JP3579132B2 - 熱現像カラー感光材料 - Google Patents
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Description
【産業上の利用分野】
本発明は熱現像カラー感光材料に関するものであり、特にディスクリミネーション、ならびに生保存性に優れた熱現像カラー感光材料に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
ハロゲン化銀を用いた写真法は、他の写真法、たとえば電子写真やジアゾ写真に比べて感度や階調調節などの写真特性に優れているため、従来から最も広範に用いられてきた。特にカラーハードコピーとしては最高の画質が得られるため、昨今より精力的に研究されている。
【0003】
近年になって、ハロゲン化銀を用いた感光材料の画像形成処理法を従来の湿式処理から、現像液を内蔵するインスント写真システム、さらには加熱等による乾式熱現像処理などにより、簡易迅速に画像を得ることの出来るシステムが開発されてきた。熱現像感光材料については、「写真工学の基礎(非銀塩写真編)コロナ社刊」p.242 〜にその内容の記載があるが、その内容としてはドライシルバーを代表とした、白黒画像形成法にとどまっている。最近、熱現像カラー感光材料としては、3M社からカラードライシルバー、富士写真フイルム(株)社からピクトログラフィー、ピクトロスタットといった商品が発売されている。上記の簡易迅速処理法では、前者はロイコ染料、後者はプレフォームドダイを連結したレドックス性色材を用いたカラー画像形成を行っている。写真感光材料のカラー画像形成法としては、カプラーと現像主薬酸化体のカップリング反応を利用する方法が最も一般的であり、この方法を採用した熱現像カラー感光材料についても、米国特許第3,761,270号、同第4,021,240号、特開昭59−231539号、同60−128438号等、多くのアイデアが出願されている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
発明者らも上記のカップリング型熱現像カラー感光材料について検討を行ったが、米国特許第4,021,240号、特開昭60−128438号等に記載されているようなスルホンアミドフェノールは、感光材料に内蔵する場合、生保存性に優れた化合物であることがわかった。また、カップリング方式では、プレフォームドダイを連結した色材を使用したシステムに比べ、カプラーが処理前は可視域に吸収を持たないため、感度の点で有利であり、プリント材料のみならず撮影材料としても使用できるという利点がある。
ところが、上記特許に記載されているような、低分子のスルホンアミドフェノールを還元剤として用いた場合、十分な濃度のカップリング画像が得られないことがわかった。これは特に、少量の水を用いた熱現像処理において顕著であり、このような処理では、低分子の還元剤では全く画像が得られないケースも認められた。
従って、本発明の目的は画像識別性(ディスクリミネーション)ならびに生保存性に優れた熱現像カラー感光材料を与えることにある。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明の目的は、支持体上に少なくとも感光性ハロゲン化銀、バインダー、カプラー、および還元剤を有する熱現像カラー感光材料において、該還元剤が下記一般式〔1〕で表される化合物であることを特徴とする熱現像カラー感光材料によって達成された。
一般式〔1〕
【0006】
【化2】
【0007】
式中、R1 〜R5 は水素原子又は置換基を表し、R5 は置換基を表す。R1 〜R5 のうち、1つ以上の基はバラスト基を含有する。但し、R1 〜R4 のハメット定数σP 値の合計は0以上である。
【0008】
まず、一般式〔1〕で表される化合物について詳しく述べる。
一般式〔1〕で表される化合物は、還元剤(現像主薬)を表すが、バラスト基を有することを特徴としている。
式中、R1 〜R4 は水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、アリール基、アルキルカルボンアミド基、アリールカルボンアミド基、アルキルスルホンアミド基、アリールスルホンアミド基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アルキルチオ基、アリールチオ基、アルキルカルバモイル基、アリールカルバモイル基、カルバモイル基、アルキルスルファモイル基、アリールスルファモイル基、スルファモイル基、シアノ基、アルキルスルホニル基、アリールスルホニル基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、アルキルカルボニル基、アリールカルボニル基、またはアシルオキシ基を表す。水素原子およびハロゲン原子以外の基は置換基を有するものを含む。
R5 はアルキル基、アリール基、または複素環基を表す。これらは置換基を有するものを含む。
【0009】
特に、R1 〜R4 は水素原子、ハロゲン原子(例えばクロル基、ブロム基)、アルキル基(例えばメチル基、エチル基、イソプロピル基、n−ブチル基、t−ブチル基)、アリール基(たとえばフェニル基、トリル基、キシリル基)、アルキルカルボンアミド基(例えばアセチルアミノ基、プロピオニルアミノ基、ブチロイルアミノ基)、アリールカルボンアミド基(例えばベンゾイルアミノ基)、アルキルスルホンアミド基(例えばメタンスルホニルアミノ基、エタンスルホニルアミノ基)、アリールスルホンアミド基(例えばベンゼンスルホニルアミノ基、トルエンスルホニルアミノ基)、アルコキシ基(例えばメトキシ基、エトキシ)、アリールオキシ基(例えばフェノキシ基)、アルキルチオ基(例えばメチルチオ基、エチルチオ基、ブチルチオ基)、アリールチオ基(例えばフェニルチオ基、トリルチオ基)、アルキルカルバモイル基(例えばメチルカルバモイル基、ジメチルカルバモイル基、エチルカルバモイル基、ジエチルカルバモイル基、ジブチルカルバモイル基、ピペリジルカルバモイル基、モルホリルカルバモイル基)、アリールカルバモイル基(例えばフェニルカルバモイル基、メチルフェニルカルバモイル基、エチルフェニルカルバモイル基、ベンジルフェニルカルバモイル基)、カルバモイル基、アルキルスルファモイル基(例えばメチルスルファモイル基、ジメチルスルファモイル基、エチルスルファモイル基、ジエチルスルファモイル基、ジブチルスルファモイル基、ピペリジルスルファモイル基、モルホリルスルファモイル基)、アリールスルファモイル基(例えばフェニルスルファモイル基、メチルフェニルスルファモイル基、エチルフェニルスルファモイル基、ベンジルフェニルスルファモイル基)、スルファモイル基、シアノ基、アルキルスルホニル基(例えばメタンスルホニル基、エタンスルホニル基)、アリールスルホニル基(例えばフェニルスルホニル基、4−クロロフェニルスルホニル基、p−トルエンスルホニル基)、アルコキシカルボニル基(例えばメトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基、ブトキシカルボニル基)、アリールオキシカルボニル基(例えばフェノキシカルボニル基)、アルキルカルボニル基(例えばアセチル基、プロピオニル基、ブチロイル基)、アリールカルボニル基(例えばベンゾイル基、アルキルベンゾイル基)、またはアシルオキシ基(例えばアセチルオキシ基、プロピオニルオキシ基、ブチロイルオキシ基)を表す。
R1 〜R4 の中で、R2 およびR4 は好ましくは水素原子である。また、R1 〜R4 のハメット定数σP 値の合計は0以上であり、好ましくは0〜2、特に好ましくは0〜1.5である。
【0010】
R5 は好ましくは、アルキル基(例えばメチル基、エチル基、ブチル基、オクチル基、ラウリル基、セチル基、ステアリル基)、アリール基(例えばフェニル基、トリル基、キシリル基、4−メトキシフェニル基、ドデシルフェニル基、クロロフェニル基、トリクロロフェニル基、ニトロクロロフェニル基、4−ドデシルオキシフェニル基、3,5−ジ−(メトキシカルボニル)基)、または複素環基(例えばピリジル基)を表す。
【0011】
