JP3594366B2 - エンジンの燃料噴射時期制御装置 - Google Patents
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Description
【0001】
【産業上の利用分野】
本発明は、ディーゼルエンジンの燃料噴射ポンプの制御に用いて好適のエンジンの燃料噴射時期制御装置に関し、特に、電磁弁を通じてタイマピストンの位置を調整することで燃料噴射時期を制御しうる、エンジンの燃料噴射時期制御装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
ディーゼルエンジンの燃料噴射ポンプには、図4に示すような構成のものがある。この図4に示す燃料噴射ポンプは、いわゆる電子制御式の分配型燃料噴射ポンプであり、図4において、10はポンプ本体であり、ポンプ本体10の内部には、ベーン式のフィードポンプ11がそなえられている。ここでは、フィードポンプ11については、本来の側面図に並べて90°だけ図示角度を変えた正面図についても示している。
【0003】
このフィードポンプ11は、エンジンの回転で作動するドライブシャフト12で回転駆動されて、燃料タンクからの燃料を圧送する。このフィードポンプ11から出力された燃料は、ポンプ本体10の内部のポンプ室13に送られて、ポンプ室13から通路14を通って燃料圧送用プランジャ15へと送給される。通路14には燃料カット用マグネットバルブ16が介装される。
【0004】
プランジャ15は、ポンプ本体10に形成されたプランジャ室17内を進退しながら、内部に形成された連通口17Aを介して、通路14からの燃料を通路18からデリバリバルブ19へと供給する。このようなプランジャ15の進退駆動は、プランジャ15の一端に結合されたカムディスク20の作用により行なわれる。
【0005】
つまり、プランジャ15及びカムディスク20は、ドライブシャフト12でエンジン回転に応じて回転駆動される。また、カムディスク20は、プランジャ15を介してスプリング21で付勢されることで、ローラホルダ22に軸支されたローラ23に当接している。なお、ローラホルダ22は、ドライブシャフト12の軸心線方向へは移動ぜず、また、通常時(後述する回転位相の調整時以外)はドライブシャフト12の軸心回りに回転することはない。これにより、カムディスク20は、そのカムプロフィルに応じてローラ23に排動されながら、軸方向へ移動する。このようにして、プランジャ15が進退して、所要のタイミングで燃料の供給を行なうのである。
【0006】
なお、通路18,デリバリバルブ19は各気筒毎に設けられている。例えば4気筒エンジンの場合には、通路18,デリバリバルブ19も4つ設けられることになる。
また、ローラ23は、図5に示すように、ローラホルダ22に複数(ここでは、4つ)設けられており、カムディスク20のカムプロフィルもこれに応じたものになっている。これにより、カムディスク20が1回転するとプランジャ15は4回駆動されることになり、この4回のプランジャ15の作動に応じて、例えば4つの気筒のそれぞれに順に燃料が供給されるようになる。
【0007】
なお、燃料の噴射量制御のために、プランジャ15の外周を進退してプランジャ15の圧送ストロークを調整するコントロールスリーブ24と、このコントロールスリーブ24を駆動するガバナ(ここではエレクトリックガバナ)25とが設けられている。
さらに、図4中、26はレギュレータバルブ、27はドライブシャフト12の回転速度を検出するセンシングギヤプレート、28は燃料温度センサであり、29はポンプ室13内の過剰な燃料を燃料タンクへ戻すオーバフローバルブであって、チェックバルブをそなえている。
【0008】
ところで、このような燃料噴射ポンプでは、燃料の噴射タイミングを制御するために、タイマ30が設けられている。タイマ30には、ローラ23の回転方向位置を変更するタイマピストン31がそなえられれている。なお、このタイマピストン31についても、便宜上、90°だけ図示角度を変えた正面図で示している。
【0009】
このタイマピストン31は、図4,図5に示すように、ポンプ本体10に形成されたシリンダ32内で進退しながら、ピストンピン33を通じてローラホルダ22を微小回転させる。
つまり、タイマピストン31は、中間部にピストンピン33をピン結合され、その一端にはポンプ室13内の燃料圧を導かれる第1圧力室34が設けられ、他端には吸入側燃料圧(フィードポンプ11の上流側の燃料圧)を導かれる第2圧力室35が設けられる。
【0010】
また、タイマピストン31には、ポンプ室13と第1圧力室34とを連通する通路36が設けられ、この通路36にはオリフィス37が介設されている。さらに、第2圧力室35内には、タイマピストン31を一端側(第1圧力室34方向)へ付勢するタイマスプリング38がそなえられる。
そして、第1圧力室34内の燃料圧と、第2圧力室35内の燃料圧及びタイマスプリング38の付勢力とのバランスによって、タイマピストン31の位置が決定する。例えば図5の(A)に示す状態よりも第1圧力室34内の燃料圧が高くなると、図5の(B)に示すように、タイマピストン31が図中左方へ移動するが、この時には、燃料噴射タイミングは進角側へ調整される。逆に、第1圧力室34内の燃料圧が低くなると、タイマピストン31が図中右方へ移動して、燃料噴射タイミングは遅角側へ調整される。
【0011】
例えば、エンジンの回転速度が高まると、フィードポンプ11からの出力圧が高まって、ポンプ室13内の燃料圧も高まり、第1圧力室34が高圧になる。したがって、タイマピストン31が図中左方へ移動して、燃料噴射タイミングが進角側へ調整されることになる。
さらに、このポンプの場合、図4に示すように、第1圧力室34側と第2圧力室35側との圧力バランスを調整しうるタイミングコントロールバルブ(TCV)39が設けられており、様々なパラメータに基づいて燃料噴射タイミングを調整しうるようになっている。
【0012】
つまり、タイミングコントロールバルブ39は、電子制御式の電磁弁であり、デューティ制御によりその開度(単位時間当たりの開弁時間)を調整される。したがって、タイミングコントロールバルブ39をデューティ制御することで、バルブ39の開度に応じて第1圧力室34側と第2圧力室35側との圧力差が適宜調整(ここでは減少側へ調整)され、タイマピストン31の位置が調整されることになり、この結果、燃料噴射タイミングが調整される。
【0013】
このようなタイミングコントロールバルブ39の駆動は、図示しないタイミングコントロールバルブドライバ(TCVドライバ)により行なわれるが、このTCVドライバは、図示しないコントローラにより目標燃料噴射量Qやエンジン回転数Neに応じて作動を制御される。
【0014】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、タイミングコントロールバルブ39をデューティ制御する場合、一定の周波数で駆動電流パルスを発しながら制御を行なうことになるが、この時の駆動周波数がエンジンの回転数の整数倍に近づくと、燃料噴射時期が変動することがある。この現象は「揺らぎ」と呼ばれ、この「揺らぎ」は、近接した異なる2つの周波数の干渉により生じるいわゆる「うなり」の現象と考えられる。
【0015】
例えば図6の曲線Sは、この揺らぎ現象を示す実験データであり、エンジン回転数Neを1800rpmの近傍とし、タイミングコントロールバルブ39の駆動周波数を60Hzとした条件下での実験結果を示す。横軸が時間、縦軸がタイマピストン31の位置(TPS)であり、曲線C1がTPSの変動特性を示しているが、TPSが比較的長周期(約1秒)で振動していることがわかる。
【0016】
これは、エンジン回転数Neが正確に1800rpm(=30Hz)であれば、タイミングコントロールバルブ39の駆動周波数60Hzは丁度エンジン回転数Neの2倍になるが、エンジン回転数Neが1800rpmに近いが正確に1800rpmではないために、このような「うなり」のような現象が生じるものと考えられる。
【0017】
そこで、エンジン回転数Neを1770rpm(=29.5Hz)としてタイミングコントロールバルブ39の駆動周波数を60Hzとした場合をシミュレーションしてみると、図7に示すように、上述の図6に示す実験結果とほぼ同様の特性が現れる。
このような揺らぎ現象の原因は、オリフィス37が一定に作用し且つタイミングコントロールバルブ39の開度が一定のときには、タイマピストン31の両端の差圧により、各圧力室34,35での燃料の流入出即ちタイマピストン31の位置が支配される。したがって、差圧変動が揺らぎ(即ち、タイマピストン31の変位)の原因と考えられる。
【0018】
そこで、さらに、差圧変動の要因を考えると、ポンプ室13の圧力変動、及び、タイマピストン31のシリンダ32内の圧力変動が考えられる。
このうち、ポンプ室13の圧力変動は、フィードポンプ11の吐出圧の変動によるものや、プランジャ15の燃料圧送スピルによるもの等が考えられる。また、タイマピストンシリンダ32内の圧力変動は、カムディスク20がローラ23を乗り越える時の反力がピストンピン33を通じて伝達されることによるものや、タイマピストン31の質量とタイマスプリング38の弾性特性とによる共振によるものなどが考えられる。
【0019】
これらのなかでも、特に、影響が大きいものが、カムディスクの乗り越え時の反力である。この反力は、カムディスクの乗り越え時にタイマピストン31の動きにより、タイマピストン31の両端(即ち、両圧力室34,35)の流入圧がともに変動するため、単純に考えると、ポンプ室13の圧力変動の2倍の影響がある。しかも、タイマピストン31に作用する強制圧自体も変動が大きいため、最も影響が大きいと言える。なお、このカムディスクの乗り越え時の反力は、4気筒エンジンの場合、エンジン回転数Neの2倍の周波数をもち、振幅はほぼ一定である。
【0020】
このような揺らぎ現象を回避するには、以下のような手段が考えられる。
(1)つまり、図8中の直線L1,L2,L3に示すように、タイミングコントロールバルブ39の駆動周波数をエンジン回転との共振点、即ちエンジン回転数Ne,又はエンジン回転数Neの2倍値(=2Ne),又はエンジン回転数Neの4倍値(=4Ne)と完全に同期させる。この技術は、例えば特公昭63−8298号公報に開示されている。
【0021】
(2)図8中の破線L4に示すように、タイミングコントロールバルブ39の駆動周波数をエンジン回転数Neに対して鋸刃状に変更しながら、タイミングコントロールバルブ39の駆動周波数がエンジン回転との共振点、即ちエンジン回転数Neや2Neや4Neに接近しないようにする。この技術は、例えば特公平1−19059号公報に開示されている。
【0022】
これらの手段は、図9に示すように、タイミングコントロールバルブとエンジンとの周波数差が離れるほど、揺らぎ(ピストン振幅)が減少するという特性による。図9中、Neを付す特性は0.5次共振点の近傍、即ち、タイミングコントロールバルブの駆動周波数をエンジン回転数Neの近傍にした場合のもので、2*Neを付す特性は1次共振点の近傍、即ち、タイミングコントロールバルブの作動周波数をエンジン回転数Neの2倍の近傍にした場合のもので、4*Neを付す特性は2次共振点の近傍、即ち、タイミングコントロールバルブの作動周波数をエンジン回転数Neの4倍の近傍にした場合のものである。
【0023】
(1)の解決手段に着目すると、上述の特公昭63−8298号公報は、燃料フィード圧に基づいて、開閉弁(タイミングコントロールバルブ)の作動周波数を機関回転数の整数倍(例えば2倍)となるように制御することで、開閉弁の作動周期を燃料フィード圧の圧力変動周期と同期させて、燃料フィード圧の圧力変動を減少させ、燃料噴射時期を精度よく制御しようとする技術である。
【0024】
しかしながら、この技術では、燃料フィード圧を検出してこの圧力に基づいて開閉弁の作動を制御するため、以下のような不具合がある。
ます、上述のゆらぎ現象に対しては、燃料フィード圧の影響は比較的小さいので、燃料フィード圧に基づいた制御は必ずしも適切ではない。
また、燃料噴射時期が変化するごとに開閉弁の駆動開始時期も変化するため、開閉弁の駆動終了時期(即ち、デューティ幅)の設定が複雑になる。逆に、開閉弁の駆動終了時期を回転位相に同期させようとすると開閉弁の駆動開始時期を正しく設定できないので開閉弁の開度制御(即ち、デューティ制御)を行なえない。
【0025】
さらに、機関のクランク角に対して、検出した燃料フィード圧情報に基づく信号を同期させるのに工夫が必要になる。これは、燃料フィード圧の立ち上がりは噴射時期に同期するがクランク角とは関連なく、また、燃料フィード圧の立ち下がりは噴射量に依存するがやはりクランク角とは関連ないためである。
また、(2)の技術は、複数の駆動周波数をエンジン回転数(回転速度)に応じて選択するが、駆動周波数の切替ポイントを適切に設定しないと揺らぎ現象の抑制効果を確実に得ることはできない。
【0026】
例えば、図8のエリアA1内の切替ポイントP1では、タイミングコントロールバルブの駆動周期とエンジン回転数とが1次共振領域に接近するので、前述の揺らぎ現象が大きく現れ易い。これは、1次共振の領域では、揺らぎによるピストン振幅が大きくなるためである。
つまり、図9に2*Neの特性線で示すように、1次共振付近でのピストン振幅は、0.5次共振(特性線Ne)の付近でのものに比べるとほぼ2倍以上も大きく、また、2次共振(特性線4*Ne)の付近でのものに比べるとほぼ4倍以上も大きくなる。
【0027】
このようにピストン振幅が大きいと、それだけ燃料噴射時期の制御精度も低下してしまうので、特に、1次共振の領域での揺らぎ現象を回避できるようにすべきであるが、従来の技術では、このように1次共振の領域の揺らぎ対策について特別には考えられておらず、揺らぎ現象の抑制効果を確実に得るまでには至っていない。
【0028】
なお、特開平1−300037号,特開平4−347346号,特公平3−25626号の各公報にも、ディーゼルエンジン等のエンジンの燃料噴射時期制御に関する技術が開示されているが、これらの技術は、上述のような揺らぎ現象に関して具体的に着目しておらず、また、かかる揺らぎ現象を適切に回避しうるものではない。
