044】
上記表1から、実施例1〜4における本発明に従う重合体組成物は溶融流動性に優れ、またそれから得られる成形品は、耐衝撃性、機械的強度、耐熱性および耐候性に優れることが分かる。これに対して、アクリル系樹脂単独の場合(比較例1)、およびアクリル系樹脂とブロック共重合体との重合体組成物であってもブロック共重合体の割合が本発明の範囲を外れて少なすぎる場合(比較例2)には、成形品の耐衝撃性において劣ることが分かる。ブロック共重合体の代わりに多層構造を有するアクリル系重合体を使用した重合体組成物の場合(比較例3)には、溶融流動性において劣ることが分かる。また、ブロック共重合体単独の場合(比較例4)には、成形品の機械的強度において劣ることが分かる。
【0045】
[実施例 5]
実施例1で得られた重合体組成物のペレットを単軸押出し機(フルフライトスクリュー;L/D=24;φ=40mm)に供給して、シリンダー温度230℃、押出し量8kg/時間、押出し速度2.8m/minの条件下にシート状に押し出し、温度60℃の冷却水槽中で冷却することによって、該重合体組成物からなるシートを製造した。得られたシートを180℃に加熱しながら深絞り加工することによって、直径約7cm、高さ約9cmのカップ状成形品を得た。
このカップ状成形品は、150cmの高さからコンクリート製の床の上に自然落下させても破損しなかった。
【0046】
[比較例 5]
実施例1で用いたものと同じアクリル樹脂のみを用いる(ブロック共重合体を使用しない)以外は実施例5と同様にしてカップ状成形品を製造した。これを60cmの高さからコンクリート製の床の上に自然落下させたところ破損した。
【0047】
上記の実施例5の結果および比較例5の結果から、本発明の樹脂組成物は、カップ状成形品においても優れた耐衝撃性を発揮できることが確認された。
【0048】
【発明の効果】
本発明の重合体組成物は、溶融時の流動性に優れていて成形加工性が良好であるため、各種の成形加工法が適用でき、それによって各種形態の成形品を製造できる。また、本発明の重合体組成物からなる成形品は、該重合体組成物に由来して、耐候性、耐熱性、耐衝撃性および機械的強度において優れている。
Claims (2)
- アクリル系樹脂(a)、およびポリアクリル酸アルキルエステルブロックの両末端にそれぞれ高シンジオタクチックなポリメタクリル酸アルキルエステルブロックが結合した構造を分子内に少なくとも1つ有するブロック共重合体(b)を含有し、かつ{アクリル系樹脂(a)}:{ブロック共重合体(b)}の重量比が97:3〜50:50の範囲内であることを特徴とする重合体組成物。
- 請求項1に記載の重合体組成物からなる成形品。
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