R1 〜R5 の中には、炭素数8以上のバラスト基を有する基が少なくとも1つ含まれる。ここでいうバラスト基とは油溶化基を表し、炭素数8以上80以下、好ましくは10以上40以下の油溶性部分構造を含む基である。
【0012】
以下に、一般式〔1〕で表される化合物の具体例を示すが、本発明の化合物はもちろんこれによって限定されるものではない。
【0013】
【化3】
【0014】
【化4】
【0015】
【化5】
【0016】
【化6】
【0017】
【化7】
【0018】
【化8】
【0019】
一般式〔1〕で表わされる化合物の合成例を説明する。以下に示した化合物以外の一般式〔1〕に含まれる化合物も同様にして容易に合成することができる。
【0020】
〈現像主薬D−1の合成〉
以下のScheme−1に従う合成ルートによって、現像主薬D−1を合成した。
【0021】
【化9】
【0022】
1)化合物A→B
コンデンサーを取り付けた1lの3ッ口フラスコに、アセトニトリル500ml、ジエチルアミン73g(1モル)、トリエチルアミン101g(1モル)を仕込み、メタノール−氷浴上で攪拌しながら0℃以下に保つ。ここに、化合物A269g(1.05モル)を1時間かけて加える。この時、フラスコ内の温度は10℃以下に保つようにする。添加終了後、冷却浴をはずし、室温条件下1時間攪拌する。この反応混合物を氷水10lに投入し、析出した結晶を濾別する。この粗結晶をイソプロピルアルコール1lから再結晶して、化合物Bの結晶272gを得た(収率93%)。
【0023】
2)化合物B→C
コンデンサーを取り付けた1lの3ッ口フラスコに、ジメチルスルホキシド400ml、化合物B117g(0.4モル)を仕込み、室温条件下攪拌して完全に溶解する。ここに水酸化カリウム112g(2モル)を水105mlに溶解したものを10分かけて滴下する。この後、水浴により、フラスコ内の温度を50℃まで上昇させ、1時間反応する。この反応混合物を、35%塩酸250mlを加えた氷水6lに投入し、析出した結晶を濾別する。この粗結晶をイソプロピルアルコールとヘキサンの混合溶媒300mlから再結晶して、化合物Bの結晶94gを得た(収率90%)。
【0024】
3)化合物C→D
コンデンサーを取り付けた3lの3ッ口フラスコに、イソプロパノール800ml、還元鉄の粉末100g、塩化アンモニウム10g、水100mlを仕込み、水蒸気バス中で緩やかに還流が始まるまで加熱する。ここに、化合物C100g(0.38モル)を、イソプロピルアルコール300mlに溶解したものを30分かけて滴下する。この時、滴下するたびに反応熱により激しく還流が起こるので、還流の状態を見極めながら徐々に滴下するようにする。滴下終了後、30分間攪拌を続けた後、セライトを敷いたヌッチェを用いて吸引濾過し、残存する鉄粉を濾別する。濾液をおよそ350mlまで濃縮した後、3lの氷水に加えて析出した結晶を濾別する。この粗結晶をメタノールを用いて再結晶して、化合物Dの結晶82gを得た(収率93%)。
【0025】
4)化合物D→E
Dean−Stark水分離装置を装着したコンデンサーを取り付けた2lの3ッ口フラスコに、トルエン1l、化合物D230g(1モル)、無水フタル酸148g(1モル)を仕込み、攪拌しながらオイルバスを用いて還流する。この時蒸留される水を計量し、理論量(18ml)に達してからさらに1時間還流した後、オイルバスを外して冷却する。析出した結晶を濾別し、さらに濾液からトルエンを減圧留去してでてきた結晶と合わせる。この粗結晶をメタノールを用いて再結晶して、化合物Eの結晶337gを得た(収率98%)。
【0026】
5)化合物E→F
コンデンサーを取り付けた1lの3ッ口フラスコに、酢酸500ml、化合物E108g(0.3モル)を仕込み、攪拌しながら湯浴を用いて70℃まで加温する。ここに濃硝酸(比重1.38、濃度61%)22.5ml(0.3モル)を1時間かけて滴下する。滴下終了後、濁っていた溶液が透明になり、その後に結晶が析出してくる。結晶の析出が始まってからさらに1時間反応させた後、室温まで冷却する。この結晶を濾別し、酢酸で洗浄して、化合物Fの結晶116gを得た(収率95%)。
【0027】
6)化合物F→G
コンデンサーを取り付けた5lの3ッ口フラスコに、N,N−ジメチルアセトアミド500ml、化合物F122g(0.3モル)を仕込み、攪拌して完全に溶解する。ここに酢酸エチル1lを加え、攪拌した後、60℃の温水2lを加え攪拌を続ける。ここに、ハイドロサルファイトナトリウム313g(1.8モル)を徐々に加える。添加終了後30分間攪拌の後、酢酸エチル相を分離し、水で2回洗浄する。この酢酸エチル相を無水硫酸マグネシウムで乾燥した後、乾燥剤を濾別し、減圧下およそ300mlまで濃縮する。これにn−ヘキサンを加えて冷却し、出てくる結晶を濾別し、化合物Gの結晶101gを得た(収率90%)。
【0028】
7)化合物G→H
コンデンサーを取り付けた1lの3ッ口フラスコに、アセトニトリル400ml、化合物G150g(0.4モル)を仕込み攪拌する。ここに無水プロピオン酸52gを加え、水蒸気浴を用いて1時間還流する。これを冷却した後、氷水4lに投入し、析出した結晶を濾別する。この粗結晶を酢酸エチルとヘキサンの混合溶媒300mlから再結晶して、化合物Hの結晶169gを得た(収率98%)。
【0029】
8)化合物H→I
コンデンサーを取り付けた2lの3ッ口フラスコに、エタノール1l、化合物H223g(0.5モル)を仕込み、窒素気流下、攪拌しながら抱水ヒドラジン30g(0.53モル)を滴下する。これを50℃の条件下1時間反応させると、白色のフタルヒドラジドが析出するので、これを熱時濾過する。濾液を10℃以下まで冷却し、析出した結晶を濾別してエタノールで洗浄する。これをアセトニトリルから再結晶して、化合物Iの結晶134gを得た(収率85%)。
【0030】
9)化合物I→J
空気冷却コンデンサーを取り付けた1lの3ッ口フラスコに、アセトニトリル400ml、化合物I158g(0.5モル)、ピリジン83g(0.53モル)を仕込み、室温条件下攪拌する。ここにn−セチルスルホニルクロライド179g(0.53モル)をアセトニトリル200mlに溶解したものを1時間かけて滴下する。この時内温は35℃まで上昇する。このまま2時間攪拌を続けた後、内容物を氷塩酸水4lに投入する。これを酢酸エチル1.5lで抽出し、水相を除く。酢酸エチル相を重曹水、水、さらに飽和食塩水で洗浄の後、無水硫酸マグネシウムで乾燥する。この溶液から減圧下、酢酸エチルを留去し、得られたオイル状の物質にメタノール600mlを加えて、攪拌しながら晶析して化合物Jの結晶287gを得た(収率95%)。
【0031】
〈現像主薬D−8の合成〉
以下のScheme−2に従う合成ルートによって、現像主薬D−8を合成した。
【0032】
【化10】
【0033】
1)化合物K→L
1lの3ッ口フラスコに、化合物K197g(1.0モル)、ジ−n−ブチルアミン285g(2.0モル)を仕込み、攪拌しながらアスピレーターで吸引して減圧状態に保ち、100℃でおよそ2時間反応する。アスピレーターのガラス部分にメタノールの凝結が認められなくなったら加熱を止め、室温まで冷却する。反応混合物を5lの冷希塩酸水溶液に加えると結晶が出てくるのでこれを濾別する。この粗結晶をメタノールを用いて再結晶して、化合物Lの結晶271gを得た(収率92%)。
【0034】
2)化合物L→M
コンデンサーを取り付けた3lの3ッ口フラスコに、イソプロパノール800ml、還元鉄の粉末100g、塩化アンモニウム10g、水100mlを仕込み、水蒸気バス中で緩やかに還流が始まるまで加熱する。ここに、化合物L100g(0.34モル)を、イソプロパノール300mlに溶解したものを30分かけて滴下する。この時、滴下するたびに反応熱により激しく還流が起こるので、還流の状態を見極めながら徐々に滴下するようにする。滴下終了後、30分間攪拌を続けた後、セライトを敷いたヌッチェを用いて吸引濾過し、残存する鉄粉を濾別する。濾液をおよそ350mlまで濃縮した後、3lの氷水に加えて析出した結晶を濾別する。この粗結晶をメタノールを用いて再結晶して、化合物Mの結晶84gを得た(収率93%)。
【0035】
