JP3576386B2 - 二色成形用樹脂組成物及び二色成形品 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は二色成形用樹脂組成物及び二色成形品に関する。さらに詳しくは、一次材(一次成形品)に対して成形性に優れ、高い密着性を付与できる二色成形用樹脂組成物(特に二次材用樹脂組成物)及びそれを用いた二色成形品に関する。
【0002】
【従来の技術】
結晶性の熱可塑性ポリエステル樹脂、特にポリブチレンテレフタレート樹脂は機械的性質、電気的性質、及びその他の物理的・化学的特性に優れ、かつ加工性が良好であるため、エンジニアリングプラスチックとして自動車、電気・電子部品などの広汎な用途に使用されている。結晶性の熱可塑性ポリエステル樹脂は、それ単独でも種々の成形品に用いられるが、利用分野によってはその性質、特に機械的性質を改善する目的で、種々の強化剤、添加剤等を配合することが行われている。このような高い機械強度、剛性が要求される分野においては、通常、ガラス繊維、カーボン繊維などの繊維状の強化剤が用いられている。
【0003】
一方、多色成形(又は多重成形)法のうち、二色成形法では、特定の樹脂(一次材)を成形して一次成形樹脂を得た後、この一次材に他の樹脂(二次材)を成形し、二種の樹脂が密着した状態の成形品を得ることができる。このような二色成形法では、例えば、性質の異なる樹脂を一次材及び二次材として用いて、個々の樹脂の特性を発現する複合成形品を得ることもできる。近年では、同時成形を可能としたDSI法(ダイスライド成形法)、DRI法(ダイロータリー成形法)などにより、金型を移動させつつ二色成形を行うことも可能である。
しかし、二色成形では、一次材と二次材との密着性が問題となる。密着が十分でない場合、密着面から二材が容易に剥離し、成形品に十分な機能を付与することが困難である。
【0004】
密着性を改善するため、二次材の成形加工温度を一次材のそれに比べて高くする方法が多く採用されているが、二次材において成形加工温度及び熱安定性が制約されるため、応用、展開できる範囲が狭いことに加え、充分な密着性を得ることができない。特に一次材と二次材とが異なる種類の樹脂である場合、上記方法では高い密着強度を得ることが困難である。
【0005】
特開平9−141686号公報には、非晶性熱可塑性ポリエステル樹脂からなる一次成形品と、ポリアルキレンテレフタレート系樹脂とを一体に成形させた気密性、密着性に優れた複合成形品が開示されている。しかし、この文献では、一次材が非晶性熱可塑性ポリエステル樹脂に制約されている。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
従って、本発明の目的は、二色成形において、一次側の樹脂と二次側の樹脂が異なっても安定な成形性及び高い密着性を達成できる二色成形用樹脂組成物及びそれを用いた二色成形品を提供することにある。
本発明の他の目的は、二次成形温度をさほど高くしなくても密着性を改善できる二次成形用樹脂組成物及びそれを用いた二色成形品を提供することにある。
本発明のさらに他の目的は、高い機械的強度を有する二色成形品及び二色成形用樹脂組成物を提供することにある。
本発明の別の目的は、高光沢で、外観が良好な二色成形品を提供することにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、前記目的を達成するために鋭意検討の結果、ポリアルキレンテレフタレート及び/又はポリアルキレンナフタレートとスチレン系樹脂と無機充填剤とを組合せて用いることにより、二色成形において、二次成形温度が低くても密着性及び二色成形性を改善できることを見出だし、本発明を完成した。
【0008】
すなわち、本発明の二色成形用樹脂組成物は、(A)ポリアルキレンテレフタレート系樹脂及びポリアルキレンナフタレート系樹脂から選択された少なくとも一種のポリエステル系樹脂100重量部、(B)スチレン系樹脂10〜100重量部程度、(C)ポリカーボネート系樹脂0〜30重量部程度、及び(D)無機充填剤10〜150重量部程度で構成されている。前記ポリエステル系樹脂は5〜40重量%程度のコモノマー単位を含んでいてもよい。スチレン系樹脂は、芳香族ビニル化合物の単独重合体、芳香族ビニル化合物を二種以上組み合わせて用いた共重合体、芳香族ビニル化合物と共重合性ビニル単量体との共重合体又はゴム変性スチレン系樹脂で構成できる。前記共重合性ビニル単量体は、(メタ)アクリロニトリル、(メタ)アクリル酸アルキルエステル、ビニルエステル系単量体、ヒドロキシル基含有単量体、カルボキシル基含有単量体、及びイミド系単量体から選択された少なくとも一種のビニル単量体である。前記無機充填剤としては、繊維状充填剤、非繊維状充填剤などが使用できる。
【0009】
また、本発明には、前記二色成形用樹脂組成物の製造方法、一次材(一次側樹脂)及び二次材(二次側樹脂)で構成された二色成形品において、前記樹脂組成物を二次材として用いた二色成形品、及び一次材に対して、前記樹脂組成物を射出成型する二色成形品の製造方法も含まれる。
なお、本明細書において、一次材、一次成形品は、二次成形に供される成形品を意味し、単一の樹脂成形品に限らず、複数の樹脂成形品が複合一体化された成形品であってもよい。
【0010】
【発明の実施の形態】
本発明の二色成形用樹脂組成物は、(A)ポリアルキレンテレフタレート系樹脂及びポリアルキレンナフタレート系樹脂から選択された少なくとも一種のポリエステル系樹脂と、(B)スチレン系樹脂と、(D)無機充填剤とで構成されている。前記樹脂組成物は、さらに、(C)ポリカーボネート系樹脂を含んでもよい。
