JP3574426B2 - シート状成形体 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、難燃性や延焼防止性に優れ、特に燃焼時の形状保持効果によって優れた難燃効果や延焼防止効果を発現し、更に機械的強度や安定性、特にネッキングやひけが少なく、使用時において寸法精度が高く、貼り付け精度に優れるシート状成形体に関する。
【0002】
【従来の技術】
シート状成形体は、テープ基材やフィルム、シート等さまざまに用いられるが、それぞれの用途に応じて種々の品質が要求される。
例えば、一般に化粧シート用材料には、下地材の隠蔽性や施工性の他に、火災時に化粧シートを伝わっての延焼を防ぐ目的で難燃性が要求される。このため、難燃性の化粧シート用材料としては、従来から軟質ポリ塩化ビニル系樹脂が用いられてきた。
また、同様に装飾粘着シートにおいても施工時の柔軟性(施工性)や透過性とともに難燃性が要求され、従来から軟質ポリ塩化ビニル樹脂が用いられてきた。
【0003】
一方、工業用途に用いられる高分子材料は、近年、廃プラスチックの処理や環境ホルモンの問題等から、いわゆる環境適応型材料への転換が望まれている。具体的には、例えば、燃焼時のダイオキシン発生や軟質ポリ塩化ビニル系樹脂中に一般的に添加されている可塑剤の毒性等の問題から、軟質ポリ塩化ビニル系樹脂からポリオレフィン系樹脂等への転換が検討されている。
【0004】
このため、近年、シート用材料の分野においても燃焼時に環境負荷の少ない環境適応型材料へ転換するために、例えば、特開平8−3380号公報や特開平8−1897号公報に示されるようなポリオレフィン系樹脂を使用した化粧シートの開発がなされている。
【0005】
しかし、ポリオレフィン系樹脂は、最も燃焼性の高い樹脂の一つであり、難燃性を実現させることは困難な課題となっている。ポリオレフィン系樹脂の難燃化手法として、一般的には、大量の難燃剤をポリオレフィン系樹脂中に練り込んで使用している例が多い。
【0006】
難燃剤の中でも、ハロゲン含有化合物からなる難燃剤は、難燃化の効果が高く、成形性の低下や化粧シートのような成形体の機械的強度の低下も比較的少ないが、これを使用した場合、成形加工時や燃焼時に多量のハロゲン系ガスを発生する恐れがあり、発生したハロゲン系ガスにより機器が腐食したり、人体への好ましくない影響があったりするために、安全性の面からハロゲン含有化合物を使用しない、いわゆるノンハロゲン難燃化技術が強く望まれている。
【0007】
ポリオレフィン系樹脂のノンハロゲン難燃化技術の一つとしては、燃焼時に有毒なガスを発生しない、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、塩基性炭酸マグネシウム等の金属化合物を添加する方法が、例えば、特開昭57−165437号公報や特開昭61−36343号公報等に開示されている。
【0008】
しかしながら、易燃性のポリオレフィン系樹脂に充分な難燃性を付与するためには、多量の金属化合物を添加する必要があり、その結果、得られる成形体の機械的強度が著しく低下したり、フィルム・シート状に成形することが困難になるなど、実用に供することが難しいという問題点がある。
【0009】
なかでも、水酸化アルミニウムや水酸化マグネシウム等の金属水酸化物をポリオレフィン系樹脂に添加した場合は、燃焼時において被膜層を形成することができず、脆い灰分が露出し、残渣が脱落していくため、断熱層としての機能を早期に失う上に、材料の変形による延焼を食い止めることができない。
【0010】
また、リン系難燃剤をポリオレフィン系樹脂に添加し、燃焼時に表面に被膜を形成させ、これによる酸素遮断効果を利用することにより、難燃性を発現させる方法が提案されている。しかしながら、易燃性のポリオレフィン系樹脂に充分な難燃性を付与するためには、多量のリン系難燃剤を添加する必要があり、その結果、得られる成形体の機械的強度が著しく低下し、実用に供することが難しいという問題点がある。更に、リン系難燃剤をポリオレフィン系樹脂に添加した場合は、局所的には被膜を形成するものの、強固な被膜層を連続層として形成することは困難である。また、局所的な被膜の機械的強度は非常に弱く、燃焼時において脆い灰分が露出し、残渣が脱落していくため、断熱層としての機能を早期に失う上に、材料の変形による延焼を食い止めることができない。
【0011】
また、例えば、特開平6−25476号公報には、ポリオレフィン系樹脂に赤リン又はリン化合物と膨張性黒鉛とが添加された樹脂組成物が開示されている。この樹脂組成物は、酸素指数から見た場合には充分な難燃性を有するものの、実際には局所的にしか被膜を形成できず、強固な被膜層を連続層として形成することができないものである。また、局所的な被膜の機械的強度は非常に弱く、燃焼時において脆い灰分が露出し、残渣が脱落していくため、断熱層としての機能を早期に失う上に、材料の変形による延焼を食い止めることができない。更に、これらの難燃材料を難燃ポリオレフィン系シート用として使用する場合には、難燃性の実現のために大量の難燃剤を添加しなくてはならないので、シートとして必要な物性である柔軟性や伸度を確保することが困難になるという問題点がある。
【0012】
ノンハロゲンによる難燃化手法としては特開平6−41371号公報に示されるように、平板状タルクを配合することも検討されている。しかしながら上述の難燃化手法と同様にベースレジンに対して80〜130重量部という大量の添加量が必要となり、化粧シート用や装飾粘着シート用の材料として使用する場合には、重要な物性である柔軟性や伸度を確保することが困難になるという問題点があった。
【0013】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、上記に鑑み、難燃性や延焼防止性に優れ、特に燃焼時の形状保持効果によって優れた難燃効果や延焼防止効果を発現し、更に機械的強度や安定性、特にネッキングやひけが少なく、使用時において寸法精度が高く、貼り付け精度に優れるシート状成形体を提供することである。
【0014】
【発明を解決するための手段】
本発明は、単層又は複数層からなるシート状成形体であって、熱可塑性樹脂100重量部に対して、層状珪酸塩0.1〜100重量部、並びに、金属水酸化物0.1〜70重量部及び/又はメラミン誘導体0.1〜50重量部が配合されてなる層を少なくとも1層有するシート状成形体である。
以下に本発明を詳述する。
【0015】
第1の本発明のシート状成形体は、単層又は複数層からなり、熱可塑性樹脂100重量部に対して、層状珪酸塩0.1〜100重量部、並びに、金属水酸化物0.1〜70重量部及び/又はメラミン誘導体0.1〜50重量部が配合されてなる層を少なくとも1層有するものである。
【0016】
上記熱可塑性樹脂としては特に限定されず、例えば、ポリオレフィン系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリビニルアセタール系樹脂、ポリビニルアルコール系樹脂、ポリ酢酸ビニル系樹脂、ポリ(メタ)アクリル酸エステル系樹脂、ノルボルネン系樹脂、ポリフェニレンエーテル系樹脂、ポリオキシメチレン系樹脂等が挙げられる。なかでもポリオレフィン系樹脂が好適に用いられる。これらの熱可塑性樹脂は、単独で用いられても良いし、2種類以上が併用されても良い。
なお、本明細書において(メタ)アクリルとは、アクリル及びメタクリルを意味するものとする。
【0017】
上記ポリオレフィン系樹脂とは、分子内に重合性二重結合を有するオレフィン系単量体を単独重合又は共重合してなるものである。
【0018】
上記オレフィン系単量体としては特に限定されず、例えば、エチレン、プロピレン、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、1−ヘプテン、1−オクテン、4−メチル−1−ペンテン、酢酸ビニル等のα−オレフィン類;ブタジエンやイソプレン等の共役ジエン類等が挙げられる。これらのオレフィン系単量体は、単独で用いられても良いし、2種類以上が併用されても良い。
【0019】
上記ポリオレフィン系樹脂としては特に限定されず、例えば、エチレンの単独重合体;エチレンと該エチレンと共重合可能なエチレン以外のα−オレフィンとの共重合体;エチレン−(メタ)アクリル酸及び/又は例えば(メタ)アクリル酸エチルのような(メタ)アクリル酸エステル共重合体;エチレン−酢酸ビニル共重合体;エチレン−スチレン共重合体等のポリエチレン系樹脂;プロピレンの単独重合体;プロピレンと該プロピレンと共重合可能なプロピレン以外のα−オレフィンとの共重合体;プロピレン−エチレンランダム共重合体又はブロック共重合体;ポリプロピレン系アロイ樹脂等のポリプロピレン系樹脂;ブテンの単独重合体;ブタジエンやイソプレン等の共役ジエンの単独重合体又は共重合体等が挙げられる。なかでもエチレンの単独重合体、エチレンと該エチレンと共重合可能なエチレン以外のα−オレフィンとの共重合体、エチレン−アクリル酸エチル共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体、プロピレンの単独重合体、プロピレンと該プロピレンと共重合可能なプロピレン以外のα−オレフィンとの共重合体、及びポリプロピレン系アロイ樹脂からなる群より選択される少なくとも1種類のポリオレフィン系樹脂が好適に用いられる。これらのポリオレフィン系樹脂は、単独で用いられても良いし、2種類以上が併用されても良い。
【0020】
上記オレフィン系単量体と共重合され得る(メタ)アクリル酸及び(メタ)アクリル酸エステルとしては、下記一般式で示される化合物が挙げられる。
CH2 =C(R1 )COO−R2
式中、R1 は水素原子又はメチル基を示し、R2 は水素原子、脂肪族炭化水素基、芳香族炭化水素基、及び、ハロゲン基、アミノ基、グリシジル基等の官能基を含む炭化水素基の中から選ばれる1価の基を示す。
【0021】
