JP3821640B2 - ブロック壁面用鏝塗材およびブロック壁面の化粧方法 - Google Patents

ブロック壁面用鏝塗材およびブロック壁面の化粧方法 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
この発明は、ブロック壁面用鏝塗材およびブロック壁面の化粧方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
現在広く使われている合成樹脂エマルションをバインダーとした外壁の表面化粧用塗材は、ブロック壁面に直接塗布した場合には、乾燥後の塗膜の痩せによりブロックの段違い、目地部の不陸または壁面の凹凸を埋め切れず平滑な仕上げ面が得られない。
そのため、ブロック壁面の一般的な化粧方法は、平滑処理としてセメントモルタルによる下地調整が施され、その上に表面化粧用の塗材を塗るというものである。
しかしながら、セメントモルタルによる下地調整は、壁面の僅かな不陸に対しても、セメントモルタルを3mm以上の厚みで塗布することを余儀なくされ、また養生、硬化などに3〜7日の工期を要する難点があった。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
この発明は、目地部を有するブロック壁面の平滑処理ならびに表面仕上げを行うことができ、且つ作業性に優れたブロック壁面用鏝塗材および美観に富む表面化粧方法を提供するものである。
【0004】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、このような事情に鑑み鋭意検討を重ねた結果、合成樹脂エマルションをバインダーとし、主たる成分として粒径が5mm以下であって、粒径1〜5mmの大きさの粒子の含有率が20〜70%で且つ粒径0.5mm以下の大きさの粒子の含有率が10〜50%である無機質充填材と線径5〜50μm、長さ0.5〜30mmの炭素繊維と線径5〜50μm、長さ0.5〜30mm、吸湿率が20%以下の合成繊維を含有し、無機質充填材100重量部に対して炭素繊維と合成繊維を各々0.05〜5重量部の割合で配合し、且つ炭素繊維と合成繊維との重量配合比が1:4〜4:1である壁面用塗材を調製し、この塗材を水練りして鏝を用いて目地部を有するブロック壁面に塗布することによって、所期の目的を達成しうることを認め本発明を完成するに至った。
【0005】
すなわち本発明のブロック壁面用鏝塗材は、無機質充填材、炭素繊維および合成繊維を所定の割合で配合しており、施工後の乾燥した塗膜中においては炭素繊維と合成繊維が絡み合って均一に分散しているため、不織布のような構造を形成し、それら繊維同士の補強効果によって、塗膜の引っ張り強度、曲げ強さ、ひび割れ抵抗性、靭性、耐ムービング性などの物性が向上し、塗膜の痩せ及びクラックが抑制されるので、目地部を有するブロック壁面の化粧仕上げに好適なものであり、不陸や色むらの無い極めて均質な美観に富む表面仕上げが可能となる。
【0006】
【発明の実施の形態】
本発明の実施において使用される代表的なバインダーとしては、酢酸ビニル樹脂系(エチレン−酢酸ビニル共重合体、酢ビ−塩化ビニル共重合体、酢酸ビニル−ベオバ共重合体など)、アクリル樹脂系(アクリル−スチレン共重合体、アクリル−エチレン−酢酸ビニル共重合体など)、ベオバ樹脂系などの合成樹脂エマルションが挙げられ、これらの使用に当ってはカルボキシメチルセルロース、メチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロースなどの水溶性糊料を併用することができる。
【0007】
本発明の実施に適する無機質充填材の代表的なものとしては、珪砂、珪石粉、珪藻土、寒水石、銀砂、炭酸カルシウム、タルク、マイカ、ゼオライト、セピオライト、ベントナイト、スラグ、白土などが挙げられ、これらは各々単独で用いても良くあるいは2種以上を組み合わせて用いることもできる。
【0008】
下地の平滑処理および表面仕上げを主たる目的とするブロック壁面用鏝塗材においては、ブロックの段違い等においても平滑な仕上げ面を形成するために、粒径が5mm以下であって粒径1〜5mmの大きさの粒子の含有率が20〜70%で且つ粒径0.5mm以下の大きさの粒子の含有率が10〜50%である無機質充填材を使用することで、段違いの不陸を解消させ平滑面の形成を可能にした。
無機質充填材として粒径1〜5mmの大きさの粒子を20〜70%含有させることにより、塗り付け時の鏝の踊りが解消され、鏝押さえが容易になるので作業性が良好なものとなった。
