JP3586812B2 - 洗車ブラシ用の洗浄片 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
この発明は、洗車ブラシに好適に使用されて、自動車の塗装や外装品を損傷することなく洗浄可能であり、しかも低温での柔軟性および耐薬品性に優れた洗浄片に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
一般にガソリンスタンド等に設置されている自動洗車機は、図1に示す如く、制御下に回転可能な回転軸14の周りに多数の柔軟な洗浄片12を植設した洗車ブラシ10を備え、該洗車ブラシ10を回転させることで洗浄片12と車体とを接触させ(図1(b)参照)、これに洗剤を噴射させて車体の表面の洗浄を行なうものである。
【0003】
これまで前記洗浄片12として、各種の布やナイロン等を材質とするものが一般に使用されていたが、これらの材質は以下の問題を内在していた。
▲1▼材質が布の場合
前記洗浄片の材質として各種の布が使用した場合、これは柔軟性が高く硬度が低いため、車体表面等に該洗浄による擦り傷等を生ずることは殆どない。しかし布は吸収した水分を保持し易いので、冬季や寒冷地では布中に保持した水分が凍結して柔軟性を低下させる難点がある。またこのように凍結した状態で洗浄を強行すると、自動車に擦り傷を与えるだけでなく、例えば車体を凹ませたり、ガラスを破損する等の重大なダメージに至る。
▲2▼材質がナイロンの場合
前記洗浄片の材質としてナイロンを使用すると、ナイロンは吸水性が殆どないため前述のような寒冷地での凍結等による欠点は回避し得る。しかしナイロンは一般的に硬度が高いので、洗浄中に自動車に擦りを付けてしまう欠点が挙げられる。
【0004】
そこで前述の各問題点に鑑み、硬度が低く、しかも吸水性を殆ど発現しないエチレン−酢酸ビニル(以下EVAと云う)の発泡体を材質とする洗浄片の使用が提案されている。すなわちEVAは、材質的に非常に柔軟であり、また発泡体とした際に内部の気泡が夫々独立(発泡体の内部構造が非連通構造であること)していて連泡率を小さくし得る特徴を有するので、前述の如く、低い硬度および低い吸水率を発現させ得る。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、前記EVA発泡体を洗浄片12とした洗車ブラシ10は、その摩擦係数が高いために、実際の使用に当たっては、該洗浄片12が洗浄回転中に自動車の突起部、例えば外部アンテナ、ミラーその他の外装品に絡み付いてしまう難点がある。このような状況下で洗車ブラシ10での洗浄を続けると、前記洗浄片12が絡み付いたアンテナ等の部分が損壊してしまう等の問題が指摘される。
【0006】
前述したEVA発泡体の絡み付きを原因とする自動車外装品の損壊を防止する手段として、該外装品が損壊する程度の応力がかかった際に該EVA発泡体自身の構造を破壊することで、該外装品の損壊を回避する方法が考えられる。この方法は前記EVA発泡体の強度を制御することで可能であり、この強度の制御手段として、該発泡体の架橋度の調整、すなわち分子間結合の度合いの調整が考えられ、該強度を減少させるには該架橋度を小さくすればよい。しかし前記架橋度は、同時に発泡体の発泡に際して最も重要な要素の一つであり、該架橋度が小さくなるのに伴って、発泡体の粘度が低下してしまい安定な発泡体が得られなくなってしまう欠点が指摘される。
【0007】
【発明の目的】
この発明は、従来の技術に係る洗浄片に内在していた問題に鑑み、これを好適に解決するべく提案されたものであって、洗車ブラシを構成する洗浄片の原料をポリオレフィン系樹脂を主原料とし、得られる発泡体の硬度、連泡率および引張強度等の物性値を制御することで、洗車ブラシに好適に使用可能であり、かつ車体を損傷させることなく確実な洗浄を行ない得る洗浄片を提供することを目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】