[(A)ポリエステル系樹脂]
ポリエステル系樹脂(A)としては、ポリアルキレンテレフタレート系樹脂及びポリアルキレンナフタレート系樹脂が使用できる。
ポリエステル系樹脂(A)には、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレートなどのポリアルキレンテレフタレート(特にポリC2−4 アルキレンテレフタレート)、ポリエチレンナフタレート、ポリブチレンナフタレートなどのポリアルキレンナフタレート(特にポリC2−4 アルキレンナフタレート)、アルキレンテレフタレート及び/又はアルキレンナフタレートを主たる単位とし、ジカルボン酸成分(テレフタル酸及び/又はナフタレンジカルボン酸)及びアルキレングリコールのうち、少なくとも一方の成分が他のジカルボン酸(コモノマー)や他のジオール(コモノマー)で置換したコポリエステルなどが含まれる。これらのポリエステル系樹脂は単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。
【0011】
好ましいポリエステル系樹脂は、ポリブチレンテレフタレート系樹脂及びポリブチレンナフタレート系樹脂、特にポリブチレンテレフタレート系樹脂である。これらの樹脂は、例えば、テレフタル酸、ナフタレンジカルボン酸又はそれらのエステル形成性の誘導体と、ブタンジオール(特に1,4−ブタンジオール)又はそのエステル形成可能な誘導体とを重縮合することにより得られる。
好ましいポリエステル系樹脂には、コポリエステルが含まれる。コポリエステルは、通常、1〜40モル%、好ましくは5〜40モル%、特に10〜30モル%程度のコモノマー単位を有している。
【0012】
テレフタル酸及び/又はナフタレンジカルボン酸以外のジカルボン酸成分(コモノマー成分)としては、例えば、脂肪族ジカルボン酸(例えば、コハク酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ドデカンジカルボン酸、ヘキサデカンジカルボン酸、ダイマー酸などの炭素数6〜40程度のジカルボン酸、好ましくは炭素数6〜14程度のジカルボン酸)、脂環族ジカルボン酸(例えば、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸、1,3−シクロヘキサンジカルボン酸、1,2−シクロヘキサンジカルボン酸などの炭素数8〜12程度のジカルボン酸)、芳香族ジカルボン酸(例えば、イソフタル酸、フタル酸、ジフェニルジカルボン酸、ジフェノキシエタンジカルボン酸、ジフェニルエーテルジカルボン酸、ジフェニルスルホンジカルボン酸などの炭素数8〜14程度のジカルボン酸)、又はそれらのエステル形成性誘導体などが挙げられる。また、ジカルボン酸成分としては、テトラヒドロフタル酸、テトラヒドロテレフタル酸、テトラヒドロイソフタル酸、ハイミック酸などの脂環族ジカルボン酸、テトラブロモフタル酸、テトラブロモテレフタル酸、テトラクロロフタル酸、ヘット酸などのハロゲン含有ジカルボン酸も使用できるとともに、等価な成分としてp−β−ヒドロキシエトキシ安息香酸、p−ヒドロキシ安息香酸、ヒドロキシフェニル酢酸、ヒドロキシナフトエ酸、グリコール酸、ヒドロキシカプロン酸などのヒドロキシカルボン酸、プロピオラクトン、ブチロラクトン、カプロラクトン、バレロラクトンなどのラクトンなどを使用してもよい。テレフタル酸及び/又はナフタレンジカルボン酸以外のジカルボン酸成分は単独で又は二種以上組み合わせて使用してもよい。
さらに、必要に応じて、トリメリット酸、トリメシン酸、ピロメリット酸などの多価カルボン酸などを併用してもよい。
【0013】
好ましいテレフタル酸及び/又はナフタレンジカルボン酸以外のジカルボン酸成分には、アジピン酸、セバシン酸などの炭素数6〜14程度(好ましくは炭素数6〜12程度)の脂肪族ジカルボン酸、イソフタル酸、フタル酸などの炭素数8〜12程度の芳香族ジカルボン酸、又はこれらの誘導体(酸無水物若しくは低級アルキルエステルなど)が含まれる。さらに好ましいジカルボン酸成分としては、アジピン酸、イソフタル酸などが挙げられる。
【0014】
ジオール成分(コモノマー成分)としては、ブタンジオール以外の炭素数2〜12程度のアルキレングリコール(例えば、エチレングリコール、トリメチレングリコール、プロピレングリコール、テトラメチレングリコール、ヘキサメチレングリコール、オクタンジオール、デカメチレングリコール、ネオペンチルグリコール、1,3−オクタンジオールなどの炭素数2〜10程度の脂肪族グリコール)、ポリオキシアルキレングリコール[アルキレン基の炭素数が2〜4程度であり、複数のオキシアルキレン単位を有するグリコール、例えば、ジ(オキシエチレン)グリコール、ジ(オキシプロピレン)グリコール、ジ(オキシテトラメチレン)グリコール、トリ(オキシエチレン)グリコール、トリ(オキシプロピレン)グリコール、トリ(オキシテトラメチレン)グリコールなど]、両末端にヒドロキシル基を有するポリエステルオリゴマーで構成されたジオール、脂環族ジオール(例えば、シクロヘキサンジオール、1,1−シクロヘキサンジメチロール、1,4−シクロヘキサンジメチロール、水素化ビスフェノールAなど)、芳香族ジオール[例えば、ビスフェノールA[2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン]、ジエトキシビスフェノールA、4,4′−ジヒドロキシビフェニル、ジヒドロキシフェニルエーテル、2,2−ビス−(4−β−ヒドロキシエトキシフェニル)プロパン、2,2−ビス−(4−β−ヒドロキシプロポキシフェニル)プロパン、2,2−ビス−(4−β−ヒドロキシエトキシフェニル)スルホン、キシレングリコール、ナフタレンジオールなど]などの他、ハイドロキノンなどが挙げられる。
