JP6603468B2 - 化粧シートおよび化粧シートの製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は、建築内装材、建具の表面材、家電製品の表面材等に用いられる樹脂層を積層した化粧シートおよび化粧シートの製造方法に関するもので、当該樹脂層のうち原反層に対してベシクル化された分散剤と、無機フィラーとが配合された化粧シートおよび化粧シートの製造方法に関する。
建築内装材や建具の表面などに用いられる化粧シート、特に、公共用用途に用いられる化粧シートについては、建築基準法施工例第108条の2第1号および第2号に記載の不燃材料の技術的基準を満たすことが求められている。従来は、このような不燃材料の技術的基準を満たす化粧シートとして軟質ポリ塩化ビニル系樹脂からなるものが用いられてきたが、廃棄後の焼却処理時に有毒ガス等が発生することなどが問題となった。このため、ポリ塩化ビニル系樹脂に替わり、ポリオレフィン系樹脂を用いた化粧シートが提案されている。しかし、ポリオレフィン系樹脂を用いた場合には、燃焼時の有毒ガス等の発生は抑制されるものの、当該樹脂が燃焼性に優れた性質を有しているために不燃材料の技術的基準を満たすことが困難であった。
ポリオレフィン系樹脂を用いた化粧シートが上記法令に記載の不燃材料の技術的基準を満たす方法としては、特許文献1〜2において、炭酸カルシウムなどの無機フィラーを配合したポリオレフィン系樹脂層を用いた構造体が開示されている。
特開2013−010931号公報 特開2011−122293号公報
不燃材料の技術的基準を満たすポリオレフィン系樹脂からなる化粧シートを得るためには、多量のフィラーを配合する必要がある。しかし、多量にフィラーを配合すると、ポリオレフィン系樹脂中においてフィラーが二次凝集しシート状に形成した際にフィラーの凝集体が部分的に生じていることで機械物性が著しく低下し、絵柄印刷や他層の積層などが困難となるとともに、得られた化粧シートの耐後加工性に劣るという課題を有していた。
そこで、本発明においては、ポリオレフィン系樹脂に対して超臨界逆相蒸発法によってベシクルに分散剤を内包させた分散剤内包ベシクルとフィラーとを配合することにより、製造適正および耐後加工性に優れた、不燃材料の技術的基準を満たす化粧シートおよび化粧シートの製造方法を提供することを目的とする。
上記課題を解決するべく、本発明の第の態様の化粧シートは、少なくとも3層の樹脂層からなる原反層を備える化粧シートであって、前記樹脂層が、ポリオレフィン系樹脂に対して超臨界逆相蒸発法によってベシクルに分散剤を内包させた分散剤内包ベシクルと、無機フィラーとを添加して熱可塑性樹脂組成物からなる層として形成されており、前記樹脂層のうち前記原反層の表面に位置する樹脂層には、内側に位置する樹脂層よりも少ない配合量で前記無機フィラーが配合されているとともに、前記ベシクルが、リン脂質およびノニオン系界面活性剤の混合物またはリン脂質およびノニオン系界面活性剤並びにコレステロール類およびトリアシルグリセロールの少なくとも一方との混合物からなる外膜を具備するリポソームであることを特徴とする。
このような、本発明の第の態様の化粧シートにおいては、超臨界逆相蒸発法によってベシクルに分散剤を内包させた分散剤内包ベシクルを配合することにより、ポリオレフィン系樹脂に対して無機フィラーを二次凝集させることなく均一に分散させることができるので、化粧シートに要求される機械的強度を備えた化粧シートを提供することを可能とする。さらに、原反層を構成する樹脂層のうち、表面に位置する樹脂層では、内側に存在する樹脂層よりも少ない配合量で無機フィラーを配合するようにされているため、原反層の表面に無機フィラーが析出することがなく良好な平滑性を実現することができるので、絵柄印刷や他層の積層などの製造適正に優れた原反層とすることができる。更に、前記ベシクルを、リン脂質およびノニオン系界面活性剤の混合物またはリン脂質およびノニオン系界面活性剤並びにコレステロール類およびトリアシルグリセロールの少なくとも一方との混合物からなる外膜を具備するリポソームとすることにより、ポリオレフィン系樹脂の樹脂組成物とリポソームとの相溶性を向上させて、その結果、ポリオレフィン系樹脂の樹脂組成物中への内包物としての無機フィラーを均一に分散させることができる。
本発明の第の態様の化粧シートは、前記原反層の表面に位置する樹脂層は、ポリオレフィン系樹脂100重量部に対して、前記無機フィラーが50重量部未満配合された前記熱可塑性樹脂組成物からなり、前記内側に位置する樹脂層のうち少なくとも1層は、ポリオレフィン系樹脂100重量部に対して、前記無機フィラーが50〜900重量部配合された前記熱可塑性樹脂組成物からなることを特徴とする。
このような、本発明の第の態様の化粧シートにおいては、上記の配合量にて無機フィラーを配合した熱可塑性樹脂組成物によって原反層を構成することにより、不燃材料としての技術的基準を満たした化粧シートを提供することを可能とする。
本発明の第の態様の化粧シートは、前記無機フィラーの平均粒子径が、0.3μm以上、5μm以下であることを特徴とする。
このような、本発明の第の態様の化粧シートにおいては、上記の平均粒子系の無機フィラーとすることにより、絵柄印刷や他層の積層などの製造適正に優れた平滑性を有する原反層とすることができる。
本発明の第の態様の化粧シートは、前記分散剤が、高分子系の界面活性剤、脂肪酸金属、シランカップリング剤、チタネートカップリング剤、シリコーン、ワックスまたは変性樹脂のいずれか1つであることを特徴とする。
このような、本発明の第の態様の化粧シートにおいては、上記分散剤から適宜選択して用いることにより、ポリオレフィン系樹脂に対する分散性を良好なものとすることができる。
本発明の第の態様の化粧シートは、前記原反層が、一軸延伸加工または二軸延伸加工を施されていることを特徴とする。
このような、本発明の第の態様の化粧シートにおいては、原反層が一軸延伸加工または二軸延伸加工されていることにより、原反層の機械的強度をさらに向上させることができる。さらに、当該加工を施すことによって、原反層の表面の平滑性をも良好なものとし、絵柄印刷や他層の積層などの製造適正に優れた原反層とすることができる。
