JP3577293B2 - 新規食酢、酸味食品ペースト、及びその製造方法 - Google Patents

新規食酢、酸味食品ペースト、及びその製造方法 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、果実や野菜類を原料とする風味良好な新しいタイプの食酢又は酸味食品ペーストとその製造法に関する。本発明の食酢は、そのまま健康酢等として或いは調味原料、嗜好原料、保存料等として各種製品に配合して利用することができる。又、料理用調味料、飲料類或いは洗口剤等の医薬部外品等の食酢組成物として利用することができる。酸味食品ペーストは、調味ペースト類やソース、たれ等に利用することができる。
【0002】
【従来の技術】
食酢は原料や醸造方法により非常に多種多様である。その食酢カテゴリーとしての一つ、醸造酢は原料により米酢、粕酢、酒精酢、麦芽酢、果実酢、糖蜜酢、蒸留酢等に分けられる。これら醸造酢の製造に適した微生物に要求されることは、生酸量が多くかつ生酸速度が速いもので、酢酸および酢酸以外の各種の有機酸や芳香性エステル類を生成し、しかも生成した酸を分解しないことが必須である。
この特徴を有した微生物として利用されるのが酢酸菌と呼ばれる一群の好気性細菌であり、なかでもAcetobacter aceti、A.acetosum、A.vini acetiが食酢製造に適していると言われている(中野政弘編、発酵食品“第5章食酢”、P155−164(1967)光琳書院)。これら酢酸菌による食酢類の成分的特徴としては、その酸の主成分が酢酸となっている。
最近の健康志向から食酢類は単なる調味料だけでなく、健康飲料としても注目されている。しかし、このような健康酢飲料で市場に出回っている果実酢はリンゴ酢くらいで、バリエーションが豊富な状況ではない。トマトは、健康イメージが高い野菜であり、特開昭60−27356号公報には、酢酸菌を用いたトマト酢の製法が、特開平1−265878号公報には、酢酸菌を用いて食酢を発酵製造するに際して吸着剤で処理し、高品質のトマト酢を製造する方法がそれぞれ開示されている。しかし、トマト酢は未だ一般的なものとはなっていない。
【0003】
一方、従来の食酢と異なる風味を作出することを目的として、調味料等の製造に際して、酢酸菌と並び乳酸菌も利用されている。特公平5−86173号公報には、乳酸菌や酵母で発酵させて得たペースト状の発酵野菜類を、ドレッシングの製造に用いることが、特公昭61−21063号公報には、トウガラシの乳酸菌或いは乳酸菌とアルコール発酵性酵母との共生による発酵液を用いて、粘稠状調味料を製造することが開示されている。しかし、乳酸菌を使用した場合、原料の果実や野菜の青臭さを除去できるという利点がある反面、乳製品などで見られるような乳酸菌発酵の独特の香味、特にジアセチル臭を発酵生産物に呈してしまう問題がある。
従って、食酢の製造に際して、従来用いられている酢酸菌とは別に、生酸菌として乳酸菌を用いた場合には、従来の酢酸菌とは異なる香味の発酵生産物が得られることが期待できる反面、好ましくない臭味を呈する危険が大きい。好ましくない臭味を除去するために、さらに乳酸菌と酵母を併用した複式発酵法も提案されているが(特公平5−86173号公報)、これらの製造工程は、複雑かつ煩雑になり、コスト的な問題があり、又味覚の面でも必ずしも完全に満足のいくものではない。
【0004】
他方、乳酸菌の飲食品類製造に際しての適用として、野菜ジュース類への利用が報告されている。例えば、トマトジュースは手軽に野菜不足感を解消できる飲食品として人気のある商品であるが、独特の風味を嫌う人も多い。そこで、トマトジュースの香味改良として乳酸発酵する各種の提案がなされている(特公平7−4204号公報、特公平7−4205号公報、特許第2641142号公報、特公平8−4454号公報)。これらの公報には、ラクトバシルス・ブルガリカス、同菌と他の菌の共生培養による乳酸飲料の製造法等の技術が開示されている。