上記一般式で示される(メタ)アクリル酸エステルとしては、特に限定されず、例えば、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸n−プロピル、(メタ)アクリル酸イソプロピル、(メタ)アクリル酸n−ブチル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸sec−ブチル、(メタ)アクリル酸t−ブチル、(メタ)アクリル酸イソアミル、(メタ)アクリル酸n−へキシル、(メタ)アクリル酸シクロへキシル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸n−オクチル、(メタ)アクリル酸ラウリル、(メタ)アクリル酸n−トリデシル、(メタ)アクリル酸トリスチル、(メタ)アクリル酸セチル、(メタ)アクリル酸ステアリル、(メタ)アクリル酸アリル、(メタ)アクリル酸ビニル、(メタ)アクリル酸ベンジル、(メタ)アクリル酸フェニル、(メタ)アクリル酸2−ナフチル、(メタ)アクリル酸2,4,6−トリクロロフェニル、(メタ)アクリル酸2,4,6−トリブロモフェニル、(メタ)アクリル酸イソボルニル、(メタ)アクリル酸2−メトキシエチル、(メタ)アクリル酸2−エトキシエチル、(メタ)アクリル酸ジエチレングリコールモノメチルエーテル、(メタ)アクリル酸ポリエチレングリコールモノメチルエーテル、(メタ)アクリル酸ポリプロピレングリコールモノメチルエーテル、(メタ)アクリル酸テトラヒドロフルフリル、(メタ)アクリル酸2,3−ジブロモプロピル、(メタ)アクリル酸2−クロロエチル、(メタ)アクリル酸2,2,2−トリフルオロエチル、(メタ)アクリル酸ヘキサフルオロイソプロピル、(メタ)アクリル酸グリシジル、(メタ)アクリル酸3−トリメトキシシリルプロピル、(メタ)アクリル酸2−ジエチルアミノエチル、(メタ)アクリル酸2−ジメチルアミノエチル、(メタ)アクリル酸t−ブチルアミノエチル等が挙げられる。これらの(メタ)アクリル酸エステルは、単独で用いられても良いし、2種類以上が併用されても良い。
【0022】
エチレンと(メタ)アクリル酸及び/又は(メタ)アクリル酸エステルとの共重合体やエチレン−酢酸ビニル共重合体における、(メタ)アクリル酸及び/又は(メタ)アクリル酸エステルや酢酸ビニルの含有量は、目的とするシート状成形体に要求される性能によって適宜決定されれば良く、特に限定されるものではないが、通常、0.1〜50重量%であることが好ましい。0.1重量%未満であると、シート状成形体の柔軟性改善効果を充分に得られないことがあり、50重量%を超えると、シート状成形体の耐熱性が低下することがある。より好ましくは5〜30重量%である。
【0023】
柔軟性に優れるポリオレフィン系樹脂が要求される場合には、エチレンとエチレン以外のα−オレフィンとの共重合体が一般的に用いられる。特に、α−オレフィンの含有量を高めることによって柔軟性が向上し、柔軟性を必要とするシートとして好適に用いられる。上記エチレン以外のα−オレフィンとしては、特に限定されるものではないが、例えば、プロピレン、1−ブテン、1−ヘキセン、4−メチル−1−ペンテン、1−オクテン等が好適に用いられる。これらのエチレン以外のα−オレフィンは、単独で用いられても良いし、2種類以上が併用されても良い。
【0024】
上記エチレンとエチレン以外のα−オレフィンとの共重合体において、エチレン以外のα−オレフィンの含有量は特に限定されるものではないが、0.1〜50重量%であることが好ましい。0.1重量%未満であると、充分な柔軟性を得られないことがあり、50重量%を超えると、耐熱性が低下することがある。より好ましくは2〜40重量%である。
【0025】
上記エチレンとエチレン以外のα−オレフィンとの共重合体は、IV族、X族又はXI族の遷移金属の錯体を重合触媒として重合することができる。上記遷移金属の錯体とは、遷移金属原子に配位子が結合したものである。
【0026】
上記配位子としては、特に限定されず、例えば、炭化水素基、置換炭化水素基、炭化水素−置換メタロイド基等により置換されたシクロペンタジエン環;シクロペンタジエニルオリゴマー環;インデニル環;炭化水素基、置換炭化水素基、炭化水素−置換メタロイド基等により置換されたインデニル環;塩素、臭素等の1価のアニオンリガンド;2価のアニオンキレートリガンド;炭化水素基;アルコキシド;アリールアミド;アリールオキシド;アミド;ホスフィド;アリールホスフィド;シリル基;置換シリル基等が挙げられる。これらの配位子は、単独で用いられても良いし、2種類以上が併用されても良い。
【0027】
上記炭化水素基としては特に限定されず、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、アミル基、イソアミル基、ヘキシル基、イソブチル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、セチル基、2−エチルヘキシル基、フェニル基等が挙げられる。これらの炭化水素基は、単独で用いられても良いし、2種類以上が併用されても良い。
【0028】
上記配位子が結合した遷移金属の錯体の具体例としては特に限定されず、例えば、シクロペンタジエニルチタニウムトリス(ジメチルアミド)、メチルシクロペンタジエニルチタニウムトリス(ジメチルアミド)、ビス(シクロペンタジエニル)チタニウムジクロリド、ジメチルシリルテトラメチルシクロペンタジエニル−t−ブチルアミドジルコニウムジクロリド、ジメチルシリルテトラメチルシクロペンタジエニル−t−ブチルアミドハフニウムジクロリド、ジメチルシリルテトラメチルシクロペンタジエニル−p−n−ブチルフェニルアミドジルコニウムクロリド、メチルフェニルシリルテトラメチルシクロペンタジエニル−t−ブチルアミドハフニウムジクロリド、インデニルチタニウムトリス(ジ−n−プロピルアミド)、インデニルチタニウムビス(ジ−n−ブチルアミド)(ジ−n−プロピルアミド)等のIV族遷移金属の錯体;ビピリジン、置換ビピリジン、ビスオキサゾリン、置換ビスオキサゾリン;一般式ArN=CR3 CR4 =NAr(式中、Arは、フェニル基又は置換フェニル基等のアリル基を示し、R3 及びR4 は、水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、アリル基、又は、R3 、R4 が結合した環状炭化水素基を示す)で表される配位子;各種ジイミン;N,N’−ジメチルアミジナト、N,N’−ジエチルアミジナト、N,N’−ジイソプロピルアミジナト、N,N’−ジ−t−ブチルアミジナト、N,N’−トリフルオロメチルアミジナト、N,N’−ジフェニルアミジナト、N,N’−ジ置換フェニルアミジナト、N,N’−ジトリメチルシリルアミジナト、N,N’−ジメチルベンズアミジナト、N,N’−ジエチルベンズアミジナト、N,N’−ジイソプロピルベンズアミジナト、N,N’−ジ−t−ブチルベンズアミジナト、N,N’−トリフルオロメチルベンズアミジナト、N,N’−ジフェニルベンズアミジナト、N,N’−ジトリメチルシリルベンズアミジナト;N,N’−ジ置換フェニルベンズアミジナト配位のニッケル、パラジウム、銅、銀等のX族、XI族遷移金属の錯体等が挙げられる。これらの遷移金属の錯体は、単独で用いられても良いし、2種類以上が併用されても良い。上記遷移金属の錯体は、通常、有機アルミニウム化合物やホウ素化合物のようなルイス酸共存下で得ることができる。
【0029】
このような触媒系で重合されたエチレンとエチレン以外のα−オレフィンとの共重合体は、エチレン以外のα−オレフィンの含有量を高めることが可能であったり、組成分布の制御が可能であるため、幅広い要求の柔軟性や機械的強度に対応し得る第1の本発明のシート状成形体を得るための材料として好適に用いられる。
【0030】
更に柔軟性に優れるポリオレフィン系樹脂が要求される場合には、ポリオレフィン系樹脂を主成分とし、これにエラストマー成分(ゴム成分)が微分散されてなるポリオレフィン系アロイ樹脂が用いられる。
【0031】
主成分としてのポリオレフィン系樹脂中にゴム成分であるエラストマー成分を微分散させる方法としては特に限定されず、例えば、加熱溶融したポリオレフィン系樹脂中にエラストマー成分を添加して、均一に共混練する方法や、ポリオレフィン系樹脂の重合系中にエラストマー成分を添加して、ポリオレフィン系樹脂の重合とエラストマー成分の微分散とを同時に一括して行う方法等が挙げられるが、なかでも、エラストマー成分がより高度に微分散したポリオレフィン系アロイ樹脂を得られることから、後者の方法を採ることが好ましい。
【0032】
ゴム成分であるエラストマー成分が高度に微分散したポリオレフィン系アロイ樹脂を用いることにより、得られる熱可塑性樹脂組成物は、他の物性を損なわれることなく、優れた柔軟性や伸度を発現するものとなる。
【0033】
上記ポリオレフィン系アロイ樹脂のなかでも、より優れた柔軟性や伸度を発現する熱可塑性樹脂組成物を得られることから、例えば、プロピレンの単独重合体、プロピレンと該プロピレンと共重合可能なプロピレン以外のα−オレフィンとの共重合体、プロピレン−エチレンランダム共重合体又はブロック共重合体等のポリプロピレン系樹脂を主成分とし、これにエラストマー成分が微分散されてなるポリプロピレン系アロイ樹脂が好適に用いられる。
【0034】
上記ポリプロピレン系アロイ樹脂のなかでも、クロス分別クロマトグラフによる全溶出量のうち、10℃以下での溶出量が30〜80重量%であり、10℃を超え70℃以下での溶出量が5〜35重量%であるポリプロピレン系樹脂を主成分とするポリプロピレン系アロイ樹脂がより好適に用いられる。
【0035】
上記クロス分別クロマトグラフによる溶出量の温度による差は、主としてポリプロピレン系樹脂の結晶性の差を示している。即ち、上記溶出量を有するポリプロピレン系樹脂は、広い結晶性分布を有するものであり、このポリプロピレン系樹脂を主成分とするポリプロピレン系アロイ樹脂は、後述する層状珪酸塩や難燃剤を高充填させても物性の低下が少なく、優れた柔軟性や伸度を発現する。
【0036】
上記クロス分別クロマトグラフによる溶出量の測定方法は特に限定されず、例えば、以下のような方法を用いることができる。即ち、まずポリプロピレン系樹脂を該ポリプロピレン系樹脂が完全に溶解する温度の例えばo−ジクロロベンゼンに溶解した後、この溶液を一定速度で冷却し、予め準備しておいた不活性担体表面に薄いポリプロピレン系樹脂層を結晶性の高い順及び分子量の大きい順に生成させる。次いで、温度上昇分離分別法により、温度を連続的又は段階的に上げ、所定温度範囲毎に順次溶出した成分の濃度を検出し、組成分布(結晶性分布)を測定すると共に、その成分の分子量及びその分布を高温GPCにより測定する。