本発明の第の態様の化粧シートは、前記化粧シートが、不燃性基材と貼り合わせた状態でISO5660−1に準拠したコーンカロリーメータ試験機による発熱性試験において、建築基準法施工令第108条の2第1号および第2号に記載の要件を満たす不燃材料であることを特徴とする。
このような、本発明の第の態様の化粧シートにおいては、公共用用途などに用いられる不燃材料の技術的基準を満たす化粧シートを提供することを可能とする。
本発明の第の態様の化粧シートは、引張弾性率が、500MPa以上,2000MPa以下であり、引張破断伸度が、200%以上であることを特徴とする。
このような、本発明の第の態様の化粧シートにおいては、上記のような引張弾性率および引張破断伸度とすることにより、Vカット曲げ加工などの耐後加工性に優れた化粧シートを提供することができる。
本発明の第の態様の化粧シートの製造方法は、少なくとも3層の樹脂層からなる原反層を備える化粧シートの製造方法であって、前記樹脂層を、ポリオレフィン系樹脂に対して超臨界逆相蒸発法によってベシクルに分散剤を内包させた分散剤内包ベシクルと、無機フィラーとを添加して熱可塑性樹脂組成物からなる層として形成し、前記樹脂層のうち前記原反層の表面に位置する樹脂層には、内側に位置する樹脂層よりも少ない配合量で前記無機フィラーが配合されているとともに、前記ベシクルが、リン脂質およびノニオン系界面活性剤の混合物またはリン脂質およびノニオン系界面活性剤並びにコレステロール類およびトリアシルグリセロールの少なくとも一方との混合物からなる外膜を具備するリポソームであることを特徴とする。
本発明の化粧シートおよび化粧シートの製造方法によれば、ポリオレフィン系樹脂に対して超臨界逆相蒸発法によってベシクルに分散剤を内包させた分散剤内包ベシクルとフィラーとを配合することにより、製造適正および耐後加工性に優れた、不燃材料の技術的基準を満たす化粧シートおよび化粧シートの製造方法を提供することを可能とする。
本発明の化粧シートの第1実施形態を示す断面図 本発明の化粧シートの第2実施形態を示す断面図 比較例1の化粧シートの形態を示す断面図
本発明の化粧シートは、少なくとも3層の樹脂層からなる原反層を備える化粧シートであって、当該樹脂層が、ポリオレフィン系樹脂に対して超臨界逆相蒸発法によってベシクルに分散剤を内包させた分散剤内包ベシクルと、無機フィラーとを添加して熱可塑性樹脂組成物からなる層として形成されており、当該樹脂層のうち原反層の表面に位置する2層には、内側に位置する樹脂層よりも少ない配合量で前記無機フィラーが配合されていることが重要である。このような構成とすることにより、原反層の表面に無機フィラーが析出して平滑性が損なわれることを抑制することができる。その結果、原反層への絵柄印刷や他層の積層などの製造適正を良好なものとすることができる。
より具体的には、原反層の表面に位置する樹脂層は、ポリオレフィン系樹脂100重量部に対して、無機フィラーが50重量部未満配合された熱可塑性樹脂組成物からなり、原反層の内側に位置する樹脂層のうち少なくとも1層は、ポリオレフィン系樹脂100重量部に対して、無機フィラーが50〜900重量部配合された熱可塑性樹脂組成物からなることが重要である。
また、当該無機フィラーの平均粒子径が、0.3μm以上,5μ以下であることが重要である。また、一般的には粒子径が60μm以上の大きな粒の無機フィラーは、脱落が生じやすく、さらには脱落した無機フィラーの粒子によってアブレッシブ摩耗が生じることが懸念される。このため、粒子径が60μm以上の無機フィラーは含まれているといないことが好ましい。このような無機フィラーの平均粒子径とすることにより、樹脂層の表面に無機フィラーの粒子が析出して、表面が突出することによる平滑性の悪化や当該無機フィラー粒子の脱落を抑制することができる。
無機フィラーとしては、燃焼時において酸素消費の無い無機フィラーを用いることが重要であり、炭酸カルシウム、三酸化アンチモン、アンチモンソーダ、ケイ酸ジルコン、酸化ジルコンなどのジルコニウム化合物、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム、塩基性炭酸マグネシウム、硼砂、硼酸亜鉛、三酸化モリブデン、あるいはジモリブデン酸アンチモンと水酸化アルミニウムの錯体など、三酸化アンチモンとシリカの錯体、三酸化アンチモンと亜鉛華の錯体、ジルコニウムの珪酸塩、ジルコニウム化合物と三酸化アンチモンの錯体などから適宜選択して用いることができる。特に、工業製品への適用を想定した場合に、入手が容易であり、製造手法による粒径のコントロールや表面処理によるポリオレフィン系樹脂との相溶性の制御も容易であり、また、材料コストとしても安価であるため炭酸カルシウムが好適である。
本発明においては、分散剤は超臨界逆相蒸発法によってベシクルに分散剤を内包させた分散剤内包ベシクルを用いることが重要である。このような、ベシクル内に内包された状態の分散剤は、当該ベシクルとポリオレフィン系樹脂とを混練した際に、これらの混合物中においてベシクルが凝集することなく均一に分散するため、ポリオレフィン樹脂中に分散剤を均一に分散させることができるとともに、本発明においては、当該ベシクル化された分散剤と、無機フィラーとを配合することにより、当該ベシクル化された分散剤が分散する作用によって当該無機フィラーをも凝集させることなくポリオレフィン系樹脂中に均一に分散させることを可能とする。
ここで、超臨界逆相蒸発法は、本発明者等が提案している再表02/032564号公報、特開2003−119120号公報、特開2005−298407号公報および特開2008−063274号公報(以下、「超臨界逆相蒸発法公報類」と称する)に開示されている超臨界逆相蒸発法および装置を用いて行うことができる。
超臨界逆相蒸発法について詳しく説明すると、超臨界状態または臨界点以上の温度もしくは圧力条件下の二酸化炭素にベシクルの外膜を形成する物質を均一に溶解させた混合物中に、水溶性または親水性の封入物質としての分散剤を含む水相を加えて、一層の膜で封入物質としての分散剤を内包するベシクルを得る方法である。なお、超臨界状態の二酸化炭素とは、臨界温度(30.98℃)および臨界圧力(7.3773±0.0030MPa)以上の超臨界状態にある二酸化炭素を意味し、臨界点以上の温度もしくは圧力条件下の二酸化炭素とは、臨界温度だけ、あるいは臨界圧力だけが臨界条件を超えた条件下の二酸化炭素を意味するものである。この方法により、直径50〜800nmの単層ラメラベシクルを得ることができる。なお、ベシクルとは、球殻状に閉じた膜構造を有する小胞で、内部に液相を含むものの総称であり、特に、外膜がリン脂質のような生体脂質を含む物質から構成されるベシクルをリポソームと称する。