また、無機質充填材と炭素繊維、合成繊維とは、それらの嵩比重の違いから混合させ難く、無機質充填材において粒径0.5mm以下の大きさの粒子を10〜50%含有させることにより、無機質充填材に対する炭素繊維と合成繊維の配合性が改善され、無機質充填材100重量部に対して炭素繊維と合成繊維を各々0.05〜5重量部の割合で配合させることを可能としている。
【0009】
本発明の実施において使用される炭素繊維は、ポリアクリロニトリル系あるいはピッチ系のいずれも使用することができ、その大きさは線径5〜50μm、繊維長0.5〜30mmの範囲にあるものが適している。炭素繊維の太さが5μmより小さいもの、あるいは繊維長が0.5mmより小さいものを用いた場合には、乾燥した塗膜の抗張力が乏しく、塗膜のクラック発生を十分に抑制することができない。
また、所定形状の炭素繊維を所定の割合で配合することにより、塗り付け時に塗材の表面に炭素繊維が存在し、鏝触り及び鏝滑りが改善され、優れた塗布性能が得られる。
【0010】
本発明の実施において使用される合成繊維としては、ポリプロピレン繊維、ナイロン繊維、アクリル繊維、ポリエステル繊維及びレーヨン繊維等が挙げられ、これらの繊維を単独あるいは2種類以上併用しても構わないが、塗布後における塗膜の物性および強度が良好となる点において、ポリプロピレン繊維が好適である。
【0011】
また、合成繊維は吸湿率が20%(吸湿率はJIS−L−1013に従い、温度20±2℃、相対湿度65±2%における平衡吸湿率(%)で表される)以下のものを使用することにより、表面仕上げ用塗材を塗布した後における塗膜の痩せが抑えられ、壁面に不陸が生じない。
【0012】
さらに、合成繊維を予め界面活性剤を用いて表面処理しておくことにより、水練りする際の分散性を高めることができる。また、合成繊維と顔料の親和性が高まり顔料の分散性が向上するので、均一な色合いの壁面を表出することができる。これによって、壁面下地の水引差や塗り厚の違いによる色むらが改善され、均一な色合いの美感に富む壁面仕上げを可能とした。
界面活性剤としては、アルキルホスフェート系のものが好ましい。
【0013】
合成繊維の大きさは、線径5〜50μm、繊維長0.5〜30mmの範囲であり、繊維の太さが5μmより小さいもの、あるいは繊維長が0.5mmより小さいものを用いた場合は、乾燥した塗膜の抗張力が乏しく、塗膜のクラック発生を十分に抑制することができない。逆に、繊維の径が50μmを超えるものは、無機質充填材と均一に混合させることが難しく生産性が著しく阻害され、繊維長が30mmを超える場合は、無機質充填材との配合性が悪くなり、且つ壁面に塗布する際に炭素繊維が鏝にまとわり付いて、鏝伸び、鏝離れなどの作業性が悪化するので、いずれも実施に適さない。
【0014】
本発明の実施に当って、炭素繊維と合成繊維との重量配合比は1:4〜4:1の範囲とすべきであり、この範囲を越えて炭素繊維の配合比を多くすると、黒色の斑模様が表出されて塗膜表面の美観が悪化し、この範囲を下回った場合には、塗膜の引っ張り強度、曲げ強さ、ひび割れ抵抗性、靭性、耐ムービング性などの物性向上、並びに塗膜の痩せ及びクラックの発生防止等が期待できない。
【0015】
また本発明の化粧方法は、目地部を有するブロック壁面または凹凸面を有する壁面に、本発明の塗材を塗布乾燥して下地の平滑処理および表面仕上げを行うものであるが、一般に使用されている下地調整材を使用して予め平滑処理を行った後、本発明の塗材を用いて表面仕上げを行うこともできる。
【0016】
本発明のブロック壁面用鏝塗材は、無機質充填材、炭素繊維、合成繊維、固形のバインダー及び色出しのために使用する顔料などを計量し、リボンブレンダーあるいは高速流動式攪拌機を用いてドライ混合し、その使用時に際してこれにバインダーを加え、さらに粘度調節のために水を加えて均一に混練して調製される。
【0017】
【実施例】
以下、本発明を実施例、参考例および比較例によって具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
なお、実施例、参考例および比較例に使用した主な原材料は次のとおりである。
・スチレンアクリル系エマルション樹脂[商品名:ヨドゾール、日本エヌエスシー製]
・炭素繊維[平均線径13μm、平均繊維長さ3mm、商品名:ドナカーボS−210、大阪ガス製]
・ポリプロピレン樹脂[平均線径30μm、平均繊維長さ3mm、吸湿率0%(吸湿率はJIS−L−1013に従い、温度20±2℃、相対湿度65±2%における平衡吸湿率(%)で表される)、アルキルホスフェート系界面活性剤により表面処理済み、商品名:ポリプロM−PNHC、ダイワボウ製]
