JP3586416B2 - 軸降伏型弾塑性履歴ブレースと制振鉄骨構造物 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、建築物及びその他の鉄骨構造物において、地震及び風力等の振動エネルギーを吸収し得る軸降伏型弾塑性履歴ブレースに関する。
【0002】
【従来の技術】
実公平4−19121号公報は、座屈拘束筋違い部材が、中心軸力部材とコンクリート部材との間に付着防止皮膜を設けることを開示する。実開平5−3402号公報は、座屈拘束筋違い部材が、鋼製座屈拘束部材に鋼製中心軸力部材を挿通し、中心軸力部材の表面と座屈拘束部材との間に付着防止被膜を介在させることを開示する。実開平5−57110号公報は、制振用筋違い部材が、小断面中間部材の両端に大断面側方部材の一端部を直列状態に一体に連接して鋼製中心部材を構成し、その鋼製中心軸力部材が構成中空座屈拘束部材内に嵌挿されることを記載する。実開平5−57111号公報は、実開平5−57110号公報と同様の構成の制振性及び耐久性並びに耐温度性に富んだ制振用筋違い部材を開示する。特開平7−229204号公報は、座屈拘束筋違い部材の剛性及び降伏応力を任意に設定できること、且つ鋼製中心軸力部材の応力流れを良くすることを記載する。R. Tremblay 等は、8th Canadian conference on Earthquake Engineering において座屈拘束用部材に関する実験結果を報告している(例えば、Seismic Rehabilitation of a Four−storey Building with a Stiffened Bracing System, Published on, January 19, 1999) 。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
鋼材で補強された座屈拘束用コンクリート部材と鋼製中心軸力部材との間で、鋼製中心軸力部材に座屈拘束用コンクリート部材のコンクリートが付着することを防止するために、付着防止皮膜が設けられる。この付着防止皮膜の膜厚が薄すぎると、鋼製中心軸力部材の軸変形にともなう板厚方向の膨張を許容できなくなり、一方膜厚が厚すぎると鋼製中心軸力部材の局部座屈を拘束することができなくなるという問題がある。さらに、この付着防止皮膜の厚さ方向の剛性が低すぎると、コンクリート打設時にコンクリートの圧力により所定の膜厚を保持できなくなり、また、付着防止皮膜の厚さ方向の剛性が高すぎると、鋼製中心軸力部材が塑性化すなわち塑性変形したときのポアソン比の影響により鋼製中心軸力部材の板厚方向の膨張を吸収することができない等の問題がある。
【0004】
軸降伏型弾塑性履歴ブレースの鋼製中心軸力部材に普通鋼(降伏応力σy =235N/mm2 )を使用した場合、小規模の地震の地動加速度(80〜100gal)に対して、鋼製中心軸力部材が早期に降伏しないために、小規模の地震に対する履歴ダンパーとして機能させることができないという問題がある。
軸降伏型弾塑性履歴ブレースの鋼製中心軸力部材の横断面積が、その部材の一方の端部から中央部を通り他端部までが同一の断面積であると、履歴ダンパーとして機能させるときに、その部材の中央部とともに両端部も降伏により塑性化(塑性変形)を起こし、それによって、軸降伏型弾塑性履歴ブレースと、主柱及び梁の鉄骨構造物との接合部で破断する問題がある。
【0005】
鋼材で補強された軸降伏型弾塑性履歴ブレースの座屈拘束用コンクリート部材の製造過程において、座屈拘束用コンクリート部材としての補強鋼材の端部が開放されているとコンクリートの打設時にコンクリートが凝固する以前にコンクリートが流出していまいコンクリート打設に困難であり、また軸降伏型弾塑性履歴ブレースの使用中にひび割れたコンクリートの落下等の問題がある。さらに、鋼材で補強された軸降伏型弾塑性履歴ブレースの座屈拘束用コンクリート部材と鋼製中心軸力部材の間には、軸降伏型弾塑性履歴ブレースの座屈拘束用コンクリート部材とが互いに付着することを防止する付着防止皮膜を介している。このために、鋼製中心部材が地震及び風力などの振動に伴い軸変形をしたときに、座屈拘束用コンクリート部材は鋼製中心軸力部材の二つのいずれの端部方向に移動するかが明確でなく、また移動しはじめるといずれか一方の端部に偏ってしまう問題がある。
【0006】
軸降伏型弾塑性履歴ブレースを制振鉄骨構造物に装着する場合には一般的に高力ボルトで固定接合される。この場合に鋼製中心軸力部材の軸力が大きくなると使用するボルト本数が非常に多くなり、軸降伏型弾塑性履歴ブレースの両端部を極端に拡幅しなけらば固定接合できない問題がある。また、軸降伏型弾塑性履歴ブレースの両端部の幅は、装着する制振鉄骨構造物の柱及び梁の幅に制約されるため余り大きくすることができない。
【0007】
軸降伏型弾塑性履歴ブレースの鋼製中心軸力部材が降伏しないような小規模地震及び風力などの極微小振動に対しては、鋼製中心軸力部材が振動エネルギーを吸収する履歴ダンパーとして機能させることができないという問題がある。
鉄骨構造物が大規模な地震を受けたとき、鉄骨構造物の柱、梁及び筋違いの一部は塑性化する。鉄骨構造物の柱、梁及び筋違いの部材が塑性化しても、十分な塑性変形性能と疲労性能を備えていればこれらの鉄骨構造物の崩壊は免れる。しかし、現場施工された接合部や溶接部分は工場制作されたものに比べ品質低下を招き、場合によっては十分な塑性変形機能を発揮する前に破断することもある。これらの柱、梁及び筋違いの部材が塑性化すると鉄骨構造物は変形し、地震後にこれらの鉄骨構造物を継続使用するには大規模な補修が必要となる問題がある。