【0029】
本発明は、上述の課題に鑑み創案されたもので、電磁弁を通じてタイマピストンの位置を調整することで燃料噴射時期を制御しうる装置において、揺らぎ現象の抑制効果を確実に得られるようにして燃料噴射時期を適切に制御できるようにした、エンジンの燃料噴射時期制御装置を提供することを目的とする。
【0030】
【課題を解決するための手段】
このため、請求項1記載の本発明のエンジンの燃料噴射時期制御装置は、供給される油圧に応じてタイマピストンを移動させることで燃料噴射弁から噴射されるエンジンの燃料噴射時期を変更しうるタイマと、所要のデューティ比に制御されながら該タイマへ供給される油圧を調整するタイマ制御用電磁弁と、該エンジンの運転状態に応じて該電磁弁の該デューティ比を決定するデューティ比決定手段と、第1の周波数を有する信号を発生する第1周波数信号発生手段と、該第1の周波数よりも低い第2の周波数を有する信号を発生する第2周波数信号発生手段と、該エンジンの回転数を検出するエンジン回転数検出手段と、該エンジン回転数検出手段で検出されたエンジン回転数に応じて該第1の周波数信号と該第2の周波数信号とを切り替えて出力する周波数信号切替手段と、上記の周波数信号切替手段から出力された周波数信号に基づく駆動周波数で且つ該デューティ比決定手段で決定したデューティ比によるオン・オフ信号によって該電磁弁を制御する制御手段とをそなえ、該周波数信号切替手段が、該第1の周波数に関するN次共振エンジン回転数と該第2の周波数に関するN次共振エンジン回転数との間の回転数として予め設定された第1の信号切替用エンジン回転数に基づいて、該第1の信号切替用エンジン回転数よりも低速回転側のエンジン回転数領域では該第1の周波数を用い、該第1の信号切替用エンジン回転数よりも高速回転側のエンジン回転数領域では該第2の周波数を用いるように、上記の第1及び第2の周波数信号を切り替えるように構成され、エンジン回転数の変化に伴い該第1の周波数信号及び該第2の周波数信号が共振エンジン回転数に近づくのを防止するために、該第1の信号切替用エンジン回転数と該第2の周波数に関するN次共振エンジン回転数との回転数差が、該第1の信号切替用エンジン回転数と該第1の周波数に関するN次共振エンジン回転数との回転数差よりも大きくなるように設定されていることを特徴としている。
【0031】
請求項2記載の本発明のエンジンの燃料噴射時期制御装置は、請求項1記載の構成において、該第1の信号切替用エンジン回転数以外の第2の信号切替用エンジン回転数が、該電磁弁の該エンジン回転との1次共振領域と2次共振領域との間に設けられて、該第2の信号切替用エンジン回転数よりも該1次共振領域側のエンジン回転数領域では該第2の周波数を用い、該第2の信号切替用エンジン回転数よりも該2次共振領域側のエンジン回転数領域では該第1の周波数を用いるように、該周波数信号切替手段による周波数切替が設定され、該第2の信号切替用エンジン回転数と該第1の周波数に関する1次共振エンジン回転数との回転数差が、該第2の信号切替用エンジン回転数と該第2の周波数に関する2次共振エンジン回転数との回転数差よりも大きくなるように設定されていることを特徴としている。
【0032】
請求項3記載の本発明のエンジンの燃料噴射時期制御装置は、請求項1又は2記載の構成において、上記の第1及び第2の信号切替用エンジン回転数以外の第3の信号切替用エンジン回転数が、該電磁弁の該エンジン回転との0.5次共振領域と1次共振領域との間に設けられて、該第3の信号切替用エンジン回転数よりも該0.5次共振領域側のエンジン回転数領域では該第2の周波数を用い、該第3の信号切替用エンジン回転数よりも該1次共振領域側のエンジン回転数領域では該第1の周波数を用いるように、該周波数信号切替手段による周波数切替が設定され、該第3の信号切替用エンジン回転数と該第2の周波数に関する1次共振エンジン回転数との回転数差が、該第3の信号切替用エンジン回転数と該第1の周波数に関する0.5次共振エンジン回転数との回転数差よりも大きくなるように設定されていることを特徴としている。
【0034】
【作用】
上述の請求項1記載の本発明のエンジンの燃料噴射時期制御装置では、タイマが、供給される油圧に応じてタイマピストンを移動させることで燃料噴射弁から噴射されるエンジンの燃料噴射時期を調整する。
このとき、タイマへ供給される油圧はタイマ制御用電磁弁を通じて調整されるが、タイマ制御用電磁弁は制御手段によって、次のように制御される。
【0035】
つまり、燃料噴射時期の調整にあたり、デューティ比決定手段が、エンジンの運転状態に応じて電磁弁のデューティ比を決定する。また、第1周波数信号発生手段が、第1の周波数を有する信号を発生し、第2周波数信号発生手段が、第1の周波数よりも低い第2の周波数を有する信号を発生して、周波数信号切替手段が、エンジン回転数検出手段で検出されたエンジン回転数に応じて第1の周波数信号と第2の周波数信号とを切り替えて出力する。
【0036】
そして、制御手段が、周波数信号切替手段から出力された周波数信号に基づく駆動周波数で且つデューティ比決定手段で決定したデューティ比によるオン・オフ信号によって電磁弁を制御する。
周波数信号切替手段による第1の周波数信号と第2の周波数信号との切替は、該第1の周波数に関するN次共振エンジン回転数と該第2の周波数に関するN次共振エンジン回転数との間の回転数として予め設定された第1の信号切替用エンジン回転数に基づいて、該第1の信号切替用エンジン回転数よりも低速回転側のエンジン回転数領域では該第1の周波数を用い、該第1の信号切替用エンジン回転数よりも高速回転側のエンジン回転数領域では該第2の周波数を用いるようにして行なわれる。エンジン回転数の変化に伴い該第1の周波数信号及び該第2の周波数信号が共振エンジン回転数に近づくのを防止するために、この第1の信号切替用エンジン回転数と該第2の周波数に関するN次共振エンジン回転数との回転数差が、該第1の信号切替用エンジン回転数と該第1の周波数に関するN次共振エンジン回転数との回転数差よりも大きくなるように設定されているので、電磁弁の駆動周波数が、電磁弁とエンジン回転との共振周波数に接近しなくなり、タイマピストンの揺らぎ現象が抑制又は回避される。
つまり、共振領域では、第1の信号切替用エンジン回転数よりも高速回転側では、第1の周波数に関するN次共振エンジン回転数に接近するが、この領域では第2の周波数が用いられるので、電磁弁の駆動周波数が、電磁弁とエンジン回転とのN次共振周波数に接近しなくなり、タイマピストンの揺らぎ現象が抑制又は回避される。
また、第1の信号切替用エンジン回転数よりも低速回転側では、第2の周波数に関するN次共振エンジン回転数に接近するが、この領域では第1の周波数が用いられるので、電磁弁の駆動周波数が、電磁弁とエンジン回転とのN次共振周波数に接近しなくなり、タイマピストンの揺らぎ現象が抑制又は回避される。
さらに、一般に、等しい次数の共振の場合、低周波(低速回転)である第2の周波数の方が高周波(高速回転)である第1の周波数の場合よりも、タイマピストンの揺らぎの振幅が大きく燃料噴射時期制御への影響が大きいが、第1の信号切替用エンジン回転数と第2の周波数に関するN次共振エンジン回転数との回転数差が、第1の信号切替用エンジン回転数と第1の周波数に関するN次共振エンジン回転数との回転数差よりも大きく設定されているので、より影響の大きい低周波共振付近での揺らぎが優先的に抑制されるようになる。
【0037】
上述の請求項2記載の本発明のエンジンの燃料噴射時期制御装置では、電磁弁のエンジン回転との1次共振領域と2次共振領域との間において、該第1の信号切替用エンジン回転数以外の第2の信号切替用エンジン回転数で周波数信号が切り替えられ、第2の信号切替用エンジン回転数よりも1次共振領域側(即ち、低速回転側)のエンジン回転数領域では第2の周波数が用いられて、第2の信号切替用エンジン回転数よりも2次共振領域側(即ち、高速回転側)のエンジン回転数領域では第1の周波数が用いられる。
【0038】
第2の信号切替用エンジン回転数よりも1次共振領域側(低速回転側)では、第2の周波数よりも高い周波数の第1の周波数に関する1次共振エンジン回転数に接近するが、この領域では第2の周波数が用いられるので、電磁弁の駆動周波数が、電磁弁とエンジン回転との1次共振周波数に接近しなくなり、タイマピストンの揺らぎ現象が抑制又は回避される。
【0039】
また、一般に、1次共振付近は2次共振付近よりもタイマピストンの揺らぎの振幅が大きく燃料噴射時期制御への影響が大きいが、第2の信号切替用エンジン回転数と第1の周波数に関する1次共振エンジン回転数との回転数差が、第2の信号切替用エンジン回転数と第2の周波数に関する2次共振エンジン回転数との回転数差よりも大きく設定されているので、より影響の大きい1次共振付近での揺らぎの方が、2次共振付近の揺らぎよりも優先的に抑制されるようになる。
【0040】
上述の請求項3記載の本発明のエンジンの燃料噴射時期制御装置では、電磁弁のエンジン回転との0.5次共振領域と1次共振領域との間において、上記の第1及び第2の信号切替用エンジン回転数以外の第3の信号切替用エンジン回転数で周波数信号が切り替えられ、第3の信号切替用エンジン回転数よりも0.5次共振領域側(即ち、低速回転側)のエンジン回転数領域では第2の周波数が用いられて、第3の信号切替用エンジン回転数よりも1次共振領域側(即ち、高速回転側)のエンジン回転数領域では第1の周波数が用いられる。
【0041】
第3の信号切替用エンジン回転数よりも1次共振領域側(高速回転側)では、第1の周波数よりも低い周波数の第2の周波数に関する1次共振エンジン回転数に接近するが、この領域では第1の周波数が用いられるので、電磁弁の駆動周波数が、電磁弁とエンジン回転との1次共振周波数に接近しなくなり、タイマピストンの揺らぎ現象が抑制又は回避される。
【0042】
また、一般に、1次共振付近は0.5次共振付近よりもタイマピストンの揺らぎの振幅が大きく燃料噴射時期制御への影響が大きいが、第3の信号切替用エンジン回転数と第2の周波数に関する1次共振エンジン回転数との回転数差が、第3の信号切替用エンジン回転数と第1の周波数に関する0.5次共振エンジン回転数との回転数差よりも大きく設定されているので、より影響の大きい1次共振付近での揺らぎの方が、0.5次共振付近の揺らぎよりも優先的に抑制されるようになる。
【0046】
【実施例】
以下、図面により、本発明の実施例について説明する。
図1〜図3は本発明の一実施例としてのエンジンの燃料噴射時期制御装置を示すものであるが、このエンジンの燃料噴射時期制御装置は、従来技術として既に説明したように、図4,図5に示すような電子制御式の分配型燃料噴射ポンプに適用される。そこで、図4,図5を参照して、この分配型燃料噴射ポンプから簡単に説明する。
【0047】
本エンジンの燃料噴射時期制御装置をそなえる燃料噴射ポンプは、図4に示すように、ポンプ本体10の内部に、エンジン駆動のドライブシャフト12で回転駆動されるベーン式フィードポンプ11をそなえ、このフィードポンプ11で、燃料タンクからの燃料をポンプ本体10の内部のポンプ室13に圧送し、更に、通路14を経て燃料圧送用プランジャ15へと送給するようになっている。通路14には、燃料カット用マグネットバルブ16が設けられる。
【0048】
プランジャ15はプランジャ室17内を進退するが、このプランジャ15の位置に応じて、通路14側の燃料をプランジャ室17に吸入して、連通口17Aを介して通路18からデリバリバルブ19へと圧送するようになっている。なお、通路18,デリバリバルブ19は各気筒毎に設けられている。また、プランジャ15は、その一端に結合されたカムディスク20を通じて進退駆動されるようになっている。
【0049】
すなわち、カムディスク20は、プランジャ15に装着されたスプリング21でローラホルダ22に軸支されたローラ23に付勢されており、プランジャ15及びカムディスク20がドライブシャフト12で回転駆動されると、カムディスク20は、そのカムプロフィルに応じてローラ23に排動されながら、軸方向へ移動して、プランジャ15を進退させて、所要のタイミングで燃料の供給を行なうようになっている。
【0050】
ローラ23は、図5に示すように、ローラホルダ22に複数(ここでは、4つ)設けられており、カムディスク20のカムプロフィルもこれに応じたものになっている。これにより、カムディスク20が1回転するとプランジャ15は4回駆動されることになり、この4回のプランジャ15の作動に応じて、例えば4つの気筒のそれぞれに順に燃料が供給されるようになっている。
【0051】
また、燃料の噴射量制御のためのコントロールスリーブ24,このコントロールスリーブ24を駆動するガバナ(ここではエレクトリックガバナ)25のほか、レギュレータバルブ26,ドライブシャフト12の回転速度を検出するセンシングギヤプレート27,燃料温度センサ28,ポンプ室13内の過剰な燃料を燃料タンクへ戻すチェックバルブ付きオーバフローバルブ29も設けられる。
【0052】
そして、ローラ23の回転方向位置を変更するために、タイマピストン31をそなえたタイマ30が設けられている。タイマピストン31は、図4,図5に示すように、ポンプ本体10に形成されたシリンダ32内で進退しながら、ピストンピン33を通じてローラホルダ22を微小回転させる。
タイマピストン31は、中間部にピストンピン33をピン結合され、一端にはポンプ室13内の燃料圧を導かれる第1圧力室34が設けられ、他端には吸入側燃料圧(フィードポンプ11の上流側の燃料圧)を導かれる第2圧力室35が設けられている。また、タイマピストン31には、ポンプ室13と第1圧力室34とを連通する通路36が設けられ、この通路36にはオリフィス37が介設されている。さらに、第2圧力室35内には、タイマピストン31を一端側(第1圧力室34方向)へ付勢するタイマスプリング38がそなえられる。
【0053】
これにより、第1圧力室34内の燃料圧と、第2圧力室35内の燃料圧及びタイマスプリング36の付勢力とのバランスによって、タイマピストン31の位置が決定するが、このポンプの場合、図4に示すように、第1圧力室34側と第2圧力室35側との圧力バランスを調整しうるタイマ制御用電磁弁としてのタイミングコントロールバルブ(TCV)39が設けられており、様々なパラメータに基づいて燃料噴射タイミングを調整しうるようになっている。