又、トマトジュース等の野菜ジュースをラクトバシラス・ブレビスを用いて比較的低温(15〜30℃)で発酵させ、風味を改善する方法が特公昭58−15109号公報に開示されている。この公報に開示されているものは、トマトジュース等の野菜ジュースの製造工程に生成する加熱臭の除去等を目的としている。更に同様な技術として、より飲みやすいニンジンジュースや野菜ジュースのための乳酸発酵が特公昭64−8986号公報、特開平5−84065号公報、特公平7−100025号公報、特開平10−201455号公報、特開平11−75787号公報、特開平11−75788号公報及び特開平11−266824号公報にそれぞれ開示されている。
これらの乳酸発酵の利用は、いずれもジュース類の味の改善や、異臭味の除去に向けられたものであり、食酢類とはその求める風味が相違する技術分野に属する技術である。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の課題は、調味料素材や飲料素材等の食品素材として、風味が良く爽快な酸味を主体とした新しいタイプの食酢又は酸味食品ペースト、及びその製造方法を提供することにある。特に、果実類及び/又は野菜類を用い、乳酸菌による発酵を行って、風味が良く爽快な酸味を主体とした食酢及び/又は酸味食品ペーストを製造し、提供することを課題とするものである。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意研究の結果、果実汁及び/又は野菜汁で発酵可能であり、且つ乳酸及び酢酸生成能を有する乳酸菌を用いて、果実汁及び/又は野菜汁を発酵させることにより、ジアセチル臭を始めとした不快な臭味を呈することなく、芳醇さを有し、マイルドで風味が良く、しかも爽快な酸味を主体とした新しいタイプの食酢又は酸味食品ペーストが製造できることを見い出し、本発明を完成するに至った。本発明で使用する乳酸菌としては、ラクトバシラス・ブレビスが特に有利に使用できる。また、本発明においては、乳酸菌による発酵に際して、発酵液への通気及び/又は発酵液の攪拌条件等を変えることにより発酵液の溶存酸素量を変えて、発酵産物の酢酸/乳酸比を特定の範囲に調整することにより、風味が良く爽快な酸味を有する本発明の食酢又は酸味食品ペーストを製造するものである。
【0007】
すなわち本発明は、果実汁及び/又は野菜汁で発酵可能であり、且つ乳酸及び酢酸生成能を有する乳酸菌を用いて、果実汁及び/又は野菜汁を発酵させることを特徴とする食酢又は酸味食品ペーストの製造方法(請求項1)や、請求項1記載の乳酸菌が、ラクトバシラス・ブレビスであることを特徴とする食酢又は酸味食品ペーストの製造方法(請求項2)や、果実汁及び/又は野菜汁を乳酸菌で発酵させることにより生成した発酵産物の酢酸/乳酸比が2:1〜1:2であることを特徴とする請求項1又は2記載の食酢又は酸味食品ペーストの製造方法(請求項3)や、果実汁及び/又は野菜汁の乳酸菌による発酵を、発酵液の溶存酸素量を変えて行うことにより、発酵産物の酢酸/乳酸比を調整することを特徴とする請求項3記載の食酢又は酸味食品ペーストの製造方法(請求項4)や、発酵液への通気及び/又は発酵液の攪拌条件を変えることにより、発酵液の溶存酸素量を変えることを特徴とする請求項4記載の食酢又は酸味食品ペーストの製造方法(請求項5)からなるものである。
【0008】
また本発明は、請求項1〜5のいずれか記載の方法により得られる食酢又は酸味食品ペースト(請求項6)からなるものである。
【0009】
【発明の実施の形態】
本発明は、果実汁及び/又は野菜汁で発酵可能であり、且つ乳酸及び酢酸生成能を有する乳酸菌を用いて、果実汁及び/又は野菜汁を発酵させることにより風味が良く爽快な酸味を主体とした新しいタイプの食酢又は酸味食品ペーストを製造することよりなるものである。
本発明で使用する乳酸菌、原料としての果実類や野菜類、及び本発明で使用する原料の調製法、発酵方法、更には本発明の発酵産物の利用形態について、以下に詳述する。
【0010】
(使用する乳酸菌)
本発明においては、乳酸菌として、果実汁や野菜汁で発酵可能であり、且つ乳酸及び酢酸生成能を有するものが使用される。本発明において使用される乳酸菌は、発酵過程において酢酸菌と同程度の増殖速度の速さを示し、そして、ジアセチル臭を始めとした不快な臭味を呈しないものである。
