JP3588758B2 - 歯車塑性成形における両端面チャンファ部同時成形用位置決め案内棒付きパンチ - Google Patents

Description

【０００１】
【産業上の利用分野】
本発明は、歯車塑性成形における両端面（上下面）チャンファ部同時成形用位置決め案内棒付きパンチに関し、更に詳しくは、一度に両端面のチャンファを塑性成形できるとともに、ワーク両端面のチャンファを正確で且つ簡単に同位置・同位相に成形することができ、また、成形後の製品の精度品質に優れる歯車塑性成形における位置決め案内棒付きパンチに関する。
【０００２】
【従来の技術】
従来の歯車の塑性加工における両端面チャンファ加工においては、先ずワークの片端面を成形し、チャンファパンチが上死点に達したときワークを裏返し、その後、他端面を成形していた。その際、ワークの両端面のチャンファの位置及び位相を一致させるために、ワークを裏返した後、他面を成形する前に、位置・位相合せ用の治具を用いてパンチとダイの位置合せを行っていた。
【０００３】
【発明が解決しようとする課題】
従来の位置・位相合せ用の治具を用いた片端面ずつのチャンファ加工には、位置・位相合せ用の治具を設定する際に時間がかかるという問題点があった。また、治具による位置・位相合せの際に生じる誤差のため、製品の精度向上が難しいという問題点もあった。このため、製造リードタイムが長くなり、また、良品率の向上が難しく、製品の品質維持がコスト高をひきおこしていた。
【０００４】
本発明は、ワークの片端面をチャンファ塑性成形した後ワークを裏返すということなく、一度に両端面のチャンファを塑性成形できるとともに、ワーク両端面のチャンファを正確で且つ簡単に同位置・同位相に成形するができ、また、成形後の製品の精度品質が高度である歯車塑性成形における両端面チャンファ部同時成形加工用位置決め案内棒付きパンチを提供することを目的とする。
【０００５】
【課題を解決するための手段】
本第一発明の両端面チャンファ部同時成形用の位置決め案内棒付きパンチ（以下、単に「位置決め案内棒付きパンチ」ともいう。）は、第１パンチ面の外縁側に複数のチャンファ成形歯を具備するチャンファパンチと、該チャンファパンチに対向し、第２パンチ面の外縁側に複数のチャンファ成形歯を具備するチャンファダイと、からなる歯車塑性成形における両端面チャンファ部同時成形用の位置決め案内棒付きパンチであって、上記チャンファパンチは、上記第１パンチ面の中心位置に多角横断面形状を有する柱状の案内棒を備え、上記チャンファダイは、上記第２パンチ面の中心位置に上記案内棒が嵌合するとともに、上記多角横断面形状と同形状の多角穴を備えていることを特徴とする。ここで、上記「外縁側」とは、外周縁のみならず、それよりもやや内側に位置する外縁側をも含む意味である。
【０００６】
本発明の位置決め案内棒付きパンチは、第２発明に示すように、上記チャンファパンチの第１パンチ面の外縁側に配される複数の上記チャンファ成形歯のうちの一つの基準歯の山の位置と、上記チャンファダイの上記第２パンチ面の外縁側に配される複数の上記チャンファ成形歯のうちの一つの基準歯の山の位置とが同位置であり、上記案内棒の上記多角横断面形状の中心と、上記チャンファダイの上記多角穴の中心とが同位置であるものとすることができる。
【０００７】
ここに、「基準歯」とは、チャンファパンチの案内棒又はチャンファダイの多角穴の所定配置位置に対して、複数の連続する各々の歯のうちの所定の歯を選択し、この選択された歯のことをいう。例えば、図２及び図３において説明すれば、台形形状の平行長辺を二等分する二等分線（中心線）上に位置する山１１１ａ、２１１ａを基準歯とできる。尚、この基準歯としては、二等分線上に位置するものではなくても、他の所定の中心線に位置するものを適宜選択できる。
