JP3581121B2 - 水産物市場の品質保持装置とその方法及び該水産物市場のセリ市場システム - Google Patents

Description

【０００１】
【発明の属する技術分野】
本発明は、水産物市場の品質保持装置とその方法及び該水産物市場のセリ市場システムに関し、特に売買システムを別に持つ水産物セリ市場における品質保持方法とその装置に関する。
【０００２】
【従来の技術】
漁獲物を含む水産物の流通システムにおいては、商品と人が市場に集まり、買参人の経験と五官により品質を把握して売買するというような従来の流通システムと、仮想空間上の市場で売買が行われ、低温物流システムと売買システムが分離した中で行なうようにした、情報技術利用の流通システムがある。
例えば船上で売買システムが完了し、水揚げ時には輸送先が決まっているような流通システムの場合には、売買のために一時保管する必要はないので問題はない。しかしながら、上記いずれのシステムにおいても、売買段階、市場での一時保管については従来より問題点が指摘され、改善策が提案されている。
【０００３】
特開２０００−１４３１５公報には、魚市場における、土間セリに起因する漁獲物の衛生上および品質上の問題点の解決を目的として、衛生的保管を可能にした漁獲物の陳列保管装置および陳列保管方法を開示している。
すなわち、表面に漁獲物を陳列可能な冷却板の内部にブライン通路が設けられた冷却部と、冷却部の底部に取り付けられた断熱部とで構成され、ブライン通路に食品用ブラインを供給して冷却板を冷却するようにした陳列保管装置を魚市場に設置し、陳列保管装置上で漁獲物の流通工程を行なうようにしている。
また、囲壁で上記陳列保管装置の外周部を適当な高さで取り囲み、冷気が外周部から拡散するのを防ぎ、漁獲物の温度を均一に維持する。則ち、漁獲物の陳列条件や陳列状態に合わせて、囲壁の高さと挿入空気量を適宜調整することにより、漁獲物全体の温度を均一かつ安定的に維持するとしている。
この提案は、温度管理の点では申し分ないのであるが、冷却板が固定化しているため、冷却板上への漁獲物の移し替えの手間がかかる。また囲壁の構造については具体的な言及はない。
さらに、こうした漁獲物に対する陳列用空間である低温空域の湿度管理を行なう管理手段がないため、漁獲物表面よりの水分の移動、乾燥による品質劣化が問題になる。
【０００４】
特開２０００−２０１６１８公報には、鮪のセリに使用する魚用スノコに関し、衛生的、耐久性並びに軽量化を図るとともに、手かぎによる取り扱い性を高め、かつ、鮪等をスノコに載置したり降ろしたりする場合に魚皮や魚体を損傷しないことをその目的として、魚用スノコの改良を提案している。すなわち、スノコ板及び桟材をアルミニウム製にするとともにスノコ端部のスノコ板の端縁の全長にわたって魚皮を損傷させないための傾斜面取りを形成している。
魚市場では、この公報に記載されているように、手かぎ若しくはスノコのような、比較的簡素な設備が用いられている。
この背景には、魚市場特有の事情がある。すなわち、魚市場は、本来の機能の他に、公共的な非常時対応機能がある。市場は岸壁に隣接しているため、船舶を使用した災害救援、大衆の緊急避難等の使用が想定されている。そのため、使用時間以外は市場内に障害物となる物の設置はできず、使用設備は迅速な設置、撤収が求められる。手間がかかるものは、受け入れられず、手かぎ、スノコが重宝されているのはこのような事情からと推察される。
なお、この場合に冷凍マグロを取り扱う際、周囲の空間よりの漁獲物表面への水分の凝縮や着霜が発生するが、この水の相変化による凝縮熱、凝固熱は解凍作用を起し、魚皮の損傷、延いては品質劣化の問題を形成している。
則ち、漁獲物の周囲空間の湿度管理も品質保持上重要な因子を形成している。
【０００５】
