JP3676900B2 - 澱粉複合材強化ゴム組成物および少くともその一成分を有するタイヤ - Google Patents

澱粉複合材強化ゴム組成物および少くともその一成分を有するタイヤ Download PDF

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Description

【0001】
【産業上の利用分野】
本発明は、特にエラストマー強化材としての澱粉/可塑剤・複合材を含むゴム組成物、およびこの組成物を少くとも一成分として有するタイヤに関する。そのような成分は、例えばタイヤの外周トレッド若しくはタイヤの他の成分であることができる。一つの態様では、そのゴム組成物はゴム、特に澱粉/可塑剤・複合材と、場合によりその複合物とカップリング剤との組み合せで強化した、或いはまたカーボンブラックおよび/またはシリカをも単独で、または他の強化性或いは非強化性充填材と共に含んでいる、硫黄硬化性の、或いは硫黄で硬化したゴムからなる。
【0002】
【従来の技術】
澱粉を様々な目的でエラストマー調合物中で利用することはよく提案されている。澱粉を含むエラストマー調合物若しくは組成物は、後で考察されるように、適切な可塑剤を澱粉と組み合せて使用することにより発展させることができると考えられる。かかる澱粉/可塑剤・組成物はカーボンブラック強化用充填材と組み合せて、或いは、例えば再生若しくは粉砕硬化ゴム粒子、短繊維、カオリン粘土、雲母、タルク、酸化チタンおよび石灰石のような他の充填材と組み合せて用いてもよいだろう。このような短繊維は、例えばセルロース、アラミド、ナイロン、ポリエステルおよびカーボン組成物の繊維であることができる。
【0003】
米国特許第5,403,923号、同第5,258,430号および同第4,900,361号明細書には、様々な澱粉組成物の製造と利用が開示されている。
【0004】
澱粉は、この技術分野の習熟者には良く知られているように、普通アミロース(グルコシド結合で連結されたアンヒドログルコピラノース単位)とアミロペクチンの繰返単位を有する、分岐鎖構造の炭水化物重合体として示される。典型的には、澱粉は約25パーセントのアミロースと約75パーセントのアミロペクチンから構成されている。[縮刷化学辞典(The Condensed Chemical Dictionary)、第9版(1977)、G.G.ホーレイ(G.G.Hawley)により改訂、出版社:ヴァン ノストランド ラインホールド社(Van Nostrand Reinhold Company)、813頁]。澱粉は普通に市販されているような、例えばトウモロコシ、ポテト、米および小麦のような植物中の貯蔵多糖類と考えることができる。
【0005】
一方、澱粉は、以前に、ゴム製品中での利用が提案されている。しかし、澱粉は、それ自身では、普通約200℃またはそれ以上の軟化点を有しており、それによって多くのゴム製品での利用が幾らか制限されると考えられる。これは、主として、ゴム組成物は、通常、ゴムを各種の成分と約140℃から約170℃の範囲、普通低くても約160℃、そして時には180℃までの温度で前もってブレンドして加工されるが、このような温度は(低くても約200℃の軟化点を有する)澱粉を効果的に融解させ、そしてゴム組成物と効率良くブレンドさせるのに十分高い温度でないことに因る。結果として、その澱粉粒子はゴム組成物の内部でより均質なブレンドとしてよりはむしろ個々のドメイン若しくは顆粒として残る傾向がある。
【0006】
かくして、そのような軟化点の欠点が、多くのゴム製品用の充填材としての、特に強化用充填材としての澱粉の利用をむしろ厳しく制約していたと考えられる。
【0007】
このような事情から、澱粉単独の軟化点より有意に低い軟化点を有する澱粉/可塑剤・組成物または同組成物類を開発すれば、その澱粉を常用のエラストマー加工装置の中でより容易に混合し、加工することが可能になるであろうと考えられる。
【0008】
大きい強度と耐摩耗性を必要とする各種のゴム組成物の強化においては、特にタイヤおよび各種工業製品などの用途では、普通、実質的な量、多くの場合ゴム100重量部当たり(phr)約35から約85部、若しくは120部までもの量の強化用充填材を含有する硫黄硬化ゴムが用いられる。
【0009】
そのような目的の強化用充填材としては、通常、カーボンブラック、および、時には、シリカ、通常は沈降シリカが用いられ、それらは普通硫黄硬化ゴムに良好な物理的性質を与えるか、向上させる。微粒子状シリカは、このような目的に用いられる場合、しばしばカップリング剤と併用され、そして通常カーボンブラックと組み合せて用いられる。硫黄硬化性エラストマーを含めてエラストマー用の強化用充填材としてカーボンブラックとシリカを使用することは、この技術分野の習熟者には良く知られている。
【0010】
通常の場合、シリカをカップリング剤若しくはシリカカップラー、或いはシリカ接着剤(本明細書中では、このように呼ばれることもある)無しで用いるなら、ゴム製品、特にゴムタイヤトレッドの強化用充填材としてはシリカよりカーボンブラックの方がかなり効果的であることに気付くことが大切である。硫黄硬化性エラストマーの強化用に沈降シリカと共にカップリング剤を使用することは、この技術分野の習熟者には良く知られている。
【0011】
そのようなカップリング剤は、二つの部位、即ち強化用充填材と外見上は、例えばその表面上のヒドロキシル基(例えば、SiOH)と化学的若しくは物理化学的に相互作用する一つの部位と、一種またはそれ以上のエラストマー、特にジエン系の硫黄硬化性エラストマーと相互作用するもう一つの部位とを含んでいる。このようなカップリング剤は、例えばシリカ粒子と前混合若しくは前反応されるか、またはゴム/シリカの加工若しくは混合工程中にそのゴム混合物に添加される。このカップリング剤とシリカがゴム/シリカの混合若しくは加工工程中にそのゴム混合物に別々に添加されるなら、そのカップリング剤はシリカとその場で結合すると考えられる。
【0012】
特に、そのようなカップリング剤は、時には、シリカ表面(例えば、SiOH)と反応する能力のある構成成分または部位(シラン部分)、そしてゴム、特に、例えばジエン系エラストマーのような炭素−炭素二重結合、即ち不飽和結合を含む硫黄加硫できるゴムと反応する能力のある構成成分または部位も含むシランから構成される。このように、その場合、カップラーはシリカとゴムとの結合橋として作用し、それによりシリカのゴム強化性能が高められる。