リポソームの膜を形成するリン脂質としては、ホスファチジルコリン、ホスファチジルエタノールアミン、ホスファチジルセリン、ホスファチジン酸、ホスファチジルグリセロール、ホスファチジルイノシトール、カルジオピン、黄卵レシチン、水添黄卵レシチン、大豆レシチン、水添大豆レシチン等のグリセロリン脂質、スフィンゴミエリン、セラミドホスホリルエタノールアミン、セラミドホスホリルグリセロール等のスフィンゴリン脂質などが挙げられる。
ベシクルの膜を形成するその他の物質としては、ノニオン系界面活性剤や、これとコレステロール類もしくはトリアシルグリセロールの混合物などの分散剤が挙げられる。このうちノニオン系界面活性剤としては、ポリグリセリンエーテル、ジアルキルグリセリン、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンコポリマー、ポリブタジエン−ポリオキシエチレン共重合体、ポリブタジエン−ポリ2−ビニルピリジン、ポリスチレン−ポリアクリル酸共重合体、ポリエチレンオキシド−ポリエチルエチレン共重合体、ポリオキシエチレン−ポリカプロラクタム共重合体等の1種または2種以上を使用することができる。コレステロール類としては、コレステロール、α−コレスタノール、β−コレスタノール、コレスタン、デスモステロール(5,24−コレスタジエン−3β−オール)、コール酸ナトリウムまたはコレカルシフェロール等を使用することができる。
特に、本発明の化粧シートにおいては、リン脂質を含む物質からなる外膜を具備するリポソームとされていることが好ましい。外膜をリン脂質を含む物質から構成することにより、ポリオレフィン系樹脂に対するベシクルの相溶性を向上させることができるので、熱可塑性樹脂組成物をシート状に形成した際にフィラー添加に起因する機械物性の低下を抑制することができる。
分散剤としては、高分子系の界面活性剤、脂肪酸金属塩、シランカップリグ剤、チタネートカップリング剤、シリコーン、ワックス、変性樹脂などが挙げられる。高分子系の界面活性剤としては、脂肪族多価ポリカルボン酸、ポリカルボン酸アルキルアミン、ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ソルビタン脂肪酸エステルなどが挙げられる。脂肪酸金属塩としては、ステアリン酸、ラウリン酸、12−ヒドロキシステアリン酸、モンタン酸、ベヘン酸、リシノール酸、ミリスチン酸などとリチウム、ナトリウム、カリウム、マグネシウム、カルシウム、バリウム、亜鉛、アルミニウムなどが結合したものが挙げられる。シランカップリング剤としては、3−メタクリロキシポロピルトリエトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、3−イソシアネートポロピルトリエトキシシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシランなどが挙げられる。チタネートカップリング剤としては、テトラキス[2,2−ビス(アリルオキシメチル)ブトキシ]チタン(IV)、ジ−i−ポロポキシチタンジオソステアレート、(2−nーブトキシカルボニルベンゾイルオキシ)トリブトキシチタン、トリイソステアリン酸イソプロピルチタン、ジ−n−ブトキシ・ビス(トリエタノールアミナト)チタン、テトラキス(2−エチルヘキシルオキシ)チタン、ジ−i−プロポキシ・ビス(アセチルアセトナト)チタンなどが挙げられる。シリコーンとしては、ジメチルシリコーンオイル、メチルフェニルシリコーンオイル、メチルハイドロジェンシリコーンオイル、環状ジメチルシリコーンオイル、アラルキル変性シリコーンオイル、長鎖アルキル変性シリコーンオイル、高級脂肪酸変性シリコーンオイルなどのオレフィンを重合または、ポリオレフィンを熱分解したもので、それをさらに酸化またはマレイン酸、スルホン酸、カルボン酸、ロジン酸などによって変性したものが挙げられる。樹脂としては、ポリオレフィンをマレイン酸、スルホン酸、カルボン酸、ロジン酸などによって変性したものが挙げられる。
ポリオレフィン系樹脂としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ、ポリスチレンおよびポリエチレンテレフタレート、ブテンなどの他に、αオレフィン(例えば、プロピレン、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、1−ヘプテン、1−オクテン、1−ノネン、1−デセン、1−ウンデセン、1−ドデセン、トリデセン、1−テトラデセン、1−ペンタデセン、1−ヘキサデセン、1−ヘプタデセン、1−オクタデセン、1−ノナデセン、1−エイコセン、3−メチル−1−ブテン、3−メチル−1−ペンテン、3−エチル−1−ペンテン、4−メチル−1−ペンテン、4−メチル−1−ヘキセン、4,4−ジメチル−1−ペンテン、4−エチル−1−ヘキセン、3−エチル−1−ヘキセン、9−メチル−1−デセン、11−メチル−1−ドデセン、12−エチル−1−テトラデセンなどを)を単独重合あるいは2種類以上共重合させたものや、エチレン・酢酸ビニル共重合体、エチレン・ビニルアルコール共重合体、エチレン・メチルメタクリレート共重合体、エチレン・エチルメタクリレート共重合体、エチレン・ブチルメタクリレート共重合体、エチレン・メチルアクリレート共重合体、エチレン・エチルアクリレート共重合体、エチレン・ブチルアクリレート共重合体などのように、エチレンまたはαオレフィンとそれ以外のモノマーとを共重合させたものが挙げられる。特に、価格や加工適正の観点からポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレンまたはポリエチレンテレフタレートから少なくとも1つ選択して用いることが好ましい。
本発明においては、上記熱可塑性樹脂組成物からなる樹脂層を少なくとも3層積層した原反層に対して、一軸延伸加工または二軸延伸加工を施していることが好ましい。これにより、超臨界逆相蒸発法によりベシクル化された分散剤を用いることにより本発明の原反層は十分な機械的強度を実現しているが、加えて、一軸延伸加工または二軸延伸加工を施して結晶性を高めることにより、さらにフィルムとしての機械的強度を向上させることができる。また、フィルム表面の平滑性を一軸延伸加工または二軸延伸加工によって改善することができるので、絵柄印刷を施す際のインキの着肉性が良好なものとなり印刷適正に優れた原反層とすることができる。
