JP3594531B2 - 鏝塗り用壁面仕上げ塗材及び壁面仕上げ方法 - Google Patents

鏝塗り用壁面仕上げ塗材及び壁面仕上げ方法 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
この発明は、石膏ボード、合板、パーティクルボードなどを張り合わせた乾式壁下地に適した鏝塗り用壁面仕上げ塗材、並びに乾式壁下地の継ぎ合わせ部を目地止めする壁面仕上げ方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来知られているこの種の壁面仕上げ塗材は、乾式壁下地に直接塗付した場合、下地の不陸、塗材の乾燥後における痩せ並びに乾式壁目地部におけるクラックの発生等必ずしも満足し得るものではなかった。
一般的に行われている壁面仕上げ工法は、下地処理として石膏系あるいは乾燥硬化型の下地調整材を塗付し、その表面に表面化粧材を塗付するという工法が採用されている。
しかしながら、石膏系の下地調整材は壁下地の目地部における僅かな不陸に対しても、石膏を3mm以上の厚みで塗布することを余儀なくされ、また養生、硬化などに3〜7日の工期を要する難点があり、乾燥硬化型の下地調整材にしても乾燥硬化するまでの時間を要し、壁紙と比較した場合に施工が長期にわたるものであった。
【0003】
壁下地の目地部における不陸を調整する先行技術としては、吸水性の少ない合成繊維からなる織物を張着して、その表面に壁材を鏝塗りする方法(特公昭50−1292号公報)、無機質充填材にアクリル繊維、ポリエステル繊維、ナイロン繊維など合成樹脂系の長繊維を配合し、エマルション系樹脂と共に水練りしたものを壁下地の継ぎ合わせ部に塗布する方法(特公昭57−27267号公報)等が知られている。
【0004】
乾燥硬化型の壁下地処理によれば、その作業性が飛躍的に改善されるが、壁下地とその継ぎ合わせ部における吸水作用の相違によって、乾燥した塗膜の厚みにむらが発生し、特に壁下地の継ぎ合わせ部においては、塗膜が痩せる現象を伴って壁面に不陸を生じ、引いては早期のうちに壁下地の継ぎ合わせ部にクラックが発生する傾向があって、壁仕上げ面に不陸並びにクラックの発生を伴わない仕上げ面を形成することは、必ずしも容易に為しうると言い難いものであった。
【0005】
炭素繊維を単独で用いた乾燥硬化型の塗材を用いた場合、目地処理あるいは全面塗りによる仕上げが可能であるが、炭素繊維の黒色や顔料の付着の悪さに起因して、黒色の斑模様が表出して必ずしも満足し得る表面仕上げを行うことができず、また仕上げ鏝を掛けた場合に、壁面に炭素繊維の偏りが見られ、美観を低下させる難点があった。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
この発明は、石膏ボード、合板、パーティクルボードなどを張り合わせた壁面に下地処理を施すことなく、直に壁面仕上げを行うことが可能であり、且つ壁下地の継ぎ合わせ部におけるクラックの発生を長期にわたって抑制し、鏝塗り作業性に優れ、表面化粧材として好適な美観に富む鏝塗り用壁面仕上げ塗材及び壁面仕上げ方法を提供するものである。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、このような事情に鑑み鋭意検討を重ねた結果、合成樹脂エマルションをバインダーとし、主たる成分として粒径0.5mm以下の無機質充填材と線径5〜50μm、長さ0.5〜30mmの炭素繊維並びに線径5〜50μm、長さ0.5〜30mmのポリプロピレン繊維を含有し、無機質充填材100重量部に対して炭素繊維とポリプロピレン繊維を0.05〜5重量部の割合で配合し、且つ炭素繊維とポリプロピレン繊維との重量配合比を1:4〜4:1の割合とした鏝塗り用壁面仕上げ塗材を使用し、これを水練りして石膏ボード、合板、パーティクルボードなどを張り合わせた乾式壁下地の目地部に、鏝を用いて塗布することによって所期の目的を達成しうることを認め、本発明を完成するに至った。