【0015】
ジオール成分としては、例えば、ビスフェノールAのアルキレンオキサイド付加物(例えば、エチレンオキサイド2モル付加物、プロピレンオキサイド3モル付加物など)などのアルキレンオキサイド付加ジオール、テトラブロモビスフェノールA、テトラブロモビスフェノールAのアルキレンオキサイド(エチレンオキサイドやプロピレンオキサイドなど)付加物などのハロゲン化ジオールも使用できる。さらに、必要に応じて、グリセリン、トリメチロールプロパン、トリメチロールエタン、ペンタエリスリトールなどのポリオール又はそのエステル形成性誘導体などを併用してもよい。
【0016】
これらのジオール成分は単独で又は二種以上組み合わせて使用してもよい。好ましいジオール成分は、炭素数2〜6程度の直鎖状アルキレングリコール(エチレングリコール、1,4−ブタンジオールなど)、繰り返し数が2〜4程度のオキシアルキレン単位を有するポリオキシアルキレングリコール[ジエチレングリコールなどのポリ(オキシ−直鎖状C2−4アルキレン)単位を含むグリコール]、1,4−シクロヘキサンジメチロール、特にアルキレングリコールが好ましい。
【0017】
前記変性ポリエステル系樹脂において、導入する変性基(コモノマー残基)は、好ましくはイソフタル酸残基及び/又はアルキレングリコール残基である。特に、イソフタル酸及び/又はアルキレングリコールをコモノマーとする変性ポリエステル系樹脂、なかでも変性ポリブチレンテレフタレート系樹脂が好ましい。
【0018】
ポリエステル系樹脂は、溶融成形性などを損なわない限り、直鎖状のみならず分岐鎖構造を有していてもよく、また架橋されていてもよい。
【0019】
変性ポリエステル系樹脂は、未変性のポリエステル系樹脂(特に、ポリブチレンテレフタレートホモポリマー、ポリブチレンナフタレートホモポリマーなど)と併用してもよい。また、必要であれば、ポリエステル系樹脂は、ポリエステルエラストマーや液晶性ポリエステルなどと併用してもよい。
前記のようなコモノマー単位を含む変性エステル系樹脂では、未変性ポリエステル系樹脂に比べて溶融加工温度が低下し、▲1▼一次側樹脂(一次材)として使用する場合、二次側樹脂(二次材)との溶融温度差が広がるために密着性が向上し、▲2▼二次側樹脂(二次材)として使用する場合、密着性が向上するとともに、一次材の熱的分解を抑制し、得られた二色成形品は、ばりの生成を抑制し、良好な外観を有しており、優れた成形性を示す。特に、二次成形用樹脂▲2▼として用いると、一次材の溶融加工温度が低くても、密着性及び成形性などの特性を大きく改善できる。
【0020】
前記変性ポリエステル系樹脂の融点は、一次材、二次材のいずれに使用するかに依存して調整され、例えば、150〜230℃、好ましくは160〜220℃程度である。また、変性ポリエステル系樹脂の溶解熱は、例えば、10〜45J/g、好ましくは、15〜40J/g程度である。なお、二色成形においては、通常、一次材の溶融温度に比べ二次材の溶融温度が高い。
ポリエステル系樹脂の分子量は特に制限されず、例えば、重量平均分子量10,000〜500,000、好ましくは20,000〜200,000程度の範囲から選択できる。
【0021】
本発明では、(A)ポリエステル系樹脂に、(B)スチレン系樹脂を添加することにより、二色成形において、一次材及び二次材のいずれとして用いても、二次材の溶融温度を極度に上げることなく、相手材との密着性を改善でき、それにともなって、成形品の機械強度を向上できる。
[(B)スチレン系樹脂]
スチレン系樹脂は、芳香族ビニル化合物の単独又は共重合体、芳香族ビニル化合物と共重合性ビニル単量体との共重合体、ゴム変性スチレン系樹脂で構成できる。
前記芳香族ビニル化合物としては、スチレン、アルキルスチレン(例えば、o−,m−及びp−メチルスチレンなどのビニルトルエン類、p−エチルスチレン、p−イソプロピルスチレン、ブチルスチレン、p−t−ブチルスチレンなど)、α−アルキルスチレン(例えば、α−メチルスチレンなど)、ハロスチレン(例えば、o−,m−及びp−クロロスチレン、p−ブロモスチレンなど)などが例示できる。これらの芳香族ビニル単量体は単独で又は二種以上組合せて使用できる。好ましいスチレン系単量体には、スチレン、ビニルトルエン、α−メチルスチレンなどが含まれ、特にスチレンが好ましい。
【0022】
共重合性ビニル単量体としては、例えば、(メタ)アクリロニトリル、(メタ)アクリル酸アルキルエステル、ビニルエステル系単量体(酢酸ビニルなど)、ヒドロキシル基含有単量体[ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレートなどのヒドロキシC1-4アルキル(メタ)アクリレートなど]、カルボキシル基含有単量体[(メタ)アクリル酸、無水マレイン酸、フマル酸など]、イミド系単量体(マレイミド、N−メチルマレイミド、N−フェニルマレイミドなど)などが挙げられる。(メタ)アクリル酸アルキルエステルには、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸t−ブチル、(メタ)アクリル酸ヘキシル、(メタ)アクリル酸オクチル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸ラウリルなどの(メタ)アクリル酸C1-20アルキルエステルが含まれる。これらのビニル単量体は単独で又は二種以上組合せて使用できる。