3)化合物M→N
コンデンサーを取り付けた1lの3ッ口フラスコに、アセトニトリル400ml、化合物G132g(0.5モル)を仕込み攪拌する。ここに無水プロピオン酸69g(0.53モル)を加え、水蒸気浴を用いて1時間還流する。これを冷却した後、氷水4lに投入し、析出した結晶を濾別する。この粗結晶をエタノール300mlから再結晶して、化合物Hの結晶157gを得た(収率98%)。
【0036】
4)化合物N→O
コンデンサーを取り付けた1lの3ッ口フラスコに、酢酸300ml、化合物N96g(0.3モル)を仕込み、攪拌しながら湯浴を用いて55℃まで加温する。ここに濃硝酸(比重1.38、濃度61%)22.5ml(0.3モル)を1時間かけて滴下する。滴下終了後、濁っていた溶液が透明になり、その後に結晶が析出してくる。結晶の析出が始まってからさらに1時間反応させた後、室温まで冷却する。この結晶を濾別し、アセトニトリル250mlから再結晶して、化合物Oの結晶98gを得た(収率90%)。
【0037】
5)化合物O→P
コンデンサーを取り付けた5lの3ッ口フラスコに、イソプロパノール1300ml、還元鉄の粉末150g、塩化アンモニウム15g、水150mlを仕込み、水蒸気バス中で緩やかに還流が始まるまで加熱する。ここに、化合物O150g(0.41モル)を、イソプロパノール500mlに溶解したものを40分かけて滴下する。この時、滴下するたびに反応熱により激しく還流が起こるので、還流の状態を見極めながら徐々に滴下するようにする。滴下終了後、30分間攪拌を続けた後、セライトを敷いたヌッチェを用いて吸引濾過し、残存する鉄粉を濾別する。濾液をおよそ500mlまで濃縮した後、5lの氷水に加えて析出した結晶を濾別する。この粗結晶をエタノール300mlから再結晶して、化合物Pの結晶126gを得た(収率92%)。
【0038】
6)化合物Q→R
コンデンサーを取り付けた5lの3ッ口フラスコに、アセトニトリル1500ml、ポリエチレングリコール(重合度400)300ml、フェノール235g(2.5モル)、ラウリルブロマイド(Q)498g(2モル)、炭酸カリウム345g(2.5モル)を仕込み、水蒸気バス中で4時間還流する。冷却後、n−ヘキサン700mlで2回抽出し、ヘキサン相を集める。これを0.1N水酸化ナトリウム水溶液、水、さらに飽和食塩水で洗浄の後、無水硫酸マグネシウムで乾燥する。この溶液から減圧下、n−ヘキサンを留去し、オイル状の化合物R514gを得た(収率98%)。
【0039】
7)化合物R→S
コンデンサーを取り付けた3lの3ッ口フラスコに、ジクロロメタン1l、化合物R262g(1モル)を仕込み、攪拌しながらメタノール−氷浴を用いて、内温を0℃以下にする。ここにクロロスルホン酸256g(2.2モル)を2時間かけて滴下する。この時内温を10℃以下に保つ。滴下後、メタノール−氷浴を除き、室温でさらに2時間反応させる。内容物を5lの氷水に投入し、これを酢酸エチル−n−ヘキサン混合溶媒4lで抽出する。油相を飽和食塩水で洗浄の後、無水硫酸マグネシウムで乾燥する。この溶液から減圧下、酢酸エチルおよびn−ヘキサンを留去するとオイル状の物質が得られるので、これをアセトニトリル500mlを用いて晶析して、化合物Sの結晶307gを得た(収率85%)。
【0040】
8)化合物P,S→T
コンデンサーを取り付けた1lの3ッ口フラスコに、アセトニトリル500ml、化合物P134g(0.4モル)、化合物S152g(0.42モル)を仕込み、室温条件下攪拌する。ここにピリジン34g(0.42モル)を30分かけて滴下する。滴下後、2時間攪拌した後、反応混合物を3lの冷水に加える。結晶が析出したらこれを濾別し、メタノール500mlを用いて再結晶して、現像主薬I−8の結晶243gを得た(収率92%)。
【0041】
一般式〔1〕で表される現像主薬の添加量は広い範囲を持つが、好ましくはカプラーに対して0.01〜100モル倍、さらに好ましくは0.1〜10モル倍が適当である。
【0042】
一般式〔1〕で表される現像主薬の添加方法としては、まず、カプラー、現像主薬および高沸点有機溶媒(例えばリン酸アルキルエステル、フタル酸アルキルエステル等)を混合して低沸点有機溶媒(例えば酢酸エチル、メチルエチルケトン等)に溶解し、当該分野で公知の乳化分散法を用いて水に分散の後、添加することができる。また、特開昭63−271339号に記載の固体分散法による添加も可能である。
【0043】
本発明において、色素供与性化合物は、酸化カップリング反応によって色素を形成する化合物(カプラー)を使用する。このカプラーは4等量カプラーであっても2等量カプラーであってもよいが、本発明では4等量カプラーが好ましい。何故ならば、第一に本発明においては、還元剤のカップリング部位であるアミノ基が置換基によって保護されており、カップリング時にカプラー側のカップリング部位に置換基があると立体障害によって反応が阻害されるからである。第二に、この置換基はカップリング後、アニオンとして離脱するため、カプラー側の離脱基はカチオンとして離脱しなければならず、通常の2等量カプラーではこのような離脱基にはなりえないからである。カプラーの具体例は、4等量、2等量の両者ともセオリー・オブ・ザ・フォトグラフィック・プロセス(4th.Ed.T.H.James編集 Macmillan,1977)291頁〜334頁、および354頁〜361頁、特開昭58─12353号、同58─149046号、同58─149047号、同59─11114号、同59─124399号、同59─174835号、同59─231539号、同59─231540号、同60─2951号、同60─14242号、同60─23474号、同60─66249号などに詳しく記載されている。
【0044】
本発明に好ましく使用されるカプラーの例を以下に列挙する。
【0045】
本発明に好ましく使用されるカプラーとしては、以下の一般式〔2〕〜〔13〕に記載するような構造の化合物がある。これらはそれぞれ一般に活性メチレン、ピラゾロン、ピラゾロアゾール、フェノール、ナフトール、ピロロトリアゾールと総称される化合物であり、当該分野で公知の化合物である。
【0046】
【化11】
【0047】
【化12】
【0048】
【化13】
【0049】
一般式〔2〕〜〔5〕は活性メチレン系カプラーと称されるカプラーを表し、式中、R14は置換基を有してもよいアシル基、シアノ基、ニトロ基、アリール基、ヘテロ環基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、カルバモイル基、スルファモイル基、アルキルスルホニル基、アリールスルホニル基である。
【0050】
一般式〔2〕〜〔5〕において、R25は置換基を有してもよいアルキル基、アリール基、またはヘテロ環基である。一般式〔5〕において、R26は置換基を有してもよいアリール基またはヘテロ環基である。R24、R25、R26が有してもよい置換基としては、例えばアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、ヘテロ環基、アルコキシ基、アリールオキシ基、シアノ基、ハロゲン原子、アシルアミノ基、スルホンアミド基、カルバモイル基、スルファモイル基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、アルキルアミノ基、アリールアミノ基、水酸基、スルホ基等、種々の置換基を挙げることができる。R24の好ましい例としてはアシル基、シアノ基、カルバモイル基、アルコキシカルボニル基が挙げられる。
【0051】
一般式〔2〕〜〔5〕において、Yは水素原子または現像主薬酸化体とのカップリング反応により脱離可能な基である。Yの例として、カルボキシル基、ホルミル基、ハロゲン原子、(たとえば臭素、ヨウ素)、カルバモイル基、置換基を有するメチレン基(置換基としては、アリール基、スルファモイル基、カルバモイル基、アルコキシ基、アミノ基、水酸基等)、アシル基、スルホ基等が挙げられる。この中で、先述したようにYは水素原子が好ましい。
【0052】
一般式〔2〕〜〔5〕において、R24とR25、R24とR26は互いに結合して環を形成してもよい。
【0053】