【０００８】
本発明において、上記案内棒の上記多角横断面形状は、略台形又は非対称形状であるものとすることができる。この「略台形」とは、真台形でもよいし、台形のやや変形した台形様のものをも含む意味である。また、「非対称形状」とは、線対称及び点対称をも備えない図形をいい、この図形を同心状に回転させた場合、元に戻るまでに両図形が重なることがないような図形をいう。例えば、この非対称形状としては、図４（ａ）〜（ｄ）に示すように、台形の一端部を切除した形状（変形五角形）（同図（ａ））、四角形（例えば正方形等）の両端部を互いに異なった形に切除した形状（変形六角形）（同図（ｂ））、円形の適宜の２か所を互いに異なった形に切除した形状（変形円形若しくは変形トラック状等）（同図（ｃ））、円形の適宜の３か所〔２か所（この場合は切除形状が異なるもの；例えば四角形と半円形、大きさ若しくは形状の異なる四角形同士等の組み合わせが必要となる。）又は４箇所以上でもよい。〕を互いに同じ若しくは異なった形に切除した形状（変形円形）（同図（ｄ））、その他の形状とすることができる。これらの形状の場合は、一義的に位置決めめができるので、大変便利である。
【０００９】
【作用】
本第一発明の位置決め案内棒付きパンチは、チャンファパンチ１とチャンファダイ２がそれぞれチャンファ成形歯１１ａ、２１ａを具備しているため、ワーク３の両端面（両端面）のチャンファ加工を一工程で行うことができる。
また、チャンファパンチ１が多角横断面形状Ｐを有する柱状の案内棒１１ｂを具備し、チャンファダイ２が上記多角横断面形状と同形状の多角穴２１ｂを具備しているため、チャンファ加工の際に、案内棒１１ｂと多角穴２１ｂとの嵌合により、チャンファパンチ１とチャンファダイ２の相対位置が正確に固定される。
本第二発明の位置決め案内棒付きパンチは、チャンファパンチ１の基準歯１１１ａの山の位置と、案内棒１１ｂの多角横断面形状Ｐの中心線と、チャンファダイ２の基準歯２１１ａの山の位置と、多角穴２１ｂの中心線とが同位置であるため、チャンファパンチ１のチャンファ成形歯１１ａとチャンファダイ２のチャンファ成形歯２１ａの位相を正確に一致させることができる。
また、第三発明に示すように、上記案内棒の上記多角横断面形状を、略台形又は非対称形状とする場合には、位置決めを一義的にすることができるので、作業効率が著しく向上する。
【００１０】
【実施例】
以下、実施例により本発明を図面を参照して具体的に説明する。
（１）歯車塑性成形における位置決め案内棒付きパンチの構成
チャンファパンチ１は、図１に示すように、その第１パンチ面１ａの中心に、多角横断面形状Ｐを有する柱状の案内棒１１ｂを備え、その第１パンチ面１ａの外縁側には適数のチャンファ成形歯１１ａを備える。多角横断面形状Ｐとしては、本実施例のものは四角台形であるが、図４に示すような非対象形状とすることができる。
尚、正方形、長方形、正五角形、正六角形又は正八角形等とすることもできる。この場合は、所定角度回転させると一致し、嵌合が可能となるので、この所定角度を１つの単位として同形状の成形歯群とするのが好ましい。これにより、所定角度回転させて嵌合させた場合でも、両成形歯の全体を同一形状とすることができる。
【００１１】
チャンファパンチ１のチャンファ成形歯１１ａは、図２に示すように、チャンファ成形歯１１ａのうちの一つの基準歯１１１ａの山の位置が、案内棒１１ｂの多角横断面形状Ｐの一辺Ｐ１ の垂直二等分線上、即ち、多角横断面形状Ｐの中心線Ｃ１−Ｃ１上に位置するように構成されている。尚、図２において、チャンファ成形歯１１ａの基準歯１１１ａ以外の歯は省略した。尚、図２中の点線は、成形歯１１ａの山谷形状を説明するものである。図３についても同様である。