【0037】
上記クロス分別クロマトグラフによる全溶出量のうち、10℃以下での溶出量が30重量%未満であると、ポリプロピレン系樹脂の柔軟性が不充分となるので、このポリプロピレン系樹脂を主成分とするポリプロピレン系アロイ樹脂は、層状珪酸塩や難燃剤を高充填させ難くなることがあり、10℃以下での溶出量が80重量%を超えると、ポリプロピレン系樹脂が柔軟になり過ぎるので、このポリプロピレン系樹脂を主成分とするポリプロピレン系アロイ樹脂を用いた第1の本発明のシート状成形物の機械的強度が不充分となることがある。
【0038】
また、クロス分別クロマトグラフによる全溶出量のうち、10℃を超え70℃以下での溶出量が5重量%未満であると、ポリプロピレン系樹脂の耐熱性が不充分となるので、このポリプロピレン系樹脂を主成分とするポリプロピレン系アロイ樹脂を用いた第1の本発明のシート状成形物の耐熱性が不充分となることがあり、35重量%を超えると、ポリプロピレン系樹脂の柔軟性が不充分となるので、このポリプロピレン系樹脂を主成分とするポリプロピレン系アロイ樹脂は、層状珪酸塩や難燃剤を高充填させ難くなることがある。
【0039】
上記ポリプロピレン系アロイ樹脂100重量部に対して、層状珪酸塩0.1〜100重量部、並びに、金属水酸化物0.1〜70重量部及び/又はメラミン誘導体0.1〜50重量部が配合された熱可塑性樹脂組成物であって、上記ポリプロピレン系アロイ樹脂は、クロス分別クロマトグラフによる全溶出量のうち、10℃以下での溶出量が30〜80重量%であり、10℃を超え70℃以下での溶出量が5〜35重量%であるポリプロピレン系樹脂を主成分とするものである熱可塑性樹脂組成物もまた、本発明の1つである。
【0040】
本発明で用いられる熱可塑性樹脂の分子量及び分子量分布は、特に限定されるものではないが、重量平均分子量が5000〜500万であることが好ましく、より好ましくは2万〜30万であり、また、重量平均分子量/数平均分子量で求められる分子量分布が1.1〜80であることが好ましく、より好ましくは1.5〜40である。
【0041】
上記熱可塑性樹脂には、本発明の課題達成を阻害しない範囲で必要に応じて、樹脂改質のために熱可塑性エラストマー類やオリゴマー類が配合されても良い。 上記熱可塑性エラストマー類としては特に限定されず、例えば、スチレン系エラストマー、オレフィン系エラストマー、ウレタン系エラストマー、ポリエステル系エラストマー等が挙げられる。これらの熱可塑性エラストマー類は、単独で用いられても良いし、2種類以上が併用されても良い。上記オリゴマー類としては特に限定されず、例えば、無水マレイン酸変性ポリエチレンオリゴマー等が挙げられる。これらのオリゴマー類は、単独で用いられても良いし、2種類以上が併用されても良い。また、上記熱可塑性エラストマー類及びオリゴマー類は、それぞれ単独で用いられても良いし、両者が併用されても良い。
【0042】
上記熱可塑性樹脂には、本発明の課題達成を阻害しない範囲で必要に応じて、物性を均一化する補助手段として結晶を微細化するための結晶核となり得る造核剤や、酸化防止剤(老化防止剤)、熱安定剤、光安定剤、紫外線吸収剤、滑剤、難燃剤、帯電防止剤、防曇剤等の各種添加剤の1種類又は2種類以上が配合されても良い。
【0043】
第1の本発明のシート状成形物に用いられる層状珪酸塩とは、層間に交換性金属カチオンを有する珪酸塩鉱物を意味する。
上記層状珪酸塩としては特に限定されず、例えば、モンモリロナイト、サポナイト、ヘクトライト、バイデライト、スティブンサイト、ノントロナイト等のスメクタイト系粘土鉱物や、バーミキュライト、ハロイサイト、膨潤性マイカ等が挙げられる。なかでもモンモリロナイト及び/又は膨潤性マイカが好適に用いられる。上記層状珪酸塩は、天然物であっても良いし、合成物であっても良い。また、これらの層状珪酸塩は、単独で用いられても良いし、2種類以上が併用されても良い。
【0044】
上記層状珪酸塩としては、下記式で定義される形状異方性効果の大きいスメクタイト類や膨潤性マイカを用いることが好ましい。形状異方性効果の大きい層状珪酸塩を用いることにより、熱可塑性樹脂組成物の機械的強度はより優れたものとなる。
形状異方性効果=結晶表面(A)の面積/結晶表面(B)の面積
なお、式中、結晶表面(A)は層表面を意味し、結晶表面(B)は層側面を意味する。
【0045】
上記層状珪酸塩の形状は、特に限定されるものではないが、平均長さが0.01〜3μm、厚みが0.001〜1μm、アスペクト比が20〜500であるものが好ましく、より好ましくは、平均長さが0.05〜2μm、厚みが0.01〜0.5μm、アスペクト比が50〜200のものである。
【0046】
上記層状珪酸塩の層間に存在する交換性金属カチオンとは、層状珪酸塩の結晶表面上に存在するナトリウムやカルシウム等の金属イオンのことであり、これらの金属イオンは、カチオン性物質とのカチオン交換性を有するため、カチオン性を有する種々の物質を上記層状珪酸塩の結晶層間に挿入(インターカレート)することができる。
【0047】
上記層状珪酸塩のカチオン交換容量は、特に限定されるものではないが、50〜200mm等量/100gであることが好ましい。50mm等量/100g未満であると、カチオン交換により層状珪酸塩の結晶層間にインターカレートされるカチオン性物質の量が少なくなるために、結晶層間が充分に非極性化されないことがあり、200mm等量/100gを超えると、層状珪酸塩の結晶層間の結合力が強固となりすぎて、結晶薄片が剥離し難くなることがある。
【0048】
本発明において、熱可塑性樹脂として例えばポリオレフィン系樹脂のような低極性樹脂が用いられる場合には、予め層状珪酸塩の層間をカチオン性界面活性剤でカチオン交換して、疎水化しておくことが好ましい。予め層状珪酸塩の層間を疎水化しておくことにより、層状珪酸塩と熱可塑性樹脂との親和性が高まり、層状珪酸塩を熱可塑性樹脂中により均一に微分散させることができる。
【0049】
上記カチオン性界面活性剤としては特に限定されず、例えば、4級アンモニウム塩や4級ホスホニウム塩等が挙げられる。なかでも、層状珪酸塩の結晶層間を充分に非極性化し得ることから、炭素数6以上のアルキル鎖を有する4級アンモニウム塩、即ち炭素数6以上のアルキルアンモニウム塩が好適に用いられる。
【0050】
上記4級アンモニウム塩としては特に限定されず、例えば、ラウリルトリメチルアンモニウム塩、ステアリルトリメチルアンモニウム塩、トリオクチルアンモニウム塩、ジステアリルジメチルアンモニウム塩、ジ硬化牛脂ジメチルアンモニウム塩、ジステアリルジベンジルアンモニウム塩、N−ポリオキシエチレン−N−ラウリル−N,N−ジメチルアンモニウム塩等が挙げられる。これらの4級アンモニウム塩は、単独で用いられても良いし、2種類以上が併用されても良い。
【0051】
上記4級ホスホニウム塩としては特に限定されず、例えば、ドデシルトリフェニルホスホニウム塩、メチルトリフェニルホスホニウム塩、ラウリルトリメチルホスホニウム塩、ステアリルトリメチルホスホニウム塩、トリオクチルホスホニウム塩、ジステアリルジメチルホスホニウム塩、ジステアリルジベンジルホスホニウム塩等が挙げられる。これらの4級ホスホニウム塩は、単独で用いられても良いし、2種類以上が併用されても良い。
【0052】
本発明で用いられる層状珪酸塩は、上述のように化学処理によって熱可塑性樹脂中への分散性を向上させることができる。
【0053】
上記化学処理は、カチオン性界面活性剤によるカチオン交換法(以下、化学修飾(1)法ともいう)に限定されるものではなく、例えば、以下に示す各種化学処理法によっても実施することができる。なお、化学修飾(1)法を含め、以下に示す各種化学処理法によって熱可塑性樹脂中への分散性を向上させた層状珪酸塩を、以下、「有機化層状珪酸塩」ともいう。
【0054】
(2)化学修飾(1)法で化学処理された有機化層状珪酸塩の結晶表面に存在する水酸基を、これと化学結合し得る官能基、又は、化学結合はしなくとも化学的親和性の大きい官能基を分子末端に1個以上有する化合物で化学処理する方法(以下、化学修飾(2)法ともいう)。
【0055】
(3)化学修飾(1)法で化学処理された有機化層状珪酸塩の結晶表面に存在する水酸基を、これと化学結合し得る官能基、又は、化学結合はしなくとも化学的親和性の大きい官能基及び反応性官能基を分子末端に1個以上有する化合物で化学処理する方法(以下、化学修飾(3)法ともいう)。
【0056】
(4)化学修飾(1)法で化学処理された有機化層状珪酸塩の結晶表面を、アニオン性界面活性を有する化合物で化学処理する方法(以下、化学修飾(4)法ともいう)。
【0057】
(5)化学修飾(4)法において、アニオン性界面活性を有する化合物の分子鎖中のアニオン部位以外に反応性官能基を1個以上有する化合物で化学処理する方法(以下、化学修飾(5)法ともいう)。
【0058】
(6)上記化学修飾(1)法ないし化学修飾(5)法のいずれかの方法で化学処理された有機化層状珪酸塩に、更に、例えば無水マレイン酸変性ポリオレフィン系樹脂のような層状珪酸塩と反応可能な官能基を有する重合体を添加した組成物を用いる方法(以下、化学修飾(6)法ともいう)等が挙げられる。これらの化学修飾法は、単独で用いられても良いし、2種類以上の方法が併用されても良い。
【0059】
上記化学修飾(2)法において、水酸基と化学結合し得る官能基、又は、化学結合はしなくとも化学的親和性の大きい官能基としては特に限定されず、例えば、アルコキシ基、エポキシ基、二塩基性酸無水物も包含するカルボキシル基、水酸基、イソシアネート基、アルデヒド基等の官能基や、水酸基との化学的親和性が高いその他の官能基等が挙げられる。
【0060】
上記水酸基と化学結合し得る官能基、又は、化学結合はしなくとも化学的親和性の大きい官能基を有する化合物としては特に限定されず、例えば、上記に例示した官能基を有するシラン化合物、チタネート化合物、グリシジル化合物、カルボン酸類、アルコール類等が挙げられる。これらの化合物は、単独で用いられても良いし、2種類以上が併用されても良い。