最近は情報技術の発達により、物流と売買のシステムがますます分離して、商品を近くにおいて見定めながら、互いの経験と信頼関係で売買するといったシステムに代わり、商品のデータ、漁獲物でいえば、産地、船名、貯蔵温度履歴、鮮度分析等の客観的なデータに基づく売買システムが取り入れられてきている。
北海道市場での売買であっても、売買の対象物は沖縄市場に水揚げされている場合も普通のこととしてありうる。従って、温度管理が必要なシステムでは、ますます厳格な温度管理とそのデータの開示が必要になってきている。
【０００６】
ところで、食品品質劣化の原因で最も問題になるのは微生物による品質変化で、これに関与する微生物には細菌、カビ、酵母などがある。
その中でもわが国における食中毒菌として最も問題とされ重視されているものの中に腸炎ビブリオがある。この細菌は低温には比較的弱く５℃以下では発育が抑制され、１０℃以下では増殖できない。しかし、腸炎ビブリオは海水中に生息し、魚介類の体表面や鰓等に付着している。
【０００７】
上記食品品質劣化の対策樹立には、危害分析（ＨＡ）と重要管理点（ＣＣＰ）を主体とした衛生管理システムがＨＡＣＣＰ方式として導入されているが、前記ＨＡＣＣＰ方式から見ても、水産漁獲物に対する品質劣化防止の第一歩は、商取引の第１の関門であるセリ市における品質保持で、当該セリ対象となる漁獲物に対し、前記腸炎ビブリオを含む有害細菌増殖防止を主体とした好適な衛生管理方法の樹立と、品質保持装置が強く望まれている。
【０００８】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、上記問題点に鑑みなされたもので、市場の特性を理解した上で、売買システムとの緊密な連携により低温流通システムを形成する高い温度管理と湿度管理を備えた保管機能を持つ低温保管部を有する水産市場を提供するとともに、水産魚介類の商取引の手に渡るセリ市における水産物市場の品質保持装置とその方法及び該水産物市場のセリ市場システムの提供を目的とするものである。
【０００９】
【課題を解決するための手段】
そこで、本発明は、売買対象若しくは出荷前の水産物を低温保管する低温ゾーン形成装置を具えた水産物市場において、
前記低温ゾーン形成装置が、市場床面周囲を、折り畳み又は収納可能な囲壁により間仕切りされ、上方空間が開放された独立空間であって、
前記囲壁内壁側下部に冷風吹き出し部を設け、該吹き出し部より前記囲壁内に保管した水産物に対し冷風を吹き込むように構成している。
そして、前記低温ゾーン形成装置は、冷却管を埋設してなる市場床面周囲を、折り畳み又は収納可能な囲壁により間仕切りして、上方空間が開放された独立空間を形成してもよく、又前記独立空間の床面に前記水産物を載置する冷却パネルが存在し、該冷却パネルは載置面の表面温度を漁獲物が凍らないように０℃以上の凍結点に近い温度に維持させるようにしてもよく、更に前記囲壁の内壁下部に独立空間側に複数の冷風吹き出し口を設けた冷風ダクトが配設されているのもよく、又前記囲壁の下部に市場床面と密着するように構成したアンカー部を具えてなるのもよい。
又前記囲壁の所定箇所に独立空間にフォークリフトや人が出入りするための開口が設けられ、該開口がエアーカーテンにより形成された冷気遮断開口であるのもよく、又、前記折り畳み又は収納可能な囲壁は、エアフェンス等の可撓性気密部材、断熱パネル若しくは断熱効果のあるカーテンのいずれかで形成され、更に冷却器と送風機よりなる冷風発生装置が囲壁外に配置され、前記囲壁下部内側に配したダクトを介して前記冷風発生装置よりの冷風を独立空間内に送給させるのがよい。
【００１０】
そしてこのような水産市場の有効な利用システムの発明は、例えば売買システムを別に 持つ水産物市場システムにおいて、
前記該低温ゾーン形成装置の独立空間内に、温湿度センサとを設け、該センサが検出したデータを前記売買システム側に送信する制御手段を有することを特徴とする。
【００１１】
上記したように、本発明は、生産から消費までの物資の流れを、それぞれの流れの中で温度管理をして売買システムを別に持つ水産物市場システムである。