【0008】
【課題を解決するための手段】
前述の課題を解決するために、本発明の軸降伏型弾塑性履歴ブレースにおいては、鋼部材6で補強された座屈拘束用コンクリート部材2に鋼製中心軸力部材3が挿通され、鋼製中心軸力部材3と座屈拘束用コンクリート5との界面に付着防止皮膜4が設けられた軸降伏型弾塑性履歴ブレース1において、付着防止皮膜4の膜厚方向の割線剛性は、付着防止皮膜4の圧縮歪0%と圧縮歪50%との2点間においては0.1N/mm2 以上であり、圧縮歪50%と圧縮歪75%との2点間においては21000N/mm2 以下であり、且つ鋼製中心軸力部材3の板厚t及び板幅wのそれぞれの方向における付着防止皮膜4の膜厚dt 、dw は、鋼製中心軸力部材3の板厚t及び板幅wのそれぞれの0.5%以上10%以下であることによって達成される。
特に、軸降伏型弾塑性履歴部レース1の製作時における座屈拘束用コンクリート5の打設による圧力を考慮すると、付着防止皮膜4の膜厚比は、1.2%以上10%以下が望ましい。
【0009】
また、本発明の軸降伏型弾塑性履歴ブレース1においては、鋼製中心軸力部材3は、0.2%耐力または降伏点応力が130N/mm2 以下の鋼材であることを特徴とする。
また、本発明の軸降伏型弾塑性履歴ブレース1においては、鋼製中心軸力部材3は、0.2%耐力または降伏点応力が130〜245N/mm2 の鋼材であることを特徴とする。
【0010】
さらに、本発明の軸降伏型弾塑性履歴ブレース1においては、鋼製中心軸力部材3の横断面が、全長に対する長さの比率が限定された長手方向中央部21において最小断面積であり且つ長手方向中央部21に連設する長手方向両端部22、23において長手方向中央部21の最小断面積よりも大きい横断面積であることを特徴とする。
さらに、本発明の軸降伏型弾塑性履歴ブレース1においては、鋼製中心軸力部材3は、一方の端部から長手方向中央部21を通り、他方の端部まで同一横断面積である鋼製中心軸力部材3の軸剛性に対して1.5倍以上の軸剛性を有することを特徴とする。
【0011】
さらに、本発明の軸降伏型弾塑性履歴ブレース1においては、ボルト挿通用透孔26の透孔欠損面積を除いた鋼製中心軸力部材3の長手方向両端部22、23の横断面積22−1、23−1が、鋼製中心軸力部材3の長手方向中央部21の横断面積21ー1の1.2倍以上となっていることを特徴とする。
さらに、本発明の軸降伏型弾塑性履歴ブレース1においては、鋼部材(6)は、鉄筋(6−1)であることを特徴とする。
さらに、本発明の軸降伏型弾塑性履歴ブレース1においては、座屈拘束用コンクリート部材2の少なくとも一方の端部に蓋24を固定したことを特徴とする。
【0012】
さらに、本発明の軸降伏型弾塑性履歴ブレース1においては、鋼製中心軸力部材3の中央にズレ止め25を設けたことを特徴とする。
さらに、本発明の軸降伏型弾塑性履歴ブレース1においては、両端部22、23にボルト挿通用透孔26を設けた鋼製中心軸力部材3を備えた軸降伏型弾塑性履歴ブレース1と、鋼製継手板27との高力ボルトにより締付られる摩擦接合において、高力ボルトで締付けて摩擦接合する鋼製中心軸力部材3の両端部22、23と鋼製継手板27との互いに重ね合わさる摩擦面側のいずれか一方の摩擦面側の表面硬さ及び表面粗さを、もう一方の摩擦面側の表面硬さ及び表面粗さより大きくして高力ボルトで締付接合したことを特徴とする。
【0013】
さらに、本発明の軸降伏型弾塑性履歴ブレース1においては、軸降伏型弾塑性履歴ブレース1の座屈拘束用コンクリート部材2のそれぞれ側面に、C形断面内側鋼板29と、粘弾性体シート30と、C形断面外側鋼板31とを含む3層状に形成された組が、少なくとも一組以上固着され、C形断面内側鋼板29の一方の端部32が軸降伏型弾塑性履歴ブレース1の一方の端部34に固着され、座屈拘束用コンクリート部材2の一方の端部34と反対方向において、C形断面外側鋼板31の側端部33が、前記軸降伏型弾塑性履歴ブレース1のもう一方の端部(35)に固着されたことを特徴とする。
【0014】
さらに、前述の課題を解決するために、本発明の制振鉄骨構造物においては、本発明の上記軸降伏型弾塑性履歴ブレース1の鋼製中心軸力部材3の降伏点応力より高い降伏点応力の鋼材で作られた柱と梁との鉄骨構造物36、37に、軸降伏型弾塑性履歴ブレースを設置した制振鉄骨構造物38において、振動作用下により制振鉄骨構造物が振動する際に、前記軸降伏型弾塑性履歴ブレース(1)が弾性及び塑性の双方の挙動をすることにより、前記柱と梁との鉄骨構造物(36、37)が弾性挙動することを特徴とする。
【0015】
【発明の実施の形態】
本発明者は、例えば、大規模な地震の際の建物の層間変形角が1/100のときに(図2の(a)及び(b)を参照)、鋼製中心軸力部材に想定される最大軸歪ε1 =1.0%(=Δεa /2)に対して、付着防止皮膜の膜厚と鋼製中心軸力部材の板厚と板幅とのそれぞれの比、すなわち付着防止皮膜比を0.5%以上にし、且つ鋼製中心軸力部材の局部座屈を拘束するために付着防止皮膜比を10%以下にすることで、鋼製中心軸力部材の軸方向塑性変形を可能にするとともに局部座屈を防止することができることを解明した。なお、以下の解析および説明では、付着防止皮膜の膜厚に関しては、鋼製中心軸部材の板厚方向を基に解析するが、当然のことであるが板幅方向についても同様の結果を得ることができる。
