JP3584101B2 - ポリエステルブロック共重合体組成物 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は耐熱性を備え、透明度の高いポリエステルエラストマー組成物に関する。
【0002】
【従来の技術】
ポリエステルエラストマーは耐熱性、耐薬品性の熱可塑性のエラストマーとして、広く使用されていることはよく知られている。これらの中のソフトセグメントとして、ポリテトラメチレングリコールを用いたものは、耐熱性、耐薬品性などがまだ不十分な場合がある。この対応策として、本発明者らは先に柔軟なポリエステルをソフトセグメントとする耐熱性や耐薬品性に優れるポリエステルブロック共重合体を提案した(特開平4―153216)。特にソフトセグメントとして、テレフタル酸とトリエチレングリコールなどのエーテルグリコールとのポリエステルを用いたものは、結晶化速度も高く、耐熱性、耐薬品性も良いなど好ましいポリエステルブロック共重合体である。
【0003】
このテレフタル酸とトリエチレングリコールなどからなるポリエステルを用いたポリエステルブロック共重合体は、溶融状態で透明に近い状態を示す。しかしこのポリマーを急冷して成形しても、結晶化が速く、不透明な成型品しか得られない。
【0004】
一方、用途によっては耐熱性が高くて透明、柔軟な成型物が、例えば後の光や絵を成型物を通して見る必要のある場合に求められる。このような耐熱、柔軟性に加えて透明性を備え、さらに柔軟性をコントロールすることのできる組成物が求められていた。
【0005】
【発明の課題】
本発明の課題は、透明度の高い成形物とすることのできるポリエステルエラストマー組成物を得ることであり、更に、組成物の組成比を変えることにより、柔軟性の調整を容易に行うことのできるポリエステルエラストマー組成物を得ることにある。
【0006】
【課題を解決する方法】
本発明者らは、上記の如き優れた特性を備えたポリエステルエラストマー組成物を見いだすべく検討を重ねた結果、特定のポリエステルブロック共重合体はポリブチレンテレフタレートと相溶性がよく、溶融時は殆ど透明になること、更にこれにカルボン酸ナトリウム等を添加すると成型物が透明になることを見いだし本発明に至ったものである。
【0007】
即ち本発明は、(A)テレフタル酸及びテトラメチレングリコールがジカルボン酸成分当たり60モル%以上のポリブチレンテレフタレートを主たる成分とするハードセグメント20〜70重量%と、芳香族ジカルボン酸とHO(CHCHO)H(i=2〜5)の長鎖ジオールがジカルボン酸成分当たり60モル%以上であるポリエステルからなるソフトセグメント80〜30重量%とのポリエステルブロック共重合体100部、(B)ポリブチレンテレフタレート0〜200部、及び(C)炭素数7〜40の有機カルボン酸ナトリウム塩、有機燐酸部分エステルのナトリウム塩から選ばれた少なくとも1種0.5〜10重量部からなるポリエステルブロック共重合体組成物である。
【0008】
本発明に用いるポリエステルブロック共重合体は、そのハードセグメントはポリブチレンテレフタレートを主たる構成成分とするが、他にテレフタル酸以外のベンゼン又はナフタレン環を含む芳香族ジカルボン酸、炭素数4〜12の脂肪族ジカルボン酸、テトラメチレングリコール以外の炭素数2〜12の脂肪族ジオール、シクロヘキサンジメタノールなどの脂環族ジオール等のジオールが共重合されていてもよく、この共重合割合は、全ジカルボン酸当たり40モル%未満、好ましくは30モル%未満である。この共重合割合は、少ないほど融点も高く好ましいが、柔軟性を増すために共重合することも行われる。しかし共重合割合が多くなると結晶化しにくくなり、成形性などが悪くなるため、あまり多くても好ましくない。この共重合割合は、本発明のブロック共重合体では特定しにくいが、結晶の融点が、150℃以上好ましくは160℃以上となる共重合割合が好ましい。
【0009】
一方、ソフトセグメントとしては、テレフタル酸とHO(CHCHO)H(i=2〜5)の長鎖ジオールを主たる構成成分とするポリエステルを用いるが、テレフタル酸以外にテレフタル酸以外の芳香族ジカルボン酸、脂肪族又は脂環族ジカルボン酸や、短鎖ジオールを共重合したものであってもよい。この共重合割合はジカルボン酸成分に対し40モル%未満、好ましくは30モル%未満である。
【0010】
ここで使用されうる共重合可能な芳香族ジカルボン酸、脂肪族ジカルボン酸や脂環族ジカルボン酸としては、例えばイソフタル酸、フタル酸、ナフタレンジカルボン酸類、炭素数4〜12の直鎖状のジカルボン酸、特に炭素数8〜12の直鎖状ジカルボン酸、シクロヘキサンジカルボン酸等があげられ、共重合可能な短鎖ジオールとしては、炭素数2〜12の直鎖状脂肪族ジオール等が例示される。また、ポリオキシアルキレングリコールとしては、分子量1200以下、好ましくは1000以下の比較的低分子量のものが好ましく用いられる。