【0023】
好ましいスチレン系樹脂は、アクリロニトリル−スチレン共重合体(AS樹脂)、メタクリル酸メチル−スチレン共重合体(MS樹脂)、ゴム変性スチレン系樹脂(例えば、ゴム質重合体と芳香族ビニル化合物とアクリロニトリルなどの共重合性ビニル単量体との共重合体)である。ゴム変性スチレン系樹脂は、前記スチレン系樹脂とゴム質重合体との共重合体、例えば、ランダム共重合体、グラフト共重合体、ブロック共重合体で構成されている。ゴム変性スチレン系樹脂において、ミクロドメイン構造は特に制限されない。
【0024】
ゴム変性スチレン系樹脂において、前記ゴム質重合体としては、ブタジエンゴム、スチレン−ブタジエンゴム、イソプレンゴム、エチレン−酢酸ビニル共重合体、アクリルゴム、エチレン−プロピレンゴム(EPDM)、塩素化ポリエチレンなどが利用できる。これらのゴム成分は単独又は二種以上組合せて使用できる。
【0025】
好ましいゴム変性スチレン系樹脂としては、スチレン−ブタジエン−スチレン(SBS樹脂)、スチレン−イソプレン−スチレン(SIS樹脂)、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体(ABS樹脂)、アクリロニトリル−アクリルゴム−スチレン共重合体(AAS樹脂)、アクリロニトリル−塩素化ポリエチレン−スチレン共重合体(ACS樹脂)、アクリロニトリル−エチレン−プロピレンゴム−スチレン共重合体、アクリロニトリル−EPDM−スチレン共重合体(AES樹脂)、メタクリル酸メチル−ブタジエン−スチレン共重合体(MBS樹脂)などが例示できる。特に、ABS樹脂、AAS樹脂、AES樹脂(特にABS樹脂)などが好ましい。これらの樹脂は、単独又は二種以上組合せて使用できる。
【0026】
本発明の二色成形用樹脂組成物において、スチレン系樹脂の割合は、前記ポリエステル系樹脂100重量部に対して、10〜100重量部(例えば、10〜80重量部)、好ましくは10〜60重量部(例えば、15〜50重量部)程度であり、通常20〜50重量部程度である。スチレン系樹脂が10重量部未満では、樹脂組成物の固化速度が速く、スチレン系樹脂が樹脂組成物表面への侵出度が低下するためか、二色成形において、一次材との密着性が低下する。また、100重量部を越えると、成形サイクルの増加、溶融時の熱安定性の低下が生じたり、離型性が低下する虞がある。
【0027】
本発明の二色成形用樹脂組成物には、必要に応じて(C)ポリカーボネート系樹脂を添加して、相手材との密着性を向上させてもよい。ポリカーボネート系樹脂は非晶性であるため、ポリブチレンテレフタレート樹脂などの結晶性ポリエステル系樹脂と組合せることにより、結晶化速度を低下させ、固化速度を遅延させることができ、またポリブチレンテレフタレート樹脂とスチレン系樹脂との界面密着性を効果的に向上させる。
【0028】
[(C)ポリカーボネート系樹脂]
ポリカーボネート系樹脂(例えば、ポリカーボネート)は、2価フェノールとカーボネート前駆体とを溶液法または溶融法で反応させることにより得られる。
【0029】
好ましい2価フェノールとしては、例えば、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン(別名ビスフェノールA)、ビス(4−ヒドロキシフェニル)メタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)エタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ブタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジメチルフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3.5−ジブロモフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)プロパン、ビス(3,5−ジブロモ−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、ビス(3,5−ジクロロ−4−ヒドロキシフェニル)プロパンなどのビス(4−ヒドロキシフェニル)アルカン類;2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロペンタンなどのビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロアルカン類;2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)サルファイドなどのビス(4−ヒドロキシフェニル)サルファイド類;ビス(4−ヒドロキシフェニル)スルホン;ビス(4−ヒドロキシフェニル)スルホキシド類;ビス(4−ヒドロキシフェニル)エーテル類;ハイドロキノン;4,4−ジヒドロキシビフェニルなどが挙げられる。これらの2価フェノールは単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。特に好ましい2価フェノールには、ビス(4−ヒドロキシフェニル)アルカン、特にビスフェノールAが含まれる。これらの2価フェノールは、2価フェノールのホモポリマー又はコポリマーであってもよい。また、多官能性芳香族を2価フェノール及び/またはカーボネート前駆体と反応させた熱可塑性ランダム分岐ポリカーボネートであってもよい。
【0030】