【0008】
すなわち本発明の鏝塗り用壁面仕上げ塗材によれば、無機質充填材に線径5〜50μm、長さ0.5〜30mmの炭素繊維と線径5〜50μm、長さ0.5〜30mmの炭素繊維以外のポリプロピレン繊維を所定の割合で配合しており、マトリックス中に炭素繊維とポリプロピレン繊維が絡み合い均一に分散しているため、乾燥した塗り面に炭素繊維とポリプロピレン繊維が無機質充填材と共に不織布のような結合構造が形成され、その集合による補強効果によって、塗り面の引っ張り強度、曲げ強さ、ひび割れ抵抗性、靭性、耐ムービング性などの物性が飛躍的に向上し、塗材の乾燥による塗膜の痩せ並びに目地部におけるクラックの発生を抑制することができる。
また、炭素繊維はその繊維の弾力性により独特の鏝触りを生み、ポリプロピレン繊維は顔料の付着性が良好であるため、美感に富んだ化粧塗面が形成される。
さらに、炭素繊維を単独で使用した場合、塗布後に炭素繊維が偏り黒色の斑模様を表出して、表面仕上げ材としては実用に耐え難いものであったが、炭素繊維とポリプロピレン繊維を混合使用することにより、互いの繊維が絡み合い、鏝塗り後の炭素繊維の偏りも解消される。
【0009】
【発明の実施の形態】
本発明の実施において使用される代表的なバインダーとしては、酢酸ビニル樹脂系(エチレン酢酸ビニル共重合体、酢ビ塩化ビニル共重合体、酢酸ビニルベオバ共重合体など)、アクリル樹脂系(アクリルスチレン共重合体、アクリル樹脂エチレン酢酸ビニル共重合体など)、ベオバ樹脂系などの合成樹脂エマルションが挙げられ、これらの使用に当ってはCMC、MC、HECなどの水溶性糊料を併用することができる。
【0010】
無機質充填材に対する炭素繊維とポリプロピレン繊維の配合性は良くないので、無機質充填材に多量の繊維を混合させるために、無機質充填材の粒径は0.5mm以下にすべきである。また無機質充填材の粒径が0.5mmを超えると、壁面仕上げ塗材を鏝を用いて壁下地に塗布する際、鏝伸びが阻害されたり鏝にびびりが生じて作業性が阻害されるなどの問題を有する。
本発明の実施に適する無機質充填材の代表的なものとしては、珪砂、珪石粉、珪藻土、寒水石、銀砂、炭酸カルシウム、タルク、マイカ、ゼオライト、セピオライト、ベントナイト、スラグ、白土などが挙げられる。
【0011】
本発明の実施において使用される炭素繊維は、ポリアクリロニトリル系あるいはピッチ系のいずれでも差し支えないが、その大きさは線径5〜50μm、繊維長0.5〜30mmの範囲にあるものが適している。炭素繊維の太さが5μmより小さいもの、あるいは繊維長が0.5mmより小さいものを用いた場合は、乾燥した塗膜の抗張力が乏しく、塗膜のクラック発生を十分に抑制することができない。
【0012】
本発明の実施において使用されるポリプロピレン繊維は、線径5〜50μm、長さ0.5〜30mmのものが適しており、ポリプロピレン繊維は、塗付後における塗膜の物性強度が良好となる。
また、ポリプロピレン繊維は吸湿率が20%(吸湿率はJIS−L−1013に従い、温度20±2℃で相対湿度65±2%の平衡水分率(%)で表わされる)以下のものを使用することにより、鏝塗り用壁面仕上げ塗材を塗付した後における塗膜の痩せが抑えられ、壁面に不陸が生じない。
【0013】
さらに、ポリプロピレン繊維を予め界面活性剤を用いて表面処理しておくことにより、水練りする際の分散性を高めることができる。界面活性剤としては、アルキルホスフェートが好適であり、顔料との密着性が改善され、均一な色合いの壁面を表出することができる。
【0014】