【0054】
このタイミングコントロールバルブ39は、電子制御式電磁弁であり、デューティ制御によりその開度(単位時間当たりの開弁時間)を調整されるようになっており、このタイミングコントロールバルブ39をデューティ制御することで、バルブ39の開度に応じて第1圧力室34側と第2圧力室35側との圧力差が適宜調整(ここでは減少側へ調整)され、タイマピストン31の位置が調整されることになり、この結果、燃料噴射タイミングが調整されるようになっている。
【0055】
このようなタイミングコントロールバルブ39の駆動は、図1に示すようなタイミングコントロールバルブソレノイド(TCVソレノイド)40Aへの電流制御により行われるが、この電流制御は、制御手段としてのECU(電子制御ユニット)41により目標燃料噴射量Qやエンジン回転数Neに応じて作動を制御される。本燃料噴射時期制御装置では、このようなタイミングコントロールバルブ39の駆動制御に特徴があるが、この説明の前に、図2のタイマピストン31の駆動制御モデルを参照しながら、ECU41を通じて行なうタイマピストン31の駆動制御を説明する。
【0056】
タイマピストン31の位置は、高圧側の第1圧力室34側に加わる圧力(高圧側の第1圧力室34と低圧側の第2圧力室35内との差の圧力〕と、低圧側の第2圧力室側から加わるタイマスプリング38のバネ力との均衡したところに決まる。タイマピストン31の駆動制御はこのような観点から行なわれる。
つまり、図2に示すように、高圧側の第1圧力室34からタイマピストン31に作用する圧力方向を正とすると、タイマピストン31には、高圧側の第1圧力室34内の圧力P1〔B1参照〕と、この第1圧力室34に作用する元圧変動(フィードポンプ吐出圧の変動する圧力影響)P3〔B3参照〕とが正方向に加わり、低圧側の第2圧力室35内の圧力P2〔B2参照〕が負方向に加わる。
【0057】
また、タイミングコントロールバルブ39による第1圧力室34から第2圧力室35への圧力調整分Pcが、正方向圧力を減少させ〔a1参照〕、正方向圧力を増加させる〔a2参照〕。
第1圧力室34へ進入する燃料の流量は、ポンプ室13側とタイマシリンダ32側(第1圧力室34側)との圧力差の平方根に比例し〔B5参照〕、これにオリフィス37の流量係数(オリフィス係数)を乗算したものである〔B6参照〕。同様に、タイマシリンダ32側(第1圧力室34側)から流出する燃料量は、シリンダ圧と低圧〔B2参照〕とのさの平方根に比例するが、この流量は、タイミングコントロールバルブ39のオン・オフ状態〔B7参照〕に応じて変化する。タイマピストン31の位置は、これらのシリンダ32への燃料の流入出量によって決まる。
【0058】
このため、タイミングコントロールバルブ39を制御してタイマシリンダ32への燃料の流入出量を変えれば、ピストン位置は変化する。そして、エンジン回転数Neと噴射量Qとに対応してタイミングコントロールバルブ39のオン・オフの割合(即ち、デューティ比)を設定すれば、燃料噴射時期を制御することができ、さらに、実際の燃料噴射時期を検出することによって燃料噴射時期をデューティ制御することもできる。
【0059】
例えば、図2に示すような更なる処理(B8〜B15,a3〜a5,d1,d2)によってタイマピストンを制御することもできる。
そして、ECU41によるタイミングコントロールバルブ39自体の駆動制御系は、図1に示すように構成される。
つまり、ECU41には、第1周波数信号発生手段42と、第2周波数信号発生手段43と、周波数信号切替手段44と、デューティ比決定手段45と、タイミングコントロールバルブ制御手段46と、駆動回路47とがそなえられる。
【0060】
第1周波数信号発生手段42では、第1の周波数f1 (例えば80Hz)を有する信号W1を発生し、第2周波数信号発生手段43では、第1の周波数f1 よりも低い第2の周波数f2 (例えば60Hz)を有する信号を発生するようになっている。
そして、周波数信号切替手段44では、エンジン回転数Neに応じて第1の周波数信号f1 と第2の周波数信号f2 とを切り替えて出力するが、この切替は、図3に示すように、タイミングコントロールバルブ39とエンジンとの共振領域を回避するようにして行なわれるようになっている。この周波数信号切替手段44は、選択周波数判定手段44Aとこの選択周波数判定手段44Aからの選択信号に応じて切り替えるスイッチ44Bとから構成することができる。この周波数信号の切替制御についての詳細な説明は後述する。
【0061】
また、デューティ比決定手段45は、エンジンの運転状態に応じてタイミングコントロールバルブ(電磁弁)39のデューティ比を決定するもので、目標ピストン位設定手段48で設定されたタイマピストン31の目標位置(目標ピストン位置)に応じてデューティ比を決定する。なお、目標ピストン位設定手段47では、燃料噴射量(燃料噴射時間)Q及びエンジン回転数Neに基づいて目標ピストン位置を設定する。
【0062】
そして、本実施例では、デューティ比決定手段45は、このデューティ比に対応したタイミングコントロールバルブ39のコイル39Aへの励磁時間(オン制御時間)t1を例えばマップに基づいて設定するようになっている。
つまり、デューティ比が決まれば、制御周期にこのデューティ比を乗算することで、励磁時間t1 を算出することができ、ここでは、第1の周波数f1 に応じた第1の制御周期と、第2の周波数f2 に応じた第2の制御周期とが設けられているので、第1の周波数f1 に応じた第1周波数用マップAと、第2の周波数f2 に応じた第2周波数用マップBとを用意して、これらのマップを適宜用いることでデューティ比に応じた励磁時間t1 を設定するようになっている。
【0063】
制御手段46は、オン・オフ信号に基づいてタイミングコントロールバルブ39を制御するもので、このオン・オフ信号は、周波数信号切替手段44を通じて出力された信号に基づく周波数f1 又はf2 を有し、且つ、デューティ比決定手段45で決定したオン・オフの割合(即ち、デューティ比)を有している。
このため、制御手段46は、図1に示すように、0クロス検出器46Aと、三角波発生器46Bと、コンパレータ46Cと、アンド回路46Dとをそなえている。
【0064】
このうち、0クロス検出器46Aは周波数信号W1の0クロスを検出するが、周波数信号W1が入力されていれば三角波発生器46B及びアンド回路46Dにオン信号を出力し、また、0クロスを検出時には、三角波発生器46Bに検出信号を出力する。
三角波発生器46Bは、この0クロス検出器46Aからのオン信号で三角波信号を派生して出力するが、この三角波信号は0クロス検出信号によってリセットされる。
【0065】
また、コンパレータ46Cは、三角波発生器46Bからの三角波信号の出力値と、デューティ比決定手段43で求められたタイミングコントロールバルブ39の励磁時間信号の出力値とを比較するもので、三角波信号の出力値が励磁時間信号の出力値よりも小さければ、オン信号(励磁信号)を出力し、三角波信号の出力値が励磁時間信号の出力値以上になったら、オフ信号(励磁停止信号)を出力するようらになっている。
【0066】
さらに、アンド回路46Dは、コンパレータ46Cからのオン信号が出力されたときに、同時に0クロス検出器46Aからオン信号が出力されていたら、オン信号(励磁信号)を駆動回路45に出力するようになっている。
駆動回路47は、電源47Aとトランジスタ47Bとを有しており、トランジスタ47Bはスイッチング回路として機能し、アンド回路46Dからオン信号を受けると、タイミングコントロールバルブ39のコイルに電源47Aからの電力を供給しタイミングコントロールバルブ39のコイル39Aを励磁するようになっている。
【0067】
ここで、周波数信号切替手段44による周波数信号の切替制御について説明すると、周波数信号切替手段44では、前述のように、タイミングコントロールバルブ39とエンジンとの共振領域を回避するようにして周波数信号の切替制御を行なうが、まず、共振領域について説明する。
つまり、タイミングコントロールバルブ39とエンジンとの共振領域は、タイミングコントロールバルブの駆動周波数がエンジン回転数Neの整数倍と一致する近傍に存在し、タイミングコントロールバルブの駆動周波数を数十Hz以上にすると、通常のエンジン回転領域(上限が5000〜6000rpm程度)では、0.5次共振点,1次共振点,及び2次共振点が存在する。
【0068】
すなわち、タイミングコントロールバルブ39とエンジンとの共振の代表的なものは、前述のように、タイマピストン31に加わるタイミングコントロールバルブ39の圧力変動の周波数(即ち、駆動周波数)とカムディスクの乗り越え時の反力の作用する周波数とが完全に一致する場合であり、これが1次共振である。カムディスクの乗り越え時の反力の周波数は、4気筒エンジンの場合、エンジン回転数Neの2倍であり、タイミングコントロールバルブ39の駆動周波数がエンジン回転数Neの2倍となったときに、1次共振となる。
【0069】
また、タイミングコントロールバルブ39とエンジンとの共振には、この他、タイミングコントロールバルブ39の圧力変動周波数(駆動周波数)が、カムディスクの乗り越え反力周波数の整数倍と一致する場合があり、タイミングコントロールバルブ39の駆動周波数が、乗り越え反力周波数の2倍となる場合が2次共振である。4気筒エンジンの場合、タイミングコントロールバルブ39の駆動周波数がエンジン回転数Neの4倍となったときに、2次共振となる。
【0070】
さらに、タイミングコントロールバルブ39とエンジンとの共振には、この他、カムディスクの乗り越え反力周波数が、タイミングコントロールバルブ39の駆動周波数の整数倍と一致する場合があり、乗り越え反力周波数が、タイミングコントロールバルブ39の駆動周波数の2倍となる場合(逆に言うと、タイミングコントロールバルブ39の駆動周波数が、乗り越え反力周波数の0.5倍となる場合)が0.5次共振である。4気筒エンジンの場合、タイミングコントロールバルブ39の駆動周波数がエンジン回転数Neと一致したときに、0.5次共振となる。
【0071】
タイマピストン31に生じる「揺らぎ現象」は、これらの0.5次共振点,1次共振点,及び2次共振点において問題になるが、特に、図9を参照して既に説明したように、1次共振領域での「揺らぎ現象」によるピストン振幅は、0.5次共振領域のものに比べるとほぼ2倍以上も大きく、また、2次共振領域のものに比べるとほぼ4倍以上も大きくなる。
【0072】
そこで、周波数信号切替手段44では、このような特性に対応するように、1次共振領域での「揺らぎ現象」の回避を、0.5次共振領域や2次共振領域の場合よりも優先するように周波数信号を切り替えるようになっている。
また、同次共振領域では、周波数が低い方がタイマピストンの揺らぎの振幅を大きくするので、周波数信号切替手段44では、駆動周波数の低い場合(即ち、第2の周波数の場合)の方を、駆動周波数の高い場合(即ち、第1の周波数の場合)よりも優先的に共振領域からの回避を行なうようになっている。
【0073】
具体的には、周波数信号切替手段44による周波数信号の切替は、図3に示すように、信号切替用エンジン回転数(以下、切替回転数という)N1 ,N2 ,N3 ,N4 ,N5 で行なうようになっている。つまり、選択周波数判定手段44Aが、エンジン回転数を検出する回転数センサ(エンジン回転数検出手段)49からの検出情報を受けて、検出したエンジン回転数Neを切替回転数N1 〜N5 のいずれかになったら周波数信号の切替を行なうようになっている。
【0074】
なお、切替回転数N1 〜N5 のうち、切替回転数N1 は0.5次共振領域に、切替回転数N2 は0.5次共振領域と1次共振領域との間に、切替回転数N3 は1次共振領域に、切替回転数N4 は1次共振領域と2次共振領域との間に、切替回転数N5 は2次共振領域に設けられている。
そして、エンジン回転数NeがN1 未満なら第1の周波数f1 を用い、エンジン回転数NeがN1 以上でN2 未満なら第2の周波数f2 を用い、エンジン回転数NeがN2 以上でN3 未満なら第1の周波数f1 を用い、エンジン回転数NeがN3 以上でN4 未満なら第2の周波数f2 を用い、エンジン回転数NeがN4 以上でN5 未満なら第1の周波数f1 を用い、エンジン回転数NeがN5 以上なら第2の周波数f2 を用いるようにして、周波数信号の切替を行なうようになっている。
【0075】
特に、各切替回転数N1 ,N2 ,N3 ,N4 ,N5 は以下のように設定されている。
つまり、第1の周波数f1 における0.5次共振点,1次共振点,2次共振点のエンジン回転数をN11,N12,N13として、第2の周波数f2 における0.5次共振点,1次共振点,2次共振点のエンジン回転数をN21,N22,N23とすると、各切替回転数N1 ,N2 ,N3 ,N4 ,N5 とこれらに隣接する各共振エンジン回転数N11,N12,N13,N21,N22,N23との間に差L1 ,L2 ,L3 ,L4 ,L5 ,U1 ,U2 ,U3 ,U4 ,U5 が設けられることになる。なお、これらの差L1 ,L2 ,L3 ,L4 ,L5 ,U1 ,U2 ,U3 ,U4 ,U5 は次式のように定義できる。
【0076】
L1 =N1 −N21
L2 =N22−N2
L3 =N3 −N22
L4 =N23−N4
L5 =N5 −N23
U1 =N11−N1
U2 =N2 −N11
U3 =N12−N3
U4 =N4 −N12
U5 =N13−N5
そして、このような差分L1 ,L2 ,L3 ,L4 ,L5 ,U1 ,U2 ,U3 ,U4 ,U5 が次式を満たすように、各切替回転数N1 ,N2 ,N3 ,N4 ,N5 が設定されている。
【0077】
N1 ・・・ L1 >U1 ・・・(1)
N2 ・・・ L2 >U2 ・・・(2)
N3 ・・・ L3 >U3 ・・・(3)
N4 ・・・ U4 >L4 ・・・(4)
N5 ・・・ L5 >U5 ・・・(5)