例えば水揚げ、セリ終了後の出荷前の漁獲物に対しては、配送先が決まるまで低温ゾーン形成装置による囲壁内で温湿度センサによる温湿度管理のもとに一時保管される。そして、展示されている漁獲物等が、適切な低温下で温湿度管理されている保管の状況を、遠隔地の買い手に送信制御手段により証明する機能を持たせてあり、そして、囲壁に温度表示をしてそれを映像で配信するようにしても良い。買い手が同一場所の場合は温度表示をするだけの場合も含まれる。
【００１２】
また、前記該低温ゾーン形成装置の独立空間内には、保管対象物の周囲に、冷却器と湿度管理手段と気流形成器とによる湿度管理された低温空域を形成する手段を有する構成が好ましい。
【００１３】
則ち、本発明の水産物市場システムは、前記保管の状況を示すデータを遠隔地の買い手に送信する手段を持つとともに、保管機能に温度管理以外に湿度管理機能を持たせたもので、
温度管理手段を形成する冷却器と湿度管理手段を形成する後記する加減湿装置により所定の低温と所定相対湿度を持つ冷気を得るようにし、さらに保管対象物の周囲に湿度管理した低温空域を送風機ないし撹拌機より形成させたものである。
そして、保管対象物を低温に保管するとともに、保管対象物の表面と低温空域との間に相変換による水分の授受を防止するようにしてある。
上記水分授受の防止により非凍結食品に対しては水分の外気への移動と乾燥を防止出来、また凍結マグロ等の凍結漁獲類に対しては凍結表面への水分の凝固、着霜の防止延いて解凍を防止して、品質の保持を図るようにしてある。
【００１４】
そして、前記湿度管理手段は、凍結保管対象物に対して、相変化に起因する結露、着霜を防止する減湿器による構成が好ましく、
または、非凍結生鮮食料品よりなる保管対象物に対して、露点温度を前記対象物表面温度以上とさせ、該表面との間の水分授受を防止する加湿器より構成するのが好ましい。
【００１５】
則ち、保管対象物がマグロ等の凍結漁獲の場合は、減湿作用を伴う湿度管理により保管対象物を取り巻く低温空域の相対湿度を下げ水分の移動を防止し、保管対象物が非凍結生鮮食料品の場合は、該食品を取り巻く低温空域の温度、湿度での露点が前記食品の表面温度より低ければ水分は食品表面から低温空域中へ移動し表面が乾燥して商品価値が損なわれるのを防ぐため、前記露点が保管対象物の表面温度以上に調整させる。
【００１６】
また、前記低温ゾーン形成装置は、冷却器と送風機よりなる冷風発生装置と、伸縮性を有した中空体よりなる保管対象物を囲む囲壁から構成される装置であって、当該囲壁の一端には注排水口と前記冷風発生装置からの冷風を給気する接続口を有し、囲壁内側は略全面にわたって織編布からなる排気口を有する構成が好ましい。
【００１７】
又上記発明は、折り畳まれて収納されている囲壁が給気によって自己展開し、給水されたアンカ−部で床と密着し、囲壁自体がダクトとなって囲壁の外側に設けた冷風発生装置から外側より囲壁の内部を通り囲壁内側に設けた織編布を介して冷気を囲壁内の保管対象物の周囲空間に送出して囲壁内に低温ゾーンを形成させている。
【００１８】
また、前記低温ゾーン形成装置は、冷却器と送風機とよりなる冷風発生装置と、パネル形状の保管対象物を囲む囲壁から構成された装置であって、当該囲壁の内側には冷風発生装置に接続されたクロスダクトが配設される構成が好ましい。
【００１９】
そして、前記冷風発生装置は、加減湿装置を付設する構成が好ましい。
【００２０】
上記冷風発生装置と囲壁よりなる低温ゾーン形成装置においては、囲壁の中に吹き込む冷気の加湿ないし減湿をする加減湿調整装置を冷風発生装置に付設して、囲壁内に吹き込まれた冷風に湿度調整をして、保管対象物に対する温度管理とともに湿度管理も行って、保管対象物の表面との間の水分授受を防止する構造にしている。
【００２１】