【0016】
この付着防止皮膜比は次のように求めることができる。付着防止皮膜比の最小値は、鋼製中心軸力部材が軸方向に変形したときのポアソン比による板厚方向の変形により、外周を取り巻く座屈拘束用コンクリート部材と接触しない条件より求められる。図1(a)及び図1(b)に示す軸降伏型弾塑性履歴ブレース1では、鋼製中心軸力部材3の軸歪ε1が1.0%で且つ塑性変形時のポアソン比が0.5であるとき、鋼製中心軸力部材3の塑性変形部における板厚方向歪εzは
εz=νε1=0.5×1.0%=0.5% (1)
である。したがって、最低でも付着防止皮膜4の膜厚dtは、鋼製中心軸力部材の板厚tに対して安全率s=2を考慮すると、
dt/t=Sεz/2=2×0.5%/2=0.5%
程度であればよい。
さらに、座屈拘束用コンクリート部材2のコンクリート5を上記部材2内に打設するときに、コンクリート5の圧力が付着防止皮膜4に作用して、この付着防止皮膜4が、付着防止皮膜4の膜厚方向に圧縮されることを考慮する必要がある。したがって、コンクリート5を打設する前の、付着防止皮膜4と鋼製中心軸力部材3との推奨される最小膜厚比dt(min)/tは、鋼製中心軸力部材3の板厚t(または、板幅w)の少なくとも1.2%程度にするのが望ましい。この推奨される最小膜厚比dt(min)/tは、次式(2)によって求めることができる。次式(2)は、コンクリート5を打設する際に、付着防止皮膜4の膜厚方向の圧縮歪εzが約50%生じるものと見積もり、コンクリート打設後、圧縮歪εzにより圧縮されて、付着防止皮膜4を保持すると言う条件を基にする。コンクリートを打設した後、最小膜厚比dt/tが、0.5%と規定する場合、次式が成立する。
dt/t={〔dt(min)−(μ・V)〕/t}・100=0.5% (2)
ここで、dt(min)は付着防止皮膜の推奨される最小膜厚であり、Vはコンクリート5を鋼部材6内に打設した後の付着防止皮膜の圧縮変形値であり、μは変形割増し係数である。
付着防止膜4の膜厚方向の圧縮歪がεz=V/dt(min)=50%であるため、V=0.5dt(min)であり、μ=1.2とすると、
{〔dt(min)−(1.2×0.5dt(min))〕/t}・100=0.5%
(0.4dt(min)/t}×100=0.5%
(dt(min)/t}×100=1.25%
すなわち、コンクリート5を打設する前は、付着防止皮膜4と鋼製中心軸力部材3との推奨される最小膜厚比dt(min)/tは、鋼製中心軸力部材の板厚t(または、板幅w)の少なくとも1.2%程度にするのが望ましい。
【0017】
一方、付着防止皮膜比の最大値は、鋼製中心軸力部材の局部座屈が軸降伏型弾塑性履歴ブレースの荷重−変形関係や疲労性能に悪影響を及ぼさない条件より求めることができる。図20の(a)、(b)及び(c)に示す解析モデルにより非線形解析を行い、図21の(a)及び図21の(b)が、付着防止皮膜比dt /tが1.4%と11.1%の場合の荷重−変形関係の解析結果である。図21の(a)については安定した挙動を示すが、図21の(b)では変位増分の過程で荷重の急減する現象が見られ、不安定挙動を示している。これは付着防止皮膜厚が厚すぎるため鋼製中心軸力部材が座屈拘束用コンクリート部材内部で局部座屈したためである。鋼製中心軸力部材3の局部座屈を防止するためには、付着防止皮膜比が10%以下であればよい。
【0018】
すなわち、付着防止皮膜比の膜厚は鋼製中心軸力部材の板厚及び板幅に対して0.5%以上10%以下であればよい。
次に、付着防止皮膜4の割線剛性は二つの理由で規定される。第1の理由は、
(1)軸降伏型弾塑性履歴ブレースの座屈拘束用コンクリート部材にコンクリートを打設した後に、付着防止皮膜に要求される膜厚を充分に確保できることである。
【0019】
コンクリート打設時には、最もコンクリート圧力の高くなる軸降伏型弾塑性履歴ブレースの最下位点での付着防止皮膜の膜厚方向の歪εzが50%以下となるような剛性を必要とする。これにより、コンクリート打設最下位点において、付着防止皮膜の膜厚は半分になるが、膜厚の最小値条件の計算における安全率s=2によって考慮されて、全体的には充分な膜厚を確保できる。付着防止皮膜の剛性(割線剛性)は次のようにして求められる。軸降伏型弾塑性履歴ブレースの座屈拘束用コンクリート部材のコンクリートの単位体積重量wを2.4tf/m3とし、コンクリート打設高さhを2mとすると、コンクリート打設圧力pは、
p=wh=2.4×2=4.8tf/m2=4.8kgf/cm2 (3)
となり、膜厚方向の歪εzが50%のときの剛性は、
Emin=p/εz=0.48/0.5≒1.0kgf/cm2 (4)
である。よって、膜厚方向の歪εzすなわちコンクリート打設最高位点の圧縮歪0%と最下位点の圧縮歪50%との2点間では、付着防止皮膜の膜厚方向の割線剛性は、1.0kgf/cm2(0.1N/mm2)以上を必要とする。
【0020】
付着防止皮膜の割線剛性を規定する第2の理由は、
(2)軸降伏型弾塑性履歴ブレースの鋼製中心軸力部材が塑性変形するときに、鋼製中心軸力部材が座屈することなく面外方向の膨張を、付着防止皮膜が充分に吸収できることである。
