JP3598104B2 - 屋根葺き材、この屋根葺き材を使用する屋根葺き構造及び屋根 - Google Patents
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Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、屋根葺き材と、これを使用する屋根葺き構造、及び屋根葺き材を葺いた屋根に係り、特に、水平方向の有効長さが異なる屋根葺き材を多数葺いたときに縦のラインが整然として美観が向上する屋根葺き材と、この屋根葺き材を使用する屋根葺き構造及び屋根に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、この種の屋根葺き材としては、特開2001−32450号に記載の太陽電池瓦モジュールは、瓦本体の両側部には左右に隣り合う瓦本体と雄雌関係で嵌合するオーバーラップ部が設けられている。オーバーラップ部は通常、凸部と凹部とが形成され、凹部の水平方向の幅に対して凸部の水平方向の幅を小さく設定し、凹部に凸部を嵌合させたとき水平方向に僅かに移動できる調整代を得ている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、前記した太陽電池瓦モジュールは、オーバーラップ部の水平方向の調整代が一定であり、水平方向長さの大きい太陽電池瓦モジュールと水平方向長さの小さい通常の瓦とを混在して葺いたとき、調整代がオーバーラップ部で所定量に規定されているため、大きく水平方向に移動させることができず、縦方向ラインの位置が一定とならず見栄えが悪くなってしまう。また、千鳥状に配列するときは、縦ラインが千鳥状に揃わないため、ラインが不揃いとなって美観に問題が生じる。
【0004】
本発明は、このような問題に鑑みてなされたものであって、その目的とするところは、水平方向の有効長が異なる屋根葺き材、すなわち第一の水平方向の有効長(働き幅)を有する屋根葺き材と、第二の水平方向の有効長(働き幅)を有する屋根葺き材とを混在させて同一屋根面に葺いたとき、縦のラインが一直線上に揃って美観が向上する屋根葺き材と、この屋根葺き材を使用した屋根葺き構造と、屋根葺き材を葺いた屋根を提供することにある。
【0005】
【課題を解決するための手段】
前記目的を達成すべく、本発明に係る屋根葺き材は、水平方向の一方の側に裏面側重ね合わせ部と、他方の側に表面側重ね合わせ部とを形成し、裏面側重ね合わせ部の表面と表面側重ね合わせ部の裏面とのいずれか一方に凹溝を形成し、他方に凸部を形成し、凹溝と凸部との水平方向の幅の差を、屋根葺き材の水平方向の有効長に基づいて設定することを特徴とする。すなわち、有効長(働き幅)の小さい屋根葺き材は凹溝の幅と凸部の幅の差を小さく設定し、有効長(働き幅)の大きい屋根葺き材は前記の差を大きく設定する。
【0006】
また、本発明に係る屋根葺き材の好ましい具体的な態様としては、屋根葺き材は、所定厚を有する本体部を備え、裏面側重ね合わせ部は、本体部の表面からの段差面で薄肉に突出形成され、表面側重ね合わせ部は、本体部の裏面からの段差面で陥没して形成される構成される。
【0007】
本発明に係る屋根葺き構造は、一方の側に裏面側重ね合わせ部を形成し、他方の側に表面側重ね合わせ部を形成した屋根葺き材の前記裏面側重ね合わせ部に、他の屋根葺き材の表面側重ね合わせ部とを重ねて葺くものであって、屋根葺き材は、裏面側重ね合わせ部の表面と表面側重ね合わせ部の裏面とのいずれか一方に凹溝を形成し、他方に凹溝に嵌合する凸部を形成し、凸部の水平方向の幅は、凹溝の水平方向の幅より小さく形成し、凸部は凹溝内を前記2つの水平方向の幅の差に相当する調整代を持って水平方向に移動可能であり、屋根葺き材は、第一の水平方向の有効長と、第一の水平方向の調整代を有し、他の屋根葺き材は、第一の水平方向の有効長より長い第二の水平方向の有効長を有すると共に、第一の水平方向の調整代より長い第二の水平方向の調整代を有することを特徴とする。前記第二の働き幅は、前記第一の働き幅の整数倍であることが好ましい。
【0008】
さらに、本発明に係る屋根は、前記した屋根葺き材を使用し、裏面側重ね合わせ部の上方に他の屋根葺き材の表面側重ね合わせ部を重ね、所定の働き幅の屋根葺き材と前記働き幅より大きい働き幅の屋根葺き材を、同一屋根面に混在して葺いたことを特徴としている。
【0009】
このように構成された本発明の屋根葺き材と、この屋根葺き材を使用する屋根葺き構造、及び屋根葺き材を葺いた屋根は、屋根葺き材の裏面側重ね合わせ部に、他の屋根葺き材の表面側重ね合わせ部を重ね合わせて葺くと、屋根葺き材は凹溝と凸部との水平方向の幅の差に相当する距離だけ水平方向に移動でき、この距離が水平方向の調整代となる。すなわち、小さい有効長に対して小さい調整代を有し、大きい有効長に対して大きい調整代を有するので、有効長の大きい屋根葺き材は、有効長の小さい屋根葺き材より水平方向に大きく移動できるため、異なる有効長(働き幅)を有する屋根葺き材を混在して同一屋根に葺いたとき、縦のラインが揃って見えるため、美観を向上させることができる。
【0010】
また、縦のラインを揃えるために、屋根葺き材を無理に整列させることがなくなり、施工が容易となると共に、屋根葺き材の欠損を防止できる。裏面側重ね合わせ部を表面からの段差面で形成し、表面側重ね合わせ部を裏面からの段差面で形成すると、裏面側重ね合わせ部に表面側重ね合わせ部を重ね合わせたとき、本体部の厚さと略同じにできるため、整列葺設や、千鳥葺設が容易に行える。
【0011】
【発明の実施の形態】