【0011】
本発明に用いられるポリエステルブロック共重合体において、ハードセグメントとソフトセグメントの量比は、20〜70対80〜30、好ましくは25〜50対75〜50である。ハードセグメントがこれより多い場合、得られるポリエステルブロック共重合体が硬くなってカールなどの問題が出るので好ましくない。ソフトセグメントが多い場合は、得られるポリエステルブロック共重合体の結晶性が少なくなり、ポリエステルエラストマーとして使用困難である。
【0012】
ポリエステルブロック共重合体を構成するハードセグメント及びソフトセグメントのセグメント長は、分子量で表現して、およそ500〜7000が好ましく、800〜5000が更に好ましい。このセグメント長は直接測定するのは困難であるが、例えばハードセグメント、ソフトセグメントそれぞれ構成する成分の全体の量比と、ハードセグメントを構成する成分からなるポリエステルの融点及び得られたポリエステルブロック共重合体の融点とから、フローリーの融点降下式を用いて推定することができる。
【0013】
本発明のポリエステルブロック共重合体は、その融点T(℃)が下記式(I)及び(II)を満たすことが好ましい。
【0014】
【数1】
−5>T>T−60 (I)
T>T′+10 (II)
[但しTはハードセグメントを構成する成分からなるポリマーの融点(℃)、T′はハードセグメント及びソフトセグメントを構成する全成分からなるランダム共重合体の融点(℃)を示す]
【0015】
本発明に用いられるポリエステルブロック共重合体の製造法は、ハードセグメントを構成する成分からなるポリエステル及びソフトセグメントを構成する成分からなるポリエステルをそれぞれ製造し、続いて、溶融混合し、融点がハードセグメントを構成するポリエステルよりも50〜60℃更に好ましくは2〜40℃低くなるように共重合する方法が好ましい。
【0016】
この共重合体の融点は、混合温度と時間によって変化するので、目的の融点を示す状態になった時点で触媒失活剤を添加して触媒を失活させて製造することが好ましい。このような目的に用いる触媒失活剤としてはリンオキシ酸が好ましい。
【0017】
本発明に用いられるポリエステルブロック共重合体は、35℃オルトクロルフェノール中で測定した固有粘度が0.6以上、好ましくは0.8〜1.5のものである。これより固有粘度が低い場合は、強度が低くなるため好ましくないからである。
【0018】
一方、本発明に使用されるブチレンテレフタレートとは、テレフタル酸とテトラメチレングリコールとを主たる構成成分とするポリエステルであるが、30モル%未満の他のジカルボン酸やグリコールを含有してもよい。
【0019】
かかるポリテトラメチレンテレフタレートは、その固有粘度(測定法はポリエステルブロック共重合体と同様)が0.6以上、更に好ましくは0.7〜1.5のものが好ましく用いられる。
【0020】
この組成物に用いる(C)成分である有機カルボン酸ナトリウムとしては、炭素数10〜40の有機カルボン酸ナトリウムが用いられるが、特に脂肪族のカルボン酸が好ましく、就中脂肪族モノカルボン酸ナトリウムが好ましい。モンタン酸ナトリウム、パルミチン酸ナトリウム、ステアリン酸ナトリウムが特に好ましい。
【0021】
(C)成分としては、有機燐酸エステルのナトリウム塩も好ましく用いることができる。有機燐酸エステルのナトリウム塩としては、下記の構造式で表わされる化合物が特に好ましい。
【0022】
【化1】
Figure 0003584101
【0023】
(C)成分の使用量は、ある程度までは多い方が透明性が高くなるが、あまり多すぎると黄色に着色したりするで好ましくない。また少ないと、透明性が不足するので好ましくない。
【0024】
本発明の組成物は、(A)成分、(B)成分、(C)成分の量比が重量比で(A):(B):(C)=100:(0〜200):(0.5〜10)であるが、好ましくは(A):(B):(C)=100:(5〜100):(0.5〜10)であり、更に好ましくは(A):(B):(C)=100:(5〜100):(1〜5)である。
【0025】
本発明の組成物は、通常の溶融混合方法で製造することができ、例えばスクリュウ方式の連続押し出し機が使用されうる。
【0026】
かくして得られる組成物は、溶融成形されるが、この際、冷却媒体の温度をできるだけ低温にすることが好ましい。例えば、射出成形の場合、金型温度を50℃以下、好ましくは0〜40℃で成形するのがよい。又、冷却ローラーを用いたシートの成形に於いては、冷却ローラーの温度を50℃以下、好ましくは0〜40℃とすること、押出成形で、水などの冷却媒体を用いる場合は、この媒体温度を前記の如くする事が好ましい。
