JP3582362B2 - 練り製品及びその風味改良法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術】
本発明は、練り製品に湯葉を練り込み、風味を改良させる為の製造法及び練り製品に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
食肉製品、魚肉練り製品でコストダウンを主要な目的に使用する、豚ペースト、チキンペースト、魚肉の落し身などは、安価だが独特の獣臭、魚臭があり、使用量が制限される。また、魚肉すり身でもいわしすり身等は、独特の風味がある。また、植物性たん白も機能性材として物性改良の他に、増量材としてコストダウンの目的で、食肉製品、魚肉練り製品に使用されるが、無味無臭でなく、利用加工で風味改良の余地が有り、使用量が制限されている。これらの強い(悪い)風味を低減する方法として、これらの原材料の使用量を少なくしたり、調味料等で味付けを濃くしたり、風味の強い他の原材料を使用したりしている。しかし、これらの方法だと商品の味が濃くなり、多くの量を食べられない等の問題がある。
【0003】
湯葉に関する特許公報等は数多く、公開されている。従来、湯葉またはその類似物の製造方法、製造装置は数多く知られているが、湯葉を混合することによる風味改良については知られていない。
【0004】
主要な先願として特願平08−341201号は、練り惣菜の製造法についてであり、練り惣菜に湯葉を練り込むことによる、滑らかでソフト感の良い食感とテリを付与する製造法である。
また、特公昭48−35460号公報では膜状たん白質から積層食品を製造する方法であり、膜状たん白を食塩水浸漬、脱水を2度行い、チップ状としたものを主原料(例えば68%)に調味料(例えば4%)、野菜(例えば15%)、魚畜肉(例えば4%)を加えた膜状たん白を原料とした積層食品の製造方法である。一方、特開平4−99465号公報では粉末湯葉を含む食品材料であり、湯葉の副産物の経済性向上と用途(粉末湯葉を50%以上含むせんぺい、クッキー、スープなど)に関するものである。
しかし、これらの従来技術は本発明の湯葉による風味改良とは異なるものである。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
食肉製品、魚肉練り製品で原材料のコストダウンを行う方法として、安価な豚ペースト、チキンペースト、魚肉の落し身などを配合する方法、または植物性たん白の使用がある。しかし、これらの原材料は、安価だが独特の獣臭、魚臭、植物性たん白としての臭があり、使用量が制限されてしまう。これらの原材料を高配合で使用して、強い(悪い)風味を低減出来れば、より良い風味の商品を安価で消費者に提供できる。また、魚肉すり身でもいわしすり身等は、独特の風味があるが、この強い(悪い)風味を低減出来れば、健康イメージの高いいわし製品を食べ易い風味で消費者に提供できる。
【0006】
【課題を解決するための手段】
この発明は、湯葉を練り込み風味を改良することを特徴とする練り製品の製造法である。
更に詳しくは、豚ペースト、チキンペースト、魚肉落し身、いわしすり身、植物性たん白等の風味の強い(悪い)原材料を含む練り製品の生地に湯葉を練り込むことを特徴とする練り製品の製造法である。湯葉を練り上がり生地中に0.5〜50重量%(以下、同様)、好ましくは3〜15%を含み、それにより原材料由来の強い風味を低減させるものである。湯葉の練り込みで、これらの原材料の特臭味が低減・消失するという意外な発明に至ったものである。
【0007】
【発明の実施の形態】
本発明の用語を定義すると、湯葉(ゆば)は日本の伝統的な大豆加工食品であり、豆乳を静かに加熱すると(約80℃)液面に皮膜が生成し、この皮膜をすくいあげたものが生ゆば、巻いたものが巻きゆば、乾燥したものが乾燥ゆばである。本発明で用いる湯葉は、上記の何れの湯葉であってもよく、更にそれらの細片、破砕片などであってもよい。
