JP3580021B2 - ゴム組成物 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明はゴム組成物に関し、詳しくは、タイヤ、防振ゴム、ベルト等のゴム製品に好適に用いられ、加硫成形性を向上し得るゴム組成物に関する。
【0002】
【従来の技術】
一般的にゴム製品は、天然ゴム、スチレンブタジエンゴム等のポリマーにカーボンブラック等補強剤、軟化剤、老化防止剤等および加硫反応をさせるための加硫剤、加硫促進剤、加硫助剤等をバンバリー等で混練りしてゴム組成物となし、それを熱プレス等で圧力を加えて加熱(これを加硫という)して作る。
これらのゴム製品の製造工程においては、加硫工程のサイクルタイムがその前後の工程に比べて長く、ゴム製品の生産性の向上には加硫工程のサイクルタイムを短くする、すなわち加硫時間を短縮することが不可欠となっている。
【0003】
従来よりこの加硫時間を短縮するために、種々の検討が行われてきた。例えば、ゴム組成物の配合処方においては、加硫促進剤に加硫速度の速いものを選択すること、またチウラム系の加硫促進剤を併用すること等により、加硫時間を短くすることが試みられている。
一方、加工方法の面からは、ゴム組成物をできるだけ高温でモールド内に注入する加工方法であるインジェクションによる加硫を採用することで、加硫時間を短くすることが行われており、従来の加硫工程では最も加硫時間を短くできる加工方法であるとされている。
所謂射出成形法であるインジェクション加硫成形方法を適用した加硫工程においても、加硫時間短縮検討が進められており、そのためにゴム組成物を金型に注入する前に、射出成形機のプランジャー又はスクリュー内での予熱温度を高くしたり、射出圧を上げて射出発熱を高くすること等が検討されてる。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記のように加硫促進剤の選択によりゴム組成物の加硫速度を速くして加硫時間短縮を行った場合、確かに加硫時間を短くすることができるが、同時に加硫温度以下の比較的低温領域でも低次の加硫反応が進行して、結果としてスコーチしやすい不安定なゴム組成物になる。すなわち、次ぎのような現象が発生する。
1)混練り時に、上述の加硫反応が始まりゴム組成物の高粘度化により正常にゴム組成物を混練することができなくなる。
2)混練した練りゴム組成物を放置した場合、短時間でスコーチしてしまい、次ぎのゴム製品の加硫工程ではゴム製品の生産をすることができなくなる。
3)又、加硫前のカレンダー等のシート圧延工程等の前処理時、このゴム組成物の加硫が始まり、正常なゴム組成物のシートが得られない。また、高速加硫促進剤の選定により加硫速度を速くした場合、加硫ゴム特性(耐熱性、耐疲労性等)を悪化させる場合も生じる。
【0005】
これらのゴム製品の成形法の1つである射出成形法、即ちインジェクション加硫方法においては、加硫時間を短縮するためにゴム組成物の予備加熱温度を高くする、又は射出圧力をを上げて射出発熱を高くすること等により、ゴム組成物をさらに高温で金型に注入し加硫時間の短縮を試みることも行われているが、金型に射出注入する前にゴム組成物が加硫を始めて流動性が悪くなり、このゴム組成物を金型内に注入することができなくなるという問題もあった。
【0006】
又、このような問題を解決する手段として特開昭48−25042に示すように、加硫反応をさせるための加硫剤、加硫促進剤、加硫助剤等の表面を高分子物質で被覆した配合剤、すなわちマイクロカプセル状に成形した、所謂カプセル化配合剤をゴム素原料に混練したゴム組成物を用いれば、加硫速度を制御することができるとする知見もある。
しかしながら、この方法においては、皮膜材料が樹脂等の高分子物質であるため、加硫温度以下の低温領域でも、芯材たる加硫剤などがゴム組成物に移行して加硫が進行してしまうことがあった。
【0007】
本発明は、上記事情に鑑みなされたもので、ゴム組成物を加工、加硫する際に、ゴム組成物に付与される温度領域に応じて、加硫速度を制御してゴム製品を得ることのできるゴム組成物を提供することにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記目的を達成するために鋭意検討を重ねた結果、加硫剤または加硫促進剤を芯材、無機物粉体を含有する樹脂を膜材として、加硫剤または加硫促進剤の表面にコーティングした粒状物を使用することで、内包された芯材たる加硫剤または加硫促進剤を直接反応するゴム素原料と接触させないで加硫反応を抑えることができることを見いだし、本発明を完成した。すなわち、本発明の請求項1に記載のゴム組成物は、加硫剤または加硫促進剤の少なくともいずれか一方を芯材、無機物粉体を含有する軟化点が60℃以上の樹脂を膜材として、前記芯材の表面を前記膜材でコーティングしてなる粒状物を含有するゴム組成物であって、前記樹脂が前記無機物粉体を5重量%以上含有することを特徴としている。又、本発明の請求項2に記載のゴム組成物は、前記樹脂が熱可塑性樹脂からなることを特徴としている。更に、本発明の請求項3に記載のゴム組成物は、前記樹脂が前記無機物粉体を5〜99重量%含有することを特徴としている。又、本発明の請求項4に記載のゴム組成物は、前記無機物粉体の平均粒径が5μm以下であることを特徴としている。又、本発明の請求項5に記載のゴム組成物は、前記粒状物の粒径が100μm以下であることを特徴としている。