以下、本発明に係る屋根葺き材の一実施形態を図面に基づき詳細に説明する。図1は本実施形態に係る屋根葺き構造を用いて葺いた屋根の斜視図であり、(a)は整列して配列した状態、(b)は千鳥状に配列した状態を示す。図1において、屋根1は第一の屋根葺き材10と第二の屋根葺き材20とを混在して同一屋根面に葺いており、第一の屋根葺き材10は働き幅L(水平方向の有効長)が小さく、第二の屋根葺き材20は働き幅(水平方向の有効長)が大きく、2倍の2Lとなっている。(a)は短尺の屋根葺き材10と、長尺の屋根葺き材20とを下辺から上部まで同じ配列で葺いており、(b)は短尺の屋根葺き材10と、長尺の屋根葺き材20とが交互になるように下辺から上部まで葺いている。屋根葺き材10の働き幅は60cm程度に、屋根葺き材20の働き幅は120cm程度に設定される。
【0012】
第一の屋根葺き材10について、図2,3を参照して説明する。図2(a)は屋根葺き材10の正面図、図2(b)は(a)の右側面図、図2(c)は、(a)のA−A線に沿う要部拡大断面図、図3は図2の屋根葺き材10同士を重ね合わせた状態の要部断面図である。図2,3において、屋根葺き材10は薄板セメント基材で形成され、働き幅がLで、垂直方向の高さがHである矩形状の本体部11を備え、本体部11の右方の側に薄肉の裏面側重ね合わせ部12を突出形成し、裏面側重ね合わせ部12は本体部11の表面からの段差面で薄肉に突出形成されている。また、本体部11の左方の側に表面側重ね合わせ部13が裏面から凹んだ状態で形成されている。表面側重ね合わせ部13は本体部11の裏面からの段差面で陥没して形成される。裏面側重ね合わせ部12は本体部11より突出し、表面側重ね合わせ部13は本体部11内に形成される。
【0013】
本体部11の厚さがTであるとき、裏面側重ね合わせ部12と表面側重ね合わせ部13の厚さは、T/2程度に設定され、裏面側重ね合わせ部12の上に表面側重ね合わせ部13を重ね合わせることができ、両者を重ね合わせたとき、2つの屋根葺き材10,10は略平坦となるように設定され、千鳥状(市松状)に葺くことができる。したがって、屋根葺き材10を水平方向に連続して葺くときは、働き幅Lと枚数をかけることにより、実質的な有効長となる。本体部11の上部は所定幅の上部重なり部14となっており、この上部重なり部14の上に上段の他の屋根葺き材が重ね合わされて葺かれるものである。上部重なり部14に水平方向の溝(図示せず)を形成してもよい。
【0014】
裏面側重ね合わせ部12の表面には、排水用の凹溝15が凹んだ状態で形成されている。この凹溝15は上方に隆起部15aが形成された2本の溝が中間部で合流して下方では1本の溝となっている。表面側重ね合わせ部13の裏面には、別の屋根葺き材10の排水用の凹溝15に嵌合する凸部16が形成されている。この凸部も上方が溝部16aで2本に分けられ、中間部で合流して下方は1本となっている。この構成により、重なり部分の上方で奥まで浸入した雨水は本体部側の1本の溝に排水されるため、屋根葺き材10を葺く下地に雨水が浸入することを防止できる。なお、隆起部15a、溝部16aは、共に断面が半円形であるが適宜の形状でもよく、また隆起部、溝部は無くて1つの幅広の凹溝、凸部でもよい。
【0015】
この凸部16と凹溝15は、嵌合したときに水平方向にわずかに移動できるように、水平方向の調整代を有している。例えば、凹溝15の水平方向の幅がW1,W2とすると、凸部16の水平方向の幅はW1,W2より小さいW3,W4に設定され、凹溝15に別の屋根葺き材の凸部16が嵌合したときに(W1−W3)、(W2−W4)の差分だけ水平方向に隙間が生じ、この差分が調整代C1となる。例えば、W1は6mm程度で、W3は5mm程度に設定され、W2とW4も同程度の差に設定され、調整代C1は1〜1.5mm程度となる。したがって、屋根葺き材10同士を並べて葺くとき、水平方向の調整代C1により1〜1.5mm程度の範囲を持って、水平方向に調整しながら葺くことができる。なお、図示していないが、凹溝15の下方の1本の溝部と、凸部16の下方の1本の凸部部分も同様に溝部の幅が大きく、同様の調整代を有している。
【0016】
つぎに、第二の屋根葺き材20について、図4,5を参照して説明する。図4(a)は屋根葺き材20の正面図、図4(b)は(a)のB−B線に沿う要部拡大断面図である。図4,5において、第二の屋根葺き材20は、前記した第一の屋根葺き材10と同様、薄板セメント基材で形成され、働き幅Lの2倍の働き幅2Lを有し、垂直方向の高さがHで水平方向の有効長がLである矩形状の本体部21を備え、側面形状は屋根葺き材10と同じである。屋根葺き材20は屋根葺き材10と同様に、本体部21の右方の側に薄肉の裏面側重ね合わせ部22を突出形成し、本体部21の左方の側に薄肉の表面側重ね合わせ部23を凹んだ状態で形成している。本体部21の上部には、上部重なり部24が形成されている。
【0017】
長尺の屋根葺き材20の裏面側重ね合わせ部22及び表面側重ね合わせ部23は、屋根葺き材10の裏面側重ね合わせ部12及び表面側重ね合わせ部13と、略同一形状をしており、両者を重ね合わせることができる。そして、裏面側重ね合わせ部22の表面には排水用の凹溝25が形成され、表面側重ね合わせ部23には別の屋根葺き材の凹溝25に嵌合する凸部26が形成されている。凹溝25には凸部26が嵌合できると共に屋根葺き材10の凸部16が嵌合でき、また凹溝15には凸部16が嵌合できると共に屋根葺き材20の凸部26が嵌合でき、これにより、屋根葺き材10と屋根葺き材20とを混在して、同一屋根面に葺くことができる。すなわち、屋根葺き材10と屋根葺き材20は同一嵌合構造を持っている。
【0018】