【0061】
上記シラン化合物としては特に限定されず、例えば、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリス(β−メトキシエトキシ)シラン、γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、γ−アミノプロピルジメチルメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、γ−アミノプロピルメチルジエトキシシラン、γ−アミノプロピルジメチルエトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、トリメチルメトキシシラン、ヘキシルトリメトキシシラン、ヘキシルトリエトキシシラン、N−β−(アミノエチル)γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−β−(アミノエチル)γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−β−(アミノエチル)γ−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、オクタデシルトリメトキシシラン、オクタデシルトリエトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン等が挙げられる。これらのシラン化合物は、単独で用いられても良いし、2種類以上が併用されても良い。
【0062】
上記化学修飾(4)法及び化学修飾(5)法において、アニオン性界面活性を有する化合物、及び/又は、アニオン性界面活性を有し、分子鎖中のアニオン部位以外に反応性官能基を1個以上有する化合物としては、イオン相互作用により層状珪酸塩を化学処理できるものであれば如何なる化合物であっても良く、例えば、ラウリル酸ナトリウム、ステアリン酸ナトリウム、オレイン酸ナトリウム、高級アルコール硫酸エステル塩、第2級高級アルコール硫酸エステル塩、不飽和アルコール硫酸エステル塩等が挙げられる。これらの化合物は、単独で用いられても良いし、2種類以上が併用されても良い。
【0063】
上記化学修飾(6)法としては、無水マレイン酸変性ポリオレフィン系樹脂のような層状珪酸塩と反応可能な官能基を有する重合体を添加した組成物等を分散剤として用いる方法が挙げられる。これは、層状珪酸塩と親和性の高い部位とベースレジンとである熱可塑性樹脂と親和性の高い部位を持つ分散剤を混合することにより両者の相溶性を高め、層状珪酸塩の分散に必要なエネルギーを低下させる方法である。
【0064】
上記分散剤としては、無水マレイン酸変性ポリオレフィン系オリゴマー等が好適に用いられるが、なかでも両端が異なる性質をもつA−B型・ジブロックポリマー又はジブロックオリゴマーが好適に用いられる。両末端が異なる性質(層状珪酸塩/熱可塑性樹脂のそれぞれに親和性が高い)をもち、かつA(層状珪酸塩親和サイト)−B(熱可塑性親和サイト)型であることは、効率的に、それぞれ親和性を発揮し易いことから好適な分散効果が得られる。
【0065】
上記A−B型分散剤を用いて高分散状態を得る方法としては、熱可塑性樹脂と層状珪酸塩を分散剤とともに押出機中で溶融混練することが挙げられるが、特に限定されるものではない。
【0066】
第1の本発明で用いられる層状珪酸塩は、広角X線回折測定法により測定した(001)面の平均層間距離が3nm以上であり、かつ、一部又は全部が5層以下に分散していることが好ましい。より好ましくは、上記平均層間距離が6nm以上であり、かつ、一部又は全部が5層以下に分散している状態である。なお、本明細書において層状珪酸塩の平均層間距離とは、層状珪酸塩の微細薄片状結晶を層とした場合の平均の層間距離を意味し、X線回折ピーク及び透過型電子顕微鏡撮影、即ち、広角X線回折測定法により、算出することができる。また、層状珪酸塩の分散状態は、透過型電子顕微鏡を用いて5万〜10万倍で観察して、一定面積中において観察できる層状珪酸塩の積層集合体の数(X)のうち5層以下で分散している積層集合体の数(Y)をカウントし下記式により算出することができる。
5層以下に分散している層状珪酸塩の割合(%)=(Y/X)×100
【0067】
本来的には数十層の積層体である層状珪酸塩の層状分子が剥離して分散化すると、層状珪酸塩の結晶薄片層間における相互作用がほとんど無視できるほどに弱まり、結晶薄片は熱可塑性樹脂中で一定の距離を保って微分散状態となり、安定化する。その結果、層状珪酸塩は、結晶薄片層間の平均層間距離が大きくなると共に分散安定化して、燃焼時においては層状珪酸塩の結晶薄片の移動によって焼結体を形成し易くなる。即ち、層状珪酸塩の結晶薄片層が平均層間距離3nm以上、より好ましくは6nm以上で分散した熱可塑性樹脂組成物は難燃被膜となり得る焼結体を形成し易くなる。この焼結体は燃焼時の早い段階で形成されるので、外界からの酸素の供給を遮断するのみならず、燃焼により発生する可燃性ガスも遮断することができ、熱可塑性樹脂組成物の発熱速度を抑制することができる。即ち、優れた延焼防止性を発現することが可能となる。従って、このような層状珪酸塩を熱可塑性樹脂中に配合し分散させて得られる第1の本発明のシート状成形体は、著しく優れた難燃性、機械的強度、耐熱性等の諸性能を発現するものとなる。また、層状珪酸塩の結晶薄片層間の平均層間距離が3nm以上、好ましくは6nm以上であると、層状珪酸塩の結晶薄片層が層毎に分離し、層状珪酸塩の結晶薄片層間における相互作用がほとんど無視できるほどに弱まるので、層状珪酸塩を構成する結晶薄片の熱可塑性樹脂中での分散状態が離砕安定化の方向に進行する利点がある。
【0068】
また、層状珪酸塩の一部又は全部が5層以下に分散しているということは、本来的には数十層の積層体である層状珪酸塩の層状分子の一部又は全部が剥離して広く分散しているということを意味しており、これも層状珪酸塩の結晶薄片層間における相互作用が弱まっていることになることから、上記と同様の効果を得ることができる。上記層状珪酸塩の一部又は全部が5層以下に分散していることとしては、具体的には、層状珪酸塩の10%以上が5層以下に分散していることが好ましく、層状珪酸塩の20%以上が5層以下に分散していることがより好ましい。
層状珪酸塩の積層数は、5層以下に分層していることにより上記効果を得ることができるが、より好ましくは3層以下に分層していることであり、特に好ましくは単層状に薄片化していることである。
【0069】
本発明の熱可塑性樹脂組成物において、層状珪酸塩の結晶薄片層間の平均層間距離が3nm以上であり、かつ、層状珪酸塩の一部又は全部が5層以下に分散している状態、即ち、熱可塑性樹脂中に層状珪酸塩が高分散している状態であれば、熱可塑性樹脂と層状珪酸塩との界面面積が増大する。熱可塑性樹脂と層状珪酸塩との界面面積が増大すると、層状珪酸塩の表面における熱可塑性樹脂の拘束の度合いが高まり、弾性率等の機械的強度が向上する。また、層状珪酸塩の表面における熱可塑性樹脂の拘束の度合いが高まると、溶融粘度が高まり、成形性も向上する。さらに、層状珪酸塩の邪魔板効果により、ガスバリア性の発現も可能となる。更に、層状珪酸塩が5層以下の積層数で存在しているということは、層状珪酸塩自体の強度保持の面からも有利であり、特に機械的強度、特に弾性率の発現に有利となる。
【0070】
本発明のシート状成形体は、熱可塑性樹脂100重量部に対して上記層状珪酸塩(前記有機化層状珪酸塩も包含する)0.1〜100重量部が配合されてなる層を少なくとも1層有する。0.1重量部未満であると、燃焼時に連続的な焼結体を形成するのが困難となるので難燃効果が小さいものとなり、100重量部を超えると、機械的強度や成形性を阻害しすぎることから、実用性に乏しくなる。好ましくは1〜40重量部であり、更に好ましく連続被膜を形成し機械強度を保つには4〜30重量部であり、特に高い被膜強度を得るためには7〜20重量部であることが好ましい。
【0071】
熱可塑性樹脂中に層状珪酸塩を分散させる方法としては特に限定されず、例えば、前記有機化層状珪酸塩を用いる方法;熱可塑性樹脂と層状珪酸塩とを常法により混練した後、発泡させる方法;分散剤を用いる方法等が挙げられる。これらの分散方法を用いることにより、熱可塑性樹脂中に層状珪酸塩をより均一かつ微細に分散させることができる。
【0072】
上記熱可塑性樹脂と層状珪酸塩とを常法により混練した後、発泡させる方法について以下に述べる。この方法は、発泡剤を用いて熱可塑性樹脂を発泡させ、その発泡エネルギーを層状珪酸塩の分散エネルギーに転換する方法である。
【0073】
上記発泡剤としては特に限定されず、例えば、気体状発泡剤、易揮発性液状発泡剤、加熱分解型固体状発泡剤等が挙げられる。これらの発泡剤は、単独で用いられても良いし、2種類以上が併用されても良い。
【0074】
層状珪酸塩の存在下で熱可塑性樹脂を発泡させることにより層状珪酸塩を熱可塑性樹脂中に分散せしめる具体的な方法としては、特に限定されるものではないが、例えば、熱可塑性樹脂100重量部及び層状珪酸塩0.1〜100重量部からなる組成物に対し、気体状発泡剤を高圧下で含浸させるか、又は、易揮発性液状発泡剤を混練した後、この気体状発泡剤又は易揮発性液状発泡剤を上記組成物内で気化させることにより、発泡体を形成せしめることによる分散方法;層状珪酸塩の層間に予め加熱分解型固体状発泡剤を含有させ、その加熱分解型固体状発泡剤を加熱により分解せしめ、発泡構造を形成せしめることによる分散方法等が挙げられる。
【0075】
層状珪酸塩が剥離し結晶薄片が熱可塑性樹脂中に分散すればするほど、結晶薄片間の平均隣接距離が小さくなり、燃焼時において層状珪酸塩の結晶薄片の移動による焼結体の形成が行われ易くなる。また、層状珪酸塩の結晶薄片が熱可塑性樹脂中に分散すればするほど、本発明の熱可塑性樹脂組成物の弾性率やガスバリア性が著しく向上する。
【0076】