また、本発明の化粧シートは、引張弾性率が500MPa以上,2000MPa以下であり、引張破断伸度が200%以上であることが重要である。なお、引張破断伸度とは、試料を所定の速度で引っ張り、破断した際の伸びを表す値であり、破断時の試料の長さ(L)から試験前の試料の長さ(L)を引いた値を試験前の試料の長さ(L)で除した値を百分率で表した値であり、値が小さいほど伸びが悪く、印刷加工時における破断の発生など印刷適正に劣り、値が大きいほどよく伸びて印刷適正に優れている。この他にも例えば、引張破断伸度は値が大きいほどVカット曲げ加工などの耐後加工性に優れていることを示す。
ここで、建築基準法施工令に規定の不燃材料の技術的基準においては、ISO5660−1に準拠したコーンカロリーメータ試験機による発熱性試験において下記の要件を満たしている必要がある(建築基準法施工令第108条の2第1号および第2号)。本発明の化粧シートが不燃材料として認定されるためには、不燃性基材と貼り合わせた状態で50kW/mの輻射熱による加熱にて20分間の加熱時間において下記の1〜3の要求項目をすべて満たす必要がある。
1.総発熱量が8MJ/m以下
2.最高発熱速度が10秒以上継続して200kW/mを超えない
3.防炎上有害な裏面まで貫通する亀裂および穴が生じない
なお、不燃性基材としては、石こうボード、繊維混入ケイ酸カルシウム板または亜鉛メッキ鋼板から選択して用いることができる。
そして、本発明の化粧シートは、前記不燃性基材と貼り合わせた状態でのISO5660−1に準拠したコーンカロリーメータ試験機による発熱性試験において、前記施工令第108条の2第1号および第2号に記載の要件をともに満たす不燃材料を実現している。
以下に、本発明の化粧シートの具体的な構成を図に従って詳細に説明する。
図1は本発明の化粧シート1の第1実施形態を示し、当該化粧シート1が貼り合わせられる木質ボード類、無機質ボード類または金属板などの基材Bに面する側から、3層の樹脂層2a〜2cからなる原反層2、絵柄模様層3およびトップコート層5を設けた構成とされている。なお、原反層2と基材Bとの間および/または絵柄模様層3とトップコート層5との間の接着性に問題があれば、原反層2と基材Bとの間および/または絵柄模様層3とトップコート層5との間にプライマー層6を適宜設けてもよい。
原反層2は、樹脂層2a〜2cを積層した積層シートからなり、各樹脂層2a〜2cにはポリオレフィン系樹脂に対して上記の超臨界逆相蒸発法によりベシクル化された分散剤と、無機フィラーとが配合されている。特に、原反層2の表面に位置する樹脂層2a,2cには、原反層2の内側に位置する樹脂層2bよりも少ない配合量で無機フィラーが配合されている。より具体的には、表面に位置する樹脂層2a,2cにはポリオレフィン系樹脂100重量部に対して無機フィラーを50重量部未満配合し、内側に位置する樹脂層2bには、ポリオレフィン系樹脂100重量部に対して無機フィラーを50〜900重量部配合している。このような、各樹脂層2a〜2cの厚さは、原反層2の表面に位置する樹脂層2a,2cが5μm〜50μm、内側に位置する樹脂層2bが5μm〜100μmとされている。このような、原反層2は、共押出などによって3層の樹脂層2a〜2cからなる原反層2を製膜するとともに、当該原反層2に対して、一軸延伸加工または二軸延伸加工を施すことが好ましい。
絵柄模様層3としては、バインダーとしての硝化綿、セルロース、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、ポリビニルブチラール、ポリウレタン、アクリル、ポリエステル系等の単独もしくは各変性物の中から適宜選定して用いることができる。これらは水性、溶剤系、エマルジョンタイプのいずれでもよく、また1液タイプでも硬化剤を使用した2液タイプでもよい。さらに紫外線や電子線等の照射によりインキを硬化させる方法を用いてもよい。中でも最も一般的な方法は、ウレタン系のインキを用いるもので、イソシアネートによって硬化させる方法である。これらのバインダー以外には、通常のインキに含まれている顔料、染料等の着色剤、体質顔料、溶剤、各種添加剤などが添加されている。汎用性の高い顔料としては、縮合アゾ、不溶性アゾ、キナクリドン、イソインドリン、アンスラキノン、イミダゾロン、コバルト、フタロシアニン、カーボン、酸化チタン、酸化鉄、雲母等のパール顔料等が挙げられる。また、インキの塗布とは別に各種金属の蒸着やスパッタリングで意匠を施すことも可能である。
トップコート層5としては、特に規定されるものではないが、ポリウレタン系、アクリル系、アクリルシリコン系、フッ素系、エポキシ系、ビニル系、ポリエステル系、メラミン系、アミノアルキッド系、尿素系等から適宜選択できる。形態も水性、エマルジョン、溶剤系いずれでも可能で、且つ硬化も1液タイプでも硬化剤を用いた2液タイプでもよい。中でもイソシアネート反応を利用したウレタン系のトップコートが作業性、価格、樹脂自体の凝集力等の観点からも望ましい。イソシアネートとしては、トリレンジイソシアネート(TDI)、キシリレンジイソシアネート(XDI)、ヘキサメチレンジイソシアネート(HMDI)、メタジイソシアネート(MDI)、リジンジイソシアネート(LDI)、イソホロジイソシアネート(IPDI)、メチルヘキサンジイソシアネート(HTDI)、メチルシクロヘキサノンジイソシアネート(HXDI)、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート(TMDI)等から適宜選定して用いることができる。
また、化粧シート1の表面の硬度をさらに向上させるために、トップコート層5として紫外線や電子線照射で硬化する樹脂を使用することも可能である。さらに耐候性を向上させるためには、紫外線吸収材及び光安定材を適宜添加してもよい。そして、各種機能を付与するために抗菌材、防カビ材等の機能性添加材の添加も任意に行うことができる。さらに、表面の意匠性を向上させるために、艶の調整のための、あるいはさらに耐磨耗性を付与するための、アルミナ、シリカ、窒化珪素、炭化珪素、ガラスビーズ等を添加することもできる。