【0013】
一つの態様では、このカップリング剤のシランは、外見上、シリカ表面に結合を生成させ、そしてそのカップリング剤のゴム反応性成分はゴムそれ自身と結合する。普通、このカップラーのゴム反応性成分は温度に敏感であり、最終のより高温の硫黄硬化工程で、即ちゴム/シリカ/カップラー混合工程に続いて、従ってそのカップラーのシラン基がシリカと結合した後にゴムと結合する傾向がある。
【0014】
このカップラーのゴム反応性基成分は、例えばメルカプト、アミノ、ビニル、エポキシおよび硫黄基などの一種またはそれ以上の基であることができ、そして硫黄またはメルカプト部位であることが多く、更に普通には硫黄である。
【0015】
シリカとゴムとを結合するために用いられる非常に多数のカップリング剤、例えばビス‐(3‐トリエトキシシリルプロピル)テトラスルフィドおよび/またはトリスルフィドのような、ポリスルフィド橋の中に約2から約8個の硫黄原子を含む、例えばトリアルコキシオルガノシランポリスルフィドのようなポリスルフィド成分若しくは同構造を含むシランカップリング剤が教示されている。
【0016】
“phr”という用語は、本明細書で用いられる場合、通常の用い方に従って“ゴム若しくはエラストマー100重量部当たりの個々の材料の部数”を意味する。
【0017】
本発明の説明において、“ゴム”および“エラストマー”という用語は、本明細書で用いられる場合、特に断らない限りは、互換的に用いられる。“ゴム組成物”、“混練ゴム”および“ゴムコンパウンド”という用語は、本明細書で用いられる場合、“各種の構成成分および基材とブレンド若しくは混合されているゴム”を指すものとして互換的に用いられるが、このような用語はゴム混合またはゴム混練技術分野の習熟者にはよく知られている。
【0018】
本明細書で用いられる“カーボンブラック”という用語は、“エラストマー、特に硫黄硬化性エラストマーの強化に普通用いられる性質を有するカーボンブラック”を意味する。
【0019】
本明細書で用いられる“シリカ”という用語は、沈降若しくは霧煙シリカに分類することができ、そして普通は沈降シリカを指し、このことはこのような技術分野の習熟者には良く知られている。
【0020】
エラストマーのTgとはガラス転移温度のことであり、これは示差走査熱量計により、加熱速度10℃/分でうまく測定できる。
【0021】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、エラストマー強化材としての、澱粉/可塑剤・複合材を含むゴム組成物、およびその組成物を少くとも一成分(タイヤの外周トレッドなど)として有するタイヤに関する。
【0022】
【課題を解決するための手段】
本発明の一つの態様によれば、地面接地用に設計された外周トレッドを有するタイヤであって、該トレッドは下記の成分(A)(B)(C)を含むゴム組成物からなり、
(A)少くとも一種のジエン系エラストマー100重量部、
(B)5から70phrの澱粉/可塑剤・複合材および25から85phrの強化用カーボンブラックからなる25から90phrのゴム強化用充填材、
(C)該澱粉複合材用のカップラーであって、該澱粉複合材の表面に含まれるヒドロキシル基と反応する部位と、該エラストマーと相互作用するもう一つの部位とを有していて、該澱粉は15/85から35/65の比のアミロ−ス単位とアミロペクチン単位から構成され、且つ該澱粉/可塑剤・複合材のASTM D1228による軟化点が110℃から160℃の範囲となることを前提として、該澱粉のASTM D1228による軟化点が180℃から220℃の範囲であるカップラー、
そして、該澱粉/可塑剤・複合材において、該可塑剤が160℃未満の軟化点を有し、そして該可塑剤がポリ(エチレン・ビニルアルコール)、酢酸セルロース、5から90モルパーセントの酢酸ビニルを含むエチレン‐酢酸ビニル共重合体およびその加水分解共重合体、エチレン‐グリシジルアクリレート共重合体、並びにエチレン‐無水マレイン酸共重合体のうちの少くとも一種から選ばれることを特徴とするタイヤが提供される。
【0023】
澱粉/可塑剤・複合材と反応するカップラーの部位は、一般に、それらの表面の一つまたはそれ以上のヒドロキシル基、そして恐らくはそれらの上の他の反応性基と反応し得ると考えられる。
【0024】
本発明の実施において、澱粉/可塑剤・複合材は、例えば自由に流動する乾燥粉末として、または自由に流動する乾燥したペレットの形で使用されることが望まれる。実際には、その合成可塑剤それ自身が澱粉と相溶性であり、そして澱粉の軟化点より低い軟化点を有することが望まれ、それによりその可塑剤と澱粉の混合物の軟化点を澱粉自身の軟化点より低くすることが可能になる。軟化点の異なる複数の相溶性重合体のブレンドが、そのブレンド中の個々の重合体(一つまたは複数)の最高の軟化点より低い軟化点を持つという現象は、この技術分野の習熟者には良く知られていることである。
【0025】
本発明の目的のために、澱粉/可塑剤・複合材についての可塑剤効果(その複合材の軟化点が澱粉の軟化点より低くなることを意味する)は、160℃未満の軟化点を有する、例えばポリ(エチレン・ビニルアルコール)のような高分子可塑剤を使用することにより得ることができる。他の可塑剤およびそれらの混合物も、それらが澱粉の軟化点より低い、好ましくは160℃以下の軟化点を有することを条件として、本発明での使用が考えられ、例えば約5から約90モルパーセント、或いはまた約20から約70モルパーセントの酢酸ビニルを含むエチレン‐酢酸ビニル共重合体およびその加水分解共重合体、エチレン‐グリシジルアクリレート共重合体並びにエチレン‐無水マレイン酸共重合体が考えられる。前述のように、共重合体の加水分解物の使用も考えられる。例えば、対応するエチレン‐ビニルアルコール共重合体およびエチレン‐酢酸ビニル‐ビニルアルコール三元共重合体は、それらが澱粉の軟化点より低い、好ましくは160℃以下の軟化点を有する限り、その使用が考えられる。
【0026】
一般に、澱粉と可塑剤との混合には、澱粉と可塑剤との間に比較的強い化学的および/または物理的相互作用が存在することを考えさせる、若しくは信じさせる何ものかが含まれている。
【0027】
一般に、この澱粉/可塑剤・複合材の、希望の澱粉/可塑剤重量比は、その澱粉/可塑剤・組成物が、エラストマー(一種または複数種)と混合される前の時点で、要求される軟化点範囲を有し、そして好ましくは自由流動性の乾燥粉末若しくは押出成形ペレットである限りにおいて、約0.5/1から4/1、或いはまた約1/1から約2/1の範囲である。