【0018】
〔実施例1〕
無機質充填材として、主たる粒子の粒径が1〜5mmの硅砂60重量部と粒径が0.5mm以下であるクレー40重量部と炭素繊維0.4重量部、予めアルキルホスフェートにより表面処理を施したポリプロピレン繊維1重量部と酸化鉄1重量部およびカルボキシメチルセルロース0.2重量部をリボンブレンダーに投入して、2分間攪拌混合し均一組成物として取り出したのち、これにスチレンアクリル系エマルション樹脂16重量部および水40重量部を加え、攪拌混合機を用いて均一に混練して平滑処理および表面仕上げ用の塗材を調製した。
【0019】
〔実施例2〕
無機質充填材として、粒径が1〜5mmの寒水石50重量部、粒径が1mm以下にある重炭酸カルシウム50重量部、炭素繊維0.5重量部、予めアルキルホスフェートにより表面処理を施したポリプロピレン繊維0.5重量部と酸化チタン0.5重量部およびメチルセルロース0.5重量部をリボンブレンダーに投入して、2分間攪拌混合し均一組成物として取り出したのち、これにスチレンアクリル系エマルション樹脂12.5重量部および水25重量部を加え、攪拌混合機を用いて均一に混練して表面仕上げ用の塗材を調製した。
【0020】
〔参考例1〕
無機質充填材として粒径が0.8mm以下にある重炭酸カルシウム100重量部、炭素繊維0.5重量部、予めアルキルホスフェートにより表面処理を施したポリプロピレン繊維0.5重量部およびメチルセルロース0.5重量部をリボンブレンダーに投入して、2分間攪拌混合し均一組成物として取り出した後、これにスチレンアクリル系エマルション樹脂25重量部および水50重量部を加え、攪拌混合機を用いて均一に混練して平滑処理用の塗材を調製した。
【0021】
〔実施例3〕
実施例1の塗材をスタッコ模様の壁面に塗布し乾燥させて平滑処理を行った。次いで、表面仕上げの為に前記塗材を使用して全面塗りを行い乾燥させた。
塗面に剥がれや不陸は認められず、均質なフラット面からなる壁面が得られた。この壁仕上げ面は3カ月経過した時点において、継ぎ合わせ目地部における不陸およびクラックの発生は認められなかった。
【0022】
〔実施例4〕
参考例1の塗材をブロック壁面の目地部に塗り込み、乾燥して壁面の平滑処理を行った。次いで実施例2の塗材を、平滑処理を行ったブロック壁面に塗布し乾燥させて表面仕上げを行った。
塗膜に剥がれや不陸は認められず、均質でフラットな壁面が得られた。この壁面は3カ月経過した時点において、継ぎ合わせ目地部における不陸およびクラックの発生は認められなかった。
【0023】
〔比較例1〕
ポリプロピレン繊維の代わりに平均線径30μm、平均繊維長さ3mmのパルプ繊維を使用した以外は、実施例1と同様にして平滑処理および表面仕上げ用の塗材を調製して、実施例3および実施例4と同様にしてスタッコ模様壁面ならびにブロック壁面に塗布して、その仕上がりを比較した。
スタッコ模様壁面では、表面に凹凸ムラの模様が目視で確認され、ブロック壁面では目地部の表面に目視しうる不陸が生じており、またその鏝伸び、鏝離れなどの作業性は実施例に比べて明らかに劣るものであった。両壁面において3カ月経過した壁仕上げ面には局部的に細かいクラックが発生した。
【0024】
【発明の効果】
本発明のブロック壁面用鏝塗材および化粧方法によれば、ブロック壁面の段違い及び目地部の不陸を解消し、美観に富む壁面化粧仕上げを行うことが出来る。

Claims (3)

  1. 合成樹脂エマルションをバインダーとし、主たる成分として粒径が5mm以下であって、粒径1〜5mmの大きさの粒子の含有率が20〜70%で且つ粒径0.5mm以下の大きさの粒子の含有率が10〜50%である無機質充填材と線径5〜50μm、長さ0.5〜30mmの炭素繊維および線径5〜50μm、長さ0.5〜30mm、吸湿率が20%以下の炭素繊維以外の合成繊維を含有し、無機質充填材100重量部に対して炭素繊維と合成繊維を各々0.05〜5重量部の割合で配合し、且つ炭素繊維と合成繊維の重量配合比が1:4〜4:1であることを特徴とするブロック壁面用鏝塗材
  2. 請求項1に記載の壁面用塗材を用いて、下地の平滑処理および表面仕上げを行うブロック壁面の化粧方法
  3. 予め下地の平滑処理を行い、その上に請求項1に記載の壁面用塗材を用いて表面仕上げを行うブロック壁面の化粧方法
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