ポリプロピレン繊維の大きさは、線径5〜50μm、繊維長0.5〜30mmの範囲であり、繊維の太さが5μmより小さいもの、あるいは繊維長が0.5mmより小さいものを用いた場合は、乾燥した塗膜の抗張力が乏しく、塗膜のクラック発生を十分に抑制することができない。逆に繊維の径が50μmを超え、繊維長が30mmを超える場合は、無機質充填材と均一に混合することが困難となり生産性が著しく阻害され、且つ壁面に塗布する際に炭素繊維が鏝にまとわり着いて、鏝伸び、鏝離れなどの作業性が悪化する。
【0015】
本発明の実施に当って、無機質充填材に配合される炭素繊維とポリプロピレン繊維との重量配合比は1:4〜4:1の割合とすべきであり、この範囲を超えて炭素繊維の配合比を多くすると、黒色の斑模様を表出して美観が悪化し、この範囲を下回った場合には、塗り面の引っ張り強度、曲げ強さ、ひび割れ抵抗性、靭性、耐ムービング性などの物性が低下し、塗膜の痩せ及びクラックの発生防止等の所期の性能が期待できない。
【0016】
また本発明の実施に当たっては、乾式壁下地の継ぎ合わせ部に鏝塗り用壁面仕上げ塗材を塗布する際に、壁下地の目地部に予めメッシュテープ、特にガラス繊維製のメッシュテープを常法によって張着し、その表面に鏝塗り用壁面仕上げ塗材を塗布することが望ましい。
【0017】
本発明の鏝塗り用壁面仕上げ塗材は、無機質充填材、炭素繊維、ポリプロピレン繊維、固形のバインダー及び色出しのために使用する顔料などを計量し、リボンブレンダーあるいは高速流動式攪拌機を用いてドライ混合し、その使用時にバインダーを加え、さらに粘度調節のために水を加えて均一に混練して調製される。
【0018】
この発明によれば、前記鏝塗り用壁面仕上げ塗材を乾式壁下地の目地部に塗布してこれを乾燥状態としたのち、同鏝塗り用壁面仕上げ塗材を全域に塗布し乾燥させることによって、不陸並びに色むらのない極めて均質な美観に富む表面仕上げが可能となる。
【0019】
【実施例】
以下本発明を実施例及び比較例によって具体的に説明する。
[実施例1]
主たる粒子の粒径が0.3mm以下の重炭酸カルシウム200重量部と平均線径13μm、平均繊維長さ3mmの炭素繊維(商品名:ドナカーボS−210、大阪ガス製)1重量部、予めアルキルホスフェートにより界面活性処理を施した平均線径30μm、平均繊維長さ3mm、吸湿率0%(温度20±2℃、相対湿度65±2%)のポリプロピレン繊維(商品名:ポリプロM-PNHC、ダイワボウ製)1重量部及びメチルセルロース1重量部をリボンブレンダーに投入して、2分間攪拌混合し均一組成物として取り出したのち、これに酢酸ビニルエマルション樹脂(商品名:ポリゾールEVA−P38E、昭和高分子製)50重量部及び水100重量部を加え、攪拌混合機を用いて均一に混練して鏝塗り用壁面仕上げ塗材を調製した。
【0020】
他方、これに先立って厚さ9.5mmの複数の石膏ボードを張り合わせて壁下地を形成し、その継ぎ合わせ部にガラス繊維製メッシュテープ(商品名:J−ファイバーテープ、四国化成工業製)を張着しておき、プラスチック製の鏝を用いて、この壁面の継ぎ合わせ目地部に前記鏝塗り用壁面仕上げ塗材を塗り込み、その表面に鏝塗り用壁面仕上げ塗材が出ないように塗布して乾燥させた。このように施工された壁塗装面の継ぎ合わせ目地部における塗材の剥がれや不陸は認められず、均質なフラット面からなる壁下地を得ることが出来た。表面仕上げは、エンボスに富む仕上げ面が形成され、この壁仕上げ面は3カ月経過した時点において、継ぎ合わせ目地部における不陸並びにクラックの発生は何ら認められなかった。
【0021】
[参考例]
主たる粒子の粒径が0.3mm以下にあるクレー200重量部と平均線径13μm、平均繊維長さ3mmの炭素繊維(商品名:実施例1と同じ)2重量部、平均厚み10μm(平均幅100μm)、平均繊維長さ3mm、吸湿率14%(温度20±2℃、相対湿度65±2%)のレーヨン繊維(商品名:ASK―5、サンヨー化成製)1重量部及びメチルセルロース1重量部をリボンブレンダーに投入して2分間攪拌混合し、均一組成物として取り出したのち、これに酢酸ビニルベオバ粉末樹脂(商品名:DM―200、クラリアントポリマー製)50重量部及び水100重量部を加え、攪拌混合機を用いて均一に混練して壁面仕上げ塗材を調製した。