【0028】
合成可塑剤(一種または複数種)は、室温、即ち約23℃で粘性を有し、従ってこの明細書の目的から液体であると考えられるが、ただし多くの可塑剤は性質が高分子的であると認められるので、この可塑剤は、実際には室温で粘性のある液体であることができる。
【0029】
合成可塑剤の代表的な例は、例えばポリ(エチレン・ビニルアルコール)、酢酸セルロース、および二塩基性有機酸のジエステルである。但し、澱粉/可塑剤・複合材が要求される軟化点範囲を有するように、それら可塑剤は、それらが組み合わされる澱粉の軟化点より十分低い軟化点を有することが前提である。
【0030】
この合成可塑剤はポリ(エチレン・ビニルアルコール)および酢酸セルロースの少くとも一つから選ばれるのが好ましい。
【0031】
例えば、上述のポリ(エチレン・ビニルアルコール)は、酢酸ビニルを重合してポリ(酢酸ビニル)を作り、次いで(酸或いは塩基触媒により)加水分解してポリ(エチレン・ビニルアルコール)にすることにより合成されるだろう。酢酸ビニルのこのような重合反応と得られる生成物の加水分解は、この技術分野の習熟者には良く知られている。
【0032】
例えば、ビニルアルコール/エチレン(60/40モル比)共重合体は、例えば分子量約11,700で、平均粒径約11.5ミクロン、または分子量(重量平均)約60,000で、平均粒径50ミクロン未満のような、分子量と結晶化度の異なる粉末の形状で得られる。
【0033】
次いで、澱粉とエチレン・ビニルアルコール共重合体の各種ブレンドはこの技術分野の習熟者に良く知られた混合方法で調製することができる。例えば、“分解澱粉とエチレン共重合体を含む重合体組成物”と題される、バスチオリ(Bastioli)、ベロッチー(Bellotti)およびデル トレディウ(Del Trediu)による米国特許第5,403,374号明細書で説明されている方法を用いることができるだろう。
【0034】
他の可塑剤は、それらが適切なTgと澱粉相溶性要件を有しているなら、例えば一種またはそれ以上の適当な有機二塩基酸と脂肪族若しくは芳香族ジオール(一種または複数種)とを、時にエステル化縮合反応とも呼ばれている反応で反応させることにより合成することができるだろう。このようなエステル化反応はこの技術分野の習熟者には良く知られている。
【0035】
本発明の実施において、上述の無機充填材は、例えばカオリン粘土、タルク、ばらばらの短繊維、ポリエチレンおよびポリプロピレンの粒子のような熱可塑性樹脂粉末または他の強化用若しくは非強化性無機充填材の内の一種またはそれ以上から選ぶことができる。
【0036】
このような追加の無機充填材には、ゴム組成物の混練若しくは調製に普通に用いられる酸化亜鉛、酸化チタン等のような顔料は除かれ、即ち包含されないものとする。
【0037】
このような追加の短繊維は、例えばセルロース、アラミド、ナイロンおよびポリエステルのような有機高分子材料のものである。
【0038】
実際には、澱粉/合成可塑剤・複合材は約0から約30重量パーセント、或いはまた約1から約6重量パーセントの範囲の水分を含んでいる。
【0039】
実際には、前に指摘したように、このエラストマー強化材は、(i)澱粉/可塑剤・複合材と少くとも一種のカーボンブラックおよび(任意に添加される)沈降シリカとの組み合せ、或いは(ii)澱粉/可塑剤、カーボンブラックおよび(任意に添加される)沈降シリカおよび少くとも一種の他の無機充填材との組み合せでありことができ、このとき、その澱粉複合材および(シリカを使用するなら)シリカをジエン系エラストマー(一種または複数種)に結合させるためのカップラーも用いられる。
【0040】
本発明では、その澱粉複合材は、硬化ゴム、即ち加硫ゴムの組成物に望まれる性質にある程度依存して、硫黄硬化性エラストマー用のカーボンブラック強化材を部分的に置き換えて使用できると考えられる。
【0041】
実際には、ゴム強化用カーボンブラックは、そのカーボンブラックの構造にある程度依存して少くとも5phr、好ましくは少くとも35phrの量でその澱粉複合材と組み合せて用いられることが一般に推奨される。カーボンブラックの構造はそのDBP(ジブチルフタレート)値で代表されることが多い。強化用カーボンブラックは、普通、約40から約400cc/100gの範囲、より普通には約80から約300の範囲のDBP値(ASTM D1265)を有する。認められる程度の静電気の発生を遅延若しくは防止するのに適した導電率を有するエラストマー組成物を提供する観点からカーボンブラックの使用量を考えると、そのエラストマー組成物中のカーボンブラックの最低量は、高導電性のカーボンブラックが用いられる場合には、例えば約10phrであり、さもなくば、通常少くとも約25phr、そしてしばしば少くとも約35phrのカーボンブラックが用いられる。
【0042】
若し望まれるなら、そして実用的根拠から、この澱粉/可塑剤・複合材用のカップラーは、シリカが用いられているならシリカ用に用いられるカップラーと同じ物でよく、それが通常好ましい。かくして、澱粉/可塑剤・複合材の表面と反応するそのカップラーの部位は、シリカ表面に普通存在するヒドロキシル基(例えば、SiOH)および/他の反応性基とも反応性である。
【0043】
この澱粉複合材は、エラストマー複合材中のカーボンブラックの全量を置き換える物としては用いられないのが好ましいことに気づくことが重要である。かくして、一つの態様では、この澱粉複合材は、硫黄硬化性エラストマー用のカーボンブラック強化材を部分的に置き換える物として普通用いられると考えられる。
【0044】
澱粉は澱粉/可塑剤・複合材との組み合せで用いられるが、本発明では、それらは同等の代替物とは考えられないことを認識することが重要である。かくして、澱粉は、時には、カップラーと併用してエラストマー組成物用の強化材として適していると考えられるだろうが、澱粉/可塑剤・複合材それ自身はカップラーなしで用いる場合でも幾つかの用途ではより望ましいと考えられる。
【0045】
シリカがカーボンブラックと共に強化材として用いられる場合には、シリカとカーボンブラックとの重量比は約0.1/1から約10/1の範囲の重量比であるのが望ましく、従って少くとも0.1/1、或いはまた少くとも0.9/1、場合により少くとも3/1、そして時には少くとも10/1である。
【0046】