一般式〔6〕は5−ピラゾロン系マゼンタカプラーと称されるカプラーを表し、式中、R27はアルキル基、アリール基、アシル基、またはカルバモイル基を表す。R28はフェニル基または1個以上のハロゲン原子、アルキル基、シアノ基、アルコキシ基、アルコキシカルボニル基、またはアシルアミノ基が置換したフェニル基を表す。Yについては一般式〔2〕〜〔5〕と同様である。
【0054】
一般式〔6〕で表される5−ピラゾロン系マゼンタカプラーの中でも、R27がアリール基またはアシル基、R28が1個以上のハロゲン原子が置換したフェニル基、Yが水素原子のものが好ましい。
【0055】
これら好ましい基について詳しく述べると、R17はフェニル、2−クロロフェニル、2−メトキシフェニル、2−クロロ−5−テトラデカンアミドフェニル、2−クロロ−5−(3−オクタデセニル−1−スクシンイミド)フェニル、2−クロロ−5−オクタデシルスルホンアミドフェニルまたは2−クロロ−5−〔2−(4−ヒドロキシ−3−t−ブチルフェノキシ)テトラデカンアミド〕フェニル等のアリール基、またはアセチル、ピバロイル、テトラデカノイル、2−(2,4−ジ−t−ペンチルフェノキシ)アセチル、2−(2,4−ジ−t−ペンチルフェノキシ)ブタノイル、ベンゾイル、3−(2,4−ジ−t−アミルフェノキシアセトアジド)ベンゾイル等のアシル基であり、これらの基はさらに置換基を有してもよく、それらは炭素原子、酸素原子、窒素原子、またはイオウ原子で連結する有機置換基またはハロゲン原子である。
【0056】
R28は2,4,6−トリクロロフェニル、2,5−ジクロロフェニル、2−クロロフェニル基等の置換フェニル基が好ましい。
【0057】
一般式〔7〕はピラゾロアゾール系カプラーと称されるカプラーを表し、式中、R29は水素原子または置換基を表す。Zは窒素原子を2〜4個含む5員のアゾール環を形成するのに必要な非金属原子群を表し、該アゾール環は置換基(縮合環を含む)を有してもよい。Yについては一般式〔2〕〜〔5〕と同様である。
【0058】
一般式〔7〕で表されるピラゾロアゾール系カプラーの中でも、発色色素の吸収特性の点で、米国特許第4500630号に記載のイミダゾ〔1,2−b〕ピラゾール類、米国特許第450654号に記載のピラゾロ〔1,5−b〕〔1,2,4〕トリアゾール類、米国特許第3725067号に記載のピラゾロ〔5,1−c〕〔1,2,4〕トリアゾール類が好ましく、光堅牢性の点で、これらのうちピラゾロ〔1,5−b〕〔1,2,4〕トリアゾール類が好ましい。
【0059】
置換基R29、YおよびZで表されるアゾール環の置換基の詳細については、例えば米国特許第4540654号明細書の第2カラム第41行〜第8カラム第27行に記載されている。好ましくは特開昭61−65245号に記載されているような分岐アルキル基がピラゾロトリアゾール基の2、3または6位に直結したピラゾロアゾールカプラー、特開昭61−65245号に記載されている分子内にスルホンアミド基を含んだピラゾロアゾールカプラー、特開昭61−147254号に記載されるアルコキシフェニルスルホンアミドバラスト基をもつピラゾロアゾールカプラー、特開昭62−209457号もしくは同63−307453号に記載されている6位にアルコキシ基やアリールオキシ基をもつピラゾロトリアゾールカプラー、および特願平1−22279号に記載される分子内にカルボンアミド基をもつピラゾロトリアゾールカプラーである。
【0060】
一般式〔8〕、〔9〕はそれぞれフェノール系カプラー、ナフトール系カプラーと称されるカプラーであり、式中、R30は水素原子または−NHCOR32、−SO2 NR32R33、−NHSO2 R32、−NHCOR32、−NHCONR32R33、−NHSO2 NR32R33から選ばれる基を表す。R32、R33は水素原子または置換基を表す。一般式〔8〕、〔9〕において、R31は置換基を表し、lは0〜2から選ばれる整数、mは0〜4から選ばれる整数を表す。Yについては一般式〔2〕〜〔5〕と同様である。R31〜R23としては前記R24〜R26の置換基として述べたものが挙げられる。
【0061】
一般式〔8〕で表されるフェノール系カプラーの好ましい例としては、米国特許第2369929号、同第2801171号、同第2772162号、同第2895826号、同第3772002号、等に記載の2−アルキルアミノ−5−アルキルフェノール系、米国特許第2772162号、同第3758308号、同第4126396号、同第4334011号、同第4327173号、西独特許公開第3329729号、特開昭59−166956号等に記載の2,5−ジアシルアミノフェノール系、米国特許第3446622号、同第4333999号、同第4451559号、同第4427767号等に記載の2−フェニルウレイド−5−アシルアミノフェノール系等を挙げることができる。
【0062】
一般式〔9〕で表されるナフトールカプラーの好ましい例としては、米国特許第2474293号、同第4052212号、同第4146396号、同第4228233号、同第4296200号等に記載の2−カルバモイル−1−ナフトール系および米国特許4690889号等に記載の2−カルバモイル−5−アミド−1−ナフトール系等を挙げることができる。
【0063】
一般式〔10〕〜〔13〕はピロロトリアゾールと称されるカプラーであり、R42、R43、R44は水素原子または置換基を表す。Yについては一般式〔2〕〜〔5〕と同様である。R42、R43、R44の置換基としては、前記R24〜R26の置換基として述べたものが挙げられる。一般式〔10〕〜〔13〕で表されるピロロトリアゾール系カプラーの好ましい例としては、欧州特許第488248A1号、同第491197A1号、同第545300号に記載の、R42、R43の少なくとも一方が電子吸引基であるカプラーが挙げられる。
【0064】
その他、縮環フェノール、イミダゾール、ピロール、3−ヒドロキシピリジン、活性メチン、5,5−縮環複素環、5,6−縮環複素環といった構造を有するカプラーが使用できる。
【0065】
縮環フェノール系カプラーとしては、米国特許第4327173号、同第4564586号、同第4904575号等に記載のカプラーが使用できる。
【0066】
イミダゾール系カプラーとしては、米国特許第4818672号、同第5051347号等に記載のカプラーが使用できる。
【0067】
ピロール系カプラーとしては特開平4−188137号、同4−190347号等に記載のカプラーが使用できる。
【0068】
3−ヒドロキシピリジン系カプラーとしては特開平1−315736号等に記載のカプラーが使用できる。
【0069】
活性メチン系カプラーとしては米国特許第5104783号、同第5162196号等に記載のカプラーが使用できる。
【0070】
5,5−縮環複素環系カプラーとしては、米国特許第5164289号に記載のピロロピラゾール系カプラー、特開平4−174429号に記載のピロロイミダゾール系カプラー等が使用できる。
【0071】
5,6−縮環複素環系カプラーとしては、米国特許第4950585号に記載のピラゾロピリミジン系カプラー、特開平4−204730号に記載のピロロトリアジン系カプラー、欧州特許第556700号に記載のカプラー等が使用できる。
【0072】
本発明には前述のカプラー以外に、西独特許第3819051A号、同第3823049号、米国特許第4840883号、同第5024930号、同第5051347号、同第4481268号、欧州特許第304856A2号、同第329036号、同第354549A2号、同第374781A2号、同第379110A2号、同第386930A1号、特開昭63−141055号、同64−32260号、同32261号、特開平2−297547号、同2−44340号、同2−110555号、同3−7938号、同3−160440号、同3−172839号、同4−172447号、同4−179949号、同4−182645号、同4−184437号、同4−188138号、同4−188139号、同4−194847号、同4−204532号、同4−204731号、同4−204732号等に記載されているカプラーも使用できる。
【0073】