上記いずれの現象も、層状珪酸塩と熱可塑性樹脂との界面面積が、結晶薄片の分散の向上に伴って増大することによる。即ち、熱可塑性樹脂と層状珪酸塩との接着面において、熱可塑性樹脂の分子運動が拘束されることにより、熱可塑性樹脂の弾性率等の機械的強度が増大するので、結晶薄片の分散割合が向上すればするほど、本発明の熱可塑性樹脂組成物の機械的強度を増大させる効果が大きくなる。
【0077】
また、一般にポリマー中では無機物に比べてガス分子の方がはるかに拡散しやすいので、熱可塑性樹脂中をガス分子が拡散する際には、無機物を迂回しながら拡散する。従ってこの場合も、層状珪酸塩の結晶薄片の分散割合が向上すればするほど、本発明の熱可塑性樹脂組成物のガスバリア性を効率的に増大させることができる。
【0078】
第1の本発明のシート状成形物は、熱可塑性樹脂100重量部に対して、層状珪酸塩0.1〜100重量部、並びに、金属水酸化物0.1〜70重量部及び/又はメラミン誘導体0.1〜50重量部が配合されてなる層を少なくとも1層有する。このうち金属水酸化物及びメラミン誘導体は、難燃剤としての役割を有する。
【0079】
上記金属水酸化物は、層状珪酸塩による難燃化効果をより効果的なものとすることが出来る。層状珪酸塩と併用することにより従来技術で述べたような、金属水酸化物等の難燃剤の大量添加にともなう弊害を引き起こすことなく、比較的少量で難燃化効果を得ることが出来る。
【0080】
上記金属水酸化物としては、特に限定されるものではないが、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム、水酸化カルシウム等が好適に用いられる。これらの金属水酸化物は、単独で用いられても良いし、2種類以上が併用されても良い。
【0081】
上記金属水酸化物の形状は、特に限定されるものではなく、予めベースとなる樹脂に高濃度で混練されていても(マスターバッチ状態)、表面処理がなされていても良い。
【0082】
上記メラミン誘導体としては特に限定されず、メラミン、メラミンシアヌレート、メラミンイソシアヌレート及びこれらに表面処理が施されたもの等が挙げられる。
【0083】
第1の本発明のシート状成形物の少なくとも1層における、熱可塑性樹脂100重量部に対する金属水酸化物及び/又はメラミン誘導体の配合量は、それぞれ0.1〜70重量部、0.1〜50重量部である。金属水酸化物及び/又はメラミン誘導体の配合量が0.1重量部未満であると、充分な難燃性向上効果は得られず、金属水酸化物の配合量が70重量部を超えるか、又は、メラミン誘導体の配合量が50重量部を超えると、熱可塑性樹脂組成物の柔軟性や伸度が極端に低下する。上記の効果をより好ましく発揮する配合量としては、金属水酸化物1〜65重量部及び/又はメラミン誘導体1〜45重量部である。さらに効果的に層状珪酸塩との相乗効果を得るためには金属水酸化物10〜60重量部及び/又はメラミン誘導体5〜40重量部である。
【0084】
第1の本発明のシート状成形物の少なくとも1層には、必須成分である熱可塑性樹脂、層状珪酸塩並びに金属水酸化物及び/又はメラミン誘導体の難燃剤に加えて、本発明の課題達成を阻害しない範囲で必要に応じて、例えば、充填剤、軟化剤、可塑剤、滑剤、帯電防止剤、防曇剤、着色剤、酸化防止剤(老化防止剤)、熱安定剤、光安定剤、紫外線吸収剤等の各種添加剤の1種類又は2種類以上が配合されていても良い。
【0085】
第1の本発明のシート状成形物の少なくとも1層に用いる熱可塑性樹脂組成物の製造方法としては、特に限定されず、例えば、熱可塑性樹脂、層状珪酸塩及び金属水酸化物及び/又はメラミン誘導体の各所定量と、必要に応じて配合される各種添加剤の1種類又は2種類以上の各所定量とを、常温下又は加熱下で、直接配合して混練する方法(直接混練法)や、予め熱可塑性樹脂の所定量の一部に所定量の層状珪酸塩を配合して混練したマスターバッチを作製しておき、このマスターバッチと熱可塑性樹脂の所定量の残部及び金属水酸化物及び/又はメラミン誘導体、必要に応じて添加される各種添加剤の1種類又は2種類以上の各所定量とを、常温下又は加熱下で混練する方法(マスターバッチ法)等が挙げられ、いずれの方法が採られても良い。
【0086】
上記マスターバッチにおける層状珪酸塩の濃度は、特に限定されるものではないが、熱可塑性樹脂100重量部に対して層状珪酸塩1〜500重量部であることが好ましい。1重量部未満であると、任意濃度に希釈可能なマスターバッチとしての利便性が失われることがあり、500重量部を超えると、マスターバッチ自体の分散性や、特に熱可塑性樹脂によって所定の配合量に希釈する際の層状珪酸塩の分散性が悪くなることがある。より好ましくは層状珪酸塩5〜300重量部である。
【0087】
上記直接混練法やマスターバッチ法による組成物の具体的な製造方法としては特に限定されず、例えば、押出機、2本ロール、バンバリーミキサー等の混練機を用いて、組成物を構成する熱可塑性樹脂、層状珪酸塩並びに金属水酸化物及び/又はメラミン誘導体の各所定量と、必要に応じて配合される各種添加剤の1種類又は2種類以上の各所定量とを、常温下又は加熱下で、均一に溶融混練する方法や、熱可塑性樹脂、層状珪酸塩並びに金属水酸化物及び/又はメラミン誘導体と、必要に応じて配合される各種添加剤の1種類又は2種類以上とをこれらが溶解又は分散し得る溶媒中で均一に混練する方法等が挙げられ、いずれの方法が採られても良い。
【0088】
また、熱可塑性樹脂としてポリオレフィン系樹脂を使用する場合、例えば遷移金属錯体類のような重合触媒(重合開始剤)を含有する層状珪酸塩を用いて、ポリオレフィン系樹脂を構成するオレフィン系単量体と上記重合触媒(重合開始剤)含有層状珪酸塩とを混練し、上記オレフィン系単量体を重合させることにより、ポリオレフィン系樹脂の製造と熱可塑性樹脂組成物の製造とを同時に一括して行う方法が採られても良い。
【0089】
第1の本発明のシート状成形物は、ASTM E 1354に準拠した燃焼試験において、50kW/m2の輻射加熱条件下で30分間加熱することにより燃焼させた燃焼残渣を速度0.1cm/sで圧縮した際の降伏点応力が4.9kPa以上であることが好ましい。4.9kPa未満であると、微少な力で燃焼残渣の崩壊が起こり易くなって、シート状成形物の難燃性や延焼防止性が不充分となることがある。即ち、第1の本発明のシート状成形物が難燃被膜としての機能を充分に発現するためには、燃焼終了時まで焼結体がその形状を保持していることが好ましい。より好ましくは15.0kPa以上である。
【0090】
第2の本発明は、ISO 1182に準拠して、不燃性材料に貼り合わせて50kW/m2 の輻射加熱条件下で燃焼する際、加熱開始後20分間において、最大発熱速度が連続して200kW/m2 以上となる時間が10秒未満であり、かつ、総発熱量が8MJ/m2以下であり、厚みが20μm以上であるシート状成形体である。
【0091】
加熱開始後20分間において、最大発熱速度が連続して200kW/m2 以上となる時間が10秒以上、又は、上記総発熱量が8MJ/m2を超えると、シート状成形体の難燃性や延焼防止性が不充分となる。厚みが20μm未満であると、シート状成形体は燃焼性に依存せず、可燃物量が少ないため総発熱量や最大発熱速度が小さくなるが、過度に薄肉化された場合にはシートとしての基本的な力学物性が損なわれ、実用に適さない。
【0092】
第2の本発明のシート状成形体は、ISO 1182に準拠したガス有毒性試験に合格すること、即ちマウスの平均行動停止時間間が6.8分以上であることが好ましい。6.8分未満であることは燃焼時に有害なガスを発生することを意味することから、火災時等においてガス中毒等の二次災害を引き起こす危険性がある。
【0093】
第1又は第2の本発明のシート状成形体は、密度が0.90〜1.20g/cm3であることが好ましい。所定量の熱可塑性樹脂、層状珪酸塩並びに金属水酸化物及び/又はメラミン誘導体を含む層を有する第1又は第2の本発明のシート状成形体は、通常、密度が0.9g/cm3以上となる。また、密度が1.20g/cm3 を超えると、ポリ塩化ビニル系樹脂の比重に近くなるため、分別回収時にポリ塩化ビニル系樹脂製の化粧シートと分別に不利になることをはじめ、運搬・施工時の作業性が低下することがある。
【0094】
少なくとも1層が接着/粘着剤層である第1又は第2の本発明のシート状成形体もまた、本発明の1つである。上記接着/粘着剤層は、シート状成形体の施工表面に対して裏側にあることが好ましい。接着/粘着剤層が施されていることにより、施工時に接着/粘着を別途基材又は被貼付体に塗布する必要が無く施工上有利である。また、接着/粘着剤層に加えて、着色層及び透明層が含まれている第1又は第2の本発明のシート状成形体もまた、本発明の1つである。この場合、特に限定されるものではないが、第1の本発明のシート状成形体が着色層に利用されることが好ましい。着色層に用いられることにより、難燃性等の効果をより効果的に発揮せしめることが出来る。更に、接着/粘着剤層に加えて、熱可塑性樹脂100重量部に対して、層状珪酸塩0.1〜100重量部を含む層が形成されてなる多層化シート状成形体もまた、本発明の1つである。熱可塑性樹脂に層状珪酸塩が高度に分散した層は、ある程度の透明性が維持されるため、多層化シート状成形体の表層の透明層として好適である。透明層に上記組成物を用いてなるシート状成形体を用いることにより、特に着色層として第1の本発明のシート状成形体を用いた場合には、燃焼時に表層において被膜を形成せしめることが可能となることから難燃性の維持・向上が可能である。
【0095】
第3の本発明は、第1又は第2の本発明のシート状成形体を用いてなる化粧シートである。接着/粘着剤層を除く第3の本発明の化粧シートの厚みは、種類や用途等に対応して適宜設定されれば良く特に限定されるものではないが、100μm以上400μm未満であることが好ましい。100μm未満であると、下地壁材模様等の隠蔽性が不充分となり化粧シートとしての実用に適さないことがあり、力学強度も維持しにくい。また、400μm以上であると、単位面積あたりの可燃焼成分量が増大することにより燃焼性を抑制することが困難となったり、単位面積あたりの重量が大きくなること等から施工者への負荷が大きくなったりすることから実用上不利である。より好ましくは120μm以上250μm未満である。
【0096】