屋根葺き材20の凹溝25の水平方向の幅はW5,W6であり、屋根葺き材10の凹溝15の幅より僅かに大きく、或いは同等に設定されている。凸部26の水平方向の幅はW7,W8に設定され、屋根葺き材10の凸部16の幅より僅かに小さく、或いは同等に設定されている。凹溝25の中間の隆起部25aは、凹溝15の中間の隆起部15aの断面が半円状なのに対し、断面形状が1/4円形状をしている。凸部26の中間の溝部26aは、凸部16の溝部16aより幅広となっている。なお、隆起部25aは1/4円形状でなく、単に幅を狭くしたものでもよい。
【0019】
そして、凹溝25の幅と凸部26の幅との差(W5−W7)、(W6−W8)が屋根葺き材20の水平方向の調整代C2となる。例えば、W5は6mm程度で、W7は4mm程度に設定され、この調整代C2は2〜2.5mmに設定され、前記した屋根葺き材10の調整代C1より大きくなっている。すなわち、凹溝と凸部との水平方向の幅の差を、屋根葺き材の水平方向の働き幅(有効長)に基づいて設定している。したがって、屋根葺き材20同士を並べて葺くとき、水平方向の調整代C2により2〜2.5mm程度の範囲を持って、水平方向に調整しながら葺くことができる。
【0020】
このように、屋根葺き材10の働き幅Lに対して、調整代C1は約1mmであり、屋根葺き材20の働き幅2Lに対して、調整代C2は約2mmであり、働き幅と調整代の比は、1対2となっている。すなわち、2L/L=C2/C1の関係となっている。なお、働き幅と調整代との関係は、前記の関係に限られるものでなく、第一の働き幅をX1、第二の働き幅をX2、第一の調整代をS1、第二の調整代をS2としたときに、(S2)2=(S1)2×(X2/X1)、の関係となるように設定してもよい。この場合、働き幅の比(X1/X2)を1/2とすると、調整代の比(S1/S2)は1/1.4となる。
【0021】
前記の如く構成された本実施形態の屋根葺き構造の葺設動作について以下に説明する。屋根葺き材10同士を葺くときは、図3に示すように屋根葺き材10の右端の裏面側重ね合わせ部12の上部に、他の屋根葺き材10Aの左端の表面側重ね合わせ部13を重ねる。このときの水平方向の調整代C1を、例えば1mmとすると、固定された屋根葺き材10に対して、次の屋根葺き材10Aは1mmの許容範囲で水平方向に移動しながら固定することができる。すなわち、図3(a)の中間状態に対し、(b)のように接近させた状態と、(c)のように離した状態の移動距離が1mmで、これが調整代C1となり、この範囲で屋根葺き材10Aを移動することができる。
【0022】
屋根葺き材20同士を葺くときは、図5に示すように屋根葺き材20の右端の裏面側重ね合わせ部22の上部に、他の屋根葺き材20Aの左端の表面側重ね合わせ部23を重ねる。凹溝25に凸部26が嵌合し、このときの水平方向の調整代C2は例えば(W5−W7)で2mmとなり、屋根葺き材10同士の調整代C1より大きくなる。このように、働き幅の大きい長尺の屋根葺き材20は調整代が大きいため、水平方向に大きく移動させて葺くことができ、長尺の屋根葺き材20の大きい寸法誤差を吸収できる。
【0023】
屋根葺き材10,20を混在させて葺くときは、図6に示すように、屋根葺き材10の右端の裏面側重ね合わせ部12の上部に、屋根葺き材20の左端の表面側重ね合わせ部23を重ねる。このときの水平方向の調整代C3は、凹溝15の水平方向の幅W1,W2と、凸部26の水平方向の幅W7,W8との差、例えば(W1−W7)となり、(6−4)mmで2mm程度となり、屋根葺き材10同士の調整代C1より大きくなる。
【0024】
また、屋根葺き材20の上に屋根葺き材10を葺くときは、図7に示すように屋根葺き材20の右端の裏面側重ね合わせ部22の上部に、他の屋根葺き材10の左端の表面側重ね合わせ部13を重ねる。このときの水平方向の調整代C4は、凹溝25の水平方向の幅W5,W6と、凸部16の水平方向の幅W3,W4との差の小さい方である、例えば(W6−W4)となり、例えば(6−5)mmで1mm程度となり、屋根葺き材10同士の調整代C1と同等になる。
【0025】
このように、働き幅である水平方向の有効長の異なる屋根葺き材10,20を混在して同一屋根面に葺くとき、働き幅の大きい屋根葺き材20は寸法誤差が大きくなるが、例えば凹溝25の水平方向の幅W5と凸部26の水平方向の幅W7との差である調整代C2が大きく設定されているため水平方向に大きく移動でき、屋根葺き材10,20の縦ラインを揃えることが容易に行え、葺き上がった屋根面は縦のラインがきれいに揃って、屋根全体の美観が向上する。また、千鳥状に葺いた場合は、例えば1,3,5…の奇数段と、2,4,6…の偶数段との縦ラインが揃って整然と配列され、屋根全体の美観が向上する。さらに、働き幅の大きい屋根葺き材20は調整代C2が大きいため容易に施工することができ、調整するときに屋根葺き材の端部等が欠損することを防止できる。
【0026】
本発明の他の実施形態を図8に基づき詳細に説明する。図8は本発明に係る屋根葺き構造の他の実施形態を示す分解した概略斜視図である。なお、この実施形態は前記した実施形態に対し、裏面側重ね合わせ部は本体部と同じ厚さに形成され、表面側重ね合わせ部は本体部から上方に浮き上がっていると共に、凹溝及び凸部は、それぞれ1本であることを特徴とする。そして、他の実質的に同等の構成については同じ符号を付して詳細な説明は省略する。
【0027】
図8に示す屋根葺き構造は、働き幅がLの屋根葺き材30と、働き幅が2Lの屋根葺き材40とを混在して葺いている。屋根葺き材30は右方に裏面側重ね合わせ部31が、左方に表面側重ね合わせ部32が形成され、裏面側重ね合わせ部の表面に凹溝33が、表面側重ね合わせ部の裏面に凸部34が形成されている。この凹溝と凸部の水平方向の幅は、前記の実施形態と同様に設定され、水平方向の調整代はC1となっている。また、水平方向に長い屋根葺き材40も、右方に裏面側重ね合わせ部41が、左方に表面側重ね合わせ部42が形成され、裏面側重ね合わせ部の表面に凹溝43が、表面側重ね合わせ部の裏面に凸部44が形成され、水平方向の調整代はC2と大きくなっている。