コンクリート打設最下位点の付着防止皮膜の膜厚方向歪εZ は50%であり、地震の際の建物の傾きから想定される付着防止皮膜の最大膜厚方向の歪εZ は75%と規定される。また、一般的には地震の際などの振動により鋼製中心軸力部材が塑性変形を生じ、圧縮変形するときに座屈が生じ且つ引張り変形のときには座屈を生じない。したがって、圧縮変形のみを考慮した膜厚方向歪εZ が50%と75%との2点間では、鋼製中心軸力部材が塑性変形するとき、座屈しないように鋼製中心軸力部材の面外方向の膨張を吸収することができる程度の剛性を、付着防止皮膜が必要とする。付着防止皮膜の割線剛性は、座屈拘束用コンクリート部材の弾性係数以下であることが必要である。すなわち、膜厚方向歪εZ が50%と75%との2点間では、付着防止皮膜の割線剛性Emax は、2.1×105 kgf/cm2 (21000N/mm2 )以下とする。
【0021】
次に、軸降伏型弾塑性履歴ブレースの鋼製中心軸力部材が、小規模の地震に対する履歴ダンパーとして機能させるには、0.2%耐力または降伏点が130N/mm2 以下の鋼材を鋼製中心軸力部材に使用する。これによって、本発明の軸降伏型弾塑性履歴ブレースの固有周期Tと最大応答層間変形角radとの関係の図3の(a)及び(b)に示すように、地動加速度が80〜100galの小規模の地震に対しても、鋼製中心軸力部材が早期に降伏して、軸降伏型弾塑性履歴ブレースの鋼製中心軸力部材を履歴ダンパーとして機能させることができる。図3の(b)に示すように、建物に水平力39が作用すると、柱36、梁37架構は、水平変形(δ1 、δ2 、δ3 )する。このときの層間変形角はR1 =δ1 /h1 、R2 =δ2 /h2 、R3 =δ3 /h3 として求められる。ここでR1 は1階の層間変形角、R2 は2階の層間変形角、R3 は3階の層間変形角である。
【0022】
さらに、図4の(a)、(b)及び(c)、及び図5の(a)、(b)及び(c)に示すように、軸降伏型弾塑性履歴ブレース1の鋼製中心軸力部材3の横断面積が、全長に対する長さの比率が限定された長手方向中央部21において最小断面積として、長手方向中央部21に連設する長手方向両端部22、23において長手方向中央部の最小断面積よりも大きい横断面積とすることにより、中央部21を履歴ダンパーとして機能させることができる。その部材の両端部22、23では弾性状態を維持することができ、軸降伏型弾塑性履歴ブレース1と主柱及び梁の鉄骨構造物との接合部で破断することを防止できる。
【0023】
さらに、軸降伏型弾塑性履歴ブレース1に245N/mm2 の高降伏点の鋼材を鋼製中心軸力部材3に使用することを可能にできる。図6の(a)、(b)及び(c)に示すように、鋼製中心軸力部材3の最小横断面積である全長に対する長さの比率が限定された長手方向中央部21の長さαLB と、これより大きな断面積を有する長手方向の両端部22、23との双方の長さ(1−α)LB /2をそれぞれ変化させて、鋼製中心軸力部材3の軸剛性を高めることにより、一方の端部から長手方向の中央部(21)を通り、他方の端部まで同一断面積である前記鋼製中心軸力部材の軸剛性に対して1.5倍以上の軸剛性を有することができ、見せ掛けの降伏点を130N/mm2 以下とすることができる。例えば、図6の(c)に示すように3分割した軸降伏型弾塑性履歴ブレース1において(長手方向中央部21の長さαLB にわたる横断面積がAであり、且つ長手方向の両端部22、23の長さ即ちそれぞれの長さ(1−α)LB /2にわたる横断面積がβAである鋼製中心軸力部材3の軸剛性をk1 とする。また、長手方向中央部21から両端部22、23にわたって同一の横断面積Aである鋼製中心軸力部材3の軸剛性をk0 とする。)、軸降伏型弾塑性履歴ブレース1の両端部22、23の横断面積を中央部の2.5倍すなわちβとすることで、同一断面積の軸剛性に対して、剛性が1.8倍となり、見かけの降伏点を1/1.8とすることができる。すなわち、同一断面積の軸剛性k0 は、
k0 =EA/LB (5)
ここで例えば、α=0.25、β=2.5のとき
k1=k0/{α+(1−α) ・1/β}=k0/{0.25+(1−0.25) ・1/2.5 }=1.8k0(6)
となり、3分割した軸降伏型弾塑性履歴ブレース1の両端部22、23の横断面積を中央部の2.5倍とすると、元々の軸剛性の1.8倍となる。したがって、軸降伏型弾塑性履歴ブレースの鋼製中心軸力部材は、1.8分の1の変位で降伏するので、225N/mm2 の高降伏点の鋼材を鋼製中心軸力部材に使用しても、見掛けの上の降伏点が130N/mm2 以下となり、地動加速度が80〜100galの小規模の地震に対して履歴ダンパーとしての機能を充分に果たす。
【0024】
さらに、軸降伏型弾塑性履歴ブレースの鋼製中心軸力部材の長手方向両端部の横断面を中央部の横断面より大きくしても、歪硬化の大きな鋼材においては、鋼製中心軸力部材の両端部の弾性状態を維持できない。鋼材の歪硬化割合(引張り強さ/降伏点)は、1.2倍以上である場合は(図9に示す)、図7の(a)、(b)及び(c)、及び図8の(a)、(b)及び(c)に示すように鋼製中心軸力部材の中央部断面積をAとすると、鋼製中心軸力部材の端部では降伏応力σy の1.2A倍以上の軸力が発生することになる。したがって、鋼製中心軸力部材の端部の横断面積を中央部の横断面積の1.2倍以上にすることで、鋼製中心軸力部材の端部の塑性変形を回避することができる。