【0027】
さらに、冷却速度が遅くなると結晶粒径が大きくなるので、成型品の厚みを透明にしたい部分では、1mm以下程度にすることが好ましい。もっとも、これより厚くても、(C)成分を入れない場合に比べれば透明性は上がるので、半透明でよい場合は必ずしもこの厚みにこだわることはない。
【0028】
本発明に用いるポリエステルブロック共重合体組成物は、ポリエステルブロック共重合体組成物以外に他のポリマー、安定剤、顔料、染料、難燃剤、核剤、滑剤その他添加物を含有していてもよい。これらの添加物やポリマーの量は、本発明の組成物100重量部に対し、0.01〜10重量部である。
【0029】
【実施例】
実施例により本発明を詳述する。なお、実施例中「部」とは「重量部」を示す。
【0030】
ヘーズ測定は反射透過率計(HR―100;村上色彩技術研究所製)を用いて測定した。
【0031】
熱処理は120℃で1日空気中に保持することにより行った。
【0032】
[参考例1]
テレフタル酸ジメチル194部、トリエチレングリコール160部をジブチル錫ジアセテート触媒でエステル交換反応後、減圧下に重縮合して、固有粘度0.76の水飴状のポリエステル(ア)を得た。このポリエステルに、別途同様に重縮合して得た固有粘度0.98のポリブチレンテレフタレート(イ)のチップを乾燥して、107部添加し、250℃で更に75分反応させたのち、フェニルフォスフォン酸を0.1部添加して、反応を停止させた。このポリエステルブロック共重合体を取り出しチップ化して原料とした。このチップの融点は176℃で、固有粘度は0.83であった。
【0033】
[参考例2]
テレフタル酸ジメチル180部、セバシン酸ジメチル20部、テトラエチレングリコール140部及びジエチレングリコール30部をジブチル錫ジアセテート触媒でエステル交換反応後、減圧下に重縮合して、固有粘度1.06のポリエステルを得た。このポリエステルと参考例1と同じポリブチレンテレフタレートのチップ(107部)を用いて参考例1と同様にブロック化してポリエステルブロック共重合体を得、チップとした。
【0034】
[実施例1]
参考例1のポリエステルブロック共重合体80部とポリテトラメチレンテレフタレート(固有粘度1.02)及びパルミチン酸ナトリウム2部を250℃で押出機により溶融押出した。押出されたポリエステルブロック共重合体をチップ化し、130℃で乾燥した後、金型温度20℃、シリンダー温度240℃で射出成形し、厚さ1mmの平板を得た。この平板はやや白濁はしているが、向こう側が見える程度に透明であり、ヘーズメーターで測定したヘーズは45%であった。
【0035】
[比較例1]
実施例1に於いて、パルミチン酸ナトリウムを用いずに成形したところ、白濁した平板となり、ヘーズは85%であった。
【0036】
[実施例2〜4、比較例2]
実施例1に於いて、参考例1のポリエステルブロック共重合体に代え、参考例2または3のポリエステルブロック共重合体を用いた場合、ポリテトラメチレンテレフタレートの量を変更した場合について結果を表1に示した。
【0037】
【表1】
Figure 0003584101
【0038】
[実施例5〜8]
実施例1に於いて、パルミチン酸ナトリウムに代えて種々のナトリウム塩を用いた結果を表2に示す。
【0039】
【表2】
Figure 0003584101
【0040】
実施例1〜8をとおして、本発明の組成物は透明度が高く、透明度の耐熱性が高いことがわかる。成形冷却時間も短時間で足り、成形性に優れたエラストマーであることがわかる。
【0041】
【発明の効果】
本発明を実施することにより、透明性の高い成型物で、耐熱性も高く、成形性の良いポリエステルエラストマー組成物を得ることができる。

Claims (1)

  1. (A)テレフタル酸及びテトラメチレングリコールがジカルボン酸成分当たり60モル%以上のポリブチレンテレフタレートを主たる成分とするハードセグメント20〜70重量%と、芳香族ジカルボン酸とHO(CHCHO)H(i=2〜5)の長鎖ジオールがジカルボン酸成分当たり60モル%以上であるポリエステルからなるソフトセグメント80〜30重量%とのポリエステルブロック共重合体100部、(B)ポリブチレンテレフタレート0〜200部、及び(C)炭素数7〜40の有機カルボン酸ナトリウム塩、有機燐酸部分エステルのナトリウム塩から選ばれた少なくとも1種0.5〜10重量部からなるポリエステルブロック共重合体組成物。
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