第3の本発明の化粧シートは、表層側から透明フィルム層−印刷層−着色フィルム層−接着/粘着剤層の順に積層されてなることが好ましい。透明フィルム層及び着色フィルム層のいずれかにおいて、第1の本発明のシート状成形体を使用することにより、得ようとする化粧シートの種類や用途等に応じた物性及び性質を得ることが可能である。また、熱可塑性樹脂としてポリプロピレン系アロイ樹脂を用いた場合には、高い柔軟性のシートを得ることが可能となり、柔軟性と耐燃焼性とを兼ね備えた化粧シートを得ることが出来る。柔軟性が高いことは施工時や運搬時においての耐傷付き性が高いこと、施工時の取り扱い易さが向上することを意味し有用である。
【0097】
第4の本発明は、第1又は第2の本発明のシート状成形体を用いてなる装飾粘着シートである。接着/粘着剤層を除く第4の本発明の装飾粘着シートの厚みは得ようとする装飾粘着シートの種類や用途等に対応して適宜設定されれば良く、特に限定されるものではないが、20μm以上160μm未満であることが好ましい。20μm未満であると、装飾粘着シート自体が柔らかすぎるために施工困難及び強度不足となることがあり、160μm以上であると、装飾粘着シート自体が固くなり3次曲面等の被着体への追従性が劣ることがある。より好ましくは40〜60μmである。第4の本発明の装飾粘着シートは、表層側から透明又は透明着色フィルム層−着色フィルム層−接着/粘着剤層の順に積層されてなることが好ましい。透明又は透明着色フィルム層、又は、着色フィルム層のいずれかにおいて、第1の本発明のシート状成形体を使用することにより、種類や用途等に応じた物性及び性質を得ることが可能である。
【0098】
第3の本発明の化粧シート及び第4の本発明の装飾粘着シートは、その破断点伸度が80%以上であることが好ましい。80%未満であると、三次曲面に対する追従性が低くなることから実用に適さないことがある。より好ましくは100%以上である。
【0099】
第3の本発明の化粧シート及び第4の本発明の装飾粘着シートは、その伸度2%におけるモジュラスが2〜40N/10mmであることが好ましい。2N/10mm未満であると、柔らかくなりすぎるため施工時に直線的な施工が困難となるばかりか、数枚のシートを突き合わせ施工する際に目隙が出来やすくなることから実用には適さないことがあり、40N/10mmを超えると、三次曲面等に対する追従性が悪くなり施工性を悪化させることがある。より好ましくは5〜30N/10mmである。
【0100】
第3の本発明の化粧シート及び第4の本発明の装飾粘着シートが接着/粘着剤層を有する場合、上記接着/粘着剤層を形成するために用いられる接着/粘着剤としては特に限定されず、例えば、エラストマー系(ゴム系)接着/粘着剤、アクリル樹脂系接着/粘着剤、ポリビニルエーテル樹脂系接着/粘着剤、シリコーン樹脂系接着/粘着剤等の接着/粘着シートや接着/粘着テープ用として一般的に用いられている各種接着/粘着剤が挙げられる。
【0101】
上記接着/粘着剤の形態は特に限定されず、例えば、溶剤型接着/粘着剤、非水エマルジョン型接着/粘着剤、エマルジョン型接着/粘着剤、ディスパージョン型接着/粘着剤、ホットメルト型接着/粘着剤、例えば紫外線のような活性エネルギー線で硬化(重合)し得るモノマー型又はオリゴマー型接着/粘着剤等のいずれの形態であっても良い。又、上記接着/粘着剤は、架橋型接着/粘着剤であっても良いし、非架橋型接着/粘着剤であっても良く、1液型接着/粘着剤であっても良いし、2液以上の多液型接着/粘着剤であっても良い。
【0102】
上記接着/粘着剤は、難燃性を有する接着/粘着剤であることが好ましい。第3の本発明の化粧シート及び第4の本発明の装飾粘着シートの裏面(非化粧面/被着体側)に難燃性接着/粘着剤からなる接着/粘着剤層を形成することにより、化粧シート及び装飾粘着シートの難燃性はより優れたものとなる。
【0103】
第3の本発明の化粧シート及び第4の本発明の装飾粘着シートの作製方法としては特に限定されず、例えば、予め作製した組成物を押出機にて溶融混練して押出し、Tダイやサーキュラーダイ等を用いて、シート状に成形する方法や、組成物を有機溶剤のような溶媒に溶解又は分散させた後、キャスト方式でシート状に成形する方法、又は、組成物を溶融混練した後ロール成型機によりカレンダリング方式で延転成形するカレンダ成形等が挙げられる。なかでも、カレンダ成形により製造されることが好ましい。溶融樹脂をロール成形機上にて混練、延伸するカレンダ成形は、多品種・少ロット生産において樹脂替え時の減量ロス、多品種品揃えへの対応性等から適した生産方法であるといえる。しかしながらオレフィン系樹脂は高温での溶融粘度が低いこと等から、カレンダ成形においては成形適応温度範囲が狭く、カレンダリングに適さないとされている。本発明においても発明の効果を阻害しない範囲で種々の成形助剤を添加することが出来る。特にカレンダ成形用助剤を添加することが考えられ、第3の本発明の化粧シート及び第4の本発明の装飾粘着シートの難燃剤の表面にカレンダ成形助剤がコーティングされていることが好ましい。
【0104】
上記カレンダ成形助剤を添加する手法としては特に限定されないが、カレンダ成形助剤を難燃剤の表面に理することにより樹脂中に分散せしめる方法を用いることでカレンダ成形助剤を樹脂中に均一に分散させやすくなる。更に、特殊なカレンダ成形助剤(滑剤)をもちいることで、樹脂と難燃剤の相溶性をも併せて向上させ得ることが可能である。
【0105】
樹脂と難燃剤との相溶性を高めるカレンダ成形助剤としては、脂肪酸系の金属石鹸が好適に用いられる。脂肪酸系の金属石鹸としては特に限定されず、例えば、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸アルミニウム、ステアリン酸ナトリウム、ステアリン酸リチウム、ステアリン酸カリウム、ベヘン酸カルシウム、ベヘン酸マグネシウム、ベヘン酸亜鉛、ベヘン酸アルミニウム、ベヘン酸ナトリウム、ベヘン酸リチウム、ベヘン酸カリウムアルミニウム、ベヘン酸ナトリウム、ベヘン酸リチウム、ベヘン酸カリウム、12−ヒドロキシステアリン酸カルシウム、12−ヒドロキシステアリン酸マグネシウム、12−ヒドロキシステアリン酸亜鉛、12−ヒドロキシステアリン酸アルミニウム、12−ヒドロキシステアリン酸ナトリウム、12−ヒドロキシステアリン酸リチウム、12−ヒドロキシステアリン酸カリウムアルミニウム、12−ヒドロキシステアリン酸ナトリウム、12−ヒドロキシステアリン酸リチウム、12−ヒドロキシステアリン酸カリウム、モンタン酸カルシウム、モンタン酸マグネシウム、モンタン酸亜鉛、モンタン酸アルミニウム、モンタン酸ナトリウム、モンタン酸リチウム、モンタン酸カリウムアルミニウム、モンタン酸ナトリウム、モンタン酸リチウム、モンタン酸カリウム等が挙げられる。好ましくは12−ヒドロキシステアリン酸カルシウムが用いられる。これらの金属石鹸は、単独で用いられても良いし、2種類以上が併用されても良い。
【0106】
第3の本発明の化粧シート及び第4の本発明の装飾粘着シートに接着/粘着層を作製せしめる方法としては特に限定されず、例えば、第1の本発明のシート状成形体の片裏面(非化粧面)に接着/粘着剤を直接的に塗工し、必要に応じて乾燥、冷却、活性エネルギー線照射等の工程を経て、接着/粘着剤層を形成した後、必要に応じて離型紙(剥離紙)や離型フィルム等の離型材の離型処理面を粘着剤層に積層する方法(直接塗工方法)や、離型材の離型処理面に上記と同様の方法で接着/粘着剤層を形成した後、この接着/粘着剤層を本発明のシートの片面に積層して、接着/粘着剤層をシートの片面に転写する方法(転写方法)等が挙げられ、いずれの方法が採られても良い。なお、シートの片面には、接着/粘着剤層との密着性をより高めるために、予めコロナ放電処理やプライマー(下塗り剤)塗工等の下地処理(前処理)が施されていても良い。
【0107】
上記接着/粘着剤層の厚みは特に限定されるものではないが、固形分の厚みで10〜60μmであることが好ましい。10μm未満であると、粘着力が不充分となることがあり、60μmを超えると、厚みが増大して化粧シートや装飾粘着シートの用途に適さないことがある。
【0108】
第1の本発明のシート状成形体は、少なくとも1層が熱可塑性樹脂に対して特定量の層状珪酸塩が配合された組成物を成形してなるので、燃焼時に層状珪酸塩による焼結体が形成され、燃焼残渣の形状が保持される。これにより燃焼後も形状崩壊が起こらず、延焼を効果的に防止することができる。従って、第1の本発明のシート状成形体は、優れた難燃性や優れた延焼防止性を発現する。また、層状珪酸塩は通常の難燃剤のように大量に配合しなくとも優れた難燃性を付与できるので、第1の本発明のシート状成形体は、優れた機械的強度を保持できる。さらに、難燃剤を大量に配合しないので、施工時の負荷を軽減できる。
【0109】
第3の本発明の化粧シート及び第4の本発明の装飾粘着シートは、弾性率やガスバリア性等の物性が向上していると共に、分子鎖の拘束による耐熱変形温度の上昇に基づく耐熱性の向上や、層状珪酸塩の結晶による造核剤効果に基づく寸法安定性の向上等も図られている。
【0110】
【実施例】
以下に実施例を掲げて本発明を更に詳しく説明するが、本発明はこれら実施例のみに限定されるものではない。
【0111】
(実施例1)
小型押出機(日本製鋼所社製、TEX30)中に、エチレン−アクリル酸エチル共重合体(日本ユニカー社製、DPDJ6182)、無水マレイン酸変性ポリエチレンオリゴマー(日本ポリオレフィン社製、ER403A)及びジステアリルジメチル4級アンモニウム塩で有機化処理が施されたモンモリロナイト(豊順鉱業社製、ニューエスベンD)、さらに水酸化マグネシウム(協和化学社製、キスマ5B)を表1に示すとおりの比率で予め混合して、フィードし設定温度170℃で溶融混練してストランド状に押出し、押出されたストランドをペレタイザーによりペレット化して、熱可塑性樹脂組成物のペレットを作製した。
得られた熱可塑性樹脂組成物のペレットを180℃で熱プレスして圧延して、厚さ3mmの板状成形体及び厚さ100μmのシート状成形体を作製した。