このような乳酸菌として、ラクトバシラス・ブレビス(Lactobacillus brevis)が挙げられる。ラクトバシラス・ブレビスは、果実や野菜を加工処理した果実汁或いは野菜汁中で増殖可能かつ増殖速度が速く、また高い生酸能力を有し、酢酸とそれ以外の有機酸として乳酸の生産量も高いものである。そして、このような乳酸菌で発酵させて製造した発酵産物は、ジアセチルを始めとした不快な臭味を呈さない。
本発明で使用する乳酸菌株は、ラクトバシラス・ブレビス(L.brevis) IFO 3960、同IFO 12005、同IFO 12520、同IFO 13109、同IFO 3345、及び同IFO 13110等として入手することができる。
【0011】
(使用する果実類及び野菜類原料)
本発明で使用する原料としての果実類や野菜類は、上記乳酸菌が増殖可能であれば全て利用できる。例えば、果実類として、りんご、ミカン、いちご、もも、あんず、バナナ、メロン、すいか、かき、ぶどう、いちじくなど、野菜類として、キャベツ、トマト、にんじん、はくさい、きゅうり、ほうれんそう、レタス、セロリ、はくさい、大根、たまねぎ、えんどう、なす、しいたけ、まいたけ、しめじ、えのきだけなどが挙げられる。これら原料となる果実類や野菜類は、単独或いは2種以上組み合わせて使用することが可能である。トマトを原料として用いて、風味良好で、爽快なトマト酢を得ることができる。
【0012】
(原料の調製)
本発明で使用する果実類及び野菜類の原料は、洗浄、選別後、切断、微細化或いは破砕など任意の方法で処理し、さらに目的に応じて抽出、搾汁、濃縮、加熱殺菌或いは薬剤殺菌などの任意の処理を施して、果実汁及び野菜汁として調製される。あるいはバルク素材として流通している野菜類、果実類の濃縮物を利用しても良い。これら調製したものを、そのまま、あるいは、必要に応じてpH調整し、発酵処理をする。pHは任意の設定でよく、好ましくはpH3.5〜7.0の範囲に、食品や飲料等に使用可能なクエン酸等を用いて調整する。
このような調製原料に、最終産物の風味改善を目的として、糖分や香辛料等の添加を行ってもよい。加糖する場合、任意の糖類を適宜の量で添加すれば良く、例えばグルコース、シュークロース、果糖等を20%以下に添加すると酸味、甘味バランスの改善に好ましい。香料や香辛料などの添加の場合、香料としては柑橘系のフレーバーなどが挙げられ、香辛料としては、例えば胡椒、ナツメグ、ガーリック、バジル等があげられる。これら添加量は最終産物の特性に応じて設定すればよい。
【0013】
(発酵)
原料の野菜類や果実類に、上述の切断や破砕の処理をすると水が出るが、原料の水分含量は、季節や品種等で変動する。そこで、発酵を一定にするためと、発酵や加工での操作性を良くするために、発酵に供する際、水分量の調整を行う。具体的には、野菜類や果実類を粉砕して充分に流動性がある場合は粉砕物そのままを、素材の水分含量が低く流動性がない場合は、適量の水を加え、所定の原料培地を作成する。水分は固形物濃度重量%を指標として調整する。この原料培地に、上記に挙げた乳酸菌を単独或いは複数の混合状態で、1011cells/mlの液を対原料培地に0.1〜10.0重量%の割合で加え、20〜40℃、12〜72時間、撹拌しながら発酵させる。温度条件は、上記範囲内であればよく、その温度に応じて、発酵時間を適宜とりうる。本発明における乳酸発酵では、発酵産物の酢酸/乳酸比が2:1〜1:2の範囲になることが必要である。酢酸/乳酸比を、この範囲になるように発酵させることにより、風味が良く爽快な酸味を主体とした発酵産物を得ることができる。すなわち、酢酸のみ、及び酢酸/乳酸比が上記範囲より大きい場合には、するどい酸味を感じるが爽快さは得られず、乳酸のみ、及び酢酸/乳酸比が上記数値より小さい場合には、マイルドな酸味であるが後苦味を感じる。
【0014】
本発明において、発酵により、発酵産物の酢酸/乳酸比を上記範囲に設定するには、発酵液の溶存酸素量を適宜調整して発酵することが行われる。すなわち、撹拌や通気等により発酵液の溶存酸素量を変えると、最終発酵産物の酢酸・乳酸等の有機酸の生成が変動する。一般に撹拌強度が大きく、通気量が多い場合、酢酸の生成量が上がり、乳酸の生成量が下がる傾向にある。従って、最終産物の利用目的に応じて、適宜攪拌・通気条件を検討し、所望の酢酸/乳酸比を設定すれば良く、尚且つ上記の本発明の酢酸/乳酸比の範囲に調整すれば良い。攪拌条件の設定には、具体的な方法として種々の形状の撹拌羽根を有する撹拌機の使用を検討することができる。