さらに、座屈拘束用コンクリート部材2の鋼部材6に鉄筋6−1を使用した例を図10の(a)と(b)、及び図11の(a)と(b)に示す。軸降伏型弾塑性履歴ブレース1の軸方向に沿って主筋6−2を、または軸降伏型弾塑性履歴ブレース1の周方向にフープ筋6−3を配筋することで座屈拘束用コンクリート部材2の曲げ剛性や拘束効果を高めることができる。
さらに、座屈拘束用コンクリート部材の鋼部材は、座屈拘束用コンクリート部材2の曲げ剛性向上や座屈拘束効果を備えることが可能であるならば、全面が連続した一体型の鋼部材、一部表面にに開口部が存在する鋼部材および螺旋状の鋼部材等の連続及び不連続のいずれの形状の鋼部材も用いることができる。
【0025】
さらに、軸降伏型弾塑性履歴ブレースの座屈拘束用コンクリート部材のコンクリートを、適切に所定の位置に打設するためには、図12の(a)及び(b)及び図13の(a)及び(b)に示すように、座屈拘束用コンクリート部材2の一方の端部に蓋24を取り付けることで解決でき、またひび割れたコンクリートの落下を防止することができる。蓋24を座屈拘束用コンクリート部材2の両端部に取り付けるとさらに効果的である。鋼製中心部材が地震及び風力などの振動に伴い軸変形をしたときに、座屈拘束用コンクリート部材は鋼製中心軸力部材の移動を防止するためには、図14の(a)及び(b)及び図15の(a)及び(b)に示すように、鋼製中心軸力部材に突起状のズレ止め25を設けることで、鋼製中心軸力部材が軸変形したときに座屈拘束用コンクリート部材を鋼製中心軸力部材の中央部に固定しておくことができる。
【0026】
軸降伏型弾塑性履歴ブレースと制振鉄骨構造物とを高力ボルトで固定接合する場合、鋼製中心軸力部材の両端面22、23または鋼製継手板27のいずれかの摩擦面側の表面硬さ及び表面粗さを、図22の(a)及び(b)、または図21の(a)及び(b)に示すように、もう一方の摩擦面側の表面硬さ及び表面粗さより大きくする。高力ボルト1本当りの摩擦接合耐力が2倍以上であることから必要ボルト本数が通常より半分以下となり、鋼製中心軸力部材の両端面を極端に拡幅することなく、軸降伏型弾塑性履歴ブレースと制振鉄骨構造物とを高力ボルトで固定接合することができる。
【0027】
軸降伏型弾塑性履歴ブレースの鋼製中心軸力部材が降伏しないような小規模地震及び風力などの極微小振動を吸収するために、図18の(a)及び(b)に示すように、軸降伏型弾塑性履歴ブレース1の座屈拘束用コンクリート部材2のそれぞれ側面に、3層状に形成されたC形断面内側鋼板29と、粘弾性体シート30と、C形断面外側鋼板31とを含む組が少なくとも一組以上固着される。軸降伏型弾塑性履歴ブレース1と粘弾性体シート30を組み合わせることで、軸降伏型弾塑性履歴ブレースの鋼製中心軸力部材が降伏しないような極微小な振動に対して粘弾性体シートが作用して、その剪断変形により振動エネルギーが吸収される。しかし、比較的大きな地震及び風力による振動が作用したときには、鋼製中心軸力部材が降伏して履歴ダンパーとして機能し、鋼製中心軸力部材の塑性化(塑性変形)によるエネルギー吸収能力と粘弾性体シートによるエネルギー吸収能力の和で、地震及び風力による振動エネルギーを吸収能力が得られる。
【0028】
図19の(a)及び(b)に示すように、鉄骨構造物38及び建物のブレースに軸降伏型弾塑性履歴ブレース1を使用し、地震が作用したとき、軸降伏型弾塑性履歴ブレース1のみを塑性化させることにより、鉄骨構造物38及び建物の柱36及び梁37の主体構造物は弾性状態を保持するように設計する(制振鉄骨構造物)。これによって、確認された塑性変形性能及び疲労性能を備えた軸降伏型弾塑性履歴ブレースに塑性変形部位が特定されるため、鉄骨構造物及び建物の構造性能が明確になり、軸降伏型弾塑性履歴ブレースの破断や建物の崩壊を回避することができる。また、主体構造は常に弾性状態であるので地震後は元の位置に復帰し、塑性化した軸降伏型弾塑性履歴ブレースのみを交換することで、容易に鉄骨構造物及び建物の継続使用が可能である。
【0029】
【実施例】
実施例1
座屈拘束用コンクリート部材と鋼製中心軸力部材との間に、鋼製中心軸力部材の板厚及び板幅に対して付着防止皮膜比が0.5%以上10%以下である付着防止被膜を設けた。軸降伏型弾塑性履歴ブレース1を製造するにおいてコンクリート5の打設のための圧力を考慮すると、付着防止皮膜4と鋼製中心軸力部材3との推奨される最小膜厚比dt(min)/tは、約1.2%程度にするのが望ましい。付着防止皮膜の膜厚方向の割線剛性は、付着防止皮膜の圧縮歪0%と50%との2点間においては0.1N/mm2 以上であり、圧縮歪50%と75%との2点間においては21000N/mm2 以下であった。本実施例では付着防止皮膜比4%の軸降伏型弾塑性履歴ブレースに最大4%の軸歪振幅Δεa を引張り圧縮試験機により付加した。この時鋼製中心軸力部材は図2の(b)に示すような引張り圧縮履歴ループを示し、圧縮応力側でも座屈することなく降伏変形することが示された。当然のことであるが、地震または風力に原因する建物の傾き、すなわち鋼製中心軸力部材の軸歪振幅Δεa は、さらに少ない軸歪振幅である場合が殆どである。したがって、鋼製中心軸力部材の軸歪振幅Δεa がさらに少ない軸歪振幅であるとして見積もられる場合は、付着防止皮膜厚比は小さくすることができる。本実施例に使用した付着防止皮膜は、ブチルゴムを使用したが、弾性材料及び粘弾性材料で本発明で規定した割線剛性を備える材料であるならばいずれの材料も使用することができる。