シリカカップラーと澱粉複合材および(シリカが用いられているなら)シリカとの重量比は、例えば約0.01/1から約0.2/1若しくは約0.4/1までもの範囲であることができる。
【0047】
澱粉はアミロース単位および/またはアミロペクチン単位から成ると報告されている。これらは良く知られた澱粉の成分である。普通、澱粉は約25/75の比でアミロース単位とアミロペクチン単位との組み合せから成る。本明細書では、可塑剤とある程度異なる相互作用をする、澱粉複合材用の澱粉を提供するために、幾分広い範囲のアミロース単位とアミロペクチン単位との比が示されている。例えば、本発明では、適切な比は約20/80から約100/0であることができると考えられるが、ただしより適切な比は約15/85から約35/65であると考えられる。
【0048】
澱粉は、前に示したように、天然起源の植物から得られる。この澱粉/可塑剤・組成物は、例えばフィブリル状、球状若しくは高分子状のような様々の微粒子形態で存在することが可能で、その形状は、一面では、その澱粉中のアミロースとアミロペクチンとの比に、さらにはその複合材中の可塑剤含量にある程度依存する。
【0049】
澱粉のそのような形状に相対的重要性があるとすれば、それはその充填材の形態構造に関連するその強化性能における差である。その充填材の形態構造が主としてそのエラストマー組成物中での澱粉複合材の最終形状を決め、さらに高せん断および高温のような過酷な混合条件により、充填材の最終形態構造の最適化が可能になる。かくして、その澱粉複合材は混合後に前述の形の一つまたはそれ以上の形状を取ることができる。
【0050】
澱粉はそれ単独では親水性であることを認識することが重要であって、それは水を結合若しくは吸収する強い傾向を持っていることを意味する。かくして、澱粉および/または澱粉複合材の水分含有量は本明細書で前に考察したとおりである。これは、本発明の実施において重要な、若しくは望ましい特色であると考えられるものである。何故なら、水も澱粉と共にある程度可塑剤として作用することができ、そしてポリビニルアルコールおよび酢酸セルロース、若しくはポリビニルアルコールおよび/または酢酸セルロースのエステル基のような類似の官能基を含む他の可塑剤などの、澱粉複合材用の可塑剤自体、または澱粉の融解点を低下させることができる任意の可塑剤と会合し得ることも多いからである。
【0051】
各種品種の澱粉/可塑剤・複合材が開発され、様々なエラストマー組成物と共に各種加工条件で使用することが可能である。
【0052】
前に指摘したように、澱粉は、アミロース単位とアミロペクチン単位との比に、さらには他の因子にある程度依存して、普通約180℃から約220℃の範囲の軟化点を有しており、従ってゴムが常用の方法で、例えば約140℃から約165℃の範囲の温度で混合された場合、容易には軟化しない。従って、そのゴムの混合後に、澱粉は、ゴムがその混練成分と混合されている時に発生する大きいせん断力によりある程度引き伸ばされるが、固体の微粒子状のままで残る。かくして、澱粉は殆どゴムと混ざり合わないで残り、普通ゴム組成物中で個々のドメインの中に存在している。
【0053】
しかし、澱粉と可塑剤の澱粉複合材の形で澱粉を提供することが、約110℃から約160℃の範囲の軟化点を有する組成物を提供するのに特に好都合であると今は考えられている。
【0054】
可塑剤は、普通、例えば適当な物理的混合法、特に十分なせん断力を与える混合法によりそのような澱粉と結合される。
【0055】
澱粉と、例えばポリビニルアルコールまたは酢酸セルロースとのこの組み合せは本明細書で“複合材”と呼ばれている。正確な機構は完全には分からないが、この組み合せは単なる混合物ではなく、化学的および/または物理的相互作用の結果であると考えられる。この相互作用が、澱粉分子がアミロースを介して、例えば可塑剤分子のビニルアルコールと相互作用して、恐らく分子鎖の絡み合いを含めて錯体を生成する構造に導くと考えられる。大きい個々のアミロース分子は、一分子当たり数個の点で水素結合が生成する結果、個々のアミロペクチンと相互連結されると考えられる(さもなければ、親水性相互作用の性質を持つているとも言える)。
【0056】
このことは、澱粉複合材の天然成分と合成成分の含有量および/またはそれら成分間の比を変えることにより、澱粉成分と可塑剤成分との間の疎水性相互作用と親水性相互作用のバランスを変えることが、そして例えばその澱粉複合材充填材を球状粒子からフィブリル形状に変えることが可能になると考えられるので、本発明での利点であると考えられる。
【0057】
特に、澱粉にポリビニルアルコールを添加してその複合材を作ることは、特にそのポリビニルアルコールが約90℃から約130℃の範囲の軟化点を有する場合に都合が良く、得られる澱粉/可塑剤・複合材は約110℃から約160℃の範囲の軟化点を有し、それにより、例えば約110℃から約165℃若しくは170℃の範囲の温度での混合工程中にゴム組成物と良く混合する澱粉複合材を提供することができるので、便利であると考えられる。
【0058】
本発明のさらなる態様では、本発明の澱粉/可塑剤・複合材‐含有ゴム組成物からなる少くとも一つの成分を有するタイヤが提供される。かかるタイヤ成分は、限定されるものではないが、トレッド、トレッドベース或いはトレッド・アンダートレッド、タイヤ・インナーライナー、サイドウォール・アペックス、タイヤ・ショルダー用ウエッジ、サイドウォール、カーカスプライおよびブレーカー・ワイヤ被覆用ゴム組成物、ビード絶縁用ゴム組成物、およびそのタイヤ構造物の様々な部分に取り付けるためのクッション若しくはゴム紐の内の少くとも一つであることができる。ここで用いられるトレッドおよびトレッドベースは、ここでは、合わせて“トレッド”若しくは“外周トレッド”と呼ばれる。このようなタイヤ成分はこの技術分野の習熟者には良く知られている。
【0059】
本発明の態様上の特徴として、上述のタイヤ成分がそのトレッドであれば、本発明のゴム組成物からなる外周トレッドを有するタイヤが提供される。この技術分野の習熟者には良く知られているように、このようなタイヤトレッドは、普通地面接地面用に設計されている。
【0060】
本発明のさらなる態様として、本発明のゴム組成物のサイドウォール・アペックスを有するタイヤが提供される。
【0061】