発酵の終了の目安としては、発酵産物の酸度を指標とすることができる。酸度は、有機酸の量(%)で示し、酸度は1/10規定水酸化ナトリウム溶液滴定により求めた(「新酒造技術」p119.日本醸造協会編(1972)日本醸造協会発行)。酢酸、乳酸の測定は、高速液体クロマトグラフィー(食品分析法編集委員会編 食品分析法 光琳(1982)p523)で行った。発酵産物の酸度は、後述する加工食品に応じて任意に設定することが可能である。例えば食酢として利用を図る場合には酸度4.5%以上として、それ以外の場合では、4.5%以下が好ましい。
【0015】
(発酵産物の利用形態)
本発明の食酢又は酸味食品ペーストは、乳酸発酵により製造され、風味が良く爽快な酸味を有すると共に、ジアセチル臭を始めとした不快な臭味を呈しないことから、その生産物が食酢や飲料等、さまざまな加工品に利用可能なものである。
本発明の発酵産物は、原料培地の水分調整に応じて、液状あるいは半固形状(ペースト状)となる。液状のものは、いわゆる食酢であるので、そのまま健康酢等として利用しうる他、調味原料、嗜好原料、保存料等として各種製品に配合でき、種々の食酢組成物として利用できる。食酢組成物としての利用では、加工酢、ウスターソース、ドレッシング、マヨネーズ等の料理用調味料、ビネガードリンク等の飲料類、飴等の菓子類、洗口剤、口臭抑制剤等の医薬部外品などが例示される。食酢やドレッシング等での利用では、パラオキシ安息香酸イソブチル、パラオキシ安息香酸イソプロピル、パラオキシ安息香酸エチル、コンドロイチン硫酸ナトリウム等の保存料を適宜使用してもよい。
発酵産物を半固形状(ペースト状)として得た場合、加糖や加塩、香辛料等添加等、適宜加工をすることができ、調味ペースト類やソースや焼肉のたれ等の原料として利用することが可能である。なお日持ちのために、適宜、加熱処理を加えることができる。
【0016】
【実施例】
以下に、実施例を揚げてこの発明を更に具体的に説明するが、この発明の範囲はこれらの例示に限定されるものではない。
実施例1
本発明の乳酸菌として、L.brevis IFO 3960、同IFO 12005、同IFO 12520、同IFO 13109、同IFO 3345、及び同IFO 13110のブレビス種6種を、対照としてLactobacillus plantarum ATCC 8014、同ATCC 14917、同JCM 1551、Lactobacillus acidophilus IFO 3205、L.casei IFO 12004、Streptcoccus thermophilus G(日本乳業協会)、及びL.bulgaricus B(日本乳業協会)の7種の計13種を供試した。固形物濃度10%に調製したトマトペースト(原料培地)各100mlに、各株の前培養液を各1ml接種して、30〜35℃で24時間、500mlフラスコで200rpm振とう培養後、発酵液を得た。その結果、L.brevis 6種はいずれも酸度4.7%以上で、それ以外の乳酸菌株ではStreptcoccus thermophilus G及びL.bulgaricus Bは酸度が低く充分な生酸能力がなく、Lactobacillus plantarum 3種、Lactobacillus acidophilus、L.caseiはいずれも酸度4.5%以上であるものの不快なジアセチルが 0.7 mg/L以上生産されて香味上実用には耐えられなかった。
官能評価として、16名で試飲し、−2(非常に悪い)、−1(悪い)、0(どちらでもない)、+1(良い)及び+2(非常に良い)の5段階で評価した。以上の結果を表1に示す。
【0017】
【表1】
Figure 0003577293
【0018】
実施例2