【0028】
この例では、屋根葺き材30及び屋根葺き材40は、表面側重ね合わせ部の凸部34,44が同一形状であり、裏面側重ね合わせ部の凹溝の幅が変化している。すなわち、短尺の屋根葺き材30の裏面側重ね合わせ部に形成された凹溝33の幅d1より、長尺の屋根葺き材40の裏面側重ね合わせ部に形成された凹溝43の幅d2が大きくなっており、これにより長尺の屋根葺き材40の水平方向の調整代C2が大きくなるように構成されている。そして、凹溝43に凸部34,44が嵌合したときの水平方向の調整代C2は、屋根葺き材30の調整代C1よりも大きく設定されている。
【0029】
この実施形態においても、働き幅の大きい屋根葺き材40は水平方向の調整代C2が働き幅の小さい屋根葺き材30の調整代C1より大きく設定されており、屋根下地に固定するとき水平方向に大きく移動することができるため、施工作業が容易となり、屋根葺き材の欠損等を防止できる。また、長尺の屋根葺き材の調整代が大きいため寸法誤差を吸収でき、屋根葺き材の縦ラインを揃えることができ、屋根の美観を向上させることができる。
【0030】
なお、本発明は、屋根葺き材として太陽電池パネルを固定した屋根葺き材にも適用できるものであり、通常の所定長を有する屋根瓦と、この屋根瓦の2倍の有効長を有する太陽電池付き屋根葺き材とを混在して葺くとき等、好適に使用することができる。また、所定の働き幅に対して、2倍の働き幅を有する屋根葺き材の例を示したが、整数倍や1.5倍等の適宜の倍率としてもよいのは勿論である。
【0031】
前記した実施形態では、屋根葺き材は薄板セメント基材で形成した例を示したが、金属板材をプレス成形したものや、金属板材と発泡樹脂等から形成されるバックアップ材とから構成するものでもよく、粘土を焼き固めた屋根葺き材から構成してもよい。凹溝は上半部が2本で下半部が1本に合流する例を示したが、垂直方向の1本又は複数本の凹溝としてもよい。この場合の凹溝に嵌合する突部は、同様に垂直方向の1本又は複数本となる。
【0032】
また、調整代として、凹溝と凸部の幅の両方が変化する例と、凸部の幅は一定で凹溝の幅が異なる例を示したが、凹溝の幅を一定として凸部の幅が異なるようにしても水平方向の調整代を変化させることができる。さらに、凹溝と凸部は逆に形成してもよく、裏面側重ね合わせ部の表面に凸部を形成し、表面側重ね合わせ部の裏面に凹溝を形成するようにしてもよい。
【0033】
【発明の効果】
以上の説明から理解できるように、本発明の屋根葺き材、これを使用する屋根葺き構造、及び屋根葺き材を葺いた屋根は、働き幅の異なる2種類の屋根葺き材を混在して同一屋根面に葺いても、水平方向の有効長の大きい屋根葺き材は水平方向調整代が大きいため、施工が容易となる。また、混在して整列状態に葺くとき、隣接する屋根葺き材の間の縦ラインが整然と並んで見え、千鳥状に葺くときは縦ラインが交互に揃って葺くことができるため、美観を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る屋根葺き構造を用いた屋根を示し、(a)は整列配列した状態の概略斜視図、(b)は千鳥状配列した状態の概略斜視図。
【図2】(a)は図1に使用する屋根葺き材の一実施形態の正面図、(b)は(a)の右側面図、(c)は(a)のA−A線に沿う要部拡大要部断面図。
【図3】図2の屋根葺き材同士を重ね合わせた状態を示し、(a)は中間状態、(b)は接近した状態、(c)は離した状態を示す要部断面図。
【図4】(a)は図1に使用する長尺の屋根葺き材の一実施形態の正面図、(b)は(a)のB−B線に沿う要部拡大要部断面図。
【図5】図4の屋根葺き材同士を重ね合わせた状態を示し、(a)は中間状態、(b)は接近した状態、(c)は離した状態を示す要部断面図。
【図6】図2の屋根葺き材に図4の長尺の屋根葺き材を重ね合わせた状態を示し、(a)は接近状態、(b)は離した状態の要部断面図。
【図7】図4の長尺の屋根葺き材に図2の屋根葺き材を重ね合わせた状態を示し、(a)は接近状態、(b)は離した状態の要部断面図。
【図8】本発明に係る屋根葺き構造の他の実施形態を示す分解した概略斜視図。
【符号の説明】
1 屋根、
10,30 屋根葺き材(第一の屋根葺き材)、
20,40 屋根葺き材(第二の屋根葺き材)、
12,22,31,41 裏面側重ね合わせ部、
13,23,32,42 表面側重ね合わせ部、
15,25,33,43 凹溝、
16,26,34,44 凸部、
L 第一の働き幅(有効長)、
2L 第二の働き幅(有効長)、
W1,W2,W5,W6 凹溝の水平方向の幅、
W3,W4,W7,W8 凸部の水平方向の幅、
C1 第一の調整代、 C2 第二の調整代
【発明の属する技術分野】
本発明は、屋根葺き材と、これを使用する屋根葺き構造、及び屋根葺き材を葺いた屋根に係り、特に、水平方向の有効長さが異なる屋根葺き材を多数葺いたときに縦のラインが整然として美観が向上する屋根葺き材と、この屋根葺き材を使用する屋根葺き構造及び屋根に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、この種の屋根葺き材としては、特開2001−32450号に記載の太陽電池瓦モジュールは、瓦本体の両側部には左右に隣り合う瓦本体と雄雌関係で嵌合するオーバーラップ部が設けられている。オーバーラップ部は通常、凸部と凹部とが形成され、凹部の水平方向の幅に対して凸部の水平方向の幅を小さく設定し、凹部に凸部を嵌合させたとき水平方向に僅かに移動できる調整代を得ている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、前記した太陽電池瓦モジュールは、オーバーラップ部の水平方向の調整代が一定であり、水平方向長さの大きい太陽電池瓦モジュールと水平方向長さの小さい通常の瓦とを混在して葺いたとき、調整代がオーバーラップ部で所定量に規定されているため、大きく水平方向に移動させることができず、縦方向ラインの位置が一定とならず見栄えが悪くなってしまう。また、千鳥状に配列するときは、縦ラインが千鳥状に揃わないため、ラインが不揃いとなって美観に問題が生じる。