また、前記低温ゾーン形成装置は、床面に埋設された冷却器と、該冷却器により形成された冷気を介して保管対象物を囲む囲壁と、囲壁内の冷気を撹拌する撹拌装置とから構成し、囲壁に囲み込まれた冷気を撹拌して均一な低温空域を形成する撹拌装置とにより温度管理可能の構成を設けている。
【００２２】
そして、前記囲壁内独立空間には、加減湿装置を付設し、凍結保管対象物に対しては、減湿よりなる湿度管理により、相変化に起因する結露、着霜を防止する構成とするとともに、非凍結生鮮食料品よりなる保管対象物に対しては、加湿して露点温度を前記対象物表面温度以上とさせ、該表面との間の水分授受を防止する構成が好ましい。
【００２３】
そして、前記床面の埋設した冷却部と、囲壁と、囲壁内に設けた撹拌装置よりなる低温ゾーン形成装置においては、囲壁内に加減湿装置を設け、前記温度管理に湿度管理を加え、高度の保管機能を持たせ、保管対象物が非凍結生鮮食品の場合には加湿させ露点温度を表面温度以上の値とし、保管対象物が凍結食品の場合は減湿させ、保管対象物の表面との間の水分の授受を抑える構成にしてある。
【００２４】
次に、本発明の水産物市場における品質保持方法は、
前記低温ゾーン形成装置が、市場床面周囲を、折り畳み又は収納可能な囲壁により間仕切りされ、上方空間が開放された独立空間であって、
前記囲壁内壁側下部に設けた冷風吹き出し部より前記囲壁内に保管した水産物に対し冷風を吹き込み、該冷風により前記低温保管部の保管対象物の周囲に、氷温近傍の温度と該温度以上の露点を持つ湿度管理された低温空域を形成することを特徴とし、具体的には当該漁獲物を表面温度を０℃以上の凍結点に近い温度に保持した載置面に載置し、載置した漁獲物を囲壁で囲み、該囲壁内の載置した漁獲物に対し約３℃以下の冷風を吹き込み、囲壁内の空域温度を約１０℃以下の低温に保持させるようにしている。
【００２５】
上記発明は、セリ市場における漁獲直後の水産漁獲原料に対する最適の温度管理を行い、以後の品質保持に重大な齟齬を起こさせないようにしたものである。
先ず当該漁獲物を水の凍結点に近い０℃以上の表面温度を持つ冷却板上に凍らないように載置し、ついで載置した漁獲物に囲壁をめぐらせ、周囲の空間より間仕切りした独立空間を形成させ、該囲壁内への約３℃以下の冷風を吹き込み、前記間仕切りした独立空間の低温空域の温度を腸炎ビブリオを含む有害細菌の増殖を防止する約１０℃以下にした空間を形成させ、当該漁獲物の品質保持を図っている。
【００２６】
前記本発明の好適な水産物セリ市場の品質保持装置は、
生鮮魚介類のセリ市場における品質保持を可能とする品質保持装置において、
漁獲物を載置する冷却パネルと、該冷却パネル上に載置した漁獲物を囲む折畳み可能の囲壁と該囲壁に付設した冷風吹き出し部とよりなるエアフェンスと、囲壁内の冷気を遮断するエアカーテンと、前記冷風を発生する冷風発生装置とよりなり、前記エアフェンスとエアカーテンとにより空間の間仕切りを行うとともに、前記冷風吹き出しによる約３℃以下の冷風を介して囲壁による間仕切り空間の空域温度を約１０℃以下の低温に維持する構成としている。
【００２７】
上記発明によれば、前記冷風発生装置より約３℃〜−７℃の冷風を前記フェンス内に導入させ、間仕切りした囲壁内の低温空域の温度を約１０℃以下に保持させ、囲壁内の漁獲物における腸炎ビブリオを含む有害細菌の増殖を防止するようにしてある。
また、前記セリ用漁獲物を載置する冷却パネルは載置面の表面温度を漁獲物が凍らないように０℃以上の凍結点に近い温度に維持させるようにしてある。
【００２８】
また、前記冷却パネルは、好ましくは、ブラインクーラとそれに接続する埋設管または管群マットとよりなり、表面温度を０℃以上の凍結点に近い温度に維持する構成とするのが良く、具体的には、上記冷却パネルは、別途用意した食品用ブラインを使用したブラインクーラより約−２℃前後のブラインの供給をうけるセリ用土間に埋設した埋設管群または、下部にブライン管を内蔵するマットないしプレート状冷却板で構成し、表面温度を０℃を僅かに上回る温度を維持する構成にしている。