このうち、切替回転数N1 の設定にかかる条件(1),切替回転数N3 の設定にかかる条件(3),及び切替回転数N5 の設定にかかる条件(5)は、同次共振領域の場合に駆動周波数の低い第2の周波数f2 を駆動周波数の高い第1の周波数f1 よりも余裕(回転数差)を大きくとって、より優先的に共振領域から回避させるために設けている。
【0078】
また、切替回転数N2 の設定にかかる条件(2)及び切替回転数N4 の設定にかかる条件(4)は、1次共振領域の場合に、0.5次共振領域や2次共振領域の場合よりも余裕(回転数差)を大きくとって、より優先的に共振領域から回避させるために設けている。
もちろん、このような条件だけでは、各切替回転数N1 ,N2 ,N3 ,N4 ,N5 を決定することはできず、実際には、かかる条件を前提に、特に「揺らぎ現象」によるタイマピストン31の振幅の大きさがほぼ一様に低下するように、L1 とU1 との割合,L2 とU2 との割合,L3 とU3 との割合,L4 とU4 との割合,L5 とU5 との割合を、それぞれ設定する。このような設定は、試験データに基づいて適切に行なうことができる。
【0079】
本発明の一実施例としてのエンジンの燃料噴射時期制御装置は、上述のように構成されているので、燃料の噴射にあたっては、ECU41により、噴射時期及び噴射時間(噴射量)を設定しながら、設定された噴射時期及び噴射時間に応じて噴射弁を駆動する。
このとき、噴射時期の制御は、タイマピストン31の位置調整により行われるが、この位置調整には、タイミングコントロールバルブ39をデューティ制御しながらタイマピストン31に加わる油圧(燃料圧)を調整しながら行なう。
【0080】
このタイミングコントロールバルブ39の制御は、タイミングコントロールバルブ制御手段46を通じて以下のように行われる。
つまり、この制御時には、第1周波数信号発生手段42から第1の周波数f1 を有する信号W1が発生され、第2周波数信号発生手段43から第1の周波数f1 よりも低周波の第2の周波数f2 を有する信号W2が発生される。そして、周波数信号切替手段44が、第1周波数信号発生手段42からの周波数信号W1と第1周波数信号発生手段43からの周波数信号W2とをエンジン回転数Neに応じて図3に示すような特性で切り替えながら出力する。
【0081】
一方、デューティ比決定手段45は、タイマピストン31の目標位置(目標ピストン位置)に応じてデューティ比を決定して、さらに、周波数信号切替手段44で選択された周波数に応じたマップに基づいて、デューティ比及び駆動周期に対するタイミングコントロールバルブ39の励磁時間t1 を設定する。
そして、制御手段46が、デューティ比決定手段45から励磁時間に応じた励磁信号を受けて、各励磁周期において励磁時間t1 分だけオン信号を出力して、駆動回路47を通じてタイミングコントロールバルブ39のコイル39Aを励磁する。
【0082】
これにより、タイミングコントロールバルブ39が所要の開度(時間平均開度)に制御され、タイマピストン31の位置が適切に調整されるため、所要の燃料噴射タイミングに調整される。
そして、タイミングコントロールバルブ39の駆動周波数がエンジン回転数との共振領域に接近すると、前述のようにタイマピストン31の「揺らぎ」という一種のうなり現象が生じるが、本装置では、図3に示すように、周波数信号W1がその共振領域に近づくと、比較的共振領域から離れている周波数信号W2に周波数信号が切り替えられ、逆に、周波数信号W2がその共振領域に近づくと、比較的共振領域から離れている周波数信号W1に周波数信号が切り替えられるので、タイミングコントロールバルブ39の駆動周波数がエンジン回転数との共振領域に接近しなくなって、タイマピストン31の「揺らぎ」が回避又は例え生じたとしても振幅の小さなものに抑制される。
【0083】
特に、1次共振領域での「揺らぎ」は0.5次共振領域や2次共振領域でのものよりも大きな振幅で発生するが、切替回転数N2 の設定にかかる条件(2)及び切替回転数N4 の設定にかかる条件(4)によって、1次共振領域からの回避を、0.5次共振領域や2次共振領域の場合よりも優先させているので、最も必要とする1次共振領域での「揺らぎ」を確実に抑制することができる。
【0084】
さらに、同次共振領域の場合には、駆動周波数の低い第2の周波数f2 での「揺らぎ」の方が駆動周波数の高い第1の周波数f1 での「揺らぎ」よりも大きな振幅で発生しやすいが、切替回転数N1 の設定にかかる条件(1),切替回転数N3 の設定にかかる条件(3),及び切替回転数N5 の設定にかかる条件(5)によって、同次共振領域の場合に駆動周波数の低い第2の周波数f2 を駆動周波数の高い第1の周波数f1 よりも優先的に共振領域から回避させているので、より要求度の高い駆動周波数の低い場合の「揺らぎ」を確実に抑制することができる。
【0085】
このように、「揺らぎ」が抑制されると、「揺らぎ」によるタイマピストン31の振動振幅は小さくなり、燃料噴射時期の制御精度を十分に確保できるようになって、エンジンの性能向上に寄与しうる利点がある。
しかも、2種類のみの少ない駆動周波数による切替制御で確実に「揺らぎ」を抑制することができ、ハードウェア面でもソフトウェア面でも制御系の構成を簡素なものにできる。
【0086】
また、上述の周波数の切替回転数N1 〜N5 については、試験等により「揺らぎ」の発生特性を検出することで、確実に設定することができる。
【0087】
【発明の効果】
以上詳述したように、請求項1記載の本発明のエンジンの燃料噴射時期制御装置によれば、供給される油圧に応じてタイマピストンを移動させることで燃料噴射弁から噴射されるエンジンの燃料噴射時期を変更しうるタイマと、所要のデューティ比に制御されながら該タイマへ供給される油圧を調整するタイマ制御用電磁弁と、該エンジンの運転状態に応じて該電磁弁の該デューティ比を決定するデューティ比決定手段と、第1の周波数を有する信号を発生する第1周波数信号発生手段と、該第1の周波数よりも低い第2の周波数を有する信号を発生する第2周波数信号発生手段と、該エンジンの回転数を検出するエンジン回転数検出手段と、該エンジン回転数検出手段で検出されたエンジン回転数に応じて該第1の周波数信号と該第2の周波数信号とを切り替えて出力する周波数信号切替手段と、上記の周波数信号切替手段から出力された周波数信号に基づく駆動周波数で且つ該デューティ比決定手段で決定したデューティ比によるオン・オフ信号によって該電磁弁を制御する制御手段とをそなえ、該周波数信号切替手段が、該第1の周波数に関するN次共振エンジン回転数と該第2の周波数に関するN次共振エンジン回転数との間の回転数として予め設定された第1の信号切替用エンジン回転数に基づいて、該第1の信号切替用エンジン回転数よりも低速回転側のエンジン回転数領域では該第1の周波数を用い、該第1の信号切替用エンジン回転数よりも高速回転側のエンジン回転数領域では該第2の周波数を用いるように、上記の第1及び第2の周波数信号を切り替えるように構成され、エンジン回転数の変化に伴い該第1の周波数信号及び該第2の周波数信号が共振エンジン回転数に近づくのを防止するために、該第1の信号切替用エンジン回転数と該第2の周波数に関するN次共振エンジン回転数との回転数差が、該第1の信号切替用エンジン回転数と該第1の周波数に関するN次共振エンジン回転数との回転数差よりも大きくなるように設定されているので、共振領域で生じる「揺らぎ現象」を確実に抑制することができ、燃料噴射時期を適切に制御できるようになり、エンジンの性能向上に寄与しうる利点がある。特に、2種類のみの少ない駆動周波数による切替制御で確実に「揺らぎ」を抑制することができ、制御系の構成を簡素なものにできる。
【0088】
請求項2記載の本発明のエンジンの燃料噴射時期制御装置によれば、請求項1記載の構成において、該第1の信号切替用エンジン回転数以外の第2の信号切替用エンジン回転数が、該電磁弁の該エンジン回転との1次共振領域と2次共振領域との間に設けられて、該第2の信号切替用エンジン回転数よりも該1次共振領域側のエンジン回転数領域では該第2の周波数を用い、該第2の信号切替用エンジン回転数よりも該2次共振領域側のエンジン回転数領域では該第1の周波数を用いるように、該周波数信号切替手段による周波数切替が設定され、該第2の信号切替用エンジン回転数と該第1の周波数に関する1次共振エンジン回転数との回転数差が、該第2の信号切替用エンジン回転数と該第2の周波数に関する2次共振エンジン回転数との回転数差よりも大きくなるように設定されるという構成により、2次共振領域の場合よりも大きな振幅で発生する1次共振領域での「揺らぎ現象」を確実に抑制することができ、燃料噴射時期を適切に制御できるようになり、エンジンの性能向上に寄与しうる利点がある。
【0089】
請求項3記載の本発明のエンジンの燃料噴射時期制御装置によれば、請求項1又は2記載の構成において、上記の第1及び第2の信号切替用エンジン回転数以外の第3の信号切替用エンジン回転数が、該電磁弁の該エンジン回転との0.5次共振領域と1次共振領域との間に設けられて、該第3の信号切替用エンジン回転数よりも該0.5次共振領域側のエンジン回転数領域では該第2の周波数を用い、該第3の信号切替用エンジン回転数よりも該1次共振領域側のエンジン回転数領域では該第1の周波数を用いるように、該周波数信号切替手段による周波数切替が設定され、該第3の信号切替用エンジン回転数と該第2の周波数に関する1次共振エンジン回転数との回転数差が、該第3の信号切替用エンジン回転数と該第1の周波数に関する0.5次共振エンジン回転数との回転数差よりも大きくなるように設定されるという構成により、0.5次共振領域の場合よりも大きな振幅で発生する1次共振領域での「揺らぎ現象」を確実に抑制することができ、燃料噴射時期を適切に制御できるようになり、エンジンの性能向上に寄与しうる利点がある。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1実施例としてのエンジンの燃料噴射時期制御装置の要部構成を示す制御ブロック図である。
【図2】本発明の第1実施例としてのエンジンの燃料噴射時期制御装置にかかるタイマピストンの駆動制御モデルを示す図である。
【図3】本発明の第1実施例としてのエンジンの燃料噴射時期制御装置の動作を説明するための図である。
【図4】ディーゼルエンジンの燃料噴射ポンプを示す断面図である。
【図5】ディーゼルエンジンの燃料噴射ポンプのタイマを示す断面図であり、(A)は燃料噴射時期の進角制御の開始前の状態を示し、(B)は燃料噴射時期の進角制御の開始前の状態を示す。
【図6】本発明の課題である揺らぎ現象に関する実験データを示すグラフである。
【図7】本発明の課題である揺らぎ現象に関するシミュレーション結果を示すグラフである。
【図8】タイミングコントロールバルブの駆動周波数とエンジン回転との関係を示すとともに、従来の技術を示す図である。
【図9】タイミングコントロールバルブの駆動周波数とエンジン回転との周波数差と、揺らぎ現象によるタイマピストンの振幅の特性をタイミングコントロールバルブの駆動周波数毎に示す図である。
【符号の説明】
10 ポンプ本体
11 フィードポンプ
12 ドライブシャフト
13 ポンプ室
14 通路
15 燃料圧送用プランジャ
16 燃料カット用マグネットバルブ
17 プランジャ室
17A 連通口
18 通路
19 デリバリバルブ
20 カムディスク
21 スプリング
22 ローラホルダ
23 ローラ
24 コントロールスリーブ
25 ガバナ(エレクトリックガバナ)
26 レギュレータバルブ
27 センシングギヤプレート
28 燃料温度センサ
29 チェックバルブ付きのオーバフローバルブ
30 タイマ
31 タイマピストン
32 シリンダ
33 ピストンピン
34 第1圧力室
35 第2圧力室
36 通路
37 オリフィス
38 タイマスプリング
39 タイマ制御用電磁弁としてのタイミングコントロールバルブ(TCV)
39A タイミングコントロールバルブ39のコイル
41 制御手段としてのECU(電子制御ユニット)
42 第1周波数信号発生手段
43 第2周波数信号発生手段
44 周波数信号切替手段
44A 選択周波数判定手段
44B スイッチ
45 デューティ比決定手段
46 タイミングコントロールバルブ制御手段(制御手段)
46A 0クロス検出器
46B 三角波発生器
46C コンパレータ
46D アンド回路
47 駆動回路
47A 電源
47B トランジスタ
48 目標ピストン位設定手段
49 回転数センサ(エンジン回転数検出手段)
【産業上の利用分野】
本発明は、ディーゼルエンジンの燃料噴射ポンプの制御に用いて好適のエンジンの燃料噴射時期制御装置に関し、特に、電磁弁を通じてタイマピストンの位置を調整することで燃料噴射時期を制御しうる、エンジンの燃料噴射時期制御装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
ディーゼルエンジンの燃料噴射ポンプには、図4に示すような構成のものがある。この図4に示す燃料噴射ポンプは、いわゆる電子制御式の分配型燃料噴射ポンプであり、図4において、10はポンプ本体であり、ポンプ本体10の内部には、ベーン式のフィードポンプ11がそなえられている。ここでは、フィードポンプ11については、本来の側面図に並べて90°だけ図示角度を変えた正面図についても示している。
【0003】
このフィードポンプ11は、エンジンの回転で作動するドライブシャフト12で回転駆動されて、燃料タンクからの燃料を圧送する。このフィードポンプ11から出力された燃料は、ポンプ本体10の内部のポンプ室13に送られて、ポンプ室13から通路14を通って燃料圧送用プランジャ15へと送給される。通路14には燃料カット用マグネットバルブ16が介装される。
【0004】
プランジャ15は、ポンプ本体10に形成されたプランジャ室17内を進退しながら、内部に形成された連通口17Aを介して、通路14からの燃料を通路18からデリバリバルブ19へと供給する。このようなプランジャ15の進退駆動は、プランジャ15の一端に結合されたカムディスク20の作用により行なわれる。
【0005】