【００１２】
チャンファダイ２は、その第２パンチ面２ａの中心に、案内棒１１ｂが嵌合できる多角横断面形状Ｐと同形状の多角穴２１ｂが設けてあり、第２パンチ面２ａの外縁には適数のチャンファ成形歯２１ａが設けられている。
チャンファダイ２のチャンファ成形歯２１ａは、図３に示すように、チャンファ成形歯２１ａのうちの一つの基準歯２１１ａの山の位置が、案内棒１１ｂに対応する多角穴２１ｂの一辺Ｄ１ の垂直二等分線上、即ち、多角穴２１ｂの中心線Ｃ２−Ｃ２上に位置するように構成されている。尚、図３において、チャンファ成形歯２１ａの基準歯２１１ａ以外の歯は省略した。
【００１３】
以上より、本実施例の位置決め案内棒付きパンチは、チャンファパンチ１のチャンファ成形歯１１ａのうちの一つの基準歯１１１ａの山の位置と、チャンファダイ２のチャンファ成形歯２１ａのうちの一つの基準歯２１１ａの山の位置とが同位置になり、成形歯１１ａ、２１ａの全体形状が一致するように構成されている。しかも、案内棒１１ｂの多角横断面形状Ｐの中心線Ｃ１−Ｃ１と、案内棒１１ｂが嵌合する多角穴２１ｂの中心線Ｃ２−Ｃ２とが同位置、即ち両者１１ｂ、２１ｂの各中心が同位置（一致）するように構成されている。換言すれば、チャンファパンチ１の底面図（図２）とチャンファダイ２の平面図（図４）とが、完全に一致することとなる。
【００１４】
（２）歯車塑性成形における両端面チャンファ部同時成形（加工）
ワーク３を、図１に示すように、チャンファダイ２に載置する。その後、チャンファパンチ１がチャンファダイ２に向かって下降を開始する。まず、案内棒１１ｂが、チャンファダイ２の第２パンチ面２ａの中心にある多角穴２１ｂに嵌合し、チャンファパンチ１とチャンファダイ２の水平方向の相対位置が固定される。その後、チャンファパンチ１とチャンファダイ２が、ワーク３を上下から挟み込み、チャンファ成形歯１１ａとチャンファ成形歯２１ａがワーク３の両端面を押しつぶし、ワークの上下の両端面の外縁側に所定のチャンファが成形される。
【００１５】
（３）実施例の効果
本位置決め案内棒付きパンチは、チャンファパンチ１とチャンファダイ２がそれぞれチャンファ成形歯１１ａ、２１ａを具備しているため、ワーク３の両端面のチャンファ加工を一工程で行うことができる。
また、チャンファダイ２が、柱状の案内棒１１ｂを上記多角横断面形状と同形状の多角穴２１ｂを具備しているため、チャンファ加工の際に、案内棒１１ｂと多角穴２１ｂとの嵌合により、チャンファパンチ１とチャンファダイ２の相対位置が正確に固定される。更に、この柱状の案内棒１１ｂを上記多角横断面形状及び多角穴形状が、台形という点対称（回転対称）を有しない形状のため、一義的に位置決めができるので、大変便利である。
【００１６】
また、チャンファパンチ１の基準歯１１１ａの山の位置とチャンファダイ２の基準歯２１１ａの山の位置とが同位置であり、且つ、案内棒１１ｂの多角横断面形状Ｐの中心線と多角穴２１ｂの中心線とが同位置である（同位置同芯）ため、チャンファパンチ１のチャンファ成形歯１１ａとチャンファダイ２のチャンファ成形歯２１ａの位相を正確に一致させることができる。即ち、その全体の山谷同士を同位置且つ同芯に揃えることができる。
尚、本加工はチャンファ加工だけに限定しない。溝、ポンチ、Ｃ面等の、水平方向の正確な位置決めめが必要となる塑性成形加工等への応用が可能であり、その応用範囲は広い。