付着防止皮膜材料としては具体的には、プラスチック、天然ゴム、ポリイソプン、ポリブタジエン、スチレンブタジエンゴム、エチレンプロピレンゴム、ポリクロロプレン、ポリイソブチレン、アスファルト、ペイントおよびそれらの混合物を使用することができる。
【0030】
実施例2
軸降伏型弾塑性履歴ブレースと制振鉄骨構造物とを高力ボルトを用いて締付結合した。図16の(a)及び(b)及び図17の(a)及び(b)に示すように、本実施例においては、鋼製中心軸力部材の両端部22、23の表面硬さ(ビッカース硬さ)及び表面粗さ(十点平均粗さ)より、表面硬さ及び表面粗さを1.3倍以上に粗くした鋼製継手板27を使用した。あるいは、前記高力ボルト摩擦接合において、一つの摩擦接合面を構成する鋼製中心軸力部材の両端部22、23と鋼製継手板27のうち、一方の鋼材における摩擦面の表層部の硬さと他方の鋼材における摩擦面の表層部の硬さとの比が2.5以上であって、表層部の硬さが大なる層の深さを0.2mm以上とし、さらに前記両摩擦面の表層部のうち、図22及び図23に示すような表層部の硬さが大なる側の表面に沿って三角形の波形状あるいは角錐状の複数の突起を設け、且つ該突起の高さは0.2〜1.0mmとし、また表層部の硬さが小なる側の表面の最大表面粗さを該突起の高さよりも十分に小さくして締付結合した。これにより、ボルト1本当りの摩擦接合耐力が通常ボルトより2倍以上あることから通常の摩擦接合高力ボルトを使用すると必要ボルト本数が12本であるところを、本接合方法を使用することによりボルト本数は6本にすることができた。また、鋼製中心軸力部材の両端部と鋼製継手板との板幅は、ボルト本数が減ったことにより座屈拘束用コンクリート部材2の幅とほぼ同等以下にすることができた。上記の鋼製継手板を使用ないで軸降伏型弾塑性履歴ブレースと制振鉄骨構造物とを重ね継手とする場合は、鋼製中心軸力部材の両端部と制振鉄骨構造物の接合部のいずれか一方の摩擦面側の表面硬さ及び表面粗さを他方の摩擦面側より大きくすればよい。
【0031】
【発明の効果】
座屈拘束用コンクリート部材と鋼製中心軸力部材との間の付着防止皮膜の膜厚方向の割線剛性及び付着防止皮膜比を規定することによって、コンクリート打設時において付着防止被膜に要求される膜厚を充分に確保できる。さらに、鋼製中心軸力部材が降伏して塑性変形するときに面外方向の膨張を充分に吸収でき鋼製中心軸力部材の局部座屈を防止できる。
【0032】
鋼製中心軸力部材に使用される鋼材の塑性化部位を規定することによって、小規模の地震に対しても履歴ダンパーとして機能させることができる。鋼製中心軸力部材の端部の横断面積を中央部の横断面積の1.2倍以上にすることで、歪み硬化による鋼製中心軸力部材の端部の塑性変形を回避することができる。
鋼製中心軸力部材の長手方向中央部を最小断面積とすることによって、中央部を履歴ダンパーとして機能させることができる。その部材の両端部では弾性状態を維持することができ、軸降伏型弾塑性履歴ブレースと主柱及び梁の鉄骨構造物との接合部で破断することを防止できる。
鋼部材に鉄筋を使用することで、座屈拘束用コンクリート部材の曲げ剛性及び拘束効果を高めることができる。
【0033】
鋼製中心軸力部材に蓋を設けることにより、コンクリートの打設が容易になり、ひび割れたコンクリートの落下を防止することができる。
鋼製中心軸力部材にズレ止めを設けることにより、座屈防止用コンクリート部材を鋼製中心軸力部材の中央部に固定でき、鋼製中心軸力部材の長手方向両端部の拡幅部分とのクリアランスも明確になり設計が容易になり、重力による座屈防止用コンクリート部材のずれ落ちも防止することができる。
【0034】
摩擦接合耐力を通常のボルト接合より2倍以上にすることができ、これにより、ボルト本数を半分以下になり、且つ鋼製中心軸力部材の両端部を極端に拡幅することなく、軸降伏型弾塑性履歴ブレースと制振鉄骨構造物とを高力ボルトで固定接合することができる。
大規模及び小規模の地震エネルギーを吸収するために、軸降伏型弾塑性履歴ブレースに粘弾性体シートを並列に組み合わせることで、加振される振動振幅の大きさに依存せずに常時振動エネルギーを吸収することができ、且つ吸収能力を軸降伏型弾塑性履歴ブレース単体より大きくすることができる。
【0035】
鉄骨構造物及び建物のブレースに軸降伏型弾塑性履歴ブレースを使用し、大規模の地震が作用したとき、主体構造は常に弾性状態であるので地震後は元の位置に復帰し、塑性化した軸降伏型弾塑性履歴ブレースのみを交換することで、容易に鉄骨構造物及び建物の継続使用が可能である。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の軸降伏型弾塑性履歴ブレースの平面図を図1の(a)に示し、図1の(a)のX−X線に沿う横断面を図1の(b)に示す。
【図2】本発明の軸降伏型弾塑性履歴ブレースの疲労曲線を図2の(a)に示し、図2の(b)に疲労繰り返し試験における歪ε−応力σ履歴ループの概略図を示す。
【図3】本発明の軸降伏型弾塑性履歴ブレースを取り付けた建物の固有周期Tと最大応答層間変形角radとの関係を図3の(a)に示し、図3の(b)に水平変形と層間変形角を示す。
【図4】本発明の鋼製中心軸力部材の中央部断面積を小さくした軸降伏型弾塑性履歴ブレースの平面図を図4の(a)に示し、図4の(a)のX−X線に沿う横断面を図4の(b)に示し、且つ図4の(a)のY−Y線に沿う横断面を図4の(c)に示す。