【００２９】
また、前記エアフェンスは、好ましくは、エアバルーン方式の仮設壁で構成し上部ないし下部内側より冷風吹き出し部を設ける構成とするのが良く、具体的には使用時に扁平状可撓性気密性容器に空気吹き込みにより膨らませ使用可能の囲壁を形成させる構成としその内壁の下部ないし上部に設けた冷風ダクトより複数の冷風吹き出し口を設ける構成としたものである。
【００３０】
また、前記冷却器は空気冷凍サイクルにより構成するのが良く、具体的には冷媒に空気を使用し、高温高圧空気を常温付近まで冷却したのち膨張タービン内で膨張させて低温空気を得るようにしたものである。
【００３１】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を図に示した実施例を用いて詳細に説明する。但し、この実施例に記載される構成部品の寸法、材質、形状、その相対配置などは特に特定的記載が無い限り、この発明の範囲をそれのみに限定する趣旨ではなく単なる説明例に過ぎない。
図１は本発明の水産物の市場における低温ゾーン形成装置の実施例を示す図で、（イ）は上方空間が開放された独立空間を形成するバスタブ方式による低温ゾーン形成装置の図を示し、（ロ）は（イ）の断面図である。図２は図１の別の実施例を示す図で、（イ）は冷却部を床面に埋設した場合の低温ゾーン形成装置の図を示し、（ロ）は（イ）の低温空域の急速加湿の状況を示す図で、（ハ）は一方側に設けた冷風チャンバからの冷風でスノコ表面を吹き流す方式による低温ゾーンの形成装置を示す図で、（ニ）は流通箱方式による低温ゾーン形成装置を示す図で、（ホ）は水揚げから、分類、貯蔵、売買、搬送、荷捌き等をコンベアラインで行いコンベア上の漁獲物を冷風エアカーテンで覆う方式による低温ゾーン形成装置を示す図である。図３（イ）は本発明の水産物のセリ市場の品質保持装置の概略の構成を示す斜視図で、（ロ）は（イ）のエアフェイスの折り畳んだ図である。図４（イ）は図３（イ）の上から見た平面図で、（ロ）は図４（イ）のIII−III視図である。
【００３２】
図１は本発明の実施例である水産物の市場における低温ゾーン形成装置の実施例を示す図で、（イ）は上方空間が開放された独立空間を形成するバスタブ方式による低温ゾーン形成装置の図を示している。
図１（イ）に示すように、同図は漁獲物２ａを載置した複数のスノコ２の周りを囲壁３で取り囲み、冷却器と送風機とよりなる冷風発生装置１にて発生させた氷温近傍に調整した冷風を囲壁３の内部に注ぎ込む、例えていえば、バスタブ方式による低温ゾーン形成装置を示す図で、なお、冷風発生装置１には図示していない加減湿機能を付設し湿度管理もする構成にしてある。
囲壁３は、可撓性部材からなり、冷風発生装置１からの内蔵する加減湿装置により湿度管理された低温空気よりなる冷風で膨張展開し、マット状の壁部を形成する。
下部は注水することでアンカ−部を形成するとともに床部と密着する構成にしている。囲壁３の内側には、ソックダクト（連続した繊維で織られた布ダクトを用い吹き出し口を長い筒状にしている）が伸縮移動可能に配設され、人に不快感を与えないように冷気が微風状態で供給されている。
水揚げされた漁獲物２ａは、スノコ２上に載置され、フォークリフト若しくは手かぎによる引き摺りで、囲壁３内に運ばれ、氷温近傍の温度と該温度以上の露点を持つ湿度管理された低温空域で保管される。スノコ２上にはこの装置付属の温湿度センサが漁獲物表面の温湿度を測定記録し、該データはその場に表示され、又はセリが遠隔地であれば、個別の漁獲物のデータとともに通信回線で送信される。
なお、前記囲壁３にはフォークリフトや人の出入りするための開口が設けられ、該開口がエアカーテンにより形成された冷気遮断開口３ａとして構成されている。
装置一式は車両上に搭載され、搬入、撤去は迅速に行われる。
【００３３】