【0009】
【発明の実施の形態】
このように、加硫剤又は加硫促進剤を芯材とし、無機物粉体を含有する樹脂を膜材としてコーティングした粒状物を配合したゴム組成物は、加硫剤、加硫促進剤がゴム素原料へ移行する速度は、温度により変化し高温になるほど速くなる。そしてその変化は、無機物粉体を含有することにより更に大きくなり、従って低温では、加硫速度が遅く高温になるとコーティングしないものと変わらなくすることが可能となる。
【0010】
本発明において用いられるコーティングする膜材の樹脂としては、以下のものが好ましい。
コーティングする樹脂は、加硫剤または加硫促進剤が特に加硫温度以下では移行しにくい樹脂が望ましい。
従って、コーティングする樹脂の軟化点が60℃以上、更に好ましくは、80℃以上のものが望ましい。本発明に用いられる樹脂としては、メタクリル樹脂、ポリエチレン、ポリアミド、ポリアセタール、ポリアリレート、ポリエステル、ポリサルホン、ポリカーボネート、ポリフェニレンエーテル、ポリフェニレンサルファイド、ポリエーテルエーテルケトン、ポリウレタン樹脂等が好適である。
【0011】
樹脂のみでコーティングした場合には、コーティングする樹脂の膜厚を可能な限り厚くしても、移行速度が速いため、十分な上記加硫制御効果が得られない。そこで、樹脂にシリカ等の無機物粉体をブレンドすることで加硫剤または加硫促進剤の移行速度を大幅に抑えることができる。ブレンドする無機物粉体は、シリカ、酸化チタン等加硫反応に対して不活性な物質であればよい。無機物粉体の粒径は、ゴム素原料への移行を抑える効果を大きくするために、その表面積が大きい方が望ましく、従って粒径が小さい方が好ましい。また、加硫ゴムの物性への影響を抑えるためにも、無機物粉体の粒径が小さい方が望ましい。実用的には、5μm以下望ましくは1μm以下の無機物粉体が推奨される。ここで、無機物粉体と樹脂とのブレンド比は、樹脂中に無機物粉体が5重量%以上、望ましくは5重量%から99重量%、より望ましくは10重量%から90重量%である。5重量%未満では、無機物粉体をブレンドする効果(移行速度を遅くする)が得られない。また、99重量%超ではもろくなり、加硫剤または加硫促進剤の表面をコーティングできない。
【0012】
膜材でコーティングした加硫剤、加硫促進剤の粒状物の粒径は、100μm以下、更に好ましくは50μm以下が推奨される。100μm超の場合、低温で遅くする効果は十分に発揮できるが、加硫した物性は低下する傾向にあり、あまり好ましくない。
コーティングする樹脂の膜厚は、上記の通り樹脂の種類によるが、粒径が100μmより大きくならない範囲内でできるだけ厚い方が、上記のとおり加硫速度を制御する効果を大きくすることができて望ましい。
【0013】
本発明のゴム組成物に使用される粒状物の膜材を形成する製膜方法としては、一般に知られるマイクロカプセル化する方法が採択され、例えば、相分離法(高分子溶液からその高分子に富んだ層が分離する現象、即ちコアセルベーションを利用したカプセル化方法)、液中乾燥法(芯物質が乳化又は分散されている壁膜物質溶液を、水又は油の媒体中に分散し、然る後、攪拌下、加熱又は減圧によって、壁膜物質が溶解している溶剤を飛ばして、カプセル膜を形成させる方法)、気中懸濁法(芯物質−粉末−を気流によって流動化し懸濁させて、懸濁粒子表面に膜材を溶解させた溶液を噴霧する。懸濁化空気を加熱して溶媒を蒸発させてカプセル膜を形成させる方法)及び噴霧乾燥法(膜材を溶解させた溶液に芯物質を懸濁させて、その溶液を噴霧、微粒子化して瞬間的に乾燥させて、カプセル化膜を形成させる方法)などが好適である。
【0014】
本発明のゴム組成物のゴム材料としては、天然ゴム、SBR、BR、IR、CR、IIR、NBR等の通常のゴムを挙げることができる。
【0015】
本発明のゴム組成物には、ゴム材料100重量部に対して、カーボンブラック10〜150重量部が配合される。カーボンブラックは充填剤として用いられるものであり、これによって諸物性の改良効果が大きくなる。使用されるカーボンブラックとしては、FEF、SRF、HAF、ISAF、SAF等のカーボンブラックが挙げられる。又、充填剤としてカーボンブラックに替えてシリカ等の無機物であっても構わない。
【0016】
本発明のゴム組成物には、加硫剤が使用され、使用される加硫剤としては、イオウが一般的であるがその他過酸化物等特に制約はない。