次いで、得られた厚さ100μmのシート状成形体の一方の面にコロナ放電処理を施して表面濡れ指数を42dyn/cmとした。一方、シリコーン樹脂系離型剤で離型処理が施された離型紙の離型処理面に、2液架橋型アクリル樹脂系粘着剤をコンマコーターにて乾燥後の厚みが40μmとなるように塗工し、乾燥して、粘着剤層を形成した後、この粘着剤層と上記シート状成形体のコロナ放電処理面とを積層して、粘着層を有するシート状成形体を作製した。
【0112】
(実施例2)
エチレン−アクリル酸エチル共重合体(日本ユニカー社製、DPDJ6182)の代わりに、エチレン−α−オレフィン共重合体(日本ポリケム社製、カーネルKF260)を用いたこと以外は実施例1の場合と同様にして、熱可塑性樹脂組成物のペレット及び厚さ3mmの板状成形体及び粘着層を有する厚さ100μmのシート状成形体を作製した。
【0113】
(実施例3)
エチレン−アクリル酸エチル共重合体(日本ユニカー社製、DPDJ6182)の代わりに、クロス分別クロマトグラフによる全溶出量の内、10℃以下での溶出量が48重量%であり、10℃を超え70℃以下での溶出量が9重量%であるポリプロピレン系樹脂を主成分とするポリプロピレン系アロイ樹脂(サンアロマー社製、アドフレックスKF084S)を用いたこと以外は実施例1の場合と同様にして、熱可塑性樹脂組成物のペレット、厚さ3mmの板状成形体及び粘着層を有する厚さ100μmのシート状成形体を作製した。
【0114】
(実施例4)
ポリプロピレン系アロイ樹脂(サンアロマー社製、アドフレックスKF084S)87.3重量部の代わりに、ランダム型ポリプロピレン樹脂(サンアロマー社製、サンアロマーPC630A)を用い、無水マレイン酸変性ポリエチレンオリゴマー(日本ポリオレフィン社製、ER403A)の代わりに両端ジブロック型オリゴマー(クラレ社製、CB−OM12)を用いたこと以外は実施例3の場合と同様にして、熱可塑性樹脂組成物のペレット、厚さ3mmの板状成形体及び粘着層を有する厚さ100μmのシート状成形体を作製した。
【0115】
(実施例5)
ポリプロピレン系アロイ樹脂(サンアロマー社製、アドフレックスKF084S)の代わりに、ポリプロピレン系アロイ樹脂(サンアロマー社製、アドフレックスKF084S)にランダム型ポリプロピレン樹脂(サンアロマー社製、サンアロマーPC630A)を混合したものを用いたこと以外は実施例3の場合と同様にして、熱可塑性樹脂組成物のペレット、厚さ3mmの板状成形体及び粘着層を有する厚さ100μmのシート状成形体を作製した。
【0116】
(実施例6〜10)
ジステアリルジメチル4級アンモニウム塩で有機化処理が施されたモンモリロナイト(豊順鉱業社製、ニューエスベンD)の代わりに、ジステアリルジメチル4級アンモニウム塩で有機化処理が施された膨潤性フッ素マイカ(コープケミカル社製、ソマシフMAE−100)を用いたこと以外は実施例1〜5の場合と同様にして、熱可塑性樹脂組成物のペレット、厚さ3mmの板状成形体及び粘着層を有する厚さ100μmのシート状成形体粘着層を有するシート状成形体を作製した。
【0117】
(実施例11〜15)
水酸化マグネシウム(協和化学社製、キスマ5B)の代わりに、12ヒドロキシステアリン酸カルシウム(日東化成社製、CS−6)で表面処理した水酸化マグネシウム(神島化学社製、マグシーズN−4)を用いたこと以外は実施例10〜15の場合と同様にして、熱可塑性樹脂組成物のペレット、厚さ3mmの板状成形体及び粘着層を有する厚さ100μmのシート状成形体粘着層を有するシート状成形体を作製した。
【0118】
(実施例16〜20)
水酸化マグネシウム(協和化学社製、キスマ5B)40〜60重量部の代わりに、メラミンシアヌレート(日産化学社製)10〜35重量部を用いたこと以外は実施例10〜15の場合と同様にして、熱可塑性樹脂組成物のペレット、厚さ3mmの板状成形体及び粘着層を有する厚さ100μmのシート状成形体を作製した。
【0119】
(実施例21〜30)
実施例2、4、5、6、8、9、10、13、14又は15で得られた厚さ100μmシート状成形体と、実施例1と同様にして作製した、ランダム型ポリプロピレン樹脂(サンアロマー社製、サンアロマーPC630A)100重量部に対して表5に示した層状珪酸塩0.1〜100重量部を含む樹脂からなる厚さ50μmのシート成形体とを重ね、ヒートプレスにより多層シート成形体を作製し、更に実施例2、4、5、6、8、9、10、13、14又は15で得られたシート状成形体側の面に実施例1と同様の方法で粘着剤層を形成し、粘着層を有する多層シート状成形体を作製した。
【0120】
(比較例1)
小型押出機中(日本製鋼所社製、TEX30)に、エチレン−アクリル酸エチル共重合体(日本ユニカー社製、DPDJ6182)95重量部、無水マレイン酸変性ポリエチレンオリゴマー(日本ポリオレフィン社製、ER403A)5重量部及び水酸化マグネシウム(協和化学社製、キスマ5B)40重量部をフィードし、設定温度170℃で溶融混練してストランド状に押出し、押出されたストランドをペレタイザーによりペレット化して、これを用いて実施例1と同様にして、厚さ3mmの板状成形体及び粘着層を有する厚さ100μmのシート状成形体を作製した。
【0121】
(比較例2)
小型押出機(日本製鋼所社製、TEX30)中に、エチレン−α−オレフィン共重合体(日本ポリケム社製、カーネルKF260)92.3重量部、有機化処理が施されていない膨潤性フッ素マイカ(コープケミカル社製、ソマシフME−100)7.7重量部をフィードし、設定温度170℃で溶融混練してストランド状に押出し、押出されたストランドをペレタイザーによりペレット化して、これを用いて実施例1と同様にして、厚さ3mmの板状成形体及び粘着層を有する厚さ100μmのシート状成形体を作製した。
【0122】
(比較例3)
小型押出機(日本製鋼所社製、TEX30)中に、ポリプロピレン系アロイ樹脂(サンアロマー社製、アドフレックスKF084S)87.3重量部、有機化処理が施された膨潤性フッ素マイカ(コープケミカル社製、ソマシフME−100)7.7重量部、両端ジブロック型オリゴマー(クラレ社製、CB−OM12)をフィードし、金属石鹸処理(日東化成社製、CS−6)で表面処理した水酸化マグネシウム(神島化学社製、マグシーズN−4)120重量部を配合し設定温度170℃で溶融混練してストランド状に押出し、押出されたストランドをペレタイザーによりペレット化して、これを用いて実施例1と同様にして、厚さ3mmの板状成形体及び粘着層を有する厚さ100μmのシート状成形体を作製した。
【0123】
(比較例4)
小型押出機(日本製鋼所社製、TEX30)中に、ポリプロピレン系アロイ樹脂(サンアロマー社製、アドフレックスKF084S)50重量部、有機化処理が施された膨潤性フッ素マイカ(コープケミカル社製、ソマシフME−100)60重量部をフィードし、設定温度170℃で溶融混練してストランド状に押出し、押出されたストランドをペレタイザーによりペレット化して、これを用いて実施例1と同様にして、厚さ3mmの板状成形体及び粘着層を有する厚さ100μmのシート状成形体を作製した。
【0124】
(比較例5)
小型押出機(日本製鋼所社製、TEX30)中に、ランダム型ポリプロピレン樹脂(サンアロマー社製、サンアロマーPC630A)92.3重量部、炭酸カルシウム(神島化学社製、カルシーズP)7.7重量部をフィードし、設定温度170℃で溶融混練してストランド状に押出し、押出されたストランドをペレタイザーによりペレット化して、これを用いて実施例1と同様にして、厚さ3mmの板状成形体及び粘着層を有する厚さ100μmのシート状成形体を作製した。
【0125】
実施例1〜20及び比較例1〜5で得られた板状成形体中の層状珪酸塩の(1)平均層間距離及び(2)5層以下分散比率を以下の方法で測定した。また、実施例1〜20及び比較例1〜5で得られた板状成形体の(3)燃焼残渣の被膜強度(降伏点応力)、(4)密度、(5)破断点応力及び(6)破断点伸度を以下の方法で測定した。更に、実施例1〜30及び比較例1〜5で得られたシート状成形体の(7)発熱性試験、(8)ガス有害性試験、(9)2%モジュラス、(10)破断点伸度、(11)曲面施工性を以下の方法で評価した。これらの結果を表1〜6に示した。
【0126】
(1)平均層間距離
X線回折測定装置(リガク社製、RINT1100)を用いて、板状成形体中の層状珪酸塩の積層面の回折より得られる回折ピークの2θを測定し、下記のブラックの回折式により、層状珪酸塩の(001)面間隔(d)を算出し、得られたdを平均層間距離(nm)とした。
λ=2dsinθ
式中、λは1.54であり、dは層状珪酸塩の面間隔を表し、θは回折角を表す。
【0127】
(2)5層以下分散比率
板状成形体をダイヤモンドカッターにて切り出し、透過型電子顕微鏡(日本電子社製、JEM−1200EXII)写真により単位面積あたりの層状珪酸塩の集合体の分散層数を測定し、5層以下に分散している割合を算出した。
【0128】
(3)燃焼残渣の被膜強度(降伏点応力)
ASTM E 1354「建築材料の燃焼性試験方法」に準拠して、100mm×100mm(厚み3mm)に裁断した板状成形体にコーンカロリーメーターによって50kW/m2 の熱線を照射して燃焼させた後、強度測定装置を用いて、燃焼残渣を速度0.1cm/sで圧縮し、燃焼残渣の被膜強度(降伏点応力:kPa)を測定した。
【0129】
(4)密度
常法により、板状成形体の密度(g/cm3 )を測定した。
【0130】
(5)破断点応力及び(6)破断点伸度
JIS K 6301「加硫ゴム物理試験方法」に準拠して、板状成形体から切り出したダンベル状3号形試験片を用い、20℃・50%RHの雰囲気下にて、引張速度50mm/分で引張試験を行い、破断点応力(MPa)及び破断点伸度(%)を測定した。
【0131】
(7)発熱性試験
ISO 1182に準拠して、シート状成形体を不燃性材料(100×100×12.5mm 石膏ボード)に貼り合わせて50kW/m2 の条件下で加熱開始後20分間燃焼させた。この時の最大発熱速度が連続して200kW/m2 以上となる時間及び総発熱量を測定した。
【0132】
(8)ガス有害性試験