プライマー層6としては、基本的には絵柄模様層3と同じ材料を用いることができるが、化粧シート1の裏面に施されるためにウエブ状で巻取りを行うことを考慮すると、ブロッキングを避けて且つ接着剤との密着を高めるために、シリカ、アルミナ、マグネシア、酸化チタン、硫酸バリウム等の無機充填剤を添加させてもよい。
第1実施形態の化粧シート1においては、原反層2は印刷作業性、コストなどを考慮して20μm〜150μmとすることが望ましく、化粧シート1の総厚は25μm〜200μmの範囲内とすることが好適である。
図2は本発明の化粧シート1の第2実施形態を示し、第1実施形態の化粧シート1に対してさらに透明樹脂層4を具備した態様について説明する。なお、積層方法および透明樹脂層4の層数は、所望の化粧シート1の性能などに応じて適宜選択することができる。本実施形態の化粧シート1は、当該化粧シート1が貼り合わせられる木質ボード類、無機質ボード類または金属板などの基材Bに面する側から、原反層2、絵柄模様層3、接着層7(感熱接着層、アンカーコート層、ドライラミ接着材層)、透明樹脂層4、トップコート層5と積層された構成とされている。また、意匠性を向上させるためにトップコート層5側の透明樹脂層4の表面にエンボス模様4aを適宜設けてもよい。
また、本発明の化粧シート1における原反層2のように、オレフィン系の樹脂を用いる場合には、表面が不活性な状態とされていることが多いので、原反層2と基材Bとの間に、プライマー層6を設けることが好ましい。この他にも、オレフィン系材料からなる原反層2と基材Bとの接着性を向上させるために、原反層2にコロナ処理、プラズマ処理、オゾン処理、電子線処理、紫外線処理、重クロム酸処理等を行うことが望ましい。
第2実施形態における原反層2、絵柄模様層3およびプライマー層6は、第1実施形態と同様の構成のものを用いることができる。
透明樹脂層4としては、ポリオレフィン系樹脂を用いることができ、ポリオレフィン系樹脂としては、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリブテンなどの他に、αオレフィン(例えば、プロピレン、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、1−ヘプテン、1−オクテン、1−ノネン、1−デセン、1−ウンデセン、1−ドデセン、トリデセン、1−テトラデセン、1−ペンタデセン、1−ヘキサデセン、1−ヘプタデセン、1−オクタデセン、1−ノナデセン、1−エイコセン、3−メチル−1−ブテン、3−メチル−1−ペンテン、3−エチル−1−ペンテン、4−メチル−1−ペンテン、4−メチル−1−ヘキセン、4,4−ジメチル−1−ペンテン、4−エチル−1−ヘキセン、3−エチル−1−ヘキセン、9−メチル−1−デセン、11−メチル−1−ドデセン、12−エチル−1−テトラデセンなどを)を単独重合あるいは2種類以上共重合させたものや、エチレン・酢酸ビニル共重合体、エチレン・ビニルアルコール共重合体、エチレン・メチルメタクリレート共重合体、エチレン・エチルメタクリレート共重合体、エチレン・ブチルメタクリレート共重合体、エチレン・メチルアクリレート共重合体、エチレン・エチルアクリレート共重合体、エチレン・ブチルアクリレート共重合体などのように、エチレンまたはαオレフィンとそれ以外のモノマーとを共重合させたものが挙げられる。また、化粧シート1の表面強度の向上を図る場合には、高結晶性のポリプロピレンを用いることが好ましい。
なお、透明樹脂層4には、必要に応じて熱安定剤、紫外線吸収剤、光安定剤、ブロッキング防止剤、触媒捕捉剤、着色剤、光散乱剤および艶調整剤等の各種添加剤を添加することもできる。熱安定剤としては、フェノール系、硫黄系、リン系、ヒドラジン系等、紫外線吸収剤としては、ベンゾトリアゾール系、ベンゾエート系、ベンゾフェノン系、トリアジン系等、光安定剤としては、ヒンダードアミン系等を、任意の組み合わせで添加するのが一般的である。
接着層7としては、発熱性試験時の熱量を考慮して、可能な限り薄く積層されていることが望ましい。接着材としては、可能な限り燃焼時の熱量が少ないものが望ましく、それ以外は特に限定されるものではない。
また、化粧シート1に隠蔽性を付与したい場合には、原反層2を着色シートとすることで隠蔽性を付与したり、原反層2は透明シートのままで、別途、不透明な隠蔽層8を設けることにより隠蔽性を付与することができる。
隠蔽層8としては、基本的には絵柄模様層3と同じ材料から構成することができるが、隠蔽性を持たせることを目的としているので、顔料としては不透明な顔料、酸化チタン、酸化鉄等を使用することが好ましい。また隠蔽性を向上させるために金、銀、銅、アルミ等の金属を添加することも可能である。一般的にはフレーク状のアルミを添加させることが多い。
本発明の化粧シート1を形成するに当たり、積層方法は特に限定するものではなく、熱圧を応用した方法、押し出しラミネート方法およびドライラミネート方法などの一般的に用いられる方法から適宜選択して形成することができる。透明樹脂層4にエンボス模様4aを形成する場合には、一旦、前記積層方法によってラミネートした後に熱圧によってエンボス模様4aを入れる方法または冷却ロールに凹凸模様を設けて押し出しラミネートと同時にエンボス模様4aを形成することができる。
第2実施形態の化粧シート1においては、原反層2は印刷作業性、コストなどを考慮して20μm〜150μm、接着層7は1μm〜10μm未満、透明樹脂層4は20μm〜200μm、トップコート層5は3μm〜20μmとすることが望ましく、化粧シート1の総厚は45μm〜250μmの範囲内とすることが好適である。接着層7が1μm以下の場合、積層体として求められる密着性を得ることができず、10μm以上であると不燃性を悪化させる可能性が高い。
以上のように、本発明の化粧シート1においては、3層の樹脂層2a〜2cからなる原反層2を備え、当該樹脂層2a〜2cに対して超臨界逆相蒸発法によってベシクルに分散剤を内包させた分散剤内包ベシクルと無機フィラーとを配合するようにしているので、樹脂層2a〜2cの主成分であるポリオレフィン系樹脂中において無機フィラーを均一に分散させることができる。その結果、原反層2の表面において無機フィラーの二次凝集に起因する凹凸が生じることがなく平滑性に優れた表面を有する原反層2とすることができるので、絵柄印刷や他層の積層などの製造適正を容易に施すことができる。