必要であれば、図の（ロ）に示すように床面を冷却マット２ｂで冷却する。該冷却マット２ｂは、例えば、ブライン冷却管１３を用い、床面に埋設して使用しても良い。
【００３４】
上記のように、冷却部を床面に埋設する場合は、図２の（イ）に示すように、囲壁２０内に冷気撹拌装置２１と図示していない加減湿装置を設置する。
そして保管対象物である漁獲物は生の状態、ないし凍結された状態でスノコの上に載置される。あるいは容器に氷詰めされ上蓋が外された状態で陳列される。
従って冷却すべき対象物は床面上から若干離れた位置に置かれるので、冷気撹拌装置２１により床面の冷気を撹拌し、一定厚みの低温空気層よりなる低温空域を形成し、前記対象物である漁獲物を均一の低温空域よりなる低温ゾーンで一時保管する。さらに、漁獲物は前記したように生の状態、氷詰めの状態、凍結された状態のそれぞれ異なった態様で陳列されるので、その態様に応じた湿度管理を行なった低温空域を形成する必要があり、そのため下記対策が取られている。
【００３５】
則ち、生あるいは氷詰めの場合は、漁獲物表面の温度は低温ゾーンの前記均一の低温空域の温度は氷温温度、１０℃から０℃前後の温度帯に置かれているので、その湿度は前記温度帯のそれぞれの温度以上の露点を持つように大きく設定する必要がある。
通常の大気条件では、低温空域を形成するべく漁獲物の周囲の温度を下げると除湿効果を伴うため、冷気温度より高い漁獲物表面では表面水分の蒸発により表面の乾燥が起きる。
従って、撹拌と同時に例えば図の（ロ）に示すように、例えば超音波加湿器２２の振動子２２ａを作動させ、低温空域内に水の霧化粒子２２ｂを発生させて急速加湿を行い、相対湿度を１００％近い飽和状態に置けば、前記乾燥を防止するとができる。
そして、低温ゾーンの空域露点が漁獲物表面の露点以上となると、漁獲物表面よりの水分の移動は停止し乾燥が止まる。
なお、この場合床面は散水されており熱伝達係数が高く冷気撹拌速度が速いため、急速加湿が望ましい。
【００３６】
図２の（ハ）はゾーンの一方側に設置した図示していない加減湿装置を内蔵する冷風発生装置１、冷風チャンバ４を介しての平行冷風を、漁獲物２ａを載置したスノコ２の表面を覆うように吹き流す方式による低温ゾーン形成装置を示す図である。
なお、上記の場合両サイドにはフォークリフトや人の出入りするための開口が設けられ、該開口が常温エアカーテンにより形成された冷気遮断開口４ａとして構成されている。
この変形例として、入荷量が多く図１（イ）のバスタブ方式では囲いきれない場合には、（イ）の風下側の一側を解放して、図２の（ハ）の方法と組み合わせても良い。
【００３７】
図２（ニ）は、流通箱５と台車６を使用による低温ゾーン形成装置を示す図で、蓄冷材（寒冷剤）５ａを流通箱５に内蔵させ、車内の漁獲物２ａを冷却するようにしてある。
【００３８】
図２（ホ）は、水揚げから、分類、貯蔵、売買、搬送、荷捌き等をコンベア９とラック８よりなるコンベアラインで行い、コンベア９上の漁獲物２ａの上面を冷風エアカーテン７で覆う方式による低温ゾーン形成装置を示した図である。
【００３９】
なお、前記図２の（ハ）、（ニ）、（ホ）の各低温ゾーン形成装置においても、図示していない温度センサと該センサにより計測された漁獲物の載置面ないし収納部の温度データの記録と外部通信をする制御手段とが設けてある。
【００４０】
図３（イ）には、本発明の水産物のセリ市場の品質保持装置の概略の構成を示す斜視図が示され、図４（イ）には上から見た平面図が示してある。
図に見るように、漁獲物２ａを載置する冷却パネル１５と、該冷却パネル１５上に載置した漁獲物２ａを囲む折畳み可能の囲壁１０ａと該囲壁１０ａに付設した冷風吹き出し部（ダクト）１０ｂとよりなるエアフェンス１０と、囲壁１０ａ内の冷気を遮断するエアカーテン１２と、前記冷風１１を発生する冷風発生装置１４とよりなり、前記エアフェンス１０とエアカーテン１２とにより空間の間仕切りにより外気との間の冷気遮断を行うとともに、