経験的に言えば、そのゴムへのゴムコンパウンド成分の分散がより均一であればある程、得られるその硬化されたゴムの性質はより良好になる。高せん断条件下、約140℃から約165℃の範囲の温度でのゴムの混合中に、澱粉複合材がゴム組成物と、そのゴム混合物中で非常に良好な分散が得られるように混ざることが、本発明の1つの特定の特徴であると考えられる。このことは、澱粉/可塑剤・複合材を含むエラストマー組成物をその複合材の融解温度に達する温度まで混合すると、そのゴム組成物中での成分の分散に好都合であると考えられる高せん断力の発現のためにその澱粉複合材が貢献するから、重要であると考えられる。澱粉複合材の融解点以上、例えば150℃付近で澱粉複合材は融解し、カップリング剤との反応は最大限度に達する。
【0062】
一つの態様では、硫黄で硬化されるかかるゴム組成物を提供することができる。硫黄硬化は常用の方法、即ち温度と圧力を上げた条件下で適切な時間硬化させることにより行われる。
【0063】
本発明の実施においては、上に指摘したように、ゴム組成物は少くとも一種のジエン系エラストマー、即ちゴムを含んでなり、かくしてそのエラストマーは硫黄硬化性エラストマーと考えられる。このジエン系エラストマーはイソプレンおよび1,3‐ブタジエンの単独重合体および、イソプレンおよび/または1,3‐ブタジエンと、スチレンおよびα‐メチルスチレンの内の少くとも一種から選ばれる芳香族ビニル化合物との共重合体の少くとも一種から選ばれる。従って、このようなエラストマー、即ちゴムは、例えばシス1,4‐ポリイソプレンゴム(天然および/または合成ゴムで、好ましくは天然ゴム)、3,4‐ポリイソプレンゴム、スチレン/ブタジエン共重合体ゴム、イソプレン/ブタジエン共重合体ゴム、スチレン/イソプレン共重合体ゴム、スチレン/イソプレン/ブタジエン三元共重合体ゴム、シス1,4‐ポリブタジエンゴム、およびビニル1,2‐含有量が約15から約85パーセントの範囲である中乃至高ビニル含量のポリブタジエンゴム、並びに乳化重合で合成されたブタジエン/アクリロニトリル共重合体の内の少くとも一種から選ぶことができる。上記の中乃至高ビニル含量ポリブタジエンゴムは、ここでは、より簡単に、高ビニルポリブタジエンと呼ばれることもある。
【0064】
少くとも二種のジエン系ゴムのこのゴム組成物が推奨される。
【0065】
1つの態様では、約20から約30パーセントの結合スチレンを含む比較的普通のスチレン含量の乳化重合で合成されたスチレン/ブタジエンゴム(E‐SBR)が用いられることもあり、またある用途では中ないし比較的高い結合スチレン含量、即ち約30から約45パーセントの結合スチレン含量を有するE‐SBRが用いられることもある。
【0066】
E‐SBRでは、約30から約45パーセントと比較的高いスチレン含量がタイヤトレッドの静止摩擦特性またはスキッド抵抗性を高める目的に有益であると考えられる。E‐SBR自体の存在が、特に溶液重合で合成したSBR(S‐SBR)を利用した場合に比べて、未硬化エラストマー混合組成物の加工性を向上させる目的に有益であると考えられる。
【0067】
乳化重合で合成したE‐SBRとは、スチレンと1,3‐ブタジエンが水系エマルションとして共重合されていることを意味する。これは当該技術分野の習熟者には周知である。結合スチレン含量は、例えば約5から50%の範囲で変えることができる。
【0068】
約2から約50重量パーセントの結合アクリロニトリルを三元共重合体中に含む乳化重合で合成したスチレン/ブタジエン/アクリロニトリル三元共重合体ゴム(E−SBAR)も、本発明で用いられるジエン系ゴムとして意図される。
【0069】
溶液重合で合成されたSBR(S‐SBR)は、通常、約5から約50パーセント、好ましくは約9から約36パーセントの範囲の結合スチレンを含んでいる。そのブタジエン部分は約10から約50パーセントの範囲のビニル基を含んでいる。このS‐SBRは、例えば炭化水素系有機溶媒の存在下で有機リチウム触媒によってうまく製造することができる。
【0070】
S‐SBRを使用する目的はタイヤのころがり抵抗性を向上させることであって、それはS‐SBRがタイヤトレッド組成物のヒステリシスが一層小さくする傾向があるからである。
【0071】
3,4‐ポリイソプレンゴム(3,4‐PI)は、それがタイヤトレッド組成物中で用いられた時に、タイヤの静止摩擦特性を向上させる目的に有益であると考えられる。
【0072】
3,4‐PIおよびその利用は、本明細書で引用、参照するものとされる米国特許第5,087,668号明細書中でより十分に説明されている。Tgはガラス転移温度のことであり、示差走査熱量計により加熱速度10℃/分でうまく測定することができる。
【0073】
シス1,4‐ポリブタジエンゴム(BR)は、タイヤトレッドの耐摩耗性、即ち耐トレッド摩耗性を向上させる目的に有益であると考えられる。
【0074】
かかるBRは、例えば1,3‐ブタジエンの有機溶媒中での溶液重合によって製造することができる。
【0075】
このBRは、普通、例えば少くとも90%のシス1,4‐結合含量を有することを特徴とするものであるのが好都合である。
【0076】
シス1,4‐ポリイソプレンおよびシス1,4‐ポリイソプレン天然ゴムはゴムの技術分野の習熟者には周知である。
【0077】
本発明において任意に添加されるシリカとしては、熱分解法シリカ系および沈降シリカ系のピグメント(シリカ)を含めて、ゴムの混練用途で通常使用される各種シリカ系ピグメントを用いることができるが、沈降シリカが好ましい。
【0078】
本発明で好ましく用いられるシリカ系ピグメントは、例えば可溶性ケイ酸塩、例えばケイ酸ナトリウムの酸処理で得られるもののような沈降シリカである。
【0079】
このようなシリカは、例えば、窒素ガスを用いて測定したBET表面積が、好ましくは約40から約600m2/gの範囲、更に普通には約50から約300m2/gの範囲にあると言う特徴を有する。表面積を測定するこのBET法は、米国化学会誌(Journal of the American Chemical Society)、第60巻、304頁(1930年)に説明されている。
【0080】
シリカは、また、一般的には、約50から約400、更に普通には約100から約300の範囲のジブチルフタレート(DBP)吸収値を有することを特徴とするものである。
【0081】
シリカは、電子顕微鏡で測定して平均最大粒径が、例えば0.01から0.05ミクロンの範囲であると予想される。但し、シリカ粒子の大きさは、それより更に小さい場合も、或いは多分それより更に大きい場合もあり得る。
【0082】