本発明に使用できるカプラーの具体例を以下に示すが、本発明はもちろんこれによって限定されるわけではない。
【0074】
【化14】
【0075】
【化15】
【0076】
【化16】
【0077】
【化17】
【0078】
【化18】
【0079】
【化19】
【0080】
【化20】
【0081】
【化21】
【0082】
【化22】
【0083】
【化23】
【0084】
【化24】
【0085】
【化25】
【0086】
【化26】
【0087】
【化27】
【0088】
カプラーの添加量は、そのモル吸光係数(ε)にもよるが、反射濃度で1.0以上の画像濃度を得るためには、カップリングにより生成する色素のεが5000〜500000程度のカプラーの場合、塗布量として0.001〜100ミリモル/m2程度、好ましくは0.01〜10ミリモル/m2、さらに好ましくは0.05〜5ミリモル/m2程度が適当である。
【0089】
本発明のカラー感光材料は、基本的には支持体上に感光性ハロゲン化銀、色素供与性化合物としてカプラー、還元剤、バインダーを有するものであり、さらに必要に応じて有機金属塩酸化剤などを含有させることができる。これらの成分は同一の層に添加することが多いが、反応可能な状態であれば別層に分割して添加することができる。
【0090】
イエロー、マゼンタ、シアンの3原色を用いて色度図上の広範囲の色を得るためには、少なくとも3層のそれぞれ異なるスペクトル領域に感光性を持つハロゲン化銀乳剤層を組み合わせて用いる。たとえば青感層、緑感層、赤感層の3層、緑感層、赤感層、赤外感層の組み合わせなどがある。各感光層は通常のカラー感光材料で知られている種々の配列順序を採ることができる。また、これらの各感光層は必要に応じて2層以上に分割してもよい。
【0091】
感光材料には、保護層、下塗り層、中間層、アンチハレーション層、バック層等の種々の補助層を設けることができる。さらに色分離性を改良するために種々のフィルター染料を添加することもできる。
【0092】
一般に写真感材の処理においては塩基を必要とするが、本発明の感材においては、さまざまな塩基供給方法が採用できる。例えば、感材側に塩基発生機能を与える場合、塩基プレカーサーとして感光材料中に導入することが可能である。このような塩基プレカーサーとしては、例えば熱により脱炭酸する有機酸と塩基の塩、分子内求核置換反応、ロッセン転位またはベックマン転位によりアミン類を放出する化合物などがある。この例については、米国特許第4514493号、同4657848号等に記載されている。
【0093】
また、感材と処理シートを重ね合わせて処理する形態を用いる場合、処理シート中に塩基または塩基プレカーサーを導入する方法も使用することができる。この場合の塩基としては、無機塩基のほかにアミン誘導体のような有機塩基を使用することもできる。
【0094】
さらに感材側と処理シート側それぞれに塩基プレカーサーを含有させ、2者の反応によって塩基を発生させる反応も利用可能である。このような2剤反応型の塩基発生方法の例としては、例えば難溶性塩基性金属塩とキレート剤の反応によるものや、求核剤とエポキシ化合物の反応によるもの等が利用可能である。この例については、特開昭63−198050号等に記載がある。
本発明に使用し得るハロゲン化銀乳剤は、塩化銀、臭化銀、沃臭化銀、塩臭化銀、塩沃化銀、塩沃臭化銀のいずれでもよい。
本発明で使用するハロゲン化銀乳剤は、表面潜像型乳剤であっても、内部潜像型乳剤であってもよい。内部潜像型乳剤は造核剤や光カブラセとを組合わせて直接反転乳剤として使用される。また、粒子内部と粒子表層が異なる相を持ったいわゆるコアシェル乳剤であってもよく、またエピタキシャル接合によって組成の異なるハロゲン化銀が接合されていても良い。ハロゲン化銀乳剤は単分散でも多分散でもよく、特開平1−167,743号、同4−223,463号記載のように単分散乳剤を混合し、階調を調節する方法が好ましく用いられる。粒子サイズは0.1〜2μm、特に0.2〜1.5μmが好ましい。ハロゲン化銀粒子の晶癖は立方体、8面体、14面体のような規則的な結晶を有するもの、球状、高アスペクト比の平板状のような変則的な結晶系を有するもの、双晶面のような結晶欠陥を有するもの、あるいはそれらの複合系その他のいずれでもよい。
具体的には、米国特許第4,500,626号第50欄、同4,628,021号、リサーチ・ディスクロージャー誌(以下RDと略記する) No.17,029(1978年)、同 No.17,643(1978年12月)22〜23頁、同 No.18,716(1979年11月)648頁、同 No.307,105(1989年11月)863〜865頁、特開昭62−253,159号、同64−13,546号、特開平2−236,546号、同3−110,555号、およびグラフキデ著「写真の物理と化学」、ポールモンテル社刊(F. Glafkides, Chemie et Phisique Photographique, Paul Montel, 1967)、ダフィン著「写真乳剤化学」、フォーカルプレス社刊(G. F. Duffin, Photographic Emulsion Chemistry, Focal Press, 1966)、ゼリクマンら著「写真乳剤の製造と塗布」、フォーカルプレス社刊(V. L. Zelikman et al., Making and Coating Photographic Emulsion, Focal Press, 1964)等に記載されている方法を用いて調製したハロゲン化銀乳剤のいずれもが使用できる。
【0095】
本発明の感光性ハロゲン化銀乳剤を調製する過程で、過剰の塩を除去するいわゆる脱塩を行うことが好ましい。このための手段として、ゼラチンをゲル化させて行うヌーデル水洗法を用いても良く、また多価アニオンより成る無機塩類(例えば硫酸ナトリウム)、アニオン性界面活性剤、アニオン性ポリマー(例えばポリスチレンスルホン酸ナトリウム)、あるいはゼラチン誘導体(例えば脂肪族アシル化ゼラチン、芳香族アシル化ゼラチン、芳香族カルバモイル化ゼラチンなど)を利用した沈降法を用いても良い。沈降法が好ましく用いられる。
【0096】
本発明で使用する感光性ハロゲン化銀乳剤は、種々の目的でイリジウム、ロジウム、白金、カドミウム、亜鉛、タリウム、鉛、鉄、オスミウムなどの重金属を含有させても良い。これらの化合物は、単独で用いても良いしまた2種以上組み合わせて用いても良い。添加量は、使用する目的によるが一般的には、ハロゲン化銀1モルあたり10−9〜10−3モル程度である。また含有させる時には、粒子に均一に入れてもよいし、また粒子の内部や表面に局在させてもよい。具体的には、特開平2−236,542号、同1−116,637号、同5−181246号等に記載の乳剤が好ましく用いられる。
【0097】
本発明の感光性ハロゲン化銀乳剤の粒子形成段階において、ハロゲン化銀溶剤としてロダン塩、アンモニア、4置換チオエーテル化合物や特公昭47−11,386号記載の有機チオエーテル誘導体または特開昭53−144,319号に記載されている含硫黄化合物等を用いることができる。
【0098】
その他の条件については、前記のグラフキデ著「写真の物理と化学」、ポールモンテル社刊(F. Glafkides, Chemie et Phisique Photographique, Paul Montel, 1967)、ダフィン著「写真乳剤化学」、フォーカルプレス社刊(G. F. Duffin, Photographic Emulsion Chemistry, Focal Press, 1966)、ゼリクマンら著「写真乳剤の製造と塗布」、フォーカルプレス社刊(V. L. Zelikman et al., Making and Coating Photographic Emulsion, Focal Press, 1964)等の記載を参照すれば良い。すなわち酸性法、中性法、アンモニア法のいずれでもよく、また可溶性銀塩と可溶性ハロゲン塩を反応させる形式としては片側混合法、同時混合法、それらの組み合わせのいずれを用いてもよい。単分散乳剤を得るためには、同時混合法が好ましく用いられる。
