JP3552403B2 - ゴム組成物 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明はゴム組成物に関し、詳しくは、タイヤ、防振ゴム、ベルト等のゴム製品に好適に用いられ、加硫成形性を向上し得るゴム組成物に関する。
【0002】
【従来の技術】
一般的にゴム製品は、天然ゴム、スチレンブタジエンゴム等のポリマーにカーボンブラック等補強剤、軟化剤、老化防止剤等および加硫反応をさせるための加硫剤、加硫促進剤、加硫助剤等をバンバリー等で混練りしてゴム組成物となし、それを熱プレス等で圧力を加えて加熱(これを加硫という)して作る。
これらのゴム製品の製造工程においては、加硫工程のサイクルタイムがその前後の工程に比べて長く、ゴム製品の生産性の向上には加硫工程のサイクルタイムを短くする、すなわち加硫時間を短縮することが不可欠となっている。
【0003】
従来よりこの加硫時間を短縮するために、種々の検討が行われてきた。例えば、ゴム組成物の配合処方においては、加硫促進剤に加硫速度の速いものを選択すること、またチウラム系の加硫促進剤を併用すること等により、加硫時間を短くすることが試みられている。
一方、加工方法の面からは、ゴム組成物をできるだけ高温でモールド内に注入する加工方法であるインジェクションによる加硫を採用することで、加硫時間を短くすることが行われており、従来の加硫工程では最も加硫時間を短くできる加工方法であるとされている。
所謂射出成形法であるインジェクション加硫成形方法を適用した加硫工程においても、加硫時間短縮検討が進められており、そのためにゴム組成物を金型に注入する前に、射出成形機のプランジャー又はスクリュー内での予熱温度を高くしたり、射出圧を上げて射出発熱を高くすること等が検討されてる。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記のように加硫促進剤の選択によりゴム組成物の加硫速度を速くして加硫時間短縮を行った場合、確かに加硫時間を短くすることができるが、同時に加硫温度以下の比較的低温領域でも加硫反応が進行して、結果として、スコーチしやすい不安定なゴム組成物になる。すなわち、次ぎのような現象が発生する。
1)混練り時に、上述の加硫反応が始まりゴム組成物の高粘度化により正常にゴム組成物を混練することができなくなる。
2)混練した練りゴム組成物を放置した場合、短時間でスコーチしてしまい、次ぎのゴム製品の加硫工程ではゴム製品の生産をすることができなくなる。
3)又、加硫前のカレンダー等のシート圧延工程等の前処理時、このゴム組成物の加硫が始まり、正常なゴム組成物のシートが得られない。また、高速加硫促進剤の選定により加硫速度を速くした場合、加硫ゴム特性(耐熱性、耐疲労性等)を悪化させる場合も生じる。
【0005】
これらのゴム製品の成形法の1つである射出成形法、即ちインジェクション加硫方法においては、加硫時間を短縮するためにゴム組成物の予備加熱温度を高くする、又は射出圧力をを上げて射出発熱を高くすること等により、ゴム組成物をさらに高温で金型に注入し加硫時間の短縮を試みることも行われているが、金型に射出注入する前にゴム組成物が加硫を始めて流動性が悪くなり、このゴム組成物を金型内に注入することができなくなるという問題もあった。
【0006】
又、このような問題を解決する手段として特開昭48−25042に示すように、加硫反応をさせるための加硫剤、加硫促進剤、加硫助剤等の表面を高分子の皮膜で被覆した配合剤、すなわちマイクロカプセル状に成形した、所謂カプセル化配合剤をゴム素原料に混練したゴム組成物を用いれば、加硫速度を制御することができるとする知見もある。
しかしながら、この方法においては、皮膜材料が樹脂等の高分子物質であるため、加硫温度以下の低温領域でも、芯材たる加硫剤などがゴム素原料に移行して加硫が進行してしまうことがあった。
【0007】
本発明は、上記事情に鑑みなされたもので、ゴム組成物を加工、加硫する際に、ゴム組成物に付与される温度領域に応じて、加硫速度を制御してゴム製品を得ることのできるゴム組成物を提供することにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記目的を達成するために鋭意検討を重ねた結果、加硫剤、又は加硫促進剤の表面に金属をコーティングすることにより、加硫剤又は加硫促進剤を直接反応するゴム素原料と接触させないで加硫反応を抑えることができることを見いだし、本発明を完成した。