【0004】
本発明は、このような問題に鑑みてなされたものであって、その目的とするところは、水平方向の有効長が異なる屋根葺き材、すなわち第一の水平方向の有効長(働き幅)を有する屋根葺き材と、第二の水平方向の有効長(働き幅)を有する屋根葺き材とを混在させて同一屋根面に葺いたとき、縦のラインが一直線上に揃って美観が向上する屋根葺き材と、この屋根葺き材を使用した屋根葺き構造と、屋根葺き材を葺いた屋根を提供することにある。
【0005】
【課題を解決するための手段】
前記目的を達成すべく、本発明に係る屋根葺き材は、水平方向の一方の側に裏面側重ね合わせ部と、他方の側に表面側重ね合わせ部とを形成し、裏面側重ね合わせ部の表面と表面側重ね合わせ部の裏面とのいずれか一方に凹溝を形成し、他方に凸部を形成し、凹溝と凸部との水平方向の幅の差を、屋根葺き材の水平方向の有効長に基づいて設定することを特徴とする。すなわち、有効長(働き幅)の小さい屋根葺き材は凹溝の幅と凸部の幅の差を小さく設定し、有効長(働き幅)の大きい屋根葺き材は前記の差を大きく設定する。
【0006】
また、本発明に係る屋根葺き材の好ましい具体的な態様としては、屋根葺き材は、所定厚を有する本体部を備え、裏面側重ね合わせ部は、本体部の表面からの段差面で薄肉に突出形成され、表面側重ね合わせ部は、本体部の裏面からの段差面で陥没して形成される構成される。
【0007】
本発明に係る屋根葺き構造は、一方の側に裏面側重ね合わせ部を形成し、他方の側に表面側重ね合わせ部を形成した屋根葺き材の前記裏面側重ね合わせ部に、他の屋根葺き材の表面側重ね合わせ部とを重ねて葺くものであって、屋根葺き材は、裏面側重ね合わせ部の表面と表面側重ね合わせ部の裏面とのいずれか一方に凹溝を形成し、他方に凹溝に嵌合する凸部を形成し、凸部の水平方向の幅は、凹溝の水平方向の幅より小さく形成し、凸部は凹溝内を前記2つの水平方向の幅の差に相当する調整代を持って水平方向に移動可能であり、屋根葺き材は、第一の水平方向の有効長と、第一の水平方向の調整代を有し、他の屋根葺き材は、第一の水平方向の有効長より長い第二の水平方向の有効長を有すると共に、第一の水平方向の調整代より長い第二の水平方向の調整代を有することを特徴とする。前記第二の働き幅は、前記第一の働き幅の整数倍であることが好ましい。
【0008】
さらに、本発明に係る屋根は、前記した屋根葺き材を使用し、裏面側重ね合わせ部の上方に他の屋根葺き材の表面側重ね合わせ部を重ね、所定の働き幅の屋根葺き材と前記働き幅より大きい働き幅の屋根葺き材を、同一屋根面に混在して葺いたことを特徴としている。
【0009】
このように構成された本発明の屋根葺き材と、この屋根葺き材を使用する屋根葺き構造、及び屋根葺き材を葺いた屋根は、屋根葺き材の裏面側重ね合わせ部に、他の屋根葺き材の表面側重ね合わせ部を重ね合わせて葺くと、屋根葺き材は凹溝と凸部との水平方向の幅の差に相当する距離だけ水平方向に移動でき、この距離が水平方向の調整代となる。すなわち、小さい有効長に対して小さい調整代を有し、大きい有効長に対して大きい調整代を有するので、有効長の大きい屋根葺き材は、有効長の小さい屋根葺き材より水平方向に大きく移動できるため、異なる有効長(働き幅)を有する屋根葺き材を混在して同一屋根に葺いたとき、縦のラインが揃って見えるため、美観を向上させることができる。
【0010】
また、縦のラインを揃えるために、屋根葺き材を無理に整列させることがなくなり、施工が容易となると共に、屋根葺き材の欠損を防止できる。裏面側重ね合わせ部を表面からの段差面で形成し、表面側重ね合わせ部を裏面からの段差面で形成すると、裏面側重ね合わせ部に表面側重ね合わせ部を重ね合わせたとき、本体部の厚さと略同じにできるため、整列葺設や、千鳥葺設が容易に行える。
【0011】
【発明の実施の形態】
以下、本発明に係る屋根葺き材の一実施形態を図面に基づき詳細に説明する。図1は本実施形態に係る屋根葺き構造を用いて葺いた屋根の斜視図であり、(a)は整列して配列した状態、(b)は千鳥状に配列した状態を示す。図1において、屋根1は第一の屋根葺き材10と第二の屋根葺き材20とを混在して同一屋根面に葺いており、第一の屋根葺き材10は働き幅L(水平方向の有効長)が小さく、第二の屋根葺き材20は働き幅(水平方向の有効長)が大きく、2倍の2Lとなっている。(a)は短尺の屋根葺き材10と、長尺の屋根葺き材20とを下辺から上部まで同じ配列で葺いており、(b)は短尺の屋根葺き材10と、長尺の屋根葺き材20とが交互になるように下辺から上部まで葺いている。屋根葺き材10の働き幅は60cm程度に、屋根葺き材20の働き幅は120cm程度に設定される。
【0012】
第一の屋根葺き材10について、図2,3を参照して説明する。図2(a)は屋根葺き材10の正面図、図2(b)は(a)の右側面図、図2(c)は、(a)のA−A線に沿う要部拡大断面図、図3は図2の屋根葺き材10同士を重ね合わせた状態の要部断面図である。図2,3において、屋根葺き材10は薄板セメント基材で形成され、働き幅がLで、垂直方向の高さがHである矩形状の本体部11を備え、本体部11の右方の側に薄肉の裏面側重ね合わせ部12を突出形成し、裏面側重ね合わせ部12は本体部11の表面からの段差面で薄肉に突出形成されている。また、本体部11の左方の側に表面側重ね合わせ部13が裏面から凹んだ状態で形成されている。表面側重ね合わせ部13は本体部11の裏面からの段差面で陥没して形成される。裏面側重ね合わせ部12は本体部11より突出し、表面側重ね合わせ部13は本体部11内に形成される。