カーボネート前駆体としては、カルボニルハライド(代表的にはホスゲン)、カルボニルエステル(代表的にはジフェニルカーボネート)またはハロホルメート(代表的には2価フェノールのジハロホルメート)などが挙げられ、これらは混合物として使用できる。得られたポリカーボネート樹脂は単独で又は2種以上使用してもよい。
【0031】
ポリカーボネート系樹脂としては、ビスフェノール骨格を有するポリカーボネート樹脂(特にビスフェノールA型ポリカーボネート樹脂)を用いる場合が多い。
本発明に用いるポリカーボネート系樹脂は、特に高流動のものが好ましい。 ポリカーボネート系樹脂の粘度平均分子量は、例えば、1×104 〜10×104 程度である。
【0032】
(C)ポリカーボネート系樹脂の割合は、(A)ポリブチレンテレフタレート系樹脂などのポリエステル系樹脂100重量部に対して、0〜30重量部、好ましくは5〜20重量部程度である。ポリカーボネート系樹脂の割合が、30重量部を越えると、樹脂組成物を二次材として使用する場合に、前記ポリエステル系樹脂の熱安定性が低下するとともに、成形加工温度を高くする必要が生じ、成形サイクルが延長したり、相手材の樹脂が分解したりする虞がある。
[(D)無機充填剤]
(D)無機充填剤は、成形品に高い機械強度、衝撃強度及び耐熱性を付与する。前記無機充填剤は、繊維状充填剤、非繊維状充填剤のいずれであってもよく、両者の混合物として用いてもよい。
繊維状充填剤としては、ガラス繊維、アスベスト繊維、カーボン繊維、セラミックス繊維(シリカ繊維、シリカ・アルミナ繊維、ジルコニア繊維、窒化ホウ素繊維、窒化ケイ素繊維、ホウ素繊維、チタン酸カリウムなど)、ウィスカ類、金属繊維(ステンレス、アルミニウム、チタン、銅、真鍮など)などの無機質繊維状物質などが例示できる。特にガラス繊維、カーボン繊維などが好ましい。なお、本発明の無機充填剤には、高融点の有機質繊維状物質(例えば、ポリアミド樹脂(芳香族ポリアミドなど)、フッ素樹脂、アクリル樹脂など)なども含まれる。
【0033】
非繊維状充填剤としては、カーボンブラック、シリカ、石英粉末、ガラスビーズ、ガラス粉、ミルドファイバー、ケイ酸塩(ケイ酸カルシウム、カオリン、タルク、クレー、ケイソウ土、ウオラストナイトなど)、金属酸化物(酸化鉄、酸化チタン、酸化亜鉛、アルミナなど)、金属炭酸塩(炭酸カルシウム、炭酸マグネシウムなど)、硫酸塩(硫酸カルシウム、硫酸バリウムなど)、セラミックス(炭化ケイ素、窒化ホウ素、窒化ホウ素など)及び各種金属粉末などが挙げられる。非繊維状充填剤のうち、板状充填剤としてはマイカ、ガラスフレーク、各種金属箔などが例示できる。
【0034】
また非繊維状充填剤としては、平均一次粒子径が20μm以下(例えば、0.5〜20μm程度)、好ましくは0.5〜15μm(例えば、1.0〜10μm)程度の粒状又は板状充填剤(例えば、ガラスビーズ、ミルドファイバー、タルク、カオリン、マイカなど)などが好ましい。
【0035】
これらの充填剤は、単独または二種以上組合せて使用でき、前記繊維状充填剤(特に、ガラス繊維又はカーボン繊維など)と非繊維状充填剤(特に平均一次粒子径20μm以下の粉粒状又は板状充填剤)との組合せは、特に高い機械的強度と寸法安定精度を有し、かつ良好な外観特性を有する二色成形品を得る上で好ましい。
【0036】
これらの充填剤の使用に際して、必要ならば収束剤又は表面処理剤(官能性表面処理剤)を使用してもよい。収束剤又は表面処理剤としては、例えば、エポキシ系化合物、イソシアネート系化合物、シラン系化合物、チタネート系化合物などの官能性化合物などが含まれる。前記充填剤は、予め表面処理又は収束処理を施されていてもよく、材料調製の際に収束剤又は表面処理剤を充填剤とともに添加してもよい。
【0037】
無機充填剤(D)の使用量は、成形品の機械的強度及び密着性などを損なわない範囲で選択でき、(A)ポリブチレンテレフタレート樹脂100重量部あたり10〜150重量部(例えば、20〜130重量部)、好ましくは40〜120重量部程度である。無機充填剤の使用量が多すぎると、成形品表面に充填材が露出し、密着性を低下させる虞があり、また、少なすぎると実用上十分な機械的強度を得るのが困難となる。
【0038】
前記収束剤や表面処理剤の使用量は、充填剤に対して10重量%(例えば、0.01〜10重量%)以下、好ましくは0.05〜5重量%である。
【0039】
前記(A)及び(B)成分と必要により(C)成分と無機充填剤(D)とを組合せると、高い機械強度が得られるだけでなく、充填剤の浮きだしのない良好な外観特性を有するとともに、一次側樹脂と二次側樹脂との間の密着性が大幅に改善された二色成形体が得られる。
【0040】
[その他の添加剤]
本発明の樹脂組成物には、さらに熱可塑性樹脂などに添加される一般的な添加剤を添加してもよい。添加剤としては、例えば、安定剤(酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤、熱安定剤など)、帯電防止剤、難燃剤、滑剤、離型剤、染料や顔料などの着色剤、可塑剤などが例示できる。
なかでも、特にリン系化合物の添加は成形時の滞留熱安定性を向上させること、またポリカーボネート樹脂を併用した場合、(A)ポリエステル系樹脂と(C)ポリカーボネート樹脂とのエステル交換反応による樹脂劣化を抑制する効果が高く、高い熱安定性を保ち、かつ成形時の溶融樹脂分解を抑制するので有効である。
【0041】
前記リン系化合物としては、主に有機ホスファイト及びリン酸金属塩が好適である。
有機ホスファイトのうちスピロ環などを有する化合物としては、例えば、次のような化合物が例示できる。