即ち、本発明の請求項1に記載のゴム組成物は、加硫剤または加硫促進剤の少なくともいずれか一方を芯材、融点が200℃以下である金属を膜材として、前記芯材の表面を前記膜材でコーティングしてなる粒状物を含有することを特徴としている。
又、本発明の請求項2に記載のゴム組成物は、前記粒状物の粒径が100μm以下であることを特徴としている。
【0009】
【発明の実施の形態】
本発明は、加硫剤、加硫促進剤の少なくともいずれか一方を芯材、金属を膜材としてこの芯材をコーティングして粒状物となし、この粒状物を含有するゴム組成物としたので、芯材の加硫剤又は加硫促進剤は金属が融解するまでは移行等により粒状物から析出等してゴム素原料と直接接触することはなく加硫反応を抑えることができる。
コーティングする金属として予備加熱等加硫の前処理、前工程の温度領域(加硫温度より低温)では融解しないで加硫温度で融解する金属を選択することにより、前処理前工程の温度領域では加硫が抑えられ、加硫温度に加熱すると金属が融解して液状になり、芯材の加硫剤等がゴム素原料と直接接触して加硫が開始する。
従って、従来では使用できないような高速加硫を目的とした加硫促進剤を使用することが容易となり、加硫温度領域では加硫速度が速く低温領域ではスコーチしないゴム組成物を得ることが可能となる。
【0010】
本発明のゴム組成物には加硫剤が使用され、その使用される加硫剤としては、イオウが一般的であるが、その他過酸化物等特に制約はない。
【0011】
又、加硫促進剤も使用され、その使用される加硫促進剤としては、MBT(2−メルカプトベンゾチアゾール)、CBS(N−シクロヘキシル−2−ベンゾチアジルスルフェンアミド)、MBTS(ジベンゾチアジルジスルフィド)等のチアゾール系、TMTD(テトラメチルチウラムジスルフィド)等チウラム系等特に制約はない。
【0012】
膜材としてコーティングする金属は、融点が200℃以下で加硫反応に対して不活性であれば特に制約はない。更に好ましい温度範囲は120〜180℃である。
このコーティングに適した低融点の金属としては、Bi(ビスマス)、Pb(鉛)、Sn(錫)、Cd(カドミウム)、In(インジウム)、Zn(亜鉛)、Sb(アンチモン)、Hg(水銀)等の2種元素以上からなる合金であって、Sn−Bi合金、Bi−Pb合金、Bi−Pb−Cd合金,Bi−Sn−Zn合金、Bi−Pb−Sn−Cd合金などが挙げられるが、望ましくはSn系合金、Bi系合金である。
【0013】
膜材でコーティングした加硫剤、加硫促進剤の粒状物の粒径は、100μm以下、更に好ましくは50μm以下が推奨される。100μm超の場合、低温で加硫速度を抑える効果は十分に発揮できるが、加硫した物性は低下する傾向にありあまり好ましくない。
本発明に用いられる膜材の量は粒状物の3〜80重量%が好ましい。 更に好ましい量は10〜50重量%である。
【0014】
本発明のゴム組成物に使用される粒状物の膜材を形成する製膜方法としては、一般に知られる金属又はそれらの化合物の薄膜生成法である真空蒸着法(真空室中で壁膜物質を気化させ、固体芯材物質上に壁膜物質の蒸気を凝縮させてカプセル化膜を形成させる方法)及び噴霧乾燥法(壁膜物質を溶解させた溶液又は壁膜物質の溶融液に芯材物質を懸濁させて、噴霧、微粒化して瞬間的に固化させて、カプセル化膜を形成させる方法)などが好適である。
【0015】
本発明のゴム組成物に使用される粒状物の膜材は金属とされているが、粒状物の強度を補強するために更に樹脂を第2の膜材として金属の表面に形成しても構わない。さらには、芯材のイオウ等に樹脂をコーティングするか、樹脂とイオウとをブレンドして芯材を補強しこの芯材に金属の膜材を形成して粒状物としても本発明の加硫速度を制御する目的を達成することができる。
【0016】
本発明のゴム組成物のゴム材料としては、天然ゴム、SBR、BR、IR、CR、IIR、NBR等の通常のゴムを挙げることができる。
【0017】