前記冷風吹き出しダクト１０ｂからの約３℃の冷風１１を介して囲壁１０ａによる間仕切り空間の空域温度を約１０℃以下の低温に維持する構成とし、前記冷却パネル１５上に載置した漁獲物を約１０℃以下の低温空域温度に置き、漁獲物の魚体や鰓内に保持されている腸炎ビブリオ等を含む有害細菌の増殖を防止し、爾後の取り扱い工程において大きな危害を防止する品質保持を図るようにしたものである。
なお、前記冷風の温度は好ましくは＋３℃〜−７℃が好適である。
【００４１】
前記エアフェンス１０は、冷風吹き出しダクト１０ｂとエアバルーン方式の囲壁１０ａよりなり、冷風吹き出しダクト１０ｂは内側に複数の冷風吹き出し口を設け、該冷風吹き出し口より吹き出された冷風１１は、囲壁内に約３℃以下の冷風を吹き出させ、囲壁内の空域温度１０℃以下に保持させ、前記冷却パネル１５上に載置した漁獲物２ａの全てをその低温空域下に置き、食品衛生法に対応した品質保全策を講ずることができるようにしている。
なお、前記囲壁１０ａは可撓性気密部材により折畳み可能に構成し、図３（ロ）に示すように収納時はコンパクトに短時間の内に折畳み可能の構造にしてある。また、囲壁形成時はエアの注入により簡単に効率的に短時間のうちに形成できるようにしてある。
なお、使用器材については、断熱パネルの使用や断熱効果のあるカーテンを使用しても良い。
また、囲壁の高さも随意設定できる。
【００４２】
なお、前記漁獲物２ａを載置する冷却パネル１５は、ブラインクーラ１６により生成された約−２℃の食品用ブライン（塩化カルシウム、プロピレングリコール等）を使用し、図４（イ）のIII−III視図を示す図４（ロ）に見るように埋設したブライン冷却管１３を介して載置表面温度を０℃以上の凍結点に近い温度を保持させ、冷却パネル１５上に載置される漁獲物２ａが凍結を起こさないようにしている。
【００４３】
また、エアカーテンにより形成された冷気遮断開口１２は、囲壁の出入口の解放による冷気の漏れ防止を目的として構成し、扉でも良い。
【００４４】
また、冷風発生装置１４は、冷凍サイクルを使用した熱交換により約３℃以下の冷風を発生するようにしたもので、空気冷凍サイクルを使用し、冷媒に空気を使用し、高温高圧空気を常温付近まで冷却したのち膨張タービン内で膨張させて低温空気を得るようにしても良い。
【００４５】
【発明の効果】
本発明は、以上説明したような形態で実施され、以下に記載されるような効果を奏する。
市場の商品保管状況を遠隔地に散在する売買システムとの緊密な連携により高機能の低温流通システムを形成するとともに、温度管理と湿度管理を備えた保管機能を持つ低温ゾーン形成装置の形成により、高機能の低温物流システムを得ることができる。
そして、市場における低温保管温度の記録が残るので、商品の信頼性が増す。
また、水産市場における水産魚介類の品質保持方法とその品質保持装置の提供により水揚げ後の漁獲物において、特に腸炎ビブリオと含む有害細菌の増殖に対する効率的水際防止を可能にしている。
【図面の簡単な説明】
【図１】本発明の実施例である水産物の市場における低温ゾーン形成装置の実施例を示す図で、（イ）はバスタブ方式による低温ゾーン形成装置の図を示し、（ロ）は（イ）の断面図である。
【図２】図１の別の実施例を示す図で、（イ）は冷却部を床面に埋設した場合の低温ゾーン形成装置の図を示し、（ロ）は（イ）の低温空域の急速加湿の状況を示す図で、（ハ）は一方側に設けた冷風チャンバからの冷風でスノコ表面を吹き流す方式による低温ゾーン形成装置を示す図で、（ニ）は流通箱方式による低温ゾーン形成装置を示す図で、（ホ）は水揚げから、分類、貯蔵、売買、搬送、荷捌き等をコンベアラインで行いコンベア上の漁獲物を冷風エアカーテンで覆う方式による低温ゾーン形成装置を示す図である。
【図３】（イ）は本発明の水産物のセリ市場の品質保持装置の概略の構成を示す斜視図で、（ロ）は（イ）のエアフェイスを折り畳んだ図である。