つまり、プランジャ15及びカムディスク20は、ドライブシャフト12でエンジン回転に応じて回転駆動される。また、カムディスク20は、プランジャ15を介してスプリング21で付勢されることで、ローラホルダ22に軸支されたローラ23に当接している。なお、ローラホルダ22は、ドライブシャフト12の軸心線方向へは移動ぜず、また、通常時(後述する回転位相の調整時以外)はドライブシャフト12の軸心回りに回転することはない。これにより、カムディスク20は、そのカムプロフィルに応じてローラ23に排動されながら、軸方向へ移動する。このようにして、プランジャ15が進退して、所要のタイミングで燃料の供給を行なうのである。
【0006】
なお、通路18,デリバリバルブ19は各気筒毎に設けられている。例えば4気筒エンジンの場合には、通路18,デリバリバルブ19も4つ設けられることになる。
また、ローラ23は、図5に示すように、ローラホルダ22に複数(ここでは、4つ)設けられており、カムディスク20のカムプロフィルもこれに応じたものになっている。これにより、カムディスク20が1回転するとプランジャ15は4回駆動されることになり、この4回のプランジャ15の作動に応じて、例えば4つの気筒のそれぞれに順に燃料が供給されるようになる。
【0007】
なお、燃料の噴射量制御のために、プランジャ15の外周を進退してプランジャ15の圧送ストロークを調整するコントロールスリーブ24と、このコントロールスリーブ24を駆動するガバナ(ここではエレクトリックガバナ)25とが設けられている。
さらに、図4中、26はレギュレータバルブ、27はドライブシャフト12の回転速度を検出するセンシングギヤプレート、28は燃料温度センサであり、29はポンプ室13内の過剰な燃料を燃料タンクへ戻すオーバフローバルブであって、チェックバルブをそなえている。
【0008】
ところで、このような燃料噴射ポンプでは、燃料の噴射タイミングを制御するために、タイマ30が設けられている。タイマ30には、ローラ23の回転方向位置を変更するタイマピストン31がそなえられれている。なお、このタイマピストン31についても、便宜上、90°だけ図示角度を変えた正面図で示している。
【0009】
このタイマピストン31は、図4,図5に示すように、ポンプ本体10に形成されたシリンダ32内で進退しながら、ピストンピン33を通じてローラホルダ22を微小回転させる。
つまり、タイマピストン31は、中間部にピストンピン33をピン結合され、その一端にはポンプ室13内の燃料圧を導かれる第1圧力室34が設けられ、他端には吸入側燃料圧(フィードポンプ11の上流側の燃料圧)を導かれる第2圧力室35が設けられる。
【0010】
また、タイマピストン31には、ポンプ室13と第1圧力室34とを連通する通路36が設けられ、この通路36にはオリフィス37が介設されている。さらに、第2圧力室35内には、タイマピストン31を一端側(第1圧力室34方向)へ付勢するタイマスプリング38がそなえられる。
そして、第1圧力室34内の燃料圧と、第2圧力室35内の燃料圧及びタイマスプリング38の付勢力とのバランスによって、タイマピストン31の位置が決定する。例えば図5の(A)に示す状態よりも第1圧力室34内の燃料圧が高くなると、図5の(B)に示すように、タイマピストン31が図中左方へ移動するが、この時には、燃料噴射タイミングは進角側へ調整される。逆に、第1圧力室34内の燃料圧が低くなると、タイマピストン31が図中右方へ移動して、燃料噴射タイミングは遅角側へ調整される。
【0011】
例えば、エンジンの回転速度が高まると、フィードポンプ11からの出力圧が高まって、ポンプ室13内の燃料圧も高まり、第1圧力室34が高圧になる。したがって、タイマピストン31が図中左方へ移動して、燃料噴射タイミングが進角側へ調整されることになる。
さらに、このポンプの場合、図4に示すように、第1圧力室34側と第2圧力室35側との圧力バランスを調整しうるタイミングコントロールバルブ(TCV)39が設けられており、様々なパラメータに基づいて燃料噴射タイミングを調整しうるようになっている。
【0012】
つまり、タイミングコントロールバルブ39は、電子制御式の電磁弁であり、デューティ制御によりその開度(単位時間当たりの開弁時間)を調整される。したがって、タイミングコントロールバルブ39をデューティ制御することで、バルブ39の開度に応じて第1圧力室34側と第2圧力室35側との圧力差が適宜調整(ここでは減少側へ調整)され、タイマピストン31の位置が調整されることになり、この結果、燃料噴射タイミングが調整される。
【0013】
このようなタイミングコントロールバルブ39の駆動は、図示しないタイミングコントロールバルブドライバ(TCVドライバ)により行なわれるが、このTCVドライバは、図示しないコントローラにより目標燃料噴射量Qやエンジン回転数Neに応じて作動を制御される。
【0014】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、タイミングコントロールバルブ39をデューティ制御する場合、一定の周波数で駆動電流パルスを発しながら制御を行なうことになるが、この時の駆動周波数がエンジンの回転数の整数倍に近づくと、燃料噴射時期が変動することがある。この現象は「揺らぎ」と呼ばれ、この「揺らぎ」は、近接した異なる2つの周波数の干渉により生じるいわゆる「うなり」の現象と考えられる。
【0015】
例えば図6の曲線Sは、この揺らぎ現象を示す実験データであり、エンジン回転数Neを1800rpmの近傍とし、タイミングコントロールバルブ39の駆動周波数を60Hzとした条件下での実験結果を示す。横軸が時間、縦軸がタイマピストン31の位置(TPS)であり、曲線C1がTPSの変動特性を示しているが、TPSが比較的長周期(約1秒)で振動していることがわかる。
【0016】
これは、エンジン回転数Neが正確に1800rpm(=30Hz)であれば、タイミングコントロールバルブ39の駆動周波数60Hzは丁度エンジン回転数Neの2倍になるが、エンジン回転数Neが1800rpmに近いが正確に1800rpmではないために、このような「うなり」のような現象が生じるものと考えられる。
【0017】
そこで、エンジン回転数Neを1770rpm(=29.5Hz)としてタイミングコントロールバルブ39の駆動周波数を60Hzとした場合をシミュレーションしてみると、図7に示すように、上述の図6に示す実験結果とほぼ同様の特性が現れる。
このような揺らぎ現象の原因は、オリフィス37が一定に作用し且つタイミングコントロールバルブ39の開度が一定のときには、タイマピストン31の両端の差圧により、各圧力室34,35での燃料の流入出即ちタイマピストン31の位置が支配される。したがって、差圧変動が揺らぎ(即ち、タイマピストン31の変位)の原因と考えられる。
【0018】
そこで、さらに、差圧変動の要因を考えると、ポンプ室13の圧力変動、及び、タイマピストン31のシリンダ32内の圧力変動が考えられる。
このうち、ポンプ室13の圧力変動は、フィードポンプ11の吐出圧の変動によるものや、プランジャ15の燃料圧送スピルによるもの等が考えられる。また、タイマピストンシリンダ32内の圧力変動は、カムディスク20がローラ23を乗り越える時の反力がピストンピン33を通じて伝達されることによるものや、タイマピストン31の質量とタイマスプリング38の弾性特性とによる共振によるものなどが考えられる。
【0019】
これらのなかでも、特に、影響が大きいものが、カムディスクの乗り越え時の反力である。この反力は、カムディスクの乗り越え時にタイマピストン31の動きにより、タイマピストン31の両端(即ち、両圧力室34,35)の流入圧がともに変動するため、単純に考えると、ポンプ室13の圧力変動の2倍の影響がある。しかも、タイマピストン31に作用する強制圧自体も変動が大きいため、最も影響が大きいと言える。なお、このカムディスクの乗り越え時の反力は、4気筒エンジンの場合、エンジン回転数Neの2倍の周波数をもち、振幅はほぼ一定である。
【0020】
このような揺らぎ現象を回避するには、以下のような手段が考えられる。
(1)つまり、図8中の直線L1,L2,L3に示すように、タイミングコントロールバルブ39の駆動周波数をエンジン回転との共振点、即ちエンジン回転数Ne,又はエンジン回転数Neの2倍値(=2Ne),又はエンジン回転数Neの4倍値(=4Ne)と完全に同期させる。この技術は、例えば特公昭63−8298号公報に開示されている。
【0021】
(2)図8中の破線L4に示すように、タイミングコントロールバルブ39の駆動周波数をエンジン回転数Neに対して鋸刃状に変更しながら、タイミングコントロールバルブ39の駆動周波数がエンジン回転との共振点、即ちエンジン回転数Neや2Neや4Neに接近しないようにする。この技術は、例えば特公平1−19059号公報に開示されている。
【0022】
これらの手段は、図9に示すように、タイミングコントロールバルブとエンジンとの周波数差が離れるほど、揺らぎ(ピストン振幅)が減少するという特性による。図9中、Neを付す特性は0.5次共振点の近傍、即ち、タイミングコントロールバルブの駆動周波数をエンジン回転数Neの近傍にした場合のもので、2*Neを付す特性は1次共振点の近傍、即ち、タイミングコントロールバルブの作動周波数をエンジン回転数Neの2倍の近傍にした場合のもので、4*Neを付す特性は2次共振点の近傍、即ち、タイミングコントロールバルブの作動周波数をエンジン回転数Neの4倍の近傍にした場合のものである。
【0023】
(1)の解決手段に着目すると、上述の特公昭63−8298号公報は、燃料フィード圧に基づいて、開閉弁(タイミングコントロールバルブ)の作動周波数を機関回転数の整数倍(例えば2倍)となるように制御することで、開閉弁の作動周期を燃料フィード圧の圧力変動周期と同期させて、燃料フィード圧の圧力変動を減少させ、燃料噴射時期を精度よく制御しようとする技術である。
【0024】
しかしながら、この技術では、燃料フィード圧を検出してこの圧力に基づいて開閉弁の作動を制御するため、以下のような不具合がある。
ます、上述のゆらぎ現象に対しては、燃料フィード圧の影響は比較的小さいので、燃料フィード圧に基づいた制御は必ずしも適切ではない。
また、燃料噴射時期が変化するごとに開閉弁の駆動開始時期も変化するため、開閉弁の駆動終了時期(即ち、デューティ幅)の設定が複雑になる。逆に、開閉弁の駆動終了時期を回転位相に同期させようとすると開閉弁の駆動開始時期を正しく設定できないので開閉弁の開度制御(即ち、デューティ制御)を行なえない。
【0025】
さらに、機関のクランク角に対して、検出した燃料フィード圧情報に基づく信号を同期させるのに工夫が必要になる。これは、燃料フィード圧の立ち上がりは噴射時期に同期するがクランク角とは関連なく、また、燃料フィード圧の立ち下がりは噴射量に依存するがやはりクランク角とは関連ないためである。
また、(2)の技術は、複数の駆動周波数をエンジン回転数(回転速度)に応じて選択するが、駆動周波数の切替ポイントを適切に設定しないと揺らぎ現象の抑制効果を確実に得ることはできない。
【0026】
例えば、図8のエリアA1内の切替ポイントP1では、タイミングコントロールバルブの駆動周期とエンジン回転数とが1次共振領域に接近するので、前述の揺らぎ現象が大きく現れ易い。これは、1次共振の領域では、揺らぎによるピストン振幅が大きくなるためである。
つまり、図9に2*Neの特性線で示すように、1次共振付近でのピストン振幅は、0.5次共振(特性線Ne)の付近でのものに比べるとほぼ2倍以上も大きく、また、2次共振(特性線4*Ne)の付近でのものに比べるとほぼ4倍以上も大きくなる。
【0027】
このようにピストン振幅が大きいと、それだけ燃料噴射時期の制御精度も低下してしまうので、特に、1次共振の領域での揺らぎ現象を回避できるようにすべきであるが、従来の技術では、このように1次共振の領域の揺らぎ対策について特別には考えられておらず、揺らぎ現象の抑制効果を確実に得るまでには至っていない。
【0028】
なお、特開平1−300037号,特開平4−347346号,特公平3−25626号の各公報にも、ディーゼルエンジン等のエンジンの燃料噴射時期制御に関する技術が開示されているが、これらの技術は、上述のような揺らぎ現象に関して具体的に着目しておらず、また、かかる揺らぎ現象を適切に回避しうるものではない。
【0029】
本発明は、上述の課題に鑑み創案されたもので、電磁弁を通じてタイマピストンの位置を調整することで燃料噴射時期を制御しうる装置において、揺らぎ現象の抑制効果を確実に得られるようにして燃料噴射時期を適切に制御できるようにした、エンジンの燃料噴射時期制御装置を提供することを目的とする。
【0030】
【課題を解決するための手段】
このため、請求項1記載の本発明のエンジンの燃料噴射時期制御装置は、供給される油圧に応じてタイマピストンを移動させることで燃料噴射弁から噴射されるエンジンの燃料噴射時期を変更しうるタイマと、所要のデューティ比に制御されながら該タイマへ供給される油圧を調整するタイマ制御用電磁弁と、該エンジンの運転状態に応じて該電磁弁の該デューティ比を決定するデューティ比決定手段と、第1の周波数を有する信号を発生する第1周波数信号発生手段と、該第1の周波数よりも低い第2の周波数を有する信号を発生する第2周波数信号発生手段と、該エンジンの回転数を検出するエンジン回転数検出手段と、該エンジン回転数検出手段で検出されたエンジン回転数に応じて該第1の周波数信号と該第2の周波数信号とを切り替えて出力する周波数信号切替手段と、上記の周波数信号切替手段から出力された周波数信号に基づく駆動周波数で且つ該デューティ比決定手段で決定したデューティ比によるオン・オフ信号によって該電磁弁を制御する制御手段とをそなえ、該周波数信号切替手段が、該第1の周波数に関するN次共振エンジン回転数と該第2の周波数に関するN次共振エンジン回転数との間の回転数として予め設定された第1の信号切替用エンジン回転数に基づいて、該第1の信号切替用エンジン回転数よりも低速回転側のエンジン回転数領域では該第1の周波数を用い、該第1の信号切替用エンジン回転数よりも高速回転側のエンジン回転数領域では該第2の周波数を用いるように、上記の第1及び第2の周波数信号を切り替えるように構成され、エンジン回転数の変化に伴い該第1の周波数信号及び該第2の周波数信号が共振エンジン回転数に近づくのを防止するために、該第1の信号切替用エンジン回転数と該第2の周波数に関するN次共振エンジン回転数との回転数差が、該第1の信号切替用エンジン回転数と該第1の周波数に関するN次共振エンジン回転数との回転数差よりも大きくなるように設定されていることを特徴としている。