さらに、原反層2を構成する樹脂層2a〜2cのうち、表面に位置する樹脂層2a,2cについて、内側に位置する樹脂層2bよりも少ない配合量で無機フィラーを配合するようにしているので、無機フィラーの析出が少ない極めて平滑性に優れた原反層2とすることができる。
本発明の化粧シート1においては、上述のような原反層2を備えた化粧シート1とすることにより、耐後加工性に優れ、不燃材料としての技術的基準を満たした化粧シート1を提供することができる。
以下に、本発明の化粧シート1の具体的な実施例について説明する。
まずは、ベシクルの具体的な調製方法手順について説明する。ベシクルの調製は、60℃に保たれた高圧ステンレス容器にメタノールを100重量部、分散剤を70重量部、外膜を構成するリン脂質としてのホスファチジルコリン5重量部の割合で入れて密閉し、容器内の圧力が20MPaになるように二酸化炭素を注入して超臨界状態とし、激しく攪拌混合しながらイオン交換水を100重量部注入し、温度と圧力を保ちながら15分間攪拌混合後、二酸化炭素を排出して大気圧に戻して超臨界逆相蒸発法によってリポソームに内包された分散剤リポソームを得た。
透明樹脂層4については、ペンタッド分率が97.8%、MFR(メルトフローレート)が15g/10min(230℃)、分子量分布MWD(Mw/Mn)が2.3の高結晶化ホモポリプロピレン樹脂に、ヒンダードフェノール系酸化防止剤(イルガノックス1010:チバスペシャリティケミカルズ社製)を500PPMと、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤(チヌビン328:チバスペシャリティケミカルズ社製)を2000PPMと、ヒンダードアミン系光安定剤(キマソーブ944:チバスペシャリティケミカルズ社製)を2000PPMとを添加した樹脂を溶融押出機を用いて押し出し、透明樹脂層4として使用する厚さ80μmの高結晶性ポリプロピレン製の透明樹脂シートを製膜した。
<実施例1>
実施例1においては、超臨界逆相蒸発法によりベシクル化された12−ヒドロキシステアリン酸マグネシウムを内包する分散剤リポソーム40重量部と、無機フィラーとしての平均粒子径2.0μmの炭酸カルシウムとを用い、原反層2の表面に位置する樹脂層2a,2cはポリエチレン樹脂に対して炭酸カルシウム11重量部を配合して厚さ15μmの樹脂シートとし、原反層2の内側に位置する樹脂層2bはポリオレフィン系樹脂に対して炭酸カルシウム200重量部を配合して厚さ45μmの樹脂シートとした原反シート2を具備する化粧シート1とした。
具体的には、まず、超臨界逆相蒸発法により分散剤としての12−ヒドロキシステアリン酸マグネシウムをベシクル化した分散剤リポソーム40重量部と、炭酸カルシウム(白石カルシウム株式会社製:ソフトン2000)200重量部とを、高密度ポリエチレン(プライムポリマー製:ハイゼックス5305E MFR=0.8g/10min(190℃))100重量部に添加し、噛合い型2軸押出機を用い溶融混練した後、ストランドカット法によりペレタイズを実施して炭酸カルシウム高充填の熱可塑性樹脂組成物のペレットIを得た。
同様に、上記の超臨界逆相蒸発法により分散剤としての12−ヒドロキシステアリン酸マグネシウムをベシクル化した分散剤リポソーム40重量部と、炭酸カルシウム(白石カルシウム株式会社製:ソフトン2000)11重量部とを、高密度ポリエチレン(プライムポリマー製:ハイゼックス5305E MFR=0.8g/10min(190℃))100重量部に添加し、噛合い型2軸押出機を用い溶融混練したのちストランドカット法によりペレタイズを実施し、炭酸カルシウム低充填の熱可塑性樹脂組成物のペレットIIを得た。
この熱可塑性樹脂組成物のペレットIおよびペレットIIを単軸押出機による溶融製膜にてTダイより押出し、原反層2の表面に位置する樹脂層2a,2cはペレットIIからなる厚さ15μmの樹脂シートとし、原反層2の内側に位置する樹脂層2bはペレットIからなる厚さ45μmの樹脂シートとして、膜厚75μmの原反層2としての原反シート2を製膜した。
当該原反シート2の一方の面に2液硬化型ウレタンインキ(V180:東洋インキ製造(株)製)にて絵柄印刷を施して絵絵柄層3を施し、また、その原反シート2の他方の面にプライマーコートを施してプライマー層6を形成した。しかる後、当該原反シート2の一方の面に形成された絵柄印刷層3面に、上記の透明樹脂シート4による透明樹脂層4をドライラミネート用接着剤(タケラックA540:三井化学製;塗布量2g/m )による接着層7を介してドライラミネート法にて貼り合わせた。次に貼り合わせたシートの透明樹脂層4の面に、エンボス用の金型ロールを用いてプレスしてエンボス模様4aを施した後、そのエンボス模様4a面上に2液硬化型ウレタントップコート(W184:DICグラフィックス社製)を塗布量3g/mにて塗布してトップコート層5を形成して図2に示す総厚154μmの化粧シート1を得た。
<実施例2>
実施例2においては、超臨界逆相蒸発法によりベシクル化されたビニルトリエトキシシランを内包する分散剤リポソーム40重量部と、無機フィラーとしての平均粒子径2.0μmの炭酸カルシウムとを用い、原反層2の表面に位置する樹脂層2a,2cはポリエチレン樹脂に対して炭酸カルシウム11重量部を配合して厚さ15μmの樹脂シートとし、原反層2の内側に位置する樹脂層2bはポリオレフィン系樹脂に対して炭酸カルシウム200重量部を配合して厚さ45μmの樹脂シートとした原反シート2を具備する化粧シート1とした。
具体的には、実施例1において、超臨界逆相蒸発法により分散剤としてのビニルトリエトキシシランをリポソームに内包された分散剤内包リポソーム40重量部と、炭酸カルシウム(白石カルシウム株式会社製:ソフトン2000)200重量部とを、高密度ポリエチレン(プライムポリマー製:ハイゼックス5305E MFR=0.8g/10min(190℃))100重量部に添加し、噛合い型2軸押出機を用い溶融混練したのちストランドカット法によりペレタイズを実施し、炭酸カルシウム高充填の熱可塑性樹脂組成物のペレットIを得た。また、上記の超臨界逆相蒸発法により分散剤としてのビニルトリエトキシシランをリポソームに内包された分散剤内包リポソーム40重量部と、炭酸カルシウム(白石カルシウム株式会社製:ソフトン2000)11重量部とを、高密度ポリエチレン(プライムポリマー製:ハイゼックス5305E MFR=0.8g/10min(190℃))100重量部に添加し、噛合い型2軸押出機を用い溶融混練したのちストランドカット法によりペレタイズを実施し、炭酸カルシウム低充填の熱可塑性樹脂組成物のペレットIIを得た。以降の原反シート2の製膜工程および化粧シート1の作成工程は実施例1と同様の方法により行い図2に示す化粧シート1を得た。