【図４】（イ）は図３（イ）の上から見た平面図で、（ロ）は図４（イ）のIII−III視図である。
【符号の説明】
１、１４ 冷風発生装置
２ スノコ
２ａ 漁獲物
２ｂ 冷却マット
３、１０ａ、２０ 囲壁
４ 冷風チャンバ
７ 冷風エアカーテン
１０ エアフェンス
１０ｂ 冷風吹き出しダクト
１１ 冷風
１２ 冷気遮断開口
１３ ブライン冷却管
１５ 冷却パネル
１６ ブラインクーラ
２１ 冷気撹拌装置
２２ 超音波加湿器

Claims (10)

1. 売買対象若しくは出荷前の水産物を低温保管する低温ゾーン形成装置を具えた水産物市場において、
   前記低温ゾーン形成装置が、市場床面周囲を、折り畳み又は収納可能な囲壁により間仕切りされ、上方空間が開放された独立空間であって、
   前記囲壁内壁側下部に冷風吹き出し部を設け、該吹き出し部より前記囲壁内に保管した水産物に対し冷風を吹き込むように構成したことを特徴とする水産物市場における品質保持装置。
2. 前記低温ゾーン形成装置が、冷却管を埋設してなる市場床面周囲を、折り畳み又は収納可能な囲壁により間仕切りして、上方空間が開放された独立空間を形成してなる低温ゾーン形成装置である請求項１記載の水産物市場における品質保持装置。
3. 前記独立空間の床面に前記水産物を載置する冷却パネルが存在し、該冷却パネルは載置面の表面温度を漁獲物が凍らないように０℃以上の凍結点に近い温度に維持させるようにしてなる請求項１記載の水産物市場における品質保持装置。
4. 前記囲壁内壁側下部に独立空間側に複数の冷風吹き出し口を設けた冷風ダクトが配設されていることを特徴とする請求項１、２若しくは３記載の水産物市場における品質保持装置。
5. 前記囲壁の下部に市場床面と密着するように構成したアンカー部を具えてなる請求項１乃至４いずれか１記載の水産物市場における品質保持装置。
6. 前記囲壁の所定箇所に独立空間にフォークリフトや人が出入りするための開口が設けられ、該開口がエアーカーテンにより形成された冷気遮断開口であることを特徴とする請求項１乃至５いずれか１記載の水産物市場における品質保持装置。
7. 前記折り畳み又は収納可能な囲壁が、エアフェンス等の可撓性気密部材、断熱パネル若しくは断熱効果のあるカーテンのいずれかである請求項１乃至６いずれか１記載の水産物市場における品質保持装置。
8. 冷却器と送風機よりなる冷風発生装置が囲壁外に配置され、前記囲壁内壁側下部に配したダクトを介して前記冷風発生装置よりの冷風を独立空間内に送給させることを特徴とする請求項１乃至７いずれか１記載の水産物市場における品質保持装置。
9. 売買対象若しくは出荷前の水産物を低温保管する低温ゾーン形成装置を具えた水産物市場において、
   前記低温ゾーン形成装置が、市場床面周囲を、折り畳み又は収納可能な囲壁により間仕切りされ、上方空間が開放された独立空間であって、
   前記囲壁内壁側下部に設けた冷風吹き出し部より前記囲壁内に保管した水産物に対し冷風を吹き込み、該冷風により前記前記独立空間内の保管対象物の周囲に、氷温近傍の温度と該温度以上の露点を持つ湿度管理された低温空域を形成することを特徴とする水産物市場における品質保持方法。
10. 売買システムを別に持つ水産物市場システムにおいて、
    水産物市場の一の床面に、その周囲を、折り畳み又は収納可能な囲壁により間仕切りされ、上方空間が開放された独立空間を形成するとともに、該囲壁内壁側下部に冷風吹き出し部を設け、該吹き出し部より前記囲壁内に保管した水産物に対し冷風を吹き込むように構成した水産物を低温保管する低温ゾーン形成装置を具え、該低温ゾーン形成装置の独立空間内に温湿度センサとを設け、該センサが検出したデータを前記売買システム側に送信する制御手段を有することを特徴とする水産物市場システム。

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