【0013】
本体部11の厚さがTであるとき、裏面側重ね合わせ部12と表面側重ね合わせ部13の厚さは、T/2程度に設定され、裏面側重ね合わせ部12の上に表面側重ね合わせ部13を重ね合わせることができ、両者を重ね合わせたとき、2つの屋根葺き材10,10は略平坦となるように設定され、千鳥状(市松状)に葺くことができる。したがって、屋根葺き材10を水平方向に連続して葺くときは、働き幅Lと枚数をかけることにより、実質的な有効長となる。本体部11の上部は所定幅の上部重なり部14となっており、この上部重なり部14の上に上段の他の屋根葺き材が重ね合わされて葺かれるものである。上部重なり部14に水平方向の溝(図示せず)を形成してもよい。
【0014】
裏面側重ね合わせ部12の表面には、排水用の凹溝15が凹んだ状態で形成されている。この凹溝15は上方に隆起部15aが形成された2本の溝が中間部で合流して下方では1本の溝となっている。表面側重ね合わせ部13の裏面には、別の屋根葺き材10の排水用の凹溝15に嵌合する凸部16が形成されている。この凸部も上方が溝部16aで2本に分けられ、中間部で合流して下方は1本となっている。この構成により、重なり部分の上方で奥まで浸入した雨水は本体部側の1本の溝に排水されるため、屋根葺き材10を葺く下地に雨水が浸入することを防止できる。なお、隆起部15a、溝部16aは、共に断面が半円形であるが適宜の形状でもよく、また隆起部、溝部は無くて1つの幅広の凹溝、凸部でもよい。
【0015】
この凸部16と凹溝15は、嵌合したときに水平方向にわずかに移動できるように、水平方向の調整代を有している。例えば、凹溝15の水平方向の幅がW1,W2とすると、凸部16の水平方向の幅はW1,W2より小さいW3,W4に設定され、凹溝15に別の屋根葺き材の凸部16が嵌合したときに(W1−W3)、(W2−W4)の差分だけ水平方向に隙間が生じ、この差分が調整代C1となる。例えば、W1は6mm程度で、W3は5mm程度に設定され、W2とW4も同程度の差に設定され、調整代C1は1〜1.5mm程度となる。したがって、屋根葺き材10同士を並べて葺くとき、水平方向の調整代C1により1〜1.5mm程度の範囲を持って、水平方向に調整しながら葺くことができる。なお、図示していないが、凹溝15の下方の1本の溝部と、凸部16の下方の1本の凸部部分も同様に溝部の幅が大きく、同様の調整代を有している。
【0016】
つぎに、第二の屋根葺き材20について、図4,5を参照して説明する。図4(a)は屋根葺き材20の正面図、図4(b)は(a)のB−B線に沿う要部拡大断面図である。図4,5において、第二の屋根葺き材20は、前記した第一の屋根葺き材10と同様、薄板セメント基材で形成され、働き幅Lの2倍の働き幅2Lを有し、垂直方向の高さがHで水平方向の有効長がLである矩形状の本体部21を備え、側面形状は屋根葺き材10と同じである。屋根葺き材20は屋根葺き材10と同様に、本体部21の右方の側に薄肉の裏面側重ね合わせ部22を突出形成し、本体部21の左方の側に薄肉の表面側重ね合わせ部23を凹んだ状態で形成している。本体部21の上部には、上部重なり部24が形成されている。
【0017】
長尺の屋根葺き材20の裏面側重ね合わせ部22及び表面側重ね合わせ部23は、屋根葺き材10の裏面側重ね合わせ部12及び表面側重ね合わせ部13と、略同一形状をしており、両者を重ね合わせることができる。そして、裏面側重ね合わせ部22の表面には排水用の凹溝25が形成され、表面側重ね合わせ部23には別の屋根葺き材の凹溝25に嵌合する凸部26が形成されている。凹溝25には凸部26が嵌合できると共に屋根葺き材10の凸部16が嵌合でき、また凹溝15には凸部16が嵌合できると共に屋根葺き材20の凸部26が嵌合でき、これにより、屋根葺き材10と屋根葺き材20とを混在して、同一屋根面に葺くことができる。すなわち、屋根葺き材10と屋根葺き材20は同一嵌合構造を持っている。
【0018】
屋根葺き材20の凹溝25の水平方向の幅はW5,W6であり、屋根葺き材10の凹溝15の幅より僅かに大きく、或いは同等に設定されている。凸部26の水平方向の幅はW7,W8に設定され、屋根葺き材10の凸部16の幅より僅かに小さく、或いは同等に設定されている。凹溝25の中間の隆起部25aは、凹溝15の中間の隆起部15aの断面が半円状なのに対し、断面形状が1/4円形状をしている。凸部26の中間の溝部26aは、凸部16の溝部16aより幅広となっている。なお、隆起部25aは1/4円形状でなく、単に幅を狭くしたものでもよい。
【0019】
そして、凹溝25の幅と凸部26の幅との差(W5−W7)、(W6−W8)が屋根葺き材20の水平方向の調整代C2となる。例えば、W5は6mm程度で、W7は4mm程度に設定され、この調整代C2は2〜2.5mmに設定され、前記した屋根葺き材10の調整代C1より大きくなっている。すなわち、凹溝と凸部との水平方向の幅の差を、屋根葺き材の水平方向の働き幅(有効長)に基づいて設定している。したがって、屋根葺き材20同士を並べて葺くとき、水平方向の調整代C2により2〜2.5mm程度の範囲を持って、水平方向に調整しながら葺くことができる。
【0020】