固形物濃度10%に調製したりんご、ミカン、いちご、バナナ、キャベツ、トマト、にんじん、セロリ、はくさい、えのきだけの各原料培地にL.brevis IFO 3960、同IFO 3345並びに同IFO 12520をそれぞれ接種し、30℃72時間、1リットル ジャーファーメンターで、0.05vvmの通気、100rpmで培養後、発酵液を得た。各株による発酵液の酸度を表2に示す。L.brevis IFO3345は他2株に比べ、いずれの種類の原料でも酸度が高く得られ、生酸能に優れていた。
【0019】
【表2】
Figure 0003577293
【0020】
実施例3
固形物濃度85%に調製したりんご、いちご、トマト、セロリーの各原料培地にL.brevis IFO 3345、同IFO13110並びに同IFO 12004を接種し、30℃48時間、1リットル ジャーファーメンターで、100rpmで培養した。得られた各発酵産物は固形物濃度78〜85%のペースト状物であった。
【0021】
実施例4
固形物濃度5%に調製したりんご、ミカン、バナナ、キャベツとにんじんの混合物、トマトの各原料培地にL.brevis IFO 3345、同IFO 13109を接種し、30℃、48時間1リットル ジャーファーメンターで、0.05vvmの通気、100rpmで培養した。得られた各発酵液の酸度は4.5 %以上であった。各発酵液の酸の組成を表3に示した。表中から明らかなように、トマトをIFO 3345で発酵させた発酵液は、酢酸2.8%、乳酸1.4%その他有機酸0.5%であり、乳酸他充分な酢酸が生成されており、香味のよいトマト酢であった。
【0022】
【表3】
Figure 0003577293
【0023】
実施例5
L.brevis IFO 3345が生酸能にすぐれ、生成物の官能評価で評価が高いことから、好ましい酸組成(酢酸/乳酸比)を明らかにするため、以下の試験を行った。市販のトマトジュースに酢酸、乳酸を単独あるいは組合せて添加し、これらをパネラー12名で試飲して評価した(パネル数n=12)。結果を第4表に示す。
この結果から、酢酸のみ、酢酸/乳酸比が大きい場合、するどい酸味を感じるが爽快さは得られず、乳酸のみ、酢酸/乳酸比が小さい場合、マイルドな酸味であるが後苦味を感じることがわかった。爽快でマイルドな酸味を感じるのは、酢酸/乳酸比が2:1〜1:2の場合であった。実施例4のL.brevisIFO 3345、IFO13109による発酵液はこの範囲であり、これらラクトバシラス・ブレビス株による発酵が風味のよい食酢製造に適当であることが裏付けられた。
【0024】
【表4】
Figure 0003577293
【0025】
実施例6
トマト酢(実施例4)を用い、以下の表5に示す配合でビネガードリンクを製造した。
【0026】
【表5】
Figure 0003577293
【0027】
実施例7
リンゴ、いちご、トマト、セロリ発酵物(実施例3)を用い、以下の表6に示す配合でジャムを製造した。
【0028】
【表6】
Figure 0003577293
【0029】
【発明の効果】
本発明によれば、果実汁及び/又は野菜汁を乳酸菌を用いて、発酵させても、ジアセチル臭を始めとした不快な臭味を呈することなく、芳醇さを有し、マイルドで風味が良く、しかも爽快な酸味を主体とした新しいタイプの食酢又は酸味食品ペーストを製造することができる。また、本発明の食酢又は酸味食品ペーストの製造方法によれば、醸造酢の製造に際して要求される、生酸量が多く且つ生酸速度の速い醸造を達成することが可能であり、更に方法においては、乳酸菌による発酵に際して、発酵液への通気及び/又は発酵液の攪拌条件等を変えることにより発酵液の溶存酸素量を変えて、発酵産物の酢酸/乳酸比を適宜、望ましい範囲で調整することができる。

Claims (3)

  1. 果実汁及び/又は野菜汁を、該発酵液中の溶存酸素の調整下に乳酸菌ラクトバシラス・ブレビスで発酵させることにより酢酸/乳酸比が2:1〜1:2の発酵産物を生成させることを特徴とする食酢又は酸味食品ペーストの製造方法。
  2. 発酵液への通気及び/又は発酵液の攪拌条件を変えることにより、発酵液の溶存酸素量を調整することを特徴とする請求項1記載の食酢又は酸味食品ペーストの製造方法。
  3. 請求項1〜2のいずれか記載の方法により得られる食酢又は酸味食品ペースト。
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