【0031】
請求項2記載の本発明のエンジンの燃料噴射時期制御装置は、請求項1記載の構成において、該第1の信号切替用エンジン回転数以外の第2の信号切替用エンジン回転数が、該電磁弁の該エンジン回転との1次共振領域と2次共振領域との間に設けられて、該第2の信号切替用エンジン回転数よりも該1次共振領域側のエンジン回転数領域では該第2の周波数を用い、該第2の信号切替用エンジン回転数よりも該2次共振領域側のエンジン回転数領域では該第1の周波数を用いるように、該周波数信号切替手段による周波数切替が設定され、該第2の信号切替用エンジン回転数と該第1の周波数に関する1次共振エンジン回転数との回転数差が、該第2の信号切替用エンジン回転数と該第2の周波数に関する2次共振エンジン回転数との回転数差よりも大きくなるように設定されていることを特徴としている。
【0032】
請求項3記載の本発明のエンジンの燃料噴射時期制御装置は、請求項1又は2記載の構成において、上記の第1及び第2の信号切替用エンジン回転数以外の第3の信号切替用エンジン回転数が、該電磁弁の該エンジン回転との0.5次共振領域と1次共振領域との間に設けられて、該第3の信号切替用エンジン回転数よりも該0.5次共振領域側のエンジン回転数領域では該第2の周波数を用い、該第3の信号切替用エンジン回転数よりも該1次共振領域側のエンジン回転数領域では該第1の周波数を用いるように、該周波数信号切替手段による周波数切替が設定され、該第3の信号切替用エンジン回転数と該第2の周波数に関する1次共振エンジン回転数との回転数差が、該第3の信号切替用エンジン回転数と該第1の周波数に関する0.5次共振エンジン回転数との回転数差よりも大きくなるように設定されていることを特徴としている。
【0034】
【作用】
上述の請求項1記載の本発明のエンジンの燃料噴射時期制御装置では、タイマが、供給される油圧に応じてタイマピストンを移動させることで燃料噴射弁から噴射されるエンジンの燃料噴射時期を調整する。
このとき、タイマへ供給される油圧はタイマ制御用電磁弁を通じて調整されるが、タイマ制御用電磁弁は制御手段によって、次のように制御される。
【0035】
つまり、燃料噴射時期の調整にあたり、デューティ比決定手段が、エンジンの運転状態に応じて電磁弁のデューティ比を決定する。また、第1周波数信号発生手段が、第1の周波数を有する信号を発生し、第2周波数信号発生手段が、第1の周波数よりも低い第2の周波数を有する信号を発生して、周波数信号切替手段が、エンジン回転数検出手段で検出されたエンジン回転数に応じて第1の周波数信号と第2の周波数信号とを切り替えて出力する。
【0036】
そして、制御手段が、周波数信号切替手段から出力された周波数信号に基づく駆動周波数で且つデューティ比決定手段で決定したデューティ比によるオン・オフ信号によって電磁弁を制御する。
周波数信号切替手段による第1の周波数信号と第2の周波数信号との切替は、該第1の周波数に関するN次共振エンジン回転数と該第2の周波数に関するN次共振エンジン回転数との間の回転数として予め設定された第1の信号切替用エンジン回転数に基づいて、該第1の信号切替用エンジン回転数よりも低速回転側のエンジン回転数領域では該第1の周波数を用い、該第1の信号切替用エンジン回転数よりも高速回転側のエンジン回転数領域では該第2の周波数を用いるようにして行なわれる。エンジン回転数の変化に伴い該第1の周波数信号及び該第2の周波数信号が共振エンジン回転数に近づくのを防止するために、この第1の信号切替用エンジン回転数と該第2の周波数に関するN次共振エンジン回転数との回転数差が、該第1の信号切替用エンジン回転数と該第1の周波数に関するN次共振エンジン回転数との回転数差よりも大きくなるように設定されているので、電磁弁の駆動周波数が、電磁弁とエンジン回転との共振周波数に接近しなくなり、タイマピストンの揺らぎ現象が抑制又は回避される。
つまり、共振領域では、第1の信号切替用エンジン回転数よりも高速回転側では、第1の周波数に関するN次共振エンジン回転数に接近するが、この領域では第2の周波数が用いられるので、電磁弁の駆動周波数が、電磁弁とエンジン回転とのN次共振周波数に接近しなくなり、タイマピストンの揺らぎ現象が抑制又は回避される。
また、第1の信号切替用エンジン回転数よりも低速回転側では、第2の周波数に関するN次共振エンジン回転数に接近するが、この領域では第1の周波数が用いられるので、電磁弁の駆動周波数が、電磁弁とエンジン回転とのN次共振周波数に接近しなくなり、タイマピストンの揺らぎ現象が抑制又は回避される。
さらに、一般に、等しい次数の共振の場合、低周波(低速回転)である第2の周波数の方が高周波(高速回転)である第1の周波数の場合よりも、タイマピストンの揺らぎの振幅が大きく燃料噴射時期制御への影響が大きいが、第1の信号切替用エンジン回転数と第2の周波数に関するN次共振エンジン回転数との回転数差が、第1の信号切替用エンジン回転数と第1の周波数に関するN次共振エンジン回転数との回転数差よりも大きく設定されているので、より影響の大きい低周波共振付近での揺らぎが優先的に抑制されるようになる。
【0037】
上述の請求項2記載の本発明のエンジンの燃料噴射時期制御装置では、電磁弁のエンジン回転との1次共振領域と2次共振領域との間において、該第1の信号切替用エンジン回転数以外の第2の信号切替用エンジン回転数で周波数信号が切り替えられ、第2の信号切替用エンジン回転数よりも1次共振領域側(即ち、低速回転側)のエンジン回転数領域では第2の周波数が用いられて、第2の信号切替用エンジン回転数よりも2次共振領域側(即ち、高速回転側)のエンジン回転数領域では第1の周波数が用いられる。
【0038】
第2の信号切替用エンジン回転数よりも1次共振領域側(低速回転側)では、第2の周波数よりも高い周波数の第1の周波数に関する1次共振エンジン回転数に接近するが、この領域では第2の周波数が用いられるので、電磁弁の駆動周波数が、電磁弁とエンジン回転との1次共振周波数に接近しなくなり、タイマピストンの揺らぎ現象が抑制又は回避される。
【0039】
また、一般に、1次共振付近は2次共振付近よりもタイマピストンの揺らぎの振幅が大きく燃料噴射時期制御への影響が大きいが、第2の信号切替用エンジン回転数と第1の周波数に関する1次共振エンジン回転数との回転数差が、第2の信号切替用エンジン回転数と第2の周波数に関する2次共振エンジン回転数との回転数差よりも大きく設定されているので、より影響の大きい1次共振付近での揺らぎの方が、2次共振付近の揺らぎよりも優先的に抑制されるようになる。
【0040】
上述の請求項3記載の本発明のエンジンの燃料噴射時期制御装置では、電磁弁のエンジン回転との0.5次共振領域と1次共振領域との間において、上記の第1及び第2の信号切替用エンジン回転数以外の第3の信号切替用エンジン回転数で周波数信号が切り替えられ、第3の信号切替用エンジン回転数よりも0.5次共振領域側(即ち、低速回転側)のエンジン回転数領域では第2の周波数が用いられて、第3の信号切替用エンジン回転数よりも1次共振領域側(即ち、高速回転側)のエンジン回転数領域では第1の周波数が用いられる。
【0041】
第3の信号切替用エンジン回転数よりも1次共振領域側(高速回転側)では、第1の周波数よりも低い周波数の第2の周波数に関する1次共振エンジン回転数に接近するが、この領域では第1の周波数が用いられるので、電磁弁の駆動周波数が、電磁弁とエンジン回転との1次共振周波数に接近しなくなり、タイマピストンの揺らぎ現象が抑制又は回避される。
【0042】
また、一般に、1次共振付近は0.5次共振付近よりもタイマピストンの揺らぎの振幅が大きく燃料噴射時期制御への影響が大きいが、第3の信号切替用エンジン回転数と第2の周波数に関する1次共振エンジン回転数との回転数差が、第3の信号切替用エンジン回転数と第1の周波数に関する0.5次共振エンジン回転数との回転数差よりも大きく設定されているので、より影響の大きい1次共振付近での揺らぎの方が、0.5次共振付近の揺らぎよりも優先的に抑制されるようになる。
【0046】
【実施例】
以下、図面により、本発明の実施例について説明する。
図1〜図3は本発明の一実施例としてのエンジンの燃料噴射時期制御装置を示すものであるが、このエンジンの燃料噴射時期制御装置は、従来技術として既に説明したように、図4,図5に示すような電子制御式の分配型燃料噴射ポンプに適用される。そこで、図4,図5を参照して、この分配型燃料噴射ポンプから簡単に説明する。
【0047】
本エンジンの燃料噴射時期制御装置をそなえる燃料噴射ポンプは、図4に示すように、ポンプ本体10の内部に、エンジン駆動のドライブシャフト12で回転駆動されるベーン式フィードポンプ11をそなえ、このフィードポンプ11で、燃料タンクからの燃料をポンプ本体10の内部のポンプ室13に圧送し、更に、通路14を経て燃料圧送用プランジャ15へと送給するようになっている。通路14には、燃料カット用マグネットバルブ16が設けられる。
【0048】
プランジャ15はプランジャ室17内を進退するが、このプランジャ15の位置に応じて、通路14側の燃料をプランジャ室17に吸入して、連通口17Aを介して通路18からデリバリバルブ19へと圧送するようになっている。なお、通路18,デリバリバルブ19は各気筒毎に設けられている。また、プランジャ15は、その一端に結合されたカムディスク20を通じて進退駆動されるようになっている。
【0049】
すなわち、カムディスク20は、プランジャ15に装着されたスプリング21でローラホルダ22に軸支されたローラ23に付勢されており、プランジャ15及びカムディスク20がドライブシャフト12で回転駆動されると、カムディスク20は、そのカムプロフィルに応じてローラ23に排動されながら、軸方向へ移動して、プランジャ15を進退させて、所要のタイミングで燃料の供給を行なうようになっている。
【0050】
ローラ23は、図5に示すように、ローラホルダ22に複数(ここでは、4つ)設けられており、カムディスク20のカムプロフィルもこれに応じたものになっている。これにより、カムディスク20が1回転するとプランジャ15は4回駆動されることになり、この4回のプランジャ15の作動に応じて、例えば4つの気筒のそれぞれに順に燃料が供給されるようになっている。
【0051】
また、燃料の噴射量制御のためのコントロールスリーブ24,このコントロールスリーブ24を駆動するガバナ(ここではエレクトリックガバナ)25のほか、レギュレータバルブ26,ドライブシャフト12の回転速度を検出するセンシングギヤプレート27,燃料温度センサ28,ポンプ室13内の過剰な燃料を燃料タンクへ戻すチェックバルブ付きオーバフローバルブ29も設けられる。
【0052】
そして、ローラ23の回転方向位置を変更するために、タイマピストン31をそなえたタイマ30が設けられている。タイマピストン31は、図4,図5に示すように、ポンプ本体10に形成されたシリンダ32内で進退しながら、ピストンピン33を通じてローラホルダ22を微小回転させる。
タイマピストン31は、中間部にピストンピン33をピン結合され、一端にはポンプ室13内の燃料圧を導かれる第1圧力室34が設けられ、他端には吸入側燃料圧(フィードポンプ11の上流側の燃料圧)を導かれる第2圧力室35が設けられている。また、タイマピストン31には、ポンプ室13と第1圧力室34とを連通する通路36が設けられ、この通路36にはオリフィス37が介設されている。さらに、第2圧力室35内には、タイマピストン31を一端側(第1圧力室34方向)へ付勢するタイマスプリング38がそなえられる。
【0053】
これにより、第1圧力室34内の燃料圧と、第2圧力室35内の燃料圧及びタイマスプリング36の付勢力とのバランスによって、タイマピストン31の位置が決定するが、このポンプの場合、図4に示すように、第1圧力室34側と第2圧力室35側との圧力バランスを調整しうるタイマ制御用電磁弁としてのタイミングコントロールバルブ(TCV)39が設けられており、様々なパラメータに基づいて燃料噴射タイミングを調整しうるようになっている。
【0054】
このタイミングコントロールバルブ39は、電子制御式電磁弁であり、デューティ制御によりその開度(単位時間当たりの開弁時間)を調整されるようになっており、このタイミングコントロールバルブ39をデューティ制御することで、バルブ39の開度に応じて第1圧力室34側と第2圧力室35側との圧力差が適宜調整(ここでは減少側へ調整)され、タイマピストン31の位置が調整されることになり、この結果、燃料噴射タイミングが調整されるようになっている。
【0055】
このようなタイミングコントロールバルブ39の駆動は、図1に示すようなタイミングコントロールバルブソレノイド(TCVソレノイド)40Aへの電流制御により行われるが、この電流制御は、制御手段としてのECU(電子制御ユニット)41により目標燃料噴射量Qやエンジン回転数Neに応じて作動を制御される。本燃料噴射時期制御装置では、このようなタイミングコントロールバルブ39の駆動制御に特徴があるが、この説明の前に、図2のタイマピストン31の駆動制御モデルを参照しながら、ECU41を通じて行なうタイマピストン31の駆動制御を説明する。
【0056】
タイマピストン31の位置は、高圧側の第1圧力室34側に加わる圧力(高圧側の第1圧力室34と低圧側の第2圧力室35内との差の圧力〕と、低圧側の第2圧力室側から加わるタイマスプリング38のバネ力との均衡したところに決まる。タイマピストン31の駆動制御はこのような観点から行なわれる。
つまり、図2に示すように、高圧側の第1圧力室34からタイマピストン31に作用する圧力方向を正とすると、タイマピストン31には、高圧側の第1圧力室34内の圧力P1〔B1参照〕と、この第1圧力室34に作用する元圧変動(フィードポンプ吐出圧の変動する圧力影響)P3〔B3参照〕とが正方向に加わり、低圧側の第2圧力室35内の圧力P2〔B2参照〕が負方向に加わる。