【図5】本発明の鋼製中心軸力部材の中央部断面積を小さくした軸降伏型弾塑性履歴ブレースの平面図を図5の(a)に示し、図5の(a)のX−X線に沿う横断面を図5の(b)に示し、且つ図5の(a)のY−Y線に沿う横断面を図5の(c)に示す。
【図6】柱と梁との鉄骨構造物に軸降伏型弾塑性履歴ブレースを設置した制振構造物の模式図を図6の(a)に示し、図6の(a)にYで示す部分の拡大図を図6の(b)に示し、且つ本発明の鋼製中心軸力部材の中央部断面積を小さくした軸降伏型弾塑性履歴ブレースの平面図を図6の(c)に示す。
【図7】本発明の鋼製中心軸力部材の中央部断面積を小さくした軸降伏型弾塑性履歴ブレースの平面図を図7の(a)に示し、図7の(a)のX−X線に沿う横断面を図7の(b)に示し、且つ図7の(a)のY−Y線に沿う横断面を図7の(c)に示す。
【図8】本発明の鋼製中心軸力部材の中央部断面積を小さくした軸降伏型弾塑性履歴ブレースの平面図を図8の(a)に示し、図8の(a)のX−X線に沿う横断面を図8の(b)に示し、且つ図8の(a)のY−Y線に沿う横断面を図8の(c)に示す。
【図9】本発明の軸降伏型弾塑性履歴ブレースの鋼製中心軸力部材の鋼材として使用される鋼の応力歪み曲線を図9に示す。
【図10】座屈拘束用コンクリート部材の鋼部材に鉄筋を使用した軸降伏型弾塑性履歴ブレースの平面図を図10の(a)に示し、図10の(a)のX−X線に沿う横断面を図10の(b)に示す。
【図11】座屈拘束用コンクリート部材の鋼部材に鉄筋を使用した軸降伏型弾塑性履歴ブレースの平面図を図11の(a)に示し、図11の(a)のX−X線に沿う横断面を図11の(b)に示す。
【図12】座屈拘束用コンクリート部材の一端部に蓋を設けた本発明の軸降伏型弾塑性履歴ブレースの平面図を図12の(a)に示し、図12の(a)のX−X線に沿う横断面を図12の(b)に示す。
【図13】座屈拘束用コンクリート部材の一端部に蓋を設けたる本発明の軸降伏型弾塑性履歴ブレースの平面図を図13の(a)に示し、図13の(a)のX−X線に沿う横断面を図13の(b)に示す。
【図14】鋼製中心軸力部材の中央部にズレ止めを設けたる本発明の軸降伏型弾塑性履歴ブレースの平面図を図14の(a)に示し、図14の(a)のX−X線に沿う横断面を図14の(b)に示す。
【図15】鋼製中心軸力部材の中央部にズレ止めを設けたる本発明の軸降伏型弾塑性履歴ブレースの平面図を図15の(a)に示し、図15の(a)のX−X線に沿う横断面を図15の(b)に示す。
【図16】鋼製中心軸力部材の両端部にボルト挿通透孔を設けたる本発明の軸降伏型弾塑性履歴ブレースの平面図を図16の(a)に示し、図16の(a)のX−X線に沿う横断面を図16の(b)に示す。
【図17】鋼製中心軸力部材の両端部にボルト挿通透孔を設けたる本発明の軸降伏型弾塑性履歴ブレースの平面図を図17の(a)に示し、図17の(a)のX−X線に沿う横断面を図17の(b)に示す。
【図18】極微小振動に対応できる本発明の軸降伏型弾塑性履歴ブレースの平面図を図18の(a)に示し、図18の(a)のX−X線に沿う横断面を図18の(b)に示す。
【図19】柱と梁との鉄骨構造物に軸降伏型弾塑性履歴ブレースを設置した制振鉄骨構造物の模式図を図19の(a)に示し、図19の(a)にYで示す部分の拡大図を図19の(b)に示す。
【図20】軸降伏型弾塑性履歴ブレースを非線形解析するための解析モデルを図20の(a)及び図20の(b)に示し、図20の(c)に鋼製中心軸力部材の模式図を示す。
【図21】軸降伏型弾塑性履歴ブレースの軸力−軸方向変位の関係を示し、付着防止皮膜比dt /tが1.4%の場合を図21の(a)に示し、11.1%の場合を図21の(b)に示す。
【図22】摩擦接合面の突起形状を図22の(a)に示し、図22の(b)に突起拡大図を示す。
【図23】摩擦接合面の突起形状を図23の(a)に示し、図23の(b)に突起拡大図を示す。
【符号の説明】
1…軸降伏型弾塑性履歴ブレースまたは座屈拘束筋違い部材
2…座屈拘束用コンクリート部材
3…鋼製中心軸力部材
4…付着防止皮膜
5…コンクリート
6…鋼部材または角鋼管
6−1…鉄筋
6−2…主筋
6−3…フープ筋
7…変形吸収用弾性材
21…鋼製中心軸力部材の長手方向中央部
22…鋼製中心軸力部材の長手方向端部
23…鋼製中心軸力部材の長手方向端部
21−1…鋼製中心軸力部材の長手方向中央部の横断面積
22−1…鋼製中心軸力部材の長手方向端部の横断面積
23−1…鋼製中心軸力部材の長手方向端部の横断面積
24…蓋
25…ズレ止め
26…ボルト挿通用透孔
27…鋼製継手板
29…C形断面内側鋼板
30…粘弾性体シート
31…C形断面外側鋼板
32…C形断面内側鋼板の一方の端部
33…C形断面外側鋼板の端部
34…座屈拘束用コンクリート部材の端部
35…座屈拘束用コンクリート部材の端部
36…柱の鉄骨構造物及び柱
17…梁の鉄骨構造物及び梁
38…制振鉄骨構造物
39…振動の方向及び水平力
dt …鋼製中心軸力部材の板厚方向における付着防止皮膜の膜厚
dw …鋼製中心軸力部材の板幅方向における付着防止皮膜の膜厚
dt(min)/t…推奨される最小膜厚比
t…鋼製中心軸力部材の板厚
w…鋼製中心軸力部材の板幅
Claims (12)
- 鋼部材(6)で補強された座屈拘束用コンクリート部材(2)に鋼製中心軸力部材(3)が挿通され、前記鋼製中心軸力部材(3)と前記座屈拘束用コンクリート(5)との界面に付着防止皮膜(4)が設けられ、振動作用下において弾性変形及び塑性変形の双方の挙動をする軸降伏型弾塑性履歴ブレース(1)において、