<比較例1>
比較例1においては、ポリエチレン樹脂に対して、超臨界逆相蒸発法によりベシクル化された12−ヒドロキシステアリン酸マグネシウムを内包する分散剤リポソーム40重量部と、無機フィラーとしての平均粒子径2.0μmの炭酸カルシウム79重量部とを配合して厚さ75μmの原反シート2とした原反層2を具備する図3に示す化粧シート1とした。
具体的には、上記の超臨界逆相蒸発法により分散剤としての12−ヒドロキシステアリン酸マグネシウムをベシクル化した分散剤リポソーム40重量部と、炭酸カルシウム(白石カルシウム株式会社製:ソフトン2000)79重量部を、高密度ポリエチレン(プライムポリマー製:ハイゼックス5305E MFR=0.8g/10min(190℃))100重量部に添加し、噛合い型2軸押出機を用い溶融混練したのちストランドカット法によりペレタイズを実施し、炭酸カルシウム高充填の熱可塑性樹脂組成物のペレットを得た。以降の原反シート2の製膜工程および化粧シート1の作成工程は実施例1と同様の方法により行い図3に示す化粧シート1を得た。
<比較例2>
比較例2においては、分散剤は配合せずに、無機フィラーとしての平均粒子径2.0μmの炭酸カルシウムを用い、原反層2の表面に位置する樹脂層2a,2cはポリエチレン樹脂に対して炭酸カルシウム11重量部を配合して厚さ15μmの樹脂シートとし、原反層2の内側に位置する樹脂層2bはポリオレフィン系樹脂に対して炭酸カルシウム200重量部を配合して厚さ45μmの樹脂シートとした原反シート2を具備する化粧シート1とした。
具体的には、炭酸カルシウム(白石カルシウム株式会社製:ソフトン2000)200重量部を、高密度ポリエチレン(プライムポリマー製:ハイゼックス5305E MFR=0.8g/10min(190℃))100重量部に添加し、噛合い型2軸押出機を用い溶融混練したのちストランドカット法によりペレタイズを実施し、炭酸カルシウム高充填の熱可塑性樹脂組成物のペレットIを得た。また、炭酸カルシウム(白石カルシウム株式会社製:ソフトン2000)11重量部を、高密度ポリエチレン(プライムポリマー製:ハイゼックス5305E MFR=0.8g/10min(190℃))100重量部に添加し、噛合い型2軸押出機を用い溶融混練したのちストランドカット法によりペレタイズを実施し、炭酸カルシウム低充填の熱可塑性樹脂組成物のペレットIIを得た。以降の原反シート2の製膜工程および化粧シート1の作成工程は実施例1と同様の方法により行い図2に示す化粧シート1を得た。
<比較例3>
比較例3においては、分散剤および無機フィラーは配合せずに、ポリエチレン樹脂からなる厚さ75μmの樹脂シートの原反シート2を具備する図3に示す化粧シート1とした。
具体的には、高密度ポリエチレン(プライムポリマー製:ハイゼックス5305E MFR=0.8g/10min(190℃))ペレットを用いたカレンダー成形法により、膜厚75μmの原反層2としての原反シート2を製膜した。以降の化粧シート1の作成工程は実施例1と同様の方法により行い図3に示す化粧シート1を得た。
上記実施例1,2および上記比較例1,2で得られた各々化粧シート1について、コーンカロリーメータ試験機による発熱性試験、引張試験、ホフマンスクラッチ試験、Vカット曲げ加工適正試験および印刷適正試験を実施した結果を表1および表2に示す。なお、表1には発熱性試験の結果および引張試験の結果を示し、表2にはホフマンスクラッチ試験の結果、Vカット曲げ加工適性試験の結果および印刷適性試験の結果を示す。
ここで、ホフマンスクラッチ試験は、100g〜1000gまで100g毎の加重条件にて行い、Vカット曲げ加工適正試験は、常温にてVカットを施した後90度に曲げた際の白化・亀裂などの発生を目視により行い、印刷適正試験は、絵柄印刷を施した際の表面のヨレなどを目視により行い、引張試験は、つかみ具距離90mm、引張速度50mm/minの条件にて行った。また、表2における記号の説明は下記の通りである。
<表2の記号の説明>
○:白化・亀裂などが生じることなくVカット加工が行えた、極めて良好に印刷が行えた
△:わずかに白化が認められたが化粧シートとして許容範囲内であった、良好に印刷が行えた
×:化粧シートとして許容できない白化・亀裂が認められた、印刷を良好に行うことができなかった
Figure 0006603468
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発熱性試験の結果については、表1に示すように、分散剤リポソームを配合した実施例1,2および比較例1,2における化粧シート1は、建築基準法施工例に規定の不燃材料の技術的基準を満たしている「不燃材料」であった。無機フィラーを配合していない比較例3の化粧シート1については、技術的基準の要件を満たしていなかった。
引張試験の結果については、表1に示すように、実施例1,2および比較例1,3における化粧シート1は、化粧シートに要求される引張弾性率500MPa以上2000MPa以下かつ引張破断伸度200%以上の条件を満たし、優れた引張強度を有していることが明らかとなった。比較例2の化粧シート1においては、引張弾性率の値は満たしているものの、引張破断伸度が90%と低い結果となった。これは、分散剤リポソームを配合せずに多量の無機フィラーとしての炭酸カルシウムを配合したために、当該炭酸カルシウムが樹脂材料中において二次凝集し、炭酸カルシウムと無機材料との結合力が低下して引張破断伸度が低くなったと考えられる。
ホフマンスクラッチ試験の結果においては、無機フィラーを配合した実施例1,2および比較例1,2の化粧シート1については、それぞれ800gの加重または900gの加重まで大きな傷は求められず、優れた耐擦傷性を有していることが明らかとなった。無機フィラーを配合していない比較例2の化粧シート1については、400gの加重にて大きな傷が認められた。