ジアルキルペンタエリストリールジフォスファイト[例えば、ジステアリルペンタエリストリールジフォスファイトなどのジC2−18アルキルペンタエリストリールジフォスファイトなど]、
ジフェニルペンタエリストリールジフォスファイト、
ビス(アルキル置換フェニル)ペンタエリストリールジフォスファイト[例えば、ビス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)ペンタエリストリールジフォスファイト,ビス(2,6−ジ−t−ブチルフェニル)ペンタエリストリールジフォスファイトなどのビス(ジC1−6 アルキルフェニル)ペンタエリストリールジフォスファイト;ビス(2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェニル)ペンタエリストリールジフォスファイト、ビス(2,6−ジ−t−ブチル−4−エチルフェニル)ペンタエリストリールジフォスファイトなどのビス(2,6−ジC1−6 アルキル−4−C1−4 アルキルフェニル)ペンタエリストリールジフォスファイトなど]、
テトラキス(フェニル)−4,4′−ビフェニレンホスファイト、
テトラキス(アルキル置換フェニル)−4,4′−ビフェニレンホスファイト[例えば、テトラキス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)−4,4′−ビフェニレンホスファイト、テトラキス(2,6−ジ−t−ブチルフェニル)−4,4′−ビフェニレンホスファイトなどのテトラキス(ジC1−6 アルキルフェニル)−4,4′−ビフェニレンホスファイト;テトラキス(2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェニル)−4,4′−ビフェニレンホスファイトなどのテトラキス(2,6−ジC1−6 アルキル−4−C1−4 アルキルフェニル)−4,4′−ビフェニレンホスファイト]などが例示できる。
【0042】
リン酸金属塩としては、例えば、第一リン酸カルシウム、第一リン酸マグネシウムなどのリン酸アルカリ土類金属塩、第一リン酸ナトリウム、第一リン酸カリウムなどのリン酸アルカリ金属塩、又はそれらの水和物(1水和物など)などが挙げられる。
これらのリン系化合物は単独で又は二種以上組合わせて使用できる。
リン系化合物の添加量は、例えば、ポリエステル系樹脂(A)100重量部に対して、0.001〜2.0重量部、好ましくは0.01〜0.8重量部程度である。リン系化合物を添加しなかったり添加量が少ない場合には、上記の通りエステル交換反応により熱安定性が低下し、添加量が2.0重量部を超えると着色および添加剤由来のガスの影響が大きくなり、密着性の低下につながり好ましくない。
【0043】
前記リン系化合物は、より熱安定性を高めるため、ヒンダードフェノール類に代表される酸化防止剤と併用するのが効果的である。酸化防止剤は、ヒンダードフェノール類に限らず、リン系、アミン系、イオウ系、ヒドロキノン系、キノリン系酸化防止剤であってもよい。酸化防止剤としては、通常、ヒンダードフェノール類およびリン系酸化防止剤が使用される。
【0044】
ヒンダードフェノール類には、例えば、2,6−ジ−t−ブチル−p−クレゾール;1,3,5−トリメチル−2,4,6−トリス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)ベンゼン;2,2′−メチレンビス(4−メチル−6−t−ブチルフェノール、4,4′−メチレンビス(2,6−ジ−t−ブチルフェノール)、4,4′−ブチリデンビス(3−メチル−6−t−ブチルフェノール)などのアルキレンビス(t−ブチルフェノール)類;1,6−ヘキサンジオール−ビス[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]などのC2−10アルキレンジオール−ビス[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、グリセリントリス[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]などのC3−8 アルキレントリオール−ビス[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート];ペンタエリスリトールテトラキス[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]などのC4−8 アルキレンテトラオール−ビス[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート];トリエチレングリコール−ビス[3−(3−t−ブチル−5−メチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]などのジ又はトリオキシC2−4 アルキレンジオール−ビス[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート];n−オクタデシル−3−(4′,5′−ジ−t−ブチルフェノール)プロピオネート、n−オクタデシル−3−(4′−ヒドロキシ−3′,5′−ジ−t−ブチルフェノール)プロピオネート、ステアリル−2−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェノール)プロピオネートなどの長鎖アルキル基を有する(t−ブチルフェノール)プロピオネート類;ジステアリル−3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジルホスホネートなどのリン酸エステル類が含まれる。