尚、本発明においては、前記具体的実施例に示すものに限られず、目的、用途に応じて本発明の範囲内で種々変更した実施例とすることができる。即ち、上記各成形歯の大きさ、形状、ピッチ等、更には上記案内棒の横断面形状、大きさ等は上記実施例に示すものに限らず、種々選択して使用できる。
【００１７】
【発明の効果】
本発明の位置決め案内棒付きパンチを用いれば、チャンファパンチとチャンファダイの水平方向の相対位置が案内棒と多角穴の嵌合により正確に固定されるため、位置ずれを起こすことなくワークの両端面のチャンファ加工を一度に行うことができる。また、チャンファパンチのチャンファ成形歯とチャンファダイのチャンファ成形歯の位相を正確に一致させることができるため、ワークの両端面のチャンファの位相を正確に一致させることができる。更に、上記案内棒の上記多角横断面形状を、略台形又は非対称形状とする場合には、位置決めを一義的にすることができるため、作業効率が著しく向上する。
以上のことから、本発明の位置決め案内棒付きパンチを用いれば、チャンファ加工の工程数削減による製造リードタイム短縮と、製品品質の向上による良品率の向上により、製品のコスト低減を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図１】実施例に係る位置決め案内棒付きパンチの概略斜視図である。
【図２】実施例に係るチャンファパンチの底面図である。
【図３】実施例に係るチャンファダイの平面図である。
【図４】案内棒の多角横断面形状及び多角穴形状の他の態様（非対称形状）を示す説明図である。
【符号の説明】
１；チャンファパンチ、１ａ；チャンファパンチの第１パンチ面、１１ａ；チャンファパンチのチャンファ成形歯、１１１ａ；チャンファ成形歯の基準歯、１１ｂ；案内棒、２；チャンファダイ、２ａ；チャンファダイの第２パンチ面、２１ａ；チャンファダイのチャンファ成形歯、２１１ａ；チャンファ成形歯の基準歯、２１ｂ；多角穴、Ｐ；多角横断面形状、Ｐ１ ；多角横断面形状の一辺、Ｄ１ ；多角穴の一辺、３；ワーク、Ｃ１−Ｃ１；多角横断面形状の中心線、Ｃ２−Ｃ２；多角穴の中心線。

Claims (3)

1. 第１パンチ面の外縁側に複数のチャンファ成形歯を具備するチャンファパンチと、該チャンファパンチに対向し、第２パンチ面の外縁側に複数のチャンファ成形歯を具備するチャンファダイと、からなる歯車塑性成形における両端面チャンファ部同時成形用位置決め案内棒付きパンチであって、
   上記チャンファパンチは、上記第１パンチ面の中心位置に多角横断面形状を有する柱状の案内棒を備え、上記チャンファダイは、上記第２パンチ面の中心位置に上記案内棒が嵌合するとともに、上記多角横断面形状と同形状の多角穴を備えていることを特徴とする、歯車塑性成形における両端面チャンファ部同時成形用位置決め案内棒付きパンチ。
2. 上記チャンファパンチの第１パンチ面の外縁側に配される複数の上記チャンファ成型歯のうちの一つの基準歯の山の位置と、上記チャンファダイの上記第２パンチ面の外縁側に配される複数の上記チャンファ成型歯のうちの一つの基準歯の山の位置とが同位置であり、
   上記案内棒の上記多角横断面形状の中心と、上記チャンファダイの上記多角穴の中心とが同位置である、請求項１記載の歯車塑性成形における両端面チャンファ部同時成形用位置決め案内棒付きパンチ。
3. 上記案内棒の上記多角横断面形状は、略台形又は非対称形状である、請求項１又は２記載の歯車塑性成形における両端面チャンファ部同時成形用位置決め案内棒付きパンチ。

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