前記課題を克服し、所期の目的を達成するため本発明の洗浄片は、洗車ブラシを構成する多数の柔軟な洗浄片であって、前記洗浄片をエチレン−エチルアクリレート ( EEA )樹脂の発泡体から構成し、
前記発泡体の引張強度を0.5〜1.2MPaの範囲に、連泡率を10%以下に、25%圧縮硬さを0.2MPa以下に夫々設定したことを特徴とする。
【0009】
【発明の実施の形態】
次に本発明に係る洗浄片につき、好適な実施例を挙げて、以下説明する。本願の発明者は、主原料としてポリオレフィン系樹脂を採用し、柔軟性を示す硬度、吸水性を示す連泡率および車体に与える損傷の度合いを示す引張強度等の各物性値を所定の範囲内とした発泡体を用いることで、洗浄に必要な強度を保持すると共に、車体を損傷させる畏れがなく、洗車ブラシに好適に使用し得る洗浄片が得られることを見出したものである。また好適な実施例に係る洗車ブラシは、その構造が前出した従来技術に係る洗車ブラシ10と殆ど同一であるので、構成等の詳細な記載は省略し、参照番号も同一のものを使用する。
【0010】
好適な実施例に係る洗浄片を採用した洗車ブラシ10は、図1に示す如く、制御下に回転する回転軸14と、この回転軸14に植設され、該軸14の回転時に車体と接触して洗浄を行ない得る多数の洗浄片12とからなる。前記洗浄片14は、ボリオレフィン樹脂を主原料として、これに発泡剤および架橋剤等の所定の副原料を混合・発泡させて得られるポリオレフィン発泡体(以下、発泡体と云う)から製造される。
【0011】
前記発泡体が発現すべき物性としては、洗車時に自動車への傷の付き易さの指標となる柔軟性を示す硬度、吸水性を示す連泡率および車体に与える損傷の度合いを示す引張強度等が挙げられる。殊に前記硬度としては、使用時の回転状態を考慮して25%圧縮硬さを採用する。
【0012】
前記引張強度としては、前記洗浄片を洗車ブラシを構成する際の一般的な形状(厚み3〜5mm、幅7〜10mm程度)とした際の値が0.5〜1.2MPaの範囲が好適であり、基本的に発泡体構造中の分子間力によって決定されるものである。引張強度が0.5MPa未満であると、通常状態の洗浄でも発泡体が断裂してしまい必要な洗浄力が得られなくなり、1.2MPaを越えると回転中の洗浄片が自動車のミラー等の外装品に巻き付いた際に、該外装品を損壊させてしまうため、本発明の洗浄片として採用し得ない。
【0013】
前記連泡率は、基本的にポリオレフィン発泡体の使用であれば10%以下となるものであるが、該発泡体の製造後に、例えば機械的な破泡作業等を行なうとこの連泡率が10%を越える場合が考えられる。このような状態では、前記洗浄片が洗車の際に水分を吸収してしまい、低温による凍結や自重の増加等によって車体に破損を及ぼすことが明らかであるので注意が必要である。
【0014】
また硬度については、その値が0.2MPaを越えると通常の使用に当たって車体に擦り傷等を付けてしまうことが経験的に知られているので注意が必要である。この硬度は基本的に発泡体の発泡倍率によって決定される物性値であり、該発泡倍率が8倍程度以上であれば前述の値を達成し得る。また発泡体原料中の混合される充填材の量に反して硬度が低下することも知られている。
【0015】
前記発泡倍率は、余り大きくなりすぎると前述の引張強度が低下してしまうが、該発泡倍率15倍であれば、本発明が要求する所定の引張強度を維持し得るものである。この点を留意して本発明においては、前記発泡倍率を8〜15倍の範囲に設定することが好ましい。
【0016】
前記ポリオレフィン系樹脂としては、エチレンと、メチル、エチル、プロピル、ブチルまたは各アクリル酸アルキルエステル(この際のエステル含有量;45モル%以内)との共重合体や、これらの2種類以上の混合物が使用される。その他、前述の共重合体または混合物と、アイソタクチックポリプロピレンまたはアタクチックポリプロピレンとの混合物の使用も可能である。なお塩素含有量60重量%までの塩素化物についても使用可能である。