練り製品とは、食肉、魚肉、或いは植物性たん白のたん白質の物性を巧みに利用した加工食品のことである。
食肉製品とは、畜肉および家禽肉を原料にして調製される加工食品のことを言う。ハム類、ソーセージ、ベーコン類、ハンバーガーパティ、ハンバーグ、ミートボールが含まれる。本願では湯葉を練り込むことを特長としている為、ハム類、ベーコン類等、肉塊にピックル液をインジェクションする製品は含まない。ただし、混合プレスハム等、湯葉が練り込めるものは当然含まれる。
魚肉練り製品とは、水産練り製品ともいうが、魚肉に食塩(2〜3%)を加えてすりつぶし加熱凝固させたものである。かまぼこ、ちくわ、魚肉ソーセージ、フィツシュハンバーグ、はんぺん、だて巻き等がある。これら以外にも、野菜などをすり身でつないだ練り製品も含まれる。
豚ペーストとは、主に顔部の皮、肉をすり身状に擂(す)ったものである。
チキンペーストとは、むね肉、もも肉等の主要な部位を取り除いた後の、胴がらなどの髄(ずい)などをすり身状に擂ったものである。
魚肉の落し身とは原料魚を採肉機を通して得られる魚肉のことで、骨、皮が除かれている。
いわしすり身とは、いわし落し身を水洗して水溶性たん白質、脂質などの大部分を除いたものである。
植物性たん白とは、日本農林規格に定められており、大豆等の採油用の種実若しくはその脱脂物又は小麦等の穀類の粉末を加工して、植物たん白質含有率を高めたもので、粉末状植物性たん白、粒状植物性たん白、繊維状植物性たん白、ペースト状植物性たん白、調味植物性たん白などがある。
【0008】
豚ペースト、チキンペースト、魚肉落し身、いわしすり身、植物性たん白を単独、或いは複数種含む練り製品に湯葉を練り込むことにより、これらの原材料由来の強い(悪い)風味を低減できる。湯葉の練り込みによる、これらの風味の低減効果の発生メカニズムは現在不明であるがマスキングや抱合などによる効果もあろうと推測される。その解明と利用は今後の課題となるものである。
湯葉の練り込み方法は、サイレントカッターでつなぎを調製する最後に湯葉を投入し、1〜10mmの大きさにカットするか、予め1〜10mmにカットした湯葉をニーダー中で混合する方法とある。この際の湯葉の使用量は、生地中に水戻しした湯葉(その水分は55〜80%程度。以下、同様)として0.5〜50%、好ましくは3〜15%の使用が効果的である。0.5%未満の使用量では風味改良の効果が認められず、50%越えるの使用量では風味改良の効果は充分であるが混合物である生地が柔らかくなり、成型が困難になり、現実的ではない。豚ペースト、チキンペースト、魚肉落し身、いわしすり身、植物性たん白などの使用量はこれらの内、いずれか一種類を単独で使用する場合、最終生地に対して5〜50%、好ましくは10〜30%の使用量が効果的である。又、上記の安価原料の二種類以上の複数種を使用する場合は、合わせて5〜70%、好ましくは10〜50%の使用が効果的である。因みに、例示として後で述べる実施例1、同2などは三種類の使用であり、実施例3は二種類の使用である。
【0009】
【実施例】
以下、実施例により本発明の実施様態を具体的に説明する。ただし、本発明はこれらの実施例にその技術範囲が限定されるものではない。
【0010】
実施例1及び比較例1
実施例1及び比較例1では、チキンハンバーグについて説明する。鶏むね肉10重量部( 以下、部と記す) 、チキンペースト30部、豚脂9部、粉末状大豆たん白3部を加え混合した後に食塩0.8部を加えミキサーで粘りがでるまで塩ずりした。更に、湯葉7部、水戻しした粒状大豆たん白8部、調味料2.2部を加え混合し、玉ねぎ20部、パン粉6部、でん粉4部を加え混合し、生地を得た。この生地を80gに成型し、230℃のオーブンで6分間焼成してチキンハンバーグを調製した。比較例1では、実施例1の配合で湯葉7部に代えて水戻しした粒状大豆たん白を用いて生地を得た。すなわち、比較例1では水戻しした粒状大豆たん白を15部配合した。この生地を、実施例1と同様に成型、焼成してチキンハンバーグを調製した。使用した湯葉は半乾燥湯葉で水戻し後使用した。水戻し後の湯葉の水分は約60%、たん白質20%、脂質15%、厚み約0.5mmであった(また、湯葉を製造する際に生じるくず湯葉も使用可能である)。粉末状大豆たん白は不二製油株式会社製の「フジプロ−E 」、粒状大豆たん白は不二製油株式会社製「ベジテックス7100」で1.5倍の水で戻して使用した。