粒子を銀イオン過剰の下において形成させる逆混合法も用いることができる。同時混合法の一つの形式としてハロゲン化銀の生成される液相中のpAgを一定に保つ、いわゆるコントロールドダブルジェット法も用いることができる。
【0099】
また、粒子成長を早めるために、添加する銀塩およびハロゲン塩の添加濃度、添加量、添加速度を上昇させてもよい(特開昭55−142,329号、同55−158,124号、米国特許第3650757号等)。
さらに反応液の攪拌方法は、公知のいずれの攪拌方法でもよい。またハロゲン化銀粒子形成中の反応液の温度、pHは、目的に応じてどのように設定してもよい。好ましいpH範囲は2.2〜8.5、より好ましくは2.5〜7.5である。
【0100】
感光性ハロゲン化銀乳剤は通常は化学増感されたハロゲン化銀乳剤である。本発明の感光性ハロゲン化銀乳剤の化学増感には、通常型感光材料用乳剤で公知の硫黄増感法、セレン増感法、テルル増感法などのカルコゲン増感法、金、白金、パラジウムなどを用いる貴金属増感法および還元増感法などを単独または組合わせて用いることができる(例えば特開平3−110,555号、同5−241267号など)。これらの化学増感を含窒素複素環化合物の存在下で行うこともできる(特開昭62−253,159号)。また後掲するかぶり防止剤を化学増感終了後に添加することができる。具体的には、特開平5−45,833号、特開昭62−40,446号記載の方法を用いることができる。
化学増感時のpHは好ましくは5.3〜10.5、より好ましくは5.5〜8.5であり、pAgは好ましくは6.0〜10.5、より好ましくは6.8〜9.0である。
本発明において使用される感光性ハロゲン化銀乳剤の塗設量は、銀換算1mgないし10g/m2の範囲である。
【0101】
本発明に用いられる感光性ハロゲン化銀に緑感性、赤感性、赤外感性の感色性を持たせるためには、感光性ハロゲン化銀乳剤をメチン色素類その他によって分光増感する。また、必要に応じて青感性乳剤に青色領域の分光増感を施してもよい。
用いられる色素には、シアニン色素、メロシアニン色素、複合シアニン色素、複合メロシアニン色素、ホロポーラーシアニン色素、ヘミシアニン色素、スチリル色素およびヘミオキソノール色素が包含される。
具体的には、米国特許第4,617,257号、特開昭59−180,550号、同64−13,546号、特開平5−45,828号、同5−45,834号などに記載の増感色素が挙げられる。
これらの増感色素は単独に用いてもよいが、それらの組合わせを用いてもよく、増感色素の組合わせは特に、強色増感や分光感度の波長調節の目的でしばしば用いられる。
増感色素とともに、それ自身分光増感作用を持たない色素あるいは可視光を実質的に吸収しない化合物であって、強色増感を示す化合物を乳剤中に含んでもよい(例えば米国特許第3,615,641号、特開昭63−23,145号等に記載のもの)。
これらの増感色素を乳剤中に添加する時期は化学熟成時もしくはその前後でもよいし、米国特許第4,183,756号、同4,225,666号に従ってハロゲン化銀粒子の核形成前後でもよい。またこれらの増感色素や強色増感剤は、メタノールなどの有機溶媒の溶液、ゼラチンなどの分散物あるいは界面活性剤の溶液で添加すればよい。添加量は一般にハロゲン化銀1モル当り10−8ないし10−2モル程度である。
【0102】
このような工程で使用される添加剤および本発明の熱現像感光材料や色素固定材料に使用できる公知の写真用添加剤は、前記のRD No.17,643、同 No.18,715および同 No.307,105に記載されており、その該当箇所を下記の表にまとめる。
【0103】
【0104】
熱現像感光材料の構成層のバインダーには親水性のものが好ましく用いられる。その例としては前記のリサーチ・ディスクロージャーおよび特開昭64−13,546号の(71)頁〜(75)頁に記載されたものが挙げられる。具体的には、透明か半透明の親水性バインダーが好ましく、例えばゼラチン、ゼラチン誘導体等の蛋白質またはセルロース誘導体、澱粉、アラビアゴム、デキストラン、プルラン等の多糖類のような天然化合物とポリビニールアルコール、ポリビニルピロリドン、アクリルアミド重合体等の合成高分子化合物が挙げられる。また、米国特許第4,960,681号、特開昭62−245,260号等に記載の高吸水性ポリマー、すなわち−COOMまたは−SO3 M(Mは水素原子またはアルカリ金属)を有するビニルモノマーの単独重合体またはこのビニルモノマーどうし、もしくは他のビニルモノマーとの共重合体(例えばメタクリル酸ナトリウム、メタクリル酸アンモニウム、住友化学(株)製のスミカゲルL−5H)も使用される。これらのバインダーは2種以上組み合わせて用いることもできる。特にゼラチンと上記バインダーの組み合わせが好ましい。またゼラチンは、種々の目的に応じて石灰処理ゼラチン、酸処理ゼラチン、カルシウムなどの含有量を減らしたいわゆる脱灰ゼラチンから選択すれば良く、組み合わせて用いることも好ましい。
【0105】
本発明においては、感光性ハロゲン化銀乳剤と共に、有機金属塩を酸化剤として併用することもできる。このような有機金属塩の中で、有機銀塩は、特に好ましく用いられる。
上記の有機銀塩酸化剤を形成するのに使用し得る有機化合物としては、米国特許第4,500,626号第52〜53欄等に記載のベンゾトリアゾール類、脂肪酸その他の化合物がある。また米国特許第4,775,613号記載のアセチレン銀も有用である。有機銀塩は、2種以上を併用してもよい。
以上の有機銀塩は、感光性ハロゲン化銀1モルあたり、0.01〜10モル、好ましくは0.01〜1モルを併用することができる。感光性ハロゲン化銀乳剤と有機銀塩の塗布量合計は銀換算で0.05〜10g/m2、好ましくは0.1〜4g/m2が適当である。
本発明の熱現像感光材料には、現像の活性化と同時に画像の安定化を図る化合物を用いることができる。好ましく用いられる具体的化合物については米国特許第4,500,626号の第51〜52欄に記載されている。また、特願平6−206331号に記載されているような、ハロゲン化銀を定着し得る化合物を使用することもできる。
【0106】
熱現像感光材料の構成層に用いる硬膜剤としては、前記リサーチ・ディスクロージャー、米国特許第4,678,739号第41欄、同4,791,042号、特開昭59−116,655号、同62−245,261号、同61−18,942号、特開平4−218,044号等に記載の硬膜剤が挙げられる。より具体的には、アルデヒド系硬膜剤(ホルムアルデヒドなど)、アジリジン系硬膜剤、エポキシ系硬膜剤、ビニルスルホン系硬膜剤(N,N′−エチレン−ビス(ビニルスルホニルアセタミド)エタンなど)、N−メチロール系硬膜剤(ジメチロール尿素など)、あるいは高分子硬膜剤(特開昭62−234,157号などに記載の化合物)が挙げられる。
これらの硬膜剤は、塗布されたゼラチン1gあたり0.001〜1g、好ましくは0.005〜0.5gが用いられる。また添加する層は、感光材料や色素固定材料の構成層のいずれの層でも良いし、2層以上に分割して添加しても良い。
【0107】
熱現像感光材料の構成層には、種々のカブリ防止剤または写真安定剤およびそれらのプレカーサーを使用することができる。その具体例としては、前記リサーチ・ディスクロージャー、米国特許第5,089,378号、同4,500,627号、同4,614,702号、特開昭64−13,546号(7)〜(9)頁、(57)〜(71)頁および(81)〜(97)頁、米国特許第4,775,610号、同4,626,500号、同4,983,494号、特開昭62−174,747号、同62−239,148号、同63−264,747号、特開平1−150,135号、同2−110,557号、同2−178,650号、RD17,643(1978年)(24)〜(25)頁等記載の化合物が挙げられる。
これらの化合物は、銀1モルあたり5×10−6〜1×10−1モルが好ましく、さらに1×10−5〜1×10−2モルが好ましく用いられる。
【0108】
熱現像感光材料の構成層には、塗布助剤、剥離性改良、スベリ性改良、帯電防止、現像促進等の目的で種々の界面活性剤を使用することができる。界面活性剤の具体例は前記リサーチ・ディスクロージャー、特開昭62−173,463号、同62−183,457号等に記載されている。