本発明のゴム組成物には、ゴム粗原料100重量部に対して、カーボンブラック10〜150重量部が配合される。カーボンブラックは充填剤として用いられるものであり、これによって諸物性の改良効果が大きくなる。使用されるカーボンブラックとしては、FEF、SRF、HAF、ISAF、SAF等のカーボンブラックが挙げられる。又、カーボンブラックに替えてシリカ等の無機物であっても構わない。
【0018】
本発明のゴム組成物は、ロール、インターナルミキサー等の混練り機を用いて混練りすることによって得られ、成形加工後、加硫を行って防振ゴム、ベルト、ホース、タイヤその他工業品などの用途にも用いることができるが、特に防振ゴムとして好適に使用される。
【0019】
【実施例】
以下に実施例及び比較例により本発明をより具体的に説明するが、本発明は下記実施例に限定されるものではない。
【0020】
[実施例]
1)サンプル調製
10μm程度のイオウ粉末(95重量%)に融点が140℃であるSn−Bi合金(5重量%)を真空蒸着装置にて表面コーティングしたものをサンプルとして実施例に使用した。
イオウをSn−Bi合金でコーティングしたもの(上記サンプル)の特性評価を行った配合は以下の通りである。
2)配合処方
前記サンプルを配合したゴム組成物は、イオウ、MBTS及びサンプル以外を、バンバリーミキサーで混練してマスターバッチを作成した。このマスターバッチを冷却後、4インチロールにてマスターバッチとイオウ、MBTS、MBT、サンプルをそれぞれ混練した。これらの配合処方、加硫速度、耐スコーチ性、物性等の評価結果は表1に示す。
【0021】
【表1】
Figure 0003552403
【0022】
3)評価結果
ア)未加硫ゴム特性(加硫速度)
加硫速度はキュラストメーター(JSR III 型)を用いて評価した。
即ち、キュラストメーターによるねじりトルクの最大値と最小値との差の10%+最小値に達するまでの時間をT10、90%+最小値に達するまでの時間をT90とした。このときの測定温度は105℃、165℃である。
実施例1の通り、105℃では若干ゴムは硬化するが、完全な加硫反応は起こらなかった。
165℃では比較例とほぼ同等の加硫速度で加硫している。
なお、若干ゴムが硬化したのはイオウ以外の加硫に寄与する薬剤、加硫促進剤、亜鉛華等によると推定する。
また、比較例で使用した加硫促進剤MBTSより速い加硫促進剤であるMBTを使用することで(実施例2)、加硫温度領域で従来より加硫時間が短くできて、加硫温度以下の低温ではスコーチしにくいゴム組成物が得られた。
以上により、加硫時間を短縮した場合のゴムがスコーチしやすくなり、ゴムヤケが発生しやすくなるという欠点は改善される。
【0023】
イ)加硫ゴム特性
硬度、強伸度についての測定法は、JIS6301に準拠した。
加硫ゴム特性は、金属でコーティングしたイオウを使用したものは、全て比較例と同等であり、実用上問題のない加硫ゴム特性である。
【0024】
ウ)耐スコーチ性
80℃のオーブン中に未加硫ゴムを一定時間入れた後の加硫速度の変化の測定結果を表1に示すが、これによってもゴム組成物のスコーチを大幅に抑える効果がみられる。
即ち、80℃のオーブン中に15時間放置すると、比較例ではゴムがスコーチしてしまうが、金属をコーティングしたイオウを用いた実施例1では、ゴム組成物のスコーチはほとんど見られなかった。
又、加硫促進剤を加硫速度の速いものに替えて、ゴム組成物の加硫速度を早くした場合一般的にスコーチし易くなるが、実施例2の通り金属をコーティングしたイオウを用いることで、実施例1と同様にスコーチを抑えることができ、従来までスコーチの問題で使用できなかった高速促進剤を使用することが可能になり、加硫時間の大幅な短縮が実現できる。
【0025】
【発明の効果】
ゴム組成物を加工、加硫する際に、ゴム組成物に付与される温度領域に応じて、加硫速度を制御してゴム製品を得ることのできるゴム組成物を提供することができる。

Claims (2)

  1. 加硫剤または加硫促進剤の少なくともいずれか一方を芯材、融点が200℃以下である金属を膜材として、前記芯材の表面を前記膜材でコーティングしてなる粒状物を含有することを特徴とするゴム組成物。
  2. 前記粒状物の粒径が100μm以下であることを特徴とする請求項1に記載のゴム組成物。
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