【0011】
【表1】
配合
【0012】
官能評価
風味評価は、熟練したパネラー9名により5点評価法(5点良い、4点やや良い、3点普通、2点やや悪い、1点悪い)で行い、その平均点を採った結果を表2に示した。以下の表4、表6の風味評価も同様である。
【表2】
実施例1のチキンハンバーグは、比較例1のそれと比べ、明らかに鶏臭さが解消された。また、食感も実施例1の方が、比較例1より良好であった。
【0013】
実施例2及び比較例2
次に、いわしハンバーグの実施例について説明する。実施例2ではサイレントカッターで粉末状大豆たん白3部、大豆油3部、水12部をカッティングしエマルジョンを調製後、いわし落し身32部投入し軽く混合後、食塩0.8部を加え塩ずりしてつなぎを得た。ミキサーに水戻しした湯葉7部と水戻しした粒状大豆たん白8部、調味料2.2部を加え混合し、更に上記のつなぎ50.8部、豚脂7 部、玉ねぎ15部、パン粉6部、でん粉4部を加え混合し、生地を得た。この生地を80gに成型し、230℃のオーブンで6分間焼成していわしハンバーグを調製した。比較例2では、実施例2の配合で湯葉7部に代えて実施例1と同様に水戻しした粒状大豆たん白を用いて生地を得た。すなわち、比較例2では水戻しした粒状大豆たん白を15部配合した。この生地を、実施例2と同様に成型、焼成していわしハンバーグを調製した。
【0014】
【表3】
配合
【0015】
官能評価
【表4】
比較例2のいわしハンバーグは、いわしの臭いが強く食べ難かったが、実施例2のそれは明らかにいわし臭さが解消され、いわし本来のおいしさがあった。また、食感も実施例2の方が、比較例2より良好であった。
【0016】
実施例3及び比較例3
次に、主に植物性たん白で作った植物性ハンバーグの実施例について説明する。実施例3ではサイレントカッターで粉末状大豆たん白7部、大豆油7部、水27部をカッティングしエマルジョンを調製した。ミキサーに水戻しした湯葉10部と水戻しした粒状大豆たん白20部、調味料3部を加え混合し、更に上記のつなぎ41部、高融点の植物油脂「メラノメロー300」(不二製油株式会社製。融点33°C)6部、玉ねぎ20部、パン粉6部、でん粉4部を加え混合し生地を得た。この生地を80gに成型し、230℃のオーブンで6分間焼成して植物性ハンバーグを調製した。比較例3では、実施例3の配合で湯葉10部を除いた配合で生地を得た。
【0017】
【表5】
配合
【0018】
評価
【表6】
比較例3の植物性ハンバーグは大豆臭があったが、実施例3のそれは明らかに大豆臭さが解消されていた。また、食感も実施例3の方が比較例3より良好であった。
【0019】
【発明の効果】
本発明により、安価な原材料を多く用いた練り製品でそれらの原材料由来の風味の改良を、湯葉を練り込むことにより達成出来た。
これにより、例えば豚ペースト、チキンペースト、魚肉の落とし身、いわしすり身、植物性たん白、などの資源有効利用や食品の低廉化などに貢献出来る。
Claims (3)
- 湯葉を練り込み風味を改良することを特徴とする魚肉練り製品の製造法。
- 魚肉練り製品がフィッシュハンバーグまたは魚肉ソーセージである請求項1に記載の製造法。
- 湯葉を練り込風味を改良した魚肉練り製品。
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