【0022】
他方、これに先立って厚さ9.5mmの複数の石膏ボードを張り合わせて壁下地を形成し、その継ぎ合わせ部にガラス繊維製メッシュテープ(商品名:J−ファイバーテープ、四国化成工業製)を張着しておき、プラスチック製の鏝を用いて、この壁面の継ぎ合わせ目地部に前記表面仕上げ材を塗り込み、その表面に表面仕上げ材が出ないように塗布して乾燥させた。このように施工された壁塗装面の継ぎ合わせ目地部における下地調整材の剥がれや不陸は認められず、均質なフラット面からなる壁下地を得ることが出来た。表面仕上げは、エンボスに富む仕上げ面が形成され、この壁仕上げ面は3カ月経過した時点において、継ぎ合わせ目地部における不陸並びにクラックの発生は何ら認められなかった。
【0023】
[比較例1]
実施例1において、ポリプロピレン繊維の代わりに同じ形状の粉砕パルプ繊維を用いて壁面仕上げ材を調製し、同様に石膏ボード下地に鏝塗りして、壁面の仕上げ状態を比較した。
即ち、主たる粒子の粒径が0.3mm以下にある重炭酸カルシウム200重量部と平均線径13μm、平均繊維長さ3mmの炭素繊維(商品名:実施例1と同じ)1重量部、平均繊維長さ3mmのパルプ繊維1重量部及びメチルセルロース1重量部をリボンブレンダーに投入して2分間攪拌混合し、均一組成物として取り出したのち、これに酢酸ビニルエマルション樹脂50重量部及び水300重量部を加え、攪拌混合機を用いて均一に混練して壁面仕上げ材を調製し、これを実施例1と同様して造った石膏ボード壁下地の目地部に、プラスチック製の鏝を用いて前記壁面仕上げ材をメッシュテープに塗り込み、その表面に壁面仕上げ材が出ないように塗布して乾燥させた。石膏ボードの本体部と目地部の間に目視しうる不陸が生じており、その鏝伸び、鏝離れなどの作業性は実施例に比べて明らかに悪いと感じられた。3カ月経過した壁仕上げ面には局部的に細かいクラックが発生した。
【0024】
【発明の効果】
本発明の鏝塗り用壁面仕上げ塗材によれば、石膏ボード、合板、パーティクルボードなどを張り合わせた乾式壁下地の目地部並びにその全域の不陸を解消し、壁下地におけるクラックの発生を長期に亘って抑制し、壁面における炭素繊維の黒色を消失させて美観に富む壁面仕上げを行うことが出来る。

Claims (3)

  1. 合成樹脂エマルションをバインダーとし、主たる成分として粒径0.5mm以下の無機質充填材と線径5〜50μm、長さ0.5〜30mmの炭素繊維並びに線径5〜50μm、長さ0.5〜30mmのポリプロピレン繊維を含有し、無機質充填材100重量部に対して炭素繊維とポリプロピレン繊維を0.05〜5重量部の割合で配合し、且つ炭素繊維とポリプロピレン繊維との重量配合比を1:4〜4:1の割合としたことを特徴とする鏝塗り用壁面仕上げ塗材。
  2. 石膏ボード、合板、パーティクルボードなどを張り合わせた乾式壁下地の目地部に、合成樹脂エマルションをバインダーとし、主たる成分として粒径0.5mm以下の無機質充填材と線径5〜50μm、長さ0.5〜30mmの炭素繊維並びに線径5〜50μm、長さ0.5〜30mmのポリプロピレン繊維を含有し、無機質充填材100重量部に対して炭素繊維とポリプロピレン繊維を0.05〜5重量部の割合で配合し、且つ炭素繊維とポリプロピレン繊維との重量配合比を1:4〜4:1の割合とした鏝塗り用壁面仕上げ塗材を塗布することを特徴とする壁面仕上げ方法。
  3. 乾式壁下地の目地部に、ガラス繊維製メッシュテープを張着し、鏝塗り用壁面仕上げ塗材を塗布する請求項2に記載の壁面仕上げ方法。
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