各種の市販シリカが本発明での使用のために考えることができるが、単に例として、そして限定することなく示すと、PPGインダストリーズ社(PPG Industries)からハイ−シル(Hi‐Sil)という商標名で、210、243などの商品番号で市販されているシリカ;ローン・プーラン社(Rhone‐Poulenc)から、例えばゼオシル(Zeosil)1165MPという名称で市販されているシリカ;およびデグッサ社(Degussa AG)から、例えばVN2およびVN3として市販されているシリカ;さらにはエラストマー強化材用に使用できる他の品種のシリカ、特に沈降シリカがある。
【0083】
この技術分野の習熟者には容易に理解されるように、本発明のゴム組成物は、各種の硫黄硬化性成分ゴムを、例えば硫黄、活性化剤、遅延剤と促進剤のような硬化助剤、オイル、粘着性樹脂を含めて各種の樹脂、シリカおよび可塑剤のような加工助剤、充填材、顔料、脂肪酸、酸化亜鉛、ワックス、酸化防止剤とオゾン亀裂防止剤、素練り促進剤、および例えばカーボンブラックのような強化材のような、一般に用いられているさまざまな添加材料と混合する方法のような、ゴム混練技術分野で一般に知られている方法によって混練される。この技術分野の習熟者には知られているように、硫黄硬化性材料および硫黄硬化した材料(ゴム)の意図された用途に応じて、上記の添加物を選び、それを、普通、常用の量で使用する。
【0084】
粘着剤樹脂を使用するなら、その常用量は約0.5から約10phr、普通は約1から約5phrの範囲である。加工助剤の常用量は約1から約50phrである。このような加工助剤に、例えば芳香族系、ナフテン系および/またはパラフィン系のプロセスオイルがある。酸化防止剤の常用量は約1から約5phrである。代表的な酸化防止剤は、例えばジフェニル‐p‐フェニレンジアミン、および、例えばヴァンデルビルトのゴムハンドブック(Vanderbilt Rubber Handbook)(1978年)、344−346頁に開示されているもののようなその他の酸化防止剤であることができる。オゾン亀裂防止剤の常用量は約1から5phrである。脂肪酸の常用量は、若し使用されるなら、約0.5から約3phrである。この脂肪酸の例はステアリン酸であることができる。酸化亜鉛の常用量は約1から約10phrである。ワックスの常用量は約1から約5phrである。マイクロクリスタリンワックスがよく用いられる。素練り促進剤の常用量は約0.1から約1phrである。
【0085】
硬化は硫黄硬化剤の存在下で行われる。適した硫黄硬化剤の例に、元素硫黄(フリー硫黄)または硫黄供給性硬化剤、例えばアミンジスルフィド、高分子ポリスルフィドまたは硫黄−オレフィン付加体がある。好ましい硫黄硬化剤は元素硫黄である。この技術分野の習熟者に知られているように、硫黄硬化剤は約0.5から約4phrの範囲の量で使用され、場合によっては約8phrまでも用いられることもある。
【0086】
硬化促進剤は硬化に必要な時間および/または温度を調節し、硬化物の性質を改善するために用いられる。1つの態様では、単一の促進剤系、即ち一次促進剤が用い得る。通常、推奨される一次促進剤(1種または複数種)は総量で約0.5から約4phr、好ましくは約0.8から約1.5phrの範囲の量で用いられる。もう1つの態様では、一次促進剤と二次促進剤を組み合わせて用いることもあり、この場合硬化を活性化し、硬化物の性質を改善するために、二次促進剤の方をより少量(約0.05から約3phr)で使用する。これら促進剤の組み合わせには最終製品の性質に対して相乗効果を生むことが期待され、いずれかの促進剤を単独で用いて製造した物より幾分良好な性質を提供する。さらに、標準の加工温度では影響されないが、常用の硬化温度で満足な硬化をもたらす遅効型促進剤も用いることができる。硬化遅延剤が使用されることもある。本発明で使用することができる適したタイプの促進剤は、アミン類、ジスルフィド類、グアニジン類、チオ尿素類、チアゾール類、チウラム類、スルフェンアミド類、ジチオカーバメート類およびザンテート類である。一次促進剤はスルフェンアミド系化合物であるのが好ましい。二次促進剤が用いられる場合には、二次促進剤はグアニジン、ジチオカーバメートまたはチウラム系の各化合物であるのが好ましい。硫黄硬化剤またはペルオキシド硬化系、および促進剤(1種または複数種;もし使用されているなら)の存在や両者の相対量は、本発明の態様とは見なされず、本発明は、より一義的には、カップラーおよびカーボンブラックと組み合わせた強化用充填材として前記の澱粉複合材を用いることに関する。
【0087】
上記の添加剤の存在やその相対量は本発明の態様とは見なされず、本発明は、より一義的には、ゴムの強化のために前記の澱粉/可塑剤・複合材と組み合わせて、臨機応変にカーボンブラックおよび/または、場合によってはシリカおよび/または非−カーボンブラック系若しくは非−シリカ系充填材、および上記澱粉/可塑剤・複合材のためのカップラーを含む特定のブレンドをゴム組成物において使用することに関する。
【0088】
本発明のゴム組成物の混合は、ゴム混合技術分野の習熟者に知られている方法によって行うことができる。例えば、これら各成分は、通常、少なくとも二つの工程、即ち少なくとも一つの非硬化発現工程とそれに続く硬化発現混合工程で混合される。最終硬化剤は、普通、“硬化発現”混合工程と呼ばれる最終工程で混合され、この工程では、混合は、通常、それに先行する非硬化発現混合工程(1工程または複数工程)より低い混合温度(1つまたは複数)である温度若しくは最終温度で行われる。ゴム、澱粉複合材、並びにカーボンブラック、場合によって添加されるシリカとカップラーおよび/または非−カーボンブラック系および非−シリカ系充填材のような充填材が、1つまたはそれ以上の非硬化発現混合工程で混合される。“非硬化発現”および“硬化発現”混合工程という用語はゴム混合技術分野の習熟者には周知である。
【0089】
本発明のゴム組成物はさまざまな目的に使用できる。例えば、これは各種のタイヤコンパウンド用に使用できる。このようなタイヤはこの技術分野での習熟者に知られ、容易に明かになる種々の方法で組み立てられ、賦形され、成形され、そして硬化され得る。
【0090】
【実施例】
本発明は次の実施例を参照することにより更によく理解されるであろう。それらの実施例において、部およびパーセントは、特に断らない限りは、重量で与えられる。
【0091】
実施例1
本実施例では、ゴム強化材代替物として、カーボンブラック強化材の一部を置き換えることにより澱粉複合材が評価された。
【0092】