ISO 1182に準拠して、シート状成形体を不燃性材料(220×220×12.5mm 石膏ボード)に貼り合わせて、LPガス(純度95%以上プロパンガス)で3分間加熱しその後直ちに電熱にて1.5kWで3分間加熱する。 この時に燃焼ガスはマウスを置いた被検箱へ導き、加熱開始から15分間のマウスの平均行動停止時間を測定した。なお、平均行動停止時間が6.8分以上を合格とした。
【0133】
(9)2%モジュラス及び(10)破断点伸度
JIS K 6734「硬質塩化ビニルシート及びフィルム試験方法」に準拠してシート状成形体の2%伸長時の応力及び破断点伸度を測定した。
【0134】
(11)曲面施工性
図1に示すような曲面施工性評価用治具へシート状成形体サンプルを素手で沿わせてみて、下記判定基準により曲面施工性を感応評価した。
〔判定基準〕
○:ポリ塩化ビニル系樹脂製の化粧シートの裏面(比化粧面)に粘着剤層が形成されてなる装飾粘着シート(積水化学工業社製、タックペイント)と比較して、遜色のない曲面施工性であった。
×:粘着シートの柔軟性が乏しくて折曲面に沿わせるのが困難であり、実用上、商品として提供し得ないものであった。
【0135】
【表1】
【0136】
【表2】
【0137】
【表3】
【0138】
【表4】
【0139】
【表5】
【0140】
【表6】
【0141】
表1〜4から明らかなように、本発明による実施例1〜20の熱可塑性樹脂組成物からなる板状成形体中においては、層状珪酸塩の平均層間距離が3nm以上であり、分散層数が5層以下であったので、難燃被膜となり得る焼結体を形成し易かった。又、熱可塑性樹脂組成物からなる板状成形体は、燃焼残渣の被膜強度(降伏点応力)が19kPa以上と極めて高かったので、被膜形成性、延焼防止性に優れていた。又、上記熱可塑性樹脂組成物からなる板状成形体は、密度が1.18g/cm3 以下であったので、ポリ塩化ビニル系樹脂との分別が容易であった。又、上記熱可塑性樹脂組成物からなる板状成形体は、破断点応力及び破断点伸度のいずれもが高く、両者のバランスにも優れていた。更に、上記熱可塑性樹脂組成物からなるシート状成形体を用いて作製した粘着シートは、優れた発熱性試験結果、ガス有害性試験結果、2%モジュラス値、伸度、曲面施工性を発現した。
【0142】
また表5から実施例21〜30の多層シート状成形体からなる粘着シートも実施例1〜20の場合と同様に優れた発熱性試験結果、ガス有害性試験結果、2%モジュラス値、伸度、曲面施工性を発現した。
【0143】
これに対し、層状珪酸塩を配合しなかった比較例1の板状成形体は、表6より、燃焼残渣が被膜を形成しなかったので、難燃性及び延焼防止性のいずれもが悪かった。又、密度が1.31g/cm3 であり、ポリ塩化ビニル系樹脂の密度に近かった。又、上記板状成形体は、破断点応力及び破断点伸度のいずれもが低かった。更に、シート状成形体は、上述の通り燃焼残渣が被膜を形成しなかったことから発熱性試験、ガス有害性試験の結果が悪かった。また、シート状成形体の柔軟性が乏しかったので、曲面施工性が悪く、実用性に欠けていた。
【0144】
同じく表6より、比較例2においてはフッ素マイカの層間が充分に開いていないことと水酸化マグネシウムが添加されていないことから充分な難燃性が得られなかった。
比較例3においては水酸化マグネシウム添加量が過剰であるため、力学物性(特に破断点伸度)が著しく低下した。また柔軟性が損なわれるため曲面施工性も著しく低下した。
比較例4においては、膨潤性フッ素マイカ添加量が過剰量であるため、破断点伸度が低下したこと、また密度が著しく上昇してしまうこととあわせて柔軟性も失うため、曲面施工性が低下した。
比較例5は膨潤性フッ素マイカではなく炭酸カルシウムを添加しているため効果的な被膜が形成されず、燃焼性を制御することは出来なかった。
【0145】
【発明の効果】
本発明のシート状成形体は、難燃性や延焼防止性に優れ、特に燃焼時の形状保持効果によって優れた難燃効果や延焼防止効果を発現し、さらに機械的強度や熱的特性に優れる、化粧シート又は装飾粘着シートを成形性良く効率的に得ることができる。
また、本発明の化粧シート又は装飾粘着シートは、上記本発明の熱可塑性樹脂組成物を構成材料としてなるので、上記優れた諸特性を兼備するものであり、各種用途向けの化粧シート又は装飾粘着シートとして好適に用いられる。
更に、本発明のメッキ用マスキングテープは、特定量のポリプロピレン系樹脂に対して特定量の層状珪酸塩を含有し、ポリプロピレン系樹脂中に層状珪酸塩が高度かつ均一に微分散したポリプロピレン系樹脂組成物からなる、寸法精度の高い基材層を用いるので、優れた貼り付け精度を発現する。従って、本発明のメッキ用マスキングテープは、電子部品に設けられているリードフレーム金属板等をメッキ処理する際の非メッキ部分のマスキング用として好適に用いられる。
Claims (23)
- 単層又は複数層からなるシート状成形体であって、熱可塑性樹脂100重量部に対して、層状珪酸塩0.1〜100重量部、及び、金属水酸化物0.1〜70重量部が配合されてなる層を少なくとも1層有し、
前記熱可塑性樹脂は、ポリオレフィン系樹脂であり、
前記層状珪酸塩は、広角X線回折測定法により測定した(001)面の平均層間距離が3nm以上であり、かつ、一部又は全部が5層以下に分散している
ことを特徴とするシート状成形体。 - ポリオレフィン系樹脂は、エチレンの単独重合体、エチレンと該エチレンと共重合可能なエチレン以外のα−オレフィンとの共重合体、エチレン−アクリル酸エチル共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体、プロピレンの単独重合体、プロピレンと該プロピレンと共重合可能なプロピレン以外のα−オレフィンとの共重合体、及び、ポリプロピレン系アロイ樹脂からなる群より選択される少なくとも1種類のポリオレフィン系樹脂であることを特徴とする請求項1記載のシート状成形体。
- ポリプロピレン系アロイ樹脂は、クロス分別クロマトグラフによる全溶出量のうち、10℃以下での溶出量が30〜80重量%であり、10℃を超え70℃以下での溶出量が5〜35重量%であるポリプロピレン系樹脂を主成分とすることを特徴とする請求項2記載のシート状成形体。
- 層状珪酸塩は、モンモリロナイト及び/又は膨潤性マイカであることを特徴とする請求項1、2又は3記載のシート状成形体。
- 層状珪酸塩は、炭素数6以上のアルキルアンモニウムイオンを含有するものであることを特徴とする請求項1、2、3又は4記載のシート状成形体。
- ASTM E 1354に準拠した燃焼試験において、50kW/m2の輻射加熱条件下で30分間加熱することにより燃焼させた燃焼残渣を速度0.1cm/sで圧縮した際の降伏点応力が4.9kPa以上であることを特徴とする請求項1、2、3、4又は5記載のシート状成形体。
- ISO 1182に準拠して、不燃性材料に貼り合わせて50kW/m2の輻射加熱条件下で燃焼する際、加熱開始後20分間において、最大発熱速度が連続して200kW/m2以上となる時間が10秒未満であり、総発熱量が8MJ/m2以下であり、かつ、シート厚みが20μm以上であることを特徴とする請求項1、2、3、4、5又は6記載のシート状成形体。
- ISO 1182に準拠したガス有毒性試験において、マウスの平均行動停止時間が6.8分以上であることを特徴とする請求項7記載のシート状成形体。
- 密度が0.90〜1.20g/cm3であることを特徴とする請求項1、2、3、4、5、6、7又は8記載のシート状成形体。
- 少なくとも1層が接着/粘着剤層であることを特徴とする請求項1、2、3、4、5、6、7、8又は9記載のシート状成形体。
- 着色層及び透明層が含まれていることを特徴とする請求項10記載のシート状成形体。
- 請求項10記載のシート状成形体に、更に、熱可塑性樹脂100重量部に対して、層状珪酸塩0.1〜100重量部を含む層が形成されてなることを特徴とする多層化シート状成形体。
- 請求項1、2、3、4、5、6、7、8、9、10又は11記載のシート状成形体、又は、請求項12記載の多層化シート状成形体を用いてなることを特徴とする化粧シート。
- 表層側から、透明フィルム層−印刷層−請求項1、2、3、4、5、6、7、8、9、10又は11記載のシート状成形体からなる着色フィルム層−接着/粘着剤層の順に積層されてなることを特徴とする請求項13記載の化粧シート。
- 破断点伸度が80%以上であり、2%モジュラスの値が2〜40N/10mmであることを特徴とする請求項13又は14記載の化粧シート。
- シート状成形体がカレンダ成形により成形されてなることを特徴とする請求項13、14又は15記載の化粧シート。
- カレンダ成形助剤が金属水酸化物の表面にコーティングされていることを特徴とする請求項16記載の化粧シート。
- 請求項1、2、3、4、5、6、7、8、9、10又は11記載のシート状成形体、又は、請求項12記載の多層化シート状成形体を用いてなることを特徴とする装飾粘着シート。
- 表層側から、透明又は着色透明フィルム層−請求項1、2、3、4、5、6、7、8、9、10又は11記載のシート状成形体からなる着色フィルム層−接着/粘着剤層の順に積層されてなることを特徴とする請求項18記載の装飾粘着シート。
- 破断点伸度が80%以上であり、2%モジュラスの値が2〜40N/10mmであることを特徴とする請求項18又は19記載の装飾粘着シート。
- シート状成形体がカレンダ成形により成形されてなることを特徴とする請求項18、19又は20記載の装飾粘着シート。
- カレンダ成形助剤が金属水酸化物の表面にコーティングされていることを特徴とする請求項21記載の装飾粘着シート。
- ポリプロピレン系アロイ樹脂100重量部に対して、層状珪酸塩0.1
〜100重量部、及び、金属水酸化物0.1〜70重量部が配合された熱可塑性樹脂組成物であって、前記ポリプロピレン系アロイ樹脂は、クロス分別クロマトグラフによる全溶出量のうち、10℃以下での溶出量が30〜80重量%であり、10℃を超え70℃以下での溶出量が5〜35重量%であるポリプロピレン系樹脂を主成分とするものであり、前記層状珪酸塩は、広角X線回折測定法により測定した(001)面の平均層間距離が3nm以上であり、かつ、一部又は全部が5層以下に分散していることを特徴とする熱可塑性樹脂組成物。
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