熱現像感光材料の構成層には、スベリ性改良、帯電防止、剥離性改良等の目的で有機フルオロ化合物を含ませてもよい。有機フルオロ化合物の代表例としては、特公昭57−9053号第8〜17欄、特開昭61−20944号、同62−135826号等に記載されているフッ素系界面活性剤、またはフッ素油などのオイル状フッ素系化合物もしくは四フッ化エチレン樹脂などの固体状フッ素化合物樹脂などの疎水性フッ素化合物が挙げられる。
【0109】
熱現像感光材料には、接着防止、スベリ性改良、非光沢面化などの目的でマット剤を用いることができる。マット剤としては二酸化ケイ素、ポリオレフィンまたはポリメタクリレートなどの特開昭61−88256号(29)頁記載の化合物の他に、ベンゾグアナミン樹脂ビーズ、ポリカーボネート樹脂ビーズ、AS樹脂ビーズなどの特開昭63−274944号、同63−274952号記載の化合物がある。その他前記リサーチ・ディスクロージャー記載の化合物が使用できる。これらのマット剤は、最上層(保護層)のみならず必要に応じて下層に添加することもできる。
その他、熱現像感光材料の構成層には、熱溶剤、消泡剤、防菌防バイ剤、コロイダルシリカ等を含ませてもよい。これらの添加剤の具体例は特開昭61−88256号第(26)〜(32)頁、特開平3−11,338号、特公平2−51,496号等に記載されている。
【0110】
本発明において熱現像感光材料には画像形成促進剤を用いることができる。画像形成促進剤には銀塩酸化剤と還元剤との酸化還元反応の促進、色素生成反応の促進等の機能があり、物理化学的な機能からは塩基または塩基プレカーサー、求核性化合物、高沸点有機溶媒(オイル)、熱溶剤、界面活性剤、銀または銀イオンと相互作用を持つ化合物等に分類される。ただし、これらの物質群は一般に複合機能を有しており、上記の促進効果のいくつかを合せ持つのが常である。これらの詳細については米国特許4,678,739号第38〜40欄に記載されている。
【0111】
本発明において熱現像感光材料には、現像時の処理温度および処理時間の変動に対し、常に一定の画像を得る目的で種々の現像停止剤を用いることができる。
ここでいう現像停止剤とは、適正現像後、速やかに塩基を中和または塩基と反応して膜中の塩基濃度を下げ現像を停止する化合物または銀および銀塩と相互作用して現像を抑制する化合物である。具体的には、加熱により酸を放出する酸プレカーサー、加熱により共存する塩基と置換反応を起す親電子化合物、または含窒素ヘテロ環化合物、メルカプト化合物及びその前駆体等が挙げられる。更に詳しくは特開昭62−253,159号(31)〜(32)頁に記載されている。
【0112】
熱現像感光材料に画像を露光し記録する方法としては、例えばカメラなどを用いて風景や人物などを直接撮影する方法、プリンターや引伸機などを用いてリバーサルフィルムやネガフィルムを通して露光する方法、複写機の露光装置などを用いて、原画をスリットなどを通して走査露光する方法、画像情報を電気信号を経由して発光ダイオード、各種レーザー(レーザーダイオード、ガスレーザーなど)などを発光させ走査露光する方法(特開平2−129,625号、同5−176144号、同5−199372号、同6−127021号、等に記載の方法)、画像情報をCRT、液晶ディスプレイ、エレクトロルミネッセンスディスプレイ、プラズマディスプレイなどの画像表示装置に出力し、直接または光学系を介して露光する方法などがある。
【0113】
熱現像感光材料へ画像を記録する光源としては、上記のように、自然光、タングステンランプ、発光ダイオード、レーザー光源、CRT光源などの米国特許第4,500,626号第56欄、特開平2−53,378号、同2−54,672号記載の光源や露光方法を用いることができる。
また、非線形光学材料とレーザー光等のコヒーレントな光源を組み合わせた波長変換素子を用いて画像露光することもできる。ここで非線形光学材料とは、レーザー光のような強い光電界をあたえたときに現れる分極と電界との間の非線形性を発現可能な材料であり、ニオブ酸リチウム、リン酸二水素カリウム(KDP)、沃素酸リチウム、BaB2 O4 などに代表される無機化合物や、尿素誘導体、ニトロアニリン誘導体、例えば3−メチル−4−ニトロピリジン−N−オキシド(POM)のようなニトロピリジン−N−オキシド誘導体、特開昭61−53462号、同62−210432号に記載の化合物が好ましく用いられる。波長変換素子の形態としては、単結晶光導波路型、ファイバー型等が知られておりそのいずれもが有用である。
また、前記の画像情報は、ビデオカメラ、電子スチルカメラ等から得られる画像信号、日本テレビジョン信号規格(NTSC)に代表されるテレビ信号、原画をスキャナーなど多数の画素に分割して得た画像信号、CG、CADで代表されるコンピューターを用いて作成された画像信号を利用できる。
【0114】
本発明の熱現像感光材料は、加熱現像のための加熱手段として導電性の発熱体層を有する形態であっても良い。この場合の発熱要素には、特開昭61−145,544号等に記載のものを利用できる。
熱現像工程での加熱温度は、約80℃〜180℃であり、加熱時間は0.1秒〜60秒である。
【0115】
現像工程における加熱方法としては、加熱されたブロックやプレートに接触させたり、熱板、ホットプレッサー、熱ローラー、熱ドラム、ハロゲンランプヒーター、赤外および遠赤外ランプヒーターなどに接触させたり、高温の雰囲気中を通過させる方法などがある。
熱現像感光材料と色素固定材料を重ね合わせる方法は特開昭62−253,159号、特開昭61−147,244号(27)頁記載の方法が適用できる。
【0116】
本発明の感光材料の支持体としては、当該分野、特に熱現像感光材料の支持体として公知のものを使用することができる。このような支持体としては、例えばポリエチレンでラミネートした紙支持体、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレートに代表されるポリエステル支持体等を挙げることができる。このような支持体の例としては、特開昭63−189860号にその詳細な記載がある。
【0117】
本発明の感光材料の支持体には、上記に挙げたもののほかに、シンジオタクチック構造を有するスチレン系重合体ポリマーを延伸した支持体も好ましく使用できる。このポリマー支持体は、既述のものと同様、単独重合体でも、共重合体でもよい。このようなポリマー支持体については、特願平7−45079号にその詳細な記載がある。
【0118】
【実施例】
以下、実施例によって本発明の効果を詳しく説明する。
実施例1
〈感光性ハロゲン化銀乳剤の調製方法〉
【0119】
感光性ハロゲン化銀乳剤(1)〔赤感乳剤層用〕
良く攪拌しているゼラチン水溶液(水540ml中にゼラチン16g、臭化カリウム0.24g、塩化ナトリウム1.6gおよび化合物(a)24mgを加えて55℃に加温したもの)に表1の(1)液と(2)液を同時に19分間等流量で添加した。5分後さらに表1の(3)液と(4)液を同時に24分間等流量で添加した。常法により水洗、脱塩した後、石灰処理オセインゼラチン17.6gと化合物(b)56mgを加えて、pHを6.2、pAgを7.7に調整し、リボ核酸分解物0.41g、トリメチルチオ尿素1.02mgを加え、60℃で最適に化学増感した。この後、4−ヒドロキシ−6−メチル−1,3,3a,7−テトラザインデン0.18g、増感色素(c)64mg、臭化カリウム0.41gを順次加え、その後冷却した。このようにして、平均粒子サイズ0.30μmの単分散立方体塩臭化銀乳剤590gを得た。
【0120】
【表1】
【0121】
【化28】
【0122】
感光性ハロゲン化銀乳剤(2)〔緑感乳剤層用〕