【0017】
殊に前記ポリオレフィン系樹脂として、発泡体になった際に従来技術で説明したEVA樹脂から得られる発泡体とほぼ同等の物性値を備え、低い引張強度を発現するエチレン−エチルアクリレート樹脂(以下EEA樹脂と云う)が好適である。これはEEA樹脂は、EVA樹脂に較べて分子の側鎖が長く、個々の分子間距離が長くなり、その結果分子間力が小さくなったという、構造的なことに起因するものである。
【0018】
前記発泡剤としては、無機または有機発泡剤を制限することはなく使用することができる。具体的には、重炭酸ナトリウム、重炭酸アンモニウム、アゾジカルボンアミド、ジニトロソペンタメチレンテトラミン、ジニトロソテレフタルアミド、アゾビスイソブチロニトリルおよびスルホニルヒドラジド類等が挙げられる。これらの中ではアゾジカルボンアミド、アゾビスイソブチロニトリルおよびスルホニルヒドラジド類が好ましい。発泡剤の配合量は、一般的に前記ポリオレフィン系樹脂100重量部に対して、3〜30重量部であり、所望の発泡倍率に応じて設定される。
【0019】
また発泡状態を制御するために、尿素を主成分とする化合物、酸化亜鉛、酸化鉛等の金属酸化物、各種脂肪酸または各種脂肪酸の金属塩等の発泡助剤を添加してもよい。更に物性改善のため、必要に応じて充填剤としてのカーボンブラック、炭酸カルシウム、アスベストまたは各種金属酸化物等を混合するようにしてもよい。殊にカーボンブラックまたは炭酸カルシウムがコスト低減に好適である。
【0020】
前記架橋剤としては、少なくとも前記ポリオレフィン系樹脂の流動開始温度以上の分解温度を有し、加熱により分解され、遊離ラジカルを発生してポリオレフィン系樹脂の分子間に架橋結合を発生させる有機過酸化物が挙げられる。前記有機過酸化物としては、例えばジクミルパーオキサイド、2,5−ジメチル−2,5−ビス−ターシャリーブチルパーオキシヘキセン、1,3−ビス−ターシャリーパーオキシイソプロピルベンゼン等が使用可能である。
【0021】
【製造方法の一例】
前述されたポリオレフィン系樹脂、架橋剤、発泡剤、発泡助剤、充填剤および所望の各種添加剤等の全原料を、該架橋剤の分解温度以下でバンバリーミキサー、ロール或いは単軸または多軸押出機等を用いて溶融混練し、最終的に所要形状のダイスを介して押し出すことでシート形状の洗浄片に成形する。なおここでは化学的発泡法および押出成形を採用して前述の所要形状に成形したが、所定の物性を満足すると共に、所要形状への成形が可能であれば、如何なる公知の発泡法や成形法であっても採用は可能である。
【0022】
主原料としてEEA樹脂を用いた場合、室温において同一のスチィフネスモジュラス( 引張弾性率 )を示すEVA樹脂を比較対象として、低温域(−20℃程度)で該スチィフネスモジュラスを比較すると、EEA樹脂はEVA樹脂の半分程度のスチィフネスモジュラスを示す。すなわち低温においても優れた柔軟性を有している。更に前記EEA樹脂はガソリン、水酸化ナトリウム、硫酸およびエチルメチルケトン等の薬品に対する耐性がEVA樹脂に比べて強い特徴がある。このためEEA樹脂から得られた発泡体についても、同様の特徴が発現するものであり、その結果、通常に自動洗車機が設置される場所を考慮した場合、該EEA発泡体からなる洗浄片は非常に好適である。
【0023】
【実験例】
以下に本発明に係る洗車ブラシに好適に採用し得る洗浄片の実験例を示す。なお、本実験例ではポリオレフィン系樹脂として好適なEEA樹脂を使用した例を示すが、殊にこの実験例に記載された内容に限定されるものではない。
【0024】
(実験1)