【0057】
また、タイミングコントロールバルブ39による第1圧力室34から第2圧力室35への圧力調整分Pcが、正方向圧力を減少させ〔a1参照〕、正方向圧力を増加させる〔a2参照〕。
第1圧力室34へ進入する燃料の流量は、ポンプ室13側とタイマシリンダ32側(第1圧力室34側)との圧力差の平方根に比例し〔B5参照〕、これにオリフィス37の流量係数(オリフィス係数)を乗算したものである〔B6参照〕。同様に、タイマシリンダ32側(第1圧力室34側)から流出する燃料量は、シリンダ圧と低圧〔B2参照〕とのさの平方根に比例するが、この流量は、タイミングコントロールバルブ39のオン・オフ状態〔B7参照〕に応じて変化する。タイマピストン31の位置は、これらのシリンダ32への燃料の流入出量によって決まる。
【0058】
このため、タイミングコントロールバルブ39を制御してタイマシリンダ32への燃料の流入出量を変えれば、ピストン位置は変化する。そして、エンジン回転数Neと噴射量Qとに対応してタイミングコントロールバルブ39のオン・オフの割合(即ち、デューティ比)を設定すれば、燃料噴射時期を制御することができ、さらに、実際の燃料噴射時期を検出することによって燃料噴射時期をデューティ制御することもできる。
【0059】
例えば、図2に示すような更なる処理(B8〜B15,a3〜a5,d1,d2)によってタイマピストンを制御することもできる。
そして、ECU41によるタイミングコントロールバルブ39自体の駆動制御系は、図1に示すように構成される。
つまり、ECU41には、第1周波数信号発生手段42と、第2周波数信号発生手段43と、周波数信号切替手段44と、デューティ比決定手段45と、タイミングコントロールバルブ制御手段46と、駆動回路47とがそなえられる。
【0060】
第1周波数信号発生手段42では、第1の周波数f1 (例えば80Hz)を有する信号W1を発生し、第2周波数信号発生手段43では、第1の周波数f1 よりも低い第2の周波数f2 (例えば60Hz)を有する信号を発生するようになっている。
そして、周波数信号切替手段44では、エンジン回転数Neに応じて第1の周波数信号f1 と第2の周波数信号f2 とを切り替えて出力するが、この切替は、図3に示すように、タイミングコントロールバルブ39とエンジンとの共振領域を回避するようにして行なわれるようになっている。この周波数信号切替手段44は、選択周波数判定手段44Aとこの選択周波数判定手段44Aからの選択信号に応じて切り替えるスイッチ44Bとから構成することができる。この周波数信号の切替制御についての詳細な説明は後述する。
【0061】
また、デューティ比決定手段45は、エンジンの運転状態に応じてタイミングコントロールバルブ(電磁弁)39のデューティ比を決定するもので、目標ピストン位設定手段48で設定されたタイマピストン31の目標位置(目標ピストン位置)に応じてデューティ比を決定する。なお、目標ピストン位設定手段47では、燃料噴射量(燃料噴射時間)Q及びエンジン回転数Neに基づいて目標ピストン位置を設定する。
【0062】
そして、本実施例では、デューティ比決定手段45は、このデューティ比に対応したタイミングコントロールバルブ39のコイル39Aへの励磁時間(オン制御時間)t1を例えばマップに基づいて設定するようになっている。
つまり、デューティ比が決まれば、制御周期にこのデューティ比を乗算することで、励磁時間t1 を算出することができ、ここでは、第1の周波数f1 に応じた第1の制御周期と、第2の周波数f2 に応じた第2の制御周期とが設けられているので、第1の周波数f1 に応じた第1周波数用マップAと、第2の周波数f2 に応じた第2周波数用マップBとを用意して、これらのマップを適宜用いることでデューティ比に応じた励磁時間t1 を設定するようになっている。
【0063】
制御手段46は、オン・オフ信号に基づいてタイミングコントロールバルブ39を制御するもので、このオン・オフ信号は、周波数信号切替手段44を通じて出力された信号に基づく周波数f1 又はf2 を有し、且つ、デューティ比決定手段45で決定したオン・オフの割合(即ち、デューティ比)を有している。
このため、制御手段46は、図1に示すように、0クロス検出器46Aと、三角波発生器46Bと、コンパレータ46Cと、アンド回路46Dとをそなえている。
【0064】
このうち、0クロス検出器46Aは周波数信号W1の0クロスを検出するが、周波数信号W1が入力されていれば三角波発生器46B及びアンド回路46Dにオン信号を出力し、また、0クロスを検出時には、三角波発生器46Bに検出信号を出力する。
三角波発生器46Bは、この0クロス検出器46Aからのオン信号で三角波信号を派生して出力するが、この三角波信号は0クロス検出信号によってリセットされる。
【0065】
また、コンパレータ46Cは、三角波発生器46Bからの三角波信号の出力値と、デューティ比決定手段43で求められたタイミングコントロールバルブ39の励磁時間信号の出力値とを比較するもので、三角波信号の出力値が励磁時間信号の出力値よりも小さければ、オン信号(励磁信号)を出力し、三角波信号の出力値が励磁時間信号の出力値以上になったら、オフ信号(励磁停止信号)を出力するようらになっている。
【0066】
さらに、アンド回路46Dは、コンパレータ46Cからのオン信号が出力されたときに、同時に0クロス検出器46Aからオン信号が出力されていたら、オン信号(励磁信号)を駆動回路45に出力するようになっている。
駆動回路47は、電源47Aとトランジスタ47Bとを有しており、トランジスタ47Bはスイッチング回路として機能し、アンド回路46Dからオン信号を受けると、タイミングコントロールバルブ39のコイルに電源47Aからの電力を供給しタイミングコントロールバルブ39のコイル39Aを励磁するようになっている。
【0067】
ここで、周波数信号切替手段44による周波数信号の切替制御について説明すると、周波数信号切替手段44では、前述のように、タイミングコントロールバルブ39とエンジンとの共振領域を回避するようにして周波数信号の切替制御を行なうが、まず、共振領域について説明する。
つまり、タイミングコントロールバルブ39とエンジンとの共振領域は、タイミングコントロールバルブの駆動周波数がエンジン回転数Neの整数倍と一致する近傍に存在し、タイミングコントロールバルブの駆動周波数を数十Hz以上にすると、通常のエンジン回転領域(上限が5000〜6000rpm程度)では、0.5次共振点,1次共振点,及び2次共振点が存在する。
【0068】
すなわち、タイミングコントロールバルブ39とエンジンとの共振の代表的なものは、前述のように、タイマピストン31に加わるタイミングコントロールバルブ39の圧力変動の周波数(即ち、駆動周波数)とカムディスクの乗り越え時の反力の作用する周波数とが完全に一致する場合であり、これが1次共振である。カムディスクの乗り越え時の反力の周波数は、4気筒エンジンの場合、エンジン回転数Neの2倍であり、タイミングコントロールバルブ39の駆動周波数がエンジン回転数Neの2倍となったときに、1次共振となる。
【0069】
また、タイミングコントロールバルブ39とエンジンとの共振には、この他、タイミングコントロールバルブ39の圧力変動周波数(駆動周波数)が、カムディスクの乗り越え反力周波数の整数倍と一致する場合があり、タイミングコントロールバルブ39の駆動周波数が、乗り越え反力周波数の2倍となる場合が2次共振である。4気筒エンジンの場合、タイミングコントロールバルブ39の駆動周波数がエンジン回転数Neの4倍となったときに、2次共振となる。
【0070】
さらに、タイミングコントロールバルブ39とエンジンとの共振には、この他、カムディスクの乗り越え反力周波数が、タイミングコントロールバルブ39の駆動周波数の整数倍と一致する場合があり、乗り越え反力周波数が、タイミングコントロールバルブ39の駆動周波数の2倍となる場合(逆に言うと、タイミングコントロールバルブ39の駆動周波数が、乗り越え反力周波数の0.5倍となる場合)が0.5次共振である。4気筒エンジンの場合、タイミングコントロールバルブ39の駆動周波数がエンジン回転数Neと一致したときに、0.5次共振となる。
【0071】
タイマピストン31に生じる「揺らぎ現象」は、これらの0.5次共振点,1次共振点,及び2次共振点において問題になるが、特に、図9を参照して既に説明したように、1次共振領域での「揺らぎ現象」によるピストン振幅は、0.5次共振領域のものに比べるとほぼ2倍以上も大きく、また、2次共振領域のものに比べるとほぼ4倍以上も大きくなる。
【0072】
そこで、周波数信号切替手段44では、このような特性に対応するように、1次共振領域での「揺らぎ現象」の回避を、0.5次共振領域や2次共振領域の場合よりも優先するように周波数信号を切り替えるようになっている。
また、同次共振領域では、周波数が低い方がタイマピストンの揺らぎの振幅を大きくするので、周波数信号切替手段44では、駆動周波数の低い場合(即ち、第2の周波数の場合)の方を、駆動周波数の高い場合(即ち、第1の周波数の場合)よりも優先的に共振領域からの回避を行なうようになっている。
【0073】
具体的には、周波数信号切替手段44による周波数信号の切替は、図3に示すように、信号切替用エンジン回転数(以下、切替回転数という)N1 ,N2 ,N3 ,N4 ,N5 で行なうようになっている。つまり、選択周波数判定手段44Aが、エンジン回転数を検出する回転数センサ(エンジン回転数検出手段)49からの検出情報を受けて、検出したエンジン回転数Neを切替回転数N1 〜N5 のいずれかになったら周波数信号の切替を行なうようになっている。
【0074】
なお、切替回転数N1 〜N5 のうち、切替回転数N1 は0.5次共振領域に、切替回転数N2 は0.5次共振領域と1次共振領域との間に、切替回転数N3 は1次共振領域に、切替回転数N4 は1次共振領域と2次共振領域との間に、切替回転数N5 は2次共振領域に設けられている。
そして、エンジン回転数NeがN1 未満なら第1の周波数f1 を用い、エンジン回転数NeがN1 以上でN2 未満なら第2の周波数f2 を用い、エンジン回転数NeがN2 以上でN3 未満なら第1の周波数f1 を用い、エンジン回転数NeがN3 以上でN4 未満なら第2の周波数f2 を用い、エンジン回転数NeがN4 以上でN5 未満なら第1の周波数f1 を用い、エンジン回転数NeがN5 以上なら第2の周波数f2 を用いるようにして、周波数信号の切替を行なうようになっている。
【0075】
特に、各切替回転数N1 ,N2 ,N3 ,N4 ,N5 は以下のように設定されている。
つまり、第1の周波数f1 における0.5次共振点,1次共振点,2次共振点のエンジン回転数をN11,N12,N13として、第2の周波数f2 における0.5次共振点,1次共振点,2次共振点のエンジン回転数をN21,N22,N23とすると、各切替回転数N1 ,N2 ,N3 ,N4 ,N5 とこれらに隣接する各共振エンジン回転数N11,N12,N13,N21,N22,N23との間に差L1 ,L2 ,L3 ,L4 ,L5 ,U1 ,U2 ,U3 ,U4 ,U5 が設けられることになる。なお、これらの差L1 ,L2 ,L3 ,L4 ,L5 ,U1 ,U2 ,U3 ,U4 ,U5 は次式のように定義できる。
【0076】
L1 =N1 −N21
L2 =N22−N2
L3 =N3 −N22
L4 =N23−N4
L5 =N5 −N23
U1 =N11−N1
U2 =N2 −N11
U3 =N12−N3
U4 =N4 −N12
U5 =N13−N5
そして、このような差分L1 ,L2 ,L3 ,L4 ,L5 ,U1 ,U2 ,U3 ,U4 ,U5 が次式を満たすように、各切替回転数N1 ,N2 ,N3 ,N4 ,N5 が設定されている。
【0077】
N1 ・・・ L1 >U1 ・・・(1)
N2 ・・・ L2 >U2 ・・・(2)
N3 ・・・ L3 >U3 ・・・(3)
N4 ・・・ U4 >L4 ・・・(4)
N5 ・・・ L5 >U5 ・・・(5)
このうち、切替回転数N1 の設定にかかる条件(1),切替回転数N3 の設定にかかる条件(3),及び切替回転数N5 の設定にかかる条件(5)は、同次共振領域の場合に駆動周波数の低い第2の周波数f2 を駆動周波数の高い第1の周波数f1 よりも余裕(回転数差)を大きくとって、より優先的に共振領域から回避させるために設けている。
【0078】
また、切替回転数N2 の設定にかかる条件(2)及び切替回転数N4 の設定にかかる条件(4)は、1次共振領域の場合に、0.5次共振領域や2次共振領域の場合よりも余裕(回転数差)を大きくとって、より優先的に共振領域から回避させるために設けている。
もちろん、このような条件だけでは、各切替回転数N1 ,N2 ,N3 ,N4 ,N5 を決定することはできず、実際には、かかる条件を前提に、特に「揺らぎ現象」によるタイマピストン31の振幅の大きさがほぼ一様に低下するように、L1 とU1 との割合,L2 とU2 との割合,L3 とU3 との割合,L4 とU4 との割合,L5 とU5 との割合を、それぞれ設定する。このような設定は、試験データに基づいて適切に行なうことができる。
【0079】
本発明の一実施例としてのエンジンの燃料噴射時期制御装置は、上述のように構成されているので、燃料の噴射にあたっては、ECU41により、噴射時期及び噴射時間(噴射量)を設定しながら、設定された噴射時期及び噴射時間に応じて噴射弁を駆動する。
このとき、噴射時期の制御は、タイマピストン31の位置調整により行われるが、この位置調整には、タイミングコントロールバルブ39をデューティ制御しながらタイマピストン31に加わる油圧(燃料圧)を調整しながら行なう。
【0080】
このタイミングコントロールバルブ39の制御は、タイミングコントロールバルブ制御手段46を通じて以下のように行われる。