このように、屋根葺き材10の働き幅Lに対して、調整代C1は約1mmであり、屋根葺き材20の働き幅2Lに対して、調整代C2は約2mmであり、働き幅と調整代の比は、1対2となっている。すなわち、2L/L=C2/C1の関係となっている。なお、働き幅と調整代との関係は、前記の関係に限られるものでなく、第一の働き幅をX1、第二の働き幅をX2、第一の調整代をS1、第二の調整代をS2としたときに、(S2)2=(S1)2×(X2/X1)、の関係となるように設定してもよい。この場合、働き幅の比(X1/X2)を1/2とすると、調整代の比(S1/S2)は1/1.4となる。
【0021】
前記の如く構成された本実施形態の屋根葺き構造の葺設動作について以下に説明する。屋根葺き材10同士を葺くときは、図3に示すように屋根葺き材10の右端の裏面側重ね合わせ部12の上部に、他の屋根葺き材10Aの左端の表面側重ね合わせ部13を重ねる。このときの水平方向の調整代C1を、例えば1mmとすると、固定された屋根葺き材10に対して、次の屋根葺き材10Aは1mmの許容範囲で水平方向に移動しながら固定することができる。すなわち、図3(a)の中間状態に対し、(b)のように接近させた状態と、(c)のように離した状態の移動距離が1mmで、これが調整代C1となり、この範囲で屋根葺き材10Aを移動することができる。
【0022】
屋根葺き材20同士を葺くときは、図5に示すように屋根葺き材20の右端の裏面側重ね合わせ部22の上部に、他の屋根葺き材20Aの左端の表面側重ね合わせ部23を重ねる。凹溝25に凸部26が嵌合し、このときの水平方向の調整代C2は例えば(W5−W7)で2mmとなり、屋根葺き材10同士の調整代C1より大きくなる。このように、働き幅の大きい長尺の屋根葺き材20は調整代が大きいため、水平方向に大きく移動させて葺くことができ、長尺の屋根葺き材20の大きい寸法誤差を吸収できる。
【0023】
屋根葺き材10,20を混在させて葺くときは、図6に示すように、屋根葺き材10の右端の裏面側重ね合わせ部12の上部に、屋根葺き材20の左端の表面側重ね合わせ部23を重ねる。このときの水平方向の調整代C3は、凹溝15の水平方向の幅W1,W2と、凸部26の水平方向の幅W7,W8との差、例えば(W1−W7)となり、(6−4)mmで2mm程度となり、屋根葺き材10同士の調整代C1より大きくなる。
【0024】
また、屋根葺き材20の上に屋根葺き材10を葺くときは、図7に示すように屋根葺き材20の右端の裏面側重ね合わせ部22の上部に、他の屋根葺き材10の左端の表面側重ね合わせ部13を重ねる。このときの水平方向の調整代C4は、凹溝25の水平方向の幅W5,W6と、凸部16の水平方向の幅W3,W4との差の小さい方である、例えば(W6−W4)となり、例えば(6−5)mmで1mm程度となり、屋根葺き材10同士の調整代C1と同等になる。
【0025】
このように、働き幅である水平方向の有効長の異なる屋根葺き材10,20を混在して同一屋根面に葺くとき、働き幅の大きい屋根葺き材20は寸法誤差が大きくなるが、例えば凹溝25の水平方向の幅W5と凸部26の水平方向の幅W7との差である調整代C2が大きく設定されているため水平方向に大きく移動でき、屋根葺き材10,20の縦ラインを揃えることが容易に行え、葺き上がった屋根面は縦のラインがきれいに揃って、屋根全体の美観が向上する。また、千鳥状に葺いた場合は、例えば1,3,5…の奇数段と、2,4,6…の偶数段との縦ラインが揃って整然と配列され、屋根全体の美観が向上する。さらに、働き幅の大きい屋根葺き材20は調整代C2が大きいため容易に施工することができ、調整するときに屋根葺き材の端部等が欠損することを防止できる。
【0026】
本発明の他の実施形態を図8に基づき詳細に説明する。図8は本発明に係る屋根葺き構造の他の実施形態を示す分解した概略斜視図である。なお、この実施形態は前記した実施形態に対し、裏面側重ね合わせ部は本体部と同じ厚さに形成され、表面側重ね合わせ部は本体部から上方に浮き上がっていると共に、凹溝及び凸部は、それぞれ1本であることを特徴とする。そして、他の実質的に同等の構成については同じ符号を付して詳細な説明は省略する。
【0027】
図8に示す屋根葺き構造は、働き幅がLの屋根葺き材30と、働き幅が2Lの屋根葺き材40とを混在して葺いている。屋根葺き材30は右方に裏面側重ね合わせ部31が、左方に表面側重ね合わせ部32が形成され、裏面側重ね合わせ部の表面に凹溝33が、表面側重ね合わせ部の裏面に凸部34が形成されている。この凹溝と凸部の水平方向の幅は、前記の実施形態と同様に設定され、水平方向の調整代はC1となっている。また、水平方向に長い屋根葺き材40も、右方に裏面側重ね合わせ部41が、左方に表面側重ね合わせ部42が形成され、裏面側重ね合わせ部の表面に凹溝43が、表面側重ね合わせ部の裏面に凸部44が形成され、水平方向の調整代はC2と大きくなっている。
【0028】
この例では、屋根葺き材30及び屋根葺き材40は、表面側重ね合わせ部の凸部34,44が同一形状であり、裏面側重ね合わせ部の凹溝の幅が変化している。すなわち、短尺の屋根葺き材30の裏面側重ね合わせ部に形成された凹溝33の幅d1より、長尺の屋根葺き材40の裏面側重ね合わせ部に形成された凹溝43の幅d2が大きくなっており、これにより長尺の屋根葺き材40の水平方向の調整代C2が大きくなるように構成されている。そして、凹溝43に凸部34,44が嵌合したときの水平方向の調整代C2は、屋根葺き材30の調整代C1よりも大きく設定されている。
【0029】
この実施形態においても、働き幅の大きい屋根葺き材40は水平方向の調整代C2が働き幅の小さい屋根葺き材30の調整代C1より大きく設定されており、屋根下地に固定するとき水平方向に大きく移動することができるため、施工作業が容易となり、屋根葺き材の欠損等を防止できる。また、長尺の屋根葺き材の調整代が大きいため寸法誤差を吸収でき、屋根葺き材の縦ラインを揃えることができ、屋根の美観を向上させることができる。