【0045】
リン系酸化防止剤には、例えば、トリフェニルホスファイト、トリスノニルフェニルホスファイト、2,2−メチレンビス(4,6−ジ−t−ブチルフェニル)オクチルホスファイト、4,4′−ブチリデンビス(3−メチル−6−t−ブチルフェニル)ジトリデシルホスファイト、トリス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)ホスファイト、トリス(2−t−ブチル−4−メチルフェニル)ホスファイトなどが含まれる。
これらの酸化防止剤は一種又は二種以上併用することができる。
【0046】
前記酸化防止剤の含有量は、例えば、ポリエステル系樹脂100重量部に対して、0.01〜1重量部、好ましくは0.05〜0.7重量部(特に0.05〜0.5重量部)程度の範囲から選択できる。
【0047】
本発明の二色成形用樹脂組成物は、前記ポリエステル系樹脂(A)とスチレン系樹脂(B)と、無機充填剤(D)と、必要によりポリカーボネート(C)とを混合することにより調製、製造できる。
【0048】
調製は、従来の樹脂組成物調製法として一般に用いられる設備と方法により容易に行なうことができる。例えば、(1)本発明の組成物を構成する成分を所定量一括混合して、一軸または二軸の押出し機で溶融混練し、ペレットを得る方法、(2)原材料投入口を二個以上有する一軸又は二軸の押出し機で、第一番目の投入口から樹脂、安定剤、顔料成分などを投入し溶融混練した後、第二番目の原料投入口より無機充填剤を投入し、溶融混練してペレットを得る方法などにより調製できる。
【0049】
本発明の二色成形用樹脂組成物は、前記ポリエステル系樹脂(A)とスチレン系樹脂(B)と、無機充填剤(D)と、必要によりポリカーボネート(C)とで構成されるため、二色成形において、一次側樹脂(一次材)及び二次側樹脂(二次材)のいずれとして用いても高い密着性を発揮できる。特に二次材として用いるのが好ましい。
【0050】
この場合、一次材はポリエステル系樹脂で構成してもよいが、一次材として、少なくとも前述のスチレン系樹脂、特にゴム変性スチレン系樹脂などを使用すると、二次成形温度が低くても、本発明の樹脂組成物との間の密着性を高く維持できる。一次材(一次成形用樹脂組成物)を構成するゴム変性スチレン系樹脂には、例えば、ABS樹脂、AAS樹脂、ACS樹脂、アクリロニトリル−EPDM−スチレン共重合体などが含まれる。一次材は、前記ゴム変性スチレン系樹脂とポリカーボネート系樹脂との組合せで構成されたポリマーブレンド又はポリマーアロイなどで構成してもよい。特にABS樹脂、AAS樹脂、又はこれらの樹脂とポリカーボネート系樹脂とのポリマーブレンドなどが好ましい。
【0051】
また、前記樹脂組成物を用いた二色成形品は、慣用の二色成形方法、例えば、コア回転式、コアバック式、コアスライド式などの方法により製造でき、また金型をスライドまたは回転させるDSI(ダイスライド成形法)またはDRI(ダイロータリー成形法)によっても同様に行うことが可能である。
【0052】
本発明の二色成形品は、機械的強度が高く、耐熱性、耐候性及び外観特性(高光沢性など)に優れるため、自動車内外装部品、OA機器及び家電機器などの外部機構部品、外部カバーなどの分野に適している。
【0053】
【発明の効果】
本発明の二色成形用樹脂組成物は、ポリエステル系樹脂(A)とスチレン系樹脂(B)と、無機充填剤(D)と、必要によりポリカーボネート系樹脂(C)とで構成されているので、二色成形を異種樹脂で行なっても、安定な成形性及び高い密着性を達成できるとともに、機械的強度の高い二色成形品を得ることができる。
【0054】
【実施例】
以下に、実施例に基づいて、本発明を詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例により何ら限定されるものではない。
【0055】
実施例及び比較例で用いたポリエステル系樹脂(A)、スチレン系樹脂(B)、ポリカーボネート系樹脂(C)、無機充填剤(D)及び一次材は以下の通りである。
1.(A)ポリエステル系樹脂
(A−1):ポリブチレンテレフタレート(融点225℃)
(A−2):変性ポリブチレンテレフタレート(融点205℃)
(12mol%イソフタル酸変性ポリブチレンテレフタレート共重合体)
2.(B)スチレン系樹脂
(B−1):アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体 (ABS樹脂,ダイセル化学工業(株)製 セビアンV660SF)
(B−2):アクリロニトリル−アクリルゴム−スチレン共重合体 (AAS樹脂,日立化成(株)製 バイタックスV6700)
3.(C)ポリカーボネート系樹脂
(C−1):ポリカーボネート
4.(D)無機充填剤
(D−1):ガラス繊維
(D−2):マイカ
5.一次材
▲1▼:(B−2)AAS樹脂
▲2▼:ポリカーボネート/ABSポリマーブレンド (PC/ABS樹脂,ダイセル化学工業(株)製 ノバロンS1100)
▲3▼:二次材と同材
また、成形品の物性を以下のように評価した。
(引張強伸度)
ASTM D−638に準拠して測定した。
(密着性評価)
(1)引張りせん断強度
ASTM1号ダンベル片を成形して二等分し、その半片を再度金型に配設した。次いで、残り半分の樹脂を金型キャビテイ内に噴出させ、二種類の樹脂が密着した二色成形片を得た。得られた二色成形片について、ASTMd−638に準拠して引張りせん断強度を測定し、密着性評価の一指標とした。