つまり、この制御時には、第1周波数信号発生手段42から第1の周波数f1 を有する信号W1が発生され、第2周波数信号発生手段43から第1の周波数f1 よりも低周波の第2の周波数f2 を有する信号W2が発生される。そして、周波数信号切替手段44が、第1周波数信号発生手段42からの周波数信号W1と第1周波数信号発生手段43からの周波数信号W2とをエンジン回転数Neに応じて図3に示すような特性で切り替えながら出力する。
【0081】
一方、デューティ比決定手段45は、タイマピストン31の目標位置(目標ピストン位置)に応じてデューティ比を決定して、さらに、周波数信号切替手段44で選択された周波数に応じたマップに基づいて、デューティ比及び駆動周期に対するタイミングコントロールバルブ39の励磁時間t1 を設定する。
そして、制御手段46が、デューティ比決定手段45から励磁時間に応じた励磁信号を受けて、各励磁周期において励磁時間t1 分だけオン信号を出力して、駆動回路47を通じてタイミングコントロールバルブ39のコイル39Aを励磁する。
【0082】
これにより、タイミングコントロールバルブ39が所要の開度(時間平均開度)に制御され、タイマピストン31の位置が適切に調整されるため、所要の燃料噴射タイミングに調整される。
そして、タイミングコントロールバルブ39の駆動周波数がエンジン回転数との共振領域に接近すると、前述のようにタイマピストン31の「揺らぎ」という一種のうなり現象が生じるが、本装置では、図3に示すように、周波数信号W1がその共振領域に近づくと、比較的共振領域から離れている周波数信号W2に周波数信号が切り替えられ、逆に、周波数信号W2がその共振領域に近づくと、比較的共振領域から離れている周波数信号W1に周波数信号が切り替えられるので、タイミングコントロールバルブ39の駆動周波数がエンジン回転数との共振領域に接近しなくなって、タイマピストン31の「揺らぎ」が回避又は例え生じたとしても振幅の小さなものに抑制される。
【0083】
特に、1次共振領域での「揺らぎ」は0.5次共振領域や2次共振領域でのものよりも大きな振幅で発生するが、切替回転数N2 の設定にかかる条件(2)及び切替回転数N4 の設定にかかる条件(4)によって、1次共振領域からの回避を、0.5次共振領域や2次共振領域の場合よりも優先させているので、最も必要とする1次共振領域での「揺らぎ」を確実に抑制することができる。
【0084】
さらに、同次共振領域の場合には、駆動周波数の低い第2の周波数f2 での「揺らぎ」の方が駆動周波数の高い第1の周波数f1 での「揺らぎ」よりも大きな振幅で発生しやすいが、切替回転数N1 の設定にかかる条件(1),切替回転数N3 の設定にかかる条件(3),及び切替回転数N5 の設定にかかる条件(5)によって、同次共振領域の場合に駆動周波数の低い第2の周波数f2 を駆動周波数の高い第1の周波数f1 よりも優先的に共振領域から回避させているので、より要求度の高い駆動周波数の低い場合の「揺らぎ」を確実に抑制することができる。
【0085】
このように、「揺らぎ」が抑制されると、「揺らぎ」によるタイマピストン31の振動振幅は小さくなり、燃料噴射時期の制御精度を十分に確保できるようになって、エンジンの性能向上に寄与しうる利点がある。
しかも、2種類のみの少ない駆動周波数による切替制御で確実に「揺らぎ」を抑制することができ、ハードウェア面でもソフトウェア面でも制御系の構成を簡素なものにできる。
【0086】
また、上述の周波数の切替回転数N1 〜N5 については、試験等により「揺らぎ」の発生特性を検出することで、確実に設定することができる。
【0087】
【発明の効果】
以上詳述したように、請求項1記載の本発明のエンジンの燃料噴射時期制御装置によれば、供給される油圧に応じてタイマピストンを移動させることで燃料噴射弁から噴射されるエンジンの燃料噴射時期を変更しうるタイマと、所要のデューティ比に制御されながら該タイマへ供給される油圧を調整するタイマ制御用電磁弁と、該エンジンの運転状態に応じて該電磁弁の該デューティ比を決定するデューティ比決定手段と、第1の周波数を有する信号を発生する第1周波数信号発生手段と、該第1の周波数よりも低い第2の周波数を有する信号を発生する第2周波数信号発生手段と、該エンジンの回転数を検出するエンジン回転数検出手段と、該エンジン回転数検出手段で検出されたエンジン回転数に応じて該第1の周波数信号と該第2の周波数信号とを切り替えて出力する周波数信号切替手段と、上記の周波数信号切替手段から出力された周波数信号に基づく駆動周波数で且つ該デューティ比決定手段で決定したデューティ比によるオン・オフ信号によって該電磁弁を制御する制御手段とをそなえ、該周波数信号切替手段が、該第1の周波数に関するN次共振エンジン回転数と該第2の周波数に関するN次共振エンジン回転数との間の回転数として予め設定された第1の信号切替用エンジン回転数に基づいて、該第1の信号切替用エンジン回転数よりも低速回転側のエンジン回転数領域では該第1の周波数を用い、該第1の信号切替用エンジン回転数よりも高速回転側のエンジン回転数領域では該第2の周波数を用いるように、上記の第1及び第2の周波数信号を切り替えるように構成され、エンジン回転数の変化に伴い該第1の周波数信号及び該第2の周波数信号が共振エンジン回転数に近づくのを防止するために、該第1の信号切替用エンジン回転数と該第2の周波数に関するN次共振エンジン回転数との回転数差が、該第1の信号切替用エンジン回転数と該第1の周波数に関するN次共振エンジン回転数との回転数差よりも大きくなるように設定されているので、共振領域で生じる「揺らぎ現象」を確実に抑制することができ、燃料噴射時期を適切に制御できるようになり、エンジンの性能向上に寄与しうる利点がある。特に、2種類のみの少ない駆動周波数による切替制御で確実に「揺らぎ」を抑制することができ、制御系の構成を簡素なものにできる。
【0088】
請求項2記載の本発明のエンジンの燃料噴射時期制御装置によれば、請求項1記載の構成において、該第1の信号切替用エンジン回転数以外の第2の信号切替用エンジン回転数が、該電磁弁の該エンジン回転との1次共振領域と2次共振領域との間に設けられて、該第2の信号切替用エンジン回転数よりも該1次共振領域側のエンジン回転数領域では該第2の周波数を用い、該第2の信号切替用エンジン回転数よりも該2次共振領域側のエンジン回転数領域では該第1の周波数を用いるように、該周波数信号切替手段による周波数切替が設定され、該第2の信号切替用エンジン回転数と該第1の周波数に関する1次共振エンジン回転数との回転数差が、該第2の信号切替用エンジン回転数と該第2の周波数に関する2次共振エンジン回転数との回転数差よりも大きくなるように設定されるという構成により、2次共振領域の場合よりも大きな振幅で発生する1次共振領域での「揺らぎ現象」を確実に抑制することができ、燃料噴射時期を適切に制御できるようになり、エンジンの性能向上に寄与しうる利点がある。
【0089】
請求項3記載の本発明のエンジンの燃料噴射時期制御装置によれば、請求項1又は2記載の構成において、上記の第1及び第2の信号切替用エンジン回転数以外の第3の信号切替用エンジン回転数が、該電磁弁の該エンジン回転との0.5次共振領域と1次共振領域との間に設けられて、該第3の信号切替用エンジン回転数よりも該0.5次共振領域側のエンジン回転数領域では該第2の周波数を用い、該第3の信号切替用エンジン回転数よりも該1次共振領域側のエンジン回転数領域では該第1の周波数を用いるように、該周波数信号切替手段による周波数切替が設定され、該第3の信号切替用エンジン回転数と該第2の周波数に関する1次共振エンジン回転数との回転数差が、該第3の信号切替用エンジン回転数と該第1の周波数に関する0.5次共振エンジン回転数との回転数差よりも大きくなるように設定されるという構成により、0.5次共振領域の場合よりも大きな振幅で発生する1次共振領域での「揺らぎ現象」を確実に抑制することができ、燃料噴射時期を適切に制御できるようになり、エンジンの性能向上に寄与しうる利点がある。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1実施例としてのエンジンの燃料噴射時期制御装置の要部構成を示す制御ブロック図である。
【図2】本発明の第1実施例としてのエンジンの燃料噴射時期制御装置にかかるタイマピストンの駆動制御モデルを示す図である。
【図3】本発明の第1実施例としてのエンジンの燃料噴射時期制御装置の動作を説明するための図である。
【図4】ディーゼルエンジンの燃料噴射ポンプを示す断面図である。
【図5】ディーゼルエンジンの燃料噴射ポンプのタイマを示す断面図であり、(A)は燃料噴射時期の進角制御の開始前の状態を示し、(B)は燃料噴射時期の進角制御の開始前の状態を示す。
【図6】本発明の課題である揺らぎ現象に関する実験データを示すグラフである。
【図7】本発明の課題である揺らぎ現象に関するシミュレーション結果を示すグラフである。
【図8】タイミングコントロールバルブの駆動周波数とエンジン回転との関係を示すとともに、従来の技術を示す図である。
【図9】タイミングコントロールバルブの駆動周波数とエンジン回転との周波数差と、揺らぎ現象によるタイマピストンの振幅の特性をタイミングコントロールバルブの駆動周波数毎に示す図である。
【符号の説明】
10 ポンプ本体
11 フィードポンプ
12 ドライブシャフト
13 ポンプ室
14 通路
15 燃料圧送用プランジャ
16 燃料カット用マグネットバルブ
17 プランジャ室
17A 連通口
18 通路
19 デリバリバルブ
20 カムディスク
21 スプリング
22 ローラホルダ
23 ローラ
24 コントロールスリーブ
25 ガバナ(エレクトリックガバナ)
26 レギュレータバルブ
27 センシングギヤプレート
28 燃料温度センサ
29 チェックバルブ付きのオーバフローバルブ
30 タイマ
31 タイマピストン
32 シリンダ
33 ピストンピン
34 第1圧力室
35 第2圧力室
36 通路
37 オリフィス
38 タイマスプリング
39 タイマ制御用電磁弁としてのタイミングコントロールバルブ(TCV)
39A タイミングコントロールバルブ39のコイル
41 制御手段としてのECU(電子制御ユニット)
42 第1周波数信号発生手段
43 第2周波数信号発生手段
44 周波数信号切替手段
44A 選択周波数判定手段
44B スイッチ
45 デューティ比決定手段
46 タイミングコントロールバルブ制御手段(制御手段)
46A 0クロス検出器
46B 三角波発生器
46C コンパレータ
46D アンド回路
47 駆動回路
47A 電源
47B トランジスタ
48 目標ピストン位設定手段
49 回転数センサ(エンジン回転数検出手段)
Claims (3)
- 供給される油圧に応じてタイマピストンを移動させることで燃料噴射弁から噴射されるエンジンの燃料噴射時期を変更しうるタイマと、
所要のデューティ比に制御されながら該タイマへ供給される油圧を調整するタイマ制御用電磁弁と、
該エンジンの運転状態に応じて該電磁弁の該デューティ比を決定するデューティ比決定手段と、
第1の周波数を有する信号を発生する第1周波数信号発生手段と、
該第1の周波数よりも低い第2の周波数を有する信号を発生する第2周波数信号発生手段と、
該エンジンの回転数を検出するエンジン回転数検出手段と、
該エンジン回転数検出手段で検出されたエンジン回転数に応じて該第1の周波数信号と該第2の周波数信号とを切り替えて出力する周波数信号切替手段と、
上記の周波数信号切替手段から出力された周波数信号に基づく駆動周波数で且つ該デューティ比決定手段で決定したデューティ比によるオン・オフ信号によって該電磁弁を制御する制御手段とをそなえ、
該周波数信号切替手段が、該第1の周波数に関するN次共振エンジン回転数と該第2の周波数に関するN次共振エンジン回転数との間の回転数として予め設定された第1の信号切替用エンジン回転数に基づいて、該第1の信号切替用エンジン回転数よりも低速回転側のエンジン回転数領域では該第1の周波数を用い、該第1の信号切替用エンジン回転数よりも高速回転側のエンジン回転数領域では該第2の周波数を用いるように、上記の第1及び第2の周波数信号を切り替えるように構成され、
エンジン回転数の変化に伴い該第1の周波数信号及び該第2の周波数信号が共振エンジン回転数に近づくのを防止するために、該第1の信号切替用エンジン回転数と該第2の周波数に関するN次共振エンジン回転数との回転数差が、該第1の信号切替用エンジン回転数と該第1の周波数に関するN次共振エンジン回転数との回転数差よりも大きくなるように設定されている
ることを特徴とする、エンジンの燃料噴射時期制御装置。 - 該第1の信号切替用エンジン回転数以外の第2の信号切替用エンジン回転数が、該電磁弁の該エンジン回転との1次共振領域と2次共振領域との間に設けられて、
該第2の信号切替用エンジン回転数よりも該1次共振領域側のエンジン回転数領域では該第2の周波数を用い、該第2の信号切替用エンジン回転数よりも該2次共振領域側のエンジン回転数領域では該第1の周波数を用いるように、該周波数信号切替手段による周波数切替が設定され、
該第2の信号切替用エンジン回転数と該第1の周波数に関する1次共振エンジン回転数との回転数差が、該第2の信号切替用エンジン回転数と該第2の周波数に関する2次共振エンジン回転数との回転数差よりも大きくなるように設定されている
ことを特徴とする、請求項1記載のエンジンの燃料噴射時期制御装置。 - 上記の第1及び第2の信号切替用エンジン回転数以外の第3の信号切替用エンジン回転数が、該電磁弁の該エンジン回転との0.5次共振領域と1次共振領域との間に設けられて、
該第3の信号切替用エンジン回転数よりも該0.5次共振領域側のエンジン回転数領域では該第2の周波数を用い、該第3の信号切替用エンジン回転数よりも該1次共振領域側のエンジン回転数領域では該第1の周波数を用いるように、該周波数信号切替手段による周波数切替が設定され、
該第3の信号切替用エンジン回転数と該第2の周波数に関する1次共振エンジン回転数との回転数差が、該第3の信号切替用エンジン回転数と該第1の周波数に関する0.5次共振エンジン回転数との回転数差よりも大きくなるように設定されている
ことを特徴とする、請求項1又は2記載のエンジンの燃料噴射時期制御装置。
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