【0030】
なお、本発明は、屋根葺き材として太陽電池パネルを固定した屋根葺き材にも適用できるものであり、通常の所定長を有する屋根瓦と、この屋根瓦の2倍の有効長を有する太陽電池付き屋根葺き材とを混在して葺くとき等、好適に使用することができる。また、所定の働き幅に対して、2倍の働き幅を有する屋根葺き材の例を示したが、整数倍や1.5倍等の適宜の倍率としてもよいのは勿論である。
【0031】
前記した実施形態では、屋根葺き材は薄板セメント基材で形成した例を示したが、金属板材をプレス成形したものや、金属板材と発泡樹脂等から形成されるバックアップ材とから構成するものでもよく、粘土を焼き固めた屋根葺き材から構成してもよい。凹溝は上半部が2本で下半部が1本に合流する例を示したが、垂直方向の1本又は複数本の凹溝としてもよい。この場合の凹溝に嵌合する突部は、同様に垂直方向の1本又は複数本となる。
【0032】
また、調整代として、凹溝と凸部の幅の両方が変化する例と、凸部の幅は一定で凹溝の幅が異なる例を示したが、凹溝の幅を一定として凸部の幅が異なるようにしても水平方向の調整代を変化させることができる。さらに、凹溝と凸部は逆に形成してもよく、裏面側重ね合わせ部の表面に凸部を形成し、表面側重ね合わせ部の裏面に凹溝を形成するようにしてもよい。
【0033】
【発明の効果】
以上の説明から理解できるように、本発明の屋根葺き材、これを使用する屋根葺き構造、及び屋根葺き材を葺いた屋根は、働き幅の異なる2種類の屋根葺き材を混在して同一屋根面に葺いても、水平方向の有効長の大きい屋根葺き材は水平方向調整代が大きいため、施工が容易となる。また、混在して整列状態に葺くとき、隣接する屋根葺き材の間の縦ラインが整然と並んで見え、千鳥状に葺くときは縦ラインが交互に揃って葺くことができるため、美観を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る屋根葺き構造を用いた屋根を示し、(a)は整列配列した状態の概略斜視図、(b)は千鳥状配列した状態の概略斜視図。
【図2】(a)は図1に使用する屋根葺き材の一実施形態の正面図、(b)は(a)の右側面図、(c)は(a)のA−A線に沿う要部拡大要部断面図。
【図3】図2の屋根葺き材同士を重ね合わせた状態を示し、(a)は中間状態、(b)は接近した状態、(c)は離した状態を示す要部断面図。
【図4】(a)は図1に使用する長尺の屋根葺き材の一実施形態の正面図、(b)は(a)のB−B線に沿う要部拡大要部断面図。
【図5】図4の屋根葺き材同士を重ね合わせた状態を示し、(a)は中間状態、(b)は接近した状態、(c)は離した状態を示す要部断面図。
【図6】図2の屋根葺き材に図4の長尺の屋根葺き材を重ね合わせた状態を示し、(a)は接近状態、(b)は離した状態の要部断面図。
【図7】図4の長尺の屋根葺き材に図2の屋根葺き材を重ね合わせた状態を示し、(a)は接近状態、(b)は離した状態の要部断面図。
【図8】本発明に係る屋根葺き構造の他の実施形態を示す分解した概略斜視図。
【符号の説明】
1 屋根、
10,30 屋根葺き材(第一の屋根葺き材)、
20,40 屋根葺き材(第二の屋根葺き材)、
12,22,31,41 裏面側重ね合わせ部、
13,23,32,42 表面側重ね合わせ部、
15,25,33,43 凹溝、
16,26,34,44 凸部、
L 第一の働き幅(有効長)、
2L 第二の働き幅(有効長)、
W1,W2,W5,W6 凹溝の水平方向の幅、
W3,W4,W7,W8 凸部の水平方向の幅、
C1 第一の調整代、 C2 第二の調整代
Claims (5)
- 水平方向の一方の側に裏面側重ね合わせ部と、他方の側に表面側重ね合わせ部とを形成し、前記裏面側重ね合わせ部の表面と前記表面側重ね合わせ部の裏面とのいずれか一方に凹溝を形成し、他方に凸部を形成した屋根葺き材であって、
前記凹溝と凸部との水平方向の幅の差を、前記屋根葺き材の水平方向の有効長に基づいて設定することを特徴とする屋根葺き材。 - 前記凹溝と凸部との水平方向の幅の差は、水平方向の有効長の小さい屋根葺き材では小さく設定することを特徴とする請求項1記載の屋根葺き材。
- 前記屋根葺き材は、所定厚を有する本体部を備え、前記裏面側重ね合わせ部は、前記本体部の表面からの段差面で薄肉に突出形成され、前記表面側重ね合わせ部は、前記本体部の裏面からの段差面で陥没して形成されることを特徴とする請求項1又は2に記載の屋根葺き材。
- 一方の側に裏面側重ね合わせ部を形成し、他方の側に表面側重ね合わせ部を形成した屋根葺き材の前記裏面側重ね合わせ部に、他の屋根葺き材の表面側重ね合わせ部とを重ねて葺く屋根葺き構造であって、
前記屋根葺き材は、前記裏面側重ね合わせ部の表面と前記表面側重ね合わせ部の裏面とのいずれか一方に凹溝を形成し、他方に前記凹溝に嵌合する凸部を形成し、前記凸部の水平方向の幅は、前記凹溝の水平方向の幅より小さく形成し、前記凸部は前記凹溝内を前記2つの水平方向の幅の差に相当する調整代を持って水平方向に移動可能であり、
前記屋根葺き材は、第一の水平方向の有効長と、第一の水平方向の調整代を有し、前記他の屋根葺き材は、前記第一の水平方向の有効長より長い第二の水平方向の有効長を有すると共に、前記第一の水平方向の調整代より長い第二の水平方向の調整代を有することを特徴とする屋根葺き構造。 - 請求項1〜3のいずれか1項に記載の屋根葺き材を使用し、前記裏面側重ね合わせ部の上方に他の屋根葺き材の表面側重ね合わせ部を重ね、前記所定の有効長の屋根葺き材と前記有効長より大きい有効長の屋根葺き材を、同一屋根面に混在して葺いたことを特徴とする屋根。
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