実験A、B、Cともに強化用充填材としてカーボンブラックを含んでいるが、実験Aは澱粉/可塑剤・複合材とカップラーを使用していない対照例と見なされるものである。実験Bは澱粉/可塑剤・複合材を使用しているが、カップラーを使用していない対照例と見なされるものである。本発明に係る実験Cでは澱粉/可塑剤・複合材と共にカップラーを使用し、そしてカーボンブラックの使用量を減らしている。
【0093】
使用した調合物は次の表1に示した成分を含んでいる。
【0094】
表1に示した材料を含むゴム組成物は、別々で逐次の四つの添加(混合)工程、即ち成分を添加混合する二つの非硬化発現混合工程、追加成分を添加しないもう一つの非硬化発現混合工程、および一つの最終硬化発現混合工程を用い、BRバンバリーゴム混合機中でそれぞれ温度175℃、165℃、150℃および125℃で、時間4分、4分、3分および2分間混合して調製された。カップラーは第2非硬化発現混合工程だけで澱粉複合材と共に加えられた。
【0095】
【表1】
Figure 0003676900
【0096】
1)エニケム社(Enichem Company)からSBR1721として入手した、スチレン含量40パーセントで、37.5phrのエクステンダーオイルを含む、乳化重合で合成したスチレン/ブタジエン共重合体エラストマー;
【0097】
2)シェル社(Shell Company)からカリフレックス(Cariflex)S5820として入手した、スチレン含量約31.5パーセントで、37.5phrのエクステンダーオイルを含む、乳化重合で合成したスチレン/ブタジエン共重合体エラストマー;
【0098】
3)シス1,4‐ポリイソプレン天然ゴム;
4)N‐234カーボンブラック;
5)高芳香族タイプ;
6)主としてステアリン酸;
7)混合アリール‐p‐フェニレンジアミン・タイプ;
【0099】
8)ノバモント‐モンテエジソン社(Novamont‐Montedison Company)からマター・バイ(Mater Bi)1128Rとして入手した、澱粉とポリ(エチレン・ビニルアルコール)の重量比が約1.5/1で、ASTM No.D1228による軟化点が約147℃の複合材;ここでその澱粉は重量比約1/3のアミロ−ス単位とアミロペクチン単位から成り、その水分含量は約5重量パーセントである;
【0100】
1)デグッサ社から材料X50Sとして市販されている、50/50重量比でカーボン ブラックに担持若しくは混合された有機シラン・テトラスルフィドから成る、活性 50%の複合物であるカップラー。技術的には、この有機シランポリスルフィドは 複合物若しくは混合物と考えられ、その中でその混合物は約2から約8個の連結硫 黄原子を有するポリスルフィドを含んでおり、その平均的ポリスルフィド橋は約3 .5から4個の連結硫黄原子を含んでいる。
【0101】
実施例2
実施例1で調製した組成物の硬化挙動と硬化物の性質を次の表2に示す。
この調合物では、澱粉複合材含有ゴム組成物またはコンパウンドで適切な硬化物の性質を得るには、カップリング剤を使用するのが望ましいことは明かである。このような性質には破断時引張り強さ、300%モジュラス値および23℃(室温)と100℃での反発弾性がある。
【0102】
【表2】
Figure 0003676900
【0103】
貯蔵モジュラス(75℃)、300%モジュラス並びに0℃および75℃でのタン・デルタの値は、澱粉/可塑剤・複合材は、シリカ・カップラーと共に用いると、カーボンブラック強化材の一部代替物として有利に利用できることを示している。これは、例えばこの澱粉/可塑剤・複合材のエラストマー強化材としての性質は、0℃で高いタン・デルタ値を保つために、そのゴム組成物の剛性(300%モジュラス)のチューニング、即ち微調整または調整を可能にするからである。これは、0℃のタン・デルタにとって重要であると考えられる。何故なら、0℃のタン・デルタ値はタイヤ・トレッドの湿潤時の静止摩擦特性を予言するからである。
【0104】
また、その応力‐ひずみ特性[即ち、75℃における300%モジュラスと貯蔵モジュラス(E)]も、カップリング剤なしで澱粉/可塑剤・複合材を用いた場合、その強化性は、300%モジュラスにより確認されるように、極限まで増大しないことを示している。かくして、実用上の目的には、この澱粉/可塑剤・複合材を用いると、(75℃でのタンデルタ値で立証されるように)タイヤの小さいころがり抵抗性が予測でき、または0℃におけるタンデルタ値が維持されていることから推定される(湿潤静止摩擦タイヤトレッド特性のような)湿潤時のタイヤトレッドの性質が改善されるか、少くとも同等であることが予測でき、(ショアA硬度の値で立証されるように)コンパウンド硬度および0℃での貯蔵モジュラス(E)が小さい低ヒステレシスのコンパウンドの調製が可能になる。
【0105】
実施例3
実施例1の対照試料Aおよび実験試料C組成物のトレッドを有する、サイズ195/65R15のタイヤを製造した。ここで、タイヤ1およびタイヤ2はそれぞれ上述の試料Aおよび試料Cに対応する。
【0106】
これらタイヤを常用のタイヤ試験法で試験し、結果を次の表3に示した。対照タイヤ1の試験値を100に規準化し、実験タイヤ2の関連値を対照タイヤ1の値に対する比較値として報告した。より高い値の方が好ましい。
【0107】
【表3】
Figure 0003676900
【0108】
それらのより大きいころがり抵抗値(実際には、ころがりに対する抵抗がより小さいことを示す)はタイヤの性質が改善されていることを示し、澱粉/可塑剤・複合材の使用がそのような改善に寄与していることを証明している。
【0109】
それらの湿潤時静止摩擦特性値は湿潤時のスキッド性が改善されていることを示し、澱粉/可塑剤・複合材の使用によりコンパウンドの剛さと、低温から高温の温度条件でのヒステレシス特性をうまく微調整できることを証明している。
【0110】
それらの耐トレッド摩耗性値はタイヤトレッドの摩耗性が維持されていることを示し、そのタイヤトレッド用のゴム組成物中のカーボンブラック含量を減らした場合、澱粉/可塑剤・複合材充填材がタイヤトレッドの耐トレッド摩耗性能を維持するための添加剤として寄与していることを証明している。
【0111】
乾燥および湿潤時の操縦試験値(一つまたはそれ以上)の改善は、澱粉/可塑剤・複合材の強化性能に関係している。この澱粉/可塑剤・複合材の強化材としての性能は、0℃で十分な動的性質(良好な乾燥、湿潤時操縦性およびスキッド特性を有するタイヤトレッドにとっての有意な必要要件であると考えられる)と共に、ゴム組成物の剛さを比較的小さく維持しながら、比較的大きい300%モジュラスを有するエラストマー組成物の調製を可能にすると考えられる。