主原料のポリオレフィン系樹脂として、EEA樹脂(商品名 NUC6220;日本ユニカー製)を採用し、該EEA樹脂100重量部に対して、各副原料を混合した。副原料としては、発泡剤としてのアゾジカルボンアミドを4.6重量部、架橋剤としてのジクミルパーオキサイドを0.75重量部、充填剤としての炭酸カルシウムを50重量部、発泡助剤としての酸化亜鉛を2.0重量部およびステアリン酸亜鉛を0.5重量部を用いた。そして表面温度100℃のロール上で前述の主原料および副原料全てを混練して混合物とし、これを所要形状の金型内に充填し80kg/cm2で加圧プレスを行ない、温度145℃、45分間の条件で加熱して架橋発泡させて実験例に係るEEA発泡体を得た。また比較例として前述のEEA樹脂をEVA樹脂(商品名 品名ウルトラセン540;東ソー製)に代えたものから同様のEVA発泡体を作製した。そして夫々得られた発泡体に加工を施し、厚さ5mm、幅10mm、長さ100mmの実験例試験片および比較例試験片を作製し、JIS K 6767に準拠した方法等を用いて、見かけ密度(発泡倍率)、引張強度、25%圧縮強さ、伸び率および連泡率の測定を夫々行なった。
【0025】
【表1】
【0026】
(実験1の結果)
得られた各物性値を上記表1に示す。ここから実施例、比較例に係る発泡体は、見かけ密度、伸び率、連泡率および25%圧縮硬さについてはほぼ同一であるが、実施例に係るEEA発泡体は引張強度が比較例に係るEVA発泡体の半分の強度となっていることが確認された。これは前記EEA発泡体は、EVA発泡体と同等の柔軟性および吸水性等を保持しているが、引張られた場合にはEVA発泡体よりも早く断裂することを示している。すなわち本実験例に係るEEA発泡体を洗浄片として採用した洗車ブラシとした場合には、自動車の外装品に該洗浄片が絡まっても、該洗浄片が速やかに断裂を起こし該外装品を損壊させることがない。
【0027】
(実験2)
実験1の実験例で使用したEEA発泡体の組成および製造方法を基本として、該EEA発泡体の原料中の発泡剤の添加量を変化させることで、発泡倍率を15倍または20倍として、夫々実験2−1および実験2−2に係る発泡体を得た。そして夫々得られた発泡体に加工を施し、厚さ5mm、幅10mm、長さ100mmの試験片を作製し、JIS K 6767に準拠した方法等を用いて、見かけ密度(発泡倍率)、引張強度および25%圧縮強さの測定を夫々行ない、その測定物性値と○または×で示す本発明に係る洗浄片としての評価とを、前述の実験1に係る実験例と共に下記の表2に示した。
【0028】
【表2】
【0029】
(実験2の結果)
実験2の結果から発泡倍率と、引張強度および25%圧縮強さとの関係が確認された。すなわち発泡倍率の高倍率化に伴って引張強度および25%圧縮強さの値は共に低下し、該発泡倍率が15倍で該引張強度が0 . 5MPaとなり、これを越えると該引張強度が0.5MPaを下回ってしまうことが確認された。これは洗車ブラシ等の通常使用状態において、洗浄片が断裂することを示している。
【0030】
【発明の効果】
以上に説明した如く、本発明に係る洗浄片によれは、洗浄片の主原料としてエチレン−エチルアクリレー ( EEA )樹脂を用いて、得られる発泡体の物性値を、引張強度を0.5〜1.2MPa、連泡率を10%以下、25%圧縮強さを2.0MPa以下に夫々設定することで、低温時における高い柔軟性と、高い耐薬品性を発揮し、車体を損傷することなく確実な洗浄を行ない得る洗浄片を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】洗浄片を使用した洗車ブラシの構造と、稼働した際の動きを示す概略図である。
Claims (1)
- 洗車ブラシを構成する多数の柔軟な洗浄片であって、
前記洗浄片をエチレン−エチルアクリレート ( EEA )樹脂の発泡体から構成し、
前記発泡体の引張強度を0.5〜1.2MPaの範囲に、連泡率を10%以下に、25%圧縮硬さを0.2MPa以下に夫々設定した
ことを特徴とする洗浄片。
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