【0017】
又、本発明のゴム組成物には、加硫促進剤が使用され、使用される加硫促進剤としては、MBT(2−メルカプトベンゾチアゾール)、CBS(N−シクロヘキシル−2−ベンゾチアジルスルフェンアミド)、MBTS(ジベンゾチアジルジスルフィド)等のチアゾール系、TMTD(テトラメチルチウラムジスルフィド)等チウラム系等特に制約はない。
【0018】
本発明のゴム組成物は、ロール、インターナルミキサー等の混練り機を用いて混練りすることによって得られ、成形加工後、加硫を行って防振ゴム、ベルト、ホース、タイヤその他工業品などの用途にも用いることができるが、特に防振ゴムとして好適に使用される。
【0019】
【実施例】
以下に実施例及び比較例により本発明をより具体的に説明するが、本発明は下記実施例に限定されるものではない。
【0020】
【実施例】
サンプル調製
熱可塑性ポリウレタン(エラストマー)樹脂(軟化点115℃)をMEK(メチルエチルケトン)(溶媒)に溶解し20%溶液とする。この溶液に無機物粉体であるシリカを分散し、この分散液中に加硫剤のイオウ又は加硫促進剤のMBTSを懸濁させた後、この懸濁溶液をスプレードライヤーで60℃の雰囲気中に噴霧して乾燥させて、これらの加硫剤又は加硫促進剤を芯材とし、その表面へシリカを含有した樹脂コーティングが為された粒状物を得た。表1にその組成を示す。
【0021】
[比較例]
加硫剤のイオウ又は加硫促進剤のMBTSそのものをそれぞれ単味で使用したものである。
【0022】
表1においては、例えば、サンプル2は、促進剤MBTSを芯材とし、その表面をシリカを含有する熱可塑性ポリウレタン(エラストマー)樹脂を膜材とし、この膜材で芯材をコーティングした粒状物を調製したもので、粒状物を100重量%としたときに芯材が91重量%、従って膜材が9重量%となり、この膜材9重量%のうち10重量%がシリカであることを示す。
【0023】
【表1】
【0024】
1)配合処方
前記サンプルを配合したゴム組成物は、イオウ、MBTS及びサンプル1〜6以外を、バンバリーミキサーで混練してマスターバッチを作成する。このマスターバッチを冷却後、4インチロールにてマスターバッチとイオウ、MBTS、サンプル1〜6をそれぞれ混練した。これらのゴム組成物の配合処方、加硫速度、耐スコーチ性、物性等の評価結果は表2に示す。
【0025】
【表2】
【0026】
2)評価結果
ア)未加硫ゴム特性(加硫速度)
加硫速度はキュラストメーター(JSRIII 型)を用いて評価した。
即ち、キュラストメーターによるねじりトルクが、その最大値と最小値との差の10%+最小値に達するまでの時間をT10、90%+最小値に達するまでの時間をT90とした。このときの測定温度は105℃、165℃である。
表2に示す通り、比較例2、3の通り、加硫促進剤又は加硫剤に樹脂のみをコーティングしたものでは、ほとんど加硫速度を変化させることはできない。
実施例1、2、3、及び4の通り、コーティングする樹脂にシリカをブレンドすることにより、加硫温度(165℃)では、加硫速度は比較例とほぼ同じで、低温(105℃)では、加硫速度を遅くすることができる。
又、コーティングする樹脂にブレンドするシリカの量は、多い方が加硫速度を制御する効果が大きくなる。
コーティングされている内包物即ち芯材は、加硫剤、加硫促進剤ともに同等の効果がある。
【0027】
イ)加硫ゴム特性
硬度、強伸度についての測定法は、JIS 6301に準拠した。
加硫ゴム特性は、シリカをブレンドした樹脂をコーティングした加硫剤、加硫促進剤を使用したものは、すべて比較例1と同等である。
【0028】
【発明の効果】
ゴム組成物を加工、加硫する際に、ゴム組成物に付与される温度領域に応じて、加硫速度を制御してゴム製品を得ることのできるゴム組成物を提供することができる。
Claims (5)
- 加硫剤または加硫促進剤の少なくともいずれか一方を芯材、無機物粉体を含有する軟化点が60℃以上の樹脂を膜材として、前記芯材の表面を前記膜材でコーティングしてなる粒状物を含有するゴム組成物であって、前記樹脂が前記無機物粉体を5重量%以上含有することを特徴とするゴム組成物。
- 前記樹脂が熱可塑性樹脂からなることを特徴とする請求項1に記載のゴム組成物。
- 前記樹脂が前記無機物粉体を5〜99重量%含有することを特徴とする請求項1乃至2のいずれか1項に記載のゴム組成物。
- 前記無機物粉体の平均粒径が5μm以下であることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載のゴム組成物。
- 前記粒状物の粒径が100μm以下であることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載のゴム組成物。
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