【0112】
上に報告した値に関し、そのころがり抵抗性は、例えば標準試験条件を用いて測定することができる。ころがり抵抗性の報告された値がより高いのは、ころがり抵抗がより小さく、即ち改善されていることを意味し、その車両の燃費がより良くなる。
【0113】
湿潤静止摩擦特性の等級は、乗用車のホイールに取り付けた時のタイヤの湿潤スキッド性を比較することにより決められる。実際には、タイヤはその車の四つのホイールに取り付けられる。その車を所定の速度で道路(若しくはトラック)またはサーキットの様々な表面を走らせる。湿潤スキッド抵抗性の測定には、試験を行う前に、道路の表面に注水若しくは散水する。車にブレーキをかけて、その車が止まるまでの距離を測定し、対照タイヤと比較する。この総合的方法は、湿潤表面上であれ、乾燥表面上であれ、スキッド抵抗性を測定する多少共工業的な規格法であると考えられる。より小さい報告値は静止摩擦またはスキッド抵抗性がより小さいことを意味する。一般に、値が大きい方が好ましい。
【0114】
ミュー・ルゴシティー(mu rugosity)が大きい表面から小さい表面までの様々な表面が、静止摩擦特性の試験のために用いられる。
【0115】
この“ミュー・ルゴシティー”という用語は“道路のざらざらさのレベルとタイプにおける変化度”を意味する。
【0116】
特に、“湿潤スキッドアスファルト、低ミューABS”試験は、低ミュー表面上で自動車を運転することにより行われた。“低ミュー”という用語は“表面のざらざらさが小さい”ことを意味する。“ABS”という用語は“自動車での抗‐ブロッキン性ホイール・システム(an anti‐blocking wheel system on the automobile)”を意味する。
【0117】
“湿潤スキッド高ミュー”試験はテスト・サーキットで行われた。“高ミュー”という用語は“ざらざらさが大きい表面”と言うことを意味する。
【0118】
耐トレッド磨耗性は、金属性リムにタイヤを取り付け、得られた車輪アセンブリーを車両に取り付けることにより測定することができるもので、その車両は少くとも約10,000km走行せしめられた。元のタイヤでのトレッドの溝の深さ(トレッドの溝の最上部から底まで)の差を対照のタイヤと比較する。値が大きい方がトレッド寿命が長いことを意味する。
【0119】
乾燥時操縦試験は、自動車のホイール(複数のホイール若しくはどちらか一つのホイール)にタイヤを取り付けて行われた。その自動車は一人の運転者により普通の道路若しくはトラックで運転され、その乾燥時操縦の結果は運転者により主観的評価として報告される。値が高い方が操縦特性が対照のタイヤに比較して改善されていることを意味する。
【0120】
特に、“ステアリング精度”という用語は、“自動車のホイール(一つの若しくは複数)に取り付けて、運転者により道路若しくはトラックで運転された時、その車両の運転者によりなされる角度0の入力におけるタイヤの応答精度”を意味する。値が大きい方がステアリング精度が改善されていることを意味する。“ステアリング応答性”という用語は“角度0の回りでのタイヤの応答時間”を意味する。“角度0”という用語は“直線からのそのタイヤの方向”を意味する。かくして、そのタイヤは直線内を進むことになる。これは、その運転者による主観的評価である。値が大きい方が角度0におけるタイヤの応答時間が改善されたことを意味し、運転者の入力操作に対し、所定の応答をするための時間がより短いことを意味する。
【0121】
“応答曲線”という用語は、自動車に取り付け、その自動車を制御された車両速度で所定の道路カーブに沿って運転した時、運転者の入力操作に対する応答時間で表した、そのタイヤでのタイヤ応答性を意味する。値が大きい方が、運転者が一つの曲線上にタイヤの方向を合わせた時の応答時間が改善されていることを意味する。
【0122】
湿潤時操縦試験は、自動車若しくは乗用車[例えば、メルセデウス(Mercedes)300Eタイプ]のホイールにそのタイヤを取り付け、運転者がその乗用車を道路若しくは水を散布したトラックで運転して行われた。これはその運転者による主観的評価である。値が大きい方が操縦性若しくはタイヤ応答性および精度が改善されていることを意味する。
【0123】
以上、本発明を例示する目的で一定の代表的実施態様と細部を示したが、この技術分野の習熟者には、本発明にはその精神と範囲から逸脱することなしに様々な変更と改良がなされ得ることは明らかであろう。

Claims (2)

  1. 地面接地用に設計された外周トレッドを有するタイヤであって、該トレッドは下記の成分(A)(B)(C)を含むゴム組成物からなり
    (A)少くとも一種のジエン系エラストマー100重量部、
    (B)5から70phrの澱粉/可塑剤・複合材および25から85phrの強化用カーボンブラックからなる25から90phrのゴム強化用充填材
    (C)該澱粉/可塑剤・複合材用のカップラーであって、該澱粉/可塑剤・複合材の表面に含まれるヒドロキシル基と反応する部位と、該エラストマーと相互作用するもう一つの部位とを有していて、該澱粉は15/85から35/65の比のアミロ−ス単位とアミロペクチン単位から構成され、且つ該澱粉/可塑剤・複合材のASTM D1228による軟化点が110℃から160℃の範囲となることを前提として、該澱粉のASTM D1228による軟化点が180℃から220℃の範囲であるカップラー
    そして、該澱粉/可塑剤・複合材において、該可塑剤が160℃未満の軟化点を有し、そして該可塑剤がポリ(エチレン・ビニルアルコール)、酢酸セルロース、5から90モルパーセントの酢酸ビニルを含むエチレン‐酢酸ビニル共重合体およびその加水分解共重合体、エチレン‐グリシジルアクリレート共重合体、並びにエチレン‐無水マレイン酸共重合体のうちの少くとも一種から選ばれることを特徴とするタイヤ。
  2. 該トレッドにおいて、該ゴム組成物は、硬化したゴム粒子、カオリン粘土、雲母、タルク、酸化チタン、石灰石および短繊維から選ばれる少くとも一種の追加の充填材を含み、該短繊維はナイロン、アラミド、ポリエステルおよびセルロース系材料のうちの少くとも一種の繊維から選ばれることを特徴とする、請求項1に記載のタイヤ。
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