前記付着防止皮膜(4)の膜厚方向の割線剛性は、前記付着防止皮膜(4)の圧縮歪0%と圧縮歪50%との2点間においては0.1N/mm2以上であり、圧縮歪50%と圧縮歪75%との2点間においては21000N/mm2以下であり、且つ前記鋼製中心軸力部材(3)の板厚(t)及び板幅(w)のそれぞれの方向における前記付着防止皮膜(4)の膜厚(dt、dw)は、前記鋼製中心軸力部材(3)の板厚(t)及び板幅(w)のそれぞれの0.5%以上10%以下であり、且つ
地震及び風力等の振動エネルギーを吸収し得る前記軸降伏型弾塑性履歴ブレース(1)が振動して塑性変形するとき、局部座屈が前記軸降伏型弾塑性履歴ブレースの荷重−変形関係及び疲労性能に影響を及ぼさないように、前記鋼製中心軸力部材(3)が、前記鋼製中心軸力部材(3)の面外方向の膨張を吸収することができる前記付着防止皮膜(4)を有することを特徴とする軸降伏型弾塑性履歴ブレース。 - 前記鋼製中心軸力部材(3)は、0.2%耐力または降伏点応力が130N/mm2 以下の鋼材であることを特徴とする請求項1記載の軸降伏型弾塑性履歴ブレース。
- 前記鋼製中心軸力部材(3)は、0.2%耐力または降伏点応力が130〜245N/mm2 の鋼材であることを特徴とする請求項1記載の軸降伏型弾塑性履歴ブレース。
- 前記鋼製中心軸力部材(3)の横断面が、全長に対する長さの比率が限定された長手方向中央部(21)において最小断面積であり且つ前記長手方向中央部(21)に連設する長手方向両端部(22、23)において前記長手方向中央部(21)の最小断面積よりも大きい横断面積であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の軸降伏型弾塑性履歴ブレース。
- 前記鋼製中心軸力部材(3)は、鋼製中心軸力部材(3)の横断面が、座屈拘束用コンクリート部材の端部(35)を除く長手方向の一方の端部(22)から長手方向中央部(21)を通り、座屈拘束用コンクリート部材の端部(34)を除く長手方向の他方の端部(23)まで、長手方向中央部(21)と同一横断面積とした軸降伏型弾塑性履歴ブレースの軸剛性に対して1.5倍以上の軸剛性を有することを特徴とする請求項4記載の軸降伏型弾塑性履歴ブレース。
- ボルト挿通用透孔(26)の透孔欠損面積を除いた前記鋼製中心軸力部材(3)の前記長手方向両端部(22、23)の横断面積(22−1、23−1)が、前記鋼製中心軸力部材(3)の長手方向中央部(21)の横断面積(21−1)の1.2倍以上となっていることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の軸降伏型弾塑性履歴ブレース。
- 前記鋼部材(6)は、鉄筋(6−1)であることを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載の軸降伏型弾塑性履歴ブレース。
- 前記座屈拘束用コンクリート部材(2)の少なくとも一方の端部に蓋(24)を固定したことを特徴とする請求項1〜7のいずれか1項に記載の軸降伏型弾塑性履歴ブレース。
- 前記鋼製中心軸力部材(3)の中央にズレ止め(25)を設けたことを特徴とする請求項1〜8のいずれか1項に記載の軸降伏型弾塑性履歴ブレース。
- 両端部(22、23)にボルト挿通用透孔(26)を設けた前記鋼製中心軸力部材(3)を備えた前記軸降伏型弾塑性履歴ブレース(1)と、鋼製継手板(27)との高力ボルトにより締付られる摩擦接合において、
高力ボルトで締付けて摩擦接合する前記鋼製中心軸力部材(3)の両端部(22、23)と前記鋼製継手板(27)との互いに重ね合わさる摩擦面側のいずれか一方の摩擦面側の表面硬さ及び表面粗さを、もう一方の摩擦面側の表面硬さ及び表面粗さより大きくして高力ボルトで締付接合したことを特徴とする請求項1〜9のいずれか1項に記載の軸降伏型弾塑性履歴ブレース。 - 前記軸降伏型弾塑性履歴ブレース(1)の前記座屈拘束用コンクリート部材(2)のそれぞれ側面に、C形断面内側鋼板(29)と、粘弾性体シート(30)と、C形断面外側鋼板(31)とを含む3層状に形成された組が、少なくとも一組以上固着され、
前記C形断面内側鋼板(29)の一方の端部(32)が前記軸降伏型弾塑性履歴ブレース(1)の一方の端部(34)に固着され、
前記座屈拘束用コンクリート部材(2)の一方の端部(34)と反対方向において、前記C形断面外側鋼板(31)の端部(33)が前記軸降伏型弾塑性履歴ブレース(1)のもう一方の端部(35)に固着された、
ことを特徴とする請求項1〜10のいずれか1項に記載の軸降伏型弾塑性履歴ブレース。 - 請求項1〜11記載の軸降伏型弾塑性履歴ブレース(1)の鋼製中心軸力部材(3)の降伏点応力より高い降伏点応力の鋼材で作られた柱と梁との鉄骨構造物(36、37)に、前記軸降伏型弾塑性履歴ブレース(1)を設置した制振鉄骨構造物(38)において、
振動作用下により前記制振鉄骨構造物(38)が振動する際に、前記軸降伏型弾塑性履歴ブレース(1)が弾性及び塑性の双方の挙動をすることにより、前記柱と梁との鉄骨構造物(36、37)が弾性挙動することを特徴とする制振鉄骨構造物。
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