Vカット曲げ加工適正試験の結果においては、分散剤リポソームを配合した実施例1,2および比較例1,3の化粧シート1において白化・亀裂ともに認められず優れた加工適正を有していることが明らかとなった。比較例2の化粧シート1においては、白化や大きな亀裂が認められ、Vカット曲げ加工への適正がなかった。これは、比較例2の化粧シート1においては、分散剤リポソームを配合していなかったために、炭酸カルシウムが二次凝集してしまい、その凝集している部分の周辺に応力が集中して白化が生じたり、炭酸カルシウムと樹脂材料との結合力が低下して亀裂が生じたと考えられる。
印刷適正の結果においては、分散剤リポソームを配合し、かつ、3層の樹脂層2a〜2cからなる原反シート2として実施例1,2の化粧シート1については、極めて良好な印刷適正が認められた。分散剤リポソームを配合し、1層の樹脂層から原反シート2を形成した比較例1の化粧シート1については、良好な印刷適正が認められたものの、実施例1,2の化粧シート1には劣る結果となった。これは、実施例1,2の化粧シート1は、3層の樹脂層2a〜2cのうち表面に位置する樹脂層2a,2cに配合する炭酸カルシウムの量を少なくして原反シート2の表面に突出する炭酸カルシウム粒子の数を少なくすることにより、絵柄印刷が施される原反シート2の表面の平坦性を維持することで、優れた印刷適正が得られたと考えられる。比較例2の化粧シート1についは、良好に印刷を行うことができなかった。これは、比較例2の化粧シート1においては、3層の樹脂層2a〜2cのうち表面に位置する樹脂層2a,2cに配合された炭酸カルシウムの配合量は実施例1,2と同じであるにもかかわらず、分散剤を配合していないことにより、二次凝集が発生して、原反シート2の表面に突出する炭酸カルシウム粒子の量が極めて多く、平坦性が著しく損なわれたためであると考えられる。なお、樹脂材料のみから構成される比較例3の化粧シート1においては、良好に印刷を行うことができた。
以上の結果から明らかなように、本発明の超臨界逆相蒸発法によってベシクルに分散剤を内包させた分散剤内包ベシクルと、無機フィラーとを添加し、かつ、少なくとも3層の樹脂層2a〜2cからなる原反シート2を使用し、当該樹脂層2a〜2cのうち内側に位置する樹脂層2bよりも外側に位置する樹脂層2a,2cに配合する無機フィラーの配合量を少なくした実施例1,2による化粧シート1は、比較例1〜3の化粧シート1との比較において、不燃性能と原反シート2に求められる機械物性および印刷適正に優れた化粧シート1と言える。
本発明の化粧シート1および化粧シート1の製造方法は、上記の実施形態および実施例に限定されるものではなく、発明の特徴を損なわない範囲において、種々の変更が可能である。
1 化粧シート
2 原反層
2a〜2c 樹脂層
3 絵柄模様層
4 透明樹脂層
4a エンボス模様
5 トップコート層
6 プライマー層
7 接着層
8 隠蔽層
B 基材

Claims (8)

  1. 少なくとも3層の樹脂層からなる原反層を備える化粧シートであって、
    前記樹脂層が、ポリオレフィン系樹脂に対して超臨界逆相蒸発法によってベシクルに分散剤を内包させた分散剤内包ベシクルと、無機フィラーとを添加して熱可塑性樹脂組成物からなる層として形成されており、
    前記樹脂層のうち前記原反層の表面に位置する樹脂層には、内側に位置する樹脂層よりも少ない配合量で前記無機フィラーが配合されているとともに、
    前記ベシクルが、リン脂質およびノニオン系界面活性剤の混合物またはリン脂質およびノニオン系界面活性剤並びにコレステロール類およびトリアシルグリセロールの少なくとも一方との混合物からなる外膜を具備するリポソームであることを特徴とする化粧シート。
  2. 前記原反層の表面に位置する樹脂層は、ポリオレフィン系樹脂100重量部に対して、前記無機フィラーが50重量部未満配合された前記熱可塑性樹脂組成物からなり、
    前記内側に位置する樹脂層のうち少なくとも1層は、ポリオレフィン系樹脂100重量部に対して、前記無機フィラーが50〜900重量部配合された前記熱可塑性樹脂組成物からなることを特徴とする請求項1に記載の化粧シート。
  3. 前記無機フィラーの平均粒子径が、0.3μm以上,5μm以下であることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の化粧シート。
  4. 前記分散剤が、高分子系の界面活性剤、脂肪酸金属、シランカップリング剤、チタネートカップリング剤、シリコーン、ワックスまたは変性樹脂のいずれか1つであることを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載の化粧シート。
  5. 前記原反層が、一軸延伸加工または二軸延伸加工を施されていることを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれか1項に記載の化粧シート。
  6. 前記化粧シートが、不燃性基材と貼り合わせた状態でISO5660−1に準拠したコーンカロリーメータ試験機による発熱性試験において、建築基準法施工令第108条の2第1号および第2号に記載の要件を満たす不燃材料であることを特徴とする請求項1乃至請求項5のいずれか1項に記載の化粧シート。
  7. 引張弾性率が、500MPa以上,2000MPa以下であり、引張破断伸度が、200%以上であることを特徴とする請求項1乃至請求項7のいずれか1項に記載の化粧シート。
  8. 少なくとも3層の樹脂層からなる原反層を備える化粧シートの製造方法であって、
    前記樹脂層を、ポリオレフィン系樹脂に対して超臨界逆相蒸発法によってベシクルに分散剤を内包させた分散剤内包ベシクルと、無機フィラーとを添加して熱可塑性樹脂組成物からなる層として形成し、
    前記樹脂層のうち前記原反層の表面に位置する樹脂層には、内側に位置する樹脂層よりも少ない配合量で前記無機フィラーが配合されているとともに、
    前記ベシクルが、リン脂質およびノニオン系界面活性剤の混合物またはリン脂質およびノニオン系界面活性剤並びにコレステロール類およびトリアシルグリセロールの少なくとも一方との混合物からなる外膜を具備するリポソームであることを特徴とする化粧シートの製造方法。
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