良く攪拌しているゼラチン水溶液(水600ml中にゼラチン20g、臭化カリウム0.30g、塩化ナトリウム2.0gおよび化合物(a)30mgを加えて46℃に加温したもの)に表2の(1)液と(2)液を同時に10分間等流量で添加した。5分後さらに表2の(3)液と(4)液を同時に30分間等流量で添加した。また、(3)、(4)液の添加終了1分後に増感色素のメタノール溶液60ml(増感色素(d1 )360mgと増感色素(d2 )73.4mgを含む)を一括して添加した。常法により水洗、脱塩(沈降剤(e)を用いてpH4.0で行った)した後、石灰処理オセインゼラチン22gを加えて、pHを6.0、pAgを7.6に調整し、チオ硫酸ナトリウム1.8mg、4−ヒドロキシ−6−メチル−1,3,3a,7−テトラザインデン180mgを加え、60℃で最適に化学増感した。次いでカブリ防止剤(f)90mg、防腐剤として化合物(b)70mgと化合物(g)3mlを加えた後冷却した。このようにして、平均粒子サイズ0.30μmの単分散立方体塩臭化銀乳剤635gを得た。
【0123】
【表2】
【0124】
【化29】
【0125】
【化30】
【0126】
感光性ハロゲン化銀乳剤(3)〔青感乳剤層用〕
良く攪拌しているゼラチン水溶液(水584ml中にゼラチン31.6g、臭化カリウム2.5g、および化合物(a)13mgを加えて70℃に加温したもの)に表3の(2)液をまず添加開始し、10秒後に(1)液の添加を開始した。(1)、(2)液はこの後、30分間かけて添加した。(2)液添加終了後、5分後にさらに表3の(4)液を添加開始し、この10秒後に(3)液の添加を開始した。(3)液は27分50秒、(4)液は28分間かけて添加した。常法により水洗、脱塩(沈降剤(b)を用いてpH3.9で行った)した後、石灰処理オセインゼラチン24.6gと化合物(b)56mgを加えて、pHを6.1、pAgを8.5に調整し、チオ硫酸ナトリウム0.55mgを加え、65℃で最適に化学増感した。次いで増感色素(h)0.35g、カブリ防止剤(i)56mg、防腐剤として化合物(g)2.3mlを加えた後冷却した。このようにして、平均粒子サイズ0.55μmの単分散八面体臭化銀乳剤582gを得た。
【0127】
【表3】
【0128】
【化31】
【0129】
〈水酸化亜鉛分散物の調製方法〉
【0130】
一次粒子の粒子サイズが0.2μmの水酸化亜鉛の粉末31g、分散剤としてカルボキシメチルセルロース1.6gおよびポリアクリル酸ソーダ0.4g、石灰処理オセインゼラチン8.5g、水158.5mlを混合し、この混合物をガラスビーズを用いたミルで1時間分散した。分散後、ガラスビーズを濾別し、水酸化亜鉛の分散物188gを得た。
【0131】
〈カプラーの乳化分散物の調製方法〉
【0132】
表4に示す組成の油相成分、水相成分をそれぞれ溶解し、60℃の均一な溶液とする。油相成分と水相成分を合わせ、1リットルのステンレス容器中で、直径5cmのディスパーサーのついたディゾルバーにより、10000rpmで20分間分散した。これに、後加水として、表4に示す量の温水を加え、2000rpmで10分間混合した。このようにして、シアン、マゼンタ、イエロー3色のカプラーの乳化分散物を調製した。
【0133】
【表4】
【0134】
【化32】
【0135】
このようにして得られた素材を用いて、表5、表6に示す多層構成の熱現像カラー感光材料101を作製した。
【0136】
【表5】
【0137】
【表6】
【0138】
【化33】
【0139】
次に、表7に示す内容のとおりに、現像主薬を変更した以外は101と全く同じ組成の感光材料102〜116をそれぞれ作製した。このようにしてできた感光材料101〜116について、塗布したサンプルを定温、定湿(25℃60%RH)下に保存したもの(サンプルA)と、45℃、80%RHの条件下、3日間保存したサンプル(サンプルB)の2種のサンプルを作製した。これらのサンプルをFUJIX PICTROSTAT 200(富士写真フイルム(株)製)の感材マガジンに装着し、連続的に濃度の変化したB、G、Rのフィルターをスライドエンラージングユニットに取り付けて、標準条件で熱現像処理した(この時、PICTROSTAT 200の受像材料は、本文記載の塩基発生剤を含む処理シートとして使用した)。処理後受像材料を剥離すると、感材側に露光したフィルターに対応して、シアン、マゼンタ、イエローのカラー画像が鮮明に得られた。処理直後にこのサンプルの最高濃度部(Dmax )と最低濃度部(Dmin )をX−rite濃測機で測定した結果を表8、表9に示す。
【0140】
【表7】
【0141】
【化34】
【0142】
【化35】
【0143】
【表8】
【0144】
【表9】
【0145】
表8、表9の結果をまとめると、まず、p−アミノフェノール型主薬を用いたサンプル(101〜105)では、サンプルAではある程度ディスクリミネーションのある画像が得られるものの、保存後のサンプルBではDmin が大きく上昇してしまう。次に、バラスト基を持たないp−スルホンアミドフェノール型主薬を用いたサンプル(106〜109)では、ほとんど色素画像が得られない。これに対して本発明の現像主薬を用いたサンプル(110〜116)では、サンプルA,Bともディスクリミネーションに優れた画像が得られていることがわかる。以上より本発明の効果は明らかである。
【0146】
なお、本発明の感光材料110〜116を通常のネガフィルムのサイズに裁断、穿孔し、カメラに装填して人物を撮影した。このサンプルを同様にして処理して得られた画像をスキャナー(Nikon(株)製)LS−3510AFから読み込んで、この画像情報をAPPLE 社のMacintosh Quadra840w にインストールしたAdobe Photoshop ver.3.0 を用いて画像処理し、FUJIX PICTROGRAPHY 3000 (富士写真フイルム(株)製)を用いてプリントアウトしたところ、鮮明な人物像を得ることができた。このことから、本発明の感光材料は、撮影材料としても使用できることがわかる。
【0147】
実施例2
ベンゾトリアゾール銀乳剤〔有機銀塩〕
ゼラチン28gとベンゾトリアゾール13.2gを水300mlに溶解した。この溶液を40℃に保ち攪拌した。この溶液に硝酸銀17gを水100mlに溶かした液を2分間で加えた。このベンゾトリアゾール銀乳剤のpHを調製し、沈降させ、過剰の塩を除去した。その後、pHを6.30に合わせ、400gのベンゾトリアゾール銀乳剤を得た。
【0148】
このようにして得られたベンゾトリアゾール銀乳剤を用い、表10、表11に示す熱現像カラー感光材料201を作製した。
【0149】
【表10】
【0150】
【表11】
【0151】
【化36】
【0152】
次に、表12に示す内容のとおりに、カプラーと現像主薬を変更した以外は201と全く同じ組成の感光材料202〜212をそれぞれ作製した。このようにしてできた感光材料201〜212について、塗布したサンプルを定温・定湿(25℃60%RH)で保存したもの(サンプルA)と、45℃、80%RHの条件下、3日間保存したサンプル(サンプルB)の2種のサンプルを作製した。このようにしてできた感光材料201〜212に、連続的に濃度の変化したB、G、Rのウエッジを通して、2000luxで1秒露光した。この露光済のサンプルを、130℃に加熱したヒートドラムに、バック面が接するように密着して10秒間加熱した。処理後、感材をヒートドラムからはがすと、感材上にB,G,Rのフィルターに対応して、シアン、マゼンタ、イエローのカラー画像が鮮明に得られた。処理直後にこのサンプルの最高濃度部(Dmax )と最低濃度部(Dmin )をX−rite濃測機で測定した結果を表13、表14に示す。
【0153】
【表12】
【0154】
【表13】
【0155】
【表14】
【0156】
表13、表14の結果をまとめると、実施例1と同様、まず、p−アミノフェノール型主薬を用いたサンプル(201〜203)では、サンプルAではある程度ディスクリミネーションのある画像が得られるものの、保存後のサンプルBではDmin が大きく上昇してしまう。次に、バラスト基を持たないp−スルホンアミドフェノール型主薬を用いたサンプル(204〜207)では、良好なディスクリミネーションの画像が得られていない。これに対して本発明の現像主薬を用いたサンプル(208〜212)では、サンプルA,Bともディスクリミネーションに優れた画像が得られていることがわかる。本実施例からも本発明の効果は明らかである。
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