(2)密着状態
樹脂で平板(縦80mm×横80mm×厚み1mmt )を成形し、この平板を金型(縦80mm×横80mm×厚み3mmt )に配設した。次いで、金型キャビテイ内に樹脂を噴出させて、二種類の樹脂が密着した二色成形片を得、得られた成形片の界面の一端に刃を入れ、引き裂いた。その破壊形態を以下の基準で評価した。
◎ 二種の樹脂は界面で剥離されず、界面以外の個所で破壊される(母材破壊)
○ 二種の樹脂は界面で剥離されず、一方の樹脂が一部えぐりとられる(一部母材破壊)
△ 二種の樹脂は界面で剥離するが、一方の樹脂が一部他方に付着する(一部凝集破壊)
× 二種の樹脂が界面で剥離する(界面剥離)
なお、実施例及び比較例で用いた樹脂の射出成型は、射出成形機(東芝(株)製、80t )下記の条件で行なった。
実施例1〜12及び比較例1〜8
表1及び2に示す割合でポリエステル系樹脂(A)、スチレン系樹脂(B)、ポリカーボネート系樹脂(C)及び無機充填剤(D)を用い、二軸押出機にて押出しして樹脂組成物を調製した。
樹脂組成物をシリンダー内で溶融混練し、一次材の試験片の一部を配設した金型キャビテイ内に二次材として射出させて、成形品(試験片)を得た。この成形品を用いて上記評価を行なった。結果を、一次材及び二次材の組合せ、成形条件とともに表1及び2に示す。
比較として、スチレン系樹脂を用いない例及びスチレン系樹脂を過剰量用いた例について実施例と同様に評価を行なった。結果を表2に示す。
【0056】
【表1】
【0057】
【表2】
表より明らかなように、スチレン系樹脂(B)を用いない比較例に比べ、実施例では、高い引張りせん断強度及び良好な密着状態を示し、密着性に優れていた。
Claims (14)
- (A)ポリアルキレンテレフタレート系樹脂及びポリアルキレンナフタレート系樹脂から選択された少なくとも一種のポリエステル系樹脂100重量部、(B)スチレン系樹脂10〜100重量部、(C)ポリカーボネート系樹脂0〜30重量部、及び(D)無機充填剤10〜150重量部を含む二色成形用樹脂組成物であって、前記スチレン系樹脂が、芳香族ビニル化合物の単独重合体、芳香族ビニル化合物を二種以上組み合わせて用いた共重合体、芳香族ビニル化合物と共重合性ビニル単量体との共重合体又はゴム変性スチレン系樹脂であり、前記共重合性ビニル単量体が、(メタ)アクリロニトリル、(メタ)アクリル酸アルキルエステル、ビニルエステル系単量体、ヒドロキシル基含有単量体、カルボキシル基含有単量体、及びイミド系単量体から選択された少なくとも一種のビニル単量体である二色成形用樹脂組成物。
- ポリエステル系樹脂が、ポリブチレンテレフタレート系樹脂で構成されている請求項1記載の樹脂組成物。
- ポリエステル系樹脂が、5〜40重量%のコモノマー単位を含むコポリエステルである請求項1記載の樹脂組成物。
- コモノマーが、イソフタル酸及び/又はアルキレングリコールである請求項3記載の樹脂組成物。
- ポリエステル系樹脂の融点が、150〜230℃である請求項1記載の二色成形用樹脂組成物。
- 無機充填剤が、繊維状充填剤及び/又は非繊維状充填剤を含む請求項1記載の樹脂組成物。
- 無機充填剤が、ガラス繊維、カーボン繊維、ガラスビーズ、ミルドファイバー、タルク、マイカ及びカオリンから選択された少なくとも一種である請求項1記載の樹脂組成物。
- 少なくともゴム変性スチレン系樹脂で構成された一次材に対して二次成形するための樹脂組成物であって、ポリアルキレンテレフタレート系樹脂と、スチレン系樹脂と、無機充填剤とで構成されており、前記スチレン系樹脂が、芳香族ビニル化合物の単独重合体、芳香族ビニル化合物を二種以上組み合わせて用いた共重合体、芳香族ビニル化合物と共重合性ビニル単量体との共重合体又はゴム変性スチレン系樹脂であり、前記共重合性ビニル単量体が、(メタ)アクリロニトリル、(メタ)アクリル酸アルキルエステル、ビニルエステル系単量体、ヒドロキシル基含有単量体、カルボキシル基含有単量体、及びイミド系単量体から選択された少なくとも一種のビニル単量体である二次成形用樹脂組成物。
- (A)ポリアルキレンテレフタレート系樹脂及びポリアルキレンナフタレート系樹脂から選択された少なくとも一種のポリエステル系樹脂100重量部、(B)スチレン系樹脂10〜100重量部、(C)ポリカーボネート系樹脂0〜30重量部、及び(D)無機充填剤10〜150重量部を混合する二色成形用樹脂組成物の製造方法であって、前記スチレン系樹脂が、芳香族ビニル化合物の単独重合体、芳香族ビニル化合物を二種以上組み合わせて用いた共重合体、芳香族ビニル化合物と共重合性ビニル単量体との共重合体又はゴム変性スチレン系樹脂であり、前記共重合性ビニル単量体が、(メタ)アクリロニトリル、(メタ)アクリル酸アルキルエステル、ビニルエステル系単量体、ヒドロキシル基含有単量体、カルボキシル基含有単量体、及びイミド系単量体から選択された少なくとも一種のビニル単量体である製造方法。
- 一次材及び二次材で構成された二色成形品であって、前記二次材が、請求項1記載の樹脂組成物で構成されている二色成形品。
- 一次材が、少なくともゴム変性スチレン系樹脂で構成されている請求項10記載の二色成形品。
- 一次材が、AAS樹脂、ABS樹脂、又はこれらの樹脂とポリカーボネート系樹脂との組合せで構成されている請求項10記載の二色成形品。
- 成形品が、自動車内外装部品である請求項10記載の二色成形品。
- 一次材に対して、請求項1記載の樹脂組成物を射出成型する二色成形品の製造方法。
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